説明

液体噴射装置、液体噴射方法

【課題】被液体噴射媒体の側端から発生する粉状物が液体噴射ヘッドのノズルに付着する量を考慮した液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体噴射装置(1)は、キャリッジ13を幅方向Xへ移動させキャリッジ13に設けられた液体噴射ヘッド7により被液体噴射媒体(P)に対して液体噴射し前記キャリッジ13を停止させる際、該キャリッジ13が減速して停止する予定の位置が、液体噴射ヘッド7に形成されたノズル(9)と被液体噴射媒体(P)の幅方向側端(P1、P2)とが対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置(1)が判断した場合、前記ノズル(9)と被液体噴射媒体(P)の幅方向側端(P1、P2)とが対向しない関係となる位置で前記キャリッジ13を停止させる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射するノズルを有し、被液体噴射媒体に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを有し、被液体噴射媒体の幅方向へ移動するキャリッジと、該キャリッジを幅方向へ移動させる移動手段と、を備えた液体噴射装置および該液体噴射装置における液体噴射方法に関する。
本願において、液体噴射装置には、インクジェットプリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の記録装置が含まれるものとする。ここで、ラインプリンターには、例えば、用紙の送り方向にノズル列が延設されており、記録を実行する際に記録ヘッドを有するキャリッジが用紙の幅方向に数回移動する構成のものが含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、n回目のキャリッジの移動において、次回であるn+1回目のキャリッジの移動における記録データを考慮してキャリッジの停止位置が決定されるように構成されていた。これにより、インクを吐出していないときのキャリッジの移動距離のロスおよび移動時間のロスと最小にすることができた。その結果、用紙一枚当たりの記録開始から終了までに要する時間である所謂、スループットを短くすることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−319635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、次回であるn+1回目のキャリッジの移動における記録データを考慮してキャリッジの停止位置を決定すると、キャリッジの記録ヘッドに形成されたノズルが用紙の側端と対向した関係となる位置でキャリッジが停止する場合がある。係る場合、用紙の側端から生じる紙粉等の粉状物がノズルに付着し、ノズルにおけるインクの吐出不良が生じる虞がある。
【0005】
図6(A)〜図6(C)に示すのは、本願が考慮するキャリッジ50の停止位置別に示す記録ヘッド51の面における粉状物の付着量を示す図である。このうち、図6(A)は記録ヘッド51のノズル列と用紙58の側端(59、60)との関係を示す概略平面図である。
尚、記録ヘッド51が二つ図示しているがこれは記録ヘッド51が実際に二つあるのではない。それぞれの記録ヘッド51の位置を示すものであり記録ヘッド51は実際には一つである。
【0006】
また、図6(B)は図6(A)における用紙58の左側側端59とノズル列とが対向する位置で停止した記録ヘッド51の面の粉状物の数量を示す図である。尚、縦軸は粉状物の数量を示す。一方、横軸は記録ヘッド51の面における幅方向の位置を示す。またさらに、図6(C)は図6(A)における用紙58の中央とノズル列とが対向する位置で停止した記録ヘッド51の面の粉状物の数量を示す図である。縦軸および横軸は図6(B)と同様である。
【0007】
図6(A)に示す如く、記録ヘッド51は図示しないキャリッジ50に保持されており、用紙58の送り方向に対する幅方向に移動可能に設けられている。また、記録ヘッド51には、左側から順にA列〜F列の計6列のノズル列(52〜57)が形成されている。
例えば、図6(A)に示す如く、用紙58の左側側端59と記録ヘッド51のC列のノズル54〜D列のノズル55間とが対向する関係の位置で記録ヘッド51が停止している状態で用紙58を送り方向下流側へ送る。係る場合における記録ヘッド51の面に付着する粉状物の量を示したのが図6(B)である。
【0008】
また、用紙58の中央と記録ヘッド51のA列のノズル51〜F列のノズル57とが対向する関係の位置で記録ヘッド51が停止している状態で用紙58を送り方向下流側へ送る。係る場合における記録ヘッド51の面に付着する粉状物の量を示したのが図6(C)である。
図6(B)に示す如く、用紙58の左側側端59と対向するC列のノズル54〜D列のノズル55間における紙粉等の粉状物の付着量が著しく多い。これは、用紙58が送られることにより僅かな振動が生じ、用紙58の側端において紙粉が発生し、発生した紙粉が舞い上がって記録ヘッド51の面に付着するものと考えられる。また、粉状物の付着量の分布の仕方はガウス分布に近いと考えられる。
【0009】
また、図6(C)に示す如く、用紙58の中央と対向する記録ヘッド51における粉状物の付着量は、図6(B)の場合と比較して極めて少ない。これは、用紙58の中央では紙粉等の粉状物が発生しにくいため、記録ヘッド51の面に付着する量が少ないものと考えられる。
尚、用紙58の右側側端60と記録ヘッド51のノズル面とが対向する関係の位置で記録ヘッド51が停止している状態で用紙58を送り方向下流側へ送った場合は、左側側端59と記録ヘッド51のノズル面とが対向する関係の位置の場合と同様である。即ち、側端と対向する位置に付着量の分布のピークがある。記録ヘッド51の面に付着する粉状物の量およびその分布は、図6(B)と同様であるため分布の図示は省略する。
これらのことから、用紙58が送られることにより僅かな振動が生じ、用紙58の側端(59、60)において紙粉が発生し、発生した紙粉が舞い上がって記録ヘッド51の面に付着するものと考えられる。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、被液体噴射媒体の側端から発生する粉状物が液体噴射ヘッドのノズルに付着する量を考慮した液体噴射装置および液体噴射方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の液体噴射装置は、液体を噴射するノズルを有し、被液体噴射媒体に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを有し、被液体噴射媒体の幅方向へ移動するキャリッジと、該キャリッジを幅方向へ移動させる移動手段と、を備えた液体噴射装置であって、前記キャリッジを幅方向へ移動させ前記液体噴射ヘッドにより被液体噴射媒体に対して記録し前記キャリッジを停止させる際、該キャリッジが減速して停止する予定の位置が、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、前記停止する予定の位置で前記キャリッジを停止させず、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる。従って、被液体噴射媒体の側端から発生しやすい粉状物が前記ノズルに直接付着することを抑制することができる。その結果、前記ノズルの状態を安定させることができる。即ち、前記ノズルの良好な状態を保持することができる。
【0013】
尚、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置ではないと前記液体噴射装置が判断した場合、前記停止する予定の位置で前記キャリッジを停止させる。係る場合、被液体噴射媒体の側端から発生しやすい粉状物が前記ノズルに直接付着する虞はそもそも小さいので殆ど問題ない。
また、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置であると判断した場合において、実際に前記キャリッジを停止させる位置は、該キャリッジの移動方向における前記停止する予定の位置より上流側でも下流側でもよい。
【0014】
例えば、前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間が最短となるように構成されている場合、実際に前記キャリッジを停止させる位置は、前記停止する予定の位置より移動方向下流側とする。これにより、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させることができる。
一方、前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間が最短ではないように構成されている場合、実際に前記キャリッジを停止させる位置は、前記停止する予定の位置より移動方向上流側および下流側のどちらでもよい。これにより、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させることができるからである。係る場合、前記停止する予定の位置より移動方向上流側とすることが望ましい。移動距離および時間を短くすることができるからである。その結果、被液体噴射媒体一枚当たりの記録開始から終了までの所要時間である所謂、スループットを短くすることができる。
【0015】
尚、前記停止する予定の位置は、移動中のキャリッジを所定の速度から減速させ停止させるまでに必要な距離および記録データを考慮して液体噴射装置が算出することができるものとする。また、液体噴射装置が被液体噴射媒体のサイズを把握することにより被液体噴射媒体の幅方向側端の位置を把握することができるものとする。例えば、被液体噴射媒体のサイズの設定に基づいて把握することができる。また、キャリッジに被液体噴射媒体の有無を検出するセンサーを設けることにより側端を検出し、該側端の位置を把握することも可能である。これらに基づき、前記停止する予定の位置が前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向する関係となる位置であるか否かを液体噴射装置は判断することができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間を延長して、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成であることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、例えば、前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間が最短となるように構成されている場合、それ以上前記区間を短くすることができない。従って、係る構成である場合に特に有効である。
尚、後述する第3の態様と比較して、前記キャリッジの速度の変化を示す所謂、速度曲線の傾きが緩やかになる。従って、前記キャリッジの移動による前記液体噴射装置の振動対策に有効である。
【0017】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、前記キャリッジが減速し始めてから停止する際の減速し始めるタイミングを遅らせることにより、前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間の長さを変えずに、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、上記第2の態様と比較して、前記キャリッジが高速で移動している時間が長い。従って、前記キャリッジの移動開始から停止までの所要時間が、その分短くて済む点でも有効である。前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間が最短となるように構成されている場合に特に有効である。
【0019】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記ノズルは幅方向に複数配設されており、前記停止する予定の位置が、幅方向に複数配設されたうちの一のノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合において、前記一のノズルに対して前記キャリッジの移動方向上流側に隣接した他の上流側のノズルがあるとき、該他の上流側のノズルと前記一のノズルとの間の距離の半分の距離だけ前記停止する予定の位置より移動方向下流側となる位置まで前記キャリッジを移動させ、前記一のノズルに対して前記他の上流側のノズルがないとき、前記一のノズルに対して前記キャリッジの移動方向下流側に隣接した他の下流側のノズルと前記一のノズルとの間の距離の半分の距離だけ前記停止する予定の位置より移動方向下流側となる位置まで前記キャリッジを移動させ、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記判断した場合、複数のノズル間の距離の半分の距離だけ前記キャリッジを移動方向下流側へ移動させる構成である。従って、ノズル間の中央に粉状物が付着する量の分布のピークをもってくることができる。即ち、前記分布のピークの位置を前記ノズルの位置からずらし、ノズル間の中央にもってくることにより、前記ノズルに付着する粉状物の量を低減することができる。
【0021】
また、前記分布のピークの位置をずらすために、複数のノズル間の距離の半分の距離だけ余分に前記キャリッジを移動させる。従って、ノズル間の距離の1.5倍、2.5倍等の距離余分に前記キャリッジを移動させ前記分布のピークの位置をずらした場合と比較して、移動距離が短くて済む。その分、スループットが低下することを抑制することができる。
【0022】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、今回(n回目)のキャリッジの移動における前記停止する予定の位置は、液体噴射データにおいて次回(n+1回目)のキャリッジの移動がある場合、次回(n+1回目)の液体噴射開始位置と、今回(n回目)の液体噴射終了位置と、比較して今回(n回目)のキャリッジの移動方向下流側である一方に基づいて算出される構成であることを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記停止する予定の位置は、前記比較して今回(n回目)のキャリッジの移動方向下流側である一方に基づいて算出される。係る構成である場合に、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置となる虞が生じるので、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成は特に有効である。
【0024】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記キャリッジは、被液体噴射媒体の有無を検出する検出手段をさらに有していることを特徴とする。
本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記液体噴射装置は、幅方向において被液体噴射媒体の側端と前記キャリッジとの相対的な位置関係を判断することができる。そして、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置であるか否かを精度良く判断することができる。また、被液体噴射媒体が送られる際に送り方向に対して傾いた場合にも対応することができる。
【0025】
本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれか一の態様において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、被液体噴射媒体の種類に応じて前記液体噴射装置が、前記対向する関係となる位置で前記キャリッジを停止させるか、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させるかを決定する構成であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第7の態様によれば、第1から第6のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記対向する関係となる場合に被液体噴射媒体の種類に応じて前記対向しない関係となる位置に変更するか否かを切り換えることができる。即ち、必要な場合にのみ前記変更することができる。
例えば、被液体噴射媒体の側端において粉状物が発生しやすい第1の媒体である場合、前記対向しない関係となる位置に変更することにより、前記ノズルに粉状物が直接付着することを抑制することができる。
一方、前記側端において粉状物が発生しにくい第2の媒体である場合、前記対向しない関係となる位置に変更しないことにより、スループットが低下することを防止することができる。
【0027】
本発明の第8の態様の液体噴射装置における記録方法は、キャリッジを被液体噴射媒体の幅方向へ移動させる移動工程と、前記移動工程において、前記キャリッジに設けられた液体噴射ヘッドのノズルから液体を吐出して被液体噴射媒体に対して記録する記録工程と、前記キャリッジの速度を減速させ、幅方向における一の方向への前記キャリッジの移動を停止させる減速停止工程と、前記キャリッジが減速して停止する予定の位置が、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向する関係となる位置であるか否かを判断する判断工程と、該判断工程において、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置であると判断した場合、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる停止位置変更工程と、を具備することを特徴とする。
本発明の第8の態様によれば、上記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るプリンターの全体を示す斜視図。
【図2】本発明に係るプリンターの内部の概略を示す側断面図。
【図3】本発明に係る最短記録モードにおけるキャリッジの動作を示す平面図。
【図4】本発明に係る品質重視モードにおけるキャリッジの動作を示す平面図。
【図5】本発明の品質重視モードにおける制御方法を示す図。
【図6】(A)〜(C)は停止位置別に示す記録ヘッドへの粉状物の付着量を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施形態に係る画像形成装置としてのプリンターを示す斜視図である。
図1に示すように、プリンター1は、高さ方向であるZ軸方向に薄型のプリンターである。また、プリンター1は、四角箱状の本体8を有しており、本体8の中央領域には、キャリッジ13が、図1における左右方向X(主走査方向(用紙の幅方向))に沿って延びるように架設されたキャリッジガイド軸41に案内されて、主走査方向に往復移動自在に設けられている。
【0030】
ここで、キャリッジ13は、移動手段14によって移動するように構成されているものとする。具体的に、移動手段14は、図示しない第1モーターと、図示しない一対のプーリーと、図示しない無端ベルトとを有している。無端ベルトは一対のプーリーに巻回されており、第1モーターが前記一対のうち一方のプーリーを駆動させるように構成されている。そして、無端ベルトの一部がキャリッジ13と係合されていることにより、キャリッジ13へ動力が伝達されるように構成されている。
【0031】
図1に示すように、本体8の中央領域にはキャリッジ13と対向する下側位置に、長尺板状の媒体支持部39がその長手方向が主走査方向Xと平行となる状態で配置されている。プリンター1の前面(図1における手前側の面)下部には、給紙用の用紙カセット11が、前面側が開口するように本体8に形成された凹状の被装着部8Aに挿抜可能な状態で装着(挿入)されている。また、本体8の右端部前面を覆っているカバー8Bの内側には、複数個のインクカートリッジ15が装填されている。
【0032】
各インクカートリッジ15のインクは、フレキシブル配線板19に付設された図示しない複数本のインク供給チューブを通じてキャリッジ13にそれぞれ供給され、キャリッジ13の下部に設けられた記録ヘッド7(図2に示す)からインク滴が噴射(吐出)される。なお、記録ヘッド7には、インクを噴射させるための圧力をインクに付与する加圧素子(圧電素子、静電素子、発熱素子等)がノズル毎に内蔵され、加圧素子に所定の電圧が印加されることで対応するノズルからインク滴が噴射(吐出)される構成となっている。
【0033】
印刷時は、用紙カセット11から給紙されて媒体支持部39上に位置する用紙Pに対して、キャリッジ13と共に主走査方向へ移動する過程の記録ヘッド7からインク滴が噴射されることにより、1ライン分の印刷が施される。こうしてキャリッジ13の一走査による印字動作と、次行までの用紙搬送動作とが交互に繰り返されることにより、用紙Pに対する印刷が進められる。また、本体8の左端前面下部には、電源スイッチを含む各種の操作スイッチ24が設けられている。
【0034】
図2に示すのは、本発明に係るプリンターの内部の概略を示す側断面図である。
図2に示す如く、プリンター1は、装置底部に給送装置2を備え、当該給送装置2から記録用紙Pを1枚ずつ給送し、記録手段4においてインクジェット記録を行う。そして、装置前方側(図2において左側)に設けられた図示しない排紙スタッカーへ向けて排出される構成を備えている。
【0035】
給送装置2は、用紙カセット11と、ピックアップローラー16と、ガイドローラー20と、分離手段21と、を備えている。複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な用紙カセット11は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能に構成されている。また、第2モーター(図示せず)によって回転駆動されるピックアップローラー16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられている。そして、用紙カセット11に収容された用紙と接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを用紙カセット11から送り出す。
【0036】
用紙カセット11に収容された用紙先端と対向する位置には分離部材12が設けられている。そして、給送されるべき最上位の用紙Pの先端が分離部材12に摺接しつつ下流側に進むことで、次位以降の用紙Pとの第1段階分離が行われる。分離部材12の下流側には自由回転可能なガイドローラー20が設けられている。更にその下流側には、分離ローラー22と駆動ローラー23とを備えて構成された、用紙Pの第2段階分離を行う分離手段21が設けられている。
【0037】
分離手段21の下流側には、第2モーター(図示せず)により回転駆動される駆動ローラー26と、駆動ローラー26との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー27と、を備えて構成された第1中間送り部25が設けられている。そして、この第1中間送り部25により、用紙Pが更に下流側へと送られる。尚、符号29は、用紙Pが湾曲反転経路を通過する際の(特に用紙後端が通過する際の)通紙負荷を軽減する従動ローラーを示している。
従動ローラー29の下流側には第2モーター(図示せず)により回転駆動される駆動ローラー32と、駆動ローラー32との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー33と、を備えて構成された第2中間送り部31が設けられている。そして、この第2中間送り部31により、用紙Pが更に下流側へと送られる。
【0038】
第2中間送り部31の下流側には、記録手段4が配置されている。記録手段4は、搬送手段5と、記録ヘッド7と、媒体支持部39と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、第2モーター(図示せず)によって回転駆動される搬送駆動ローラー35と、該搬送駆動ローラー35に圧接して従動回転するよう紙案内上側部37に軸支される搬送従動ローラー36とを備えて構成されている。そして、この搬送手段5により用紙Pが記録ヘッド7と対向する位置に向けて精密送りされる。
【0039】
記録ヘッド7はキャリッジ13の底部に設けられ、当該キャリッジ13は主走査方向(図2の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、第1モーター(図示せず)等の移動手段14によって主走査方向に往復動する様に駆動される。記録ヘッド7と対向する位置には媒体支持部39が設けられ、当該媒体支持部39によって、用紙Pと記録ヘッド7との距離が規定されるようになっている。
【0040】
媒体支持部39の下流側に設けられた排出手段6は、第2モーター(図示せず)によって回転駆動される排出駆動ローラー44と、当該排出駆動ローラー44に接して従動回転する排出従動ローラー45とを備えて構成されている。そして、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカーへと排出される。
【0041】
[キャリッジ停止位置変更前(最短記録モード)]
図3に示すのは、本発明に係る最短記録モードにおける用紙に対する相対的なキャリッジの動作を示す平面概念図である。
図3に示す如く、記録ヘッド7には、複数のノズル列9およびセンサー10が設けられている。具体的には、図3における左側から第1ノズル列9a、第2ノズル列9b、第3ノズル列9c、第4ノズル列9d、第5ノズル列9eおよび第6ノズル列9fが形成されている。
【0042】
このうち、第1ノズル列9aと第2ノズル列9bとの間の距離、第3ノズル列9cと第4ノズル列9dとの間の距離、および第5ノズル列9eと第6ノズル列9fとの間の距離はそれぞれL1である。また、第2ノズル列9bと第3ノズル列9cとの間の距離、および第4ノズル列9dと第5ノズル列9eとの間の距離はそれぞれL2である。ここで、第1ノズル列9a〜第6ノズル列9fの間の距離がそれぞれ均等でも良いのは勿論である。
また、記録ヘッド7における第1ノズル列9a〜第6ノズル列9fの幅方向両側には、用紙Pの有無を検出することができるセンサー10が設けられている。
【0043】
以下、最短記録モードの動作について説明する。
最短記録モードが選択されている場合、今回のキャリッジ13の幅方向Xへの移動における記録データと、次回の幅方向Xへの移動における記録データとを考慮して当該回の幅方向Xへ移動した際のキャリッジ13の停止位置が決められる。図3における点模様で示される範囲Aは、記録データに基づいて記録される範囲である。
【0044】
先ず、一回目のキャリッジ13の移動(走査)において、キャリッジ13は、図3における右側から左側へ移動する。この際、用紙Pの右側側端P2より外側の位置に停止した状態から左側へ加速する。ここで、停止位置から記録される範囲Aまでの間に距離があるのは、キャリッジ13が所定の速度まで加速するために所定の距離が必要であり、所定の速度に達したときに記録される範囲Aに到達するようにするためである。そして、記録される範囲Aの右端から記録を開始し、記録される範囲Aの左端まで所定の速度を保ちながら記録を実行する。その後、キャリッジ13は減速して用紙Pの左側側端P1より外側の位置で停止する。この際、用紙Pは送り方向下流側(図1および図2におけるY軸の矢印方向)へ所定量だけ送られる。
【0045】
次に、二回目のキャリッジ13の移動において、キャリッジ13は、図3における左側から右側へ移動する。この際、用紙Pの左側側端P1より外側の位置に停止した状態から右側へ加速する。そして、記録される範囲Aの左端から記録を開始し、記録される範囲Aの右端まで所定の速度を保ちながら記録を実行する。その後、キャリッジ13は減速して停止する。
【0046】
この際、次回である三回目のキャリッジ13の移動における記録データに基づいて記録される範囲Aを考慮してキャリッジ13の停止位置が決定される。二回目のキャリッジ13の移動における記録される範囲Aの終点である右端の位置が、次回の三回目のキャリッジ13の移動における記録される範囲Aの始点である右端の位置より左側であるか否かを制御部が判断する。即ち、次回の記録開始位置が今回の記録終了位置より今回のキャリッジ13の移動方向下流側か否かを判断する。
【0047】
本実施例では図3に示す如く、次回である三回目の記録開始位置が今回である二回目の記録終了位置より今回である二回目のキャリッジ13の移動方向下流側である場合である。従って、次回の記録される範囲Aの右端の位置から右側へ加減速に必要な距離を加えた位置で停止するように制御部が制御する。この際、用紙Pは送り方向下流側へ所定量だけ送られる。
【0048】
続いて、三回目のキャリッジ13の移動において、キャリッジ13は、図3における右側から左側へ移動する。この際、前回である二回目のキャリッジ13の移動において決定された停止位置に停止した状態から左側へ加速する。そして、記録される範囲Aの右端から記録を開始し、記録される範囲Aの左端まで所定の速度を保ちながら記録を実行する。その後、キャリッジ13は減速して停止する。この際、次回である四回目のキャリッジ13の移動における記録データに基づいて記録される範囲Aを考慮してキャリッジ13の停止位置が決定される。前回と同様に、次回である四回目の記録開始位置が今回である三回目の記録終了位置より今回のキャリッジ13の移動方向下流側か否かを判断する。
【0049】
本実施例では図3に示す如く、次回である四回目の記録開始位置が今回である三回目の記録終了位置より今回である三回目のキャリッジ13の移動方向下流側ではない場合である。係る場合、今回である三回目の記録される範囲Aの左端の位置から左側へ加減速に必要な距離を加えた位置で停止するように制御部が制御する。この際、用紙Pは送り方向下流側へ所定量だけ送られる。
【0050】
さらに続いて、四回目のキャリッジ13の移動において、キャリッジ13は、図3における左側から右側へ移動する。この際、前回である三回目のキャリッジ13の移動において決定された停止位置に停止した状態から右側へ加速する。そして、記録される範囲Aの左端から記録を開始し、記録される範囲Aの右端まで所定の速度を保ちながら記録を実行する。その後、キャリッジ13は減速して停止する。この際、次回のキャリッジ13の移動における記録データがない。係る場合、今回である四回目の記録される範囲Aの右端の位置から右側へ加減速に必要な距離を加えた位置で停止するように制御部が制御する。その後、用紙Pは送り方向下流側へ送られ、排出部の排出スタッカーに排出される。
【0051】
その結果、次回の記録データに基づいて記録される範囲Aに拘わらずキャリッジ13が常に所定の距離だけ移動する制御方法と比較して、記録をしていないときのキャリッジ13の移動を低減することができる。即ち、無駄なキャリッジ13の移動距離のロスおよび移動時間のロスを低減することができる。
ところが、キャリッジ13の停止位置がキャリッジ13の移動毎に異なり、一のノズル列9が用紙Pの側端(P1、P2)と対向する関係となる位置でキャリッジ13が停止する場合がある。
【0052】
係る場合、従来技術における問題点と同様に、前記対向する関係となるノズル列9に紙粉等の粉状物が付着する虞がある。
そこで、本実施形態の品質重視モードでは、キャリッジ13が停止する予定の位置を判断して、前記対向する関係となる場合、以下のようにキャリッジ13の停止位置を変更するように制御する。
【0053】
[キャリッジ停止位置変更後(品質重視モード)]
図4に示すのは、本発明に係る品質重視モードにおける用紙に対して相対的なキャリッジの動作を示す平面概念図である。
図4に示す如く、品質重視モードが選択されている場合、図3と同様に今回のキャリッジ13の移動における停止予定の位置を判断する。そして、停止予定の位置が、ノズル列9が用紙Pの側端(P1、P2)と対向する関係となる位置か否かを判断する。該対向する関係となると判断した場合、停止予定の位置にキャリッジ13を停止させず、今回の移動方向下流側へさらにキャリッジ13を移動させ前記対向しない関係となる位置で停止させるように制御する。
【0054】
以下、前述した図3の最短記録モードの場合と比較してどのように制御するかを説明する。
尚、比較を容易にするために記録データに基づいて記録される範囲Aは同じであるものとする。
先ず、一回目のキャリッジ13の移動(走査)において、キャリッジ13は、図4における右側から左側へ移動する。一回目のキャリッジ13の移動については、停止予定の位置が前記対向する関係とならない。従って、前述した最短記録モードの場合と同様である。その説明は省略する。
【0055】
次に、二回目のキャリッジ13の移動において、キャリッジ13は、図4における左側から右側へ移動する。この際、用紙Pの左側側端P1より外側の位置に停止した状態から右側へ加速する。そして、記録される範囲Aの左端から記録を開始し、記録される範囲Aの右端まで所定の速度を保ちながら記録を実行する。その後、キャリッジ13は減速して停止する。この際、次回である三回目のキャリッジ13の移動における記録データに基づいて記録される範囲Aを考慮してキャリッジ13の停止予定の位置が決定される。
【0056】
ここで、前述した最短記録モードの場合と異なる点は、キャリッジ13の停止予定の位置が、ノズル列9と用紙Pの側端(P1、P2)とが対向する関係となる位置か否かを制御部(図示せず)が判断する点である。即ち、前述した最短記録モードの場合は前記判断しなかったが、品質重視モードでは前記判断する。
具体的には、制御部は、先ず、キャリッジ13の停止予定の位置を算出する。当該回のキャリッジ13の移動における記録データに基づいて記録終了位置を把握する。そして、記録終了位置から減速して停止するまでに必要な距離(減速区間)を加味して停止予定の位置を算出することができる。
【0057】
次に、算出したキャリッジ13の停止予定の位置が、ノズル列9と用紙Pの側端(P1、P2)とが対向する関係となる位置か否かを判断する。
前記対向する関係となる位置であると判断した場合、制御部は、前記対向する関係とならない位置で停止するように制御する。具体的には、記録終了位置に到達した際の減速を開始するタイミングを遅らせる。または、減速を開始するタイミングを変更せずに減速区間を延長する。
【0058】
本実施例では図4に示す如く、前記対向する関係となる停止予定の位置で停止させず、該停止予定の位置から第3ノズル列9cと第2ノズル列9bとの間の距離L2の半分の距離だけさらに二回目の移動における移動方向下流側へ移動させて停止させる。これにより、第2ノズル列9bと第3ノズル列9cとの間の中心が用紙Pの右側側端P2と対向する関係となる位置でキャリッジ13を停止させることができる。即ち、第1ノズル列9a〜第6ノズル列9fのいずれもが用紙Pの側端(P1、P2)と対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させることができる。
【0059】
尚、距離L2の半分の距離だけ余分に移動させて停止させたのは、停止予定の位置が第3ノズル列9cと用紙Pの右側側端P2とが対向する関係となる位置だからである。仮に、停止予定の位置が第4ノズル列9dと用紙Pの右側側端P2とが対向する関係となる位置である場合、距離L1の半分の距離だけ余分に移動させて停止させる。即ち、停止予定の位置において対向するノズル列より当該回のキャリッジ13の移動方向上流側隣のノズル列がある場合、前記対向するノズル列と前記上流側隣のノズル列との間の距離の半分の距離だけ余分に移動させて停止させる。
【0060】
一方、前記停止予定の位置において対向するノズル列より当該回のキャリッジ13の移動方向上流側隣のノズル列がない場合、前記対向するノズル列と前記下流側隣のノズル列との間の距離の半分の距離だけ余分に移動させて停止させることが望ましい。停止位置を変更することによるキャリッジ13の移動距離のロスおよび移動時間のロスを最小に留めることができるからである。本実施例では、最良の形態として隣り合うノズル列間の距離の1/2の距離だけ余分に移動させて停止させる構成としたが、余分に移動させる距離はこれに限られるものではない。変更後の停止位置が前記対向しない関係となる位置となればよいからである。
【0061】
続いて、三回目のキャリッジ13の移動において、キャリッジ13は、図4における右側から左側へ移動する。この際、前回である二回目のキャリッジ13の移動において決定された変更後の停止位置に停止した状態から左側へ加速する。
ここで、加速する区間の長さを変更せずに、記録開始位置の手前で所定の速度に達するように制御してもよい。また、二回目の移動において前記余分に移動させた分だけ加速する区間の長さが長くなるように制御してもよい。前者は後者と比較して時間のロスを低減することができる。一方、後者は前者と比較して緩やかに加速するので、キャリッジ13の移動によるプリンター全体の幅方向Xの振動の大きさを低減することができる。
【0062】
そして、記録される範囲Aの右端から記録を開始し、記録される範囲Aの左端まで所定の速度を保ちながら記録を実行する。その後、キャリッジ13は減速して停止する。この際、次回である四回目のキャリッジ13の移動における記録データに基づいて記録される範囲Aを考慮してキャリッジ13の停止予定の位置が決定される。前回と同様に、次回である四回目の記録開始位置が今回である三回目の記録終了位置より今回のキャリッジ13の移動方向下流側か否かを判断することは勿論である。
【0063】
前回と同様に、制御部は、先ず、キャリッジ13の停止予定の位置を算出する。
本実施例では図4に示す如く、前記対向する関係となる停止予定の位置で停止させず、該停止予定の位置から第2ノズル列9bと第3ノズル列9cとの間の距離L2の半分の距離だけさらに三回目の移動における移動方向下流側へ移動させて停止させる。これにより、第2ノズル列9bと第3ノズル列9cとの間の中心が用紙Pの左側側端P1と対向する関係となる位置でキャリッジ13を停止させることができる。即ち、第1ノズル列9a〜第6ノズル列9fのいずれもが用紙Pの側端(P1、P2)と対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させることができる。
【0064】
さらに続いて、四回目のキャリッジ13の移動において、キャリッジ13は、図4における左側から右側へ移動する。この際、前回である三回目のキャリッジ13の移動において決定された変更後の停止位置に停止した状態から右側へ加速する。そして、記録される範囲Aの左端から記録を開始し、記録される範囲Aの右端まで所定の速度を保ちながら記録を実行する。その後、キャリッジ13は減速して停止する。この際の動作は、前述した最短記録モードと同様である。その説明は省略する。
【0065】
尚、用紙等の媒体の種類に拘わらず、常に品質重視モードで記録を実行するように構成してもよい。また、用紙等の媒体の種類に応じて、最短記録モードと品質重視モードとを切り換えて記録を実行するように構成してもよい。モードを切り換える構成とした場合、例えば、パルプ材を主原料とし表面が塗工されていない所謂、普通紙のとき、用紙Pの側端(P1、P2)において紙粉等の粉状物が生じやすいので品質重視モードにする。一方、樹脂を主原料とし表面が塗工された所謂、専用紙のとき、粉状物が生じにくいので最短記録モードにするのが望ましい。粉状物が生じにくいときは、スループットが低下することを防止することができるからである。
【0066】
ここで、粉状物が生じやすいか否かは、記録手段4より送り方向上流側における用紙の側端近傍に設けられた粉状物発生量測定手段の一例である光センサーを用いることにより粉状物の発生量の多少を判断することができる。また、前記対向する関係となる位置となるか否かの判断は、キャリッジ13に設けられた用紙Pの有無を検出するセンサー10を用いることができる。具体的には、該センサー10によって用紙Pの側端(P1、P2)を検出し、用紙Pの側端(P1、P2)とキャリッジ13との相対的な位置関係を制御部が把握することができる。
【0067】
以上、説明したように品質重視モードでは、キャリッジ13の実際の停止位置が、必ずノズル列9と用紙Pの側端(P1、P2)とが対向しない関係となる位置となる。従って、ノズル列9に用紙Pの側端(P1、P2)で発生する紙粉等の粉状物が付着する量を低減することができる。その結果、付着した粉状物によりノズル列9が詰まる虞を低減することができる。即ち、品質重視モードでは、最短記録モードと比較して記録品質を向上させることができる。
【0068】
図5に示すのは、本発明の品質重視モードにおける制御方法を示す図である。
図5に示す如く、ステップS1では、n回目のpass走査(移動)を開始する。言い換えると、キャリッジ13のn回目の幅方向Xへの移動を開始する。具体的には、所定の速度に達するまでキャリッジ13を加速させる。そして、ステップS2へ進む。
ステップS2では、n回目のpass記録を実行する。具体的には、n回目の移動における記録データに基づいて記録を実行する。そして、ステップS3へ進む。
【0069】
ステップS3では、キャリッジ13のn回目の移動中において、次回であるn+1回目の記録開始位置を把握する。具体的には、n+1回目の移動における記録データに基づいて記録開始位置を把握する。そして、ステップS4へ進む。
ステップS4では、n回目の走査の停止予定の位置を算出する。具体的には、前述したように、次回(n+1回目)の記録開始位置が今回(n回目)の記録終了位置より今回(n回目)のキャリッジ13の移動方向下流側か否かを判断する。
【0070】
そして、次回(n+1回目)の記録開始位置が今回(n回目)の記録終了位置より今回(n回目)のキャリッジ13の移動方向下流側である場合、次回の記録開始位置より今回の前記移動方向下流側へ減速に必要な距離を加えた位置を停止予定の位置とする。一方、次回(n+1回目)の記録開始位置が今回(n回目)の記録終了位置より今回(n回目)のキャリッジ13の移動方向上流側である場合、今回の記録終了位置より今回の前記移動方向下流側へ減速に必要な距離を加えた位置を停止予定の位置とする。そして、ステップS5へ進む。
【0071】
ステップS5では、ステップS4で算出した停止予定の位置が、ノズル列9と用紙Pの側端(P1、P2)とが対向する関係となる位置か否かを制御部が判断する。前記対向する関係となる位置であると判断した場合、前記対向する関係とならない位置に変更するべくステップS6へ進む。一方、前記否と判断した場合、前記停止予定の位置を変更する必要がないため、停止予定の位置でキャリッジ13を停止させるべくステップS8へ進む。
ステップS6では、前述したように実際のキャリッジ13の停止位置を、前記停止予定の位置と異なる位置へ変更する。そして、ステップS7へ進む。
【0072】
ステップS7では、ステップS6で変更された後の停止位置に基づいてキャリッジ13を停止させる。従って、前記停止位置を前記対向しない関係が成立する位置とすることができる。その結果、ノズル列9に粉状物が付着する量を、最短記録モードと比較して低減させることができる。そして、シーケンスを終了する。
ステップS8では、停止予定の位置でキャリッジ13を停止させる。そして、シーケンスを終了する。
【0073】
尚、上記実施例では、キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間が最短となるように初期設定されているため、変更後の実際にキャリッジを停止させる位置は、前記停止する予定の位置より移動方向下流側となる旨を説明したがこれに限られるものではない。前記区間が最短ではないように初期設定されている場合、変更後の実際にキャリッジを停止させる位置は、前記停止する予定の位置より移動方向上流側および下流側のどちらでもよい。
【0074】
また、上記実施例では、プリンター自体が、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置であるか否かを判断するように構成したが、外部のコンピューターが判断するように構成してもよい。例えば、プリンターに接続されたコンピューター側のドライバーにおいて判断するように構成してもよい。係る場合も同様の作用効果を得ることができるからである。
【0075】
またさらに、上記実施例では、キャリッジが停止した状態から加速し、等速で移動している状態となってから記録を実行し、その後減速して停止する構成として説明したがこれに限られない。キャリッジの加速中および減速中においても記録を実行する構成としてもよいのは勿論である。上記実施例において、加減速中に記録を実行しない構成として説明をしたのは、本願発明の理解をより容易にするためである。
【0076】
また、上記実施例では、キャリッジ13の幅方向Xへの移動の往路および復路においてインクを吐出する所謂、ツーウェイパスの構成について説明したが、これに限られるものではない。前記往路および復路の一方においてインクを吐出する所謂、ワンウェイパスの構成でもよい。係る場合も、同様の作用効果を得ることができるからである。尚、ワンウェイパスの構成では、最短記録モードにおいて、今回(n回目)のキャリッジ13の移動における停止位置は、今回(n回目)の記録終了位置に基づいて決められる。言い換えると、次回(n+1回目)の記録開始位置は考慮しない。
【0077】
本実施形態の液体噴射装置の一例であるプリンター1は、液体の一例であるインクを噴射する複数のノズルから構成されるノズル列9を有し、被液体噴射媒体の一例である用紙Pに対してインクを噴射する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド7と、記録ヘッド7を有し、用紙Pの幅方向Xへ移動するキャリッジ13と、キャリッジ13を幅方向Xへ移動させる移動手段14と、を備えたプリンター1であって、キャリッジ13を幅方向Xへ移動させ記録ヘッド7により用紙Pに対して記録しキャリッジ13を停止させる際、キャリッジ13が減速して停止する予定の位置が、ノズル列9と用紙Pの幅方向側端(P1、P2)とが対向する関係となる位置であるとプリンター1が判断した場合、前記停止する予定の位置でキャリッジ13を停止させず、ノズル列9と用紙Pの幅方向側端(P1、P2)とが対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させる構成であることを特徴とする。
【0078】
また、本実施形態において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であるとプリンター1が判断した場合、キャリッジ13が減速し始めてから停止するまでの区間を延長して、前記対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させる構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であるとプリンター1が判断した場合、キャリッジ13が減速し始めてから停止する際の減速し始めるタイミングを遅らせることにより、キャリッジ13が減速し始めてから停止するまでの区間の長さを変えずに、前記対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させる構成であることを特徴とする。
【0079】
また、本実施形態において、ノズル列9a〜9f(9)は幅方向Xに複数配設されており、前記停止する予定の位置が、幅方向Xに複数配設されたうちの一のノズル列(例えば図3における右側へ移動する場合の第2ノズル列9b)と用紙Pの幅方向側端(P1、P2)とが対向する関係となる位置であるとプリンター1が判断した場合において、前記一のノズル列(第2ノズル列9b)に対してキャリッジ13の移動方向上流側に隣接した他の上流側のノズル列(第1ノズル列9a)があるとき、該他の上流側のノズル列(第1ノズル列9a)と前記一のノズル列(第2ノズル列9b)との間の距離(L1)の半分の距離だけ前記停止する予定の位置より移動方向下流側となる位置までキャリッジ13を移動させる。前記対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させる構成であることを特徴とする。
【0080】
一方、前記一のノズル列(例えば図3における右側へ移動する場合の第1ノズル列9a)に対して前記他の上流側のノズル列がないとき、前記一のノズル列(例えば図3における右側へ移動する場合の第1ノズル列9a)に対してキャリッジ13の移動方向下流側に隣接した他の下流側のノズル列(第2ノズル列9b)と前記一のノズルとの間の距離(L1)の半分の距離だけ前記停止する予定の位置より移動方向下流側となる位置までキャリッジ13を移動させ、前記対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させる構成であることを特徴とする。
【0081】
尚、本実施形態では、ノズル列間の距離(L1、L2)の半分の距離だけ余分にキャリッジ13の移動させる構成としたが、これに限られるものではない。前記半分の距離だけとした理由は、キャリッジ13の移動距離のロスおよび移動時間のロスを最小にするためである。前記半分の距離をノズル列間の距離(L1、L2)の3/2、5/2…の距離に変えて移動させてもよい。係る場合も、粉状物がノズル列に付着する量を低減させることができる。また、厳密に前記半分、3/2、5/2…でなくてもよい。用紙側端(P1、P2)がノズル面におけるノズル列間の略中央と対向する関係となれば同様の効果を得ることができるからである。
【0082】
また、本実施形態において、今回(n回目)のキャリッジ13の移動における前記停止する予定の位置は、液体噴射データとしての記録データにおいて次回(n+1回目)のキャリッジ13の移動がある場合、次回(n+1回目)の記録開始位置と、今回(n回目)の記録終了位置と、比較して今回(n回目)のキャリッジ13の移動方向下流側である一方に基づいて算出される構成であることを特徴とする。
尚、次回(n+1回目)のキャリッジ13の移動がない場合は記録終了である。係る場合、キャリッジは、用紙と対向する範囲へ移動するので何ら問題はない。
【0083】
またさらに、本実施形態において、キャリッジ13は、用紙Pの有無を検出する検出手段の一例であるセンサー10をさらに有していることを特徴とする。
また、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であるとプリンター1が判断した場合、媒体(用紙)の種類に応じてプリンター1が、前記対向する関係となる位置でキャリッジ13を停止させるか、前記対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させるかを決定する構成であることを特徴とする。
【0084】
本実施形態のプリンター1における液体噴射方法としての記録方法は、キャリッジ13を用紙Pの幅方向Xへ移動させる移動工程(ステップS1)と、移動工程(ステップS1)において、キャリッジ13に設けられた記録ヘッド7のノズル列9からインクを吐出して用紙Pに対して記録する記録工程(ステップS2)と、キャリッジ13の速度を減速させ、幅方向Xにおける一の方向へのキャリッジ13の移動を停止させる減速停止工程(ステップS7、S8)と、キャリッジ13が減速して停止する予定の位置が、ノズル列9と用紙Pの幅方向側端(P1、P2)とが対向する関係となる位置であるか否かを判断する判断工程(ステップS5)と、判断工程(ステップS5)において、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置であると判断した場合、ノズル列9と用紙Pの幅方向側端(P1、P2)とが対向しない関係となる位置でキャリッジ13を停止させる停止位置変更工程(ステップS6)と、を具備することを特徴とする。
【0085】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1 (インクジェット)プリンター、2 給送装置、4 記録手段、5 搬送手段、
6 排出手段、7 記録ヘッド、8 本体、8A 被装着部、8B カバー、
9 ノズル列、9a 第1ノズル列、9b 第2ノズル列、9c 第3ノズル列、
9d 第4ノズル列、9e 第5ノズル列、9f 第6ノズル列、10 センサー、
11 用紙カセット、12 分離部材、13 キャリッジ、14 移動手段、
15 インクカートリッジ、16 ピックアップローラー、17 揺動部材、
18 揺動軸、19 フレキシブル配線板、20 ガイドローラー、21 分離手段、
22 分離ローラー、23 駆動ローラー、24 操作スイッチ、
25 第1中間送り部、26 駆動ローラー、27 アシストローラー、
29 従動ローラー、31 第2中間送り部、32 駆動ローラー、
33 アシストローラー、35 搬送駆動ローラー、36 搬送従動ローラー、
37 紙案内上側部、39 媒体支持部、41 キャリッジガイド軸、
44 排出駆動ローラー、45 排出従動ローラー、
50 (本願が考慮する)キャリッジ、51 記録ヘッド、52 A列のノズル、
53 B列のノズル、54 C列のノズル、55 D列のノズル、56 E列のノズル、
57 F列のノズル、58 用紙、59 左側側端、60 右側側端、A 記録範囲、
L1 第1〜第2、第3〜第4、第5〜第6ノズル列間の距離、
L2 第2〜第3、第4〜第5ノズル列間の距離、P 用紙、P1 用紙の左側側端、
P2 用紙の右側側端、X 幅方向、Y 記録時の搬送方向、Z 高さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルを有し、被液体噴射媒体に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
該液体噴射ヘッドを有し、被液体噴射媒体の幅方向へ移動するキャリッジと、
該キャリッジを幅方向へ移動させる移動手段と、を備えた液体噴射装置であって、
前記キャリッジを幅方向へ移動させ前記液体噴射ヘッドにより被液体噴射媒体に対して液体噴射し前記キャリッジを停止させる際、該キャリッジが減速して停止する予定の位置が、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、前記停止する予定の位置で前記キャリッジを停止させず、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成である液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間を延長して、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成である液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体噴射装置において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、前記キャリッジが減速し始めてから停止する際の減速し始めるタイミングを遅らせることにより、前記キャリッジが減速し始めてから停止するまでの区間の長さを変えずに、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成である液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、前記ノズルは幅方向に複数配設されており、前記停止する予定の位置が、幅方向に複数配設されたうちの一のノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合において、
前記一のノズルに対して前記キャリッジの移動方向上流側に隣接した他の上流側のノズルがあるとき、該他の上流側のノズルと前記一のノズルとの間の距離の半分の距離だけ前記停止する予定の位置より移動方向下流側となる位置まで前記キャリッジを移動させ、
前記一のノズルに対して前記他の上流側のノズルがないとき、前記一のノズルに対して前記キャリッジの移動方向下流側に隣接した他の下流側のノズルと前記一のノズルとの間の距離の半分の距離だけ前記停止する予定の位置より移動方向下流側となる位置まで前記キャリッジを移動させ、
前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる構成である液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、今回(n回目)のキャリッジの移動における前記停止する予定の位置は、
液体噴射データにおいて次回(n+1回目)のキャリッジの移動がある場合、次回(n+1回目)の液体噴射開始位置と、今回(n回目)の液体噴射終了位置と、比較して今回(n回目)のキャリッジの移動方向下流側である一方に基づいて算出される構成である液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、前記キャリッジは、被液体噴射媒体の有無を検出する検出手段をさらに有していることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の液体噴射装置において、前記停止する予定の位置が、前記対向する関係となる位置であると前記液体噴射装置が判断した場合、被液体噴射媒体の種類に応じて前記液体噴射装置が、前記対向する関係となる位置で前記キャリッジを停止させるか、前記対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させるかを決定する構成である液体噴射装置。
【請求項8】
キャリッジを被液体噴射媒体の幅方向へ移動させる移動工程と、
前記移動工程において、前記キャリッジに設けられた液体噴射ヘッドのノズルから液体を吐出して被液体噴射媒体に対して液体噴射する液体噴射工程と、
前記キャリッジの速度を減速させ、幅方向における一の方向への前記キャリッジの移動を停止させる減速停止工程と、
前記キャリッジが減速して停止する予定の位置が、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向する関係となる位置であるか否かを判断する判断工程と、
該判断工程において、前記停止する予定の位置が前記対向する関係となる位置であると判断した場合、前記ノズルと被液体噴射媒体の幅方向側端とが対向しない関係となる位置で前記キャリッジを停止させる停止位置変更工程と、を具備する液体噴射装置における液体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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