液体噴射装置
【課題】ワイパーブレードに付着している付着物の除去量を向上させることが可能な液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】複数のノズル開口32bを備えるノズル形成面32aを有する液体噴射ヘッド32と、ノズル形成面32aに付着している液体を払拭するためのワイピング手段61と、ワイピング手段61に当接して、当該ワイピング手段61でのノズル形成面32aの払拭時に付着した液体を除去するための除去部材40と、ノズル形成面32aの法線方向に沿う距離であってワイピング手段61と除去部材40との間の距離を調整し、ワイピング手段61の除去部材40に対する当接量を調整する調整手段70と、を備えている。
【解決手段】複数のノズル開口32bを備えるノズル形成面32aを有する液体噴射ヘッド32と、ノズル形成面32aに付着している液体を払拭するためのワイピング手段61と、ワイピング手段61に当接して、当該ワイピング手段61でのノズル形成面32aの払拭時に付着した液体を除去するための除去部材40と、ノズル形成面32aの法線方向に沿う距離であってワイピング手段61と除去部材40との間の距離を調整し、ワイピング手段61の除去部材40に対する当接量を調整する調整手段70と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式のプリンタには、印刷ヘッドのノズル形成面をワイパーブレードで払拭するように構成されている。ところで、ノズル形成面をワイパーブレードで払拭すると、当該ワイパーブレードには、ノズル形成面のノズル開口付近に残留しているインクなどの付着物が付着する。かかる付着物が付着したままの状態で、再びノズル形成面を払拭すると、当該ノズル形成面を汚してしまう。そのため、特許文献1では、ワイプ・クリーナー(突設部)を設け、このワイプ・クリーナーにワイパーブレードを当接させることで、付着物の除去を図っている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−251814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のワイプ・クリーナー(突設部)の下方への突出量は、ノズル形成面と同じか、またはノズル形成面よりも下方への突出量が少なく設けられている。なぜならば、ノズル形成面よりもワイプ・クリーナー(突設部)の下方への突出量を多くすると、記録紙とワイプ・クリーナ(突設部)とが擦れる等の問題が発生するためである。
【0005】
しかしながら、上述のように、ワイプ・クリーナー(突設部)の下方への突出量を、ノズル形成面と同じか、またはノズル形成面よりも少なくする場合、ワイプ・クリーナーにおける付着物の除去能力には限界が生じる。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、ワイパーブレードに付着している付着物の除去量を向上させることが可能な液体噴射装置を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の側面は、複数のノズル開口を備えるノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、ノズル形成面に付着している液体を払拭するためのワイピング手段と、ワイピング手段に当接して、当該ワイピング手段でのノズル形成面の払拭時に付着した液体を除去するための除去部材と、ノズル形成面の法線方向に沿う距離であってワイピング手段と除去部材との間の距離を調整し、ワイピング手段の除去部材に対する当接量を調整する調整手段と、を備えるものである。
【0008】
このように構成する場合、調整手段によって、ワイピング手段の除去部材に対する当接量が調整することで、ワイピング手段を適切な当接量で除去部材に当接させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段は、ワイピング手段の除去部材に対する当接量を、ワイピング手段がノズル形成面を払拭するときよりも増やすように調整することが好ましい。
【0010】
このように構成すると、調整手段により、ワイピング手段の除去部材に対する当接量が、ノズル形成面の払拭時よりも増やされるので、ワイピング手段に付着している液体は、除去部材によって良好に除去される。それにより、ワイピング手段に液体が残存するのを抑えることが可能となり、再度のワイピングによって、増粘した液体がノズル形成面に塗り広げられるのを防ぐことが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、除去部材は、液体噴射ヘッドと所定の隙間を有して配置されると共に、液体噴射ヘッドのノズル形成面までの突出量よりも除去部材の先端部までの突出量は同程度かまたは小さく設けられていることが好ましい。
【0012】
このように構成すると、除去部材は、液体噴射ヘッドと所定の隙間を有して配置されるため、ワイピング手段は、その隙間に入り、その後除去部材に当接する。このようにすると、ワイピング手段に付着している液体を、良好に拭き取ることが可能となる。また、液体噴射ヘッドのノズル形成面までの突出量よりも、除去部材の先端部までの突出量は同程度かまたは小さく設けられているため、除去部材が、液体を噴射させる対象物にぶつかることを防ぐことが可能となる。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段での調整によって、ワイピング手段における液体の付着領域よりも、ワイピング手段が除去部材に当接する領域が大きくなることが好ましい。
【0014】
このように構成すると、調整手段により、ワイピング手段の除去部材に当接する領域が、ワイピング手段における液体の付着領域よりも大きくなるので、ワイピング手段に液体を残存させることなく、除去部材で掻き取ることが可能となる。それにより、ノズル形成面に増粘した液体が塗り広げられるのを、一層確実に防ぐことが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段は、液体噴射ヘッドをノズル形成面の法線方向に沿って移動させるプラテンギャップ調整機構を有することが好ましい。
【0016】
このように構成すると、プラテンギャップ調整機構によって、ワイピング手段が除去部材に当接する当接量が調整される。そのため、既存のプラテンギャップ調整機構を用いて、ワイピング手段に付着している液体を、除去部材で良好に掻き取ることが可能となる。また、既存のプラテンギャップ調整機構を用いるため、新たな部材の追加によるコストの増加を防ぐことが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段は、ワイピング手段をノズル形成面の法線方向に沿って移動させるワイパ昇降機構を有することが好ましい。
【0018】
このように構成すると、ワイパ昇降機構によって、ワイピング手段が除去部材に当接する当接量が調整される。それにより、ワイピング手段に付着している液体を、除去部材で良好に掻き取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、液体噴射装置としてのプリンタ10について、図1から図5に基づいて説明する。
【0020】
<プリンタ10の概略構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る液体噴射装置としてのインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタと言う。)10の全体的な概略の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において、図1中矢印Fで示す向きを前方(前側)、その反対方向を後方(後側)とし、前方から後方を見て、左手側を左方(左側)、右手側を右方(右側)として説明を行う。
【0021】
図1に示すように、プリンタ10は、シャーシ20を有しており、このシャーシ20により、キャリッジ30がキャリッジ軸31を介して摺動自在に支持されている。このキャリッジ30には、液体噴射ヘッドとしての印刷ヘッド32が取り付けられている。その他、プリンタ10には、印刷ヘッド32のノズル形成面32aの封止を行うキャッピング機構50、印刷ヘッド32のノズル形成面32aの拭き取りを行うワイピング機構60等が配設されている。また、シャーシ20には、キャリッジ軸31に平行な状態で左右に掛け渡されるタイミングベルト33が備えられている。
【0022】
タイミングベルト33は、アイドルプーリ34と駆動プーリ35とに掛け渡され、駆動プーリ35がキャリッジモータ36により往復回転させられることで左右に往復回転する。キャリッジ30は、タイミングベルト33の一部に結合され、タイミングベルト33の左右方向への往復回転と共に左右方向に往復移動可能となっている。タイミングベルト33の下方には、紙送りモータ37により回転させられ、記録紙Pを搬送するための搬送ローラ38が配設されている。また、印刷ヘッド32の下方には、搬送ローラ38の回転により後方から前方に向かって搬送される記録紙Pの下側を支持するプラテン(図示省略)が配設されている。
【0023】
印刷ヘッド32の記録紙Pと対向する面であるノズル形成面32aには、インク(液体に対応)の噴射が行われるノズル開口32b(図4参照)が形成されている。そして、印刷ヘッド32はキャリッジ30と共に左右方向に往復移動しながら、プラテンにより後方から前方に向かって搬送される記録紙Pに対してインクを噴射し、図示外のパソコン等から送られる画像データ等に基づく所望の画像を記録紙Pに対して記録する。なお、印刷ヘッド32が記録紙Pに記録を行う際の印刷ヘッド32の左右方向への往復移動は、記録紙Pの左右幅よりも広く設けられている記録領域S1の範囲内で行われる。
【0024】
一方、記録処理を実行している間にノズル形成面32aがインク等で汚れたとき、あるいは、一定量の記録を行う毎に、印刷ヘッド32は、記録領域S1の右側に設定される非記録領域S2に移動させられる。非記録領域S2には、この非記録領域S2に移動した印刷ヘッド32の下方の位置にキャッピング機構50およびワイピング機構60が配設されている。そして、プリンタ10は、印刷ヘッド32が非記録領域S2に位置する状態において、キャッピング機構50および/またはワイピング機構60により、ノズル形成面32aのキャッピングおよび/またはワイピングが行われるように構成されている。
【0025】
また、非記録領域S2は、プリンタ10が記録処理を行わないときの印刷ヘッド32の待機位置ともなっている。キャッピング機構50は、プリンタ10の記録処理が行われていないときであって印刷ヘッド32が非記録領域S2に配置されているときに、ノズル形成面32a(図4参照)に残留するインクが乾かないように、キャップ部材51によりノズル形成面32aを覆うように構成されている。
【0026】
<突設部について>
図3に示すように、印刷ヘッド32に隣接して、除去部材に対応する突設部40が設けられている。この突設部40は、印刷ヘッド32のノズル形成面32aよりも下方に突出しないように設けられている。すなわち、突設部40の下端面40aは、ノズル形成面32aと同程度の高さ位置であるか、またはノズル形成面32aよりも上方に位置するように設けられている。
【0027】
また、突設部40は、印刷ヘッド32に対して、所定の隙間Sを有する状態で設けられている。この隙間Sは、後述するワイパーブレード61の上端側の幅寸法よりも広くなるように設けられている。すなわち、印刷ヘッド32と突設部40の間に、凹部形状の隙間Sが存在していて、ワイパーブレード61がこの隙間Sに入り込むように設けられている。そして、隙間Sに入り込んだワイパーブレード61は、突設部40のエッジ部40bによって、当該ワイパーブレード61に付着しているインク廃液が掻き取られるように構成されている。
【0028】
また、突設部40のうち、印刷ヘッド32から離間する側には、テーパ部40cが設けられている。このテーパ部40cは、印刷ヘッド32から離間するにつれて、上昇するように(すなわちテーパ部40cが薄くなるように)設けられている。そのため、エッジ部40bに当接した後のワイパーブレード61がテーパ部40cに沿って進行すると、当該ワイパーブレード61は、弾性変形している状態が緩やかに復元される。
【0029】
また、突設部40と対向する部位には、インク廃液吸収部材41が取り付けられている。このインク廃液吸収部材41は、突設部40に付着したインク廃液を吸い取るための部材である。そのため、インク廃液吸収部材41は、例えばスポンジ等といった、インク廃液の吸収性に優れた材質から構成されている。なお、インク廃液吸収部材41は、突設部40と突き合わされることにより、当該突設部40に付着しているインク廃液を吸収する。ここで、突設部40とインク廃液吸収部材41とは、例えばノズル形成面32aをキャップ部材51で封止するタイミングで、互いに突き合わされる。
【0030】
<キャッピング機構およびワイピング機構について>
続いて、本実施の形態における、キャッピング機構50およびワイピング機構60について、図2、図3等に基づいて説明する。
【0031】
キャッピング機構50は、キャップ部材51と、このキャップ部材51を上下に昇降させる昇降機構等を備えている。キャップ部材51は、図2、図3等に示すように、後述する封止壁51aを有している。
【0032】
ここで、キャップ部材51(封止壁51a)は、弾性を有するゴム等を材質として構成されている。また、封止壁51aで囲まれた内部には、凹部52が設けられている。この凹部52は、下方に向かうにつれて周方向長さが短くなる漏斗状に形成されていて、本実施の形態では漏斗部は平面形状が矩形を為す四角錐に形成されている。さらに、この凹部52の底部には通孔53が形成されていて、この通孔53に接続管54の一端が接続されている。接続管54は、例えば直線状に形成されていて、凹部52から離間する他端側に小径となる小径部54aを有している(図2参照)。そして、この小径部54aに、不図示の可撓性チューブの一端側が接続されている。
【0033】
続いて、ワイピング機構60について説明する。ワイピング機構60は、ワイパーブレード61(ワイピング手段に対応)と、このワイパーブレード61を上下に昇降させる昇降機構(図示省略)等を備えて構成されている。ワイパーブレード61は、ノズル形成面32aに付着しているインク廃液を掻き取るための部材である。このワイパーブレード61は、図2等に示すように、キャップ部材51と一体的な部材(クリーニングヘッドCH)に設けられている。ワイパーブレード61は、クリーニングヘッドCHに対する付け根の部分から先端側(上端側)に向かうにつれて、主走査方向に沿う幅寸法が小さくなるように形成されている。そのため、ワイパーブレード61の上端側は、ノズル形成面32aに当接した際に、弾性的に変形することを可能としている。
【0034】
ところで、このワイパーブレード61も、上述のキャップ部材51と同様の弾性を有するゴム等を材質として構成されている。また、図2に示すように、クリーニングヘッドCHには、ワイパーブレード61とキャップ部材51との間の部位に、インク受け凹部62が設けられている。インク受け凹部62は、ワイパーブレード61でノズル形成面32aを掻き取った際のインク廃液を受け止めるための部分である。なお、インク受け凹部62の底部には、排出孔63が形成されていて、インク受け凹部62に存在するインク廃液を排出可能としている。
【0035】
<ノズル形成面に関して>
続いて、ノズル形成面32aの詳細な構成について述べる。図4に示すように、ノズル形成面32aには、複数のノズル開口32bが所定ピッチで並んでノズル列32cを構成している。また、ノズル形成面32aには、このノズル列32cが所定の間隔を有して複数(色数に対応する組数分だけ)設けられている。また、ノズル形成面32aは、その周囲をヘッドカバー32dによって覆われている。ヘッドカバー32dは、その平面形状が枠形状に設けられている。また、図4に示すように、ヘッドカバー32dは、高さ方向における側壁にも所定の寸法だけ差し掛かるように設けられている。
【0036】
<プラテンギャップ機構について>
次に、プラテンギャップ調整機構(PG調整機構)70の詳細について、図5および図6に基づいて説明する。PG調整機構70は、調整手段に対応し、キャリッジ軸31の高さ位置を調整する機構である。このPG調整機構70は、図5他に示すように、キャリッジ軸31と、PGモータ71と、PGモータ71からの駆動力を伝達するPGギヤ輪列72と、PGカム73と、該PGカム73が押し付けられる固定ピン74と、該PGカム73の回動位置の検出のためのフラグ板75と、フラグ検出センサ77と、制御部100とを具備している。
【0037】
これらのうち、PGモータ71は、プラテンギャップ(PG)調整のための駆動力を与えるためのモータである。また、図5および図6に示すように、PGギヤ輪列72は、複数のギヤから構成されていて、PGカム73を回動させるためにPGモータ71の駆動力を減速して伝達する駆動伝達手段である。かかるPGギヤ輪列72のうち、最終段の出力歯車72aは、キャリッジ軸31に対して固定的に取り付けられている。また、キャリッジ軸31には、PGカム73も固定的に取り付けられている。
【0038】
また、図7に示すように、PGカム73は、回転中心に対する半径が、段階的に異なるように設けられているカム部材である。このPGカム73は、プラテンギャップ(PG)を設定可能な個数分設けられている。なお、本実施の形態では、PGカム73の半径は、例えば5つ等のように多段階となるように設けられている。かかる多段階の半径は段階的に変化するように設けられている。
【0039】
図4および図5等に示すように、PGカム73のうち、外周のカム面73aは、固定ピン74に押し付けられている。固定ピン74は、シャーシ20に固定的に設けられるフレーム21に固定的に設けられている。このため、PGカム73が回動すると、そのカム面73aの固定ピン74に対する当接により、キャリッジ軸31の高さ位置を変化させることを可能としている。ここで、フレーム21には、長孔21aが設けられている。長孔21aは、その長手方向が上下方向に向かうように設けられている。しかも、長孔21aの短手方向の幅は、キャリッジ軸31の挿通に必要な寸法のみを有している。このため、後述するPGカム73が回動されると、キャリッジ軸31は、長孔21aの内部を、その長手方向に沿って摺動する。
【0040】
また、図6に示すように、フラグ板75は、PGギヤ輪列72の中途部分のギヤ72bと同軸かつ同時に回転するように設けられている。フラグ板75は、円盤状部75a(基準部位に対応)の外周側に、突出方向に向かうフラグ76(検出子に対応)が複数設けられることにより、構成されている。このフラグ76は、光を透過させない遮光部分であり、後述するフラグ検出センサ77の検出領域Pを通過する際に、光を遮ることを可能としている。
【0041】
なお、図6に示すように、本実施の形態では、フラグ板75には、PGカム73の段階数に対応する枚数以上のフラグ76が設けられている。また、フラグ板75には、フラグ検出センサ77が近接する状態で配置されている。フラグ検出センサ77は、発光部77aと受光部77bとを有する光センサであり、全てのフラグ76がこの発光部77aと受光部77bとの間の検出領域Pを通過可能に設けられている。なお、受光部77bから出力される信号は、制御部100に入力されるように構成されている。それにより、PGカム73の回転ポジションが検出可能となっている。
【0042】
<制御部について>
続いて、制御部100について、図7に基づいて説明する。制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、PROM104、ASIC105、モータドライバ106等を具備していて、これらが例えばバス等の伝送路107を介して接続されている。また、制御部100には、フラグ検出センサ77を始めとする各種のセンサからの信号が入力される。かかるフラグ検出センサ77を始めとする各種センサ(図7に示すリニアセンサ、ロータリセンサ等を含む。)からの信号の入力に基づいて、PGモータ71、キャリッジモータ36、紙送りモータ37等の駆動が制御される。
【0043】
なお、ノズル形成面32aをワイパーブレード61で拭き取った後の、印刷ヘッド32の降下は、PGモータ71の駆動により為されるものの、かかる拭き取り後の降下は、例えば制御部100に実現されるタイマに基づいてシーケンシャルに行われても良いし、リニアセンサのカウントに基づいて、所定の位置に到達した時点で行われるように構成しても良い。
【0044】
<本実施の形態における作用>
以上のような構成を有するプリンタ10の作用について、以下に説明する。例えばノズル形成面32aをキャップ部材51で封止して、不図示のポンプ吸引等を行った後には、ノズル形成面32aにはインク廃液が付着する。この状態のまま、ノズル開口32bからインク滴を噴射させると、色むら等の原因となったり、水分の蒸発した(粘度の上昇した;増粘した)インク廃液が新たに噴射されるインク滴に混在してしまう等の問題が生じる。そのため、印刷ヘッド32を図8(A)に示す位置に待機させた後に、不図示のワイパー上昇機構を用いてワイパーブレード61を上昇させる。そして、キャリッジモータ36を駆動させて、印刷ヘッド32を図8(A)の矢示Aに示す向きに移動させる。
【0045】
すると、図8(B)に示すように、ノズル形成面32aは、ワイパーブレード61によって払拭されて、当該ノズル形成面32aに残存していたインク廃液は、ワイパーブレード61によって掻き取られる。しかしながら、図8(C)に示すように、掻き取られたインク廃液の一部は、ワイパーブレード61に付着してしまう。そこで、制御部100は、ノズル形成面32aをワイパーブレード61で掻き取った後に、PGモータ71を作動させて、印刷ヘッド32を所定だけ下降させる。
【0046】
ここで、ワイパーブレード61に対するインク廃液の付着が想定される領域をインク付着領域Rとすると、PGモータ71による下降量L2は、図9(A)に示すZ軸方向において、突設部40の下端面40aからインク付着領域Rの下端までの距離L1(図8(C)参照)よりも大きくなるように設定されている(L2>L1)。なお、下降量の一例としては、3.3mmとするものがある。下降量L2をこのように設定した後に、キャリッジモータ36を作動させて、印刷ヘッド32を更に矢示Aの向きに移動させると、突設部40のエッジ部40bは、インク付着領域Rの全域と摺動する。それにより、図9(B)に示すように、当該エッジ部40bによって、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液は、殆ど残らずに掻き取られる。
【0047】
なお、印刷ヘッド32が更に進行すると、ワイパーブレード61の上端部は、図9(C)に示すように、テーパ部40cに当接しながら、当該テーパ部40cを擦り動く。そのとき、ワイパーブレード61は、図9(B)に示すような極率の大きな弾性変形状態が徐々に解除され、最終的には弾性変形していない状態となる。
【0048】
<本発明の適用による効果>
上述のような構成のPG調整機構70を備えるプリンタ10によると、上述のようにワイパーブレード61の突設部40に対する当接量が調整されることで、ワイパーブレード61を適切な当接量で突設部40に当接させることが可能となる。
【0049】
また、ワイパーブレード61を突設部40に当接させるに際して、本実施の形態では、ワイパーブレード61の突設部40に対する当接量を、ワイパーブレード61がノズル形成面32aを払拭するときよりも増やすようにしている。そのため、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液は、突設部40によって良好に除去される。それにより、ワイパーブレード61にインク廃液が残存するのを抑えることが可能となり、再度のワイピングによって、増粘したインク廃液がノズル形成面32aに塗り広げられるのを防ぐことが可能となる。特に、顔料系インクを用いる場合、このようなインク廃液の増粘は顕著に見られるが、このような顔料系インクを用いる場合であっても、インク廃液を塗り広げてしまうのを確実に防げる。
【0050】
このように、増粘したインク廃液がノズル形成面32aに塗り広げられるのを防ぐことが可能となるので、増粘したインク廃液の付着を起因とする、ノズル開口32bの目詰まりを確実に防止することが可能となる。それにより、プリンタ10の製品寿命を延ばすことが可能となる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、突設部40は、印刷ヘッド32との間に所定の隙間Sを有する状態で配置されているので、ワイパーブレード61は、その隙間Sに入り、その後突設部40に当接する。このようにすると、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液を、エッジ部40bを利用して良好に拭き取ることが可能となる。また、印刷ヘッド32のノズル形成面32aまでの突出量と、突設部40の下端面40aまでの突出量とは、同程度かまたは突設部40の下端面40aまでの突出量が小さく設けられているため、突設部40が、インク滴を噴射させる対象物(記録紙P)にぶつかることを防ぐことが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、ワイパーブレード61の突設部40に当接する領域が、ワイパーブレード61におけるインク廃液の付着領域Rよりも大きくなるので、ワイパーブレード61にインク廃液を残存させることなく、突設部40で掻き取ることが可能となる。それにより、ノズル形成面32aに増粘したインク廃液が塗り広げられるのを、一層確実に防ぐことが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、PG調整機構70によって、ワイパーブレード61が突設部40に当接する当接量が調整される。そのため、既存のPG調整機構70を用いて、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液を、突設部40で良好に掻き取ることが可能となる。また、既存のPG調整機構70を用いるため、新たな部材の追加によるコストの増加を防ぐことが可能となる。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について、図10および図11に基づいて説明する。なお、この第2の実施の形態においては、上述の第1の実施の形態で述べたのと同様の構成については、その説明を省略すると共に、同一の符号を用いて説明する。
【0055】
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明したPG機構70は用いられていない。しかしながら、その代わりに、調整手段の一部を構成するワイパ昇降機構80が用いられている。なお、ワイパ昇降機構80と制御部100とによって、調整手段が構成される。
【0056】
図10に示すように、ワイパ昇降機構80は、ワイパーブレード81と、ワイパホルダ82と、クラッチ体83と、ガイド部材84と、伝達歯車85とを備えている。これらのうち、ワイパーブレード81は、ノズル形成面32aに付着しているインク廃液を掻き取るための部材である。このワイパーブレード81は、ゴム等の弾性変形可能な材質から形成されていると共に、先端側(上端側)に向かうにつれて、主走査方向に沿う幅寸法が小さくなるように形成されている。そのため、ワイパーブレード81の上端側は、ノズル形成面32aに当接した際に、弾性的に変形することを可能としている。
【0057】
また、ワイパホルダ82は、ワイパーブレード81と一体的に昇降するように設けられている。このワイパホルダ82の背面中央には、ガイドピン82aが突設されている。ガイドピン82aは、後述するカム溝833に嵌まり込む部分であり、その嵌まり込みによって、クラッチ体83の回転に伴ってワイパホルダ82およびワイパーブレード81が昇降する。
【0058】
図11に示すように、クラッチ体83は、円筒歯車831と円筒カム832とが、不図示のバネによって互いに面圧を及ぼすように、構成されている。そのため、円筒歯車831と円筒カム832とは、摩擦クラッチを構成していて、またトルクリミッタとしても機能する。それにより、円筒歯車831が不図示の駆動モータによって駆動される場合に、所定以上の負荷が加わると、円筒歯車831のみが回転し、円筒カム832は非回転となる。
【0059】
ここで、円筒カム832には、カム溝833が形成されている。カム溝833は、本実施の形態では、両端部833a,833bを有する弧状に設けられている。また、カム溝833に沿って進行するにつれて、クラッチ体83の回転中心からの距離が増大、または減少するように設けられている。このようなカム溝833へ上述のガイドピン82aが嵌り込むことにより、ワイパホルダ82およびワイパーブレード81は、不図示の駆動モータの駆動に伴って昇降する。
【0060】
なお、駆動モータは、上述の紙送りモータ37またはキャリッジモータ36等と兼用する構成を採用しても良く、別途独立の駆動モータを用いる構成を採用しても良い。この駆動モータは、伝達歯車85に駆動力を与えるが、当該伝達歯車85は、円筒歯車831と噛合している。それにより、クラッチ体83が回転駆動させられる。
【0061】
また、本実施の形態におけるキャップ部材(図示省略)は、ワイパーブレード81が昇降する関係上、上述の第1の実施の形態におけるキャップ部材51とは異なり、ワイパーブレード81と別個に設けられている。しかしながら、このキャップ部材の機能は、上述の第1の実施の形態におけるキャップ部材51と変わるところはない。
【0062】
<本実施の形態における作用>
以上のようなワイパ昇降機構80を備えるプリンタ10の作用について、以下に説明する。上述の第1の実施の形態で述べたように、ノズル形成面32aをワイパーブレード81で拭き取った後に、駆動モータを作動させて、ワイパーブレード81を上昇させる。このワイパーブレード81の上昇は、例えば制御部100に実現されるタイマに基づいてシーケンシャルに行われても良いし、リニアセンサのカウントに基づいて、所定の位置に到達した時点で行われるように構成しても良い。
【0063】
より詳細には、図10(A)に示すような円筒カム832の回転前の状態では、ガイドピン82aは、カム溝833の一端部833aに位置していて、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82は、最も下方に位置する状態となっている。この状態で駆動モータを駆動させると、その駆動は円筒歯車831に伝達され、円筒歯車831が回転する。すると、円筒歯車831と摩擦接触状態にある円筒カム832も、矢示Bの向き(図10(A)において時計回り)に回転させられる。従って、ガイドピン82aはカム溝833に沿って摺動することにより、図10(B)に示すような状態(このときが、ワイパーブレード81によってノズル形成面32aを拭き取る高さ位置)を経過し、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82は、上昇する。そして、最終的には、図10(C)に示すように、ガイドピン82aは、カム溝833の他端部833bに到達する。なお、図10(C)に示す状態は、ワイパーブレード81が突設部40を通過するときの高さ位置となっている。
【0064】
なお、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82の上昇量は、上述の図9(A)に示した、PGモータ71による下降量と同等となっている。すなわち、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82の上昇量は、突設部40の下端面40aからインク付着領域Rの下端までの距離よりも大きくなるように、より好ましくは上述のL2と同等となるように、設定されている。このような上昇量だけ上昇させた後に、キャリッジモータ36を作動させて、印刷ヘッド32を、図9(B)に示すように、更に矢示Aの向きに移動させると、突設部40のエッジ部40bは、インク付着領域Rの全域に対して摺動する。それにより、当該エッジ部40bによって、ワイパーブレード81に付着しているインク廃液は、殆ど残らずに掻き取られる。
【0065】
<本発明の適用による効果>
上述のような構成のワイパ昇降機構80を備えるプリンタ10によっても、上述の第1の実施の形態における、PG調整機構70を備えるプリンタ10と同様の効果を発揮可能となる。すなわち、ワイパーブレード81に付着しているインク廃液は、突設部40によって良好に除去され、増粘したインク廃液がノズル形成面32aに塗り広げられるのを防ぐことが可能となる。それにより、ノズル開口32bの目詰まりを確実に防止することが可能となり、プリンタ10の製品寿命を延ばすことが可能となる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、ワイパーブレード81を昇降させるワイパ昇降機構80が設けられている。そのため、キャリッジ30等を上下させるよりも相対的に小さな駆動力で、ワイパーブレード81を昇降させることが可能となり、出力の小さな駆動モータを用いることが可能となる。
【0067】
<変形例>
以上、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態について述べたが、本発明は、これら以外にも、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
【0068】
上述の各実施の形態においては、特に図2、図3等においては、キャップ部材51は、ノズル形成面32aに対して1つのみ存在する構成について説明している。しかしながら、キャップ部材51は、2つ以上存在していても良い。例えば、黒色のノズル列を封止するためのキャップ部材と、それ以外の色のノズル列を封止するためのキャップ部材とが別々に設けられていても良い。
【0069】
また、上述の各実施の形態では、主走査方向に操作する、印刷ヘッド32を用いる場合について説明している。しかしながら、本発明は、主走査方向に走査しない、長尺状のラインヘッドに適用しても良い。なお、ラインヘッドに本発明を適用する場合には、当該長尺状のヘッドに対応させて、キャップ部材も長尺状となる。また、ワイパーブレードも必要に応じて長尺状としても良い。また、ラインヘッドを用いる場合、ワイパーブレードが走査する方式を採用しても良い。
【0070】
また、上述の各実施の形態では、ワイパーブレード61,81は、1つのみ設ける場合について説明している。しかしながら、ワイパーブレード61,81は1つには限られず、2つ以上用いる構成を採用しても良い。
【0071】
また、上述の各実施の形態では、除去部材として、突設部40を用いる場合について説明している。しかしながら、除去部材40は、突設部40には限られない。例えば、ワイパーブレード61,81のうち、インク廃液の付着領域Rを押し付けられる部位があれば、突設部40のように下方に突出している構成を採用しなくても良い。
【0072】
また、上述の各実施の形態における液体噴射装置としてのプリンタ10は、プリンタ単独の機能を有する構成のみならず、スキャナ装置やコピー装置のような、複合的な機器の一部であっても良い。さらに、上述の実施の形態においては、インクジェット方式のプリンタ10に関して説明している。しかしながら、プリンタ10としては、液体を噴射可能なものであれば、インクジェット方式のプリンタには限られない。例えば、ジェルジェット方式のプリンタ、トナー方式のプリンタ、ドットインパクト方式のプリンタ等、種々のプリンタに対して、本発明を適用することが可能である。
【0073】
また、上述の実施の形態では、液体噴射装置を、インクジェット式のプリンタ10に具体化しているが、インク以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
【0074】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプリンタの構成を示す斜視図である。
【図2】クリーニングヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】クリーニングヘッドと印刷ヘッドとの位置関係を示す側面図である。
【図4】印刷ヘッドを下方から見た状態を示す斜視図である。
【図5】PG調整機構の構成を示す概略斜視図である。
【図6】PG調整機構のうち、駆動力の伝達経路を示す分解斜視図である。
【図7】制御部を中心とした概略構成を示す図である。
【図8】印刷ヘッド、突設部とワイパーブレードの位置関係を示す図である。
【図9】ワイパーブレードが突設部に衝突して変形する様子を示す図である。
【図10】ワイパ昇降機構の概略を示す正面図である。
【図11】クラッチ体と伝達歯車の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
10…プリンタ、20…シャーシ、30…キャリッジ、32…印刷ヘッド(液体噴射ヘッドに対応)、32a…ノズル形成面、50…キャッピング機構、51…キャップ部材(回復手段に対応)、52…凹部、60…ワイピング機構、61…ワイパーブレード(ワイピング手段に対応)、70…PG調整機構(調整手段に対応)、77…フラグ検出センサ、80…ワイパ昇降機構(調整手段の一部に対応)、81…ワイパーブレード(ワイピング手段に対応)、82a…ガイドピン、83…クラッチ体、833…カム溝、100…制御部(調整手段の一部に対応)、CH…クリーニングヘッド、P…記録紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式のプリンタには、印刷ヘッドのノズル形成面をワイパーブレードで払拭するように構成されている。ところで、ノズル形成面をワイパーブレードで払拭すると、当該ワイパーブレードには、ノズル形成面のノズル開口付近に残留しているインクなどの付着物が付着する。かかる付着物が付着したままの状態で、再びノズル形成面を払拭すると、当該ノズル形成面を汚してしまう。そのため、特許文献1では、ワイプ・クリーナー(突設部)を設け、このワイプ・クリーナーにワイパーブレードを当接させることで、付着物の除去を図っている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−251814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のワイプ・クリーナー(突設部)の下方への突出量は、ノズル形成面と同じか、またはノズル形成面よりも下方への突出量が少なく設けられている。なぜならば、ノズル形成面よりもワイプ・クリーナー(突設部)の下方への突出量を多くすると、記録紙とワイプ・クリーナ(突設部)とが擦れる等の問題が発生するためである。
【0005】
しかしながら、上述のように、ワイプ・クリーナー(突設部)の下方への突出量を、ノズル形成面と同じか、またはノズル形成面よりも少なくする場合、ワイプ・クリーナーにおける付着物の除去能力には限界が生じる。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、ワイパーブレードに付着している付着物の除去量を向上させることが可能な液体噴射装置を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の側面は、複数のノズル開口を備えるノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、ノズル形成面に付着している液体を払拭するためのワイピング手段と、ワイピング手段に当接して、当該ワイピング手段でのノズル形成面の払拭時に付着した液体を除去するための除去部材と、ノズル形成面の法線方向に沿う距離であってワイピング手段と除去部材との間の距離を調整し、ワイピング手段の除去部材に対する当接量を調整する調整手段と、を備えるものである。
【0008】
このように構成する場合、調整手段によって、ワイピング手段の除去部材に対する当接量が調整することで、ワイピング手段を適切な当接量で除去部材に当接させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段は、ワイピング手段の除去部材に対する当接量を、ワイピング手段がノズル形成面を払拭するときよりも増やすように調整することが好ましい。
【0010】
このように構成すると、調整手段により、ワイピング手段の除去部材に対する当接量が、ノズル形成面の払拭時よりも増やされるので、ワイピング手段に付着している液体は、除去部材によって良好に除去される。それにより、ワイピング手段に液体が残存するのを抑えることが可能となり、再度のワイピングによって、増粘した液体がノズル形成面に塗り広げられるのを防ぐことが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、除去部材は、液体噴射ヘッドと所定の隙間を有して配置されると共に、液体噴射ヘッドのノズル形成面までの突出量よりも除去部材の先端部までの突出量は同程度かまたは小さく設けられていることが好ましい。
【0012】
このように構成すると、除去部材は、液体噴射ヘッドと所定の隙間を有して配置されるため、ワイピング手段は、その隙間に入り、その後除去部材に当接する。このようにすると、ワイピング手段に付着している液体を、良好に拭き取ることが可能となる。また、液体噴射ヘッドのノズル形成面までの突出量よりも、除去部材の先端部までの突出量は同程度かまたは小さく設けられているため、除去部材が、液体を噴射させる対象物にぶつかることを防ぐことが可能となる。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段での調整によって、ワイピング手段における液体の付着領域よりも、ワイピング手段が除去部材に当接する領域が大きくなることが好ましい。
【0014】
このように構成すると、調整手段により、ワイピング手段の除去部材に当接する領域が、ワイピング手段における液体の付着領域よりも大きくなるので、ワイピング手段に液体を残存させることなく、除去部材で掻き取ることが可能となる。それにより、ノズル形成面に増粘した液体が塗り広げられるのを、一層確実に防ぐことが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段は、液体噴射ヘッドをノズル形成面の法線方向に沿って移動させるプラテンギャップ調整機構を有することが好ましい。
【0016】
このように構成すると、プラテンギャップ調整機構によって、ワイピング手段が除去部材に当接する当接量が調整される。そのため、既存のプラテンギャップ調整機構を用いて、ワイピング手段に付着している液体を、除去部材で良好に掻き取ることが可能となる。また、既存のプラテンギャップ調整機構を用いるため、新たな部材の追加によるコストの増加を防ぐことが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、調整手段は、ワイピング手段をノズル形成面の法線方向に沿って移動させるワイパ昇降機構を有することが好ましい。
【0018】
このように構成すると、ワイパ昇降機構によって、ワイピング手段が除去部材に当接する当接量が調整される。それにより、ワイピング手段に付着している液体を、除去部材で良好に掻き取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、液体噴射装置としてのプリンタ10について、図1から図5に基づいて説明する。
【0020】
<プリンタ10の概略構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る液体噴射装置としてのインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタと言う。)10の全体的な概略の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において、図1中矢印Fで示す向きを前方(前側)、その反対方向を後方(後側)とし、前方から後方を見て、左手側を左方(左側)、右手側を右方(右側)として説明を行う。
【0021】
図1に示すように、プリンタ10は、シャーシ20を有しており、このシャーシ20により、キャリッジ30がキャリッジ軸31を介して摺動自在に支持されている。このキャリッジ30には、液体噴射ヘッドとしての印刷ヘッド32が取り付けられている。その他、プリンタ10には、印刷ヘッド32のノズル形成面32aの封止を行うキャッピング機構50、印刷ヘッド32のノズル形成面32aの拭き取りを行うワイピング機構60等が配設されている。また、シャーシ20には、キャリッジ軸31に平行な状態で左右に掛け渡されるタイミングベルト33が備えられている。
【0022】
タイミングベルト33は、アイドルプーリ34と駆動プーリ35とに掛け渡され、駆動プーリ35がキャリッジモータ36により往復回転させられることで左右に往復回転する。キャリッジ30は、タイミングベルト33の一部に結合され、タイミングベルト33の左右方向への往復回転と共に左右方向に往復移動可能となっている。タイミングベルト33の下方には、紙送りモータ37により回転させられ、記録紙Pを搬送するための搬送ローラ38が配設されている。また、印刷ヘッド32の下方には、搬送ローラ38の回転により後方から前方に向かって搬送される記録紙Pの下側を支持するプラテン(図示省略)が配設されている。
【0023】
印刷ヘッド32の記録紙Pと対向する面であるノズル形成面32aには、インク(液体に対応)の噴射が行われるノズル開口32b(図4参照)が形成されている。そして、印刷ヘッド32はキャリッジ30と共に左右方向に往復移動しながら、プラテンにより後方から前方に向かって搬送される記録紙Pに対してインクを噴射し、図示外のパソコン等から送られる画像データ等に基づく所望の画像を記録紙Pに対して記録する。なお、印刷ヘッド32が記録紙Pに記録を行う際の印刷ヘッド32の左右方向への往復移動は、記録紙Pの左右幅よりも広く設けられている記録領域S1の範囲内で行われる。
【0024】
一方、記録処理を実行している間にノズル形成面32aがインク等で汚れたとき、あるいは、一定量の記録を行う毎に、印刷ヘッド32は、記録領域S1の右側に設定される非記録領域S2に移動させられる。非記録領域S2には、この非記録領域S2に移動した印刷ヘッド32の下方の位置にキャッピング機構50およびワイピング機構60が配設されている。そして、プリンタ10は、印刷ヘッド32が非記録領域S2に位置する状態において、キャッピング機構50および/またはワイピング機構60により、ノズル形成面32aのキャッピングおよび/またはワイピングが行われるように構成されている。
【0025】
また、非記録領域S2は、プリンタ10が記録処理を行わないときの印刷ヘッド32の待機位置ともなっている。キャッピング機構50は、プリンタ10の記録処理が行われていないときであって印刷ヘッド32が非記録領域S2に配置されているときに、ノズル形成面32a(図4参照)に残留するインクが乾かないように、キャップ部材51によりノズル形成面32aを覆うように構成されている。
【0026】
<突設部について>
図3に示すように、印刷ヘッド32に隣接して、除去部材に対応する突設部40が設けられている。この突設部40は、印刷ヘッド32のノズル形成面32aよりも下方に突出しないように設けられている。すなわち、突設部40の下端面40aは、ノズル形成面32aと同程度の高さ位置であるか、またはノズル形成面32aよりも上方に位置するように設けられている。
【0027】
また、突設部40は、印刷ヘッド32に対して、所定の隙間Sを有する状態で設けられている。この隙間Sは、後述するワイパーブレード61の上端側の幅寸法よりも広くなるように設けられている。すなわち、印刷ヘッド32と突設部40の間に、凹部形状の隙間Sが存在していて、ワイパーブレード61がこの隙間Sに入り込むように設けられている。そして、隙間Sに入り込んだワイパーブレード61は、突設部40のエッジ部40bによって、当該ワイパーブレード61に付着しているインク廃液が掻き取られるように構成されている。
【0028】
また、突設部40のうち、印刷ヘッド32から離間する側には、テーパ部40cが設けられている。このテーパ部40cは、印刷ヘッド32から離間するにつれて、上昇するように(すなわちテーパ部40cが薄くなるように)設けられている。そのため、エッジ部40bに当接した後のワイパーブレード61がテーパ部40cに沿って進行すると、当該ワイパーブレード61は、弾性変形している状態が緩やかに復元される。
【0029】
また、突設部40と対向する部位には、インク廃液吸収部材41が取り付けられている。このインク廃液吸収部材41は、突設部40に付着したインク廃液を吸い取るための部材である。そのため、インク廃液吸収部材41は、例えばスポンジ等といった、インク廃液の吸収性に優れた材質から構成されている。なお、インク廃液吸収部材41は、突設部40と突き合わされることにより、当該突設部40に付着しているインク廃液を吸収する。ここで、突設部40とインク廃液吸収部材41とは、例えばノズル形成面32aをキャップ部材51で封止するタイミングで、互いに突き合わされる。
【0030】
<キャッピング機構およびワイピング機構について>
続いて、本実施の形態における、キャッピング機構50およびワイピング機構60について、図2、図3等に基づいて説明する。
【0031】
キャッピング機構50は、キャップ部材51と、このキャップ部材51を上下に昇降させる昇降機構等を備えている。キャップ部材51は、図2、図3等に示すように、後述する封止壁51aを有している。
【0032】
ここで、キャップ部材51(封止壁51a)は、弾性を有するゴム等を材質として構成されている。また、封止壁51aで囲まれた内部には、凹部52が設けられている。この凹部52は、下方に向かうにつれて周方向長さが短くなる漏斗状に形成されていて、本実施の形態では漏斗部は平面形状が矩形を為す四角錐に形成されている。さらに、この凹部52の底部には通孔53が形成されていて、この通孔53に接続管54の一端が接続されている。接続管54は、例えば直線状に形成されていて、凹部52から離間する他端側に小径となる小径部54aを有している(図2参照)。そして、この小径部54aに、不図示の可撓性チューブの一端側が接続されている。
【0033】
続いて、ワイピング機構60について説明する。ワイピング機構60は、ワイパーブレード61(ワイピング手段に対応)と、このワイパーブレード61を上下に昇降させる昇降機構(図示省略)等を備えて構成されている。ワイパーブレード61は、ノズル形成面32aに付着しているインク廃液を掻き取るための部材である。このワイパーブレード61は、図2等に示すように、キャップ部材51と一体的な部材(クリーニングヘッドCH)に設けられている。ワイパーブレード61は、クリーニングヘッドCHに対する付け根の部分から先端側(上端側)に向かうにつれて、主走査方向に沿う幅寸法が小さくなるように形成されている。そのため、ワイパーブレード61の上端側は、ノズル形成面32aに当接した際に、弾性的に変形することを可能としている。
【0034】
ところで、このワイパーブレード61も、上述のキャップ部材51と同様の弾性を有するゴム等を材質として構成されている。また、図2に示すように、クリーニングヘッドCHには、ワイパーブレード61とキャップ部材51との間の部位に、インク受け凹部62が設けられている。インク受け凹部62は、ワイパーブレード61でノズル形成面32aを掻き取った際のインク廃液を受け止めるための部分である。なお、インク受け凹部62の底部には、排出孔63が形成されていて、インク受け凹部62に存在するインク廃液を排出可能としている。
【0035】
<ノズル形成面に関して>
続いて、ノズル形成面32aの詳細な構成について述べる。図4に示すように、ノズル形成面32aには、複数のノズル開口32bが所定ピッチで並んでノズル列32cを構成している。また、ノズル形成面32aには、このノズル列32cが所定の間隔を有して複数(色数に対応する組数分だけ)設けられている。また、ノズル形成面32aは、その周囲をヘッドカバー32dによって覆われている。ヘッドカバー32dは、その平面形状が枠形状に設けられている。また、図4に示すように、ヘッドカバー32dは、高さ方向における側壁にも所定の寸法だけ差し掛かるように設けられている。
【0036】
<プラテンギャップ機構について>
次に、プラテンギャップ調整機構(PG調整機構)70の詳細について、図5および図6に基づいて説明する。PG調整機構70は、調整手段に対応し、キャリッジ軸31の高さ位置を調整する機構である。このPG調整機構70は、図5他に示すように、キャリッジ軸31と、PGモータ71と、PGモータ71からの駆動力を伝達するPGギヤ輪列72と、PGカム73と、該PGカム73が押し付けられる固定ピン74と、該PGカム73の回動位置の検出のためのフラグ板75と、フラグ検出センサ77と、制御部100とを具備している。
【0037】
これらのうち、PGモータ71は、プラテンギャップ(PG)調整のための駆動力を与えるためのモータである。また、図5および図6に示すように、PGギヤ輪列72は、複数のギヤから構成されていて、PGカム73を回動させるためにPGモータ71の駆動力を減速して伝達する駆動伝達手段である。かかるPGギヤ輪列72のうち、最終段の出力歯車72aは、キャリッジ軸31に対して固定的に取り付けられている。また、キャリッジ軸31には、PGカム73も固定的に取り付けられている。
【0038】
また、図7に示すように、PGカム73は、回転中心に対する半径が、段階的に異なるように設けられているカム部材である。このPGカム73は、プラテンギャップ(PG)を設定可能な個数分設けられている。なお、本実施の形態では、PGカム73の半径は、例えば5つ等のように多段階となるように設けられている。かかる多段階の半径は段階的に変化するように設けられている。
【0039】
図4および図5等に示すように、PGカム73のうち、外周のカム面73aは、固定ピン74に押し付けられている。固定ピン74は、シャーシ20に固定的に設けられるフレーム21に固定的に設けられている。このため、PGカム73が回動すると、そのカム面73aの固定ピン74に対する当接により、キャリッジ軸31の高さ位置を変化させることを可能としている。ここで、フレーム21には、長孔21aが設けられている。長孔21aは、その長手方向が上下方向に向かうように設けられている。しかも、長孔21aの短手方向の幅は、キャリッジ軸31の挿通に必要な寸法のみを有している。このため、後述するPGカム73が回動されると、キャリッジ軸31は、長孔21aの内部を、その長手方向に沿って摺動する。
【0040】
また、図6に示すように、フラグ板75は、PGギヤ輪列72の中途部分のギヤ72bと同軸かつ同時に回転するように設けられている。フラグ板75は、円盤状部75a(基準部位に対応)の外周側に、突出方向に向かうフラグ76(検出子に対応)が複数設けられることにより、構成されている。このフラグ76は、光を透過させない遮光部分であり、後述するフラグ検出センサ77の検出領域Pを通過する際に、光を遮ることを可能としている。
【0041】
なお、図6に示すように、本実施の形態では、フラグ板75には、PGカム73の段階数に対応する枚数以上のフラグ76が設けられている。また、フラグ板75には、フラグ検出センサ77が近接する状態で配置されている。フラグ検出センサ77は、発光部77aと受光部77bとを有する光センサであり、全てのフラグ76がこの発光部77aと受光部77bとの間の検出領域Pを通過可能に設けられている。なお、受光部77bから出力される信号は、制御部100に入力されるように構成されている。それにより、PGカム73の回転ポジションが検出可能となっている。
【0042】
<制御部について>
続いて、制御部100について、図7に基づいて説明する。制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、PROM104、ASIC105、モータドライバ106等を具備していて、これらが例えばバス等の伝送路107を介して接続されている。また、制御部100には、フラグ検出センサ77を始めとする各種のセンサからの信号が入力される。かかるフラグ検出センサ77を始めとする各種センサ(図7に示すリニアセンサ、ロータリセンサ等を含む。)からの信号の入力に基づいて、PGモータ71、キャリッジモータ36、紙送りモータ37等の駆動が制御される。
【0043】
なお、ノズル形成面32aをワイパーブレード61で拭き取った後の、印刷ヘッド32の降下は、PGモータ71の駆動により為されるものの、かかる拭き取り後の降下は、例えば制御部100に実現されるタイマに基づいてシーケンシャルに行われても良いし、リニアセンサのカウントに基づいて、所定の位置に到達した時点で行われるように構成しても良い。
【0044】
<本実施の形態における作用>
以上のような構成を有するプリンタ10の作用について、以下に説明する。例えばノズル形成面32aをキャップ部材51で封止して、不図示のポンプ吸引等を行った後には、ノズル形成面32aにはインク廃液が付着する。この状態のまま、ノズル開口32bからインク滴を噴射させると、色むら等の原因となったり、水分の蒸発した(粘度の上昇した;増粘した)インク廃液が新たに噴射されるインク滴に混在してしまう等の問題が生じる。そのため、印刷ヘッド32を図8(A)に示す位置に待機させた後に、不図示のワイパー上昇機構を用いてワイパーブレード61を上昇させる。そして、キャリッジモータ36を駆動させて、印刷ヘッド32を図8(A)の矢示Aに示す向きに移動させる。
【0045】
すると、図8(B)に示すように、ノズル形成面32aは、ワイパーブレード61によって払拭されて、当該ノズル形成面32aに残存していたインク廃液は、ワイパーブレード61によって掻き取られる。しかしながら、図8(C)に示すように、掻き取られたインク廃液の一部は、ワイパーブレード61に付着してしまう。そこで、制御部100は、ノズル形成面32aをワイパーブレード61で掻き取った後に、PGモータ71を作動させて、印刷ヘッド32を所定だけ下降させる。
【0046】
ここで、ワイパーブレード61に対するインク廃液の付着が想定される領域をインク付着領域Rとすると、PGモータ71による下降量L2は、図9(A)に示すZ軸方向において、突設部40の下端面40aからインク付着領域Rの下端までの距離L1(図8(C)参照)よりも大きくなるように設定されている(L2>L1)。なお、下降量の一例としては、3.3mmとするものがある。下降量L2をこのように設定した後に、キャリッジモータ36を作動させて、印刷ヘッド32を更に矢示Aの向きに移動させると、突設部40のエッジ部40bは、インク付着領域Rの全域と摺動する。それにより、図9(B)に示すように、当該エッジ部40bによって、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液は、殆ど残らずに掻き取られる。
【0047】
なお、印刷ヘッド32が更に進行すると、ワイパーブレード61の上端部は、図9(C)に示すように、テーパ部40cに当接しながら、当該テーパ部40cを擦り動く。そのとき、ワイパーブレード61は、図9(B)に示すような極率の大きな弾性変形状態が徐々に解除され、最終的には弾性変形していない状態となる。
【0048】
<本発明の適用による効果>
上述のような構成のPG調整機構70を備えるプリンタ10によると、上述のようにワイパーブレード61の突設部40に対する当接量が調整されることで、ワイパーブレード61を適切な当接量で突設部40に当接させることが可能となる。
【0049】
また、ワイパーブレード61を突設部40に当接させるに際して、本実施の形態では、ワイパーブレード61の突設部40に対する当接量を、ワイパーブレード61がノズル形成面32aを払拭するときよりも増やすようにしている。そのため、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液は、突設部40によって良好に除去される。それにより、ワイパーブレード61にインク廃液が残存するのを抑えることが可能となり、再度のワイピングによって、増粘したインク廃液がノズル形成面32aに塗り広げられるのを防ぐことが可能となる。特に、顔料系インクを用いる場合、このようなインク廃液の増粘は顕著に見られるが、このような顔料系インクを用いる場合であっても、インク廃液を塗り広げてしまうのを確実に防げる。
【0050】
このように、増粘したインク廃液がノズル形成面32aに塗り広げられるのを防ぐことが可能となるので、増粘したインク廃液の付着を起因とする、ノズル開口32bの目詰まりを確実に防止することが可能となる。それにより、プリンタ10の製品寿命を延ばすことが可能となる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、突設部40は、印刷ヘッド32との間に所定の隙間Sを有する状態で配置されているので、ワイパーブレード61は、その隙間Sに入り、その後突設部40に当接する。このようにすると、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液を、エッジ部40bを利用して良好に拭き取ることが可能となる。また、印刷ヘッド32のノズル形成面32aまでの突出量と、突設部40の下端面40aまでの突出量とは、同程度かまたは突設部40の下端面40aまでの突出量が小さく設けられているため、突設部40が、インク滴を噴射させる対象物(記録紙P)にぶつかることを防ぐことが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、ワイパーブレード61の突設部40に当接する領域が、ワイパーブレード61におけるインク廃液の付着領域Rよりも大きくなるので、ワイパーブレード61にインク廃液を残存させることなく、突設部40で掻き取ることが可能となる。それにより、ノズル形成面32aに増粘したインク廃液が塗り広げられるのを、一層確実に防ぐことが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、PG調整機構70によって、ワイパーブレード61が突設部40に当接する当接量が調整される。そのため、既存のPG調整機構70を用いて、ワイパーブレード61に付着しているインク廃液を、突設部40で良好に掻き取ることが可能となる。また、既存のPG調整機構70を用いるため、新たな部材の追加によるコストの増加を防ぐことが可能となる。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について、図10および図11に基づいて説明する。なお、この第2の実施の形態においては、上述の第1の実施の形態で述べたのと同様の構成については、その説明を省略すると共に、同一の符号を用いて説明する。
【0055】
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明したPG機構70は用いられていない。しかしながら、その代わりに、調整手段の一部を構成するワイパ昇降機構80が用いられている。なお、ワイパ昇降機構80と制御部100とによって、調整手段が構成される。
【0056】
図10に示すように、ワイパ昇降機構80は、ワイパーブレード81と、ワイパホルダ82と、クラッチ体83と、ガイド部材84と、伝達歯車85とを備えている。これらのうち、ワイパーブレード81は、ノズル形成面32aに付着しているインク廃液を掻き取るための部材である。このワイパーブレード81は、ゴム等の弾性変形可能な材質から形成されていると共に、先端側(上端側)に向かうにつれて、主走査方向に沿う幅寸法が小さくなるように形成されている。そのため、ワイパーブレード81の上端側は、ノズル形成面32aに当接した際に、弾性的に変形することを可能としている。
【0057】
また、ワイパホルダ82は、ワイパーブレード81と一体的に昇降するように設けられている。このワイパホルダ82の背面中央には、ガイドピン82aが突設されている。ガイドピン82aは、後述するカム溝833に嵌まり込む部分であり、その嵌まり込みによって、クラッチ体83の回転に伴ってワイパホルダ82およびワイパーブレード81が昇降する。
【0058】
図11に示すように、クラッチ体83は、円筒歯車831と円筒カム832とが、不図示のバネによって互いに面圧を及ぼすように、構成されている。そのため、円筒歯車831と円筒カム832とは、摩擦クラッチを構成していて、またトルクリミッタとしても機能する。それにより、円筒歯車831が不図示の駆動モータによって駆動される場合に、所定以上の負荷が加わると、円筒歯車831のみが回転し、円筒カム832は非回転となる。
【0059】
ここで、円筒カム832には、カム溝833が形成されている。カム溝833は、本実施の形態では、両端部833a,833bを有する弧状に設けられている。また、カム溝833に沿って進行するにつれて、クラッチ体83の回転中心からの距離が増大、または減少するように設けられている。このようなカム溝833へ上述のガイドピン82aが嵌り込むことにより、ワイパホルダ82およびワイパーブレード81は、不図示の駆動モータの駆動に伴って昇降する。
【0060】
なお、駆動モータは、上述の紙送りモータ37またはキャリッジモータ36等と兼用する構成を採用しても良く、別途独立の駆動モータを用いる構成を採用しても良い。この駆動モータは、伝達歯車85に駆動力を与えるが、当該伝達歯車85は、円筒歯車831と噛合している。それにより、クラッチ体83が回転駆動させられる。
【0061】
また、本実施の形態におけるキャップ部材(図示省略)は、ワイパーブレード81が昇降する関係上、上述の第1の実施の形態におけるキャップ部材51とは異なり、ワイパーブレード81と別個に設けられている。しかしながら、このキャップ部材の機能は、上述の第1の実施の形態におけるキャップ部材51と変わるところはない。
【0062】
<本実施の形態における作用>
以上のようなワイパ昇降機構80を備えるプリンタ10の作用について、以下に説明する。上述の第1の実施の形態で述べたように、ノズル形成面32aをワイパーブレード81で拭き取った後に、駆動モータを作動させて、ワイパーブレード81を上昇させる。このワイパーブレード81の上昇は、例えば制御部100に実現されるタイマに基づいてシーケンシャルに行われても良いし、リニアセンサのカウントに基づいて、所定の位置に到達した時点で行われるように構成しても良い。
【0063】
より詳細には、図10(A)に示すような円筒カム832の回転前の状態では、ガイドピン82aは、カム溝833の一端部833aに位置していて、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82は、最も下方に位置する状態となっている。この状態で駆動モータを駆動させると、その駆動は円筒歯車831に伝達され、円筒歯車831が回転する。すると、円筒歯車831と摩擦接触状態にある円筒カム832も、矢示Bの向き(図10(A)において時計回り)に回転させられる。従って、ガイドピン82aはカム溝833に沿って摺動することにより、図10(B)に示すような状態(このときが、ワイパーブレード81によってノズル形成面32aを拭き取る高さ位置)を経過し、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82は、上昇する。そして、最終的には、図10(C)に示すように、ガイドピン82aは、カム溝833の他端部833bに到達する。なお、図10(C)に示す状態は、ワイパーブレード81が突設部40を通過するときの高さ位置となっている。
【0064】
なお、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82の上昇量は、上述の図9(A)に示した、PGモータ71による下降量と同等となっている。すなわち、ワイパーブレード81およびワイパホルダ82の上昇量は、突設部40の下端面40aからインク付着領域Rの下端までの距離よりも大きくなるように、より好ましくは上述のL2と同等となるように、設定されている。このような上昇量だけ上昇させた後に、キャリッジモータ36を作動させて、印刷ヘッド32を、図9(B)に示すように、更に矢示Aの向きに移動させると、突設部40のエッジ部40bは、インク付着領域Rの全域に対して摺動する。それにより、当該エッジ部40bによって、ワイパーブレード81に付着しているインク廃液は、殆ど残らずに掻き取られる。
【0065】
<本発明の適用による効果>
上述のような構成のワイパ昇降機構80を備えるプリンタ10によっても、上述の第1の実施の形態における、PG調整機構70を備えるプリンタ10と同様の効果を発揮可能となる。すなわち、ワイパーブレード81に付着しているインク廃液は、突設部40によって良好に除去され、増粘したインク廃液がノズル形成面32aに塗り広げられるのを防ぐことが可能となる。それにより、ノズル開口32bの目詰まりを確実に防止することが可能となり、プリンタ10の製品寿命を延ばすことが可能となる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、ワイパーブレード81を昇降させるワイパ昇降機構80が設けられている。そのため、キャリッジ30等を上下させるよりも相対的に小さな駆動力で、ワイパーブレード81を昇降させることが可能となり、出力の小さな駆動モータを用いることが可能となる。
【0067】
<変形例>
以上、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態について述べたが、本発明は、これら以外にも、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
【0068】
上述の各実施の形態においては、特に図2、図3等においては、キャップ部材51は、ノズル形成面32aに対して1つのみ存在する構成について説明している。しかしながら、キャップ部材51は、2つ以上存在していても良い。例えば、黒色のノズル列を封止するためのキャップ部材と、それ以外の色のノズル列を封止するためのキャップ部材とが別々に設けられていても良い。
【0069】
また、上述の各実施の形態では、主走査方向に操作する、印刷ヘッド32を用いる場合について説明している。しかしながら、本発明は、主走査方向に走査しない、長尺状のラインヘッドに適用しても良い。なお、ラインヘッドに本発明を適用する場合には、当該長尺状のヘッドに対応させて、キャップ部材も長尺状となる。また、ワイパーブレードも必要に応じて長尺状としても良い。また、ラインヘッドを用いる場合、ワイパーブレードが走査する方式を採用しても良い。
【0070】
また、上述の各実施の形態では、ワイパーブレード61,81は、1つのみ設ける場合について説明している。しかしながら、ワイパーブレード61,81は1つには限られず、2つ以上用いる構成を採用しても良い。
【0071】
また、上述の各実施の形態では、除去部材として、突設部40を用いる場合について説明している。しかしながら、除去部材40は、突設部40には限られない。例えば、ワイパーブレード61,81のうち、インク廃液の付着領域Rを押し付けられる部位があれば、突設部40のように下方に突出している構成を採用しなくても良い。
【0072】
また、上述の各実施の形態における液体噴射装置としてのプリンタ10は、プリンタ単独の機能を有する構成のみならず、スキャナ装置やコピー装置のような、複合的な機器の一部であっても良い。さらに、上述の実施の形態においては、インクジェット方式のプリンタ10に関して説明している。しかしながら、プリンタ10としては、液体を噴射可能なものであれば、インクジェット方式のプリンタには限られない。例えば、ジェルジェット方式のプリンタ、トナー方式のプリンタ、ドットインパクト方式のプリンタ等、種々のプリンタに対して、本発明を適用することが可能である。
【0073】
また、上述の実施の形態では、液体噴射装置を、インクジェット式のプリンタ10に具体化しているが、インク以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
【0074】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプリンタの構成を示す斜視図である。
【図2】クリーニングヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】クリーニングヘッドと印刷ヘッドとの位置関係を示す側面図である。
【図4】印刷ヘッドを下方から見た状態を示す斜視図である。
【図5】PG調整機構の構成を示す概略斜視図である。
【図6】PG調整機構のうち、駆動力の伝達経路を示す分解斜視図である。
【図7】制御部を中心とした概略構成を示す図である。
【図8】印刷ヘッド、突設部とワイパーブレードの位置関係を示す図である。
【図9】ワイパーブレードが突設部に衝突して変形する様子を示す図である。
【図10】ワイパ昇降機構の概略を示す正面図である。
【図11】クラッチ体と伝達歯車の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
10…プリンタ、20…シャーシ、30…キャリッジ、32…印刷ヘッド(液体噴射ヘッドに対応)、32a…ノズル形成面、50…キャッピング機構、51…キャップ部材(回復手段に対応)、52…凹部、60…ワイピング機構、61…ワイパーブレード(ワイピング手段に対応)、70…PG調整機構(調整手段に対応)、77…フラグ検出センサ、80…ワイパ昇降機構(調整手段の一部に対応)、81…ワイパーブレード(ワイピング手段に対応)、82a…ガイドピン、83…クラッチ体、833…カム溝、100…制御部(調整手段の一部に対応)、CH…クリーニングヘッド、P…記録紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル開口を備えるノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
上記ノズル形成面に付着している液体を払拭するためのワイピング手段と、
上記ワイピング手段に当接して、当該ワイピング手段での上記ノズル形成面の払拭時に付着した上記液体を除去するための除去部材と、
上記ノズル形成面の法線方向に沿う距離であって上記ワイピング手段と上記除去部材との間の距離を調整し、上記ワイピング手段の上記除去部材に対する当接量を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記ワイピング手段の前記除去部材に対する当接量を、前記ワイピング手段が前記ノズル形成面を払拭するときよりも増やすように調整することを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記除去部材は、前記液体噴射ヘッドと所定の隙間を有して配置されると共に、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面までの突出量よりも前記除去部材の先端部までの突出量は同程度かまたは小さく設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記調整手段での調整によって、前記ワイピング手段における前記液体の付着領域よりも、前記ワイピング手段が前記除去部材に当接する領域が大きくなることを特徴とする請求項2または3記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記液体噴射ヘッドを前記ノズル形成面の法線方向に沿って移動させるプラテンギャップ調整機構を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記調整手段は、前記ワイピング手段を前記ノズル形成面の法線方向に沿って移動させるワイパ昇降機構を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
複数のノズル開口を備えるノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
上記ノズル形成面に付着している液体を払拭するためのワイピング手段と、
上記ワイピング手段に当接して、当該ワイピング手段での上記ノズル形成面の払拭時に付着した上記液体を除去するための除去部材と、
上記ノズル形成面の法線方向に沿う距離であって上記ワイピング手段と上記除去部材との間の距離を調整し、上記ワイピング手段の上記除去部材に対する当接量を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記ワイピング手段の前記除去部材に対する当接量を、前記ワイピング手段が前記ノズル形成面を払拭するときよりも増やすように調整することを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記除去部材は、前記液体噴射ヘッドと所定の隙間を有して配置されると共に、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面までの突出量よりも前記除去部材の先端部までの突出量は同程度かまたは小さく設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記調整手段での調整によって、前記ワイピング手段における前記液体の付着領域よりも、前記ワイピング手段が前記除去部材に当接する領域が大きくなることを特徴とする請求項2または3記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記液体噴射ヘッドを前記ノズル形成面の法線方向に沿って移動させるプラテンギャップ調整機構を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記調整手段は、前記ワイピング手段を前記ノズル形成面の法線方向に沿って移動させるワイパ昇降機構を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−99840(P2010−99840A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270613(P2008−270613)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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