説明

液体噴射装置

【課題】固化した液体を掻き取り手段で掻き取り易くできる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】各ローラー14,15に架け渡されて搬送される無端帯状のベルト部材16の外周面16aにて、記録ヘッド12から噴射されたインクIを受けるとともに、外周面16aで受けたインクI(固化インクIb)をスクレイパ17で掻き取るようになっている。そして、ベルト部材16の外周面16aには、ベルト部材16の搬送方向Ybと交差する方向に延びる複数のスリットSを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置の1つとして、インクジェット式記録装置が広く知られている。インクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録紙上にインク滴(液体)を噴射(吐出)して記録が行われる。このようなインクジェット式記録装置では、インクの蒸発に伴うインクの増粘や固化などによってノズルに目詰まりが生じ、印刷不良を引き起こす問題があった。このような問題に対し、非印字領域に設けたフラッシング領域においてノズル内のインクを強制的に噴射させるフラッシング動作を行って、ノズルの目詰まりを解消する技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、フラッシング動作によって記録ヘッドから噴射されたインクを受ける回転ローラーと、この回転ローラー上のインクを掻き取るスクレイパ(掻き取り手段)を備えている。この回転ローラー上に噴射されたインクは、回転ローラーの回転に伴ってスクレイパが配設された位置へ移動するとともにスクレイパによって掻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−320690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、回転ローラー上にインクが堆積するように固化した場合、スクレイパによるインクの掻き取りが困難になったり、掻き取る際の負荷が高くなったりしてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、固化した液体を掻き取り手段で掻き取り易くできる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け手段と、前記液受け手段で受けた液体を掻き取る掻き取り手段と、を有する液体噴射装置において、前記液受け手段は、前記記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け面を有するとともに前記液受け面の反対面が接するようにローラー部材に架け渡されて搬送される帯状部材を備え、前記帯状部材の液受け面側には、前記帯状部材の搬送方向と交差する方向に延びるスリットを設けた。
【0008】
この構成によれば、帯状部材の搬送方向と交差する方向に延びるスリットを形成したことから、帯状部材がローラー部材によって搬送される際、ローラー部材と接する箇所においてスリットが拡開される。このため、帯状部材の液受け面に噴射された液体(噴射物)が固化した場合であっても、該スリットが拡開されることで固化した液体を分断して割れ(クラック)を生じさせ、掻き取り手段による液体の掻き取りを容易にすることができる。
【0009】
本発明の液体噴射装置では、前記帯状部材は、前記帯状部材がローラー部材に接しない第1非接触領域で記録ヘッドから噴射される液体を受けるようになっており、前記掻き取り手段は、前記第1非接触領域及び前記ローラー部材よりも搬送方向の下流側であって前記帯状部材がローラー部材に接しない第2非接触領域で帯状部材に摺接可能に配設されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、スリットが拡開されない第1非接触領域で液体を受けるため、ローラー部材とベルト部材が接する箇所でスリットが拡開された際に、固化した液体に割れ(クラック)をより生じさせ易くできる。また、ローラー部材の下流側である第2非接触領域では、スリットの開放状態が元に戻る。このため、掻き取り手段によって固化した液体を掻き取る際、掻き取った液体がスリットに入り込んでしまうことを抑制できる。
【0011】
本発明の液体噴射装置では、前記スリットは、前記第1非接触領域及び前記第2非接触領域では閉鎖状態とされるとともに前記帯状部材がローラー部材に接する接触領域では拡開状態とされていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、接触領域においてスリットは、閉鎖状態から拡開状態に変化される。このため、スリットが閉鎖している状態で固化した液体に対し、割れ(クラック)をより生じさせ易くできる。また、掻き取り手段で液体を掻き取る際、掻き取った液体がスリット内に入り込んでしまうことをより抑制できる。
【0013】
本発明の液体噴射装置では、前記スリットは、前記帯状部材の搬送方向に沿って並ぶように複数形成されていることが好ましい。
この構成によれば、スリットは、帯状部材の搬送方向に沿って複数形成されていることから、固化した液体に複数箇所に亘って割れ(クラック)を生じさせ、より掻き取り手段による掻き取りを容易にできる。
【0014】
本発明の液体噴射装置では、前記スリットは、前記帯状部材の搬送方向に直交する幅方向の全体に亘って形成されていることが好ましい。
この構成によれば、接触領域におけるスリットの拡開量を大きくすることができ、固化した液体に割れ(クラック)をより生じさせ易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】記録ヘッド及びメンテナンス装置の側面図。
【図2】記録ヘッド及びメンテナンス装置の平面図。
【図3】メンテナンス装置の別の実施形態を示す模式図。
【図4】(a)〜(d)は、ベルト部材におけるスリットの別の実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を記録装置の一種であるプリンターに具体化した実施形態を図1及び図2を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置(以下、単に「プリンター」と示す)11は、液体としてのインクIを噴射(吐出)する記録ヘッド12を備えている。記録媒体となる記録紙と対向配置される記録ヘッド12の下面は、図示しないインクタンクから供給されるインクIを噴射する複数のノズルが一定の間隔で開口形成され、ノズル列が形成されたノズル形成面12aとされている。なお、記録ヘッド12内には、図示しない圧電素子が各ノズルと個別対応するように配設されている。プリンター11では、各圧電素子が駆動制御されることで、各ノズルからインクIが噴射される。そして、プリンター11では、図示しない紙送り機構によって記録紙を搬送するとともに、この搬送された記録紙に対して記録ヘッド12(ノズル)から噴射されたインクIを付着させることで、記録紙に印刷が施される。
【0017】
また、本実施形態のプリンター11において、記録ヘッド12は、記録紙に印刷を施す印刷位置と、記録ヘッド12(ノズル)のメンテナンスを行うメンテナンス位置との間で、図示しないキャリッジにより移動可能に構成されている。記録ヘッド12がメンテナンス位置に位置した状態において、記録ヘッド12の下方であって記録ヘッド12に対応する位置には、記録ヘッド12(ノズル)のメンテナンスを行う液受け手段としてのメンテナンス装置13が配設されている。
【0018】
メンテナンス装置13は、略円柱状(円筒状)をなす第1ローラー14及び第2ローラー15を備えている。本実施形態では、第2ローラー15がローラー部材を構成する。各ローラー14,15は、何れも水平に延びるように支持されるとともに、相互に平行に並設されている。そして、第1ローラー14及び第2ローラー15には、無端帯状に形成された帯状部材としてのベルト部材16が架け渡されている。第1ローラー14には、図示しないモーターが接続されており、当該モーターの回転駆動によって軸線回りの回転方向Ya(矢印Yaに示す)に回転可能に構成されている。そして、メンテナンス装置13では、第1ローラー14が回転駆動されることに伴ってベルト部材16が搬送方向Yb(矢印Ybに示す)に搬送されるとともに、該ベルト部材16の搬送に伴って第2ローラー15が回転駆動されるようになっている。
【0019】
ベルト部材16の外周面16aには、ベルト部材16の搬送方向Ybと直交する幅方向の全体に亘って、搬送方向Ybに交差するように複数のスリットSが形成されている。すなわち、スリットSは、ベルト部材16の幅方向における一方の側縁から他方の側縁迄、全幅に亘って形成されている。また、各スリットSは、平面視でベルト部材16の幅方向の中心線Lから、該中心線Lを頂点として搬送方向Ybの逆方向(反搬送方向)に向かって両側縁へ広がるように伸びる逆V字型に形成されている。各スリットSは、ベルト部材16の搬送方向Ybに沿って並ぶように等間隔で形成されているとともに、ベルト部材16の厚さ方向の寸法を同一寸法に設定されて均一な深さに形成されている。各スリットSの間隔は、記録ヘッド12のノズル列が形成された幅から規定される印刷幅よりも短い間隔に設定されている。
【0020】
また、スリットSは、ベルト部材16の内周面16bが各ローラー14,15に接する(架かる)接触領域Raにおいて、ベルト部材16が各ローラー14,15の外周面に沿うように搬送されることで、各ローラー14,15の周方向に沿って拡開された状態となる。接触領域Raは、ベルト部材16の搬送方向Ybが各ローラー14,15の周方向に沿って連続的に変化される領域と把握することもできる。また、ベルト部材16の外周面は、接触領域Raにおいて各ローラー14,15の外周面に沿って略円弧面をなす。このため、接触領域Raでは、スリットSによって区画されたベルト部材16の各領域が相互に離間した状態となる。
【0021】
その一方で、スリットSは、ベルト部材16が各ローラー14,15に接しない(架からない)非接触領域Rbにおいて閉鎖した状態となる。非接触領域Rbは、ベルト部材16の搬送方向Ybが変化されない領域と把握することもできる。また、ベルト部材16の外周面は、非接触領域Rbにおいて平面をなす。このため、非接触領域Rbでは、スリットSによって区画されたベルト部材16の各領域が相互に接触した状態となる。本実施形態では、非接触領域Rbのうち、ベルト部材16の上側が第1非接触領域Rb1となり、各ローラー14,15を挟んでベルト部材16の下側が第2非接触領域Rb2となる。
【0022】
そして、本実施形態のメンテナンス装置13は、記録ヘッド12がメンテナンス位置に位置した状態において、記録ヘッド12のノズル形成面12aとベルト部材16の外周面16aとが非接触領域Rb(第1非接触領域Rb1)にて対向配置されるようになっている。このとき、ノズル形成面12aと、第1非接触領域Rb1におけるベルト部材16の外周面16aとは、平行に配設される。このため、本実施形態では、メンテナンス位置において記録ヘッド12からインクIを噴射した際に、噴射されたインクIが第1非接触領域Rb1にあるベルト部材16の外周面16aに付着するようになっている。本実施形態では、スリットSが形成された外周面16aがインクIを受ける(受容する)液受け面を構成し、内周面16bが反対面を構成している。
【0023】
また、第1非接触領域Rb1及び第2ローラー15より搬送方向Ybの下流側となる第2非接触領域Rb2には、ベルト部材16の外周面16aに摺接する長方形平板状の掻き取り手段としてのスクレイパ17が配設されている。スクレイパ17は、ベルト部材16の搬送方向Ybと直交するように支持されている。また、スクレイパ17は、側面視でベルト部材16の外周面16aとスクレイパ17とがなす搬送方向Ybの下流側の摺接角度が鋭角となるように支持されている。スクレイパ17は、ベルト部材16が搬送方向Ybに搬送される際にベルト部材16の外周面16aに摺接し、ベルト部材16の外周面16aに付着したインクIを掻き取るようになっている。すなわち、スクレイパ17は、ベルト部材16に対して相対的に摺動する。また、スクレイパ17の下方には、該スクレイパ17で掻き取ったインクIを回収する廃棄容器18が配設されている。スクレイパ17で掻き取られたインクIは、スクレイパ17から落下し、廃棄容器18に回収されるようになっている。
【0024】
次に、上記のように構成したプリンター11の作用について説明する。
まず、記録ヘッド12をメンテナンス位置へ移動させる。次に、記録ヘッド12(ノズル)のフラッシング動作(インクIの噴射)を開始させるとともに、図示しないモーターを駆動してベルト部材16の搬送を開始する。記録ヘッド12(ノズル)からインクIが吐出されると、ベルト部材16の外周面16aにインクIが付着される。このとき、インクIが付着された箇所は、ベルト部材16の第1非接触領域Rb1であることから、各スリットSが閉鎖状態とされている。そして、ベルト部材16の搬送に伴ってインクIに含まれる溶媒が蒸発し、インクIが固化する。なお、以下の説明では、固化したインクIを特に固化インクIbと示す。そして、固化インクIbは、固化インクIbの付着箇所がベルト部材16の搬送に伴ってベルト部材16の接触領域Raに到達すると、スリットSが拡開状態とされることで分断されるように割れ目(クラック)Cが形成される。そして、固化インクIbの付着箇所がベルト部材16の搬送に伴って第2非接触領域Rb2に到達すると、スリットSは再び閉鎖状態とされる一方で、一旦形成された割れ目Cはそのまま残存する。そして、固化インクIbは、割れ目Cによって分断された塊毎にスクレイパ17によって掻き取られ、廃棄容器18に落下して回収される。スクレイパ17が摺接する箇所において、スリットSは、ベルト部材16の非接触領域Rbにあることから閉鎖状態となっている。
【0025】
なお、ベルト部材16の搬送速度によっては、記録ヘッド12から噴射されたインクIが接触領域Raやスクレイパ17の配設位置に到達する迄の間に固化しない場合も発生し得る。しかしながら、インクIが固化していない場合には、スクレイパ17で容易に掻き取ることができる。また、例えば、記録ヘッド12からインクIを噴射した直後にプリンター11の電源が遮断された場合には、ベルト部材16上に付着されたインクIがそのまま残存して固化してしまうことが考えられる。本実施形態によれば、固化インクIbに割れ目Cを生じさせてスクレイパ17による固化インクIbの掻き取りを容易にすることができる。
【0026】
次に、以上のように構成されたプリンター11の作用について説明する。
(1)ベルト部材16の搬送方向と交差するようにスリットSを形成したことから、ベルト部材16が各ローラー14,15によって搬送される際、接触領域RaにおいてスリットSが拡開される。このため、ベルト部材16の外周面16aに噴射されたインクIが固化した場合であっても、スリットSが拡開されることで固化インクIbを分断して割れ目(クラック)Cを生じさせ、スクレイパ17による固化インクIbの掻き取りを容易にすることができる。
【0027】
(2)ベルト部材16の上側の第1非接触領域Rb1で記録ヘッド12から噴射されるインクIを受けるとともに、第1非接触領域Rb1及び第2ローラー15より下流側であって各ローラー14,15に接しない下側の第2非接触領域Rb2でスクレイパ17を摺接させた。このため、スリットSが拡開されていない状態でインクIをベルト部材16で受け、接触領域RaにおいてスリットSを拡開させて固化インクIbに割れ目Cを生じさせ易くできる。その一方で、下側の第2非接触領域Rb2では、スリットSの拡開状態が元に戻る。このため、スクレイパ17で固化インクIbを掻き取る際、掻き取った固化インクIbがスリットSに入り込んでしまうことを抑制できる。
【0028】
(3)記録ヘッド12からインクIが吐出される第1非接触領域Rb1では、スリットSを閉鎖状態とし、接触領域Raでは、スリットSを拡開状態に変化するようにした。このため、スリットSが閉鎖されている状態で固化した固化インクIbを、スリットSを拡開させることで確実に分断し、割れ目Cを生じさせることができる。
【0029】
(4)スリットSは、ベルト部材16の搬送方向Ybに沿って並ぶように複数形成した。このため、固化した固化インクIbに複数箇所に亘って割れ目Cを生じさせ、よりスクレイパ17による掻き取りを容易にできる。
【0030】
(5)スリットSをベルト部材16の全幅に亘って形成した。このため、接触領域RaにおけるスリットSの拡開量(幅)を大きくすることができ、固化した固化インクIbに割れ目Cをより生じさせ易くできる。
【0031】
(6)スリットSは、ベルト部材16の中心線Lを頂点として搬送方向Ybの逆方向に向かって両側縁へ伸びる逆V字型に形成した。このため、スクレイパ17は、接触領域Raで分断された各固化インクIbのうち、中心線L上の先端部(上流部)から固化インクIbの掻き取りが開始されるとともに、掻き取り範囲が徐々に幅方向に広がるように固化インクIbを掻き取ることができる。このため、スクレイパ17に付与される固化インクIbを掻き取る際の負荷を徐々に増加させ、固化インクIbの掻き取りをスムーズに行うことができる。
【0032】
(7)スクレイパ17をベルト部材16に摺接可能に支持する一方で、ベルト部材16を搬送方向Ybに移動させることで固化インクIbを掻き取るようにした。このため、スクレイパ17を摺動動作させる構成と比較して簡潔な構成とすることができる。
【0033】
(8)ベルト部材16の外周面16aが平面をなす非接触領域Rb(第1非接触領域Rb1)において、記録ヘッド12のノズル形成面12aと、ベルト部材16の外周面16aとを平行に配置した状態でインクIを外周面16aに向けて噴射させるようにした。このため、ノズル形成面12aから外周面16a迄の離間距離を略均一とし、ノズルから噴射されたインクIがミスト状にならないよう離間距離を適切に設定し得る。これに対し、例えば、円筒状のローラー上にインクIを吐出する場合、平面状のノズル形成面12aの各部から円弧状のローラー迄の離間距離が一定とならない。この場合、記録ヘッド12(ノズル形成面12a)の大型化に伴って、ノズル形成面12aの中心位置における離間距離と、ノズル形成面12aの周縁部における離間距離との差が大きくなり、離間距離の設定が困難となる。すなわち、ノズル形成面12aの中心部を基準に離間距離を設定した場合には、周縁部の離間距離が大きくなり、噴射したインクIがミスト化してローラーに付着し難くなる虞がある。その一方で、ノズル形成面12aの周縁部を基準に離間距離を設定した場合には、中心部の離間距離が小さくなり、ローラーからの跳ね返りでノズル形成面12aを汚染してしまう虞がある。これに対して、本実施形態の構成によれば、このような問題を好適に解決することができる。
【0034】
(9)スリットSの間隔を記録ヘッド12の印刷幅よりも短い間隔に設定した。このため、インクIは、確実にスリットSを跨いでベルト部材16の外周面16aに付着する。したがって、固化インクIbに割れ目Cを確実に生じさせることができる。
【0035】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ ベルト部材16を無端状に形成したが、異なる構成としてもよい。例えば、図3に示すように、帯状に形成したベルト部材16を巻き取る第1巻取り手段20及び第2巻取り手段21を設ける。ベルト部材16の一端を第1巻取り手段20で巻き取る一方、他端を第2巻取り手段21で巻き取り可能に構成し、ベルト部材16を往復運動可能に構成する。この場合、ローラー部材としてのローラー23に接する領域が接触領域Raとなり、ローラー23に接しない領域が非接触領域Rbとなる。そして、第1巻取り手段20でベルト部材16を巻き取りつつ記録ヘッド12からインクIを噴射させるとともに、その間、スクレイパ17をベルト部材16に摺接(当接)させる。そして、固化インクIbの掻き取り終了後、スクレイパ17をベルト部材16から離間させるとともに、第2巻取り手段21でベルト部材16を巻き取り、次回のフラッシング動作に備えるようにすればよい。このように構成しても、ベルト部材16のうち第2巻取り手段21側の第1非接触領域Rb1で記録ヘッド12からインクIを受け、接触領域Raで固化インクIbに割れ目Cを生じさせることができる。このため、固化インクIbの掻き取りを容易にすることができる。また、このような構成を採用することで、プリンター11のハウジング(外装体)内におけるレイアウトの自由度を高めることができる。また、この場合、ベルト部材16のうち第1巻取り手段20側の第2非接触領域Rb2にスクレイパ17を摺接可能に配置してもよい。
【0036】
・ 図1及び図2では、スクレイパ17を非接触領域Rbに設けたが、接触領域Raで摺接するように配設してもよい(図3参照)。
・ スリットSを異なる態様で設けてもよい。図4(a),(b)は、別の実施形態におけるベルト部材16の平面図を示す。図4(a)に示すように、スリットSを平面視でベルト部材16の搬送方向Ybに直交する方向に沿って延びるように形成してもよい。図4(b)に示すように、スリットSを平面視でベルト部材16の搬送方向Ybに交差する直線状に形成してもよい。
【0037】
・ また、図4(c),(d)は、別の実施形態におけるベルト部材16の側面図を示す。図4(c)に示すように、スリットSをベルト部材16の外周面16aに加えて内周面16bにも形成してもよい。このように構成することで、各ローラー14,15によるテンションがベルト部材16の内周面16b側と外周面16a側とに均等に付与され、外周面16a側のスリットSが非接触領域Rbにおいて大きく拡開されることを抑制できる。また、図4(d)に示すように、ベルト部材16の内周面16b側に伸縮性が少ない補強部材25を張り合わせてベルト部材16を構成してもよい。このように構成することで、各ローラー14,15によるテンションによってベルト部材16が伸長し、スリットSが非接触領域Rbにおいて拡開されることを抑制できる。
【0038】
・ ベルト部材16の搬送経路中においてベルト部材16(外周面16a)の乾燥及びインクIの固着を防止する保守液に浸漬する構成としてもよい。この場合、スリットSに保守液を保持させ、保守液の乾燥を抑制できる。
【0039】
・ スクレイパ17は、ベルト部材16の搬送方向Ybに対し平面視で斜めに支持してもよい。すなわち、スクレイパ17は、平面視で搬送方向Ybと交差するように支持すればよい。
【0040】
・ スクレイパ17は、正方形や三角形に形成してもよい。この場合、直線状に形成された一辺をベルト部材16(外周面16a)に摺接させるようにすればよい。
・ ベルト部材16を架け渡すローラーの数は適宜変更してもよい。例えば、ベルト部材16にテンションを付与するテンションローラーを追加したり、各ローラー14,15と同等の作用を有するローラーを加えたりしてもよい。
【0041】
・ 各ローラー14,15は、円柱状(円筒状)に限られず、四角柱や八角柱状に形成してもよい。
・ 各スリットSの間隔は適宜変更してもよい。但し、割れ目Cを確実に生じさせるため、各スリットSの間隔は、記録ヘッド12の印刷幅より短い間隔に設定することがより好ましい。
【0042】
・ ノズルをライン状に配設した記録ヘッド(ラインヘッド)とした場合、記録紙を搬送する経路上にメンテナンス装置13を設けてもよい。この場合には、記録紙を搬送する際に用いる搬送ベルトとベルト部材16とを兼用構成としてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式記録装置11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置(プリンター)、12…記録ヘッド、13…液受け手段を構成するメンテナンス装置、15…ローラー部材を構成する第2ローラー、16…帯状部材を構成するベルト部材、16a…液受け面を構成する外周面、16b…反対面を構成する内周面、17…掻き取り手段を構成するスクレイパ、23…ローラー部材としてのローラー、I…液体としてのインク、Ib…固化インク、Ra…接触領域、Rb…非接触領域、Rb1…第1非接触領域、Rb2…第2非接触領域、S…スリット、Yb…搬送方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け手段と、前記液受け手段で受けた液体を掻き取る掻き取り手段と、を有する液体噴射装置において、
前記液受け手段は、前記記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け面を有するとともに前記液受け面の反対面が接するようにローラー部材に架け渡されて搬送される帯状部材を備え、
前記帯状部材の液受け面側には、前記帯状部材の搬送方向と交差する方向に延びるスリットを設けた液体噴射装置。
【請求項2】
前記帯状部材は、前記帯状部材がローラー部材に接しない第1非接触領域で記録ヘッドから噴射される液体を受けるようになっており、
前記掻き取り手段は、前記第1非接触領域及び前記ローラー部材よりも搬送方向の下流側であって前記帯状部材がローラー部材に接しない第2非接触領域で帯状部材に摺接可能に配設されている請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記スリットは、前記第1非接触領域及び前記第2非接触領域では閉鎖状態とされるとともに前記帯状部材がローラー部材に接する接触領域では拡開状態とされている請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記スリットは、前記帯状部材の搬送方向に沿って並ぶように複数形成されている請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記スリットは、前記帯状部材の搬送方向に直交する幅方向の全体に亘って形成されている請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate