説明

液体噴射装置

【課題】印刷動作中においてノズル開口に目詰まりを発生することなく高品質な印字を記録することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズルから液体を媒体Pに向けて噴射する液体噴射ヘッド10と、液体噴射ヘッド10の側方に配置され、液体噴射ヘッド10と媒体Pとの相対移動により発生する気流の一部を加湿して、液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aと媒体Pとの間に導く保湿体70と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置の一種としてインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という)がある。このプリンターは、キャリッジに搭載された液体噴射ヘッド(以下、「ヘッド」という)の複数のノズルからプラテン上に配置された媒体にインク(液体)を噴射することで印刷を行っている。
【0003】
このようなプリンターにあっては、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として媒体に吐出させて印刷を行っている。この関係上、ノズル開口からのインク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題がある。
【0004】
このような問題点を解決するための技術が検討されており、例えば、特許文献1では、キャリッジには搭載された液体噴射ヘッドと、装置の休止期間中において液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止するキャッピング手段と、キャリッジに搭載されるとともに保湿液を貯留する保湿液タンクと、キャリッジの移動に対応してキャッピング手段内に保湿液タンクより保湿液を吐出させる制御信号を生成する制御手段と、を備えた液体噴射装置が開示されている。これにより、キャッピング状態とされた液体噴射ヘッドのノズル開口におけるインク溶媒の蒸発を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−18408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術にあっては、保湿液タンクから保湿液が吐出されたキャッピング手段によって液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止することで、液体噴射ヘッドが印刷を行っていない非印刷動作時における液体噴射ヘッドの保湿を行い、高品質な印字を可能にすることができると考えられる。
しかしながら、特許文献1では、非印刷動作時においてはノズル形成面を保湿することができるが、印刷動作中においてはノズル形成面を保湿することができない。このため、印刷動作中において使用頻度の低いノズルはインク溶媒の蒸発によりインク粘度の上昇やインクの固化が進んでしまう。その結果、印刷動作中においてノズル開口に目詰まりを生じ、印刷不良を引き起こす場合がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることなく高品質な印字を記録することが可能な液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の液体噴射装置は、ノズルから液体を媒体に向けて噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドの側方に配置され、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動により発生する気流の一部を加湿して、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面と前記媒体との間に導く保湿体と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この液体噴射装置によれば、保湿体により液体噴射ヘッドと媒体との間の相対移動により発生する気流の一部が加湿され、この加湿された気体が液体噴射ヘッドのノズル形成面と媒体との間に導かれる。このため、特許文献1のように、印刷動作中において使用頻度の低いノズルであってもインク溶媒の蒸発によりインク粘度の上昇やインクの固化が進んでしまうことがない。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることなく高品質な印字を記録することが可能な液体噴射装置が提供できる。
【0010】
また、上記液体噴射装置において、前記保湿体は、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動の前後方向の少なくとも一方に配置されていてもよい。
【0011】
この液体噴射装置によれば、保湿体が液体噴射ヘッドと媒体との相対移動により発生する気流の方向と同じ向きに配置されるので、気流の一部を加湿しやすくなる。つまり、ノズル形成面と媒体との間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0012】
また、上記液体噴射装置において、前記保湿体は、前記ノズル形成面に近接して配置されていてもよい。
【0013】
この液体噴射装置によれば、保湿体がノズル形成面から遠く離れて配置される場合に比べて、保湿体で加湿された気流がノズル形成面と媒体との間に導かれやすくなる。つまり、ノズル形成面と媒体との間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0014】
また、上記液体噴射装置において、前記保湿体は、前記液体噴射ヘッドとの間で隙間を有した状態で配置され、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動により発生する気流の一部が前記隙間を通った後に前記ノズル形成面と前記媒体との間に導かれてもよい。
【0015】
この液体噴射装置によれば、保湿体が液体噴射ヘッドとの間で隙間を有しない状態(密接した状態)で配置されている場合に比べて保湿体の露出した表面積が増えることになる。このため、保湿体の表面を通過する気流の割合が増えるので、気流の一部を加湿しやすくなる。つまり、ノズル形成面と媒体との間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0016】
また、上記液体噴射装置において、前記隙間の流路抵抗は、前記ノズル形成面と前記媒体との間の流路抵抗よりも小さくなっていてもよい。
【0017】
この液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面と媒体の間よりも保湿体と液体噴射ヘッドの間の隙間を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体の表面を通過して加湿され、ノズル形成面と媒体との間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0018】
また、上記液体噴射装置において、前記保湿体を前記媒体の側で支持するホルダーが設けられていてもよい。
【0019】
この液体噴射装置によれば、保湿体に含まれる保湿液が媒体の表面に滴り落ちることがない。つまり、保湿体として保湿液が滴り落ちないものを選択的に使用する必要がない。したがって、保湿体の種類を必要に応じて適宜選択することができ、設計の幅が広がる。
【0020】
また、上記液体噴射装置において、前記ホルダーは、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動の前後方向に突出した凸形状となっていてもよい。
【0021】
この液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッドと媒体との相対移動により発生する気流の一部を整流することができる。このため、乾燥した外気がノズル形成面と媒体との間に直接導かれることが抑えられる。つまり、ノズル形成面と媒体との間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る液体噴射装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】液体噴射ヘッドのノズル形成面におけるノズル配列状態を示す図である。
【図3】液体噴射ヘッドの内部構成を示す部分断面図である。
【図4】第1実施形態における保湿体の配置構成を示す模式図である。
【図5】第1実施形態における保湿体により加湿された気流の流れを示す図である。
【図6】第2実施形態における保湿体の配置構成を示す模式図である。
【図7】第2実施形態における保湿体により加湿された気流の流れを示す図である。
【図8】第3実施形態における保湿体の配置構成を示す模式図である。
【図9】第4実施形態における保湿体の配置構成を示す模式図である。
【図10】第5実施形態における保湿体の配置構成を示す模式図である。
【図11】第6実施形態における保湿体の配置構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置の概略構成を示す斜視図である。以下、液体噴射装置としてシリアル型のインクジェット式プリンターを例に挙げて説明する。
【0025】
液体噴射装置1は、プラテン50に支持された記録用紙(媒体)Pにインク(液体)を噴射することで記録用紙Pに所定の情報や画像を印字する記録処理を行うものである。この液体噴射装置1は、複数のノズル17(図2参照)からインクを記録用紙Pに向けて噴射する液体噴射ヘッド10と、液体噴射ヘッド10を搭載して走査移動するキャリッジ40と、液体噴射ヘッド10の側方に配置された保湿体70と、保湿体70を支持するホルダー60と、を備えて構成されている。なお、本実施形態では、ホルダー60は平面視矩形になっており、このホルダー60に支持される保湿体70についても同様に平面視矩形になっている。
【0026】
ここで、「保湿体」とは、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部を加湿して、液体噴射ヘッド10のノズル形成面21A(図2参照)と記録用紙Pとの間に導くものである。本実施形態においては、保湿体70として、例えばスポンジ等の吸収体に水分等を含んだ保湿液を浸み込ませたものを用いる。なお、保湿体70により加湿された気流の流れについては後述する。
【0027】
以下、図1に示したXYZ直交座標系に基づいて説明する。このXYZ直交座標系において、X方向及びY方向がプラテン50の面方向と平行となっており、Z方向がプラテン50の面方向と直交している。実際には、XY平面が水平面に平行な面に設定されており、Z方向が鉛直上方向に設定されている。ここでは、記録用紙Pの搬送方向がY方向、液体噴射ヘッド10の走査方向がX方向に設定されている。
【0028】
図1に示すように、液体噴射装置1は、平面視矩形状をなすフレーム42を備えている。このフレーム42内には、プラテン50が架設されている。このプラテン50は、記録用紙Pを吸引する複数の吸引孔(図示略)を備えている。記録用紙Pは複数の吸引孔に作用する吸引力によってプラテン50の上面に保持される。これにより、記録用紙Pのコックリングやカールが抑えられる。
【0029】
また、プラテン50上には、フレーム42の背面に設けられた紙送りモーター44を有する紙送り機構により記録用紙Pが+Y方向側から給送される。これにより、記録用紙PがY方向に延びる搬送路に沿って搬送されるようになっている。また、フレーム42内におけるプラテン50の上方には、プラテン50の長手方向(X方向)と平行な棒状のガイド部材45が架設されている。
【0030】
ガイド部材45には、キャリッジ40がガイド部材45の長手方向(X方向)に沿って往復移動可能に支持されている。キャリッジ40は、フレーム42内の後面に設けられた一対のプーリ47a間に張設されたタイミングベルト47を介してフレーム42の背面に設けられたキャリッジモーター48に連結されている。キャリッジ40は、キャリッジモーター48の駆動によりガイド部材45に沿って往復移動される。
【0031】
キャリッジ40の下面には、液体噴射ヘッド10が設けられている。液体噴射ヘッド10の下面は、複数のノズル17が形成されたノズル形成面21Aとなっている(図2参照)。また、キャリッジ40における液体噴射ヘッド10の上側には、インクカートリッジ41が着脱可能に搭載されている。このインクカートリッジ41内には、インクがそれぞれ液体噴射ヘッド10に供給可能に収容されている。
【0032】
ここで、図2及び図3を参照して液体噴射ヘッド10の構成について説明する。図2は、液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aにおけるノズル17の配列状態を示す図である。図3は、液体噴射ヘッド10の内部構成を示す部分断面図である。
【0033】
図2に示すように、ノズル17はノズル形成面21Aにおいて搬送路の幅方向(X方向)に沿って複数設けられ、ノズル列16を形成している。このノズル列16は、搬送方向(Y方向)に沿って計5列設けられている。ノズル列16Y、16M、16C、16K1、16K2は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K1)、顔料ブラック(K2)の各色に応じたインクを噴射する構成となっている。なお、液体噴射ヘッド10どうしをノズル17間のピッチの半分だけ左右方向にずらして配置してもよい。これにより、記録用紙Pに対して印字する解像度を向上させることができる。
【0034】
図3に示すように、液体噴射ヘッド10は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備える。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えるとともに、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26とともに駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0035】
上記構成の液体噴射ヘッド10によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向(−Z方向)及び圧力室31から離れる方向(+Z方向)に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17からインクが噴射される。
【0036】
図1に戻り、インクカートリッジ41内のインクは、液体噴射ヘッド10内に各ノズル17と対応するように備えられた圧電素子25の駆動により、液体噴射ヘッド10へと供給される。さらに、各ノズル17からプラテン50上に給送された記録用紙Pに向けてインクが噴射されることにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
【0037】
また、フレーム42内の右端部(X方向端部)に位置する非液体噴射領域には、非印刷時に液体噴射ヘッド10のメンテナンス(例えば、クリーニングやフラッシング等)を行うためのメンテナンスユニット52が設けられている。メンテナンスユニット52は、液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aを封止可能な上側(+Z方向側)が開口したキャップ53を備えている。
【0038】
ところで、従来の液体噴射装置においては、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行っている関係上、ノズル開口からのインク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化によりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題があった。
【0039】
そこで、本発明に係る液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド10の側方に配置され、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部を加湿して液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導く保湿体70を設けることによって、印刷動作中においてノズル開口に目詰まりを発生することなく高品質な印字を記録することを可能にしている。以下、図4及び図5を用いて液体噴射装置1における保湿体70の配置構成及びこの保湿体70により加湿された気流の流れについて説明する。
【0040】
図4は、第1実施形態における保湿体70の配置構成を示す模式図である。なお、図4は液体噴射装置1を構成する液体噴射ヘッド10及びその周辺部を断面視した要部断面図である。また、図4において、符号H1はノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の距離、符号H2はホルダー60の底面(−Z方向側の面)と記録用紙Pとの間の距離である。
【0041】
図4に示すように、保湿体70は、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向の両方(+X方向及び−X方向)に配置されている。本実施形態では記録用紙Pがプラテン50の上面に保持されるとともに液体噴射ヘッド10が走査されるため、保湿体70は液体噴射ヘッド10の走査方向に配置されることになる。これにより、保湿体70が液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の方向と同じ向きに配置されるので、気流の一部を加湿しやすくなる。
【0042】
また、保湿体70はノズル形成面21Aに近接して配置されている。具体的には、保湿体70は、保湿体70と記録用紙Pとの間の距離とノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の距離H1とが略同じになるように配置されている。ここでは、保湿体70は、ホルダー60の底面と記録用紙Pとの間の距離H2がノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の距離H1よりも小さくなるように配置されている(H2<H1)。これにより、保湿体70がノズル形成面21Aから遠く離れて配置される場合(例えば、ホルダー60の底面と記録用紙Pとの間の距離H2がノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の距離H1よりも大きくなるように配置されている場合)に比べて、保湿体70で加湿された気流がノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれやすくなる。なお、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の距離H1は例えば1mm以下になっている。
【0043】
また、保湿体70は、液体噴射ヘッド10との間で隙間62を有した状態で配置されている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部が隙間62を通った後にノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれるようになっている。すると、保湿体70が液体噴射ヘッド10との間で隙間を有しない状態(密接した状態)で配置されている場合に比べて保湿体70の露出した表面積が増えることになる。このため、保湿体70の表面を通過する気流の割合が増えるので、気流の一部を加湿しやすくなる。
【0044】
また、隙間62の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも保湿体70と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体70の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0045】
また、ホルダー60は、キャリッジ40に固定されており、保湿体70を記録用紙Pの側で支持している。これにより、ホルダー60は保湿体70とともにキャリッジ40の走査移動に従って移動するようになっている。また、保湿体70に含まれる保湿液が記録用紙Pの表面に滴り落ちないようになっている。つまり、保湿体70として保湿液が滴り落ちないものを選択的に使用する必要がない。
【0046】
また、ホルダー60の側部には外気導入部61が形成されている。この外気導入部61は液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動によりホルダー60内に外気を導入するものである。これにより、外気のうちホルダー60内に導入された気体が保湿体70によって加湿されることになる。
【0047】
また、外気導入部61の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも、外気導入部61を通って保湿体70と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体70の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0048】
図5は、第1実施形態における保湿体70により加湿された気流の流れを示す図である。なお、図5(a)は液体噴射ヘッド10の走査方向が+X方向の場合を示した図である。また、図5(b)は液体噴射ヘッド10の走査方向が−X方向の場合を示した図である。
【0049】
図5(a)に示すように、液体噴射ヘッド10が+X方向に走査される場合を考える。この場合、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流はその流れ方向が−X方向となるものが大部分となる。この場合、外気の一部は、液体噴射ヘッド10の走査方向の前側(+X方向側)に配置されたホルダー60に形成された外気導入部61からホルダー60内に導入される。すると、ホルダー60内に導入された気体が保湿体70によって加湿される。つまり、外気が乾燥した状態であっても、ホルダー60内に導入されることにより、その導入された気体が保湿体70から自然蒸発した水分を含んで湿った状態となる。そして、保湿体70によって加湿された気体は隙間62を通った後、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれる。
【0050】
図5(b)に示すように、液体噴射ヘッド10が−X方向に走査される場合を考える。この場合、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流はその流れ方向が+X方向となるものが大部分となる。この場合、外気の一部は、液体噴射ヘッド10の走査方向の前側(−X方向側)に配置されたホルダー60に形成された外気導入部61からホルダー60内に導入される。すると、ホルダー60内に導入された気体が保湿体70によって加湿される。そして、保湿体70によって加湿された気体は隙間62を通った後、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれる。
【0051】
また、外気の一部は、ホルダー60の底面と記録用紙Pとの間を通過する。この間を通過した気体は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に直接導かれる。この気体は、保湿体70によっては加湿されないものの、隙間62を通った後の気体(保湿体70によって加湿された気体)をノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導くように作用する。
【0052】
本実施形態に係る液体噴射装置1によれば、保湿体70により液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの間の相対移動により発生する気流の一部が加湿され、この加湿された気体が液体噴射ヘッド10のノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれる。つまり、液体噴射ヘッド10の走査移動中において、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間には湿った気体が存在することになる。このため、特許文献1のように、印刷動作中において使用頻度の低いノズルであってもインク溶媒の蒸発によりインク粘度の上昇やインクの固化が進んでしまうことがない。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることなく高品質な印字を記録することが可能な液体噴射装置1が提供できる。
【0053】
また、この構成によれば、保湿体70が液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向の両方に配置されている。これにより、保湿体70が液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の方向と同じ向きに配置されるので、気流の一部を加湿しやすくなる。つまり、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0054】
また、この構成によれば、保湿体70がノズル形成面21Aに近接して配置されているので、保湿体70がノズル形成面21Aから遠く離れて配置される場合に比べて、保湿体70で加湿された気流がノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれやすくなる。つまり、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0055】
また、この構成によれば、保湿体70は液体噴射ヘッド10との間で隙間62を有した状態で配置されているので、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部が隙間62を通った後にノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれる。すると、保湿体70が液体噴射ヘッド10との間で隙間を有しない状態(密接した状態)で配置されている場合に比べて保湿体70の露出した表面積が増えることになる。このため、保湿体70の表面を通過する気流の割合が増えるので、気流の一部を加湿しやすくなる。つまり、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0056】
また、この構成によれば、隙間62の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっているので、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも保湿体70と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体70の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0057】
また、この構成によれば、保湿体70を記録用紙Pの側で支持するホルダー60が設けられている。このため、保湿体70に含まれる保湿液が記録用紙Pの表面に滴り落ちることがない。つまり、保湿体70として保湿液が滴り落ちないものを選択的に使用する必要がない。したがって、保湿体70の種類を必要に応じて適宜選択することができ、設計の幅が広がる。
【0058】
なお、本実施形態では、保湿体70は、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向の両方(+X方向及び−X方向)に配置されているが、これに限らない。例えば、保湿体70は、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向のいずれか一方(+X方向または−X方向)に配置されていてもよい。すなわち、保湿体70は、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向の少なくとも一方に配置されていればよい。
【0059】
さらに、保湿体70を液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向の少なくとも一方に配置することに加えて、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の左右方向(+Y方向、−Y方向)の少なくとも一方に配置してもよい。これにより、保湿体70を液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向の少なくとも一方に配置する場合に比べて、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0060】
また、本実施形態では、保湿体70は、液体噴射ヘッド10との間で隙間62を有した状態で配置されているが、これに限らない。例えば、保湿体70は、液体噴射ヘッド10との間で隙間を有しない状態(密接した状態)で配置されていてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部を加湿しているが、これに限らない。例えば、ホルダー60の外気導入部61の近傍にファンを設けることにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流に加え、ファンの送風により発生する気流の一部を加湿してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、平面視矩形のホルダー60を備える液体噴射装置1について説明したが、これに限らない。以下、本実施形態とは異なる形状のホルダーを備える液体噴射装置について図6及び図7を用いて説明する。
【0063】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る液体噴射装置2における保湿体71の配置構成を示す模式図である。なお、図6は液体噴射装置2を構成する液体噴射ヘッド10及びその周辺部を図示し、それ以外の構成の図示を省略している。また、図6(a)は第2実施形態における保湿体71の配置構成を示す斜視図である。また、図6(b)は第2実施形態における保湿体71の配置構成を示す底面図である。本実施形態に係る液体噴射装置2は、ホルダー160が液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向に突出した凸形状となっている点で第1実施形態におけるホルダー60と異なる。図6において、図4と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0064】
ホルダー160は、キャリッジ40に固定されており、保湿体71を記録用紙Pの側で支持している。具体的には、ホルダー160は、キャリッジ40に固定されるとともに支持部162を繋ぐL字状の固定部161と、保湿体71を支持する支持部162と、を備えて構成されている。これにより、ホルダー160は保湿体71とともにキャリッジ40の走査移動に従って移動するようになっている。
【0065】
また、ホルダー160には第1実施形態で示した外気導入部が形成されていない。本実施形態においては、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により、ホルダー160の側部(固定部161が設けられた領域を除く)から外気が導入されるようになっている。これにより、外気のうちホルダー160内に導入された気体が保湿体71によって加湿されることになる。
【0066】
また、隙間62の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも保湿体71と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体71の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0067】
また、ホルダー160は液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向に突出した凸形状となっている。言い換えると、ホルダー160は液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部を整流させる流線形状となっている。そして、このホルダー160に支持される保湿体71はそのサイズはホルダー160に比べて一回り小さくなっているものの、その形状はホルダー160と同様に液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向に突出した凸形状になっている。
【0068】
図7は、第2実施形態における保湿体71により加湿された気流の流れを示す図である。なお、図7(a)は図5(a)に対応する液体噴射ヘッド10の走査方向が+X方向の場合を示した断面図である。また、図7(b)は液体噴射ヘッド10の走査方向が+X方向の場合を示した底面図である。図7において、図5と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0069】
図7に示すように、液体噴射ヘッド10が+X方向に走査される場合を考える。この場合、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流はその流れ方向が−X方向となるものが大部分となる。この場合、外気の一部は、液体噴射ヘッド10の走査方向の前側(+X方向側)に配置されたホルダー160の側部(固定部161が設けられた領域を除く)からホルダー160内に導入される。すると、ホルダー160内に導入された気体が保湿体71によって加湿される。つまり、外気が乾燥した状態であっても、ホルダー160内に導入されることにより、その導入された気体が保湿体71から自然蒸発した水分を含んで湿った状態となる。そして、保湿体71によって加湿された気体は隙間62を通った後、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれる。
【0070】
また、ホルダー160は液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部を整流させる流線形状となっているため、外気の一部は、ホルダー160の底面と記録用紙Pとの間を通過しにくくなっている。ここでは、流線形状を有する支持部162によって外気の一部が整流される(図7(b)参照)。つまり、外気が乾燥した状態であっても、ホルダー160の底面と記録用紙Pとの間を通過しにくくなっているので、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に直接導かれることが抑えられる。その結果、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間には、乾燥した気体を導かれることなく、隙間62を通った後の気体(保湿体71によって加湿された気体)が選択的にノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれることになる。
【0071】
本実施形態に係る液体噴射装置2によれば、ホルダー160が液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動の前後方向に突出した凸形状となっているので、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部を整流することができる。このため、乾燥した外気がノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に直接導かれることが抑えられる。つまり、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。したがって、印刷動作中において乾燥によるインク増粘が発生したりノズル開口に目詰まりが発生したりすることを抑え、高品質な印字を記録することが可能となる。
【0072】
また、上記実施形態では、保湿体を記録用紙Pの側に露出させないホルダーを備える液体噴射装置について説明したが、これに限らない。以下、本実施形態とは異なる形状のホルダーを備える液体噴射装置について図8を用いて説明する。
【0073】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る液体噴射装置3における保湿体72の配置構成を示す模式図である。なお、図8は液体噴射装置3を構成する液体噴射ヘッド10及びその周辺部を図示し、それ以外の構成の図示を省略している。また、図8(a)は第3実施形態における保湿体72の配置構成を示す底面図である。また、図8(b)は第3実施形態における保湿体72の配置構成を示す断面図である。本実施形態に係る液体噴射装置3は、ホルダー260に保湿体72を記録用紙Pの側に露出させる開口部263が形成されている点で第1実施形態におけるホルダー60と異なる。図8において、図4と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0074】
ホルダー260は、キャリッジ40に固定されており、保湿体72を記録用紙Pの側で支持している。これにより、ホルダー260は保湿体72とともにキャリッジ40の走査移動に従って移動するようになっている。
【0075】
また、ホルダー260の側部には外気導入部261が形成されている。この外気導入部261は液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動によりホルダー260内に外気を導入するものである。これにより、外気のうちホルダー260内に導入された気体が保湿体72によって加湿されることになる。
【0076】
また、外気導入部261の流路抵抗、隙間62の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも、外気導入部261を通って保湿体72と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体72の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0077】
また、ホルダー160の底部には開口部263が形成されている。この開口部263は保湿体72を記録用紙Pの側に露出させるものである。これにより、外気のうちホルダー260の底面と記録用紙Pとの間を通った気体が保湿体72によって加湿されることになる。
【0078】
図8(b)に示すように、液体噴射ヘッド10が+X方向に走査される場合を考える。この場合、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流はその流れ方向が−X方向となるものが大部分となる。この場合、外気の一部は、液体噴射ヘッド10の走査方向の前側(+X方向側)に配置されたホルダー260に形成された外気導入部261からホルダー260内に導入される。すると、ホルダー260内に導入された気体が保湿体72によって加湿される。つまり、外気が乾燥した状態であっても、ホルダー260内に導入されることにより、その導入された気体が保湿体72から自然蒸発した水分を含んで湿った状態となる。そして、保湿体72によって加湿された気体は隙間62を通った後、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれる。
【0079】
また、外気の一部は、ホルダー260の底面と記録用紙Pとの間を通過する。この間を通過した気体は、開口部263から露出した保湿体72の表面を通った後、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれる。この気体は、保湿体72によって加湿されるとともに、隙間62を通った後の気体(保湿体72によって加湿された気体)をノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導くように作用する。
【0080】
また、上記第1実施形態では、平面視矩形状の保湿体70を各ホルダーに1つだけ備えた液体噴射装置1について説明したが、これに限らない。以下、第1実施形態とは異なる形態の保湿体を備える液体噴射装置について、図9を用いて説明する。
【0081】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る液体噴射装置4における保湿体73の配置構成を示す模式図である。なお、図9は液体噴射装置4を構成する液体噴射ヘッド10及びその周辺部を図示し、それ以外の構成の図示を省略している。また、図9(a)は第4実施形態における保湿体73の配置構成を示す斜視図である。また、図9(b)は第4実施形態における保湿体73の配置構成を示す断面図である。本実施形態に係る液体噴射装置4は、保湿体73が複数に分割されている点で第1実施形態における保湿体70と異なる。図9において、図4と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0082】
図9に示すように、保湿体73は、複数に分割されており、各ホルダー360に4つずつ配置されている。また、ホルダー360の側部には外気導入部361が形成されている。この外気導入部361は、側面視において(X方向側から視て)保湿体73が露出する大きさになっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部が隣り合う2つの保湿体の間を通った後にノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に導かれるようになっている。すると、保湿体が各ホルダーに1つだけ配置されている場合に比べて保湿体73の露出した表面積が増えることになる。このため、保湿体73の表面を通過する気流の割合が増えるので、気流の一部を加湿しやすくなる。
【0083】
また、外気導入部361の流路抵抗、隙間62の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも、外気導入部361を通って保湿体73と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体72の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0084】
なお、上記第1実施形態では、保湿体として、例えばスポンジ等の吸収体に水分等を含んだ保湿液を浸み込ませたものを用いた液体噴射装置について説明したが、これに限らない。以下、上記第1実施形態とは異なる形態の保湿体を備える液体噴射装置について、図10を用いて説明する。
【0085】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係る液体噴射装置5における保湿体74の配置構成を示す模式図である。なお、図10は液体噴射装置5を構成する液体噴射ヘッド10及びその周辺部を図示し、それ以外の構成の図示を省略している。本実施形態に係る液体噴射装置5は、保湿体74が液体である点で上記第1実施形態における保湿体70と異なる。図10において、図4と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
図10に示すように、ホルダー460は、キャリッジ40に固定されており、保湿体74を記録用紙Pの側で支持している。具体的には、ホルダー460の底部には液体の保湿体74を貯留する貯留部463が形成されており、この貯留部463によって保湿体74が貯留されている。これにより、ホルダー460は保湿体74とともにキャリッジ40の走査移動に従って移動するようになっている。また、保湿体74(保湿液)が記録用紙Pの表面に滴り落ちないようになっている。
【0087】
また、外気導入部461の流路抵抗、隙間62の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも、外気導入部461を通って保湿体74と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体74の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0088】
なお、上記第1実施形態では、保湿体を支持するホルダーが設けられているが、これに限らない。以下、上記第1実施形態とは異なる形態の液体噴射装置について、図11を用いて説明する。
【0089】
(第6実施形態)
図11は、第6実施形態に係る液体噴射装置6における保湿体75の配置構成を示す模式図である。なお、図11は液体噴射装置6を構成する液体噴射ヘッド10及びその周辺部を図示し、それ以外の構成の図示を省略している。本実施形態に係る液体噴射装置6は、保湿体75が支持部材560で保持されている点で上記第1実施形態における液体噴射装置1と異なる。図11において、図4と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0090】
図11に示すように、支持部材560は、その一端が保湿体75の上面に固定されており、その他端がキャリッジ40側に設けられた保持機構(図示略)に接続されている。具体的には、支持部材560の一端は、保湿体75と平面視重なる大きさに形成されており、例えば粘着テープや接着剤等の接合部材により保湿体75の上面と固定されている。これにより、支持部材560は保湿体75とともにキャリッジ40の走査移動に従って移動するようになっている。
【0091】
また、隙間62の流路抵抗は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間の流路抵抗よりも小さくなっている。これにより、液体噴射ヘッド10と記録用紙Pとの相対移動により発生する気流の一部は、ノズル形成面21Aと記録用紙Pの間よりも保湿体75と液体噴射ヘッド10の間の隙間62を流れることになる。このため、気流の一部が保湿体75の表面を通過して加湿され、ノズル形成面21Aと記録用紙Pとの間に湿った気体が流れやすくなる。
【0092】
なお、上記実施形態においては、液体噴射装置としてシリアル型のインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ライン型のインクジェット式プリンターについても適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,2,3,4,5,6…液体噴射装置、10…液体噴射ヘッド、21A…ノズル形成面、60,160,260,360,460…ホルダー、70,71,72,73,74,75…保湿体、P…記録用紙(媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を媒体に向けて噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドの側方に配置され、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動により発生する気流の一部を加湿して、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面と前記媒体との間に導く保湿体と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記保湿体は、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動の前後方向の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記保湿体は、前記ノズル形成面に近接して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記保湿体は、前記液体噴射ヘッドとの間で隙間を有した状態で配置され、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動により発生する気流の一部が前記隙間を通った後に前記ノズル形成面と前記媒体との間に導かれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記隙間の流路抵抗は、前記ノズル形成面と前記媒体との間の流路抵抗よりも小さくなっていることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記保湿体を前記媒体の側で支持するホルダーが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記ホルダーは、前記液体噴射ヘッドと前記媒体との相対移動の前後方向に突出した凸形状となっていることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−161885(P2011−161885A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29852(P2010−29852)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】