液体噴射装置
【課題】吸引ポンプの吸引力の増大により、シール部材がキャップ部材の内側に倒れやすくなり、記録ヘッドとの密着性を低下させるという課題がある。
【解決手段】ノズルからのインクを噴射する記録ヘッドと、記録ヘッドに当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、記録ヘッドからインクを吸引するキャッピング部とを備えたインクジット式記録装置であって、キャッピング部は、弾性部材からなりノズルを囲うように記録ヘッドに当接する四角枠状のシール部7bと、シール部7bを保持するキャップホルダー9とを有し、シール部7bは、四角枠の辺の幅が部分的に異なるインクジェット式記録装置を提供する。
【解決手段】ノズルからのインクを噴射する記録ヘッドと、記録ヘッドに当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、記録ヘッドからインクを吸引するキャッピング部とを備えたインクジット式記録装置であって、キャッピング部は、弾性部材からなりノズルを囲うように記録ヘッドに当接する四角枠状のシール部7bと、シール部7bを保持するキャップホルダー9とを有し、シール部7bは、四角枠の辺の幅が部分的に異なるインクジェット式記録装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置としてのインクジェット式プリンターは、非印刷時に液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドのノズルの形成面に当接するためのキャッピング装置を備えている。キャッピング装置には、キャップ部材と、キャップ部材を移動させる昇降装置とが備えられている。キャップ部材には、エラストマー等の可撓性部材からなるシール部材が具備されており、このシール部材が記録ヘッドに当接し、記録ヘッドのノズル形成面を気密状態に保持することにより、ノズル開口部の乾燥を防ぐことができる。また、キャッピング装置は、キャップ部材に接続された吸引ポンプからの負圧により、記録ヘッドのノズル内のインクを吸引排出して、ノズルの目詰まりを防止する役割をも備えている。このようにシール部材が記録ヘッドに当接するとき、シール部材が軟質であるために、吸引ポンプから負圧が印加される際や記録ヘッドに当接される際に、シール部材がキャップ部材の内側へ倒れることがあった。また、シール部材がキャップ部材と一体に形成される際に、シール部材の開口部側の端部の高さが不揃いとなることがあった。従って、シール部材の強度を増加させるために、キャップ部材の側壁部の上端部分にコーナー部を切り欠いた環状の補強リブを形成し、この補強リブを覆うようにしてシール部材を形成する場合があった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−225484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近の高画質印刷の要求に伴い、記録ヘッドのノズル数が増加する傾向にある。このため、ノズル内のインクの吸引する吸引ポンプの吸引力も増大する傾向にある。従って、吸引ポンプの吸引力の増大により、シール部材がキャップ部材の内側に倒れやすくなり、記録ヘッドとの密着性を低下させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]ノズルからの液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、前記液体噴射ヘッドから液体を吸引するキャッピング部とを備えた液体噴射装置であって、前記キャッピング部は、弾性部材からなり前記ノズルを囲うように前記液体噴射ヘッドに当接する四角枠状のシール部と、前記シール部を保持するキャップホルダーとを有し、前記シール部は、前記四角枠の辺の幅が部分的に異なることを特徴とする液体噴射装置。
【0007】
この構成によれば、シール部は、四角枠の辺の幅が部分的に異なる。このため、辺の強度が変わり、吸引ポンプによる吸引時の負圧による変形がしにくくなる。これにより、シール部材がキャップ部材の内側に倒れることを抑制し、液体噴射ヘッドとシール部材との密着性の低下を抑制できる。
【0008】
[適用例2]前記幅のうち大きい幅部は、小さい幅部より、前記四角枠の内側に大きくなっていることを特徴とする上記液体噴射装置。
【0009】
この構成によれば、吸引ポンプによる吸引時の負圧によりキャップは四角枠の内側に撓みやすくなるが、内側に大きい幅部を設けることでシール部の剛性が上がり、内側への撓みを抑制する。
【0010】
[適用例3]前記大きい幅部における前記四角枠の内側に大きくなっている部分が、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接した状態で前記吸引ポンプにより吸引したときに当接し、吸引していないときには当接していないことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0011】
この構成によれば、吸引していないときには、大きい幅部における内側に大きくなっている部分が、液体噴射ヘッドに当接しない。そのため、キャップを液体噴射ヘッドに当接させるときの力は小さい幅部にかかる。これにより、シール部と液体噴射ヘッドの接触圧力が増大しないので、シール部と液体噴射ヘッドの密着性が低下する。これにより、シール部が内側に移動することを抑制する。また、吸引時には、大きい幅部における内側に大きくなっている部分が液体噴射ヘッドに当接する。これにより、大きい幅部の接触力が増大し、シール部が内側に移動するのを抑制する。
【0012】
[適用例4]前記シール部と前記液体噴射ヘッドが当接したときに、前記シール部における前記四角枠内側の側面と前記液体噴射ヘッドの前記ノズルが形成された面との成す角度は、前記小さい幅部における角度より前記大きい幅部における角度のほうが小さいことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0013】
この構成によれば、吸引時にシール部が潰れかけると、大きい幅部の内側側面がヘッドと当接しやすくなることでシール部が内側に移動するのを抑制する。
【0014】
[適用例5]前記液体噴射ヘッドは複数のノズルを列状に配置したノズル列を複数有し、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接させた状態で、前記大きい幅部は前記ノズル列の間に対向する位置に配置されたことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0015】
この構成によれば、大きい幅部は内側に突設した状態となっているが、ノズル列の間に配置されているため、大きい幅部とノズルが接して、接したノズル内の液体が吐出または吸引できなくなることがない。
【0016】
[適用例6]前記大きい幅部は、前記四角枠の長手方向の辺の内側に短手方向の辺の内側より多く配置されることを特徴とする上記液体噴射装置。
【0017】
この構成によれば、長手方向の辺の剛性が上がり、シール部が内側に移動するのを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】キャッピング手段の構成を示す図。
【図2】キャッピング手段の構成を示す図。
【図3】キャッピング手段の構成を示す図。
【図4】キャップホルダーの平面図。
【図5】キャップホルダーに備えられたキャップ部材の平面図。
【図6】小さい幅部が形成された位置における断面図。
【図7】大きい幅部が形成された位置における断面図。
【図8】(a)は、小さい幅部が形成された部分の拡大断面図、(b)は、小さい幅部の断面を示す図。
【図9】(a)は、大きい幅部が形成された部分の拡大断面図、(b)は、大きい幅部の断面を示す図。
【図10】ノズル形成面に当接する小さい幅部の断面を示す図。
【図11】ノズル形成面に当接する大きい幅部の断面を示す図。
【図12】ノズル列に対向するシール部の配置を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるインクジット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1乃至図3は、本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示したものである。なお、図1は装置の上面から視た状態を示し、また図2および図3は側面から視た状態で示しており、図2は、非キャッピング状態を示し、図3は、キャッピング状態を示している。
【0020】
図2、図3のキャリッジ1はガイドロッド2に案内されて用紙ガイド板3に対向して平行に移動するように構成されている。そしてキャリッジ1は、図には示されていないがキャリッジモーターにより往復動されるタイミングベルトの一部に結合されて、ガイドロッド2に沿って往復移動されるように構成されている。
【0021】
キャリッジ1には、液体噴射ヘッドである記録ヘッド5が用紙ガイド板3の上面に配置された記録用紙4に対向するように搭載されており、記録ヘッド5に対して液体としてのインクが導入され、印刷デ−タに対応したビットマップデータに基づいて、用紙ガイド板3上の記録用紙4にインク滴を吐出して印字することができるように構成されている。
【0022】
記録ヘッド5を封止するキャッピング手段6は、インクジット式記録装置の端部における非印字領域(ホームポジション)に配置されており、記録ヘッド5のノズル形成面に密封空間をもって封止できるサイズのキャップ部材7を備え、非印字時に記録ヘッド5のノズル形成面を封止してノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、クリーニング操作時に図示せぬ吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッド5からインクを強制的に排出させる機能とを備えている。
【0023】
キャッピング手段6に配置されたキャップ部材7の内底部には、図1に示すようにインク排出口7aが形成され、このインク排出口7aには、チューブの一端が接続され、このチューブの他端は吸引ポンプに接続されている。
【0024】
これにより、非印字時にはキャップ部材7によって記録ヘッド5のノズル形成面を封止し、またクリーニング指令を受けた場合には、吸引ポンプによる負圧がキャッピング手段の内部空間に印加され、記録ヘッド5からインクを強制的に排出させることができる。
【0025】
また、キャップ部材7は、後で詳述するように方形状のキャップホルダー9に対して一体成形されており、このキャップホルダー9の長手方向の両側壁には、それぞれ平板状のバネ受け部9aがそれぞれ水平方向に形成されている。そして、図2のキャップホルダー9は昇降機構を構成するスライダー10上に搭載され、スライダー10と図1のバネ受け部9aとの間に介装された一対の圧縮バネ11によって、記録ヘッド5側に付勢された状態で取り付けられている。
【0026】
なお、キャップホルダー9の一端部中央および他端部の両側部には、それぞれ係合部9bが形成されており、これら3つの係合部9bは、スライダー10に形成されたそれぞれの係止部材10aによって3点で係止されることにより、キャップホルダー9は上方向、すなわち記録ヘッド5側への移動が規制されて、スライダー10上に搭載されている。
【0027】
また、図2のスライダー10の下底部には一対の長穴12がほぼ水平方向に形成されており、この各長穴12内にはフレーム13に対して回動可能に取り付けられたアーム14の自由端側に配置された一対の水平軸15が、それぞれ移動可能となるように収容されている。これにより、スライダー10はアーム14を介してフレーム13に対して円弧状軌跡をもって立ち上がることができる。
【0028】
また、スライダー10の非印字領域側の端部両側には、それぞれガイド片10bが形成されていて、この一対のガイド片10bはフレーム13に形成された一対の案内溝16によって支持されるように構成されている。この案内溝16は一端部に形成された低所部16aと、他端部に形成された水平な高所部16bと、さらにこれらを接続する傾斜部16cとにより構成されており、これら3つの領域が連通して形成されている。
【0029】
さらに、図1に示すように一方のガイド片10bには、一端がフレーム13に固定された引っ張りバネ17の他端が固定されていて、この引っ張りバネ17の作用により、図2のスライダー10は印字領域方向、かつ記録ヘッド5から離間する方向、すなわちこの実施の形態においては下方に位置するように付勢されている。
【0030】
そして、図2に示すようにキャリッジ1がキャッピング手段6の直上に移動した際、キャリッジ1に配置された係合体1aがスライダー10に直立するように形成された係合部10cに当接することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダー10はアーム14を介して立ち上がり、これによりキャップホルダー9に一体に形成されたキャップ部材7が、キャリッジ1に配置された記録ヘッド5のノズル形成面を封止することができるように構成されている。
【0031】
また、キャリッジ1が印字領域側に移動した場合には、スライダー10に配置された係合部10cに対するキャリッジ1側の係合体1aの当接が解かれ、スライダー10はバネ17の引張力によって図2に示した状態に復帰し、これにより、キャップ部材7による記録ヘッド5のノズル形成面の封止が解除される。
【0032】
一方、図1または図3に示すようにキャッピング手段6に隣接する印字領域側には、キャリッジ1の移動に伴ってキャリッジ1に搭載された記録ヘッド5のノズル形成面をワイピングする、例えばゴム性のワイピング部材21を備えたクリーナ保持部材20が配置されている。このクリーナ保持部材20は水平方向に移動され、ワイピング部材21を記録ヘッド5の移動経路上のワイピング位置に対して進入または退避できるように構成されている。
【0033】
したがって、クリーニング操作時において、記録ヘッド5はこのワイピング部材21により、そのインク吸引前においてノズル形成面に付着している塵埃や紙粉などが除去され、またインク吸引後においてノズル形成面に付着しているインクの払拭がなされる。
【0034】
この場合、実施の形態においては、ワイピング部材21を保持するクリーナ保持部材20の移動と、キャッピング手段の内部空間を負圧に吸引するポンプとは、用紙ガイド板3上における記録用紙4を搬送する図示せぬ紙送りモーターの駆動力を利用するようになされている。そして吸引ポンプの駆動に伴ってワイピング部材21は記録ヘッド5の移動軌跡上に進出するよう構成されている。
【0035】
以上の構成において、キャリッジモーターの駆動によりキャリッジ1が非印字領域側に移動すると、図2に示すように、キャリッジ1に配置された係合体1aが、スライダー10に形成された係合部10cに当接する。そして、なおもキャリッジ1が同方向に移動することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダー10はアーム14を介して立ち上がる。一方、スライダー10に形成されたガイド片10bは、案内溝16を構成する低所部16aから傾斜部16cに、さらに水平な高所部16bへと移動し、これにより、キャップホルダー9に一体成形されたキャップ部材7がキャリッジ1に配置された記録ヘッド5を封止する。
【0036】
このようにして、キャップ部材7によるノズル形成面の封止が完了した段階で、キャップ部材7は大気との連通が断たれて気密状態となり、ノズル開口からのインクの蒸発を抑制して、記録ヘッド5の目詰まりを防止するように作用する。また、この状態で吸引ポンプを駆動させることで、キャップ部材7の内部空間に負圧を与えることができ、記録ヘッド5のノズル開口よりインクを排出させることができる。
【0037】
そして、キャリッジモーターの駆動によりキャリッジ1が印字領域側に移動すると、キャリッジ1に配置された係合体1aは、スライダー10に形成された係合部10cから離れる。したがってバネ17の引張力によって、スライダー10はアーム14を介して、またスライダー10に形成されたガイド片10bが低所部16a側に移動することによりスライダー10は降下する。これによりキャップ部材7による記録ヘッド5の封止状態が解かれる。
【0038】
図4は、キャップホルダー9のみの構成を図2の記録ヘッド5側から視た状態の平面図であり、図5は、キャップホルダー9に備えられたキャップ部材7を図2の記録ヘッド5側から視た状態の平面図である。
【0039】
図4のキャップホルダー9は、ほぼ方形状に形成されて上部が開放された構成とされており、開口部端面9cは、水平状態に形成された一対のバネ受け部9aの上面とほぼ面一に形成されている。図4の開口部端面9cは、図5のキャップホルダー9の外周に沿って環状に形成されている。
【0040】
図5は、図4に示したキャップホルダー9に対してキャップ部材7をインサート成形法あるいは二色成形法によって一体に成形した状態を示している。キャップホルダー9は、例えば硬質合成樹脂により構成され、またキャップ部材7は軟質性素材、例えばエラストマーあるいはゴムにより構成されている。
【0041】
両者をインサート成形法により一体成形する場合においては、まず、キャップホルダー9が所定の金型内においてインサート成形され、こうして成形されたキャップホルダー9は、第2の金型内に装填され、さらにキャップ部材7を構成する軟質性素材がインサート成形されることで、両者が一体に成形される。
【0042】
また、両者を二色成形法によって一体成形する場合においては、まず、キャップホルダー9が所定の金型内において一次成形され、一次成型品であるキャップホルダー9と二次成形キャビティとにより形成される空間内にキャップ部材7を構成する軟質性素材が充填されることにより、両者が一体に成形される。
【0043】
図5のキャップ部材7には、図6、図7に示すように、図2の記録ヘッド5側に向かって突出するシール部7bが略四角形状の四角枠を形成している。シール部7bは、大きい幅部71と小さい幅部70とから構成されている。大きい幅部71の幅の長さL2は、小さい幅部70の幅の長さL1より長い。また、大きい幅部71は、小さい幅部70より、四角枠の内側に大きくなっている。
【0044】
長手方向における一つの辺に形成された大きい幅部71の個数は、短手方向における一つの辺に形成された大きい幅部71の個数より多い。本実施形態では、長手方向における大きい幅部71は2個であり、短手方向における大きい幅部71は1個である。
【0045】
図6は、図5のキャップホルダー9に備えられたキャップ部材7をA−A線から矢印方向に視た状態の断面図であり、小さい幅部70が形成された位置における断面図である。図7は、図5のキャップホルダー9に備えられたキャップ部材7をB−B線から矢印方向に視た状態の断面図であり、大きい幅部71が形成された位置における断面図である。
【0046】
図4のキャップホルダー9には、図2の記録ヘッド5側に向かって立設する補強リブ9eが環状に形成されている。また、図4のキャップホルダー9の内底部には、図6、図7のキャップ部材7と、キャップ部材7の下底部において係合する係合部としての係合孔9fが形成されている。
【0047】
キャッピング部は、弾性部材からなりノズルを囲うように記録ヘッド5に当接する四角枠状のシール部7bが形成されたキャップ部材7と、キャップ部材7を保持するキャップホルダー9とを含んで構成される。
【0048】
図8(a)は、小さい幅部70が形成された部分の拡大図である。図9(a)は、大きい幅部71が形成された部分の拡大図である。
【0049】
キャップ部材7は、図6および図7に示されたように、キャップホルダー9の内底面に沿って一体に成形されており、その一部がキャップホルダー9に形成された係合孔9fに充填されている。係合孔9fは、図8(a)、図9(a)に拡大して示したように、キャップ部材7のシール部7b側に向かってオーバーハング状態に形成している。
【0050】
すなわち、オーバーハングにより形成されるアンカー部9jにキャップ部材7の構成体が充填されることにより、キャップ部材7はキャップホルダー9の内底部に確実に接合され、密着強度を向上させるように作用する。また、たとえキャップ部材7の内底部に負圧が作用しても、キャップ部材7の下底部がキャップホルダー9の内底部から浮き上がるような作用を阻止させることができる。これにより、両者の界面における剥離を防止することが可能となり、剥離による大気のリークを効果的に防止させることができる。
【0051】
図8(a)、図9(a)のキャップホルダー9には、内側面9dから上方向にL字状に立上る補強リブ9eが形成されていて、これによりキャップホルダー9の内側面9dと補強リブ9eとの間に空間部9hが形成されている。そして、前述したようにキャップホルダー9に対してキャップ部材7はインサート成形または二色成形され、キャップ部材7は空間部9hを充填し、且つ補強リブ9eのさらに内側面9iを覆うようにして一体に成形されている。
【0052】
そして、キャップホルダー9の内側面9dにおいて、キャップホルダー9の開口部端面9cに対して突出して形成されるシール部7bは、キャップホルダー9の内側面9dから立ち上がるL字状補強リブ9eの直上に形成されている。
【0053】
このように、キャップホルダー9にその内側面9dから上方向にL字状に立ち上がる補強リブ9eを形成させたことにより、補強リブ9eがキャップ部材7の支持体として作用し、クリーニング動作時においてキャップ部材7の内部空間に負圧が印加されても、キャップ部材7が内側方向へ倒れ込むのを効果的に阻止するように作用する。
【0054】
しかも、キャップ部材7の一部はキャップホルダー9の内側面から上方にL字状に立ち上がる補強リブ9eによって形成される空間部9hを充填するようにして形成されるので、この空間部9hに充填されたキャップ部材7の構成体が、記録ヘッド5に当接するシール部7bを外側方向に牽引するように作用し、これによりキャップ部材7の内側方向への倒れ込み現象を相乗的に低減させるように働く。
【0055】
さらに、キャップ部材7をキャップホルダー9に対してインサート成形法あるいは二色成形法によって一体に形成させることによって、空間部9hに充填されたキャップ部材7の構成体とキャップホルダー9との間の界面において機械的に接着力が発生し、これによりキャップ部材7のシール部7bを外側方向に牽引する作用を確実なものとすることができる。
【0056】
図8(b)は、図8(a)の円の範囲Cにおける小さい幅部70の断面を示す図である。図8(b)に示すように、小さい幅部70は、記録ヘッド5のノズルが形成されたノズル形成面5aと略平行な当接面702と、ノズル形成面5aに対して傾斜する、内側の側面703、外側の側面701が形成されている。
【0057】
図9(b)は、図9(a)の円の範囲Dにおける大きい幅部71の断面を示す図である。図9(b)に示すように、大きい幅部71は、ノズル形成面5aに対して傾斜する、第1の内側の側面712、第2の内側の側面713、外側の側面711が形成されている。
【0058】
図9(b)の大きい幅部71において、ノズル形成面5aに対する第1の内側の側面712の成す角度R2は、ノズル形成面5aに対する第2の内側の側面713の成す角度R3より小さい。
【0059】
図9(b)の大きい幅部71におけるノズル形成面5aに対する第2の内側の側面713の成す角度R3は、図8(b)の小さい幅部70におけるノズル形成面5aに対する内側の側面703の成す角度R1より小さい。
【0060】
これにより、記録ヘッド5のノズル形成面5aにシール部7bが当接した状態において、まず当接面702と第1の内側の側面712とがノズル形成面5aと当接する。このため、ノズル形成面5aとシール部7bとの接触圧力において、ノズル形成面5aと当接面702とが当接している部分と、ノズル形成面5aと第1の内側の側面712とが当接している部分で高くなるため、密着性が良好に保持できる。
【0061】
さらにクリーニング動作時において、キャップ部材7の内部空間に負圧が印加されることでシール部7bが潰れる方向に働く力が増加する。このため、シール部7bが潰れるため、ノズル形成面5aと接触する面積が増加し、密着性が良好に保持できる。
【0062】
図10(a)、(b)は、ノズル形成面5aに当接する小さい幅部70の断面を示す図である。図10(a)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態にあり、図10(b)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加された状態にある。
【0063】
図10(a)のキャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態から、図10(b)の負圧が印加された状態に移行すると、図10(a)の小さい幅部70における当接面702は、ノズル形成面5aを滑り、図10(b)の図面左側であるキャップ部材7の内側の位置に移動し、内側の側面703、外側の側面701は、湾曲した形状になる。このように、キャップ部材7の内部が印加された負圧により、小さい幅部70が形成されたシール部7bが図面左側であるキャップ部材7の内側に倒れる。
【0064】
図11(a)、(b)は、ノズル形成面5aに当接する大きい幅部71の断面を示す図である。図11(a)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態にあり、図11(b)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加された状態にある。
【0065】
図11(a)のキャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態から、図11(b)の負圧が印加される状態に移行すると、大きい幅部71における第1の内側の側面712は、ノズル形成面5aに対して傾斜しているので、大きい幅部71が形成されたシール部7bがキャップ部材7の内側に倒れると、第1の内側の側面712とノズル形成面5aと当接する面積が増加する。これにより、第1の内側の側面712とノズル形成面5aとの摩擦力が増大するので、第1の内側の側面712は、キャップ部材7の内側にさらに移動することが抑制される。すなわち、大きい幅部71におけるシール部7bがキャップ部材7の内側にさらに倒れるのを抑制することができる。
【0066】
これにより、大きい幅部71と大きい幅部71の間に形成された小さい幅部70におけるシール部7bがキャップ部材7の内側に倒れるのを抑制することができる。
【0067】
図11(b)の第1の内側の側面712においてノズル形成面5aと当接する面積が増加した部分は、大きい幅部71における四角枠の内側に大きくなっている部分が含まれる。このように、大きい幅部71における四角枠の内側に大きくなっている部分は、吸引ポンプにより吸引したときに記録ヘッド5に当接し、吸引していないときには記録ヘッド5に当接していない。
【0068】
図9(b)の大きい幅部71におけるシール部7bにおける頂点の位置P3は、第1の内側の側面712と外側の側面711とが交わる位置にある。大きい幅部71のシール部7bにおける記録ヘッド5側に突出した部分の幅の長さL3は、開口部端面9cの延長線と外側の側面711との交わる位置P2から、キャップ部材7の内底面から立ち上がる第3の内側の側面714と第2の内側の側面713とが交わる位置P1までの距離である。
【0069】
一点鎖線は、記録ヘッド5側に突出した部分の幅の長さL3の中心位置Sを示す。図9(b)のシール部7bの大きい幅部71の頂点の位置P3は、大きい幅部71の中心位置Sよりキャップ部材7の外側に形成される。これにより、シール部7bの大きい幅部71がノズル形成面5aと当接した場合、シール部7bがキャップ部材7の外側に倒れながら、ノズル形成面5aと当接するため、キャップ部材7の内側方向にシール部7bが倒れこむことを効果的に阻止するように作用する。
【0070】
図12は、記録ヘッド5にキャップ部材7を当接した状態において、ノズル列30に対向するシール部7bの配置を説明するための図である。シール部7bの大きい幅部71をノズル列30と接触しないようにノズル列間に形成することにより、キャップ部材7内に負圧が印加され、大きい幅部71の接触面積が増大しても、ノズル列30とシール部7bとが接触することを阻止することができる。
【0071】
以上、本実施形態で説明したインクジット式記録装置は、ノズルからのインクを噴射する記録ヘッド5と、記録ヘッド5に当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、記録ヘッド5からインクを吸引するキャッピング部とを備えたインクジット式記録装置であって、キャッピング部は、弾性部材からなりノズルを囲うように記録ヘッド5に当接する四角枠状のシール部7bと、シール部7bを保持するキャップホルダー9とを有し、シール部7bは、四角枠の辺の幅が部分的に異なる。
【0072】
この構成によれば、シール部7bは、大きい幅部71と小さい幅部70とが形成されており、四角枠の辺の幅が部分的に異なる。このため、辺の強度が変わり、吸引ポンプによる吸引時の負圧による変形がしにくくなる。
【0073】
これにより、シール部7bがキャップ部材7の内側に倒れることを抑制し、記録ヘッド5とシール部7bとの密着性の低下を抑制できる。
【0074】
また、大きい幅部71は、小さい幅部70より、四角枠の内側に大きくなっている。この構成によれば、吸引ポンプによる吸引時の負圧によりキャップであるキャップ部材7は四角枠の内側に撓みやすくなるが、内側に大きい幅部71を設けることでシール部7bの剛性が上がり、内側への撓みを抑制する。
【0075】
また、図11(a)、(b)を用いて説明したように、大きい幅部71における四角枠の内側に大きくなっている部分が、記録ヘッド5とキャッピング部を当接した状態で吸引ポンプにより吸引したときに当接し、吸引していないときには当接していない。
【0076】
この構成によれば、吸引していないときには、大きい幅部71における内側に大きくなっている部分が、記録ヘッド5に当接しない。そのため、キャップ部材7を記録ヘッド5に当接させるときの力は小さい幅部70にかかる。これにより、シール部7bと記録ヘッド5の接触圧力が増大しないので、シール部7bと記録ヘッド5の密着性が低下する。これにより、シール部7bが内側に移動することを抑制する。また、吸引時には、大きい幅部71における内側に大きくなっている部分が記録ヘッド5に当接する。これにより、大きい幅部71の接触力が増大し、シール部7bが内側に移動するのを抑制する。
【0077】
また、シール部7bと記録ヘッド5が当接したときに、シール部7bにおける四角枠内側の側面と記録ヘッド5のノズルが形成されたノズル形成面5aとの成す角度は、小さい幅部70における角度R1より大きい幅部71における角度R2,R3のほうが小さい。
【0078】
この構成によれば、吸引時にシール部7bが潰れかけると、大きい幅部71の内側側面である第1の内側の側面712が記録ヘッド5と当接しやすくなることでシール部7bがキャップ部材7の内側に移動するのを抑制する。
【0079】
また、記録ヘッド5は、図12の複数のノズルを列状に配置したノズル列30を複数有し、記録ヘッド5とキャッピング部におけるキャップ部材7とを当接させた状態で、大きい幅部71はズル列30の間に対向する位置に配置される。
【0080】
この構成によれば、大きい幅部71はキャップ部材7の内側に突設した状態となっているが、ノズル列30の間に配置されているため、大きい幅部71とノズルが接して、接したノズル内のインクが吐出または吸引できなくなることがない。
【0081】
また、大きい幅部71は、四角枠の長手方向の辺の内側に短手方向の辺の内側より多く配置される。 この構成によれば、長手方向の辺の剛性が上がり、シール部7bが内側に移動するのを抑制する。
【符号の説明】
【0082】
R1,R2,R3…角度、5…記録ヘッド、5a…ノズル形成面、7…キャップ部材、7b…シール部、9…キャップホルダー、30…ノズル列、70…小さい幅部、71…大きい幅部、703…内側の側面、712…第1の内側の側面、713…第2の内側の側面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置としてのインクジェット式プリンターは、非印刷時に液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドのノズルの形成面に当接するためのキャッピング装置を備えている。キャッピング装置には、キャップ部材と、キャップ部材を移動させる昇降装置とが備えられている。キャップ部材には、エラストマー等の可撓性部材からなるシール部材が具備されており、このシール部材が記録ヘッドに当接し、記録ヘッドのノズル形成面を気密状態に保持することにより、ノズル開口部の乾燥を防ぐことができる。また、キャッピング装置は、キャップ部材に接続された吸引ポンプからの負圧により、記録ヘッドのノズル内のインクを吸引排出して、ノズルの目詰まりを防止する役割をも備えている。このようにシール部材が記録ヘッドに当接するとき、シール部材が軟質であるために、吸引ポンプから負圧が印加される際や記録ヘッドに当接される際に、シール部材がキャップ部材の内側へ倒れることがあった。また、シール部材がキャップ部材と一体に形成される際に、シール部材の開口部側の端部の高さが不揃いとなることがあった。従って、シール部材の強度を増加させるために、キャップ部材の側壁部の上端部分にコーナー部を切り欠いた環状の補強リブを形成し、この補強リブを覆うようにしてシール部材を形成する場合があった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−225484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近の高画質印刷の要求に伴い、記録ヘッドのノズル数が増加する傾向にある。このため、ノズル内のインクの吸引する吸引ポンプの吸引力も増大する傾向にある。従って、吸引ポンプの吸引力の増大により、シール部材がキャップ部材の内側に倒れやすくなり、記録ヘッドとの密着性を低下させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]ノズルからの液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、前記液体噴射ヘッドから液体を吸引するキャッピング部とを備えた液体噴射装置であって、前記キャッピング部は、弾性部材からなり前記ノズルを囲うように前記液体噴射ヘッドに当接する四角枠状のシール部と、前記シール部を保持するキャップホルダーとを有し、前記シール部は、前記四角枠の辺の幅が部分的に異なることを特徴とする液体噴射装置。
【0007】
この構成によれば、シール部は、四角枠の辺の幅が部分的に異なる。このため、辺の強度が変わり、吸引ポンプによる吸引時の負圧による変形がしにくくなる。これにより、シール部材がキャップ部材の内側に倒れることを抑制し、液体噴射ヘッドとシール部材との密着性の低下を抑制できる。
【0008】
[適用例2]前記幅のうち大きい幅部は、小さい幅部より、前記四角枠の内側に大きくなっていることを特徴とする上記液体噴射装置。
【0009】
この構成によれば、吸引ポンプによる吸引時の負圧によりキャップは四角枠の内側に撓みやすくなるが、内側に大きい幅部を設けることでシール部の剛性が上がり、内側への撓みを抑制する。
【0010】
[適用例3]前記大きい幅部における前記四角枠の内側に大きくなっている部分が、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接した状態で前記吸引ポンプにより吸引したときに当接し、吸引していないときには当接していないことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0011】
この構成によれば、吸引していないときには、大きい幅部における内側に大きくなっている部分が、液体噴射ヘッドに当接しない。そのため、キャップを液体噴射ヘッドに当接させるときの力は小さい幅部にかかる。これにより、シール部と液体噴射ヘッドの接触圧力が増大しないので、シール部と液体噴射ヘッドの密着性が低下する。これにより、シール部が内側に移動することを抑制する。また、吸引時には、大きい幅部における内側に大きくなっている部分が液体噴射ヘッドに当接する。これにより、大きい幅部の接触力が増大し、シール部が内側に移動するのを抑制する。
【0012】
[適用例4]前記シール部と前記液体噴射ヘッドが当接したときに、前記シール部における前記四角枠内側の側面と前記液体噴射ヘッドの前記ノズルが形成された面との成す角度は、前記小さい幅部における角度より前記大きい幅部における角度のほうが小さいことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0013】
この構成によれば、吸引時にシール部が潰れかけると、大きい幅部の内側側面がヘッドと当接しやすくなることでシール部が内側に移動するのを抑制する。
【0014】
[適用例5]前記液体噴射ヘッドは複数のノズルを列状に配置したノズル列を複数有し、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接させた状態で、前記大きい幅部は前記ノズル列の間に対向する位置に配置されたことを特徴とする上記液体噴射装置。
【0015】
この構成によれば、大きい幅部は内側に突設した状態となっているが、ノズル列の間に配置されているため、大きい幅部とノズルが接して、接したノズル内の液体が吐出または吸引できなくなることがない。
【0016】
[適用例6]前記大きい幅部は、前記四角枠の長手方向の辺の内側に短手方向の辺の内側より多く配置されることを特徴とする上記液体噴射装置。
【0017】
この構成によれば、長手方向の辺の剛性が上がり、シール部が内側に移動するのを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】キャッピング手段の構成を示す図。
【図2】キャッピング手段の構成を示す図。
【図3】キャッピング手段の構成を示す図。
【図4】キャップホルダーの平面図。
【図5】キャップホルダーに備えられたキャップ部材の平面図。
【図6】小さい幅部が形成された位置における断面図。
【図7】大きい幅部が形成された位置における断面図。
【図8】(a)は、小さい幅部が形成された部分の拡大断面図、(b)は、小さい幅部の断面を示す図。
【図9】(a)は、大きい幅部が形成された部分の拡大断面図、(b)は、大きい幅部の断面を示す図。
【図10】ノズル形成面に当接する小さい幅部の断面を示す図。
【図11】ノズル形成面に当接する大きい幅部の断面を示す図。
【図12】ノズル列に対向するシール部の配置を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるインクジット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1乃至図3は、本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示したものである。なお、図1は装置の上面から視た状態を示し、また図2および図3は側面から視た状態で示しており、図2は、非キャッピング状態を示し、図3は、キャッピング状態を示している。
【0020】
図2、図3のキャリッジ1はガイドロッド2に案内されて用紙ガイド板3に対向して平行に移動するように構成されている。そしてキャリッジ1は、図には示されていないがキャリッジモーターにより往復動されるタイミングベルトの一部に結合されて、ガイドロッド2に沿って往復移動されるように構成されている。
【0021】
キャリッジ1には、液体噴射ヘッドである記録ヘッド5が用紙ガイド板3の上面に配置された記録用紙4に対向するように搭載されており、記録ヘッド5に対して液体としてのインクが導入され、印刷デ−タに対応したビットマップデータに基づいて、用紙ガイド板3上の記録用紙4にインク滴を吐出して印字することができるように構成されている。
【0022】
記録ヘッド5を封止するキャッピング手段6は、インクジット式記録装置の端部における非印字領域(ホームポジション)に配置されており、記録ヘッド5のノズル形成面に密封空間をもって封止できるサイズのキャップ部材7を備え、非印字時に記録ヘッド5のノズル形成面を封止してノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、クリーニング操作時に図示せぬ吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッド5からインクを強制的に排出させる機能とを備えている。
【0023】
キャッピング手段6に配置されたキャップ部材7の内底部には、図1に示すようにインク排出口7aが形成され、このインク排出口7aには、チューブの一端が接続され、このチューブの他端は吸引ポンプに接続されている。
【0024】
これにより、非印字時にはキャップ部材7によって記録ヘッド5のノズル形成面を封止し、またクリーニング指令を受けた場合には、吸引ポンプによる負圧がキャッピング手段の内部空間に印加され、記録ヘッド5からインクを強制的に排出させることができる。
【0025】
また、キャップ部材7は、後で詳述するように方形状のキャップホルダー9に対して一体成形されており、このキャップホルダー9の長手方向の両側壁には、それぞれ平板状のバネ受け部9aがそれぞれ水平方向に形成されている。そして、図2のキャップホルダー9は昇降機構を構成するスライダー10上に搭載され、スライダー10と図1のバネ受け部9aとの間に介装された一対の圧縮バネ11によって、記録ヘッド5側に付勢された状態で取り付けられている。
【0026】
なお、キャップホルダー9の一端部中央および他端部の両側部には、それぞれ係合部9bが形成されており、これら3つの係合部9bは、スライダー10に形成されたそれぞれの係止部材10aによって3点で係止されることにより、キャップホルダー9は上方向、すなわち記録ヘッド5側への移動が規制されて、スライダー10上に搭載されている。
【0027】
また、図2のスライダー10の下底部には一対の長穴12がほぼ水平方向に形成されており、この各長穴12内にはフレーム13に対して回動可能に取り付けられたアーム14の自由端側に配置された一対の水平軸15が、それぞれ移動可能となるように収容されている。これにより、スライダー10はアーム14を介してフレーム13に対して円弧状軌跡をもって立ち上がることができる。
【0028】
また、スライダー10の非印字領域側の端部両側には、それぞれガイド片10bが形成されていて、この一対のガイド片10bはフレーム13に形成された一対の案内溝16によって支持されるように構成されている。この案内溝16は一端部に形成された低所部16aと、他端部に形成された水平な高所部16bと、さらにこれらを接続する傾斜部16cとにより構成されており、これら3つの領域が連通して形成されている。
【0029】
さらに、図1に示すように一方のガイド片10bには、一端がフレーム13に固定された引っ張りバネ17の他端が固定されていて、この引っ張りバネ17の作用により、図2のスライダー10は印字領域方向、かつ記録ヘッド5から離間する方向、すなわちこの実施の形態においては下方に位置するように付勢されている。
【0030】
そして、図2に示すようにキャリッジ1がキャッピング手段6の直上に移動した際、キャリッジ1に配置された係合体1aがスライダー10に直立するように形成された係合部10cに当接することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダー10はアーム14を介して立ち上がり、これによりキャップホルダー9に一体に形成されたキャップ部材7が、キャリッジ1に配置された記録ヘッド5のノズル形成面を封止することができるように構成されている。
【0031】
また、キャリッジ1が印字領域側に移動した場合には、スライダー10に配置された係合部10cに対するキャリッジ1側の係合体1aの当接が解かれ、スライダー10はバネ17の引張力によって図2に示した状態に復帰し、これにより、キャップ部材7による記録ヘッド5のノズル形成面の封止が解除される。
【0032】
一方、図1または図3に示すようにキャッピング手段6に隣接する印字領域側には、キャリッジ1の移動に伴ってキャリッジ1に搭載された記録ヘッド5のノズル形成面をワイピングする、例えばゴム性のワイピング部材21を備えたクリーナ保持部材20が配置されている。このクリーナ保持部材20は水平方向に移動され、ワイピング部材21を記録ヘッド5の移動経路上のワイピング位置に対して進入または退避できるように構成されている。
【0033】
したがって、クリーニング操作時において、記録ヘッド5はこのワイピング部材21により、そのインク吸引前においてノズル形成面に付着している塵埃や紙粉などが除去され、またインク吸引後においてノズル形成面に付着しているインクの払拭がなされる。
【0034】
この場合、実施の形態においては、ワイピング部材21を保持するクリーナ保持部材20の移動と、キャッピング手段の内部空間を負圧に吸引するポンプとは、用紙ガイド板3上における記録用紙4を搬送する図示せぬ紙送りモーターの駆動力を利用するようになされている。そして吸引ポンプの駆動に伴ってワイピング部材21は記録ヘッド5の移動軌跡上に進出するよう構成されている。
【0035】
以上の構成において、キャリッジモーターの駆動によりキャリッジ1が非印字領域側に移動すると、図2に示すように、キャリッジ1に配置された係合体1aが、スライダー10に形成された係合部10cに当接する。そして、なおもキャリッジ1が同方向に移動することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダー10はアーム14を介して立ち上がる。一方、スライダー10に形成されたガイド片10bは、案内溝16を構成する低所部16aから傾斜部16cに、さらに水平な高所部16bへと移動し、これにより、キャップホルダー9に一体成形されたキャップ部材7がキャリッジ1に配置された記録ヘッド5を封止する。
【0036】
このようにして、キャップ部材7によるノズル形成面の封止が完了した段階で、キャップ部材7は大気との連通が断たれて気密状態となり、ノズル開口からのインクの蒸発を抑制して、記録ヘッド5の目詰まりを防止するように作用する。また、この状態で吸引ポンプを駆動させることで、キャップ部材7の内部空間に負圧を与えることができ、記録ヘッド5のノズル開口よりインクを排出させることができる。
【0037】
そして、キャリッジモーターの駆動によりキャリッジ1が印字領域側に移動すると、キャリッジ1に配置された係合体1aは、スライダー10に形成された係合部10cから離れる。したがってバネ17の引張力によって、スライダー10はアーム14を介して、またスライダー10に形成されたガイド片10bが低所部16a側に移動することによりスライダー10は降下する。これによりキャップ部材7による記録ヘッド5の封止状態が解かれる。
【0038】
図4は、キャップホルダー9のみの構成を図2の記録ヘッド5側から視た状態の平面図であり、図5は、キャップホルダー9に備えられたキャップ部材7を図2の記録ヘッド5側から視た状態の平面図である。
【0039】
図4のキャップホルダー9は、ほぼ方形状に形成されて上部が開放された構成とされており、開口部端面9cは、水平状態に形成された一対のバネ受け部9aの上面とほぼ面一に形成されている。図4の開口部端面9cは、図5のキャップホルダー9の外周に沿って環状に形成されている。
【0040】
図5は、図4に示したキャップホルダー9に対してキャップ部材7をインサート成形法あるいは二色成形法によって一体に成形した状態を示している。キャップホルダー9は、例えば硬質合成樹脂により構成され、またキャップ部材7は軟質性素材、例えばエラストマーあるいはゴムにより構成されている。
【0041】
両者をインサート成形法により一体成形する場合においては、まず、キャップホルダー9が所定の金型内においてインサート成形され、こうして成形されたキャップホルダー9は、第2の金型内に装填され、さらにキャップ部材7を構成する軟質性素材がインサート成形されることで、両者が一体に成形される。
【0042】
また、両者を二色成形法によって一体成形する場合においては、まず、キャップホルダー9が所定の金型内において一次成形され、一次成型品であるキャップホルダー9と二次成形キャビティとにより形成される空間内にキャップ部材7を構成する軟質性素材が充填されることにより、両者が一体に成形される。
【0043】
図5のキャップ部材7には、図6、図7に示すように、図2の記録ヘッド5側に向かって突出するシール部7bが略四角形状の四角枠を形成している。シール部7bは、大きい幅部71と小さい幅部70とから構成されている。大きい幅部71の幅の長さL2は、小さい幅部70の幅の長さL1より長い。また、大きい幅部71は、小さい幅部70より、四角枠の内側に大きくなっている。
【0044】
長手方向における一つの辺に形成された大きい幅部71の個数は、短手方向における一つの辺に形成された大きい幅部71の個数より多い。本実施形態では、長手方向における大きい幅部71は2個であり、短手方向における大きい幅部71は1個である。
【0045】
図6は、図5のキャップホルダー9に備えられたキャップ部材7をA−A線から矢印方向に視た状態の断面図であり、小さい幅部70が形成された位置における断面図である。図7は、図5のキャップホルダー9に備えられたキャップ部材7をB−B線から矢印方向に視た状態の断面図であり、大きい幅部71が形成された位置における断面図である。
【0046】
図4のキャップホルダー9には、図2の記録ヘッド5側に向かって立設する補強リブ9eが環状に形成されている。また、図4のキャップホルダー9の内底部には、図6、図7のキャップ部材7と、キャップ部材7の下底部において係合する係合部としての係合孔9fが形成されている。
【0047】
キャッピング部は、弾性部材からなりノズルを囲うように記録ヘッド5に当接する四角枠状のシール部7bが形成されたキャップ部材7と、キャップ部材7を保持するキャップホルダー9とを含んで構成される。
【0048】
図8(a)は、小さい幅部70が形成された部分の拡大図である。図9(a)は、大きい幅部71が形成された部分の拡大図である。
【0049】
キャップ部材7は、図6および図7に示されたように、キャップホルダー9の内底面に沿って一体に成形されており、その一部がキャップホルダー9に形成された係合孔9fに充填されている。係合孔9fは、図8(a)、図9(a)に拡大して示したように、キャップ部材7のシール部7b側に向かってオーバーハング状態に形成している。
【0050】
すなわち、オーバーハングにより形成されるアンカー部9jにキャップ部材7の構成体が充填されることにより、キャップ部材7はキャップホルダー9の内底部に確実に接合され、密着強度を向上させるように作用する。また、たとえキャップ部材7の内底部に負圧が作用しても、キャップ部材7の下底部がキャップホルダー9の内底部から浮き上がるような作用を阻止させることができる。これにより、両者の界面における剥離を防止することが可能となり、剥離による大気のリークを効果的に防止させることができる。
【0051】
図8(a)、図9(a)のキャップホルダー9には、内側面9dから上方向にL字状に立上る補強リブ9eが形成されていて、これによりキャップホルダー9の内側面9dと補強リブ9eとの間に空間部9hが形成されている。そして、前述したようにキャップホルダー9に対してキャップ部材7はインサート成形または二色成形され、キャップ部材7は空間部9hを充填し、且つ補強リブ9eのさらに内側面9iを覆うようにして一体に成形されている。
【0052】
そして、キャップホルダー9の内側面9dにおいて、キャップホルダー9の開口部端面9cに対して突出して形成されるシール部7bは、キャップホルダー9の内側面9dから立ち上がるL字状補強リブ9eの直上に形成されている。
【0053】
このように、キャップホルダー9にその内側面9dから上方向にL字状に立ち上がる補強リブ9eを形成させたことにより、補強リブ9eがキャップ部材7の支持体として作用し、クリーニング動作時においてキャップ部材7の内部空間に負圧が印加されても、キャップ部材7が内側方向へ倒れ込むのを効果的に阻止するように作用する。
【0054】
しかも、キャップ部材7の一部はキャップホルダー9の内側面から上方にL字状に立ち上がる補強リブ9eによって形成される空間部9hを充填するようにして形成されるので、この空間部9hに充填されたキャップ部材7の構成体が、記録ヘッド5に当接するシール部7bを外側方向に牽引するように作用し、これによりキャップ部材7の内側方向への倒れ込み現象を相乗的に低減させるように働く。
【0055】
さらに、キャップ部材7をキャップホルダー9に対してインサート成形法あるいは二色成形法によって一体に形成させることによって、空間部9hに充填されたキャップ部材7の構成体とキャップホルダー9との間の界面において機械的に接着力が発生し、これによりキャップ部材7のシール部7bを外側方向に牽引する作用を確実なものとすることができる。
【0056】
図8(b)は、図8(a)の円の範囲Cにおける小さい幅部70の断面を示す図である。図8(b)に示すように、小さい幅部70は、記録ヘッド5のノズルが形成されたノズル形成面5aと略平行な当接面702と、ノズル形成面5aに対して傾斜する、内側の側面703、外側の側面701が形成されている。
【0057】
図9(b)は、図9(a)の円の範囲Dにおける大きい幅部71の断面を示す図である。図9(b)に示すように、大きい幅部71は、ノズル形成面5aに対して傾斜する、第1の内側の側面712、第2の内側の側面713、外側の側面711が形成されている。
【0058】
図9(b)の大きい幅部71において、ノズル形成面5aに対する第1の内側の側面712の成す角度R2は、ノズル形成面5aに対する第2の内側の側面713の成す角度R3より小さい。
【0059】
図9(b)の大きい幅部71におけるノズル形成面5aに対する第2の内側の側面713の成す角度R3は、図8(b)の小さい幅部70におけるノズル形成面5aに対する内側の側面703の成す角度R1より小さい。
【0060】
これにより、記録ヘッド5のノズル形成面5aにシール部7bが当接した状態において、まず当接面702と第1の内側の側面712とがノズル形成面5aと当接する。このため、ノズル形成面5aとシール部7bとの接触圧力において、ノズル形成面5aと当接面702とが当接している部分と、ノズル形成面5aと第1の内側の側面712とが当接している部分で高くなるため、密着性が良好に保持できる。
【0061】
さらにクリーニング動作時において、キャップ部材7の内部空間に負圧が印加されることでシール部7bが潰れる方向に働く力が増加する。このため、シール部7bが潰れるため、ノズル形成面5aと接触する面積が増加し、密着性が良好に保持できる。
【0062】
図10(a)、(b)は、ノズル形成面5aに当接する小さい幅部70の断面を示す図である。図10(a)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態にあり、図10(b)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加された状態にある。
【0063】
図10(a)のキャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態から、図10(b)の負圧が印加された状態に移行すると、図10(a)の小さい幅部70における当接面702は、ノズル形成面5aを滑り、図10(b)の図面左側であるキャップ部材7の内側の位置に移動し、内側の側面703、外側の側面701は、湾曲した形状になる。このように、キャップ部材7の内部が印加された負圧により、小さい幅部70が形成されたシール部7bが図面左側であるキャップ部材7の内側に倒れる。
【0064】
図11(a)、(b)は、ノズル形成面5aに当接する大きい幅部71の断面を示す図である。図11(a)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態にあり、図11(b)は、キャップ部材7の内部に負圧が印加された状態にある。
【0065】
図11(a)のキャップ部材7の内部に負圧が印加されない状態から、図11(b)の負圧が印加される状態に移行すると、大きい幅部71における第1の内側の側面712は、ノズル形成面5aに対して傾斜しているので、大きい幅部71が形成されたシール部7bがキャップ部材7の内側に倒れると、第1の内側の側面712とノズル形成面5aと当接する面積が増加する。これにより、第1の内側の側面712とノズル形成面5aとの摩擦力が増大するので、第1の内側の側面712は、キャップ部材7の内側にさらに移動することが抑制される。すなわち、大きい幅部71におけるシール部7bがキャップ部材7の内側にさらに倒れるのを抑制することができる。
【0066】
これにより、大きい幅部71と大きい幅部71の間に形成された小さい幅部70におけるシール部7bがキャップ部材7の内側に倒れるのを抑制することができる。
【0067】
図11(b)の第1の内側の側面712においてノズル形成面5aと当接する面積が増加した部分は、大きい幅部71における四角枠の内側に大きくなっている部分が含まれる。このように、大きい幅部71における四角枠の内側に大きくなっている部分は、吸引ポンプにより吸引したときに記録ヘッド5に当接し、吸引していないときには記録ヘッド5に当接していない。
【0068】
図9(b)の大きい幅部71におけるシール部7bにおける頂点の位置P3は、第1の内側の側面712と外側の側面711とが交わる位置にある。大きい幅部71のシール部7bにおける記録ヘッド5側に突出した部分の幅の長さL3は、開口部端面9cの延長線と外側の側面711との交わる位置P2から、キャップ部材7の内底面から立ち上がる第3の内側の側面714と第2の内側の側面713とが交わる位置P1までの距離である。
【0069】
一点鎖線は、記録ヘッド5側に突出した部分の幅の長さL3の中心位置Sを示す。図9(b)のシール部7bの大きい幅部71の頂点の位置P3は、大きい幅部71の中心位置Sよりキャップ部材7の外側に形成される。これにより、シール部7bの大きい幅部71がノズル形成面5aと当接した場合、シール部7bがキャップ部材7の外側に倒れながら、ノズル形成面5aと当接するため、キャップ部材7の内側方向にシール部7bが倒れこむことを効果的に阻止するように作用する。
【0070】
図12は、記録ヘッド5にキャップ部材7を当接した状態において、ノズル列30に対向するシール部7bの配置を説明するための図である。シール部7bの大きい幅部71をノズル列30と接触しないようにノズル列間に形成することにより、キャップ部材7内に負圧が印加され、大きい幅部71の接触面積が増大しても、ノズル列30とシール部7bとが接触することを阻止することができる。
【0071】
以上、本実施形態で説明したインクジット式記録装置は、ノズルからのインクを噴射する記録ヘッド5と、記録ヘッド5に当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、記録ヘッド5からインクを吸引するキャッピング部とを備えたインクジット式記録装置であって、キャッピング部は、弾性部材からなりノズルを囲うように記録ヘッド5に当接する四角枠状のシール部7bと、シール部7bを保持するキャップホルダー9とを有し、シール部7bは、四角枠の辺の幅が部分的に異なる。
【0072】
この構成によれば、シール部7bは、大きい幅部71と小さい幅部70とが形成されており、四角枠の辺の幅が部分的に異なる。このため、辺の強度が変わり、吸引ポンプによる吸引時の負圧による変形がしにくくなる。
【0073】
これにより、シール部7bがキャップ部材7の内側に倒れることを抑制し、記録ヘッド5とシール部7bとの密着性の低下を抑制できる。
【0074】
また、大きい幅部71は、小さい幅部70より、四角枠の内側に大きくなっている。この構成によれば、吸引ポンプによる吸引時の負圧によりキャップであるキャップ部材7は四角枠の内側に撓みやすくなるが、内側に大きい幅部71を設けることでシール部7bの剛性が上がり、内側への撓みを抑制する。
【0075】
また、図11(a)、(b)を用いて説明したように、大きい幅部71における四角枠の内側に大きくなっている部分が、記録ヘッド5とキャッピング部を当接した状態で吸引ポンプにより吸引したときに当接し、吸引していないときには当接していない。
【0076】
この構成によれば、吸引していないときには、大きい幅部71における内側に大きくなっている部分が、記録ヘッド5に当接しない。そのため、キャップ部材7を記録ヘッド5に当接させるときの力は小さい幅部70にかかる。これにより、シール部7bと記録ヘッド5の接触圧力が増大しないので、シール部7bと記録ヘッド5の密着性が低下する。これにより、シール部7bが内側に移動することを抑制する。また、吸引時には、大きい幅部71における内側に大きくなっている部分が記録ヘッド5に当接する。これにより、大きい幅部71の接触力が増大し、シール部7bが内側に移動するのを抑制する。
【0077】
また、シール部7bと記録ヘッド5が当接したときに、シール部7bにおける四角枠内側の側面と記録ヘッド5のノズルが形成されたノズル形成面5aとの成す角度は、小さい幅部70における角度R1より大きい幅部71における角度R2,R3のほうが小さい。
【0078】
この構成によれば、吸引時にシール部7bが潰れかけると、大きい幅部71の内側側面である第1の内側の側面712が記録ヘッド5と当接しやすくなることでシール部7bがキャップ部材7の内側に移動するのを抑制する。
【0079】
また、記録ヘッド5は、図12の複数のノズルを列状に配置したノズル列30を複数有し、記録ヘッド5とキャッピング部におけるキャップ部材7とを当接させた状態で、大きい幅部71はズル列30の間に対向する位置に配置される。
【0080】
この構成によれば、大きい幅部71はキャップ部材7の内側に突設した状態となっているが、ノズル列30の間に配置されているため、大きい幅部71とノズルが接して、接したノズル内のインクが吐出または吸引できなくなることがない。
【0081】
また、大きい幅部71は、四角枠の長手方向の辺の内側に短手方向の辺の内側より多く配置される。 この構成によれば、長手方向の辺の剛性が上がり、シール部7bが内側に移動するのを抑制する。
【符号の説明】
【0082】
R1,R2,R3…角度、5…記録ヘッド、5a…ノズル形成面、7…キャップ部材、7b…シール部、9…キャップホルダー、30…ノズル列、70…小さい幅部、71…大きい幅部、703…内側の側面、712…第1の内側の側面、713…第2の内側の側面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからの液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、前記液体噴射ヘッドから液体を吸引するキャッピング部とを備えた液体噴射装置であって、
前記キャッピング部は、弾性部材からなり前記ノズルを囲うように前記液体噴射ヘッドに当接する四角枠状のシール部と、前記シール部を保持するキャップホルダーとを有し、
前記シール部は、前記四角枠の辺の幅が部分的に異なることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記幅のうち大きい幅部は、小さい幅部より、前記四角枠の内側に大きくなっていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記大きい幅部における前記四角枠の内側に大きくなっている部分が、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接した状態で前記吸引ポンプにより吸引したときに当接し、吸引していないときには当接していないことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記シール部と前記液体噴射ヘッドが当接したときに、前記シール部における前記四角枠内側の側面と前記液体噴射ヘッドの前記ノズルが形成された面との成す角度は、前記小さい幅部における角度より前記大きい幅部における角度のほうが小さいことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記液体噴射ヘッドは複数のノズルを列状に配置したノズル列を複数有し、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接させた状態で、前記大きい幅部は前記ノズル列の間に対向する位置に配置されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記大きい幅部は、前記四角枠の長手方向の辺の内側に短手方向の辺の内側より多く配置されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
ノズルからの液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに当接した状態で吸引ポンプを駆動することで、前記液体噴射ヘッドから液体を吸引するキャッピング部とを備えた液体噴射装置であって、
前記キャッピング部は、弾性部材からなり前記ノズルを囲うように前記液体噴射ヘッドに当接する四角枠状のシール部と、前記シール部を保持するキャップホルダーとを有し、
前記シール部は、前記四角枠の辺の幅が部分的に異なることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記幅のうち大きい幅部は、小さい幅部より、前記四角枠の内側に大きくなっていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記大きい幅部における前記四角枠の内側に大きくなっている部分が、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接した状態で前記吸引ポンプにより吸引したときに当接し、吸引していないときには当接していないことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記シール部と前記液体噴射ヘッドが当接したときに、前記シール部における前記四角枠内側の側面と前記液体噴射ヘッドの前記ノズルが形成された面との成す角度は、前記小さい幅部における角度より前記大きい幅部における角度のほうが小さいことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記液体噴射ヘッドは複数のノズルを列状に配置したノズル列を複数有し、前記液体噴射ヘッドと前記キャッピング部を当接させた状態で、前記大きい幅部は前記ノズル列の間に対向する位置に配置されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記大きい幅部は、前記四角枠の長手方向の辺の内側に短手方向の辺の内側より多く配置されることを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−196930(P2012−196930A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64004(P2011−64004)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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