説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射ヘッドが汚れるのを抑えることができる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、毛細管現象によって前記液体を保持可能な隙間を空けて配置され前記ノズル形成面を払拭する複数の板状部材を有する払拭部と、前記払拭部に保持された前記液体を除去する液体除去部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、インクジェット方式の印刷装置が知られている。このような印刷装置には、インクを噴射するヘッドが設けられている。ヘッドにはノズル形成面が設けられており、ノズル形成面にはインクを噴射する複数のノズルが形成されている。ヘッドの噴射特性を維持するため、印刷装置には、ノズルからインクを吸引する吸引部や、ノズル形成面を払拭する払拭部などが設けられている。払拭部が設けられた構成としては、例えば特許文献1に示す構成などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−347649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成においては、一旦払拭動作を行った払拭部にインクが付着し、そのまま残留した状態で次の払拭動作が行われることがある。そのような場合、払拭部に残留したインクがノズル形成面に付着し、ノズル形成面が汚れてしまう場合がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、液体噴射ヘッドが汚れるのを抑えることができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、毛細管現象によって前記液体を保持可能な隙間を空けて配置され前記ノズル形成面を払拭する複数の板状部材を有する払拭部と、前記払拭部に保持された前記液体を除去する液体除去部とを備える。
【0007】
本発明によれば、毛細管現象によって液体を保持可能な隙間を空けて配置されノズル形成面を払拭する複数の板状部材を有する払拭部を備えるので、払拭部に付着した液体が毛細管現象によって複数の板状部材の隙間に入り込んだ状態で保持される。このため、払拭部の表面に液体が残留するのを防ぐことができるので、次に払拭部を用いる場合、払拭部からノズル形成面に液体が付着するのを抑えることができる。また、本発明によれば、払拭部に保持された液体を除去する液体除去部を備えるので、払拭部を清浄な状態に維持することができる。これにより、液体噴射ヘッドが汚れるのを抑えることができる。
【0008】
上記の液体噴射装置において、前記液体除去部は、前記払拭部を洗浄する洗浄部を有することが好ましい。
本発明によれば、液体除去部が払拭部を洗浄する洗浄部を有するので、洗浄によって払拭部に保持された液体を除去することができる。
【0009】
上記の液体噴射装置は、前記払拭部を前記ノズル形成面と前記洗浄部との間で移動させる駆動部を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、駆動部を用いて払拭部をノズル形成面と洗浄部との間で移動させることができるので、手動で行う場合に比べてメンテナンス効率を高めることができる。
【0010】
上記の液体噴射装置において、前記洗浄部は、前記ノズル形成面との間で前記払拭部を挟む位置に、前記ノズル形成面に対向して設けられており、前記駆動部は、前記払拭部が前記ノズル形成面及び前記洗浄部に接続するように当該払拭部を回転させる回転部を有することが好ましい。
本発明によれば、駆動部が回転部を用いて払拭部を回転させることで、当該払拭部がノズル形成面及び洗浄部にそれぞれ接続されることになる。これにより、払拭部の接続先の切り替えを素早く行うことができる。
【0011】
上記の液体噴射装置において、前記払拭部は、前記外周面のうち前記回転部材の回転方向上の複数個所に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、払拭部が外周面のうち回転部材の回転方向上の複数個所に設けられているため、一の払拭部を洗浄しつつ、他の払拭部によってノズル形成面を払拭させることができる。これにより、払拭部の洗浄に要する時間をノズル形成面の払拭動作に充てることができるため、メンテナンスに要する時間を節約することができる。
【0012】
上記の液体噴射装置において、前記駆動部は、複数の前記板状部材が前記ノズル形成面に接触した状態で移動するように前記払拭部を駆動することが好ましい。
本発明によれば、複数の板状部材がノズル形成面に接触した状態で移動するため、液体噴射ヘッドを固定させたまま払拭動作を行わせることができる。
【0013】
上記の液体噴射装置において、前記液体除去部は、前記液体を吸引する吸引部を有することが好ましい。
本発明によれば、吸引部を用いて液体を吸引することで払拭部から液体を除去することができる。
【0014】
上記の液体噴射装置は、前記払拭部を保持する保持部を更に備え、前記保持部は、前記払拭部に保持された前記液体を回収する回収部を有し、前記吸引部は、前記回収部を吸引することが好ましい。
本発明によれば、払拭部を保持する保持部を更に備え、保持部が払拭部に保持された液体を回収する回収部を有し、吸引部が回収部を吸引するので、複数の板状部材側に液体が移動するのを防ぎつつ、液体を吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態に係る印刷装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る印刷装置の一部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る印刷装置の一部の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係る印刷装置の制御装置の構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図6】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図7】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図8】本発明の第二実施形態に係る印刷装置の全体構成を示す図。
【図9】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図10】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図11】本実施形態に係る印刷装置の他の構成例を示す図。
【図12】本実施形態に係る印刷装置の他の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとしてインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示す印刷装置PRTは、例えば、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット部IJと、当該インクジェット部IJにインクを供給するインク供給部ISと、媒体Mを搬送する搬送部CVと、インクジェット部IJの保全動作を行うメンテナンス部MNと、これら各部を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0018】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、媒体Mの搬送方向をX方向とし、当該媒体Mの搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0019】
筐体PBは、Y方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット部IJ、インク供給部IS、搬送部CV、メンテナンス部MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、筐体PBのうちX方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0020】
搬送部CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送部CVは、筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送部CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送部CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0021】
インクジェット部IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動部ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射するノズル形成面Haを有している。ノズル形成面Haは、−Z方向に向けられており、プラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。
【0022】
ヘッド移動部ACは、ヘッドHを筐体PBの長手方向に移動させる。ヘッド移動部ACは、ヘッドHを固定させるキャリッジ4を有している。キャリッジ4は、筐体PBの長手方向に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッド移動部ACは、当該キャリッジ4をガイド軸8に沿って移動させる、例えばパルスモーター9、駆動プーリー10、遊転プーリー11及びタイミングベルト12などを有している。
【0023】
メンテナンス部MNは、媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域(ホームポジション)に設けられている。メンテナンス部MNは、ヘッドHのノズル形成面Haを覆うキャッピング部CPや、当該ノズル形成面Haを払拭するワイピング部WPなどを有している。キャッピング部CPには、吸引ポンプなどの吸引部SCが接続されている。ヘッドHからメンテナンス部MN側に排出された廃インクは、廃液回収部(不図示)において回収される。
【0024】
インク供給部ISは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給部ISには、複数のインクカートリッジICが収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジICがヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。
【0025】
インク供給部ISは、各インクカートリッジICの内部の圧力を個別に調整可能な圧力調整部6を有している。インク供給部ISは、ヘッドHとインクカートリッジICとを接続する供給チューブTBを有している。供給チューブTBは、インクカートリッジIC毎に設けられている。
【0026】
図2は、ワイピング部WPの構成を示す図である。図2には、ワイピング部WPによって払拭される際のヘッドHの位置が示されている。
図2に示すように、ワイピング部WPは、ヘッドHのノズル形成面Haを払拭する払拭部60と、払拭部60を支持する支持部62と、払拭部60を駆動する駆動部63と、払拭部60を洗浄する洗浄部64と、を有している。
【0027】
払拭部60は、複数の板状部材61を有している。板状部材61は、Y方向に一定の間隔を空けて複数配置されている。板状部材61は、それぞれ板面がXZ方向に平行となるように配置されている。各板状部材61は、樹脂材料などの材料を用いて弾性変形可能に形成されている。各板状部材61は、支持部62の外周面に対して立った状態で設けられている。各板状部材61は、当該立った状態を維持することが可能な程度の厚さ(Y方向の寸法)を有している。
【0028】
各板状部材61は、図2に示すように、+Z方向に立った状態において、+Z側の先端部がヘッドHに重なっている。このため、各板状部材61が+Z方向に立った状態でヘッドHが払拭部60をY方向に通過すると、各板状部材61の+Z側の先端部によってノズル形成面Haが払拭されることになる。
【0029】
払拭部60は、支持部62のうち複数個所、本実施形態では、2箇所に設けられている。支持部62は、円柱状に形成されており、中心軸がX方向に平行に配置されている。支持部62は、不図示のベアリング部によってX軸周りに回転可能に支持されている。払拭部60は、当該支持部62の外周面上のうち180°ずれた位置に1つずつ配置されている。このため、図2に示すように、一方の払拭部60Aが+Z方向に立った状態である場合には、他方の払拭部60Bは−Z方向に向いた状態となる。
【0030】
駆動部63は、支持部62に接続されている。駆動部63は、不図示のモーター装置を有しており、支持部62を回転駆動する。また、駆動部63は、不図示の昇降装置を有しており、支持部62をZ方向に直線移動させる。
【0031】
洗浄部64は、容器64aと洗浄液64bとを有している。容器64aは、槽状に形成されており、+Z側に開口部が設けられている。容器64aは、支持部62の−Z側に設けられている。容器64aの内部には洗浄液64bが貯留されている。洗浄液64bとしては、インクを溶解させる溶剤などが用いられている。
【0032】
容器64aの位置や洗浄液64bの液量などは、払拭部60が−Z方向に向けられた状態において、当該払拭部60が洗浄液64bに浸されるように調整されている。また、本実施形態では、支持部62が洗浄液に浸されない構成となっている。洗浄液64bを容器64aに供給する不図示の洗浄液供給部が設けられた構成であっても構わない。ヘッドHがワイピング部WPの+Z側に配置された状態において、容器64aの開口部はヘッドHのノズル形成面Haに対向して配置されることになる。
【0033】
図3は、払拭部60の構成を示す図である。
図3に示すように、払拭部60を構成する複数の板状部材61は、毛細管現象によってインクDを保持可能な程度に隙間61kを空けて配置されている。複数の板状部材61の毛細管力によってインクDが保持されるため、インクDが払拭部60の外部に流出しにくい構成となっている。なお、複数の板状部材61同士のY方向の距離については、例えば0.5mm程度に設定することができる。勿論、毛細管力が働く範囲であれば、複数の板状部材61同士の間隔を上記距離よりも長くしても構わないし、短くしても構わない。
【0034】
図4は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送部CVや、ヘッド移動部AC、メンテナンス部MN等が接続されている。制御装置CONTは、メンテナンス部MNのうち例えばキャッピング部CPやワイピング部WP(駆動部63)などを制御可能である。
【0035】
ヘッドHは、ノズルNZごとに設けられた圧電振動子を有している。制御装置CONTは、当該圧電振動子に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器に接続されている。駆動信号発生器には、ヘッドHの圧電振動子に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器は、各圧電振動子に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0036】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。制御装置CONTは、印刷装置PRTの動作として、ヘッドHによる印刷動作や、メンテナンス部MNによるヘッドHのクリーニング動作などを行わせる。
【0037】
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送部CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データに基づいてノズルNZに係る駆動信号発生器から圧電振動子に駆動信号を入力する。圧電振動子に駆動信号が入力されると、圧電振動子が伸縮し、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。
【0038】
次に、クリーニング動作を行わせる場合を説明する。クリーニング動作は、ヘッドHの吐出特性を確保するために行われる。制御装置CONTは、上記クリーニング動作として、まずキャッピング部CPを用いた吸引動作を行わせる。当該吸引動作では、制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションに配置させ、キャッピング部CPによってヘッドHのノズル形成面Haを封止させた後、吸引部SCを作動させてノズルNZを吸引する。この動作により、ノズルNZからキャッピング部CPにインクが排出される。
【0039】
吸引動作の後、制御装置CONTは、ワイピング部WPを用いて払拭動作を行わせる。払拭動作において、制御装置CONTは、まず2つの払拭部60のうち一方(本実施形態では払拭部60A)の各板状部材61が+Z方向に立つように支持部62の回転位置を調整させる。この状態で、ヘッドHを−Y方向に移動させると、各板状部材61によってヘッドHのノズル形成面Haが払拭される。ノズル形成面Haには、上記の印刷動作や吸引動作などによってインクDが付着している場合がある。払拭動作を行うことにより、図6に示すように、このようなノズル形成面Haに付着しているインクDが除去される。
【0040】
除去されたインクDは、毛細管現象によって各板状部材61の隙間61kに入り込み、当該隙間61kに保持される。このため、板状部材61の隙間61kに保持されたインクDは、外部に漏出されにくくなる。
【0041】
ヘッドHが払拭部60Aを−Y方向に通過することにより、払拭動作が完了する。その後、制御装置CONTは、支持部62をX軸周りに180°回動させ、払拭動作を行った払拭部60Aを洗浄液64bに浸す。この動作により、払拭部60Aのうち各板状部材61の隙間61kに保持されたインクDが洗浄液64bによって溶解され、払拭部60AからインクDが除去される。
【0042】
一方、払拭部60Aが洗浄液64bに浸された状態においては、払拭部60Bは支持部62に対して+Z側に向けられている。この場合、払拭部60Bに対してヘッドHを−Y方向又は+Y方向に通過させることにより、払拭部60Bを用いて上記同様の払拭動作を行わせることができる。
【0043】
払拭部60Aによって払拭動作を行っていた間、払拭部60Bは洗浄液64bに浸されていたため、払拭部60Bに保持されていたインクは払拭部60Bから除去されている。したがって、払拭部60Bを用いた払拭動作においては、払拭部60Bからノズル形成面Haへのインクの付着が回避される。また、払拭部60Bの払拭動作後、再度払拭部60Aを用いて払拭動作を行う場合についても同様に、払拭部60AからはインクDが除去されているため、払拭部60Aからノズル形成面Haへのインクの付着が回避される。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、毛細管現象によってインクを保持可能な隙間61kを空けて配置されノズル形成面Haを払拭する複数の板状部材61を有する払拭部60を備えるので、払拭部60に付着したインクDが毛細管現象によって複数の板状部材61の隙間61kに入り込んだ状態で保持される。このため、払拭部60の表面にインクDが残留するのを防ぐことができるので、次に払拭部60を用いる場合、払拭部60からノズル形成面Haにインクが付着するのを抑えることができる。また、本発明によれば、払拭部60に保持されたインクDを洗浄によって除去する洗浄部64を備えるので、払拭部60を清浄な状態に維持することができる。これにより、ヘッドHが汚れるのを抑えることができる。
【0045】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
本実施形態では、ワイピング機構の構成が第一実施形態とは異なっており、他の構成は第一実施形態と同様となっている。以下、第一実施形態との相違点を中心に説明する。
【0046】
図8は、本実施形態に係るワイピング部WP2の構成を示す図である。
図8に示すようにワイピング部WP2は、ヘッドHのノズル形成面Haを払拭する払拭部260と、払拭部260を支持する無端ベルト265と、無端ベルト265を回転させるプーリー部262と、払拭部260を駆動する駆動部263と、払拭部260を洗浄する洗浄部264と、を有している。
【0047】
プーリー部262は、等しい寸法の円柱形に形成された第一プーリー部262a及び第二プーリー部262bを有している。第一プーリー部262aは−Y側に配置されており、第二プーリー部262bは+Y側に配置されている。無端ベルト265は、当該第一プーリー部262aと第二プーリー部262bとに掛けられている。
【0048】
無端ベルト265は、ホームポジションに配置されるヘッドHの−Z側に配置されている。無端ベルト265は、第一プーリー部262aに巻かれる第一位置265aと、第二プーリー部262bに巻かれる第二位置265bと、当該第一位置265a及び第二位置265bの間であってヘッドHに面する第三位置265cと、当該第一位置265a及び第二位置265bの間であってヘッドHとは反対側に配置される第四位置265eと、を移動可能である。無端ベルト265のうち第三位置265cに配置される部分は、XY平面に平行に配置されている。
【0049】
払拭部260は、当該無端ベルト265の外周面に設けられた複数の板状部材261を有している。板状部材261は、Y方向に一定の隙間261kを空けて複数配置されている。各板状部材261は、図8に示すように、第三位置265c上に配置される場合には、+Z方向に立った状態でY方向に平行に移動するようになっている。払拭部260は、無端ベルト265の回転方向に等しい間隔を空けて2箇所(260A及び260B)に設けられている。
【0050】
無端ベルト265のうち複数の板状部材261の間には、開口部265dが設けられている。開口部265dは、隙間261kと無端ベルト265の内周側とを連通する。無端ベルト265の内周側には、吸引ポンプ266が接続されている。吸引ポンプ266は、無端ベルト265のうち第四位置265eに配置された部分の+Z側を吸引する。
【0051】
プーリー部262の第一プーリー部262a及び第二プーリー部262bは、不図示のベアリング部によってX軸周りに回転可能に支持されている。駆動部263は、当該第一プーリー部262a及び第二プーリー部262bを回転駆動する。また、駆動部263は、不図示の昇降装置を有しており、プーリー部262をZ方向に移動させる。洗浄部264は、容器264aと洗浄液264bとを有している。
【0052】
上記のワイピング部WP2を用いて払拭動作を行わせる場合、制御装置CONTは、まずヘッドHをホームポジションに移動させる。その後、制御装置CONTは、図9に示すように、駆動部263を作動させて無端ベルト265を図中時計回りに回動させる。この動作により、払拭部260Aの各板状部材261が無端ベルト265の第三位置265cに現れる。
【0053】
制御装置CONTは、そのまま無端ベルト265を回動させ続けると共に、ヘッドHについてはホームポジションに待機させておく。無端ベルト265が図中時計回りに回動することにより、払拭部260Aは無端ベルト265に沿って+Y方向に平行に移動する。このとき、各板状部材261の+Z側の先端部とヘッドHのノズル形成面Haとが当接された状態で当該板状部材261が+Y方向に移動する。したがって、ノズル形成面Haが払拭部260Aによって払拭される。
【0054】
ノズル形成面Haには、印刷動作や吸引動作などによってインクDが付着している場合がある。払拭動作を行うことにより、図10に示すように、このようなノズル形成面Haに付着しているインクDが除去される。除去されたインクDは、毛細管現象によって各板状部材261の隙間261kに入り込み、当該隙間261kに保持される。このため、板状部材261の隙間261kに保持されたインクDは、外部に漏出されにくくなる。
【0055】
なお、本実施形態では、無端ベルト265に形成された開口部265dが隙間261kに連通されているため、保持されたインクDは毛細管現象により、開口部265dへと移動し、開口部265dから無端ベルト265の第四位置265eへと落下する場合がある。このため、隙間261kのインクDが払拭部260Aから除去されることになる。一方、第四位置265eへと落下したインクDは、無端ベルト265の回動により、プーリー部262に巻き込まれる場合がある。そこで、制御装置CONTは、吸引ポンプ266を作動させ、第四位置265eに落下したインクDを吸引させる。この動作により、無端ベルト265とプーリー部262との間にインクDが巻き込まれるのを防ぐことができる。吸引されたインクDは、不図示の廃液回収部において回収させることができる。このため、インクDを一箇所に集めることができる。
【0056】
払拭部260Aがノズル形成面Haを−Y方向に通過することにより、払拭動作が完了する。その後、制御装置CONTは、無端ベルト265を回動させ、払拭動作を行った払拭部260Aを洗浄液264bに浸す。なお、払拭部260Aが第四位置265e上に配置されている場合、払拭部260Bは第三位置265c上に配置される。
【0057】
このとき、払拭部260Bによって払拭動作を行わせる場合には、制御装置CONTは、無端ベルト265を回動させ続けた状態とし、払拭部260Aが洗浄液264b内を通過するようにする。この動作により、払拭部260Bに払拭動作を行わせつつ、払拭部260Aを洗浄することができる。また、払拭動作を行わせない場合には、制御装置CONTは、払拭部260Aが洗浄液264b内に配置されている状態で無端ベルト265の回動を停止させる。この動作により、払拭部260Aを確実に洗浄することができる。
【0058】
以上、本実施形態によれば、無端ベルト265を用いて払拭部260A及び払拭部260Bを移動させることとしたので、ヘッドHの移動を停止させた状態でノズル形成面Haに対して払拭動作を行わせることができる。これにより、払拭動作に関して、ワイピング部WP側の移動のみを行えば済むことになる。このため、駆動動作を簡略化することができる。
【0059】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記第一実施形態において、払拭部60A及び払拭部60Bに保持されたインクを除去する液体除去部として、払拭部60A及び払拭部60Bを洗浄する洗浄部が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0060】
例えば、図11に示すように、支持部62の内部にインク回収部62a及び62bが形成されると共に、隙間61kに連通する開口部62cが形成された構成としても構わない。この構成により、隙間61kに保持されたインクDを、毛細管現象により開口部62cからインク回収部62a及び62bへと移動させることができる。したがって、払拭部60A及び60BからインクDを除去することができる。
【0061】
更に、図12に示すように、インク回収部62a及び62bに排出管65及び66が接続され、当該排出管65及び66に吸引ポンプ67及び68が接続された構成としても構わない。この構成により、インク回収部62a及び62bに移動したインクDを吸引して排出することができる。吸引されたインクDは、不図示の廃液回収部において回収させることができる。このため、インクDを一箇所に集めることができる。
【0062】
上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置は印刷装置に限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0063】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0064】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
PRT…印刷装置 MN…メンテナンス部 CONT…制御装置 H…ヘッド Ha…ノズル形成面 WP、WP2…ワイピング部 D…インク NZ…ノズル 60、260…払拭部 61、261…板状部材 61k、261k…隙間 62…支持部 62a、62b…インク回収部 62c…開口部 63、263…駆動部 64、264…洗浄部 65…排出管 67…吸引ポンプ 262…プーリー部 262a…第一プーリー部 262b…第二プーリー部 265…無端ベルト 266…吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
毛細管現象によって前記液体を保持可能な隙間を空けて配置され前記ノズル形成面を払拭する複数の板状部材を有する払拭部と、
前記払拭部に保持された前記液体を除去する液体除去部と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体除去部は、前記払拭部を洗浄する洗浄部を有する
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記払拭部を前記ノズル形成面と前記洗浄部との間で移動させる駆動部を更に備える
請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記洗浄部は、前記ノズル形成面との間で前記払拭部を挟む位置に、前記ノズル形成面に対向して設けられており、
前記駆動部は、前記払拭部が前記ノズル形成面及び前記洗浄部に接続するように当該払拭部を回転させる回転部を有する
請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記払拭部は、前記外周面のうち前記回転部材の回転方向上の複数個所に設けられている
請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記駆動部は、複数の前記板状部材が前記ノズル形成面に接触した状態で移動するように前記払拭部を駆動する
請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記液体除去部は、前記液体を吸引する吸引部を有する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記払拭部を保持する保持部を更に備え、
前記保持部は、前記払拭部に保持された前記液体を回収する回収部を有し、
前記吸引部は、前記回収部を吸引する
請求項7に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−206286(P2012−206286A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71857(P2011−71857)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】