説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射装置内において、液体中の気泡の除去や気泡の成長の抑制を可能とする技術を提供する。
【解決手段】液体噴射装置は、液体を噴射するヘッド部と、ヘッド部に前記液体を導く液体供給路と、液体供給路の少なくとも一部を減圧して液体から気泡を取り除く減圧脱泡手段と、液体供給路の少なくとも一部を加圧する加圧手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置内の液体供給路において気泡を除去し、又は気泡の発生を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターでは、インクカートリッジ等のインク供給部から記録ヘッドまでのインク供給路においてインク中に気泡が発生すると、ドット抜けなどの印刷不良を招くことがある。そこで、インクから気泡を取り除くこと(脱泡)が可能なプリンターが提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−75683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の脱泡方法では、インク中の気泡を十分に除去できない或いは気泡の成長を十分に抑制することができないという問題があった。なお、かかる問題は、インクジェット式プリンターに限らず、潤滑油や樹脂液等の液体を噴射する任意の液体噴射装置において起こり得る。
【0005】
本発明は、液体噴射装置内において、液体中の気泡の除去や気泡の成長の抑制を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[形態1]液体を噴射するための液体噴射装置であって、前記液体を噴射するヘッド部と、前記ヘッド部に前記液体を導く液体供給路と、前記液体供給路の少なくとも一部を減圧して前記液体から気泡を取り除く減圧脱泡手段と、前記液体供給路の少なくとも一部を加圧する加圧手段と、ポンプ機構と、を備え、前記減圧脱泡手段は、前記液体内の気泡を取り除くための脱泡室と、前記脱泡室と接して配置され気体の圧力調整によって減圧される減圧室と、を有し、前記加圧手段は、気体の圧力調整によって前記液体の吸引駆動及び吐出駆動を実行するポンプを有し、前記ポンプ機構は、前記減圧室の前記圧力調整と、前記ポンプにおける前記圧力調整と、に共用される、液体噴射装置。
【0008】
[形態2]形態1に記載の液体噴射装置において、前記ポンプは、ダイヤフラムと、前記ダイヤフラムによって分割された2つの空間が形成されたポンプ室と、を有し、前記ポンプ機構は、前記2つの空間のうちの一方の空間を減圧することにより、前記ポンプにおける吸引駆動と、前記減圧室における減圧と、を実行する、液体噴射装置。
【0009】
[形態3]形態2に記載の液体噴射装置において、前記ポンプ機構には、大気開放機構が備えられており、前記一方の空間及び前記減圧室は、減圧される状態と、前記大気開放機構によって大気圧に開放される状態と、を有する、液体噴射装置。
【0010】
[形態4]形態1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、前記減圧脱泡手段は、大気に隣接して配置されるとともに、前記ポンプ機構からの負圧を前記減圧室に供給する圧力室と、前記圧力室と前記減圧室とを連通状態とする開放位置と、前記圧力室と前記減圧室とを非連通状態とする封止位置と、の間で変位可能な弁体と、とを有し、前記減圧室は、前記連通状態において前記圧力室を介して減圧され、前記非連通状態において減圧された状態を維持する、液体噴射装置。
【0011】
[形態5]形態1乃至4のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、記加圧手段の下流側にはバルブが備えられており、記ポンプは、前記吐出駆動を実行することにより、該ポンプから前記バルブまでの間の前記液体供給路の前記液体に所定の圧力を加える、液体噴射装置。
【0012】
[適用例1]液体を噴射するための液体噴射装置であって、前記液体を噴射するヘッド部と、前記ヘッド部に前記液体を導く液体供給路と、前記液体供給路の少なくとも一部を減圧して前記液体から気泡を取り除く減圧脱泡手段と、前記液体供給路の少なくとも一部を加圧する加圧手段と、を備える、液体噴射装置。
【0013】
適用例1の液体噴射装置は、減圧脱泡手段により液体供給路の少なくとも一部において液体を減圧脱泡するので液体中の気泡の除去を可能とし、また、加圧手段により液体を加圧するので液体中の気泡の除去及び成長の抑制を可能とする。
【0014】
[適用例2]適用例1に記載の液体噴射装置において、前記減圧脱泡手段は、前記液体内の気泡を取り除くための脱泡室と、前記脱泡室と接する減圧室と、前記減圧室内の圧力を調整する圧力調整部と、を有し、前記脱泡室において前記減圧室と接する壁と、前記減圧室において前記脱泡室に接する壁とは、いずれも気体が透過可能である、液体噴射装置。
【0015】
このようにすることで、脱泡室に溜まった液体中の気泡を、脱泡室において減圧室と接する壁と、減圧室において脱泡室と接する壁とを介して減圧室に排出することができる。
【0016】
[適用例3]適用例2に記載の液体噴射装置において、前記脱泡室において前記減圧室と接する壁と、前記減圧室において前記脱泡室に接する壁とは一体形成されている、液体噴射装置。
【0017】
このようにすることで、脱泡室において減圧室に接する壁と減圧室において脱泡室に接する壁とをそれぞれ別体として形成する構成に比べて、部品点数が少なくなり、液体噴射装置の製造コストを抑制することができる。
【0018】
[適用例4]適用例2または適用例3に記載の液体噴射装置であって、さらに、前記液体供給路を封止可能な弁装置を備え、前記弁装置は、前記脱泡室よりも下流側に配置されている、液体噴射装置。
【0019】
このようにすることで、脱泡室において液体の加圧と減圧脱泡とを重複して行うことができ、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる。
【0020】
[適用例5]適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の液体噴射装置において、前記液体供給路は、前記減圧脱泡手段により減圧脱泡される減圧脱泡領域と、前記加圧手段により加圧される加圧領域と、を有する、液体噴射装置。
【0021】
このようにすることで、加圧領域において気泡の除去及び成長の抑制を行った後に減圧脱泡領域において減圧脱泡することができるので、減圧脱泡に用いる機構を小型化することができる、又は、減圧脱泡領域において気泡を除去した後に加圧領域においてインクを加圧することができるので、インクの加圧に用いる機構を小型化することができる。
【0022】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、さらに、ポンプ機構を備え、前記減圧脱泡手段と前記加圧手段とは、前記ポンプ機構を共用する、液体噴射装置。
【0023】
このようにすることで、減圧脱泡手段と加圧手段とが、それぞれポンプ機構を備える構成に比べて部品点数を減らすことができ、液体噴射装置の製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施例における液体噴射装置としてのプリンター500の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示すプリンター500の内部構造を示す断面図である。
【図3】インクの吸引駆動時のインク供給部400を示す断面図及びインクの吐出駆動時のインク供給部400を示す断面図である。
【図4】インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図及び開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図である。
【図5】第2の実施例におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の内部構造を示す断面図である。
【図6】第3の実施例におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の内部構造を示す断面図である。
【図7】第4の実施例におけるキャリッジ100c及び記録ヘッド150の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.第1の実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の第1の実施例における液体噴射装置としてのプリンター500の概略構成を示す説明図である。第1の実施例のプリンター500は、4色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)のインクを吐出可能なインクジェット式プリンターである。このプリンター500は、ブラックインクのインクカートリッジIC1と、シアンインクのインクカートリッジIC2と、マゼンダインクのインクカートリッジIC3と、イエローインクのインクカートリッジIC4と、キャリッジ100と、記録ヘッド150と、ガイドロッド260と、プラテン270と、4つのインク供給部400,401,402,403と、4つのインク導出管30,31,32,33と、4つの配管120,121,122,123と、負圧発生部300とを備えている。
【0026】
プリンター500は、4つのインクカートリッジIC1〜IC4がプリンター本体側に装着される、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンターである。インクカートリッジIC1は、インク導出管30とインク供給部400と配管120とを介してキャリッジ100に接続されている。同様に、インクカートリッジIC2は、インク導出管31とインク供給部401と配管121とを介して、インクカートリッジIC3は、インク導出管32とインク供給部402と配管122とを介して、インクカートリッジIC4は、インク導出管33とインク供給部403と配管123とを介して、それぞれキャリッジ100に接続されている。なお、各インクカートリッジIC1〜IC4は、図示しないカートリッジホルダによってプリンター500の本体フレーム(図示省略)に装着されている。
【0027】
インク供給部400は、インクカートリッジIC1内のブラックインクを、配管120を介してキャリッジ100に供給する。同様に、インク供給部401はインクカートリッジIC2内のシアンインクを、インク供給部402はインクカートリッジIC3内のマゼンダインクを、インク供給部403はインクカートリッジIC4内のイエローインクを、それぞれキャリッジ100に供給する。
【0028】
負圧発生部300は、4つのインク供給部400〜403に接続されており、これらのインク供給部400〜403がキャリッジ100に各色のインクを供給するために用いられる。また、負圧発生部300は、キャリッジ100に対して負圧を供給するためにも用いられる。なお、4つの配管120〜123内には、インク流路及び負圧の供給路(図示省略)が設けられている。
【0029】
ガイドロッド260は、プラテン270の上方(+Y方向)においてプラテン270の長手方向(Z軸)に沿って配置されている。キャリッジ100は、ガイドロッド260に沿ってZ軸方向に往復可能に支持され、キャリッジモーター(図示省略)によりタイミングベルト(図示省略)を介して駆動される。記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置され、キャリッジ100の往復運動に伴い多数のノズル(図示省略)からインク滴を−Y方向に吐出する。このとき、図示しない紙送り機構によって記録用紙Pがプラテン270上を+X方向に送られ、記録用紙Pに画像等が形成される。
【0030】
図2は、図1に示すプリンター500の内部構造を示す断面図である。図2の例では、ブラックインクの供給に関わる内部構造を示すものであるが、他色のインクの供給に関わる内部構造についても同様である。また、図2の例では、キャリッジ100とインクカートリッジIC1との相対的な位置関係と、キャリッジ100及びインクカートリッジIC1の向きとについて、図示の便宜上、図1と異なっている。なお、図2に示す状態は、古いブラックインクのカートリッジを新たなインクカートリッジIC1に交換した直後の状態を示している。
【0031】
インクカートリッジIC1は、中空状のケース200を有し、ブラックインクを貯留する。ケース200は、上面に大気連通孔202を、下面にインク供給口204を、それぞれ備えている。大気連通孔202は、ケース200内と大気とを連通させ、ケース200内のブラックインクの液面に大気圧を作用させる。インク供給口204には、インク導出管30の先端に設けられたインク導出針250が挿入されており、ケース200内のブラックインクをインク供給部400へと供給する。
【0032】
インク供給部400は、第1の流路形成部材10と、第2の流路形成部材12と、可撓性部材14とを備えている。第1の流路形成部材10及び第2の流路形成部材12は、それぞれ樹脂製の単一部材である。また、可撓性部材14は、単一のゴム製の板状部材である。これらの第1の流路形成部材10,第2の流路形成部材12,可撓性部材14は積層されている。なお、第1の流路形成部材10及び第2の流路形成部材12として、金属製の部材を用いることもできる。また、可撓性部材14として、樹脂製部材を用いることもできる。このような構成を有するインク供給部400は、第1のバルブ420と、第2のバルブ460と、ポンプ440を有する。
【0033】
第1のバルブ420は、第1バルブ室20と、弁体22と、コイルバネ21とを備えている。第1バルブ室20は、第1の流路形成部材10と第2の流路形成部材12との間に形成された凸形状の空間である。弁体22は、第1バルブ室20内に配置されており、第1バルブ室20において下部空間23と上部空間24とを形成する。弁体22は、可撓性部材14の一部であり、第1バルブ室20内を上下方向に変位することができる。なお、弁体22は、インクの供給が行われない状態においては、コイルバネ21の付勢力により第1の流路形成部材10に押し付けられている。この状態は閉弁状態であり、第1のバルブ420はインクカートリッジIC1からポンプ440へのインクの流通を妨げる。なお、弁体22が上方に変位すると中央部分に連通孔が生じて開弁状態となり、第1のバルブ420はインクを流通させることができる。上部空間24は、内部流路35と連通している。なお、内部流路35は、第1バルブ室20と後述するポンプ室40とを接続するインク流路である。下部空間23は、内部流路34と連通している。なお、内部流路34は、インク導出管30と第1バルブ室20とを接続するインク流路である。
【0034】
ポンプ440は、ポンプ室40と、ダイヤフラム42と、コイルバネ41とを備えている。ポンプ室40は、前述の第1バルブ室20と同様に、第1の流路形成部材10と第2の流路形成部材12との間に形成された凸形状の空間である。ダイヤフラム42は、ポンプ室40内に配置されており、ポンプ室40を下部空間43と上部空間44とに分割する。ダイヤフラム42は、可撓性部材14の一部であり、ポンプ室40内を上下方向に変位することができ、上方に変位する際に第1のバルブ420を介してインクカートリッジIC1からインクを吸引し、下方に変位する際に第2のバルブ460を介してキャリッジ100にインクを供給する。図2の例では、ダイヤフラム42は、最も下方(下死点)に位置している。下部空間43は、2つの内部流路35,36にそれぞれ連通している。なお、内部流路36は、ポンプ室40と後述する第2バルブ室60とを接続するインク流路である。上部空間44は、後述する負圧供給路352に接続されている。
【0035】
第2のバルブ460は、第2バルブ室60と、弁体62と、コイルバネ61とを備えている。第2バルブ室60は、第1バルブ室20と同様に、第1の流路形成部材10と第2の流路形成部材12との間に形成された凸形状の空間である。弁体62は、第2バルブ室60内に配置されており、第2バルブ室60において下部空間63と上部空間64とを形成する弁体62は、可撓性部材14の一部であり、第2バルブ室60内を上下方向に変位することができる。なお、弁体62は、インクの供給が行われない状態においては、コイルバネ61の付勢力により第1の流路形成部材10に押し付けられている。この状態は閉弁状態であり、第2のバルブ460は、ポンプ440から配管120(キャリッジ100)へのインクの流通を妨げる。一方、弁体62は、内部流路36内のインクによって上方に所定の圧力(例えば、13kpa)以上の圧力を受けると、上方に変位して開弁状態となる。このとき、第2のバルブ460は、インクを流通させることができる。下部空間63は、内部流路36,37と連通している。
【0036】
負圧発生部300は、駆動モーター322と、吸引ポンプ320と、カム機構324と、大気開放機構330とを備えている。吸引ポンプ320は、駆動モーター322と接続されている。また、吸引ポンプ320は、負圧供給路352,354に接続されている。駆動モーター322は、吸引ポンプ320とカム機構324とに接続され、これら吸引ポンプ320とカム機構324とを駆動する。大気開放機構330は、筐体326と、コイルバネ331と、弁体332と、シール部材334とを備えている。筐体326は、配管351を介して、負圧供給路352,354に接続されている。また、筐体326には開口部338が設けられており、開口部338からロッド336が挿入されている。なお、開口部338とロッド336との間には隙間が設けられている。ロッド336は、筐体326内部において弁体332と接合されている。コイルバネ331は、弁体332をシール部材334に押し付ける方向に付勢されている。前述の駆動モーター322は、正転駆動又は逆転駆動が可能である。そして、吸引ポンプ320は、駆動モーター322の正転駆動により駆動されて負圧を発生する。一方、カム機構324は、駆動モーター322の逆転駆動により駆動されてロッド336を押し出す。このとき、弁体332は押し上げられてシール部材334から離れるため、筐体326内部は大気開放され、また、負圧供給路352,354も大気開放される。
【0037】
配管120の内部には、内部流路38と負圧供給路356とが設けられている。内部流路38は、内部流路37と連通してインクの供給路を形成する。また、負圧供給路356は、負圧供給路358と連通して負圧の供給路を形成する。配管120は、印刷時におけるキャリッジ100の往復運動に対応し得るように、ゴムチューブ等で構成されている。
【0038】
キャリッジ100は、大気室87と、第1圧力室77と、第2圧力室89と、第3のバルブ71と、減圧室80と、脱泡室92と、気圧バルブ81と、2つの内部流路39,79と、負圧供給路358と、インク吐出流路95とを備えている。
【0039】
大気室87は、大気連通孔99を介して大気と連通している。第1圧力室77は、中空状の部屋であり、ブラックインクを一時的に溜めてキャリッジ100内のインク供給路における圧力を調整する。第1圧力室77は、天井部分である隔壁部88bを挟んで大気室87に隣接している。隔壁部88bは、可撓性を有しており上下方向に変位可能である。隔壁部88bとしては、例えば、合成樹脂やゴム等からなるフィルムと、このフィルムと共に変位可能な片持ち(図示省略)の薄板部材とで形成することができる。第1圧力室77は、インク流入口76を備えており、このインク流入口76を介して後述するバルブ室70と連通している。また、第1圧力室77は、内部流路79を介して脱泡室92と連通している。
【0040】
第3のバルブ71は、バルブ室70と、弁体72と、圧力調整バネ73と、シール部材75と、支持ロッド74とを備えている。バルブ室70は、中空状の部屋であり、内部流路39と連通している。弁体72は、バルブ室70内に配置されており、圧力調整バネ73により封止位置側に付勢されている。この弁体72は、第1圧力室77とバルブ室70とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能である。具体的には、弁体72を押し下げる力(隔壁部88bによる支持ロッド74の押圧力及び第1圧力室77内の圧力)が、弁体72を押し上げる力(バルブ室70内の圧力及び圧力調整バネ73の付勢力)よりも大きい場合に開放位置に向かって変位し、弁体72を押し下げる力が弁体72を押し上げる力よりも小さい場合に封止位置に向かって変位する。なお、図2の例では、弁体72は、封止位置に位置している。シール部材75は、弁体72の上面に配置されており、弁体72が封止位置に配置された際にインクがバルブ室70から第1圧力室77に流通しないように封止する。支持ロッド74は、バルブ室70と第1圧力室77とに亘って配置されており、一端が弁体72と接合され、他端が第1圧力室77の隔壁部88bと接合されている。
【0041】
脱泡室92は、中空状の部屋であり、内部にフィルタ93を備えている。脱泡室92は、フィルタ93よりも上部側において内部流路79と連通しており、後述する脱泡動作のために内部流路79から流入したインクを一時的に貯留する。脱泡室92に貯留されたインクは、フィルタ93を通って、脱泡室92の底面と連通するインク吐出流路95に排出される。フィルタ93は、インクを濾過して不純物(塵など)を取り除くと共に、インク供給路内に混入した気泡を通過させ難くして、脱泡室92の天井部において気泡を捕捉(トラップ)させる機能も有する。
【0042】
減圧室80は、脱泡室92の上方に配置された中空状の部屋であり、負圧発生部300から供給される負圧によって脱泡室92からガス(気泡)を除去するために用いられる。減圧室80の床面と脱泡室92の天井面とは、隔壁部90として一体形成されている。この隔壁部90は、気体透過性を有する部材(例えば、ポリアセタールやポリプロピレンやポリフェニレンエーテル等)により構成されている。なお、一体形成された隔壁部90に代えて、減圧室80の床面と脱泡室92の天井面とをそれぞれ気体透過性を有する別体の壁として形成し、互いに接するように構成することもできる。
【0043】
第2圧力室89は、減圧室80の上方に配置された中空状の部屋であり、負圧発生部300から供給される負圧を減圧室80に供給するために用いられる。第2圧力室89は、天井部分である隔壁部88aを挟んで大気室87に隣接している。隔壁部88aは、前述の隔壁部88bと同じ構成を有している。ただし、隔壁部88aと隔壁部88bとは、互いに接しておらず、それぞれ独立して変位することができる。第2圧力室89は、負圧供給路358と連通している。なお、負圧供給路358は、負圧供給路356と連通している。また、第2圧力室89は、連通孔86を介して減圧室80と連通している。第2圧力室89と減圧室80とに亘って気圧バルブ81が配置されている。この気圧バルブ81は、前述の第3のバルブ71と同様な構成を有している。すなわち、気圧バルブ81は、弁体82と、圧力調整バネ83と、シール部材85と、支持ロッド84とを備えている。弁体82は、第2圧力室89と減圧室80とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能であり、圧力調整バネ83により封止位置側に付勢されている。図2の例では、弁体82は、封止位置に配置されている。シール部材85は、弁体82が封止位置に配置された際に、連通孔86を封止して減圧室80内の負圧を維持する。支持ロッド84は、一端が弁体82と接合されており、他端が隔壁部88aと接合されている。
【0044】
記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置されており、ノズルプレート152と、インク吐出流路154とを備えている。インク吐出流路154は、キャリッジ100のインク吐出流路95と連通しており、脱泡室92から吐出されたインクをノズルプレート152へと導く。ノズルプレート152は、多数のノズル(図示省略)を備えており、インク吐出流路95及びインク吐出流路154を介して脱泡室92から供給されたインクを吐出する。
【0045】
なお、前述の脱泡室92と減圧室80と気圧バルブ81と第2圧力室89と負圧発生部300とは、請求項における減圧脱泡手段に相当する。また、ポンプ440と負圧発生部300とは請求項における加圧手段に、吸引ポンプ320は請求項における圧力調整部に、第3のバルブ71は請求項における弁装置に、負圧発生部300は請求項におけるポンプ機構に、それぞれ相当する。
【0046】
A2.インク供給部400におけるインク供給動作:
図3(A)は、インクの吸引駆動時のインク供給部400を示す断面図である。また、図3(B)は、インクの吐出駆動時のインク供給部400を示す断面図である。図2に示す状態から記録ヘッド150にインクを供給する場合、まず、ポンプ440はインクカートリッジIC1からのインクの吸引駆動を実行する。
【0047】
具体的には、駆動モーター322(図2)は、正転駆動して吸引ポンプ320を駆動させる。すると、吸引ポンプ320は負圧を発生させ、負圧供給路352(図3(A))を介してポンプ440の上部空間44に負圧を供給する。上部空間44の内部が負圧となると、ダイヤフラム42は、コイルバネ41の付勢力に打ち勝って弾性変形して上方に変位し、図3(A)に示すように、下部空間43の容積が増加する。このとき、下部空間43の内部は負圧となるので、ポンプ440は吸引動作を行う。すなわち、ポンプ440は、内部流路35を介して第1のバルブ420の上部空間24のインクを吸引する。第1のバルブ420において、弁体22は、コイルバネ21の付勢力に打ち勝って弾性変形して上方に変位する。このとき、弁体22の中央部分において、上部空間24と下部空間23とを連通する連通孔28が生じ、第1のバルブ420は開弁状態となる。したがって、インクカートリッジIC1(図2)内のブラックインクは、インク導出針250,インク導出管30,内部流路34(図3(A)),下部空間23,連通孔28,上部空間24,及び内部流路35を通って、容積の増加したポンプ440の下部空間43に吸引される。
【0048】
一方、第2のバルブ460では、ポンプ440の吸引駆動時において下部空間63内のインクが内部流路36を介してポンプ440に吸引される。したがって、弁体62は、第1の流路形成部材10に押し付けられている状態(閉弁状態)を維持することとなる。
【0049】
上述した吸引駆動によってポンプ室40の下部空間43にインクが溜められた後に、ポンプ440は、インクの吐出駆動を実行する。具体的には、駆動モーター322(図2)は、逆転駆動してカム機構324を駆動させる。すると、ロッド336が押し出されて弁体332が上方に上がって開弁状態となり、開口部338を介して配管351が大気と連通する。このとき、負圧供給路352(図3(B))を介して上部空間44は大気開放され、ダイヤフラム42は、コイルバネ41の付勢力により下方に弾性変形(変位)する。下部空間43内に溜められたインクは、ダイヤフラム42の変位によって所定の圧力(例えば、30kpa)で内部流路35,36に排出される。下部空間43から内部流路36に排出された加圧インクは、第2のバルブ460において弁体62を下方から所定の圧力で(例えば、30kpa)押し上げる。すると、弁体62は、コイルバネ61の付勢力(例えば、13kpa)に打ち勝って上方に変位して開弁状態となり、下部空間63に流入したインクは、内部流路37を介してキャリッジ100に向けて吐出される。
【0050】
一方、第1のバルブ420では、上部空間24に内部流路35を介して加圧されたインクが流入する。すると、コイルバネ21の付勢力と流入したインクの圧力とによって弁体22は下方に変位し、弁体22の中央部に生じた連通孔28は消滅して上部空間24と下部空間23とは連通しない状態となる。したがって、ポンプ440の吐出駆動に伴い下部空間43から吐出された加圧インクが、第1のバルブ420を介してインクカートリッジIC1に逆流することが抑制される。
【0051】
上述したインクカートリッジの交換後における吐出駆動の後には、所定の圧力(例えば、30kpa)がポンプ440から第3のバルブ71までの間のインク供給路に作用する。このように、プリンター500では、インクカートリッジIC1から記録ヘッド150までの間のインク供給路のうち、インク供給部400から第3のバルブ71までの間を加圧領域AR1(図2)としている。そして、この加圧領域AR1においてインクを加圧しているので、インク中における気泡の成長が抑制される。なお、加圧領域におけるインク供給路(内部流路34〜39等)を気体透過性部材で構成する場合には、インク供給路の壁面を介して大気からインク中に気体が溶け込むのを抑制することができると共に、インク中に溶存していた気体をインク供給路の壁面を介して除去することもできる。
【0052】
記録ヘッド150(図2)からインクが噴射されると、後述するように、インク噴射に伴うインク消費量に相当する分量のインクが開弁した第3のバルブ71を介して記録ヘッド150に供給される。また、インク消費量に相当する分量のインクがポンプ440(図3(B))によってキャリッジ100に供給される。このとき、ダイヤフラム42の下方への押圧力(コイルバネ41の付勢力による押圧力)によって加圧された状態でインクが供給される。そして、インクを供給するのに従ってダイヤフラム42が下死点位置まで変位すると、駆動モーター322は再び正転駆動し、ポンプ440は上述した吸引動作及び吐出駆動を実行する。このようにして、消費された分量のインクがインクカートリッジIC1から記録ヘッド150へと加圧された状態で適宜供給されることとなる。
【0053】
A3.キャリッジ100におけるインク供給動作:
図4(A)は、インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図である。ノズルプレート152に設けられたノズル(図示省略)からインクが噴射されてインクが消費されると、第1圧力室77の室圧がインクの減量により低下する。すると、その減圧した室圧と大気室87の圧力(大気圧)との差圧によって隔壁部88bが第1圧力室77の内側に撓んで下方に変位する。このとき、弁体72は、支持ロッド74を介して押し下げられる。そして、圧力調整バネ73の付勢力に打ち勝って弁体72が開放位置に位置すると、インク流入口76が開放されてインクが第1圧力室77に流入する。
【0054】
図4(B)は、開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図である。第1圧力室77にインクが流入してその室圧が高まると、隔壁部88bは上方に変位する。これに伴って弁体72が再び封止位置に移動すると、第1圧力室77へのインクの流入は停止し、記録ヘッド150へのインクの供給が停止する。このように、プリンター500では、インクの消費に応じて第3のバルブ71が開閉動作することで、消費した分量のインクが記録ヘッド150に適宜流入するように構成されている。
【0055】
A4.脱泡動作:
吸引ポンプ320(図2)によって発生した負圧は、上述したようにポンプ440の上部空間44に供給されると共に、負圧供給路354,356,358を介して第2圧力室89(図4(A))にも供給される。このとき、第2圧力室89の室圧(負圧)と大気室87の圧力(大気圧)との差圧によって隔壁部88aが第2圧力室89の内側に撓んで下方に変位する。弁体82は、支持ロッド84を介して押し下げられる。そして、弁体82が開放位置に位置すると、連通孔86が開放されて負圧が減圧室80に供給される。すると、脱泡室92の天井部分にトラップされた気泡(ガス)BLは、減圧室80内の圧力と脱泡室92の圧力との差圧によって隔壁部90を透過して減圧室80に流入し、気泡は徐々に減少していく。
【0056】
また、大気開放機構330(図2)において弁体332が開弁状態となり、配管351,354,356,358を介して第2圧力室89が大気開放されると、第2圧力室89と大気室87との差圧がなくなるため、図4(B)に示すように、隔壁部88aは上方に変位する。これに伴い、弁体82は上方に変位して連通孔86を封止する。したがって、気圧バルブ81内は負圧が維持され、脱泡室92においてガスの除去が継続して行われる。
【0057】
このように、プリンター500では、インクカートリッジIC1から記録ヘッド150までの間のインク供給路のうち、第3のバルブ71よりも下流側(記録ヘッド150寄り側)において減圧脱泡領域AR2(図2)が設けられている。そして、この減圧脱泡領域AR2において上述した脱泡動作が行われ、インク中のガスが除去される。
【0058】
以上説明したように、プリンター500では、加圧領域AR1と減圧脱泡領域AR2とを設け、加圧領域AR1においてインクを加圧供給するのでインク中の気泡の成長やインク中へのインクの溶け込みを抑制することができ、また、減圧脱泡領域AR2において脱泡動作を行うのでインク中の気泡を除去することができる。したがって、プリンター500内を流通するインク中の気泡を十分に除去し、また、気泡の成長を十分に抑制することができる。また、加圧により気泡量が減った状態のインクを減圧脱泡するので、気泡を停滞(トラップ)させるための脱泡室92を小型化することができる。また、インクの加圧と減圧脱泡とで負圧発生部300及びインク供給部400を共用しているので、それぞれを目的として別々に負圧発生部300及びインク供給部400を設ける構成に比べて、プリンター500の製造コストを抑えることができる。
【0059】
B.第2の実施例:
図5は、第2の実施例におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の内部構造を示す断面図である。第2の実施例におけるプリンターは、以下の4点においてプリンター500(図1〜図4)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。すなわち、キャリッジ100aが第2圧力室89と、隔壁部88aと、減圧室80と、気圧バルブ81と、隔壁部90とを備えていない点、内部流路39に代えて気体透過性を有する内部流路39aを有する点、減圧脱泡室130を備えている点、及び負圧供給路358が減圧脱泡室130に接続されている点が相違点である。
【0060】
第1の実施例では、インクの加圧と減圧脱泡とは、互いに異なる領域(加圧領域AR1及び減圧脱泡領域AR2)において行われていたが、第2の実施例では、加圧と減圧脱泡とを重複する領域において行うように構成されている。具体的には、減圧脱泡室130は、内部流路39aを囲むように設置されており、この減圧脱泡室130において減圧脱泡が行われる。一方、第2の実施例における加圧領域は、第1の実施例と同じ(インク供給部400から第3のバルブ71までの区間)である。したがって、減圧脱泡室130において加圧と減圧脱泡とが重複して行われる。
【0061】
インク供給部400(図2)から内部流路39a(図5)に供給されたインクは、第1の実施例と同様に加圧されており、気体透過性を有する内部流路39aにおいて外部に流出し得る。ここで、減圧脱泡室130の内部には、負圧供給路358を介して負圧が供給される。したがって、減圧脱泡室130内において内部流路39aから気体が流出し易くなる。
【0062】
以上の構成を有する第2の実施例のプリンターは、第1の実施例と同様な効果を奏する。また、減圧脱泡室130においてインクの加圧と減圧脱泡とが重複して行われるので、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる。
【0063】
C.第3の実施例:
図6は、第3の実施例におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の内部構造を示す断面図である。第3の実施例におけるプリンターは、以下の3点においてプリンター500(図1〜図3)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。すなわち、内部流路39が脱泡室92と連通している点、インク吐出流路95に代えて脱泡室92からバルブ室70に向かう内部流路96が設けられている点、内部流路79に代えて第1圧力室77のインク排出口から記録ヘッド150に向かうインク吐出流路97が設けられている点が相違点である。
【0064】
第1の実施例では、第3のバルブ71は、脱泡室92よりも上流側に配置されていたが、第2の実施例では、第3のバルブ71は、脱泡室92よりも下流側に配置されている。インク供給部400からキャリッジ100に供給されたインクは、まず、内部流路39を介して脱泡室92に供給されて脱泡される。そして、インクの噴射により第3のバルブ71が開弁状態となると、消費した分量のインクが内部流路96を介して脱泡室92から第1圧力室77へと流入する。
【0065】
以上の構成を有する第3の実施例のプリンターは、第1の実施例と同様な効果を奏する。また、脱泡室92においてインクの加圧と減圧脱泡とが重複して行われるので、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる。
【0066】
D.第4の実施例:
図7は、第4の実施例におけるキャリッジ100c及び記録ヘッド150の内部構造を示す断面図である。第4の実施例におけるプリンターは、第2圧力室89と気圧バルブ81と減圧室80とに代えて、減圧管140を備えている点においてプリンター500(図1〜図3)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0067】
第1の実施例では、脱泡を行うために減圧される部屋(減圧室80)は脱泡室92と接していたが、第2の実施例では、かかる部屋(減圧管140)は脱泡室92に接していない。具体的には、脱泡室92の内部において、フィルタ93よりも上方に減圧管140が配置されている。この減圧管140は、中空の円柱形の部屋であり、その壁面は気体透過性を有する。減圧管140は負圧供給路358と連通しており、インク供給部400から負圧が供給される。そして、減圧管140内に負圧が供給されると、脱泡室92内の気体が減圧管140内に流入して脱泡が行われる。
【0068】
以上の構成を有する第4の実施例のプリンターは、第1の実施例と同様な効果を奏する。
【0069】
E.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
E1.変形例1:
上述した各実施例では、負圧発生部300は、インクの加圧と減圧脱泡とで共用されていたが、これに代えて、それぞれを目的とした2つの負圧発生部を設ける構成とすることもできる。また、負圧発生部300は各色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)で共用されていたが、これに代えて、各色ごとに負圧発生部300を設ける構成とすることもできる。また、インク供給部400〜403は、各色ごとに用意されていたが、これに代えて、各色で1つのインク供給部を共用することもできる。
【0071】
E2.変形例2:
上述した各実施例では、インク供給部400を形成するために、単一の部材である第1の流路形成部材10と、単一の部材である第2の流路形成部材12と、単一の部材である可撓性部材14とを用いていたが、本発明はかかる構成に限定されるものではない。例えば、第1のバルブ420と、ポンプ440と、第2のバルブ460とを、互いに異なる部材を用いて形成することもできる。
【0072】
E3.変形例3:
上述した各実施例において、各色のインクをインクカートリッジIC1〜IC4からキャリッジ100に供給するための構成として、インク供給部400〜403を用いて各色のインクをインクカートリッジIC1〜IC4から吸引及び吐出していたが、これに代えて、加圧した空気を各インクカートリッジIC1〜IC4内に供給する構成とすることもできる。このような構成においても、加圧したインクをキャリッジ100に供給することができる。すなわち、一般には、液体供給路の少なくとも一部を加圧可能な任意の加圧手段を、本発明の液体噴射装置に採用することができる。
【0073】
E4.変形例4:
上述した各実施例では、プリンターが吐出するインクの種類は4色であったが、これに代えて任意の種類のインクを吐出する構成とすることができる。また、各実施例のプリンターはオフキャリッジタイプのプリンターであったが、これに代えて、インクカートリッジをキャリッジに搭載するいわゆるオンキャリッジタイプのプリンターを採用することもできる。
【0074】
E5.変形例5:
上述した第1の実施例及び第3の実施例において、加圧領域及び減圧脱泡領域の数は、それぞれ1つであったが、これに代えて、それぞれ任意の数を設けることもできる。例えば、第2の実施例において、第1の実施例と同様に第2圧力室89及び減圧室80を設けて、減圧脱泡室130と共に脱泡室92において脱泡を行い、減圧脱泡領域を2つ設けることもできる。また、例えば、第1の実施例において、内部流路39の途中に加圧用ポンプを設置して、インク供給部400から供給されるインクをさらに加圧する構成とし、圧力の異なる2つの加圧領域を連続して設ける構成とすることもできる。
【0075】
E6.変形例6:
上述した各実施例では、インクジェット式プリンターについて説明したが、本発明は、これに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置に適用することができる。例えば、ファクシミリ装置等の画像記録装置や、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッドや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置や、精密ピペットとしての試料噴射装置や、潤滑油の噴射装置や、樹脂液の噴射装置等にも適用できる。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これら微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置のうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0076】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【符号の説明】
【0077】
IC1〜IC4…インクカートリッジIC、10…第1の流路形成部材、12…第2の流路形成部材、14…可撓性部材、20…第1バルブ室、21…コイルバネ、22…弁体、23…下部空間、24…上部空間、28…連通孔、30〜33…インク導出管、34〜39,39a…内部流路、40…ポンプ室、41…コイルバネ、42…ダイヤフラム、43…下部空間、44…上部空間、60…第2バルブ室、61…コイルバネ、62…弁体、63…下部空間、64…上部空間、70…バルブ室、71…第3のバルブ、72…弁体、73…圧力調整バネ、74…支持ロッド、75…シール部材、76…インク流入口、77…第1圧力室、79…内部流路、80…減圧室、81…気圧バルブ、82…弁体、83…圧力調整バネ、84…支持ロッド、85…シール部材、86…連通孔、87…大気室、88a,88b…隔壁部、89…第2圧力室、90…隔壁部、92…脱泡室、93…フィルタ、95…インク吐出流路、96…内部流路、97…インク吐出流路、99…大気連通孔、100,100a,100b,100c…キャリッジ、120〜123…配管、130…減圧脱泡室、140…減圧管、143…圧力調整バネ、150…記録ヘッド、152…ノズルプレート、154…インク吐出流路、200…ケース、202…大気連通孔、204…インク供給口、250…インク導出針、260…ガイドロッド、270…プラテン、300…負圧発生部、320…吸引ポンプ、322…駆動モーター、324…カム機構、326…筐体、330…大気開放機構、331…コイルバネ、332…弁体、334…シール部材、336…ロッド、338…開口部、351…配管、352〜358…負圧供給路、400〜403…インク供給部、420…第1のバルブ、440…ポンプ、460…第2のバルブ、500…プリンター、P…記録用紙、AR1…加圧領域、AR2…減圧脱泡領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するための液体噴射装置であって、
前記液体を噴射するヘッド部と、
前記ヘッド部に前記液体を導く液体供給路と、
前記液体供給路の少なくとも一部を減圧して前記液体から気泡を取り除く減圧脱泡手段と、
前記液体供給路の少なくとも一部を加圧する加圧手段と、
ポンプ機構と、
を備え、
前記減圧脱泡手段は、前記液体内の気泡を取り除くための脱泡室と、前記脱泡室と接して配置され気体の圧力調整によって減圧される減圧室と、を有し、
前記加圧手段は、気体の圧力調整によって前記液体の吸引駆動及び吐出駆動を実行するポンプを有し、
前記ポンプ機構は、前記減圧室における前記気体の圧力調整と、前記ポンプにおける前記気体の圧力調整と、に共用される、液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記ポンプは、ダイヤフラムと、前記ダイヤフラムによって分割された2つの空間が形成されたポンプ室と、を有し、
前記ポンプ機構は、前記2つの空間のうちの一方の空間を減圧することにより、前記ポンプにおける吸引駆動と、前記減圧室における減圧と、を実行する、液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記ポンプ機構には、大気開放機構が備えられており、
前記一方の空間及び前記減圧室は、減圧される状態と、前記大気開放機構によって大気圧に開放される状態と、を有する、液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記減圧脱泡手段は、
大気に隣接して配置されるとともに、前記ポンプ機構からの負圧を前記減圧室に供給する圧力室と、
前記圧力室と前記減圧室とを連通状態とする開放位置と、前記圧力室と前記減圧室とを非連通状態とする封止位置と、の間で変位可能な弁体と、
とを有し、
前記減圧室は、前記連通状態において前記圧力室を介して減圧され、前記非連通状態において減圧された状態を維持する、液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記加圧手段の下流側にはバルブが備えられており、
前記ポンプは、前記吐出駆動を実行することにより、該ポンプから前記バルブまでの間の前記液体供給路の前記液体に所定の圧力を加える、液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−32023(P2013−32023A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249824(P2012−249824)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2008−220831(P2008−220831)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】