説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射装置本体内において、液体を供給するための液体供給チューブを効率的に引き回すことができる液体流路形成体誘導装置を提供する。
【解決手段】内部にインク流路35が形成された可撓性材料からなるインク供給チューブ(チューブ体32A,32B)をプリンタの装置本体(フレーム)内で湾曲させながら所定の引き回し方向へ誘導するインク供給チューブ誘導装置34であって、インク供給チューブの湾曲部32a,32bに係合して湾曲部32a,32bをプリンタの装置本体内において変形不能に保持する湾曲保持部36,37を有し、当該湾曲保持部36,37を介してインク供給チューブを引き回し方向に誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体流路形成体誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている。このプリンタは、往復移動するキャリッジに記録ヘッドを搭載し、この記録ヘッドにインクカートリッジ(液体受容体)から供給されたインク(液体)を記録ヘッドに形成されたノズルから噴射することにより、ターゲットとしての記録媒体に印刷を施すようになっている。こうしたプリンタとしては、従来から、例えば特許文献1に記載されるようにインクカートリッジをキャリッジ上に装着するタイプ(所謂オンキャリッジタイプ)と、特許文献2に記載されるようにインクカートリッジをプリンタ上におけるキャリッジとは別の固定位置に装着するタイプ(所謂オフキャリッジタイプ)のプリンタが知られている。
【0003】
ここで、オンキャリッジタイプのプリンタにおいては、キャリッジ上の搭載スペースとの関係でインクカートリッジのインク容量が少ないため、比較的大量の印刷を実行しようとする場合には、インクカートリッジを頻繁に交換することが必要となる。このため、そのような大量印刷の実行時には、インクカートリッジの交換作業に人手を要するだけでなく、ランニングコストも増大するという問題があった。そこで、従来から、オンキャリッジタイプのプリンタでは、キャリッジ上のインクカートリッジに大容量の外付けインクタンクを接続することで、オフキャリッジタイプのプリンタに改造される場合があった。そして、このような改造がなされた場合には、外付けインクタンクからインクカートリッジへインクを供給するためのインク供給チューブ(液体流路形成体)がプリンタ内において湾曲しながら引き回しされることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−262092号公報
【特許文献2】特開2003−320680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、オンキャリッジタイプのプリンタの場合には、元来、インクカートリッジがキャリッジ上に装着されており、インク供給チューブを引き回す必要がないため、図1(b)に示すように、フレーム11内において、キャリッジ16の後面16d側には、プリンタの小型化要請もあって、ほとんど隙間がない構造となっている。仮に、外付けインクタンクから延設されたインク供給チューブをキャリッジ16の前面16a側に沿わせて引き回したとしても、インク供給チューブの引き回し方向を最終的にはインクカートリッジの上面16c側へ変えることが必要となり、この湾曲させるためのスペースまで十分に確保することは困難であった。特に、最近では使用されるインク色の種類が多く、インク供給チューブの本数も多くなっているため、湾曲させるためのスペースも大きくなり、こうした問題が顕著に生じるところであった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、液体噴射装置の装置本体内において、液体流路が形成された液体流路形成体を湾曲させながら効率的に引き回すことができる液体流路形成体誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の液体流路形成体誘導装置は、内部に液体流路が形成された可撓性材料からなる液体流路形成体を液体噴射装置の装置本体内で湾曲させながら所定の引き回し方向へ誘導する液体流路形成体誘導装置であって、前記液体流路形成体の湾曲部に係合して当該湾曲部を前記液体噴射装置の装置本体内において変形不能に保持する湾曲保持部を有し、当該湾曲保持部を介して前記液体流路形成体を前記引き回し方向に誘導する。
【0008】
この構成によれば、可撓性材料で構成された液体流路形成体は、湾曲保持部によって湾曲部が液体噴射装置の装置本体内において変形不能に保持される。そのため、液体流路形成体を、液体噴射装置の装置本体内で大きなスペースを要することなく、湾曲させながら効率的に引き回すことができる。
【0009】
本発明の液体流路形成体誘導装置において、前記湾曲保持部は、前記液体噴射装置の装置本体内で往復移動するキャリッジに支持され、その支持状態において、前記液体流路形成体の湾曲部を保持する。
【0010】
この構成によれば、キャリッジの往復移動時にも液体流路形成体において姿勢が不安定となり易い湾曲部が変形しないため、液体流路形成体に無用な曲げ応力が加わることで液体流路が不必要に絞られてしまうことを抑制できる。
【0011】
本発明の液体流路形成体誘導装置において、前記湾曲保持部は、前記キャリッジの側面のうち当該キャリッジの移動方向と直交する側面に支持され、その支持状態において、前記液体流路形成体を前記キャリッジの側面から前記キャリッジの上面へと向かう引き回し方向へ誘導する。
【0012】
この構成によれば、キャリッジの後面にスペースがない場合であっても、キャリッジの移動方向と直交する側面のスペースを利用して液体流路形成体をキャリッジの前面側から側面を経由して上面側へと効率良く引き回すことができる。
【0013】
本発明の液体流路形成体誘導装置において、前記液体流路形成体は、その内部に前記液体流路が複数並設されており、前記湾曲部は、各液体流路の曲率半径が互いに異なることになる方向へ湾曲させられている。
【0014】
この構成によれば、液体流路が複数並設されてなる液体流路形成体を各液体流路の曲率半径が互いに異なることになる方向へ湾曲させた場合、通常、その湾曲部は姿勢が非常に不安定となりやすい。しかし、そのような湾曲部については湾曲保持部により変形不能に保持されるため、液体噴射装置の装置本体内において液体流路形成体を安定した状態にて好適に引き回しすることができる。
【0015】
本発明の液体流路形成体誘導装置において、前記液体流路形成体は、内部に少なくとも一つの液体流路が形成された第1液体流路形成体と、当該第1液体流路形成体とは別体構成とされて内部に少なくとも一つの液体流路が形成された第2液体流路形成体とを含んで構成され、前記湾曲保持部は、前記第1液体流路形成体の湾曲部を保持する第1湾曲保持部と、前記第2液体流路形成体の湾曲部を保持する第2湾曲保持部とを含んで構成されている。
【0016】
この構成によれば、液体流路形成体が複数の液体流路を備える場合、その液体流路形成体を第1液体流路形成体と第2液体流路形成体とに分けて、それらを第1湾曲保持部と第2湾曲保持部とで分担して保持することができる。そのため、各湾曲保持部に分担して保持される第1液体流路形成体と第2液体流路形成体では、その液体流路形成体における液体流路のうち最も内側と最も外側の液体流路に生じる曲げ応力の差を極力小さくすることができる。
【0017】
本発明の液体流路形成体誘導装置において、前記液体流路形成体は、前記液体噴射装置の装置本体外に配設された液体貯留部に一端が接続される一方、前記液体噴射装置の装置本体内で往復移動するキャリッジ上の液体受容体に他端が接続される。
【0018】
この構成によれば、液体噴射装置の装置本体外に配設された液体貯留部が貯留する液体を、液体噴射装置の装置本体内で往復移動するキャリッジ上の液体受容体に対して、装置本体内を効率的に引き回された液体流路形成体を介して安定供給することができる。
【0019】
本発明の液体流路形成体誘導装置は、内部に液体流路が形成された可撓性材料からなる液体流路形成体を液体噴射装置の装置本体内で湾曲させながら所定の引き回し方向へ誘導する液体流路形成体誘導装置であって、液体噴射装置の装置本体内で往復移動するキャリッジの移動方向に平行な前記キャリッジの前面に沿って並列に配置された複数の前記液体流路形成体を、前記キャリッジの移動方向に直交する前記キャリッジの側面において湾曲させて固定し、さらに前記キャリッジの移動方向に平行な前記キャリッジの上面に沿って並列に誘導する。
【0020】
この構成によれば、オンキャリッジタイプのプリンタをオフキャリッジタイプのプリンタに改造する際に、わずかなスペースの存在するキャリッジ前面、側面、上面を有効に利用して液体流路形成体を引き回すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本実施形態における液体噴射装置としてのプリンタの一部破断斜視図、(b)はプリンタのキャリッジ部分の平面図。
【図2】図1(a)のキャリッジ部分を拡大して示す斜視図。
【図3】インク供給チューブ誘導装置の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、オンキャリッジタイプのプリンタに具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンタ10は、略箱状をなす装置本体としてのフレーム11を有しており、このフレーム11内の下部には、その長手方向(図1に示す主走査方向X)に沿ってプラテン12が架設されている。プラテン12は、ターゲットとしての紙Pを支持する支持台であり、紙送り機構13が有する紙送りモータ14の駆動力に基づき、紙Pを主走査方向Xと直交する副走査方向Yに沿って給送するようになっている。なお、以下の説明において「前後方向」「左右方向」「上下方向」を示す場合は、図1における副走査方向Yの手前側(紙Pが給送される方向)を前方とした場合の「前後方向」「左右方向」「上下方向」を示すものとする。
【0023】
また、フレーム11内においてプラテン12の上方にはガイド軸15が架設され、このガイド軸15にはキャリッジ16が移動可能に挿通支持されている。また、フレーム11の内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17及び従動プーリ18が回転自在に支持されている。駆動プーリ17にはキャリッジモータ19が連結されており、これら一対のプーリ17,18間には、キャリッジ16を固定支持したタイミングベルト20が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモータ19の駆動によりタイミングベルト20を介して主走査方向Xに移動可能となっている。
【0024】
キャリッジ16の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド(図示略)が搭載されている。記録ヘッドの下面には、複数のノズル(図示略)が設けられている。キャリッジ16における記録ヘッドの上側には、複数(本実施形態では8つ)の液体受容体としてのインクカートリッジ21が着脱可能に装着されている。各インクカートリッジ21内には、液体としてのインク(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色を濃淡2種類、合計8種類のインク)が後述する大容量インクタンク31からインク供給チューブ32を介して供給されるようになっている。そして、記録ヘッドに備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ21から記録ヘッドへと各インクが供給され、該各インクが各ノズルからプラテン12上に給送された紙Pにそれぞれ噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0025】
また、図1に示すように、フレーム11内においてプラテン12の下方には、廃液タンク22がプラテン12と平行に延びるように設けられている。この廃液タンク22には、例えば多孔質のパルプ材等からなる吸収部材(図示略)が収容されている。一方、プリンタ10の一端部(図1においては右端部)、すなわち紙Pが至らない非噴射領域には、クリーニング機構23が設けられている。クリーニング機構23は、ノズル内に残存したインクを吸引して、ノズルの目詰まりを解消するための機構であり、記録ヘッドを封止するキャップ24と、吸引手段としての吸引ポンプ25とを備えている。
【0026】
また、図1に示すように、本実施形態では、液体貯留部としての大容量インクタンク31がプリンタ10のフレーム11外(図1では、フレーム11の左外方位置)に配置されている。この大容量インクタンク31内には、キャリッジ16上の各インクカートリッジ21に個別対応したそれぞれのインク色(8色)のインクを貯留する大容量のインクパック(図示略)が配設されている。そして、大容量インクタンク31は、液体流路形成体としてのインク供給チューブ32を介して各インクカートリッジ21に接続されている。
【0027】
一方,インク供給チューブ32は例えばポリエチレン等の可撓性材料からなり、フレーム11に貫通形成された挿通孔33を介してフレーム11内に挿通され、液体流路形成体誘導装置としてのインク供給チューブ誘導装置34によってキャリッジ16(インクカートリッジ21)まで引き回されている。すなわち、インク供給チューブ32は、その上流端となる一端が大容量インクタンク31に接続されると共に、その下流端となる他端がキャリッジ16上の各インクカートリッジ21に接続されている。なお、このインク供給チューブ32を引き回し方向に誘導するインク供給チューブ誘導装置34は本発明の要部であるため、インク供給チューブ32のフレーム11内における引き回し態様と併せて詳細に後述するものとする。
【0028】
インク供給チューブ32内には、大容量インクタンク31のインクパックの数に対応する複数(本実施形態では8つ)のインク流路35(図3参照)が並設されている。すなわち、インク供給チューブ32は、図2に示すように、下流端において各インクカートリッジ21と個別に接続される複数(本実施形態では8つ)のチューブ体35a,35b,35c,35d,35e,35f,35g,35hが所定本数(本実施形態では4本)ずつ並列状をなすように一体化された帯状体に形成されている。具体的には、4本のチューブ体35a,35b,35c,35dが並列状をなすように一体化された帯状体の第1チューブ32Aと、残り4本のチューブ体35e,35f,35g,35hが並列状をなすように一体化された帯状体の第2チューブ32Bとで本実施形態のインク供給チューブ32は構成されている(図3参照)。
【0029】
インク供給チューブ32の上流端において、各インク流路35は、大容量インクタンク31の対応する各インクパックとそれぞれ連通している。一方、インク供給チューブ32の下流端において、各インク流路35は、図2に示すように、各チューブ体35a,35b,35c,35d,35e,35f,35g,35hがキャリッジ16上のインクカートリッジ21に個別に接続されていることから、各々対応するインク色のインクカートリッジ21に連通している。したがって、大容量インクタンク31内のインクは、インク供給チューブ32内の各インク流路35から各インクカートリッジ21内に流入した後、キャリッジ16の下面に配置される記録ヘッドの対応する各ノズル(いずれも図示略)にそれぞれ供給されるようになっている。
【0030】
次に、プリンタ10のフレーム11内においてインク供給チューブ32をキャリッジ16上の各インクカートリッジ21まで誘導するインク供給チューブ誘導装置34の構成及び、インク供給チューブ32の引き回し態様について説明する。
【0031】
図3に示すように、インク供給チューブ誘導装置34は、第1湾曲保持部36と、第2湾曲保持部37と、取付部材38とを備えている。そして、取付部材38によって第1湾曲保持部36と第2湾曲保持部37とが一体に組み付けられた状態でキャリッジ16に支持固定されるように構成されている。
【0032】
第1湾曲保持部36は、インク供給チューブ32の第1チューブ32Aがキャリッジ16の前面16a側から側面16b側に回り込んだ後、その側面16bから上面16cへと向かう引き回し方向へ湾曲する際に、その湾曲部32aをフレーム11内において変形不能に(すなわち、その湾曲状態を維持するように)保持するものである。この第1湾曲保持部36は、側面視略四半円弧状をなすように湾曲した内縁部40と、この内縁部40よりも大きな曲率半径で湾曲した外縁部41とを有する中空ブロック状に形成されている。
【0033】
また、第1湾曲保持部36の内部には、通路断面形状が第1チューブ32Aの断面外形形状と略同一形状の挿通路42が、第1湾曲保持部36の内縁部40及び外縁部41に沿った湾曲状をなすように貫通形成されている。そして、該挿通路42内に第1チューブ32Aが挿通された場合に、第1チューブ32Aは、その湾曲部32aが挿通路42の内面と係合して湾曲状態を変位不能に保持されるようになっている。また、第1湾曲保持部36の基端部(図3では下端部)36aには、第2湾曲保持部37と一体に組み付けられる際にねじ43が挿入される孔44が、上下方向に貫通形成されている。
【0034】
同様に、第2湾曲保持部37は、インク供給チューブ32の第2チューブ32Bがキャリッジ16の前面16a側から側面16b側に回り込んだ後、その側面16bから上面1
6cへと向かう引き回し方向へ湾曲する際に、その湾曲部32bをフレーム11内において変形不能に(すなわち、その湾曲状態を維持するように)保持するものである。第2湾曲保持部37は、側面視略四半円弧状をなすように湾曲した内縁部45と、この内縁部45より大きな曲率半径で湾曲した外縁部46とを有する中空ブロック状に形成されている。また、第2湾曲保持部37は、その全体形状が、第1湾曲保持部36よりも大きな曲率半径で湾曲した中空ブロック状に形成されており、その内縁部45が第1湾曲保持部36の外縁部41に対応した形状に形成されている。そして、第1湾曲保持部36と第2湾曲保持部37とを上下方向に重ねて組み付けた際には、第2湾曲保持部37の内縁部45上に第1湾曲保持部36の外縁部41が係合するようになっている。
【0035】
また、第2湾曲保持部37の内部には、通路断面形状が第2チューブ32Bの断面外形形状と略同一形状の挿通路47が、第2湾曲保持部37の内縁部45及び外縁部46に沿った湾曲状をなすように貫通形成されている。そして、該挿通路47内に第2チューブ32Bが挿通された場合に、第2チューブ32Bは、その湾曲部32bが挿通路47の内面と係合して湾曲状態を変位不能に保持されるようになっている。また、第2湾曲保持部37の基端部(図3では下端部)37aには、第1湾曲保持部36と一体に組み付けられる際にねじ48が挿入される孔49が、上下方向に貫通形成されている。
【0036】
ここで、図3に示すように、組付け時において第2湾曲保持部37よりも上方に配置される第1湾曲保持部36は、その外縁部41の曲率半径ρ1が第2湾曲保持部37の外縁部46の曲率半径ρ2よりも小さくなっている。そして、各湾曲保持部36,37は、インク供給チューブ32(第1チューブ32A、第2チューブ32B)のチューブ体35a〜35h(インク流路35)毎における湾曲部(例えば、湾曲部35i,35j)の曲率半径(ρ3,ρ4)を互いに異ならせた状態(ρ3<ρ4)でインク供給チューブ32(第1チューブ32A、第2チューブ32B)の湾曲部32a,32bを保持する。
【0037】
取付部材38は、各湾曲保持部36,37をキャリッジ16の側面16b(右側面)に固定するための部材である。取付部材38は、略L字形状の薄板状部材であって、垂直に延びる取付片51と、当該取付片51の下端から水平方向の前方に延設される支持片52とで構成されている。支持片52には、第1湾曲保持部36と第2湾曲保持部37とを取付部材38に固定するためのねじ43が螺合されるねじ孔53が貫通形成されている。一方、取付片51には、取付部材38をキャリッジ16の側面16b(右側面)に固定するためのねじ48が螺合されるねじ孔54が貫通形成されている。
【0038】
そこで次に、上記のように構成された本実施形態のプリンタ10の作用に関し、特に、インク供給チューブ誘導装置34の作用に着目して以下説明する。
さて、大容量インクタンク31に上流端(一端)を接続されたインク供給チューブ32は、その下流端(他端)側がフレーム11の挿通孔33からプリンタ10内に挿入される。そして、プリンタ10内において、インク供給チューブ32は、キャリッジ16の前面16aに沿うように(キャリッジ16の前面16aに平行に)キャリッジ16の移動方向(図1における右方向)に引き回され、その下流端側の部分がインク供給チューブ誘導装置34における湾曲保持部36,37の各挿通路42,47内に挿通される。すると、図3に示すように、インク供給チューブ32(第1チューブ32A、第2チューブ32B)は、湾曲部32a,32bが挿通路42,47の内面と係合した湾曲状態となり、その湾曲部32a,32bが変形不能な状態に保持される。
【0039】
次に、第1湾曲保持部36と第2湾曲保持部37が、第1湾曲保持部36の外縁部41と第2湾曲保持部37の内縁部45とが当接するように且つ各基端部36a,37aの孔44,49が取付部材38のねじ孔53と一致するように上下に重ねられる。そして、その重ねられた状態で、各孔44,49及び取付部材38のねじ孔53にねじ43が螺合されると、インク供給チューブ誘導装置34は、第1湾曲保持部36、第2湾曲保持部37、及び取付部材38が一体に組み付けられた状態となる。
【0040】
そして次に、そのような状態にあるインク供給チューブ誘導装置34における取付部材38の取付片51をキャリッジ16の側面16b(右側面)に当接させ、取付片51のねじ孔54にねじ48を螺合すると、インク供給チューブ誘導装置34はキャリッジ16の
側面16b(右側面)に支持固定される。その後、図2に示すように、インク供給チューブ32(第1チューブ32A,第2チューブ32B)の各チューブ体35a〜35hの下流端をそれぞれ対応するインク色のインクカートリッジ21に接続すると、インク供給チューブ32の引き回しが完了する。
【0041】
上述したプリンタ10によれば、キャリッジ16が往復移動すると、それに伴いインク供給チューブ誘導装置34よりも上流側(キャリッジ16の前面16aに沿って引き回される部分)のインク供給チューブ32が前後に可撓する。このとき、インク供給チューブ誘導装置34よりも下流側(キャリッジ16の上面16cに沿って引き回される部分)のインク供給チューブ32は、キャリッジ16の上面16cに不撓状態に固定されているため何ら動かない。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、インク供給チューブ32の湾曲部32a,32bが、各湾曲保持部36,37によってプリンタ10の装置本体(フレーム11)内に変形不能に保持されている。従って、インク供給チューブ32を装置本体(フレーム11)内で湾曲させながら引き回す際に、インク供給チューブ32をインク供給チューブ誘導装置34に誘導されるようにして大きなスペースを要することなく効率的に引き回すことができる。
【0043】
(2)また、第1湾曲保持部36及び第2湾曲保持部37によって、特に姿勢が不安定となり易いインク供給チューブ32の湾曲部32a,32bが保持されるため、キャリッジ16の往復移動時にインク供給チューブ32に無用な曲げ応力が加わることもなく、インク流路35が不必要に絞られてしまうことを抑制できる。
【0044】
(3)上記実施形態では、インク供給チューブ32(第1チューブ32A、第2チューブ32B)のチューブ体35a〜35h(インク流路35)毎における湾曲部(例えば、湾曲部35i,35j)の曲率半径(ρ3,ρ4)を互いに異ならせた状態で、インク供給チューブ32(第1チューブ32A、第2チューブ32B)の湾曲部32a,32bが各湾曲保持部36,37に保持されている。一般に、チューブ体35a〜35h(インク流路35)の曲率半径が互いに異なるようにインク供給チューブ32を湾曲させながら装置本体(フレーム11)内を引き回す際には、その湾曲部32a,32bは、曲率半径の小さい一端側部位(内周側部位)と、それより曲率半径の大きい他端側部位(外周側部位)とで曲げ応力が相違する。そのため、湾曲部32a,32bにおける姿勢が非常に不安定となる。しかし、上記実施形態によれば、インク供給チューブ誘導装置34の湾曲保持部36,37によりインク供給チューブ32の湾曲部32a,32bを確実に変形不能に保持できるため、安定した状態でインク供給チューブ32を引き回すことができる。
【0045】
(4)上記実施形態では、インク供給チューブ誘導装置34は、第1湾曲保持部36と第2湾曲保持部37とを含んで構成されている。このため、第1チューブ32Aと第2チューブ32Bとで構成されるインク供給チューブ32を、各チューブ32A,32B毎に各湾曲保持部36,37で保持することができる。そのため、各湾曲保持部36,37に分担して保持される第1チューブ32Aと第2チューブ32Bでは、そのインク供給チューブ32におけるチューブ体35a〜35h(インク流路35)のうち最も内側のチューブ体(35a,35e)と最も外側のチューブ体(35d,35h)に生じる曲げ応力の差を極力小さくすることができる。したがって、使用されるインク色の種類が多いために多数のチューブ体35a〜35h(インク流路35)が並列状をなして湾曲しつつ引き回される場合でも、その湾曲した部分(湾曲部)においてインク供給チューブ32自体が破損することを防止することができる。
【0046】
(5)上記実施形態では、第1湾曲保持部36及び第2湾曲保持部37は、キャリッジ16の移動方向(図1におけるX方向)と直交する側面16b(右側面)に支持固定されている。従って、キャリッジ16の後面16dにスペースがない場合であっても、キャリッジ16の側面16b側のスペースを使用してインク供給チューブ誘導装置34を取り付けることができ、このインク供給チューブ誘導装置34を介してインク供給チューブ32を湾曲させながら引き回しすることができる。
【0047】
(6)上記実施形態では、インク供給チューブ誘導装置34によってインク供給チュー
ブ32がキャリッジ16に保持されるため、インク供給チューブ誘導装置34よりも上流側(キャリッジ16の前面16aに沿って引き回される部分)のインク供給チューブ32の姿勢を安定させることができ、キャリッジ16の往復移動に伴いインク供給チューブ32が円滑に可撓する構成にできる。その一方、インク供給チューブ32においてインク供給チューブ誘導装置34よりも下流側(キャリッジ16の上面16cに沿って引き回される部分)はキャリッジ16の往復移動にも不撓状態とされるため、インク供給チューブ32の下流端と各インクカートリッジ21との接続部分に不要な負荷が加わらず、その接続状態を安定保持できる。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・ 上記実施形態におけるインク供給チューブ誘導装置34は、装置本体(フレーム11)内に配置されるタイプのインクタンクからインクカートリッジ21へインクを供給するインク供給チューブを誘導する装置として具体化してもよい。
【0049】
・ 上記実施形態におけるインク供給チューブ32は、フレーム11内においてキャリッジ16の後面16dに若干の隙間が形成されていれば、キャリッジ16の後面16dに沿うように引き回してもよい。
【0050】
・ 上記実施形態におけるインク供給チューブ32は、キャリッジ16の左側面や、キャリッジ16の前面16aに保持するようにしてもよい。また、特にキャリッジ16の左側面に保持する場合であれば、キャリッジ16の前面16a側にインク供給チューブ32が可撓するだけのスペースがない場合でも、キャリッジ16の左側面側のスペースを可撓するためのスペースとして使用することができる。
【0051】
・ さらに、インク供給チューブ誘導装置34を、プリンタ10内のキャリッジ16以外の部位に支持し、そのインク供給チューブ誘導装置34によってインク供給チューブ32の湾曲部32a,32bが保持されるようにしてもよい。
【0052】
・ 上記実施形態における第1湾曲保持部36及び第2湾曲保持部37による各チューブ32A,32Bの保持方法は適宜変更できる。例えば、各湾曲保持部36,37に挿通路42,47を形成することなく、各湾曲保持部36,37をそれぞれ厚さ方向に2分割される構成とし、分割された部材間に各チューブ32A,32Bの湾曲部32a,32bを挟み込むようにして保持してもよい。また、各湾曲保持部36,37に挿通路42,47を形成することなく、各湾曲保持部36,37におけるキャリッジ16の側面16bと対向する面に各チューブ32A,32Bの断面外形形状に対応する凹凸部を形成し、該凹凸部とキャリッジ16の側面16bとで各チューブ32A,32Bの湾曲部32a,32bを挟み込むようにして押圧保持してもよい。
【0053】
・ 上記実施形態におけるインク供給チューブ32は、インク供給チューブ誘導装置34よりも上流側部分(キャリッジ16の前面16aに沿って引き回される部分)と、インク供給チューブ誘導装置34よりも下流側部分(キャリッジ16の上面16cに沿って引き回される部分)とで別個のインク供給チューブとして形成されているタイプであってもよい。この場合、各チューブ体35a〜35hに対応するインク流路が内部に形成された各湾曲保持部36,37に、インク供給チューブ32の上流側部分及び下流側部分の各先端部を接続するようにして構成できる。この構成においても、インク供給チューブ32の上流側部分、湾曲保持部36,37内のインク流路35、インク供給チューブ32の下流側部分を順次介して、大容量インクタンク31からインクカートリッジ21までインクが安定して供給される。
【0054】
・ 上記実施形態において、第1湾曲保持部36及び第2湾曲保持部37とは、それぞれ別個にキャリッジ16に支持される構成としてもよい。
・ 上記実施形態では、インクカートリッジ21がキャリッジ16に搭載されたオンキャリッジタイプのインクジェット式プリンタに具体化したが、これに限らず、オフキャリッジタイプのインクジェット式プリンタに具体化してもよい。すなわち、オンキャリッジタイプ及びオフキャリッジタイプの何れのタイプのインクジェット式プリンタにおいてもプリンタ内の限られたスペース内で効率良く可撓性を有するインク供給チューブ32を湾曲させながら引き回しする場合に、上記実施形態のインク供給チューブ誘導装置34は好
適である。
【0055】
・ 上記実施形態においては、液体噴射装置として、インクを吐出するプリンタ10について説明したが、その他の液体噴射装置であってもよい。例えば、ファックス、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。また、液体もインクに限られず、他の液体に応用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、11…装置本体としてのフレーム、16…キャリッジ、16a…前面、16b…側面、16c…上面、16d…後面、21…液体受容体としてのインクカートリッジ、31…液体貯留部としての大容量インクタンク、32…液体流路形成体としてのインク供給チューブ、32A…第1液体流路形成体としての第1チューブ、32B…第2液体流路形成体としての第2チューブ、32a,32b…インク供給チューブの湾曲部、34…液体流路形成体誘導装置としてのインク供給チューブ誘導装置、35…液体流路としてのインク流路、35a,35b,35c,35d,35e,35f,35g,35h…チューブ体、35i,35j…インク流路の湾曲部、36…第1湾曲保持部、37…第2湾曲保持部、ρ3,ρ4…曲率半径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体流路が形成された可撓性材料からなる液体流路形成体を液体噴射装置の装置本体内で湾曲させながら所定の引き回し方向へ誘導する液体流路形成体誘導装置であって、前記液体流路形成体の湾曲部に係合して当該湾曲部を前記液体噴射装置の装置本体内において変形不能に保持する湾曲保持部を有し、当該湾曲保持部を介して前記液体流路形成体を前記引き回し方向に誘導する液体流路形成体誘導装置。
【請求項2】
前記湾曲保持部は、前記液体噴射装置の装置本体内で往復移動するキャリッジに支持され、その支持状態において、前記液体流路形成体の湾曲部を保持することを特徴とする請求項1に記載の液体流路形成体誘導装置。
【請求項3】
前記湾曲保持部は、前記キャリッジの側面のうち当該キャリッジの移動方向と直交する側面に支持され、その支持状態において、前記液体流路形成体を前記キャリッジの側面から前記キャリッジの上面へと向かう引き回し方向へ誘導することを特徴とする請求項2に記載の液体流路形成体誘導装置。
【請求項4】
前記液体流路形成体は、その内部に前記液体流路が複数並設されており、前記湾曲部は、各液体流路の曲率半径が互いに異なることになる方向へ湾曲させられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の液体流路形成体誘導装置。
【請求項5】
前記液体流路形成体は、内部に少なくとも一つの液体流路が形成された第1液体流路形成体と、当該第1液体流路形成体とは別体構成とされて内部に少なくとも一つの液体流路が形成された第2液体流路形成体とを含んで構成され、
前記湾曲保持部は、前記第1液体流路形成体の湾曲部を保持する第1湾曲保持部と、前記第2液体流路形成体の湾曲部を保持する第2湾曲保持部とを含んで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体流路形成体誘導装置。
【請求項6】
前記液体流路形成体は、前記液体噴射装置の装置本体外に配設された液体貯留部に一端が接続される一方、前記液体噴射装置の装置本体内で往復移動するキャリッジ上の液体受容体に他端が接続されることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の液体流路形成体誘導装置。
【請求項7】
内部に液体流路が形成された可撓性材料からなる液体流路形成体を液体噴射装置の装置本体内で湾曲させながら所定の引き回し方向へ誘導する液体流路形成体誘導装置であって、液体噴射装置の装置本体内で往復移動するキャリッジの移動方向に平行な前記キャリッジの前面に沿って並列に配置された複数の前記液体流路形成体を、前記キャリッジの移動方向に直交する前記キャリッジの側面において湾曲させて固定し、さらに前記キャリッジの移動方向に平行な前記キャリッジの上面に沿って並列に誘導することを特徴とする液体流路形成体誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49289(P2013−49289A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−270809(P2012−270809)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2011−4060(P2011−4060)の分割
【原出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】