説明

液体容器

【課題】内容液を安定かつ連続的に吐出することができる液体容器を提供すること。
【解決手段】本体部10の吐出動作の際に、肉薄部分13aの弾性変形によりチューブ40内に溜まった内容液をチューブ40外へ流出させるため、吐出開始直後におけるチューブ40内の通気をスムーズにすることができる。この際、チューブ40内の通気により、チューブ40内に残った内容液が外気とともに本体部10に流入する。これにより、チューブ40を介して空気が本体部10の外部から内部へ安定して供給され、本体部10内の減圧状態を緩和させることができる。その結果、本体部10内の内容液LLを口部20から安定かつ連続的に吐出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液の散布に用いられる液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体容器として、プラスチック製の瓶状の容器に多数の小孔を有する中栓が装着され、この中栓に取り付けられたチューブの先端が容器の底部に延びているものがある(特許文献1参照)。これにより、容器の内外を連通させることができ、容器を傾けることで、容器の内容液を散布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−124567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような一般的なプラスチック製の液体容器の場合、容器を傾けた際にチューブ内の内容液が容器の外側に吐出しなくなる場合がある。これにより、チューブから容器内への空気の供給が不安定になり、内容液の吐出途中で内容液の流出量が減少し、安定した吐出ができないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、内容液を安定かつ連続的に吐出することができる液体容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の液体容器は、内容液を収納する本体部と、本体部の一部に内外を連通させるように設けられた口部と、口部を塞ぐように設けられ、内容液を吐出する少なくとも1つの孔と本体部内外の通気を確保する孔とを有する中栓と、中栓に取り付けられ、先端部が内容液の吐出動作の際に本体部内において空気層に接触するチューブと、を備え、本体部は、本体部の少なくとも一部として、弾性変形のための肉薄部分を有することを特徴とする。
【0007】
上記第1の液体容器では、口部を下側に向けて行う吐出動作の開始時に、肉薄部分の弾性変形によりチューブ内に溜まった内容液をチューブ外へ流出させ、本体部内の減圧状態を緩和させることができる。そのため、吐出開始直後におけるチューブ内の通気をスムーズにすることができる。これにより、チューブを介して空気が本体部の外から内へ安定して供給される。その結果、本体部内の内容液を口部から安定かつ連続的に吐出することができる。
【0008】
また、本発明の具体的な態様又は側面では、上記第1の液体容器において、肉薄部分は、吐出動作の開始時における第1段階で、チューブ内に溜まった内容液の一部を本体部外へ流出させるとともに、吐出動作の開始時の第2段階で、チューブ内に残った内容液を本体部内に流入させるように弾性変形することを特徴とする。この場合、第1段階において、チューブ内に溜まった内容液の一部が自重によって流出する。また、本体部が空気層の負圧又は差圧を緩和させるように肉薄部が容易に弾性変形することにより、チューブ内に溜まったある程度以上の内容液を本体部外へ流出させることができる。また、第2段階において、内容液の自重とチューブ内での摩擦抵抗に抗して、内容液の本体部外への流出に伴う比較的大きな負圧又は差圧と、本体部の比較的大きな復元力とによって、チューブ内に残った内容液を外気とともに吸い込むことにより、チューブ内の通気を確保することができる。
【0009】
また、本発明のさらに別の側面では、肉薄部分は、本体部のうち口部を設ける上部と口部に対向する底部との間の中央部に設けられることを特徴とする。この場合、本体部の強度劣化等の弊害を防止しつつ、本体部のうち比較的広い領域に肉薄部分を設けることができ、本体部の変形を容易にすることができる。
【0010】
また、本発明のさらに別の側面では、チューブの先端部は、口部に対向する本体部の底部のうち吐出動作の開始時に空気が溜まる隅部分に延びることを特徴とする。この場合、チューブを口部に対向する本体部の隅部分に延ばすことにより、チューブの先端部の位置が安定する。この位置は液体容器を傾けた際に空気層が形成される位置であり、吐出動作時にチューブの先端部を安定した状態で空気層と接触させることができる。これにより、液体容器を傾ける角度に起因する吐出不安定を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明のさらに別の側面では、本体部は、少なくとも1つの把持部をさらに有することを特徴とする。この場合、本体部に把持部を設けることにより、例えば液体容器が大きい場合や重い場合でも把持部を掴むことにより容易に液体散布や搬送を行うことができる。
【0012】
また、本発明のさらに別の側面では、把持部は、本体部の容器空間を挟んで対向する一対の窪みを有することを特徴とする。この場合、把持部の形成に伴って本体部を貫通させる孔を形成する必要がないため、例えば把持部が本体部の下部に設けられていても、チューブの配置を妨げることなく液体容器を把持して液体を散布等行うことができる。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る第2の液体容器は、内容液を収納する本体部と、本体部と一体的に形成された吐出用把持部と、本体部の一部に内外を連通させるように設けられた口部と、口部を塞ぐように設けられ、内容液を吐出する少なくとも1つの孔と本体部内外の通気を確保する孔とを有する中栓と、中栓に取り付けられ、先端部が内容液の吐出動作の際に本体部内において空気層に接触するチューブと、を備え、チューブの先端部は、本体部の底部のうち吐出動作の開始時に空気が溜まる隅部分に延び、吐出用把持部は、口部と隅部分とを結ぶ直線経路よりも底部の中央側に延びることを特徴とする。
【0014】
上記第2の液体容器では、例えば吐出用把持部が本体部の底部の隅部分から中央側に延びていたとしても、チューブの先端部が内容液の吐出動作の際に本体部内で空気層に接触するのを妨げない構造となっている。これにより、吐出動作時にチューブの先端部を一定して空気層と接触させることができ、液体容器を傾ける角度に起因する吐出不安定を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の具体的な態様又は側面では、上記第2の液体容器において、吐出用把持部は、隅部分及び周辺の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする。この場合、本体部に吐出用把持部を設けることにより、例えば液体容器が大きい場合や重い場合でも容易に使用することができる。
【0016】
また、本発明の別の側面では、吐出用把持部は、本体部の容器空間を挟んで対向する一対の窪みを有することを特徴とする。この場合、吐出用把持部の形成に伴って本体部を貫通させる孔を形成する必要がないため、チューブの配置を妨げることなく液体容器を把持することができる。
【0017】
また、本発明のさらに別の側面では、本体部は、本体部の上部及び周辺の少なくとも一部に窪み状の搬送用把持部を有することを特徴とするこの場合、本体部に搬送用把持部を設けることにより、例えば液体容器が大きい場合や重い場合でも搬送用把持部を掴んで容易に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は、第1実施形態の液体容器の背面図であり、(B)は、(A)の液体容器の左側面図であり、(C)は、(A)の液体容器の正面図であり、(D)は、(A)の液体容器の右側面図であり、(E)は、(A)の液体容器の平面図であり、(F)は、(A)の液体容器の底面図である。
【図2】図1の液体容器のA−A矢視断面図である。
【図3】(A)は、図1の液体容器の中栓の平面図であり、(B)は、(A)の中栓の側断面図であり、(C)は、(A)の中栓の底面図であり、(D)は、液体容器のキャップの平面図であり、(E)は、(D)のキャップの側面図であり、(F)は、(D)のキャップの底面図である。
【図4】(A)〜(D)は、図1の液体容器の吐出動作について説明する概念図である。
【図5】(A)は、第2実施形態の液体容器の左側面図であり、(B)は、(A)の液体容器の正面図であり、(C)は、(A)の液体容器の右側面図であり、(D)は、(A)の液体容器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態である液体容器について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
図1、図2、及び図3に示すように、本実施形態の液体容器100は、本体部10と、口部20と、中栓30と、チューブ40と、吐出用把持部50と、運搬用把持部60と、キャップ70とを備える。ここで、本体部10と、口部20と、吐出用把持部50と、運搬用把持部60とは、プラスチック製品であり、一体的に成形されている。中栓30とチューブ40とキャップ70も、プラスチック製品であるが、個別に成形されている。
【0021】
液体容器100のうち、本体部10は、内容液を収納するものであり、丸みを帯びた直方体状の外形を有する。図1(A)〜1(F)に示すように、本体部10は、上部11と、底部12と、中央部13とを有する。上部11は、上面部11aと側壁11bとを有し、先端側すなわち上面部11a側には、後述する口部20が設けられ、上面部11aから側壁11bにかけて運搬用把持部60が設けられている。底部12は、底面部12aと側壁12bとを有し、その一部には、後述する吐出用把持部50が設けられている。中央部13は、上部11と底部12との間に位置する筒状の部分であり、肉薄部分13aが設けられている。この場合、肉薄部分13aは、中央部13の側壁13bの略全体に亘っており、筒状に形成されている。中央部13すなわち肉薄部分13aの厚さは、上部11及び底部12の側壁11b,12bの厚さよりも適度に薄くなっている。具体的には、肉薄部分13aは、肉薄部分13aに対して垂直に5mm押した場合の押し込み強さが3.7N以下、好ましくは2.5N〜3.7Nとなる厚さに設定されており、例えば0.7mm〜0.8mm以下となっている。なお、本体部10内の減圧値は、例えば−0.2KPa〜−0.5KPaとなっている。肉薄部分13aは、隣接する上部11及び底部12の側壁11b,12bよりも薄いため、本体部10内外の圧力差に応じて容易に弾性変形が可能となっている。この弾性変形により、口部20を下側に向けて行う吐出動作時に、チューブ40内に溜まった内容液をチューブ40外へ流出させることができる。
【0022】
本体部10は、例えばブロー成形によって形成することができる。この際、口部20、吐出用把持部50、及び運搬用把持部60も一括して成形される。なお、本体部10のうち中央部13は、上部11や底部12よりも肉薄になっているが、ブロー成形に際して、例えばチューブ状の溶融樹脂材に予め肉薄部を設けておくことで、中央部13を他の部分に比較して薄い肉薄部分13aにすることができる。
【0023】
図2に示すように、本体部10内には、内容液を貯留するための容器空間Kが形成されている。容器空間K内には、口部20と底部12の隅部分12cとを結ぶ直線経路PTが確保されている。容器空間Kの内容積は、肉薄部分13aの弾性変形によって適当な範囲で増減するようになっている。
【0024】
なお、図1に示すように、本体部10の上部11、底部12、及び中央部13の側壁11b,12b,13bには、溝10a,10b,10c,10dが形成されており、内容液を使い切った後には、溝10a,10b,10c,10dに沿って液体容器100を折りたたむことができる。
【0025】
口部20は、内容液を散布するための吐出口であり、図1(A)〜1(F)に示すように、本体部10の一部である上部11の上面部11aに突出して設けられている。口部20は、筒状であり、外径C1が本体部10の厚みDよりも十分小さくなっている。口部20は、開口21を有し、本体部10の内外を連通させている。口部20の先端部分には、後述する中栓30を装着するための嵌合凸部21aが設けられている。口部20の側面には、後述するキャップ70を螺着するネジ部21bが設けられている。
【0026】
中栓30は、口部20から吐出された内容液をシャワー状に吐出するためのものであり、図2に示すように、口部20の嵌合凸部21aに嵌って固定されている。中栓30は、図3(A)〜3(C)に示すように、略円形のキャップ形状を有しており、外径C2が図1(E)に示す口部20の外径C1よりもやや大きくなっている。中栓30は、口部20の開口21を塞ぐように設けられた円板状の栓本体31と、栓本体31の外周に沿って設けられた環状の外周支持部32とを有する。栓本体31は、厚さが一様な板状体である。栓本体31には、円形の6つの吐出孔31cと、円形の1つのチューブ孔31dとが形成されている。吐出孔31cは、栓本体31に適当な間隔で分散して配置されており、チューブ孔31dは、栓本体31の中央に配置されている。吐出孔31cの直径C3は、内容液の粘性に応じて内容液が適当な速度で連続的に吐出する程度の大きさとなっている。また、栓本体31には、容器空間Kに臨む内面部33の中央において、チューブ孔31dと合致するように後述するチューブ40を嵌め込むための取付部34が立設されている。取付部34は、筒状であり、その内径C4がチューブ40の外径と略同一となっており、チューブ孔31dは、その直径C5がチューブ40の内径と略同一となっている。外周支持部32は、嵌着部32aと内面当接部32bとを有する。内面当接部32bは、栓本体31を支持しており、栓本体31の外縁において嵌着部32aと連続して形成されている。嵌着部32aは、口部20の嵌合凸部21aに密着して嵌る部分である。嵌着部32aは、内壁32cに設けられた突部32dにより、図2に示すように、口部20の嵌合凸部21aに確実に固定されている。
【0027】
チューブ40は、本体部10内に空気を送り込むためのものであり、図2に示すように、中栓30から口部20に対向する底部12の隅部分12cに延びている。チューブ40の一方の先端41は中栓30の取付部34に取り付けられている。一方、チューブ40の他方の先端42は、チューブ40自体の形状により底部12の隅部分12cに安定して位置している。ここで、隅部分12cは、吐出動作時に空気が溜まる部分である(図4参照)。詳細は後述するが、他方の先端42は、内容液の吐出動作の際に本体部10内において空気層ALに接触する。
【0028】
吐出用把持部50は、図1に示すように、底部12のうち口部20の対角側に位置する一方の隅部分12cの周辺の側壁12bに形成されている。液体容器100の利用者が吐出用把持部50を掴んで支持すると、液体容器100が下側に傾けられて吐出可能な状態となる。つまり、一方の隅部分12cが他方の隅部分12dの上方に位置することになり、上部11が底部12よりも下側になって、結果的に、口部20が最下端に位置することとなる。吐出用把持部50は、本体部10に指用の通し孔を設けないタイプのものであり、一対の窪み51,52で構成される。これらの窪み51,52は、容器空間Kを挟んで対向して配置される。具体的には、これらの窪み51,52は、側壁12bのうち隅部分12cに隣接して互いに対向する壁部分12f、12fにそれぞれ形成されている。
【0029】
以上の吐出用把持部50は、口部20から本体部10内の隅部分12cに延びるチューブ40と干渉しないように形成されている。すなわち、液体容器100を側方から透視した場合、図2に示すように、吐出用把持部50の窪み51,52は、容器空間K内の直線経路PTと重なって配置される。つまり、吐出用把持部50は、直線経路PTよりも底部12の中央側すなわち底面部12aの中心側に延びている。しかしながら、両窪み51,52の間には十分な隙間が確保されており、口部20から延びるチューブ40を隅部分12cに向けて直線的に配置することができる。なお、吐出用把持部50が指用の通し孔を設けるタイプのものである場合、容器空間Kから指用の通し孔の部分が除かれることになり、チューブ40を隅部分12cに向けて直線的に配置することができなくなる。
【0030】
運搬用把持部60は、図1に示すように、上部11のうち口部20の反対側に隆起する一方の隅部分11cの周辺の側壁11bに形成されている。液体容器100の利用者が運搬用把持部60を掴んで支持すると、液体容器100が略正立した状態となる。つまり、上部11が底部12よりも上側になって、結果的に、口部20が最上端に位置することとなる。運搬用把持部60は、本体部10に指用の通し孔を設けないタイプのものであり、一対の窪み61,62で構成される。これらの窪み61,62は、容器空間Kを挟んで対向して配置される。具体的には、これらの窪み61,62は、側壁11bのうち隅部分11cに隣接して互いに対向する壁部分11f,11fにそれぞれ形成されている。
【0031】
図3(D)〜3(F)に示すキャップ70は、図1及び図2に示す口部20のネジ部21bに螺合し、中栓30を装着した口部20を開閉可能にしている。図3(F)に示すように、キャップ70は、内壁71にネジ部71aが設けられている。ネジ部71aは、口部20のネジ部21bに螺合する。キャップ70は、キャップ70を締め付けて固定することにより、中栓30が覆われて、本体部10に収納された内容液が外部に漏れ出すことを防止できる。また、キャップ70を緩めてはずすことにより、本体部10に収納された内容液を中栓30を介して外部に吐出させることができる。図3(E)に示すように、キャップ70は、側面72の下端にバージンリング72aが設けられている。バージンリング72aは、環状のバンドであり、適宜な箇所に開封用の切り込みが形成されている。
【0032】
以下、図4(A)〜4(D)を参照しつつ、本実施形態の液体容器100を用いた内容液LLの吐出方法について説明する。まず、図4(A)に示すように、キャップ70をはずす。次に、利用者は、運搬用把持部60を持って液体容器100を適所に搬送する。そして、運搬用把持部60から吐出用把持部50に持ち替え、或いは運搬用把持部60及び吐出用把持部50を同時に持つことで、図4(B)に示すように、液体容器100の口部20が下側に傾けられて傾斜状態とされ、吐出動作が開始される。
【0033】
吐出動作の開始時の第1段階では、図4(B)に示すように、本体部10は、中栓30の吐出孔31c(図3(A)参照)を介して容器空間K内の内容液LLを外部にシャワー状に吐出させることを許容する。これと同時に、本体部10は、中栓30のチューブ孔31dからも、これに連結されたチューブ40のうち先端41側の内部に溜まった一部の内容液L1をその自重によって流出させる。つまり、本体部10は、容器空間K内の内容液LLが吐出されても、中央部13すなわち肉薄部分13aの弾性変形によって空気層ALの負圧又は差圧(空気層ALの圧と大気圧との差分)を緩和するので、チューブ40の先端41側に溜まったある程度以上の内容液L1を本体部10外に流出させることができる。
【0034】
吐出動作の開始時の第2段階では、図4(C)に示すように、中栓30の吐出孔31c(図3(A)参照)を介して容器空間K内の内容液LLを外部にシャワー状に吐出させつつも、チューブ40のうち底部12側の先端42側の内部に残った一部の内容液L2を本体部10内に流入させる。つまり、チューブ40内の空気の流れが逆転することによって、第1段階から第2段階に移行する。これは、中栓30の吐出孔31cを介しての内容液LLの流出に伴って、容器空間Kの負圧又は差圧が次第に増加し、さらに本体部10の中央部13すなわち肉薄部分13aの弾性変形が過剰となって反発力が徐々に強まるため、ある臨界のタイミングを超えると、チューブ40に残った内容液L2を外気とともに本体部10に吸い込む力が相対的に大きくなることによる。つまり、第2段階では、容器空間Kの比較的大きな負圧と本体部10の比較的大きな復元力とによって、チューブ40の内壁面の内容液L2に対する摩擦抵抗と内容液L2を落下させる重力とに抗して、チューブ40の内容液L2を上昇させ容器空間K中に吸い込むための十分な吸引力が確保される。これにより、チューブ40内に残った内容液L2の逆流が開始され、この内容液L2がチューブ40の底部12側の先端42から吐出され、容器空間Kに戻される。つまり、チューブ40内に残った内容液L2を本体部10内に吸い込むことにより、チューブ40内の通気を確保することができる。
【0035】
その後は、チューブ40の通気確保によって本体部10内に外気が速やかに導入されるようになるので、図4(D)に示すように、本体部10内の内容液を引き続き安定して効率よく本体部10外に吐出させることができる。すなわち、図4(D)に示すように、中栓30の吐出孔31cから容器空間K内の内容液LLが本体部10外にシャワー状に安定かつ連続的に吐出される。
【0036】
なお、本体部10に肉薄部分13aが設けられていないと仮定すると、上記のような第2段階が発生せず、チューブ40中に内容液L2が滞留することになる。この理由について説明すると、本体部10に肉薄部分13aが設けられていない場合、本体部10の変形は少なくなる。つまり、本体部10内の空気層ALの負圧又は差圧が緩和されないので、第1段階でチューブ40から流出する内容液L1の量が少なくなる。さらに、容器空間K内の内容液LLが本体部10外に流出することによって本体部10内の空気層ALの負圧又は差圧が増加し、チューブ40内に残った内容液L2を自重により吐出させる力と均衡するようになってしまう。つまり、外方向と内方向への力が均衡してチューブ40内に比較的多くの内容液L2が滞留してしまう。このため、吐出開始後にチューブ40の通気が阻害され、内容液LLの安定した吐出が困難になり、最悪の場合、内容液LLの吐出が停止する。
【0037】
本体部10の中栓30を介して内容液LLを吐出させている途中で内容液LLの吐出を終了する際には、液体容器100の使用者は、吐出用把持部50から運搬用把持部60に持ち替え、或いは運搬用把持部60及び吐出用把持部50のうち吐出用把持部50を離して、図4(A)に示すように、液体容器100を正立させる。最後に、キャップ70を取り付けて中栓30を封止する。
【0038】
以上説明した第1実施形態の液体容器100によれば、本体部10の吐出動作の際に、肉薄部分13aの弾性変形によりチューブ40内に溜まった内容液L2をチューブ40外へ流出させるため、吐出開始直後におけるチューブ40内の通気をスムーズにすることができる。この際、チューブ40内の通気により、チューブ40内に残った内容液が外気とともに本体部10に流入する。これにより、チューブ40を介して空気が本体部10の外部から内部へ安定して供給され、本体部10内の減圧状態を緩和させることができる。その結果、本体部10内の内容液LLを口部20からシャワー状に安定かつ連続的に吐出することができる。
【0039】
また、吐出用把持部50が本体部10の底部12の隅部分12cから中央側に延びていても、チューブ40の底部12側の先端42が内容液L2の吐出動作の際に本体部10内で空気層ALに接触するのを妨げない構造となっている。これにより、吐出動作時にチューブ40の底部12側の先端42を一定して空気層ALと接触させることができ、液体容器100を傾ける角度に起因する吐出不安定を防ぐことができる。
【実施例1】
【0040】
表1は、液体容器100の本体部10の各条件と吐出状態との関係について説明するものである。
【表1】

ここで、本体部10の各条件とは、キャップ70を除いた液体容器100の重量と、本体部10の肉薄部分13aの厚さと、本体部10内の空気層ALの減圧値と、肉薄部分13aの押し込み強さである。本体部10の肉薄部分13aの厚さは、底部12の底面部12aから13cm上の肉薄部分13a(本体部10の略中央に相当)をダイヤルゲージを用いて測定した。本体部10内の空気層ALの減圧値は、本体部10の底部12の側壁12bのうち、吐出動作開始時の空気層ALに接する位置に圧力センサーを取り付けて測定した。肉薄部分13aの押し込み強さは、肉薄部分13aの中央をストログラフを用いて肉薄部分13aに対して垂直な方向に5mm押し込んだときの力により測定した。吐出状態は、10回連続して吐出し、目視にて確認した。内容液の吐出の勢いが変化しなかった場合、吐出状態が「○」と判断し、内容液の吐出の勢いが弱くなり、目視によって息継ぎが明らかに分かる場合、「△」と判断し、内容液の吐出が停止する場合、「×」と判断する。液体容器100の内容液LLには、水と略等しい粘性を有する液体を用いた。
【0041】
表1からわかるように、吐出状態が「○」すなわち安定かつ連続的である条件は、肉薄部分13aの厚さが0.78mmであり、空気層ALの減圧値が−0.46KPaであり、肉薄部分13aの押し込み強さが3.7Nの場合である。一方、吐出状態が「×」すなわち停止する条件は、厚さが1.25mmであり、減圧値が−1.00KPaであり、押し込み強さが10.8Nの場合である。
【0042】
表2は、比較例として肉薄部分がない一般的な液体容器の吐出状態について説明するものである。
【表2】

【0043】
表2からわかるように、比較例の液体容器は、底面部から17cm上の部分(本体部の略中央に相当)の厚さが0.86mmであり、空気層の減圧値が−1.10KPaであり、押し込み強さが13Nであり、吐出状態が「×」である。
【0044】
以上のことから、液体容器100と比較例の液体容器とを比べると、厚さが略同じ場合でも、液体容器100の方が減圧値が低く、押し込み強さが小さくなっており、減圧値及び押し込み強さが吐出状態に影響すると考えられる。なお、上記の値は吐出状態が「○」の場合の上限であり、下限については上記の値以下と考えられる。しかしながら、肉薄部分13aの強度や成形等の都合上、本体部10の条件は、好ましくは肉薄部分13aの厚さが0.7mm〜0.8mmであり、減圧値が−0.2KPa〜−0.5KPaであり、押し込み強さが2.5N〜3.7Nの範囲であるといえる。
【0045】
表3は、チューブ40の内径と吐出状態との関係を説明するものである。吐出状態の判断方法は、表1の場合と同様である。
【表3】

【0046】
表3からわかるように、チューブ40の内径が2.4mm〜5.0mmの条件で、吐出状態は「○」であり、内容液が安定かつ連続的に吐出した。これにより、上記範囲のチューブ40の内径において、チューブ内径の違いによる吐出状態への影響は見られなかった。
【0047】
以上の他に、本体部10の容器空間Kが広いほど、本体部10の弾性変形が少なくてもよいと考えられる。また、チューブ40の断面積がチューブ孔31dの総面積よりも大きい場合、本体部10の弾性変形が少なくてもよいと考えられる。また、内容液LLの粘性が高いほど本体部10の弾性変形を大きくする必要があると考えられる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る液体容器について説明する。なお、第2実施形態に係る液体容器は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0049】
図5に示すように、本実施形態の液体容器200は、本体部210と、口部20と、中栓30と、チューブ40と、運搬兼吐出用把持部260と、不図示のキャップ70とを備える。
【0050】
液体容器200のうち、本体部210の上部11の先端側すなわち上面部11a側には、後述する口部20が設けられ、上面部11aから側壁11bにかけて運搬兼吐出用把持部260が設けられている。なお、第2実施形態において、本体部210の底部12には、吐出用把持部は設けられていない。
【0051】
第2実施形態において、肉薄部分213aは、本体部210の上部11、底部12、及び中央部13の側壁11b,12b,13bの略全体に亘っており、略筒状に形成されている。肉薄部分213aの厚さは、適度な薄さとなっている。具体的には、肉薄部分213aは、肉薄部分213aに対して垂直に5mm押した場合の押し込み強さが2.5N〜3.7Nとなる厚さに設定されており、例えば0.7mm〜0.8mm以下となっている。ここで、本体部210内の減圧値は、例えば−0.2KPa〜−0.5KPaとなっている。なお、上部11において、口部20の周囲や運搬兼吐出用把持部260及びその周囲、底部12において、底面部12a及びその周囲は、肉薄部分213aの厚さよりもやや厚くなっている。肉薄部分213aは、本体部210において全体的に形成されているため、本体部210内外の圧力差に応じてより大きな弾性変形が可能となっている。この弾性変形により、口部20を下側に向けて行う吐出動作時に、チューブ40内に溜まった内容液をチューブ40外へ流出させることができる。
【0052】
運搬兼吐出用把持部260は、図5に示すように、上部11のうち口部20の反対側に隆起する一方の隅部分11cの周辺の側壁11bに形成されている。運搬兼吐出用把持部260を運搬用把持部として用いる場合、液体容器200の利用者が運搬兼吐出用把持部260を掴んで口部20が上向きとなるように保持すると、液体容器200が略正立した状態となる。つまり、上部11が底部12よりも上側になって、結果的に、口部20が最上端に位置することとなる。一方、運搬兼吐出用把持部260を吐出用把持部として用いる場合、液体容器200の利用者が運搬兼吐出用把持部260を掴んで口部20が下向きとなるように保持すると、液体容器200が下側に傾けられて吐出可能な状態となる。つまり、一方の隅部分12cが他方の隅部分12dの上方に位置することになり、上部11が底部12よりも下側になって、結果的に、口部20が最下端に位置することとなる。運搬兼吐出用把持部260は、本体部210に指用の通し孔263を設けるタイプのものである。具体的には、通し孔263は、側壁11bのうち隅部分11cに隣接して互いに対向する壁部分11f,11fを貫通するように形成されている。
【実施例2】
【0053】
表4は、液体容器200の本体部210の各条件と吐出状態との関係について説明するものである。なお、本体部210の各条件及び吐出状態の判断方法は、第1実施形態の表1と同様である。
【表4】

【0054】
表4からわかるように、吐出状態が「○」すなわち安定かつ連続的である条件は、肉薄部分213aの厚さが0.70mm〜0.89mmであり、空気層ALの減圧値が−0.2KPa〜−0.5KPaであり、肉薄部分13aの押し込み強さが2.5N〜3.9Nの場合である。一方、吐出状態が「×」すなわち停止する条件は、厚さが1.96mm〜2.01mmであり、減圧値が−0.73KPa〜−0.75KPaであり、押し込み強さが12.5N〜13Nの場合である。
【0055】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態において、中栓30の吐出孔31cの数、配置、大きさ等は、例示であり、内容液が液体容器100,200からシャワー状に安定かつ連続的に吐出するように自由に設定することができる。
【0056】
また、上記実施形態において、中栓30やチューブ40の形状や大きさ等は、本体部10の容器空間Kの容量、収容する内容液LLの種類、吐出範囲によって適宜設定することができる。
【0057】
また、上記実施形態において、吐出動作開始時に、第1段階においてチューブ40内部に溜まった内容液が本体部10外に略流出し、第2段階において内容液がほとんど本体部10内に流入しない状態で外気を通気させてもよい。すなわち、肉薄部分13a,213aの弾性変形が大きい場合、吐出動作時の第1段階において、チューブ40内の内容液がほとんど本体部10外へ吐出され、チューブ40内の通気を確保することができる。
【0058】
また、上記実施形態において、肉薄部分13aの位置は例示であり、本体部10,210内の減圧を緩和できる程度の弾性変形が可能な位置に設けてもよい。
【0059】
また、上記実施形態において、把持部50,60,260を設けない構成としてもよい。また、第1実施形態において、把持部50,60の一方を設けるのみでもよい。
【0060】
また、上記実施形態において、把持部50,60,260の位置は例示であり、液体容器100,200の運搬や吐出が容易であり、かつチューブ40の配置を妨げない位置であればよい。
【0061】
また、上記実施形態において、液体容器100,200の吐出の状態を多数の吐出孔31cによってシャワー状としたが、1つの吐出孔31cから内容液LLを吐出するものとしてもよい。
【0062】
また、第1実施形態において、吐出用把持部50は、直線経路PTよりも底部12の中央側に延びているが、直線経路PTまで延びていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10,210…本体部、 11…上部、 12…底部、 13…中央部、 13a,213a…肉薄部分、 20…口部、 30…中栓、 40…チューブ、 50…吐出用把持部、 60…運搬用把持部、 70…キャップ、 100,200…液体容器、 260…運搬兼吐出用把持部、 AL…空気層、 K…容器空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収納する本体部と、
前記本体部の一部に内外を連通させるように設けられた口部と、
前記口部を塞ぐように設けられ、内容液を吐出する少なくとも1つの孔と前記本体部内外の通気を確保する孔とを有する中栓と、
前記中栓に取り付けられ、先端部が内容液の吐出動作の際に前記本体部内において空気層に接触するチューブと、
を備え、
前記本体部は、前記本体部の少なくとも一部として、弾性変形のための肉薄部分を有することを特徴とする液体容器。
【請求項2】
前記肉薄部分は、吐出動作の開始時における第1段階で、前記チューブ内に溜まった内容液の一部を前記本体部外へ流出させるとともに、吐出動作の開始時の第2段階で、前記チューブ内に残った内容液を前記本体部内に流入させるように弾性変形することを特徴とする請求項1に記載の液体容器。
【請求項3】
前記肉薄部分は、前記本体部のうち前記口部を設ける上部と前記口部に対向する底部との間の中央部に設けられることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項4】
前記チューブの先端部は、前記口部に対向する前記本体部の底部のうち吐出動作の開始時に空気が溜まる隅部分に延びることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項5】
前記本体部は、少なくとも1つの把持部をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項6】
前記把持部は、前記本体部の容器空間を挟んで対向する一対の窪みを有することを特徴とする請求項5に記載の液体容器。
【請求項7】
内容液を収納する本体部と、
前記本体部と一体的に形成された吐出用把持部と、
前記本体部の一部に内外を連通させるように設けられた口部と、
前記口部を塞ぐように設けられ、内容液を吐出する少なくとも1つの孔と前記本体部内外の通気を確保する孔とを有する中栓と、
前記中栓に取り付けられ、先端部が内容液の吐出動作の際に前記本体部内において空気層に接触するチューブと、
を備え、
前記チューブの先端部は、前記本体部の底部のうち吐出動作の開始時に空気が溜まる隅部分に延び、
前記吐出用把持部は、前記口部と前記隅部分とを結ぶ直線経路よりも前記底部の中央側に延びることを特徴とする液体容器。
【請求項8】
前記吐出用把持部は、前記隅部分及び周辺の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液体容器。
【請求項9】
前記吐出用把持部は、前記本体部の容器空間を挟んで対向する一対の窪みを有する請求項7及び請求項8のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項10】
前記本体部は、前記本体部の上部及び周辺の少なくとも一部に窪み状の搬送用把持部を有することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−143934(P2011−143934A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5138(P2010−5138)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】