説明

液体容器

【課題】インクカートリッジを小さな力で円滑にインクカートリッジ装着部に装着できるようにすること。
【解決手段】インクカートリッジ20のカートリッジケース21における挿入方向の前端面22には、その短辺方向の一方の側に、挿入負荷発生部である4個のインク供給針差し込み孔24〜27が配置され、他方の側には、挿入負荷発生部である廃インク回収針差し込み孔29、大気開放針差し込み孔30に加え、挿入負荷発生部である、インクカートリッジ20を装着位置にロックするための容器側係合突起38が配置されている。前端面22における左右の挿入負荷がほぼ等しいので、挿入時に、インクカートリッジ20を押す位置が変わっても挿入負荷が大きく変わることがなく、押し込み力が挿入方向とは異なる方向に向くこともない。よって、小さな押し込み力で円滑にインクカートリッジ20を装着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターのインクカートリッジなどとして用いられる液体容器に関し、特に、液体容器をその装着場所に挿入する際の挿入負荷が発生する部位を適切に配置することにより、液体容器の挿入操作を円滑に行うことのできるようにした液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターのインクカートリッジとしては、特許文献1、2に記載されているように、カートリッジケース内に、供給用のインク液を貯留したインク袋の収納部と、インクジェットプリンターから排出された廃インク液を回収する廃インク吸収材が収納された廃インク回収部とを備えた構造のものが知られている。また、特許文献3、4に記載されているように、廃インク吸収材の代わりに、カートリッジケース内に廃インク袋が収納されたインクカートリッジが知られている。
【0003】
一般に、インクカートリッジをインクジェットプリンターのインクカートリッジ装着部に装着すると、インクカートリッジ装着部側に配置されているインク供給針および廃インク回収針が、それぞれ、カートリッジケースに形成されているインク供給針差し込み孔および廃インク回収針差し込み孔からインク袋および廃インク回収部に差し込まれて、インクの供給および廃インクの回収が可能な状態になる。
【0004】
インクジェットプリンターにインクカートリッジを装着する機構としては、特許文献5に記載されているように、レバーを操作して小さな操作力でインクカートリッジを装着できるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3533897号公報
【特許文献2】特開2001−353882号公報
【特許文献3】特開2002−307705号公報
【特許文献4】特開2002−307720号公報
【特許文献5】特表2008−534312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、設置スペース、装置レイアウトなどの点から、特許文献5に記載されているようなレバー機構を配置できない場合などにおいては、操作者が直接にインクカートリッジの背面をインクカートリッジ装着部に押し込むことにより装着するシンプルな構成が採用される。この場合、複数のインク供給針差し込み孔および廃インク回収針差し込み孔に各針が差し込まれる際には、各孔に装着されている円環状のシールゴムを押し広げながら針が差し込まれるので、これらの部位に挿入負荷が発生する。したがって、これらの部位の配置が適切でないと、インクカートリッジ挿入時における挿入負荷に片寄りが発生し、インクカートリッジの押し込み位置が適切でないとインクカートリッジを円滑に押し込むことができず、また、大きな力で押しこまないとインクカートリッジを装着位置まで押し込むことができないという不具合が生ずる。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、液体容器を所定の装着場所に挿入する際の挿入負荷が発生する部位を当該液体容器の容器本体に適切に配置することにより、挿入操作を円滑に行うことのできるようにした液体容器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、予め定めた挿入方向に沿って押し込むことにより所定の装着場所に装着される液体容器において、
容器本体と、
前記容器本体における異なる部位に設けられた複数の挿入負荷発生部とを有し、
前記挿入負荷発生部のそれぞれは、前記装着場所に対して前記容器本体を前記挿入方向に押し込む際に挿入負荷が発生する部分であり、
前記挿入方向に沿った方向から見た場合に得られる前記容器本体の投影面上において、当該投影面の中心を通る第1中心線の両側における前記挿入負荷の差が最も少なくなり、前記中心を通り前記第1中心線に直交する第2中心線の両側における前記挿入負荷の差が最も少なくなるように、前記挿入負荷発生部のそれぞれの位置が定められていることを特徴としている。
【0009】
このように、挿入負荷発生部をバランス良く容器本体に配置してあるので、液体容器を装着場所に押し込む際に、液体容器を押す位置が異なっても挿入負荷が大きく変化することがない。また、挿入方向から外れた方向に押し込み力が作用して、液体容器を簡単に装着できないという不具合も発生しない。
【0010】
ここで、挿入負荷発生部としては次のような部位がある。
前記容器本体を前記挿入方向に押し込むことにより、前記装着場所に配置されている装着側流路形成部に対して圧接状態で摺動して、前記装着場所と前記容器本体との間に液体流路を形成するための複数の容器側流路形成部
前記容器本体を前記挿入方向に差し込むことにより、前記装着場所に配置されている装着側大気開放部に対して圧接状態で摺動して、前記装着場所と前記容器本体の間に大気開放路を形成するための容器側大気開放部
前記容器本体を前記挿入方向に押し込むことにより、前記装着場所に配置されている装着側係合部に対して圧接状態で摺動して、前記容器本体を装着位置にロックするための容器側係合部
前記容器本体を前記挿入方向に押し込むことにより、前記容器本体装着部に配置されている装着側接点部に圧接状態で摺動して、当該装着側接点部に対して電気的接続状態を形成するための容器側接点部
本発明の液体容器においては、これらの挿入負荷発生部のうち、少なくとも前記容器側流路形成部および前記容器側係合部が備わっている。
【0011】
次に、本発明の液体容器は、その容器本体の内部に、供給液体収納部および回収液体収納部を備えており、前記容器側流路形成部は、前記供給液体収納部に収納されている供給液体を外部に供給するための複数個の液体供給針差し込み孔部、および、回収液体を前記回収液体収納部に回収するための液体回収針差し込み孔部であり、前記容器側大気開放部は、前記回収液体収納部を大気開放するための大気開放針差し込み孔部であることを特徴としている。これらの液体供給針差し込み孔部、液体回収針差し込み孔部および大気開放針差し込み孔部を前記挿入方向に向かって開口させておくことにより、液体容器を装着場所に押し込むと、これらの孔部に、装着場所の側に配置されている各針が差し込まれて、液体供給用の流路、液体回収用の流路および大気開放路が形成されて、液体の供給動作および液体の回収動作が可能になる。
【0012】
次に、液体容器は一般的に直方体形状をしており、この場合においては、前記容器本体における前記挿入方向の前面は長方形の平坦面とされ、前記容器本体の内部には、前記前面における短辺方向の一方の側に前記供給液体収納部が配置され、他方の側に前記回収液体収納部が配置される。この場合には、供給液体収納部の位置に対応させて、前記前面における前記短辺方向の一方の側に、複数の前記液体供給針差し込み孔部が前記前面の長辺方向に延びる直線上に配置される。また、回収液体収納部の位置に対応させて、前記前面における前記短辺方向の他方の側に、前記液体回収針差し込み孔部および前記大気開放針差し込み孔部が前記直線に平行な平行線上に所定の間隔で配置される。
【0013】
ここで、インクジェットプリンターなどのインク供給源として用いるインクカートリッジなどの液体容器においては、供給液体収納部に複数のカラーインクが収納される。通常は、シアン、マゼンタ、イエローの3種類、または、これらにブラックを加えた4種類のインクが収納される。したがって、これらに対応した個数の液体供給針差し込み孔部が配置される。このような場合に用いる本発明の液体容器では、前記前面における前記短辺方向の一方の側に、少なくとも3個の前記液体供給針差し込み孔部が配列される。この結果、当該前面における短辺方向の反対側には2個の孔部(液体回収針差し込み孔部および大気開放孔部)が配置されているだけであるので、短辺方向の両側における挿入負荷の差が大きくなってしまう。これを解消するために、挿入負荷発生部である前記容器側係合部を、前記容器本体における前記大気開放孔部および前記液体回収針差し込み孔部の側に配置して、挿入負荷のバランスをとることが望ましい。
【0014】
また、この場合において、液体容器の容器本体に挿入負荷発生部としての容器側接点部が備わっている場合には、当該容器側接点部は、前記前面における短辺方向の中心に位置するように配置して、当該短辺方向の両側における挿入負荷のバランスがくずれないようにすることが望ましい。この場合、前記前面における長辺方向における挿入負荷のバランスを保つためには、前記前面の中心を通る当該前面の短辺方向に延びる直線に対して、前記液体供給針差し込み孔部のそれぞれを対称の位置に配置し、前記液体回収針差し込み孔部および前記大気開放孔部も当該直線に対して対称の位置に配置し、前記容器側接点部と前記容器側係合部を、前記前面の中心に対して長辺方向における反対側の位置に配置することが望ましい。
【0015】
さらに、液体容器においては装着場所に対する装着位置を規定するための位置決め機構が一般に備わっている。位置決め機構としては、装着場所の側に位置決め針を配置し、液体容器の側に位置決め針差し込み孔部が設けられた構成が一般的に採用されている。この場合、一か所のみの位置決めでは、当該位置決め部分を中心として液体容器が左右にガタ付くので、装着場所の側には2か所に位置決め針が配置され、液体容器の側には、これらの位置決め針が差し込まれる第1および第2位置決め針差し込み孔部が配置される。これらの位置決め針差し込み孔部は、前記液体供給針差し込み孔部の両側において、当該液体供給針差し込み孔部と同一直線上の位置に配置することができる。
【0016】
ここで、液体容器を機械的に装着位置にロックするための前記容器側係合部による挿入負荷が最も大きく、前記液体供給針差し込み孔部、前記液体回収針差し込み孔部および前記大気開放針差し込み孔部は、それぞれの挿入負荷がほぼ同一であり、前記容器側係合部の挿入負荷よりも小さい。また、電気的な接触を確保するための前記容器側接点部による挿入負荷はさらに小さく、前記第1、第2位置決め針差し込み孔部による挿入負荷はさらに小さい。したがって、上記のように各挿入負荷発生部を配置することにより、液体容器に対して挿入負荷のバランス良く配置することができ、挿入時に液体容器を押す位置によって挿入負荷が大きく変化することを防止でき、また、液体容器に加えた押し込み力が挿入方向から外れた方向に作用することを防止できる。よって、小さな押し込む力で液体容器を円滑に装着場所に装着することが可能である。
【0017】
次に、本発明の液体容器は、前記装着場所を備えたインクジェットプリンターへのインクの供給および当該インクジェットプリンターから排出される廃インクの回収を行うインクカートリッジとして用いるのに適している。
【0018】
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、インク供給針、廃インク回収針、大気開放針、位置決め針、回り止め針は、一般的な意味における先端が先鋭な針形状のものに限定することを意図したものではなく、先端が平坦な形状のものも含む広い意味で使用している。
【発明の効果】
【0019】
本発明の液体容器においては、その容器本体に、挿入負荷発生部をバランス良く配置してある。したがって、液体容器を装着場所に押し込む際に、液体容器を押す位置が異なっても挿入負荷が大きく変化することがない。また、挿入方向から外れた方向に押し込み力が作用して、液体容器の装着を円滑に行うことができないという不具合も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリンターの一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1のインクジェットプリンターの内部構造を示す斜視図である。
【図3】インクカートリッジの前側斜視図および後側斜視図である。
【図4】インクカートリッジの分解斜視図である。
【図5】インクカートリッジの廃インク収納部の構造を示す説明図である。
【図6】インクカートリッジ装着部の後端側の部分を示す説明図である。
【図7】ロック機構の斜視図、平面図、および容器側係合突起の部分側面図である。
【図8】インクカートリッジの挿入負荷発生部の配置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の液体容器の実施の形態であるインクカートリッジをインク供給源として用いるインクジェットプリンターを説明する。
【0022】
(インクジェットプリンターの全体構成)
図1はインクジェットプリンターの外観斜視図である。インクジェットプリンター1は、複数種類のカラーインクを用いてロール紙から繰り出される長尺状の記録紙にカラー印刷を行うものであり、全体として直方体形状をしたプリンターケース2を備え、このプリンターケース2の前面中央部分にはロール紙装着用の開口部3が形成されている。開口部3には、上端に記録紙排出ガイド4が取り付けられた開閉蓋5が開閉可能に取り付けられている。記録紙排出ガイド4とプリンターケース2の開口部3の上縁部分との間に記録紙排出口6が形成されている。不図示のロックを解除して、記録紙排出ガイド4に指を掛けて手前に引くと開閉蓋5を図示の閉じ位置から、下端を中心として前方に倒れた開き位置まで開けることができる。
【0023】
プリンターケース2の前面における開閉蓋5の右側部分には電源スイッチ7a、紙送りスイッチ7b、複数個の動作状態表示ランプ7cなどが配列されている。プリンターケース2の前面における開閉蓋5の左側部分には、プリンター前後方向に延びる縦長の長方形断面のインクカートリッジ装着部8の装着口8aが開口しており、このインクカートリッジ装着部8にインクカートリッジ20が装着されている。
【0024】
図2はインクジェットプリンター1におけるプリンターケース2で覆われているプリンター機構部10を示す概略斜視図である。プリンター機構部10における中央部分にはロール紙収納部11が形成されており、開閉蓋5を開けると、このロール紙収納部11が前方に開口し、ロール紙の交換などを行うことができる。ロール紙収納部11の上側には、プリンター幅方向にプラテン12が架け渡されており、このプラテン12の上側には、インクジェットヘッド13が搭載されたキャリッジ14が配置されている。キャリッジ14はプリンター幅方向にプラテン12と平行に架け渡したキャリッジガイド軸15に沿ってプリンター幅方向に往復移動可能である。
【0025】
キャリッジ14には各カラーインクのインクポンプ、たとえば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクポンプ16a〜16dが搭載されており、各インクポンプ16a〜16dには可撓性インクチューブ17a〜17dの一端がそれぞれに接続されている。可撓性インクチューブ17a〜17dの他端はインクカートリッジ装着部8の後端側の部位に配置されている上下方向に延びる4本のインク供給路(図示せず)のそれぞれに接続されている。インク供給路のそれぞれはインクカートリッジ装着部8に装着されているインクカートリッジ20の側に連通している。
【0026】
プラテン12の右側に外れた部位には、ヘッドメンテナンスユニット19が配置されており、キャリッジ14に搭載されているインクジェットヘッド13は、当該ヘッドメンテナンスユニット19に対峙した図2に示すホームポジションにおいて、印刷に関与しないインク液滴の吐出動作、各インクノズルからのインク吸引動作などのメンテナンス動作が行われる。インクジェットヘッド13から排出された廃インク液はヘッドメンテナンスユニット19から不図示の廃インク液回収路を経由して、インクカートリッジ装着部8に装着されているインクカートリッジ20の側に回収される。ヘッドメンテナンスユニット19には廃インク液をインクカートリッジ20に向けて送り出すためのポンプ、例えばチューブポンプが備わっている。
【0027】
(インクカートリッジの全体構成)
図3(a)はインクカートリッジ20を、カートリッジ装着部8に対する装着方向の後ろ側から見た場合の後側斜視図であり、図3(b)はインクカートリッジ20を装着方向の前側から見た場合の前側斜視図である。インクカートリッジ20は全体として、カートリッジ装着部8に対する装着方向に長い扁平な直方体形状をしたカートリッジケース21(容器本体)を備えている。カートリッジケース21の内部には、後述するように(図4参照)、装着方向に直交する幅方向の一方の側にインク収納部45(供給液体収納部)が形成され、他方の側に廃インク収納部46(回収液体収納部)が形成されており、インク収納部45には複数のインク袋、本例ではシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4種類のインク袋54〜57が収納されている。
【0028】
カートリッジケース21における装着方向の前端面22(孔配列面)は長方形をしており、ここには、複数個の孔が形成されている。本例では、前端面22の幅方向(短辺方向)の一方の側に、上側から順に、第1位置決め針差し込み孔である位置決め針差し込み孔23と、収納されているインク袋に対応する数、本例では4個の液体供給孔として機能するインク供給針差し込み孔24〜27と、第2位置決め針差し込み孔である回り止め針差し込み孔28とが形成されている。幅方向(短辺方向)の他方の側には、その上端側の部位には廃インク回収針差し込み孔29が形成され、その下端側の部位には大気開放針差し込み孔30が形成されている。これらの孔の配置関係については後述する。
【0029】
カートリッジケース21の上端面31における装着方向の後側の部分には、略半分の幅で上方に突出した長方形の突出面32が形成されている。この突出面32からカートリッジケース21の一方の側面33に掛けて、インクカートリッジ情報が印刷された長方形のラベル34が貼り付けられている。カートリッジケース21の上端面31における装着方向の前端部には一段低い凹部35が形成されており、この凹部35の平坦な底面には、インクカートリッジ情報が書き込まれたICチップ36(容器側接点部)が取り付けられている。
【0030】
一方、カートリッジケース21の側面33の下側の装着方向の前端角部分は、幅方向に窪んだ矩形状凹部37が形成されており、この矩形状凹部37の下端側にはインクカートリッジ20を装着位置にロックするための楔状の係合突起38(容器側係合部)が横方に突出している。
【0031】
(インクカートリッジの内部構造)
次に、図4はインクカートリッジ20の内部構造の一例を示す分解斜視図である。この図を参照して説明すると、インクカートリッジ20のカートリッジケース21は、ケース本体40と、このケース本体40に対して両側から取り付けられる蓋板41および蓋板42とから構成されている。ケース本体40は、矩形の仕切り板部分43と、この仕切り板部分43の外周縁を取り囲む状態に一体形成されている矩形の外周枠板部分44とを備えている。ケース本体40の仕切り板部分43および外周枠板部分44と、一方の蓋板41とによってインク収納部45が区画形成されており、他方の蓋板42の側には廃インク収納部46が形成されている。蓋板41の外側の側面にはラベル41aが貼り付けられており、蓋板42の外側の側面にもラベル42aが貼り付けられている。
【0032】
インク収納部45には、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクが貯留されている4種類のインク袋54〜57が収納されている。各インク袋54〜57のインク供給口54a〜57aは、外周枠板部分44における前端面22に形成されているインク供給針差し込み孔24〜27に同軸状態に固定されている。各インク供給口54a〜57aは同一構成であり、円環状のシールゴムによって規定されており、このシールゴムの後側には常閉弁機構が配置されている。インク供給口57aについて説明すると、当該インク供給口57aは、円環状のシールゴム57bを備えており、このシールゴム57bはインク袋57の側に取り付けられている円筒枠57cに装着されている。シールゴム57bの前面には円環状のキャップ57dが取り付けられ、円筒枠57cから前方にシールゴム57bが外れないようになっている。円筒枠57cの内部には、シールゴム57bの後側に、円盤状の弁体57eおよびばね部材57fがこの順序で同軸状態に配置されている。弁体57eはシールゴム57bの後端面にばね力によって押し付けられており、これにより、インク供給口57aが常時は封鎖されている。
【0033】
図5は蓋板42の内側面を示す平面図である。図4および図5を参照して説明すると、蓋板42の側の廃インク収納部46は、当該蓋板42の内側面と、ここに貼り付けた高剛性のフィルム47との間に形成されている。廃インク収納部46は、その上側の部位においてインクカートリッジ装着方向に延びる2本の横リブ62aと、フィルム47との間に形成される廃インク回収路61を備えており、この廃インク回収路61の下側が廃インク回収室62となっており、廃インク回収路61の上側が大気開放室63となっている。
【0034】
廃インク回収路61におけるインクカートリッジ装着方向の前端側の前端61aは、廃インク回収口65に連通している。廃インク回収口65はカートリッジケース21の前端面22に形成した廃棄インク回収針差し込み孔29に同軸状態で接続されている。廃インク回収口65は、後述の廃インク回収針89(図6参照)によって押し広げられる円環状のシールゴム65aと、当該シールゴム65aに差し込まれた廃インク回収針89によって押し込まれて当該廃インク回収口65を開状態に切り替える常閉弁機構65bとを備えている。廃インク回収路61の前端61bは、カートリッジケース21のインクカートリッジ装着方向の後端側において廃インク回収室62に連通している。廃インク回収室62は、蓋板42の平坦な内側面に形成したインクカートリッジ装着方向に延びる所定高さの横リブ62aによって上下に3つの区画室に仕切られており、これらの区画室はインクカートリッジ装着方向の前後の端において相互に連通している。
【0035】
上側の大気開放室63は、そのインクカートリッジ装着方向の後側の部分に、蓋板42の内側面に形成した複数のリブによって区画されている複数の第1区画室群63aを備えており、これらの第1区画室群63aのうち、空気排出方向における最も上流側に位置している第1区画室63a1が廃インク回収室62に連通している。また、各第1区画室においては、その上流側に隣接する区画室との連通孔の位置と、その下流側に隣接する区画室との連通孔の位置とが、インクカートリッジ装着方向に直交する上下方向にオフセットしており、廃インクが体気開放側の下流側の区画室に流れ込むことが防止あるいは抑制できるようになっている。
【0036】
第1区画室群63aのうち最も下流側に位置している第1区画室63a2のインクカートリッジ装着方向の前側には、複数の第2区画室群63bが配列されている。第2区画室群63bのうち最も上流側に位置している第2区画室63b1が第1区画室63a2に連通している。第2区画室群63bの各区画室は、蓋板42の反対側の面に形成した連通溝63cを介して下流側の区画室に連通している。連通溝63cは図6から分かるようにフィルム67を貼り付けることにより封鎖されている。第2区画室群63bにおける最も下流側の第2区画室63b2は、蓋板42の上辺縁に沿って形成したインクカートリッジ装着方向に延びる大気開放路63dに連通している。大気開放路63dの後端は蓋板42の後側縁に沿って下方に延びる大気開放路63eに連通している。
【0037】
大気開放路63eの中程の部位は二股に分岐して一方は下方に延びる液溜め空間63fに連通し、他方の下端は蓋板42の下辺縁に沿ってインクカートリッジ装着方向の前方に延びる大気開放路63gに連通している。大気開放路63gの前端は大気開放口66に連通している。
【0038】
大気開放口66は本例では大気開放針差し込み孔30となっており、ここには、円環状のシールゴム66aと、当該シールゴム66aに差し込まれる大気開放用部材である大気開放針90(図6参照)によって押されて大気開放針差し込み孔30を開状態に切り替える常閉弁機構66bとが装着されている。
【0039】
(インクカートリッジ装着部の構成)
図6(a)および(b)はインクジェットプリンター1のインクカートリッジ装着部8の後端部分を示す説明図である。この図に示すように、インクカートリッジ装着部8の後端面81には、複数本の差し込み針がプリンター前方に向けてインクカートリッジ20が着脱される方向と平行に突出している。本例では、当該後端面81における幅方向の一方の側に、上側から順に、位置決め針83、4本のインク供給針84〜87、および回り止め針88が配置されている。幅方向の他方の側には、その上端側の部位に廃インク回収針89が配置され、その下端側の部位には大気開放針90が配置されている。
【0040】
インクカートリッジ装着部8の底面91には、インクカートリッジ装着方向に沿った方向であるプリンター前後方向にスライド可能なスライド板92が配置されている。スライド板92とプリンター本体側の部位との間にはインクカートリッジ装着方向に延びる引張りコイルばね93が架け渡されている。インクカートリッジ20をインクカートリッジ装着部8に挿入すると、当該インクカートリッジ20がスライド板92に係合し、スライド板92がインクカートリッジ20と一緒にプリンター後方側(インクカートリッジ装着方向)に押し込まれるようになっている。スライド板92が図4に示す位置よりもプリンター後方に押し込まれると、引張りコイルばね93が伸びて、スライド板92をインクカートリッジ装着方向とは逆方向(プリンタ前方)に押し出す方向のばね力が当該スライド板92に作用する。
【0041】
図7(a)〜(c)には、インクカートリッジ装着部8の後端側部に配置されているロック機構を示す部分斜視図、部分側面図およびインクカートリッジ側の係合突起38の部分を示す部分側面図である。図7も参照して説明すると、スライド板92に乗った状態のインクカートリッジ20を押し込むと、インクカートリッジ20の装着方向前端の下側の角部分の矩形状凹部37から横方に突出しているロック用の係合突起38の傾斜上面38aに、インクカートリッジ装着部8の後端部の横方に配置されているロック機構の係合用ローラー94が乗り上げる。係合用ローラー94は回動板95の前端に取り付けられており、回動板95は、引張りコイルばね96によってプリンター幅方向に延びる後端支軸97を中心として下方に付勢されている。
【0042】
インクカートリッジ20の押し込み力によって、係合突起38の傾斜上面38aによって係合用ローラー94がばね力に逆らって徐々に押し上げられながら、インクカートリッジ20が押し込まれる。インクカートリッジ20が完全に押し込まれると、係合用ローラー94が係合突起38の傾斜上面38aを乗り越えて、その前側垂直面38bの前側に落ち込む。これにより、インクカートリッジ20が装着状態にロックされる(図6(b)、図7(a)参照)。
【0043】
回動板95は駆動機構、例えば電磁ソレノイド98の伸縮ロッド98aに連結されており、電磁ソレノイド98を励磁すると、伸縮ロッド98が上方に引き込まれて、係合用ローラー94が係合突起38の前側垂直面38bから外れて上方に移動する。この結果、引張りコイルばね93のばね力によってスライド板92が前方に押し出され、そこに乗っているインクカートリッジ20も一緒に前方に押し出される。これにより、インクカートリッジ20をインクカートリッジ装着部8の装着口8aから前方に取り外すことができる。電磁ソレノイド98は、たとえば、インクカートリッジ20のインクが無くなった場合に励磁される。これにより、インクカートリッジ20のロックが解除され、インクカートリッジ20がプリンター前方に所定量押し出されて取り出し可能な状態になる。
【0044】
(インクカートリッジの挿入負荷発生部)
ここで、インクカートリッジ20をインクカートリッジ装着部8に差し込むと、図6(a)に示すように、まず、位置決め針83および回り止め針88が、それぞれ、インクカートリッジ20の前端面22に形成されている位置決め針差し込み孔23(第1位置決め針差し込み孔)および回り止め針差し込み孔28(第2位置決め針差し込み孔)に差し込まれる。これによって位置決めされながらインクカートリッジ20がインクカートリッジ装着部8に差し込まれていく。また、インクカートリッジ20の前端面22の上端に配置されているICチップ36に対して、インクカートリッジ装着部20の側に配置されているスライド式の接続用ブラシ100(装着側接点部)が押しつけられた状態が形成され、当該接続用ブラシ100も一緒に押し込まれる。
【0045】
この後は、インク供給針84〜87、廃インク回収針89、大気開放針90のそれぞれが、インク供給針差し込み孔24〜27、廃インク回収針差し込み孔29、大気開放針差し込み孔30に差し込まれていく。インク供給針84〜87は、インク供給針差し込み孔24〜27からインク供給口54a〜57aのシールゴムを押し広げながら差し込まれ、常閉弁機構の弁体をばね力に逆らって押し込む。同様に、廃インク回収針89、大気開放針90も、それぞれ、廃インク回収針差し込み孔29、大気開放針差し込み孔30から廃インク回収口65、大気開放口66のシールゴムを押し広げながら差し込まれ、それらの常閉弁機構の弁体をばね力に逆らって押し込む。尚、インク供給針84〜87と廃インク回収針89とは、ほぼ同時に差し込まれるように構成している。そのため、挿入負荷が発生する部位のバランスが良くなる。
【0046】
また、先に述べたように、インクカートリッジ20の押し込み力によって、その係合突起38の傾斜上面38aによって、ロック機構の係合用ローラー94がばね力に逆らって徐々に押し上げられながら、インクカートリッジ20がインクカートリッジ装着部8に押し込まれる。
【0047】
図6(b)に示すように、インクカートリッジ20が完全に押し込まれると、係合用ローラー94が係合突起38の傾斜上面38aを乗り越えて、その前側垂直面38bの前側に落ち込む。これにより、インクカートリッジ20が装着状態にロックされる。この状態では、インク供給針84〜87、廃インク回収針89、大気開放針90のそれぞれによって、インク供給針差し込み孔24〜27、廃インク回収針差し込み孔29、大気開放針差し込み孔30を封鎖している常閉弁機構が開き、インクカートリッジ20の各インク袋54〜57から各インク供給針84〜87を経由してインクジェットヘッド13の側に各カラーインクを供給するインク供給経路が形成される。また、ヘッドメンテナンスユニット19の側から廃インク回収針89を介してインクカートリッジ20の廃インク回収室62に至る廃インク回収経路が形成され、インクカートリッジ20の廃インク回収室62が大気開放針90によって大気開放状態になる。さらに、ICチップ36がスライド式の接続用ブラシ100に対して電気的に接続された状態が確立される。
【0048】
このように、インクカートリッジ20の装着時には、インク供給針84〜87が、インク供給針差し込み孔24〜27とインク供給口54a〜57aから構成されている各インク供給針差し込み孔部に対して、圧接状態で摺動しながら差し込まれるので、これらのインク供給針差し込み孔部がインクカートリッジ20を挿入する際の挿入負荷が発生する挿入負荷発生部となる。同様に、廃インク回収針89および大気開放針90が、それぞれ、廃インク回収針差し込み孔29と廃インク回収口65からなる廃インク回収針差し込み孔部、大気開放針差し込み穴30と大気開放口66からなる大気開放針差し込み孔部に対して、圧接状態で摺動しながら差し込まれるので、これらの部位がインクカートリッジ20を挿入する際の挿入負荷発生部となる。さらに、ICチップ36は接続用ブラシ100に圧接状態で摺動するので、これらの部位も挿入負荷発生部となる。なお、位置決め針差し込み孔23および回り止め針差し込み孔28も、位置決め針83、回り止め針88に接触するので、僅かではあるが挿入負荷が発生する挿入負荷発生部となる場合がある。
【0049】
このような挿入負荷発生部がインクカートリッジ20の挿入方向に対してバランス良く配置されていないと、インクカートリッジ20をインクカートリッジ装着部8に押し込む際に、インクカートリッジ20の押し込み位置が異なると挿入負荷が大きく変化してしまい、小さな力でインクカートリッジ20を装着できないことがある。また、押し込み力が挿入方向とは異なる方向に作用して、インクカートリッジ20が挿入途中で詰まった状態になり、それ以上、押し込むことができなくなるおそれもある。本例のインクカートリッジ20においては以下に述べるように各挿入負荷発生部を配置することにより、かかる弊害を防止している。
【0050】
(インクカートリッジの挿入負荷発生部の配置関係)
次に、図8はインクカートリッジ20に配置されている各挿入負荷発生部の配置関係を示す説明図である。以下においては説明を簡単にするために、4個のインク供給針差し込み孔部、廃インク回収針差し込み孔部および大気開放孔部の位置を、それぞれ、インク供給針差し込み孔24〜27、廃インク回収針差し込み孔29および大気開放針差し込み孔30として説明する。
【0051】
まず、インクカートリッジ20の上下に長い長方形の前端面22は、当該インクカートリッジ20の挿入方向に直交する直交面である。この前端面22における短辺方向の一方の側(インク袋54〜57が収納されている側)には、上側から、位置決め針差し込み孔23、4個のインク供給針差し込み孔24〜27、および回り止め針差し込み孔28が、この順序で、前端面22の長辺方向に延びる直線L1上に配置されている。
【0052】
また、前端面22の短辺方向の他方の側(廃インク回収部の側)には、前端面22の長辺方向の上下の端に、直線L1に平行な直線L2上に位置するように、廃インク回収針差し込み孔29および大気開放針差し込み孔30が配置されている。
【0053】
本例では、前端面22の中心22aを通り長辺方向に延びる垂直中心線L3から左右に等距離の位置にある直線L1、L2上に、各孔を配置してある。また、前端面22の中心22aを通り短辺方向に延びる水平中心線L4に対して、対称な位置となるように、上側の位置決め針差し込み孔23および2個のインク供給針差し込み孔24、25と、下側の回り止め針差し込み孔28および2個のインク供給針差し込み孔26、27とが配置されている。同様に、水平中心線L4に対して対称な位置となるように、上側の廃インク回収針差し込み孔29と下側の大気開放針差し込み孔30が配置されている。
【0054】
さらに、ロック用の容器側係合突起38は、前端面22の下端部において、その短辺方向の大気開放針差し込み孔30の側に位置している。また、その傾斜上面38aの中心が、直線L2の延長上に位置するように配置されている。
【0055】
これに対して、ICチップ36は、前端面22の上端において、その短辺方向の中心、すなわち、垂直中心線L3上に位置するように配置されている。
【0056】
ここで、これら各部分による挿入負荷の大小関係は一般的に次のようになる。まず、インクカートリッジ20を機械的に装着位置にロックするための容器側係合突起38による挿入負荷が最も大きい。インク供給針差し込み孔24〜27、廃インク回収針差し込み孔29、大気開放針差し込み孔30による挿入負荷はほぼ同一であり、容器側係合突起38による挿入負荷よりも小さい。これらに比べて、電気的な接触を確保するためのICチップ36と接続用ブラシ100との間に生ずる挿入負荷はさらに小さい。位置決めのための位置決め針差し込み孔23、回り止め針差し込み孔28による負荷はさらに小さく、回り止め針差し込み孔28による挿入負荷が最も小さい。
【0057】
本例のインクカートリッジ20においては、上記のように、前端面22における短辺方向の一方の側に、挿入負荷発生部として、位置決め針差し込み孔23、インク供給針差し込み孔24〜27、回り止め針差し込み孔28が配置されている。また、前面22における短辺方向の他方の側に、挿入負荷発生部として、廃インク回収針差し込み孔29、大気開放針差し込み孔30および容器側係合突起38が配置されている。位置決め針差し込み孔23、回り止め針差し込み孔28の各部位の挿入負荷は僅かであり、ICチップ36は短辺方向の中央に配置されているので、短辺方向においては、これらを無視できる。
【0058】
4個のインク供給針差し込み孔24〜27のそれぞれ、廃インク回収針差し込み孔29、および、大気開放針差し込み孔30による挿入負荷はほぼ同一であるので、前端面22の短辺方向においては、4個のインク供給針差し込み孔24〜27が配列されている側の挿入負荷が大きい。しかし、本例では、廃インク回収針差し込み孔29、大気開放針差し込み孔30の側に最も大きな挿入負荷発生部である容器側係合突起38が配置されている。したがって、垂直中心軸線L3の左右において挿入負荷のバランスがとられている。
【0059】
また、前端面22の長辺方向においては、水平中心線L4の上側に、2個のインク供給針差し込み孔24、25と1個の廃インク供給針差し込み孔29が配置され、その下側に、2個のインク供給針差し込み孔26、27と1個の大気開放針差し込み孔30が配置されており、これらによる上下の挿入負荷がほぼ同一である。また、長辺方向の上端側には、ICチップ36および位置決め針差し込み孔23が配置され、その下端側には、容器側係合突起38および回り止め針差し込み孔28が配置されており、これらによる上下の挿入負荷がほぼ同一である。よって、全体として前端面22の長辺方向においても水平中心線L4の上下において挿入負荷のバランスがとられている。
【0060】
したがって、インクカートリッジ20をインクカートリッジ装着部8に装着する際に、インクカートリッジ20を押し込む位置が変っても、それよって挿入負荷が大きく変化することがない。また、挿入方向とは異なる方向に押し込み力が作用することもない。よって、常に、小さな押し込み力でインクカートリッジ20を円滑にインクカートリッジ装着部8に装着することができる。
【0061】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、インクカートリッジ装着部8に配置されているインク供給針84〜87、廃インク回収針89(装着側流路形成部)に対して圧接状態で摺動して、インク供給路(液体流路)を形成するために4個のインク供給針差し込み孔24〜27、廃インク回収針差し込み孔29(容器側流路形成部)をインクカートリッジ20に配置してある。インク供給針、廃インク回収針をインクカートリッジ側に配置し、インク供給針差し込み孔、廃インク回収針差し込み孔をインクカートリッジ装着部の側に配置することも可能である。同様に、インクカートリッジ装着部8に配置されている大気開放針90(装着側大気開放部)に対して圧接状態で摺動して大気開放路を形成するための大気開放針差し込み孔30(容器側大気開放部)をインクカートリッジ20に配置してあるが、逆の配置関係とすることも可能である。
【0062】
上記の実施の形態では、インクカートリッジ20の位置決めのために、カートリッジケース21の側に配置した位置決め針差し込み孔23および回り止め針差し込み孔28と、インクカートリッジ装着部8の側に配置した位置決め針および回り止め針とを用いている。位置決め機構としては、針と、その差し込み孔を用いる代わりに、針以外の形状の凸部と、当該凸部に係合可能な凹部(窪み、溝、孔)を用いることができる。例えば、回り止め針差し込み孔を下端面側が開口している溝とすることができる。
【0063】
インクジェットプリンターに用いるインクカートリッジなどの液体容器においては、インクカートリッジをインクジェットプリンター側の装着部に位置決めしてから、インク供給針差し込み孔と廃インク回収針差し込み孔に、それぞれインク供給針、廃インク回収針が差し込まれる。したがって、液体容器の側に突起を設けると、インク供給針、廃インク回収針よりも長い突起が容器本体から突出した状態になり、取り扱いが一般的に不便になる。したがって、容器本体の側に位置決め用の凹部(窪み、溝、孔など)を設けることが望ましい。
【0064】
上記の実施の形態では、挿入方向に直交するインクカートリッジ20の平坦な前端面22に各孔(挿入負荷発生部)を配置してあるが、挿入方向に段差のついた異なる面、あるいは曲面に、各孔を形成することも可能である。いずれの場合においても各孔の開口方向が挿入方向を向いていればよい。
【0065】
また、このような場合には、挿入方向に沿って見た場合に得られるインクカートリッジ20の投影面上において各挿入負荷発生部がバランスよく配置されるように、各挿入負荷発生部の位置を定めればよい。すなわち、投影面上において、その中心を通る第1中心線の両側における挿入負荷の差が零あるいは最少となり、当該中心を通り第1中心線に直交する第2中心線の両側における挿入負荷の差が零あるいは最少となるように、各挿入負荷発生部を配置すればよい。
【0066】
上記の実施の形態ではインクカートリッジ20が直方体形状のものであるが、インクカートリッジ20の形状としては直方体以外の形状のものであってもよい。
【0067】
上記の実施の形態では、インクカートリッジ20はインク収納部と廃インク収納部が備わっているが、インク収納部のみ、あるいは廃インク収納部のみが備わっている液体容器であっても本発明を適用することが可能である。
【0068】
上記の実施の形態では、本発明の液体容器をインクジェットプリンターのインク供給源として用いるインクカートリッジに適用した例について説明してきたが、本発明の液体容器は、これ以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出ヘッド等の液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置、精密ピペットとしての試料吐出装置等に使用される液体容器にも適用できる。
【0069】
また、液体の概念にはジェル状のもの、粘性の高いもの、固形物を含む溶媒に混合させたものも含まれ、インクとしては水性インク、油性インク、染料インク、顔料インクなどの各種のインクが含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 インクジェットプリンター、2 プリンターケース、3 開口部、4 記録紙排出ガイド、5 開閉蓋、6 記録紙排出口、7a 電源スイッチ、7b 紙送りスイッチ、7c 動作状態表示ランプ、8 インクカートリッジ装着部、8a 装着口、10 プリンター機構部、11 ロール紙収納部、12 プラテン、13 インクジェットヘッド、14 キャリッジ、15 キャリッジガイド軸、16a〜16d インクポンプ、17a〜17d インクチューブ、19 ヘッドメンテナンスユニット、20 インクカートリッジ、21 カートリッジケース、22 前端面、22a 中心、23 位置決め針差し込み孔、24〜27 インク供給針差し込み孔、28 回り止め針差し込み孔、29 廃インク回収針差し込み孔、30 大気開放針差し込み孔、31 上端面、32 突出面、33 側面、34 ラベル、35 凹部、36 ICチップ、37 矩形状凹部、38 係合突起、38a 傾斜上面、38b 前側垂直面、40 ケース本体、41、42 蓋板、43 仕切り板部分、44 外周枠板部分、45 インク収納部、46 廃インク収納部、47 フィルム、54〜57 インク袋、54a〜57a インク供給口、61 廃インク回収路、61a 前端、61b 後端、62 廃インク回収室、62a 横リブ、63 大気開放室、63a 第1区画室群、63a1,63a2 第1区画室、63b 第2区画室群、63b1,63b2 第2区画室、63c 連通溝、63d 大気開放路、63e 大気開放路、63f 液溜め空間、63g 大気開放路、65 廃インク回収口、65a シールゴム、65b 常閉弁機構、66 大気開放口、66a シールゴム、66b 常閉弁機構、67 フィルム、81 後端面、83 位置決め針、84〜87 インク供給針、88 回り止め針、89 廃インク回収針、90 大気開放針、91 底面、92 スライド板、93 引張りコイルばね、94 係合用ローラー、95 回動板、96 引張りコイルばね、97 後端支軸、98 電磁ソレノイド、98a 伸縮ロッド、100 接続用ブラシ、L1,L2 直線、L3 垂直中心線、L4 水平中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた挿入方向に沿って押し込むことにより所定の装着場所に装着される液体容器であって、
容器本体と、
前記容器本体における異なる部位に設けられた複数の挿入負荷発生部とを有し、
前記挿入負荷発生部のそれぞれは、前記装着場所に対して前記容器本体を前記挿入方向に押し込む際に挿入負荷が発生する部分であり、
前記挿入方向に沿った方向から見た場合に得られる前記容器本体の投影面上において、当該投影面の中心を通る第1中心線の両側における前記挿入負荷の差が最も少なくなり、前記中心を通り前記第1中心線に直交する第2中心線の両側における前記挿入負荷の差が最も少なくなるように、前記挿入負荷発生部のそれぞれの位置が定められていることを特徴とする液体容器。
【請求項2】
前記挿入負荷発生部として、
前記容器本体を前記挿入方向に押し込むことにより、前記装着場所に配置されている装着側流路形成部に対して圧接状態で摺動して、前記装着場所と前記容器本体との間に液体流路を形成するための複数の容器側流路形成部、
前記容器本体を前記挿入方向に差し込むことにより、前記装着場所に配置されている装着側大気開放部に対して圧接状態で摺動して、前記装着場所と前記容器本体の間に大気開放路を形成するための容器側大気開放部、
前記容器本体を前記挿入方向に押し込むことにより、前記装着場所に配置されている装着側係合部に対して圧接状態で摺動して、前記容器本体を装着位置にロックするための容器側係合部、および、
前記容器本体を前記挿入方向に押し込むことにより、前記容器本体装着部に配置されている装着側接点部に圧接状態で摺動して、当該装着側接点部に対して電気的接続状態を形成するための容器側接点部
のうち、少なくとも前記容器側流路形成部および前記容器側係合部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体容器。
【請求項3】
前記容器本体は、その内部に、供給液体収納部および回収液体収納部を備えており、
前記容器側流路形成部は、前記供給液体収納部に収納されている供給液体を外部に供給するための複数個の液体供給針差し込み孔部、および、回収液体を前記回収液体収納部に回収するための液体回収針差し込み孔部であり、
前記容器側大気開放部は、前記回収液体収納部を大気開放するための大気開放針差し込み孔部であり、
前記液体供給針差し込み孔部、前記液体回収針差し込み孔部、および前記大気開放針差し込み孔部は、前記挿入方向に向かって開口していることを特徴とする請求項2に記載の液体容器。
【請求項4】
前記容器本体における前記挿入方向の前面は長方形の平坦面であり、
前記容器本体の内部には、前記前面における短辺方向の一方の側に前記供給液体収納部が配置され、他方の側に前記回収液体収納部が配置されており、
前記前面における前記短辺方向の一方の側に、複数の前記液体供給針差し込み孔部が前記前面の長辺方向に延びる直線上に配置されており、
前記前面における前記短辺方向の他方の側に、前記液体回収針差し込み孔部および前記大気開放針差し込み孔部が前記直線に平行な平行線上に所定の間隔で配置されていることを特徴とする請求項3に記載の液体容器。
【請求項5】
前記前面における前記短辺方向の一方の側に、少なくとも3個の前記液体供給針差し込み孔部が配列されており、
前記挿入方向に沿って見た場合に、前記容器側係合部が、前記容器本体における前記大気開放孔部および前記液体回収針差し込み孔部が配置されている前記平行線上の部位に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の液体容器。
【請求項6】
前記挿入負荷発生部として前記容器側接点部を備えており、
前記容器側接点部は、前記容器本体における前記前面の短辺方向の中心に配置されており、
前記挿入方向に沿って見た場合に、前記前面の中心を通る当該前面の短辺方向に延びる直線に対して、前記液体供給針差し込み孔部のそれぞれは対称の位置に配置され、前記液体回収針差し込み孔部および前記大気開放孔部も当該直線に対して対称の位置に配置されており、
前記容器側接点部と前記容器側係合部は、前記前面の中心に対して当該前面の長辺方向における反対側の位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の液体容器。
【請求項7】
前記装着場所に挿入される前記容器本体の位置決めを行うために、前記容器本体における前記前面には、前記挿入方向に開口している第1位置決め針差し込み孔部および第2位置決め針差し込み孔部が形成されており、
前記第1、第2位置決め針差し込み孔部は、前記液体供給針差し込み孔部の両側において、当該液体供給針差し込み孔部と同一直線上の位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の液体容器。
【請求項8】
前記装着場所を備えたインクジェットプリンターへのインクの供給および当該インクジェットプリンターから排出される廃インクの回収を行うインクカートリッジとして用いることを特徴とする請求項1ないし7のうちのいずれかの項に記載の液体容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate