説明

液体性状検出装置

【課題】静電容量式濃度センサにおいて、電極間のリーク抵抗の影響を排除して高精度で濃度を測定できる液体性状検出装置を提供する。
【解決手段】増幅回路40のゲインを固定とせずに大小切換え可能とし、エタノール濃度検出信号である電圧Vbが小さくなるに連れて、増幅回路40のゲインを増大させている。これにより、エタノール濃度変化に対応する電圧V50の変化が小さい領域、つまり電圧Vbが0<Vb<Pである領域において、ゲインを増大させて電圧V50を増大させることで分解能を大きくし、それにより高精度でエタノール濃度測定が可能なエタノール濃度センサを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体性状として、液体中に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置に関するもので、たとえばガソリンとエタノールの混合液体中のエタノール濃度の検出の用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
液体中に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置の用途として、たとえば自動車のエンジンの燃料であるガソリンとエタノールの混合液体中のエタノール濃度の検出がある。ガソリンとエタノールの混合液体を燃料とするエンジンは、排気中の有害成分が少ないことから注目されている。このような混合液体は、ガソリンのみの場合とは、最適な空燃比が異なっている。エンジンの高熱効率運転および排気中の有害成分低減実現のためには、エンジンを最適な空燃比で運転することが重要である。ところで、燃料としてのガソリンの空燃費と、ガソリンとエタノールの混合液体の空燃費とは異なっている。このため、ガソリンとエタノールの混合液体を燃料とするエンジンにおいては、燃料中のエタノールの含有量、すなわちエタノール濃度を測定することが重要となってくる。
【0003】
従来の液体性状検出装置、たとえばガソリンとエタノールの混合液体中のエタノール濃度の検出に用いられるものがある。これは、測定対象液体が導入される非導電性チューブの外周面に第1、第2電極を配設し、両電極および両電極間の液体により静電容量体を形成して濃度センサとし、この濃度センサに対して切換えスイッチを介して充電、放電を繰り返し、放電電流と抵抗と測定対象液体の濃度に比例した出力電圧を得る構成としたものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−3313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来の液体濃度計のように両電極および両電極間の液体により静電容量体を形成して濃度センサとした場合、ガソリンは非導電性であるので液体がガソリン100%であるときには両電極間の電気抵抗(以降「リーク抵抗」と表す)は無限大であり、電極間の誘電率はほぼ「0」となる。しかし、ガソリンに異物、たとえばエタノール、水等が混入すると、リーク抵抗は無限大から減少し、電極間の誘電率が正の値をとるようになる。
【0006】
したがって、両電極および両電極間の液体により静電容量体を形成してなる濃度センサを用いてエタノール濃度を高精度で測定するためには、上述したリーク抵抗の影響を排除する必要がある。上記特許文献1に記載の液体用濃度計では、リーク抵抗の影響を受けてしまい、エタノール濃度を精度よく測定することが困難となるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、両電極および両電極間の液体により静電容量体を形成してなる濃度センサを用いて液体中に含まれる成分の濃度測定に際して、電極間のリーク抵抗の影響を排除して高精度で濃度を測定できる液体性状検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載される燃料性状検出装置は、電極と、電極に印加される電圧である標準電圧を発生する標準電圧発生手段と、標準電圧を電極に印加して電極に電荷を蓄えさせること、および電極を接地して電荷を放電させること、のどちらか一方の状態に切換えるスイッチ手段と、スイッチ手段を所定周期で切り換え作動させるために、スイッチ手段に対して所定周波数の動作信号を出力する動作信号出力手段と、電極に標準電圧を印加したときの電極に発生する電圧である検出信号が入力されると該検出信号を処理して出力する信号処理手段と、を備え、動作信号出力手段は、第1の周期でスイッチ手段を切り換え作動させるための第1周波数の第1動作信号、および、第2の周期でスイッチ手段を切り換え作動させるための第2周波数の第2動作信号を出力し、信号処理手段は、スイッチ手段が第1の周期で切換え作動しているときの検出信号である第1検出信号、およびスイッチ手段が第2の周期で切換え作動しているときの検出信号である第2検出信号に基づいて液体の性状である液体に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置であって、信号処理手段は、第1検出信号および第2検出信号に基づいて濃度を算出する処理工程におけるゲインを、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方に応じて変化させ、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方が小さくなるに連れてゲインを大きくすることを特徴としている。
【0009】
両電極および両電極間の液体により静電容量体を形成して濃度センサとし、この濃度センサに対して切換えスイッチを介して充電、放電を繰り返し、放電電流と抵抗と測定対象液体の濃度に比例した検出電圧を得る場合、この検出電圧を表す式中には、(1/Rp)を含む定数項が存在する。ここで、「Rp」はリーク抵抗である。そのため、切換えスイッチの切換え周期である濃度センサへの充電・放電の切換え周期を一定値とした場合、すなわち従来の特許文献1に記載の液体用濃度計では、リーク抵抗Rpが小さくなると、その影響が比較的大きくなり濃度測定の精度が低下する恐れがある。
【0010】
これに対して、本発明の請求項1に記載される燃料性状検出装置では、スイッチ手段の切換え作動の周期である周波数として、第1周波数および第2周波数の2種類の周波数を設定し、2つの周波数毎の検出信号を得ている。つまり、第1周波数で充電・放電を切換えたときの第1検出信号、および第2周波数で充電・放電を切換えたときの第2検出信号の2種類の検出信号を得ている。そして、これら2つの検出信号の差分をとれば、検出電圧を表す式中の(1/Rp)を含む定数項を消去することができるので、リーク抵抗の影響を排除して濃度測定を高精度で行うことができる。
【0011】
測定対象液体の濃度に相当する検出信号電圧は、濃度が低い領域では非線形性が大きくなり、濃度変化に対する検出信号電圧の変化が小さくなる。このため、低濃度で濃度変化に対する検出信号電圧の変化が小さい領域においては、濃度を検出信号電圧に基づいて精度良く測定することが困難となる恐れがある。そこで、本発明の請求項1に記載される燃料性状検出装置では、信号処理手段が第1検出信号および第2検出信号を出力するときのゲインを、検出信号レベルに応じて変化させ、検出信号電圧が低くなるに連れてゲインを大きくしている。これにより、濃度−検出信号電圧の関係が非線形となる低濃度領域においても濃度変化に対する検出信号電圧の変化を大きくする、言い換えると分解能を大きくすることができるので、低濃度領域においても高精度の濃度検出が可能となる。一方、濃度が或る程度以上の領域では、濃度−検出信号電圧の関係がほぼ線形となり、検出信号電圧も高くなるので、信号処理出力手段が第1検出信号および第2検出信号を出力するときのゲインを大きくする必要はない。したがって、濃度センサからの検出信号電圧が低くなるに連れて、言い換えると濃度が低くなるに連れて、信号処理出力手段が第1検出信号および第2検出信号を出力するときのゲインを増大させれば、測定対象液体濃度の発現し得る全域において、高精度で濃度を測定することが可能となる。
【0012】
以上により、本発明の請求項1に記載される燃料性状検出装置によれば、電極間のリーク抵抗の影響を排除して高精度で濃度を測定できる液体性状検出装置を提供することができる。
【0013】
本発明の請求項2に記載される燃料性状検出装置は、電極と、電極に印加される電圧である標準電圧を発生する標準電圧発生手段と、標準電圧を電極に印加して電極に電荷を蓄えさせること、および電極を接地して電荷を放電させること、のどちらか一方の状態に切換えるスイッチ手段と、スイッチ手段を所定周期で切り換え作動させるために、スイッチ手段に対して所定周波数の動作信号を出力する動作信号出力手段と、電極に標準電圧を印加したときの電極に発生する電圧である検出信号が入力されると該検出信号を処理して出力する信号処理手段と、を備え、動作信号出力手段は、第1の周期でスイッチ手段を切り換え作動させるための第1周波数の第1動作信号、および、第2の周期でスイッチ手段を切り換え作動させるための第2周波数の第2動作信号を出力し、信号処理手段は、スイッチ手段が第1の周期で切換え作動しているときの検出信号である第1検出信号、およびスイッチ手段が第2の周期で切換え作動しているときの検出信号である第2検出信号に基づいて液体の性状である液体に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置であって、動作信号出力手段は、第1周波数と第2周波数との差である差周波数を、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方に応じて変化させ、動作信号出力手段は、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方が小さくなるに連れて差周波数を大きくすることを特徴としている。
【0014】
上述の構成において、濃度測定対象液体を挟んで配置される一対の電極間に標準電圧Eを印加したときの一対の電極間の電圧である検出電圧:Vは、リーク抵抗が無限大の場合、液体を挟んで配置される一対の電極の静電容量をC、抵抗をRg、第1周波数をf1、第1周波数でスイッチ手段を切換えたときに得られる検出電圧をVf1、第2周波数をf2、第2周波数でスイッチ手段を切換えたときに得られる検出電圧をVf2、とすると、Vf1=E×Rg×C×f1、Vf2=E×Rg×C×f2、V=Vf1−Vf2=E×Rg×C×(f1−f2)となる。ここで、(f1−f2)=Δfと表せば、V=C×Δfとなる。また、液体を挟んで配置される一対の電極の静電容量(C)は液体中の成分濃度にほぼ比例するので、成分濃度が低下するに連れて静電容量(C)は小さくなる。さらに、成分濃度が低い領域では、検出電圧と濃度との関係が非線形性となり、濃度変化に対する検出電圧の変化が小さくなる。以上から、成分濃度の低い領域においても濃度検出精度を良好に維持するためには、検出電圧:Vを高くする必要があり、そのためにはΔf、すなわち第1周波数と第2周波数との差である差周波数を、大きくすれば良いことがわかる。
【0015】
本発明の請求項2に記載される燃料性状検出装置では、将に、検出電圧が低くなるに連れて差周波数を大きくしている。これにより、検出電圧が低くなる成分濃度の低い領域においても、検出電圧を高くして濃度検出精度を良好に維持することができる。
【0016】
以上により、本発明の請求項2に記載される燃料性状検出装置によれば、電極間のリーク抵抗の影響を排除して高精度で濃度を測定できる液体性状検出装置を提供することができる。
【0017】
本発明の請求項3に記載される燃料性状検出装置は、電極と、電極に印加される電圧である標準電圧を発生する標準電圧発生手段と、標準電圧を電極に印加して電極に電荷を蓄えさせること、および電極を接地して電荷を放電させること、のどちらか一方の状態に切換えるスイッチ手段と、スイッチ手段を所定周期で切り換え作動させるために、スイッチ手段に対して所定周波数の動作信号を出力する動作信号出力手段と、電極に標準電圧を印加したときの電極に発生する電圧である検出信号が入力されると該検出信号を処理して出力する信号処理手段と、を備え、動作信号出力手段は、第1の周期でスイッチ手段を切り換え作動させるための第1周波数の第1動作信号、および、第2の周期でスイッチ手段を切り換え作動させるための第2周波数の第2動作信号を出力し、信号処理手段は、スイッチ手段が第1の周期で切換え作動しているときの検出信号である第1検出信号、およびスイッチ手段が第2の周期で切換え作動しているときの検出信号である第2検出信号に基づいて液体の性状である液体に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置であって、動作信号出力手段は、標準電圧を、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方の大きさに応じて変化させ、動作信号出力手段は、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方が小さくなるに連れて標準電圧を高くすることを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項2に記載される燃料性状検出装置の説明で述べたように、濃度測定対象液体を挟んで配置される一対の電極間に標準電圧Eを印加したときの一対の電極間の電圧である検出電圧:Vは、V=E×Rg×C×Δfと表せる。本発明の請求項2に記載される燃料性状検出装置では、検出電圧が低くなる成分濃度の低い領域においても検出電圧を高くして濃度検出精度を良好に維持するために、第1周波数と第2周波数との差であるΔfを、検出電圧が低くなるに連れ大きくしている。ところで、検出電圧を高くするための方策としては、Δfを高めること以外に、一対の電極間に印加する標準電圧Eそのものを高くすることがある。本発明の請求項3に記載される燃料性状検出装置では、成分濃度が低下して検出電圧が低くなるに連れて、標準電圧Eを高くしている。これにより、検出電圧が低くなる成分濃度の低い領域においても、検出電圧を高くして濃度検出精度を良好に維持することができる。
【0019】
以上により、本発明の請求項3に記載される燃料性状検出装置によれば、電極間のリーク抵抗の影響を排除して高精度で濃度を測定できる液体性状検出装置を提供することができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載される燃料性状検出装置は、信号処理手段において第1検出信号および第2検出信号に基づいて算出された濃度としての電気信号である出力電圧が、選択可能なゲインのうちの任意のゲインを用いて算出しても必ず出力電圧が飽和しないように、第1周波数および第2周波数の差周波数を設定する差周波数較正手段と、差周波数較正手段で設定された差周波数である較正差周波数を用い且つすべての選択可能なゲイン毎に出力電圧を算出し、このようにして算出された各出力電圧である各較正出力電圧に基づいて、信号処理手段におけるゲインの切り替え機能が正常であるかどうかを判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0021】
上述の構成によれば、ある一つの出力電圧に対して較正出力電圧は選択可能なゲインの個数だけ得られる。また、各較正出力電圧は、選択可能なゲインのうちの任意のゲインを用いて算出しても必ず出力電圧が飽和しないように第1周波数および第2周波数の差周波数が設定されるため、いずれも計測可能範囲内の値となっている。そのため、各較正出力電圧は、相互に電圧を正確に比較することが可能となっている。
【0022】
ここで、選択可能なゲインの個数がたとえば3個設定されているならば、得られる較正電圧の個数もゲインの個数と同じ、すなわち3個となる。そして、得られた3個の較正出力電圧の比は、3個のゲインの比とほぼ等しくなるはずである。たとえば、ゲインが、10、20、80である場合は、得られた3個の較正出力電圧の比も、ほぼ、1:2:8となる。本発明の請求項4に記載される燃料性状検出装置の判定手段における処理の過程で、得られた3個の較正出力電圧の比が、ほぼ、1:2:8となった場合は、信号処理手段におけるゲインの設定および切り替え機能が正常であることを意味するので、判定手段は、信号処理手段におけるゲインの設定および切り替え機能が正常である、との判定を下すことができる。一方、得られた3個の較正出力電圧の比が、たとえば、1:2:5となった場合は、信号処理手段におけるゲインの設定機能が異常であると見做せる。また、得られた3個の較正出力電圧の比が、たとえば、1:1:8となった場合は、信号処理手段におけるゲインの切り替え機能が異常であると見做せる。このように、得られた3個の較正出力電圧の比が、ゲインの比と異なる値となった場合は、判定手段は、信号処理手段におけるゲインの設定あるいは切り替え機能が異常である、との判定を下す。
【0023】
このように、本発明の請求項4に記載される燃料性状検出装置によれば、以上説明したような容易な処理により、信号処理手段におけるゲインの設定あるいは切り替え機能に異常が発生した場合、それを素早く且つ容易な手段で発見することができる。
【0024】
本発明の請求項5に記載される燃料性状検出装置は、信号処理手段において第1検出信号および第2検出信号に基づいて算出された濃度としての電気信号である出力電圧が、選択可能な第1周波数と第2周波数との差である差周波数のうちの任意の差周波数を用いて算出しても必ず出力電圧が飽和しないように、第1検出信号および第2検出信号に基づいて濃度を算出する処理工程におけるゲインを設定するゲイン較正手段と、ゲイン較正手段で設定されたゲインである較正ゲインを用い且つすべての選択可能な差周波数毎に出力電圧を算出し、このようにして算出された各出力電圧である各較正出力電圧に基づいて、信号処理手段における差周波数の切り替え機能が正常であるかどうかを判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0025】
上述の構成によれば、ある一つの出力電圧に対して較正出力電圧は選択可能な差周波数の個数だけ得られる。また、各較正出力電圧は、選択可能な差周波数のうちの任意の差周波数を用いて算出しても必ず出力電圧が飽和しないように第1検出信号および第2検出信号に基づいて濃度を算出する処理工程におけるゲインが設定されるため、いずれも計測可能範囲内の値となっている。そのため、各較正出力電圧は、相互に電圧を正確に比較することが可能となっている。
【0026】
ここで、選択可能な差周波数の個数がたとえば3個設定されているならば、得られる較正電圧の個数も差周波数の個数と同じ、すなわち3個となる。そして、得られた3個の較正出力電圧の比は、3個の差周波数の比とほぼ等しくなるはずである。たとえば、差周波数が、100Hz、200Hz、400Hzである場合は、得られた3個の較正出力電圧の比も、ほぼ、1:2:4となる。本発明の請求項5に記載される燃料性状検出装置の判定手段における処理の過程で、得られた3個の較正出力電圧の比が、ほぼ、1:2:4となった場合は、信号処理手段における差周波数の設定および切り替え機能が正常であることを意味するので、判定手段は、信号処理手段における差周波数の設定および切り替え機能が正常である、との判定を下すことができる。一方、得られた3個の較正出力電圧の比が、たとえば、1:2:3となった場合は、信号処理手段における差周波数の設定機能が異常であると見做せる。また、得られた3個の較正出力電圧の比が、たとえば、1:1:4となった場合は、信号処理手段における差周波数の切り替え機能が異常であると見做せる。このように、得られた3個の較正出力電圧の比が、差周波数の比と異なる値となった場合は、判定手段は、信号処理手段における差周波数の設定あるいは切り替え機能が異常である、との判定を下す。
【0027】
このように、本発明の請求項5に記載される燃料性状検出装置によれば、以上説明したような容易な処理により、信号処理手段における差周波数の設定あるいは切り替え機能に異常が発生した場合、それを素早く且つ容易な手段で発見することができる。
【0028】
本発明の請求項6に記載される燃料性状検出装置は、信号処理手段において第1検出信号および第2検出信号に基づいて算出された濃度としての電気信号である出力電圧が、選択可能な標準電圧のうちの任意の標準電圧を用いて算出しても必ず出力電圧が飽和しないように、第1検出信号および第2検出信号に基づいて濃度を算出する処理工程におけるゲインを設定するゲイン較正手段と、ゲイン較正手段で設定されたゲインである較正ゲインを用い且つすべての選択可能な標準電圧毎に出力電圧を算出し、このようにして算出された各出力電圧である各較正出力電圧に基づいて、信号処理手段における標準電圧の切り替え機能が正常であるかどうかを判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0029】
上述の構成によれば、ある一つの出力電圧に対して較正出力電圧は選択可能な標準電圧の個数だけ得られる。また、各較正出力電圧は、選択可能な標準電圧のうちの任意の標準電圧を用いて算出しても必ず出力電圧が飽和しないように第1検出信号および第2検出信号に基づいて濃度を算出する処理工程におけるゲインが設定されるため、いずれも計測可能範囲内の値となっている。そのため、各較正出力電圧は、相互に電圧を正確に比較することが可能となっている。
【0030】
ここで、選択可能な標準電圧の個数がたとえば3個設定されているならば、得られる較正電圧の個数も標準電圧の個数と同じ、すなわち3個となる。そして、得られた3個の較正出力電圧の比は、3個の標準電圧の比とほぼ等しくなるはずである。たとえば、標準電圧が、10、20、80である場合は、得られた3個の較正出力電圧の比も、ほぼ、1:2:8となる。本発明の請求項6に記載される燃料性状検出装置の判定手段における処理の過程で、得られた3個の較正出力電圧の比が、ほぼ、1:2:8となった場合は、信号処理手段における標準電圧の設定および切り替え機能が正常であることを意味するので、判定手段は、信号処理手段における標準電圧の設定および切り替え機能が正常である、との判定を下すことができる。一方、得られた3個の較正出力電圧の比が、たとえば、1:2:5となった場合は、信号処理手段における標準電圧の設定機能が異常であると見做せる。また、得られた3個の較正出力電圧の比が、たとえば、1:1:8となった場合は、信号処理手段における標準電圧の切り替え機能が異常であると見做せる。このように、得られた3個の較正出力電圧の比が、標準電圧の比と異なる値となった場合は、判定手段は、信号処理手段における標準電圧の設定あるいは切り替え機能が異常である、との判定を下す。
【0031】
このように、本発明の請求項6に記載される燃料性状検出装置によれば、以上説明したような容易な処理により、信号処理手段における標準電圧の設定あるいは切り替え機能に異常が発生した場合、それを素早く且つ容易な手段で発見することができる。
【0032】
本発明の請求項7に記載される燃料性状検出装置は、電極と電気的に並列に接続・遮断可能に配置された電気容量素子と、電極と容量素子との電気的接続・遮断を切換える切換え手段と、を備えることを特徴としている。
【0033】
一般に、両電極および両電極間の液体により静電容量体を形成してなる濃度センサを用いて液体中の成分濃度を測定する場合、液体を挟んで配置される一対の電極の静電容量(C)は液体中の成分濃度にほぼ比例し、成分濃度が低下するに連れて静電容量(C)は小さくなる。また、成分濃度が低い領域では、検出電圧と濃度との関係が非線形性となり、濃度変化に対する検出電圧の変化が小さくなり、成分濃度を高精度で測定することが困難となる。
【0034】
本発明の請求項7に記載される燃料性状検出装置では、電気容量素子、たとえばキャパシタを電極と電気的に並列に接続している。この場合、濃度センサとしての静電容量は、両電極および両電極間の液体により形成された静電容量体の静電容量と、両電極と並列に接続されたキャパシタの静電容量との和になる。つまり、低濃度領域において、濃度センサの見かけの静電容量を増大させて濃度変化に対する検出電圧の変化を大きくして、検出電圧と濃度との関係を線形性とすることができる。接続されたキャパシタの静電容量は既知であるので、検出電圧およびキャパシタの静電容量に基づいて成分濃度に対応した濃度センサの実質的静電容量は容易に算出できる。これにより、成分濃度が低い領域においても高精度で成分濃度を検出することができる。
【0035】
また、本発明の請求項7に記載される燃料性状検出装置では、電気容量素子、たとえばキャパシタを電極と電気的に並列に接続・遮断可能としている。これにより、成分濃度が上昇し、電極にキャパシタを並列接続しない状態で検出電圧と濃度との関係が線形性となるような濃度領域に到達したら、電極とキャパシタの接続を遮断した状態、つまり通常の状態で濃度検出を行うことができる。このように、本発明の請求項7に記載される燃料性状検出装置では、成分濃度が低い状態から高い状態まで、成分濃度の広い範囲において高精度で成分濃度を検出することが可能な燃料性状検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1が適用されるエンジン100の燃料供給システムを説明する模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1の構成を示す回路図である。
【図3】静電容量形成部10の構成を説明する模式図である。
【図4】エタノール濃度とスイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbとの関係を示すグラフである。
【図5】エタノール濃度とマイクロコンピュータ50内の電圧V50との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1の構成を示す回路図である。
【図7】スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbと、選択される第1周波数f1および第2周波数f2の組み合わせとの関係を示す表である。
【図8】エタノール濃度とマイクロコンピュータ50内の電圧V50との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1の構成を示す回路図である。
【図10】スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbと、選択される標準電圧Eとの関係を示す表である。
【図11】エタノール濃度とマイクロコンピュータ50内の電圧V50との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の第4実施形態によるエタノール濃度センサ1における、ゲイン切換え判定処理を説明するフローチャートである。
【図13】スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbと、選択される差周波数Δfとの関係を示す表である。
【図14】本発明の第5実施形態によるエタノール濃度センサ1における、差周波数切換え判定処理を説明するフローチャートである。
【図15】スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbと、選択されるゲインとの関係を示す表である。
【図16】本発明の第6実施形態によるエタノール濃度センサ1における、標準電圧設定・切換え判定処理を説明するフローチャートである。
【図17】スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbと、選択されるゲインとの関係を示す表である。
【図18】本発明の第7実施形態によるエタノール濃度センサ1の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る燃料性状検出装置の実施の形態について、自動車のエンジンへ供給される燃料としてのガソリンとエタノールの混合液体中のエタノール濃度検出に用いられるエタノール濃度センサ1に適用した場合を例に、図を参照して説明する。
【0038】
(第1実施形態)
エンジン100へは、フューエルフィルタ106により濾過されフューエルポンプ105により加圧された燃料タンク104内の燃料Fが、図1に示すように、燃料配管107を経由して供給されている。エンジン100において、フューエルポンプ105により加圧された燃料Fは、フューエルレール101内に一旦蓄えられ、そこから各インジェクタ102へ分配され対応するシリンダ(図示せず)へ供給される。エンジン100は4気筒エンジンであるので、図1に示すようにインジェクタ102を4本備えている。各インジェクタ102は、ECU(Electronic Control Unit)103により電気的に駆動されている。ECU103は、たとえばマイクロコンピュータ等から構成され、エタノール濃度センサ1からの検出信号のほかにもエンジン100に係る各種検出信号が入力され、それらに基づいてインジェクタ102へ駆動信号を出力している。エタノール濃度センサ1は、図1に示すように、燃料配管107の途中に配設されている。
【0039】
エタノール濃度センサ1が適用されるエンジン100は、液体である燃料Fとしてガソリンとエタノールの混合液体を用いている。ガソリンとエタノールとでは、理論空燃比、発熱量、揮発性等が異なっている。また、当該自動車の燃料タンク104へは、ガソリンとエタノールが予め所定比率で混合されている混合液体、すなわちエタノール濃度が既知である液体、およびガソリン100%のいずれもが任意で給油可能である。したがって、燃料タンク104内に貯蔵される燃料中のエタノール濃度は、給油時点を境に変動する可能性がある。したがって、このような燃料を用いるエンジン100を常に最適状態(たとえば排出ガスに含まれる有害物質量が最少且つ省燃費状態)で運転するために、エンジン100へ供給される燃料Fの燃料性状としてのエタノール濃度をエタノール濃度センサ1によって検出し、検出されたエタノール濃度に応じて各種制御パラメータ(たとえば、空燃比、燃料噴射量、点火時期等)を適切に制御している。このような用途では、エンジン100の燃焼室(図示せず)に燃料Fを噴射するインジェクタ102に出来るだけ近い部位においてエタノール濃度を検出することが望ましい。
【0040】
以下に、本発明に係るエタノール濃度センサ1の構成について説明する。
【0041】
エタノール濃度センサ1は、燃料配管107に接続可能且つその内部に燃料通路を有するハウジング(図示せず)内に、燃料を誘電体として静電容量を形成する電極部と電気回路部を収容して形成されている。
【0042】
先ず、エタノール濃度センサ1の電気回路構成について図面に基づいて説明する。エタノール濃度センサ1は、図2に示すように、イグニッションスイッチIGを介して自動車のバッテリBから電力を供給されて作動する。エタノール濃度センサ1の出力端子51は、図2に示すように、ECU103に接続されている。それにより、エタノール濃度センサ1により検出されたエタノール濃度信号がECU103へ入力され、ECU103はエタノール濃度情報に基づいてエンジン100に係る各種制御パラメータ(たとえば、空燃比、燃料噴射量、点火時期等)を算出し制御している。
【0043】
定電圧レギュレータ60は、バッテリBの電圧が入力されると、それをエタノール濃度センサ1の作動に適した電源電圧に変換する。定電圧レギュレータ60により安定化された電圧(たとえば5V)が、エタノール濃度センサ1を構成する電気回路へ供給される。
【0044】
エタノール濃度センサ1は、大きくは、スイッチトキャパシタ回路20、標準電圧発生回路30、測定値出力手段としての増幅回路40およびマイクロコンピュータ50とを備えている。
【0045】
静電容量形成部10は、図3に示すように、検知電極Gを備えている。検知電極Gは燃料通路107に臨み且つ対向して一対設けられており、燃料通路107内を燃料Fが流れると2枚の検知電極G間に燃料Fが満たされる。燃料Fが誘電体として作用して2枚の検知電極Gおよび燃料Fにより静電容量体、すなわちキャパシタ11が形成される。また、2枚の検知電極G間には燃料Fを介した電気抵抗であるリーク抵抗が存在する。このリーク抵抗は、電気回路上は検知電極Gと並列に接続されるものとして考えることができる。したがって、静電容量形成部10は、電気回路素子的には、図2に示すように、キャパシタ11およびリーク抵抗12が並列接続されたものとして扱われる。本発明の実施形態は、キャパシタ11の静電容量を測定することによりエタノール濃度を測定するものである。ところで、上述したリーク抵抗12は、水分含有量等の燃料性状によって変化するため、エタノール濃度を高精度で測定することの妨げとなる。本発明の実施形態の特徴の一つは、このリーク抵抗12の影響を受けることなくエタノール濃度を高精度で測定できる点にある。
【0046】
スイッチトキャパシタ回路20は、インバータ21、2つのスイッチ22、23を備えている。スイッチトキャパシタ回路20のA点には、マイクロコンピュータ50から周波数が異なる2種類のパルス波電圧として、周波数が第1周波数のパルス波電圧である第1周波数パルス波、および周波数が第2周波数のパルス波電圧である第2周波数パルス波が印加される。2つのスイッチ22、23は、いずれも印加されるパルス波電圧がハイレベルの時には閉状態となり、印加されるパルス波電圧がローレベルの時には開状態となる。ここで、マイクロコンピュータ50からのパルス波電圧は、スイッチ22へは直接印加されるのに対して、スイッチ23へはインバータ21を経由して印加される。これにより、スイッチ22およびスイッチ23に印加されるパルス波電圧は、周波数が同一且つ位相が反対となる。すなわち、スイッチ22に印加されるパルス波電圧がハイレベルの時にスイッチ23に印加されるパルス波電圧はローレベルであり、スイッチ22に印加されるパルス波電圧がローレベルの時にスイッチ23に印加されるパルス波電圧はハイレベルである。これにより、スイッチ22の開閉動作とスイッチ23の開閉動作とは反対のタイミングとなる。すなわち、スイッチ22が開のときにスイッチ23は閉となり、スイッチ22が閉のときにスイッチ23は開となる。以上により、マイクロコンピュータ50からスイッチトキャパシタ回路20のA点へ、第1周波数パルス波が印加されると、スイッチ22、23は第1周波数で開閉作動し、第2周波数パルス波が印加されると、スイッチ22、23は第2周波数で開閉作動する。
【0047】
標準電圧発生回路30は、オペアンプ31、抵抗32、抵抗33を備えている。標準電圧発生回路30は、定電圧レギュレータ60により調整された電源電圧を抵抗32、抵抗33の比に分圧して、その電圧をスイッチトキャパシタ回路20に印加している。
【0048】
増幅回路40は、オペアンプ41、および互いに並列接続されたゲイン抵抗としての抵抗42、44、46から構成されている。抵抗42、44、46それぞれには直列にスイッチ43、45、47が接続されている。このため、各スイッチ43、45、47の開閉状態を切換えることにより、ゲイン抵抗として機能する抵抗の抵抗値、つまり増幅回路40としてのゲインを切換えることができる。本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1では、図2に示すように、マイクロコンピュータ50は、増幅回路40の各スイッチ43、45、47に対して駆動信号を出力して各スイッチ43、45、47の開閉状態を切換えることができる。これにより、マイクロコンピュータ50は増幅回路40のゲインを切換えることができる。
【0049】
マイクロコンピュータ50は、定電圧レギュレータ60からの安定化された電圧(たとえば5V)供給を受けて作動する。マイクロコンピュータ50は、図2に示すように、増幅回路50のオペアンプ41からの出力信号が入力可能にされると接続されている。マイクロコンピュータ50は、オペアンプ41からの出力信号に基づいてエタノール濃度を算出し、それを電気信号として出力端子51へ出力する。マイクロコンピュータ50の出力端子51は、図2に示すように、エンジン100制御用のECU103に接続されている。ECU103は、エタノール濃度センサ1により算出されたエタノール濃度、およびエンジン100の作動状態に係る各種物理量信号に基づいて、エンジン100の制御パラメータを決定し、それらに基づいてエンジン100に対して駆動信号を出力する。
【0050】
次に、エタノール濃度センサ1の基本部分の動作を説明する。
【0051】
エタノール濃度センサ1が作動を開始すると、マイクロコンピュータ50は、スイッチトキャパシタ回路20のA点に周波数が第1周波数f1である第1周波数パルス波および周波数が第2周波数f2である第2周波数パルス波を交互に印加する。スイッチトキャパシタ回路20のA点に第1周波数パルス波および第2周波数パルス波先が印加されると、先に説明したように、スイッチ22、23は、A点に印加されているパルス波の周波数に同期した周期で開閉動作するとともに、スイッチ22、23の開閉動作は互いに反対となる。
【0052】
スイッチ22が開状態且つスイッチ23が閉状態であるとき、つまり図2に示すような状態においては、スイッチ23を介して標準電圧発生回路30から標準電圧Eが静電容量形成部10へ印加され、キャパシタ11に電流i1が流れるとともに、リーク抵抗12に電流i2が流れる。ここで、キャパシタ11に流れる電流i1は、電圧Eが印加された直後に立ち上がりキャパシタ11が充電完了となると電流i1は0となる。一方、キャパシタ11と並列接続されると見做されるリーク抵抗12に流れる電流i2は、標準電圧Eが静電容量形成部10へ印加されている間は一定値となる。
【0053】
上述と反対に、スイッチ22が閉状態且つスイッチ23が開状態であるときは、スイッチ23を介して標準電圧発生回路30から標準電圧Eが静電容量形成部10へ印加されず、スイッチ22を介して充電状態にあったキャパシタ11から電流i1が接地側へ流れる。この電流i1の流れる方向は、上述したスイッチ22が開状態且つスイッチ23が閉状態である場合とは反対となる。キャパシタ11の放電が終了すると、電流i1は0になる。一方、リーク抵抗12に流れる電流i2は0である。
【0054】
次に、上に説明したように第1周波数f1あるいは第2周波数f2でスイッチ22、23が切り換えられたときのオペアンプ31の出力電圧であるB点の電圧Vbについて説明する。
【0055】
先ず、電流i2の平均値は、以下の数1の式で表される。なお、数1中においてRpはリーク抵抗12の抵抗値を表す。
【0056】
(数1)
i2=0.5×E/Rp
また、キャパシタ11に蓄えられる電荷ΔQは、キャパシタ11の静電容量をCpとすると、以下の数2の式で表される。
【0057】
(数2)
ΔQ=Cp×E
電流i1の平均値は、電荷ΔQの時間微分であるため、数2を用いて、以下の数3の式で表される。なお、数3中において、Tは周期であり周波数fの逆数(1/f)である。
【0058】
(数3)
i1=ΔQ/T=Cp×E/T=Cp×T×f
ここで、数3を見ると明らかなように、キャパシタ11から放電される電流i1の大きさは、スイッチトキャパシタ回路20のA点に印加されるパルス波の周波数fに比例している。
【0059】
B点の電圧Vbは、数1、数3を用いて、以下の数4の式で表される。なお、数4中においてRgは、抵抗36の抵抗値を表す。
【0060】
(数4)
Vb=E+Rg×(i1+i2)=E+Rg×{(Cp×E/T)+0.5×E/Rp}=E×{1+(0.5×Rg/Rp)+Rg×Cp×f}
ここで、数4を見れば明らかなように、エタノール濃度センサ1の濃度検出機能部材としての静電容量形成部10からの出力信号レベルである電圧Vbを表す式中に、静電容量形成部10に含まれるリーク抵抗12の抵抗値であるRp含まれている。リーク抵抗12の抵抗値Rpは、ガソリンに含まれる導電性の不純物の割合によって変化し、Vbに及ぼす影響度合いが変化し、エタノール濃度測定精度を悪化させる。
【0061】
そこで、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、スイッチトキャパシタ回路20における静電容量形成部10への充電・放電の周期T、すなわち、スイッチ22、23の開閉動作の周波数fを一種類に固定するのではなく、マイクロコンピュータ50により、周波数が第1周波数f1である第1周波数パルス波、および周波数が第2周波数f2である第2周波数パルス波を、交互にスイッチトキャパシタ回路20へ印加して、スイッチ22、23の開閉動作の周波数を周波数f1、周波数f2に交互に切換え、それにより、B点の電圧Vbを各周波数f1、f2に対応して2種類得るようにしている。
【0062】
エタノール濃度センサ1の作動中においてスイッチ22、23が周波数f1で開閉動作しているときのB点の電圧であるVbf1は、以下の数5で表される。
【0063】
(数5)
Vbf1=E×{1+(0.5×Rg/Rp)+Rg×Cp×f1}
また、スイッチ22、23が周波数f2で開閉動作しているときのB点の電圧であるVf2は、以下の数6で表される。
【0064】
(数6)
Vbf2=E×{1+(0.5×Rg/Rp)+Rg×Cp×f2}
そして、Vf1とVf2との差を取ると、それは、以下の数7で表される。
【0065】
(数7)
Vbf1−Vbf2=E×(f1−f2)×Rg×Cp
数7を見ると明らかなように、B点の電圧Vb、すなわちエタノール濃度に係る出力信号を表す式中からリーク抵抗12の抵抗値Rpが消去される。これにより、エタノール濃度センサ1のエタノール濃度検出精度低下に影響を及ぼす要因を廃除することができる。
【0066】
キャパシタ11部において検出されスイッチトキャパシタ回路20において電気信号に変換されたエタノール濃度としてのB点の電圧Vbは、増幅回路40においてマイクロコンピュータ50で処理可能な適正な電圧まで増幅されて、図2中のH点の電圧V50としてマイクロコンピュータ50へ入力される。
【0067】
ところで、スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbの大きさはエタノール濃度に正比例する。詳しくは、図4に示すように、エタノール濃度が或る値X以上である領域では、電圧Vbとエタノール濃度との関係はほぼ直線性を有している。一方、エタノール濃度が或る値Xより低い領域においては、両者の関係は図4に示すように指数関数的となっている。すなわち、エタノール濃度の低い領域では、エタノール濃度変化量に対応する電圧変化量が直線領域に比べて大幅に小さくなる。言い換えると、分解能が小さくなっている。このため、エタノール濃度がXより低い領域においては、B点の電圧Vbに基づいて高精度でエタノール濃度を算出することが困難となっている。すなわち、上述したようにスイッチトキャパシタ回路20を2種類の周波数のパルス波で駆動してエタノール濃度センサ1のエタノール濃度検出精度低下に影響を及ぼす要因を廃除できたものの、エタノール濃度の低い領域においては、未だ高精度でエタノール濃度を算出することは困難である。
【0068】
従来の液体性状検出装置では、増幅回路の増幅率であるゲインを、エタノール濃度検出信号が最大となるとき、つまりエタノール濃度が最高であるときにもマイクロコンピュータ50の許容入力電圧を超えないように設定している。そのため、エタノール濃度が低いときでも増幅回路からの出力電圧が高くなるように増幅回路のゲインを上げると、今度は、エタノール濃度が高いときに増幅回路からの出力電圧がマイクロコンピュータの適正電圧を超えてしまい、正確なエタノール濃度算出ができなくなる。
【0069】
そこで、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1では、増幅回路40のゲインを固定とせずに大小切換え可能とし、B点の電圧Vbの値に応じてゲインを切換えている。具体的には、図4に示すように、電圧Vbが、直線領域と指数領域との境目における電圧Vbである電圧P未満の場合はゲインをLとし、電圧Vbが電圧P以上電圧Q未満の場合はゲインをMとし、電圧Vbが電圧Q以上の場合はゲインをNとしている。ここで、L>M>Nである。したがって、電圧Vb、すなわちエタノール濃度の検出信号が小さくなるに連れて、増幅回路40のゲインは増大するように切換えられている。ゲインの切換えは、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、マイクロコンピュータ50が、Vf1およびVf2との少なくとも一方を取り込み、その値に基づいてゲインを決定し、増幅回路40へ駆動信号を出力してスイッチ43、45、47の開閉状態を切換えて決定したゲインが得られるようにしている。詳しくは、図2に示すように、スイッチ47を閉且つスイッチ45および43を開として抵抗46を選択すると、ゲインはLとなる。スイッチ45を閉且つスイッチ47および43を開として抵抗44を選択すると、ゲインはMとなる。スイッチ43を閉且つスイッチ47および45を開として抵抗42を選択すると、ゲインはNとなる。このように、電圧Vb、つまりVf1およびVf2の少なくとも一方に基づいてゲインを切換えたときの、マイクロコンピュータ50内におけるエタノール濃度と電圧V50との関係を示すグラフを図5に示す。図5中において、ゲインをNに固定したときの電圧V50を二点鎖線で示す。一方、電圧Vbの値に応じてゲインを切換えたときのH点の電圧V50を実線で示す。電圧Vbが、0<Vb<Pの場合は、図5に示すように、増幅回路40のゲインはLが選択されて電圧V50の値は実線で示すようになる。電圧Vbが、P≦Vb<Qの場合は、図5に示すように、増幅回路40のゲインはMが選択されて電圧V50の値は実線で示すようになる。電圧Vbが、Q≦Vbの場合は、図5に示すように、増幅回路40のゲインはNが選択されて電圧V50の値は二点鎖線で示すようになる。このように、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1によれば、エタノール濃度変化に対応する電圧V50の変化が小さい領域、つまり電圧Vbが0<Vb<Pである領域において、ゲインを増大させて電圧V50を増大させることで分解能を大きくし、それにより正確なエタノール濃度算出を可能とすることができる。
【0070】
なお、以上説明した本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1では、増幅回路40のゲインを3段階に切換えているが、2段階、あるいは4段階以上としてもよい。
【0071】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1は、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1に対して、次の2点を変更したものである。
【0072】
第1点は、増幅回路40のゲインを、図6に示すように、固定(一種類)としたことである。
【0073】
第2点は、マイクロコンピュータ50からスイッチトキャパシタ回路20のA点に印加する周波数が異なる2種類のパルス波電圧の周波数の差である差周波数Δf、すなわち第1周波数f1と第2周波数f2の差を複数種類設定し、状況に応じて切換えるようにしたことである。
【0074】
以下に、本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1の特徴である上述の第2点の構成について説明する。
【0075】
数7に示す式である、Vf1−Vf2=E×(f1−f2)×Rg×Cp、を見ると明らかなように、スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbの差電圧、つまりエタノール濃度検出信号は、(f1−f2)、すなわち第1周波数f1と第2周波数f2の差である差周波数Δfに比例している。すなわち、差周波数Δfが増大するとエタノール濃度検出信号レベルも増大する。そこで、エタノール濃度と、エタノール濃度としてのB点の電圧Vbとの関係が指数関数的になる低エタノール濃度領域においても高精度でエタノール濃度を検出するために、本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1では、増幅回路40のゲインを増大させる替わりに、第1周波数f1と第2周波数f2の差である差周波数Δfを増大させている。具体的には、図4に示すように、電圧Vbが、直線領域と指数領域との境目における電圧Vbである電圧P未満のときは、図7に示す表中において、0<Vb<P欄の周波数である第1周波数f1=500kHz、第2周波数f2=100kHzが選択され、Δf=400kHzとなる。電圧Vbが電圧P以上電圧Q未満の場合は、図7に示す表中において、P≦Vb<Qの欄の周波数である第1周波数f1=500kHz、第2周波数f2=300kHzが選択され、Δf=200kHzとなる。電圧Vbが電圧Q以上の場合は、図7に示す表中において、Q≦Vb欄の周波数である第1周波数f1=500kHz、第2周波数f2=400kHzが選択され、Δf=100kHzとなる。Δfの切換えは、本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、マイクロコンピュータ50が、Vf1およびVf2との少なくとも一方を取り込み、その値に基づいて図7の表中から第1周波数f1および第2周波数f2を決定し、スイッチトキャパシタ回路20のA点へそれぞれの周波数パルス波を印加する。
【0076】
以上説明した処理方法を実行することにより、マイクロコンピュータ50内におけるエタノール濃度と電圧V50との関係は、図8に示すような特性となる。図8中において、二点鎖線は、Δf=100kHz固定で処理した時の特性を示す。このように、本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1によれば、エタノール濃度変化に対応する電圧V50の変化が小さい領域、つまり電圧Vbが0<Vb<Pである領域において、第1周波数f1と第2周波数f2の差である差周波数Δfを増大させてエタノール濃度変化に対応する電圧V50を増大させ、それにより分解能を大きくして高精度なエタノール濃度算出を可能とすることができる。
【0077】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1は、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1に対して、次の2点を変更したものである。
【0078】
第1点は、増幅回路40のゲインを、図9に示すように、固定(一種類)としたことである。
【0079】
第2点は、スイッチトキャパシタ回路20に印加する標準電圧、つまり標準電圧発生回路30で調整されて出力される電圧を複数種類設定し、状況に応じて切換えるようにしたことである。
【0080】
以下に、本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1の特徴である上述の第2点の構成について説明する。
【0081】
数7に示す式である、Vf1−Vf2=E×(f1−f2)×Rg×Cp、を見ると明らかなように、スイッチトキャパシタ回路20のB点の電圧Vbの差電圧、つまりエタノール濃度検出信号は、E、すなわち標準電圧に比例している。このため、標準電圧Eを高くするとエタノール濃度検出信号レベルも増大する。そこで、エタノール濃度と、エタノール濃度としてのB点の電圧Vbとの関係が指数関数的になる低エタノール濃度領域においても高精度でエタノール濃度を検出するために、本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1では、増幅回路40のゲインを増大させる替わりに、標準電圧Eを増大させている。具体的には、図4に示すように、電圧Vbが、直線領域と指数領域との境目における電圧Vbである電圧P未満のときは、図10に示す表中において、0<Vb<P欄の標準電圧E=E1が選択される。電圧Vbが電圧P以上電圧Q未満の場合は、図10に示す表中において、P≦Vb<Qの欄の標準電圧E=E2が選択される。電圧Vbが電圧Q以上の場合は、図10に示す表中において、Q≦Vb欄の標準電圧E=E3が選択される。ここで、E1>E2>E3である。標準電圧Eの切換えは、本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、マイクロコンピュータ50が、Vf1およびVf2との少なくとも一方を取り込み、その値に基づいて図10の表中から標準電圧Eを決定し標準電圧発生回路30のスイッチ37へ駆動信号を出力し、決定された標準電圧Eに対応した分圧抵抗器である抵抗32、34、35のいずれかにスイッチ37を選択接続させている。
【0082】
以上説明したように標準電圧EをVf1およびVf2との少なくとも一方に基づいて変更することにより、マイクロコンピュータ50内におけるエタノール濃度と電圧V50との関係は、図11に示すような特性となる。図11中において、二点鎖線は、標準電圧E=E3固定で処理した時の特性を示す。このように、本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1によれば、エタノール濃度変化に対応する電圧V50の変化が小さい領域、つまり電圧Vbが0<Vb<Pである領域において、標準電圧Eを増大させてエタノール濃度変化に対応する電圧V50を増大させ、それにより分解能を大きくして高精度なエタノール濃度算出を可能とすることができる。
【0083】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるエタノール濃度センサ1は、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1に対して、次のような機能を追加したものである。
【0084】
本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1では、エタノール濃度検出精度向上のために、マイクロコンピュータ50が、エタノール濃度の検出信号である電圧Vbの大きさに応じて、増幅回路40のゲインを切換えている。本発明の第4実施形態によるエタノール濃度センサ1は、上述したゲイン切換えに加えて、ゲインの切換え機能が正常であるかどうかを判定するための、ゲイン切換え判定機能を備えたものである。このゲイン切換え判定処理について、主に図12に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、ゲイン切換え判定処理は、主にマイクロコンピュータ50に予め格納されたプログラムにより実行される。
【0085】
なお、本発明の第4実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、エタノール濃度検出処理およびゲイン切換え機能判定処理は同一頻度で実行されている。たとえば、エタノール濃度検出処理およびゲイン切換え機能判定処理が交互に実行されている。エタノール濃度検出処理は、先に説明した本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1の場合と全く同一である。
【0086】
自動車の運転者によりイグニッションスイッチIGがONされるとエタノール濃度センサ1において、ゲイン切換え機能判定処理が開始される。同処理が開始されると、マイクロコンピュータ50は、先ず、ステップ200の初期化処理を実行する。
【0087】
続いて、マイクロコンピュータ50は、ステップ201において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、ゲインを選択可能な3種類のゲインのうちの最小であるNとして算出してVbとする。
【0088】
続いて、ステップ202において、Vbの大きさを判定する。この判定は、図13の表に基づいて行われる。すなわち、0<Vb≦εを領域I、ε<Vb≦φを領域II、φ<Vbを領域IIIと判定する。ここで、ステップ201において、出力電圧の算出に用いるゲインを選択可能な3種類のゲインのうちの最小であるNとしているので、算出されたVbは、必ず検出範囲であるダイナミックレンジ内に入ることになる。これにより、ステップ202でのVbの判定が可能となる。
【0089】
ステップ202におけるVbの判定の結果、領域Iであるときは、続くステップ203の処理として、スイッチトキャパシタ回路20においてスイッチ22、23の開閉周波数f1、f2の差周波数Δfを、通常用いられている差周波数Jよりも高い差周波数Hとする。ステップ202におけるVbの判定の結果、領域IIであるときは、続くステップ204の処理として、スイッチトキャパシタ回路20においてスイッチ22、23の開閉周波数f1、f2の差周波数Δfを、通常用いられている差周波数Jとする。ステップ202におけるVbの判定の結果、領域IIIであるときは、続くステップ205の処理として、スイッチトキャパシタ回路20においてスイッチ22、23の開閉周波数f1、f2の差周波数Δfを、通常用いられている差周波数Jよりも低い差周波数Kとする。
【0090】
続いて、ステップ206において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、ゲインをNとし、差周波数ΔfをH、J、Kの中から選択された値として算出してVbとする。
【0091】
続いて、ステップ207において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、ゲインをMとし、差周波数ΔfをH、J、Kの中から選択された値として算出してVbとする。
【0092】
続いて、ステップ208において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、ゲインLとし、差周波数ΔfをH、J、Kの中から選択された値として算出してVbとする。
【0093】
ところで、先のステップ201においては、出力電圧の算出に用いるゲインを選択可能な3種類のゲインのうちの最小であるNとしている。これにより、算出されたVbは、必ず検出範囲であるダイナミックレンジ内に入ることになるので、ステップ202におけるVbの大きさの判別を正確に行うことができる。さらに、ステップ202におけるVbの大きさの判別結果に基づいて、ステップ203〜ステップ205のいずれかで差周波数Δfを選択し、ステップ206、207、208で算出されるVb、VbおよびVbの大きさを検出範囲であるダイナミックレンジ内に納まり且つできるだけ大きくしてより高精度の判定が行えるようにしている。
【0094】
続いて、ステップ209において、前のステップで算出されたVbとVbとの差の絶対値と基準値S1との大小関係を判定する。
【0095】
続いて、ステップ210において、前のステップで算出されたVbとVbとの差の絶対値と基準値S2との大小関係を判定する。
【0096】
ステップ209における判定の結果、VbとVbとの差の絶対値が基準値S1以上であるときは、ステップ210へ進み、VbとVbとの差の絶対値と基準値S2との大小関係を判定する。VbとVbとの差の絶対値が基準値S2以上であるときは、ステップ211へ進み、ゲイン切換え機能が正常であると判定する。一方、VbとVbとの差の絶対値が基準値S1以下、または、VbとVbとの差の絶対値が基準値S2以下であるときは、ステップ212へ進み、ゲイン切換え機能が異常であると判定し、続いてステップ213へ進み、ゲイン切換え機能が異常な場合に採るべき処置を行う。
【0097】
ここで、ステップ209で実行されるVbとVbとの差の絶対値と基準値S1との比較、および、ステップ210で実行されるVbとVbとの差の絶対値と基準値S2との比較の意味について説明する。ステップ208までの処理で、選択可能な三種類のゲインL、M、N(L>M>N)それぞれを用いて算出されたエタノール濃度としての三種類の出力電圧Vb、Vb、Vbが得られる。ステップ202〜ステップ205では、スイッチトキャパシタ回路20においてスイッチ22、23の開閉周波数f1、f2の差周波数Δfが、最大のゲインLを用いてVbを算出しても、Vbの値が飽和しないように、言い換えると検出範囲であるダイナミックレンジ内に入るように選択されている。したがって、三種類の出力電圧Vb、Vb、Vbはいずれも実質的な真の値である。増幅手段40におけるゲイン切換え機能が正常であるならば、得られた三種類の各出力電圧の大きさは、ゲインL、M、Nで決まる大きさになる。つまり、Vb:Vb:Vbが、ほぼ、L:M:Nとなる。一方、増幅手段40におけるゲイン切換え機能に何らかの異常がある場合は、Vb:Vb:Vbは、L:M:Nにならない。以上から、VbとVbとの差の絶対値が、ゲインN、Mに基づいて決まる基準値S1にほぼ等しく、且つVbとVbとの差の絶対値が、ゲインM、Lに基づいて決まる基準値S2にほぼ等しいならば、増幅手段40におけるゲイン切換え機能が正常であると判定することができる。
【0098】
以上説明した本発明の第4実施形態によるエタノール濃度センサ1によれば、エタノール濃度変化に対応する電圧V50の変化が小さい領域、つまり電圧Vbが0<Vb<Pである領域において、より大きいゲインに切換えて電圧V50を増大させることで分解能を大きくし、それにより正確なエタノール濃度算出を可能とすることができる、という効果が得られるのに加えて、ゲイン切換え機能が正常であるかどうかを判定することができる。
【0099】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるエタノール濃度センサ1は、本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1に対して、次のような機能を追加したものである。
【0100】
本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1では、エタノール濃度検出精度向上のために、マイクロコンピュータ50が、エタノール濃度の検出信号である電圧Vbの大きさに応じて、スイッチトキャパシタ回路20のA点に印加する周波数が異なる2種類のパルス波電圧の周波数の差である差周波数Δfを切換えている。本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1では、Δfは、400kHz、200kHz、および100kHzの3種類が設定されている。本発明の第5実施形態によるエタノール濃度センサ1は、上述した差周波数Δf切換えに加えて、差周波数Δfの切換え機能が正常であるかどうかを判定するための、差周波数Δf切換え判定機能を備えたものである。この差周波数Δf切換え判定処理について、主に図14に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、差周波数Δf切換え判定処理は、主にマイクロコンピュータ50に予め格納されたプログラムにより実行される。
【0101】
なお、本発明の第5実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、エタノール濃度検出処理および差周波数切換え機能判定処理は同一頻度で実行されている。たとえば、エタノール濃度検出処理および差周波数切換え機能判定処理が交互に実行されている。エタノール濃度検出処理は、先に説明した本発明の第2実施形態によるエタノール濃度センサ1の場合と全く同一である。
【0102】
自動車の運転者によりイグニッションスイッチIGがONされるとエタノール濃度センサ1において、ゲイン切換え機能判定処理が開始される。同処理が開始されると、マイクロコンピュータ50は、先ず、ステップ300の初期化処理を実行する。
【0103】
続いて、マイクロコンピュータ50は、ステップ301において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、選択可能な3種類の差周波数Δfのうちの最小であるΔf=100kHzとして算出してVb100とする。
【0104】
続いて、ステップ302において、ステップ301で算出されたVb100の大きさを判定する。この判定は、図15の表に基づいて行われる。すなわち、0<Vb100≦εを領域I、ε<Vb100≦φを領域II、φ<Vb100を領域IIIと判定する。
【0105】
ステップ302におけるVb100の判定の結果、領域Iであるときは、続くステップ303の処理として、出力電圧Vbの算出に用いられているゲインを、通常用いられているゲインβよりも高いゲインγとする。ステップ302におけるVb100の判定の結果、領域IIであるときは、続くステップ304の処理として、出力電圧Vbの算出に用いられているゲインを、通常用いられているゲインβとする。ステップ302におけるVb100の判定の結果、領域IIIであるときは、続くステップ305の処理として、出力電圧Vbの算出に用いられているゲインを、通常用いられているゲインβよりも低いゲインαとする。
【0106】
続いて、ステップ306において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、差周波数Δfを100kHzとし、ゲインをγ、β、αの中から選択された値として算出してVb100とする。
【0107】
続いて、ステップ307において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、差周波数Δfを200kHzとし、ゲインをγ、β、αの中から選択された値として算出してVb200とする。
【0108】
続いて、ステップ308において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、差周波数Δfを400kHzとし、ゲインをγ、β、αの中から選択された値として算出してVb400とする。
【0109】
ところで、先のステップ301においては、出力電圧の算出に用いる差周波数Δfを選択可能な3種類の差周波数Δfをのうちの最小である100kHzとしている。これにより、算出されたVbは、必ず検出範囲であるダイナミックレンジ内に入ることになるので、ステップ302におけるVb100の大きさの判別を正確に行うことができる。さらに、ステップ302におけるVb100の大きさの判別結果に基づいて、ステップ303〜ステップ305のいずれかでゲインを選択し、ステップ306、307、308で算出されるVb100、Vb200およびVb400の大きさを検出範囲であるダイナミックレンジ内に納まり且つできるだけ大きくしてより高精度の判定が行えるようにしている。
【0110】
続いて、ステップ309において、前のステップで算出されたVb100とVb200との差の絶対値と基準値S1との大小関係を判定する。
【0111】
続いて、ステップ310において、前のステップで算出されたVb200とVb400との差の絶対値と基準値S2との大小関係を判定する。
【0112】
ステップ309における判定の結果、Vb100とVb200との差の絶対値が基準値S1以上であるときは、ステップ310へ進み、Vb200とVb400との差の絶対値と基準値S2との大小関係を判定する。Vb200とVb400との差の絶対値が基準値S2以上であるときは、ステップ311へ進み、差周波数Δf切換え機能が正常であると判定する。一方、Vb100とVb200との差の絶対値が基準値S1以下、または、Vb200とVb400との差の絶対値が基準値S2以下であるときは、ステップ312へ進み、差周波数Δf切換え機能が異常であると判定し、続いてステップ313へ進み、差周波数Δf切換え機能が異常な場合に採るべき処置を行う。
【0113】
ここで、ステップ309で実行されるVb100とVb200とのとの差の絶対値と基準値S1との比較の意味、およびステップ310で実行されるVb200とVb400とのとの差の絶対値と基準値S2との比較の意味について説明する。ステップ308までの処理で、選択可能な三種類の差周波数Δfである100kHz、200kHz、400kHzそれぞれを用いて算出されたエタノール濃度としての三種類の出力電圧Vb100、Vb200、Vb400が得られる。ステップ302〜ステップ305では、ゲインが、最大の差周波数である400kHzを用いてVbを算出しても、Vbの値が飽和しないように、言い換えると検出範囲であるダイナミックレンジ内に入るように選択されている。したがって、三種類の出力電圧Vb100、Vb200、Vb400はいずれも実質的な真の値である。マイクロコンピュータ50における差周波数切換え機能が正常であるならば、得られた三種類の各出力電圧の大きさは、差周波数Δfである100kHz、200kHz、400kHzで決まる大きさになる。つまり、Vb100:Vb200:Vb400が、ほぼ、100kHz:200kHz:400kHzとなる。一方、マイクロコンピュータ50における差周波数切換え機能に何らかの異常がある場合は、Vb100:Vb200:Vb400は、100kHz:200kHz:400kHzにならない。以上から、Vb100とVb200との差の絶対値が、差周波数100kHz、200kHzに基づいて決まる基準値S1にほぼ等しく、且つVb200とVb400との差の絶対値が、差周波数200kHz、400kHzに基づいて決まる基準値S2にほぼ等しいならば、マイクロコンピュータ50における差周波数切換え機能が正常であると判定することができる。
【0114】
以上説明した本発明の第5実施形態によるエタノール濃度センサ1によれば、エタノール濃度変化に対応する電圧V50の変化が小さい領域、つまり電圧Vbが0<Vb<Pである領域において、より大きい差周波数Δfに切換えて電圧V50を増大させることで分解能を大きくし、それにより正確なエタノール濃度算出を可能とすることができる、という効果が得られるのに加えて、差周波数切換え機能が正常であるかどうかを判定することができる。
【0115】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態によるエタノール濃度センサ1は、本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1に対して、次のような機能を追加したものである。
【0116】
本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1では、エタノール濃度検出精度向上のために、マイクロコンピュータ50が、エタノール濃度の検出信号である電圧Vbの大きさに応じて、スイッチトキャパシタ回路20に印加する電圧である標準電圧Eを切換えている。本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1では、標準電圧Eは、E1、E2、およびE3(E1>E2>E3)の3種類が設定されている。本発明の第6実施形態によるエタノール濃度センサ1は、上述した標準電圧E切換えに加えて、標準電圧発生手段30における標準電圧設定機能およびマイクロコンピュータ50における標準電圧切換え機能が正常であるかどうかを判定するための、標準電圧設定・切換え判定機能を備えたものである。この標準電圧設定・切換え判定処理について、主に図16に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、標準電圧設定・切換え判定処理は、主にマイクロコンピュータ50に予め格納されたプログラムにより実行される。
【0117】
なお、本発明の第6実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、エタノール濃度検出処理および標準電圧設定・切換え機能判定処理は同一頻度で実行されている。たとえば、エタノール濃度検出処理および標準電圧設定・切換え機能判定処理が交互に実行されている。エタノール濃度検出処理は、先に説明した本発明の第3実施形態によるエタノール濃度センサ1の場合と全く同一である。
【0118】
自動車の運転者によりイグニッションスイッチIGがONされるとエタノール濃度センサ1において、標準電圧設定・切換え機能判定処理が開始される。同処理が開始されると、マイクロコンピュータ50は、先ず、ステップ400の初期化処理を実行する。
【0119】
続いて、マイクロコンピュータ50は、ステップ401において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、選択可能な3種類の標準電圧Eのうちの最小であるE3として算出してVbE3とする。
【0120】
続いて、ステップ402において、ステップ401で算出されたVbE3の大きさを判定する。この判定は、図17の表に基づいて行われる。すなわち、0<VbE3≦εを領域I、ε<VbE3≦φを領域II、φ<VbE3を領域IIIと判定する。
【0121】
ステップ402におけるVbE3の判定の結果、領域Iであるときは、続くステップ403の処理として、出力電圧Vbの算出に用いられているゲインを、通常用いられているゲインβよりも高いゲインγとする。ステップ402におけるVbE3の判定の結果、領域IIであるときは、続くステップ404の処理として、出力電圧Vbの算出に用いられているゲインを、通常用いられているゲインβとする。ステップ402におけるVbE3の判定の結果、領域IIIであるときは、続くステップ405の処理として、出力電圧Vbの算出に用いられているゲインを、通常用いられているゲインβよりも低いゲインαとする。
【0122】
続いて、ステップ406において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを標準電圧をE1とし、ゲインをγ、β、αの中から選択された値として算出してVbE1とする。
【0123】
続いて、ステップ407において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、標準電圧をE2とし、ゲインをγ、β、αの中から選択された値として算出してVbE2とする。
【0124】
続いて、ステップ408において、電気信号に変換されたエタノール濃度としての電圧、すなわち出力電圧であるVbを、標準電圧をE3とし、ゲインをγ、β、αの中から選択された値として算出してVbE3とする。
【0125】
ところで、先のステップ401においては、出力電圧の算出に用いる標準電圧Eを選択可能な3種類の標準電圧Eをのうちの最小であるE3としている。これにより、算出されたVbは、必ず検出範囲であるダイナミックレンジ内に入ることになるので、ステップ402におけるVbE3の大きさの判別を正確に行うことができる。さらに、ステップ402におけるVbE3の大きさの判別結果に基づいて、ステップ403〜ステップ405のいずれかでゲインを選択し、ステップ406、407、408で算出されるVbE1、VbE2およびVbE3の大きさを検出範囲であるダイナミックレンジ内に納まり且つできるだけ大きくしてより高精度の判定が行えるようにしている。
【0126】
続いて、ステップ409において、前のステップで算出されたVbE1とVbE2との差の絶対値と基準値S1との大小関係を判定する。
【0127】
続いて、ステップ410において、前のステップで算出されたVbE2とVbE3との差の絶対値と基準値S2との大小関係を判定する。
【0128】
ステップ409における判定の結果、VbE1とVbE2との差の絶対値が基準値S1以上であるときは、ステップ410へ進み、VbE2とVbE3との差の絶対値と基準値S2との大小関係を判定する。そして、VbE2とVbE3との差の絶対値が基準値S2以上であるときは、ステップ411へ進み、標準電圧設定・切換え機能が正常であると判定する。一方、VbE1とVbE2との差の絶対値が基準値S1以下、または、VbE2とVbE3との差の絶対値が基準値S2以下のときは、ステップ412へ進み、標準電圧設定・切換え機能が異常であると判定し、続いてステップ413へ進み、標準電圧設定・切換え機能が異常な場合に採るべき処置を行う。
【0129】
ここで、ステップ409で実行されるVbE1とVbE2との差の絶対値と基準値S1との比較の意味、および、ステップ410で実行されるVbE2とVbE3との差の絶対値と基準値S2との比較の意味について説明する。ステップ408までの処理で、選択可能な三種類の標準電圧E1、E2、E3それぞれを用いて算出されたエタノール濃度としての三種類の出力電圧VbE1、VbE2、VbE3が得られる。ステップ402〜ステップ405では、ゲインが、最大の標準電圧であるE1を用いてVbを算出しても、Vbの値が飽和しないように、言い換えると検出範囲であるダイナミックレンジ内に入るように選択されている。したがって、三種類の出力電圧VbE1、VbE2、VbE3はいずれも実質的な真の値である。標準電圧発生手段30における標準電圧設定機能およびマイクロコンピュータ50における標準電圧切換え機能が正常であるならば、得られた三種類の各出力電圧の大きさは、標準電圧E1、E2、E3で決まる大きさになる。つまり、VbE1:VbE2:VbE3が、ほぼ、E1:E2:E3となる。一方、標準電圧発生手段30における標準電圧設定機能およびマイクロコンピュータ50における標準電圧切換え機能の少なくとも一方に何らかの異常がある場合は、VbE1:VbE2:VbE3は、E1:E2:E3にならない。以上から、VbE1とVbE2との差の絶対値が、標準電圧E1、E2に基づいて決まる基準値S1にほぼ等しく、且つVbE2とVbE3との差の絶対値が、標準電圧E2、E3に基づいて決まる基準値S2にほぼ等しいならば、標準電圧発生手段30における標準電圧設定機能およびマイクロコンピュータ50における差周波数切換え機能が正常であると判定することができる。
【0130】
以上説明した本発明の第6実施形態によるエタノール濃度センサ1によれば、エタノール濃度変化に対応する電圧V50の変化が小さい領域、つまり電圧Vbが0<Vb<Pである領域において、より大きい標準電圧に切換えて電圧V50を増大させることで分解能を大きくし、それにより正確なエタノール濃度算出を可能とすることができる、という効果が得られるのに加えて、標準電圧設定・切換え機能が正常であるかどうかを判定することができる。
【0131】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態によるエタノール濃度センサ1は、本発明の第1〜第6実施形態のいずれか一つによるエタノール濃度センサ1に対して、次のような構成を追加したものである。すなわち、図18に示すように、スイッチトキャパシタ回路20に対して、電極11、つまり静電容量形成部10に並列に電気容量素子としてのキャパシタ13を接続するとともに、静電容量形成部10とキャパシタ13との電気的接続・遮断を切換える切換え手段としてのスイッチ14を設けている。マイクロコンピュータ50は、エタノール濃度の検出信号である電圧Vbの大きさに応じて、スイッチ14の開閉を切換えている。なお、図18は、本発明の第1実施形態によるエタノール濃度センサ1に適用した場合の構成を説明する回路図である。
【0132】
上述のように構成された、本発明の第7実施形態によるエタノール濃度センサ1の作動、効果について説明する。
【0133】
静電容量形成部10の静電容量は、燃料中のエタノール濃度に正比例して減少、増大する。このため、エタノール濃度が低いときは静電容量形成部の静電容量が小さくなり、エタノール濃度の検出信号である電圧Vbが低くなる。また、並列接続された複数個のキャパシタの合成容量は、並列接続された各キャパシタの容量の総和となる。したがって、静電容量形成部10にキャパシタ13を並列接続すると、スイッチトキャパシタ回路20においてエタノール濃度検出体としての静電容量が増大することになる。
【0134】
本発明の第7実施形態によるエタノール濃度センサ1においては、エタノール濃度の検出信号である電圧Vbが低いとき、すなわち、エタノール濃度が低いときには、マイクロコンピュータ50はスイッチ14を閉状態にして、静電容量形成部10にキャパシタ13を並列接続する。これにより、エタノール濃度検出部としての静電容量形成部の見かけの静電容量を増大させてエタノール濃度変化に対する検出電圧Vbの変化を大きくし、検出電圧Vbとエタノール濃度との関係を線形性として分解能を高めて、エタノール濃度検出精度を高めることができる。接続されたキャパシタ13の静電容量は既知であるので、検出電圧Vbおよびキャパシタ13の静電容量に基づいてエタノール濃度に対応した静電容量形成部10の実質的静電容量は容易に算出できる。これにより、エタノール濃度が低い領域においても高精度でエタノール濃度を検出することができる。また、エタノール濃度が高くなるに連れて検出電圧Vbも高くなるが、検出電圧Vbが所定の値、たとえば検出範囲であるダイナミックレンジの80%値に達すると、マイクロコンピュータ50はスイッチ14を開状態にして、静電容量形成部10へのキャパシタ13の並列接続を遮断する。これにより、マイクロコンピュータ50は静電容量形成部10のみの静電容量に基づいてエタノール濃度を算出するが、もともと静電容量形成部10のみの静電容量が大きくなっているので、十分高精度でエタノール濃度を検出できる。
【0135】
以上説明したように、第7実施形態によるエタノール濃度センサ1によれば、エタノール濃度が低いときにも高精度でエタノール濃度を検出することができる。
【0136】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明による液体性状検出装置をエタノール濃度を測定するエタノール濃度センサ1に適用した場合を例に説明してきたが、検出対象をエタノールに限る必要はなく、他の液体成分、たとえばメタノール等としてもよい。その場合も、各実施形態の場合と同様に高精度で濃度を測定することができる。
【0137】
また、本発明は以上説明した各実施形態に何ら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、様々な形態で実施可能することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 エタノール濃度センサ(液体性状検出装置)
10 静電容量形成部
11 キャパシタ(電極)
12 リーク抵抗
13 キャパシタ(電気容量素子)
14 スイッチ(切換え手段)
20 スイッチトキャパシタ回路(スイッチ手段)
21 インバータ
22 スイッチ(スイッチ手段)
23 スイッチ(スイッチ手段)
30 標準電圧発生手段
31 オペアンプ
32、33、34、35、36 抵抗
37 スイッチ
40 増幅手段(測定値出力手段)
41 オペアンプ
42、44、46 ゲイン抵抗
43、45、47 スイッチ
50 マイクロコンピュータ(動作信号出力手段)
51 出力端子
60 定電圧レギュレータ
100 エンジン
101 フューエルレール
102 インジェクタ
103 ECU
104 燃料タンク
105 フューエルポンプ
106 フューエルフィルタ
107 燃料配管
A、B、H 点
Cp 静電容量
D バッテリ
E、E1、E2、E3 標準電圧
F 燃料(液体)
G 検知電極
f1 第1周波数
f2 第2周波数
H 差周波数
IG イグニッションスイッチ
i1、i2 電流
J、K 差周波数
L、M、N ゲイン
P、Q 電圧
Rg 抵抗値
Rp リーク抵抗値
S 基準値
V、Vb、Vf1、Vf2、V50 電圧
α、β、γ ゲイン
ε、φ 電圧
Δf 差周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
前記電極に印加される電圧である標準電圧を発生する標準電圧発生手段と、
前記標準電圧を前記電極に印加して前記電極に電荷を蓄えさせること、および前記電極を接地して前記電荷を放電させること、のどちらか一方の状態に切換えるスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を所定周期.で切り換え作動させるために、前記スイッチ手段に対して所定周波数の動作信号を出力する動作信号出力手段と、
前記電極に標準電圧を印加したときの前記電極に発生する電圧である検出信号が入力されると該検出信号を処理して出力する信号処理手段と、を備え、
前記動作信号出力手段は、第1の周期で前記スイッチ手段を切り換え作動させるための第1周波数の第1動作信号、および、第2の周期で前記スイッチ手段を切り換え作動させるための第2周波数の第2動作信号を出力し、
前記信号処理手段は、前記スイッチ手段が前記第1の周期で切換え作動しているときの前記検出信号である第1検出信号、および前記スイッチ手段が前記第2の周期で切換え作動しているときの前記検出信号である第2検出信号に基づいて前記液体の性状である前記液体に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置であって、
前記信号処理手段は、前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて濃度を算出する処理工程におけるゲインを、前記第1検出信号および前記第2検出信号の少なくとも一方に応じて変化させ、
前記第1検出信号および前記第2検出信号の少なくとも一方が小さくなるに連れて前記ゲインを大きくすることを特徴とする液体性状検出装置。
【請求項2】
電極と、
前記電極に印加される電圧である標準電圧を発生する標準電圧発生手段と、
前記標準電圧を前記電極に印加して前記電極に電荷を蓄えさせること、および前記電極を接地して前記電荷を放電させること、のどちらか一方の状態に切換えるスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を所定周期.で切り換え作動させるために、前記スイッチ手段に対して所定周波数の動作信号を出力する動作信号出力手段と、
前記電極に標準電圧を印加したときの前記電極に発生する電圧である検出信号が入力されると該検出信号を処理して出力する信号処理手段と、を備え、
前記動作信号出力手段は、第1の周期で前記スイッチ手段を切り換え作動させるための第1周波数の第1動作信号、および、第2の周期で前記スイッチ手段を切り換え作動させるための第2周波数の第2動作信号を出力し、
前記信号処理手段は、前記スイッチ手段が前記第1の周期で切換え作動しているときの前記検出信号である第1検出信号、および前記スイッチ手段が前記第2の周期で切換え作動しているときの前記検出信号である第2検出信号に基づいて前記液体の性状である前記液体に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置であって、
前記動作信号出力手段は、前記第1周波数と前記第2周波数との差である差周波数を、前記第1検出信号および前記第2検出信号の少なくとも一方に応じて変化させ、
前記動作信号出力手段は、前記第1検出信号および前記第2検出信号の少なくとも一方が小さくなるに連れて前記差周波数を大きくすることを特徴とする液体性状検出装置。
【請求項3】
電極と、
前記電極に印加される電圧である標準電圧を発生する標準電圧発生手段と、
前記標準電圧を前記電極に印加して前記電極に電荷を蓄えさせること、および前記電極を接地して前記電荷を放電させること、のどちらか一方の状態に切換えるスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を所定周期で切り換え作動させるために、前記スイッチ手段に対して所定周波数の動作信号を出力する動作信号出力手段と、
前記電極に標準電圧を印加したときの前記電極に発生する電圧である検出信号が入力されると該検出信号を処理して出力する信号処理手段と、を備え、
前記動作信号出力手段は、第1の周期で前記スイッチ手段を切り換え作動させるための第1周波数の第1動作信号、および、第2の周期で前記スイッチ手段を切り換え作動させるための第2周波数の第2動作信号を出力し、
前記信号処理手段は、前記スイッチ手段が前記第1の周期で切換え作動しているときの前記検出信号である第1検出信号、および前記スイッチ手段が前記第2の周期で切換え作動しているときの前記検出信号である第2検出信号に基づいて前記液体の性状である前記液体に含まれる成分の濃度を検出する液体性状検出装置であって、
前記動作信号出力手段は、前記標準電圧を、前記第1検出信号および前記第2検出信号の少なくとも一方の大きさに応じて変化させ、
前記動作信号出力手段は、前記第1検出信号および前記第2検出信号の少なくとも一方が小さくなるに連れて前記標準電圧を高くすることを特徴とする液体性状検出装置。
【請求項4】
前記信号処理手段において前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて算出された濃度としての電気信号である出力電圧が、選択可能な前記ゲインのうちの任意の前記ゲインを用いて算出しても必ず前記出力電圧が飽和しないように、前記第1周波数および前記第2周波数の差周波数を設定する差周波数較正手段と、
前記差周波数較正手段で設定された差周波数である較正差周波数を用い且つすべての選択可能な前記ゲイン毎に前記出力電圧を算出し、このようにして算出された各前記出力電圧である各較正出力電圧に基づいて、前記信号処理手段における前記ゲインの切り替え機能が正常であるかどうかを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体性状検出装置。
【請求項5】
前記信号処理手段において前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて算出された濃度としての電気信号である出力電圧が、選択可能な前記第1周波数と前記第2周波数との差である前記差周波数のうちの任意の前記差周波数を用いて算出しても必ず前記出力電圧が飽和しないように、前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて濃度を算出する前記処理工程におけるゲインを設定するゲイン較正手段と、
前記ゲイン較正手段で設定されたゲインである較正ゲインを用い且つすべての選択可能な前記差周波数毎に前記出力電圧を算出し、このようにして算出された各前記出力電圧である各較正出力電圧に基づいて、前記信号処理手段における前記差周波数の切り替え機能が正常であるかどうかを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の液体性状検出装置。
【請求項6】
前記信号処理手段において前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて算出された濃度としての電気信号である出力電圧が、選択可能な前記標準電圧のうちの任意の前記標準電圧を用いて算出しても必ず前記出力電圧が飽和しないように、前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて濃度を算出する前記処理工程におけるゲインを設定するゲイン較正手段と、
前記ゲイン較正手段で設定されたゲインである較正ゲインを用い且つすべての選択可能な前記標準電圧毎に前記出力電圧を算出し、このようにして算出された各前記出力電圧である各較正出力電圧に基づいて、前記信号処理手段における前記標準電圧の切り替え機能が正常であるかどうかを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の液体性状検出装置。
【請求項7】
前記電極と電気的に並列に接続・遮断可能に配置された電気容量素子と、
前記電極と前記電気容量素子との電気的接続・遮断を切換える切換え手段と、を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の液体性状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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