説明

液体散布装置

【課題】農作物への影響を最小限に抑えつつ除草作業を行うことによって、収穫率を向上させることができる液体散布装置を提供する。
【解決手段】農作物の畝に沿って移動しながら、前記農作物の株元および畝間の地面に農薬や肥料等の液体を散布する液体散布装置であって、装置本体10と、装置本体10に設けられ、前記畝に沿って転動する車輪20A,20Bと、装置本体10に設けられ、作業者によって操作されるハンドル30と、装置本体10に設けられ、前記液体を、農作物の株元および畝間の地面に噴出する散布ノズル40A,40Bとを備える液体散布装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の株元および畝間の地面に農薬や肥料等の液体を散布する液体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆やタマネギ、トウモロコシ等の農作物を栽培し収穫するにあたって大きな問題となるのが、播種から40〜45日目までの期間の雑草の防除である。この間に雑草の防除を怠れば、農作物と雑草との生育競合により、農作物の収穫量が減少してしまう。しかしながら、播種から40〜45日目までの期間に雑草の防除を行っていれば、農作物の葉が茂って地面が遮光され、雑草が育ち難くなるので、大きな問題とはならない。
一般的な雑草の除去の方法としては、まず、播種の後、雑草が生え始める前に雑草の発生を防止するための除草剤、いわゆる土壌処理剤を散布する。続いて、この土壌処理剤の効果がなくなり、再び雑草が生え始めたころに、機械による中耕除草や人人力によるホー除草を行う。ところで、上記のような除草作業に要する時間は、大豆栽培においては作業時間の30パーセントを占めると言われている。そのため、作業時間の短縮を目的として、農作物の生育期に発生する雑草を枯らす除草剤、いわゆる茎葉処理剤を使用するケースも増えている(下記の非特許文献1参照)。
【0003】
茎葉処理剤の多くは、水に希釈し、雑草の茎葉に付着するように噴霧機等を使って散布される。茎葉処理剤には、散布の際に農作物に付着しても農作物に作用を及ぼさない薬剤、いわゆる選択性茎葉処理剤と、農作物を含め植物全般に作用を及ぼす薬剤、いわゆる非選択性茎葉処理剤とがある。選択性茎葉処理剤として普及しているものの大部分は、大豆のような広葉植物には作用せず、ヒエのようなイネ科植物にのみ作用して枯らすものであるので、広葉雑草に対しては除草効果がない。そこで、非選択性茎葉処理剤を、農作物に付着させずに雑草に散布する方法が試みられているが、散布作業を注意深く行う必要があり、効率良い散布の方法が確立されることが望まれている。
【0004】
中耕を行うにあたっては、例えば、耕耘機を使って畝間の土を耕し、掘り起こした土を農作物の株元に盛る。畝間の雑草は土が掘り起こされることで抜き取られ、株元の雑草は土を盛られることで土に埋まって防除される。
中耕は、播種から40〜45日目までの期間で3回程度行う必要がある。雑草の生育速度が非常に速いためである。しかしながら、3回目ともなると農作物も生育し地中にたくさん根を張り、土を耕す際にその根を切ってしまう可能性があるので注意する。根を切ってしまうと、農作物の生長力が弱まり、収穫率が低下するからである。
【非特許文献1】雑草研究 第49巻 第4号 平成16年 別刷 「わが国における除草剤使用の推移」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、除草剤の散布や中耕といった除草作業は、非常に注意を要するだけでなく、作業者に身体的な負担を強いるということが周知となっている。
一方、農業に従事する人口の減少、および農業従事者の高齢化が進み、農作業の省力化が叫ばれる今日、上記のように繊細で注意を要する作業を行うのは非効率的であることはいうまでもない。そこで、現状では、土壌処理剤の効果のみに頼り、収穫率の低下を容認してその後の除草剤の散布や中耕といった除草作業を行わない場合が多く見受けられる。
【0006】
本発明の目的は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、農作物への影響を最小限に抑えつつ除草剤処理を行うことによって、安定した収穫量を維持することができる液体散布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、農作物の畝に沿って移動しながら、前記農作物の株元および畝間の地面に農薬や肥料等の液体を散布する液体散布装置であって、装置本体と;前記装置本体に設けられ、前記畝に沿って転動する車輪と;前記装置本体に設けられ、作業者によって操作されることによって前記車輪を転動させて前記装置本体を移動させるハンドルと;前記装置本体に設けられ、前記液体を、農作物の株元および畝間の地面に噴出する散布ノズルと;を備える液体散布装置を提供する。
【0008】
本発明の液体散布装置によれば、作業者はハンドルを持ち、車輪を地面に接地させて転動させながら、装置本体を畝に沿って移動させる。そして、装置本体を移動させながら、散布ノズルから農作物の株元および畝間の地面に向けて液体を散布する。
これにより、作業者は、ハンドルを持ち、装置本体を畝に沿って移動させるだけで、農作物の株元および畝間の地面に向けて除草剤等の液体を散布することができる。したがって、従来の除草剤を使う作業と比較して、作業効率を大幅に改善させることができる。
【0009】
本発明の液体散布装置において、前記装置本体には、前記散布ノズルから噴出される液体の飛散する範囲を制限する飛散制限部が設けられることが好ましい。
【0010】
本発明の液体散布装置によれば、飛散制限部が、散布ノズルから噴出される液体の飛散する範囲を制限するので、散布すべき範囲にだけ液体を的確に散布し、散布すべきでない範囲には液体が飛散しないようにすることができる。
【0011】
本発明の液体散布装置において、前記飛散制限部は、前記装置本体に対して変位可能であることが好ましい。
【0012】
本発明の液体散布装置によれば、液体を散布すべき範囲は、農作物の種類や成長の時期によって異なる。したがって、これらの条件に合わせて飛散制限部を変位させ、散布すべき範囲を適正に設定することにより、上記のごとく散布すべき範囲にだけ液体を正確に散布し、散布すべきでない範囲には液体が飛散しないようにすることができる。
【0013】
本発明の液体散布装置において、前記装置本体には、前記畝に沿って移動する際に前記農作物の株に当接して前記株を傾ける株傾斜部が設けられることが好ましい。
【0014】
本発明の液体散布装置によれば、株傾斜部が、農作物の株に当接して株を傾けるので、液体を散布すべき範囲である農作物の株元が、装置本体から見て露わになる。したがって、農作物の葉等に邪魔されず、その株元に液体を的確に散布することができる。
【0015】
本発明の液体散布装置において、前記飛散制限部は、前記畝に沿って移動する際に前記農作物の株に当接して前記株を傾ける株傾斜部を兼ねることが好ましい。
【0016】
本発明の液体散布装置によれば、飛散制限部が株傾斜部を兼ねるので、装置の構造が簡易化される。したがって、装置を小型化したり製造コストを下げたりすることができる。
【0017】
本発明の液体散布装置は、前記装置本体に設けられ、移動時に地面に接して前記地面の起伏に沿って上下するソリ状部を備え、前記散布ノズルは前記ソリ状部に設けられ、前記ソリ状部に追従して上下に変位することが好ましい。
【0018】
本発明の液体散布装置によれば、地面の起伏に沿ってソリ状部が上下し、上下するソリ状部に追従して散布ノズルが上下することにより、地面からの散布ノズルの高さがほぼ一定となるので、地面の起伏が激しくても、散布ノズルから当初意図した範囲よりも広く液体が散布されたり、その逆に当初意図した範囲よりも狭く液体が散布されたりすることがない。したがって、液体を的確に散布することができる。
【0019】
本発明の液体散布装置において、前記ソリ状部は、前記装置本体の両側にそれぞれ設けられることが好ましい。
【0020】
本発明の液体散布装置によれば、農作物の株が埋まっている2条の畝の起伏に沿って各ソリ状部が別個に上下し、それに追従して散布ノズルが別個に上下することにより、畝の起伏が激しくても、農作物の株元を含む適切な範囲に液体が散布されるので、必要な範囲以上に液体が散布されることがない。
【0021】
本発明の液体散布装置は、前記散布ノズルに供給される前記液体を収容する容器を備え、前記容器は、前記作業者が背負うことが好ましい。
【0022】
本発明の液体散布装置によれば、液体を収容する容器を作業者が背負うことにより、農地を走行する装置本体が軽量化、小型化されるので、液体の散布作業が行い易くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液体散布装置によれば、除草剤を使用して、本来守るべき農作物への影響を最小限に抑えつつ、除草作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の液体散布装置の第1の実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の液体散布装置は、装置本体10と、2つの車輪20A,20Bと、ハンドル30と、2つの散布ノズル40A,40Bとを備えている。
装置本体10は、金属製または樹脂製のパイプを組み合わせたフレーム構造を有する。2つの車輪20A,20Bは、装置本体10の両側に、同一方向に転動自在に支持されている。車輪20A,20Bの外周面には、ほぼ等間隔を空けてスパイク21が固定されている。車輪20A,20Bは、農作物を植え付けた畝に沿って装置本体10を移動させる際、地上に接地して畝に沿って転動する。
【0025】
装置本体10の後部中央には、ハンドル30の基端が固定されている。ハンドル30は、2つの車輪20A,20Bが離間する方向に直交する方向に延在しており、作業者はハンドル30の先端を持ち、液体散布装置を押すように操作して装置本体10を移動させる。2つの散布ノズル40A,40Bは、後述する除草剤供給機構に接続されており、液状の除草剤を農作物の株元および畝間の地面に向けて噴出する。
以下では、2つの車輪20A,20Bが離間する方向を液体散布装置(または装置本体10)の幅方向とし、ハンドル30が延在する方向を同装置の長手方向とする。
【0026】
図2に示すように、2つの散布ノズル40A,40Bのうち、液体散布装置の進行方向に向かって右側の散布ノズル40Aは、装置本体10の幅方向の中央よりも車輪20A寄り、かつ車輪20Aの回転軸の後方に配置され、定位置に固定されている。散布ノズル40Aは、除草剤を霧状よりも粒の大きな飛沫状にして、装置本体10の下方に向けて噴出する。散布ノズル40Aから噴出される除草剤は、装置本体10の幅方向に、扇状に広がって噴出される。なお、扇状に広がる飛沫の角度は、140°程度が望ましい。
【0027】
装置本体10には、散布ノズル40Aの周囲を覆うように、除草剤の余計な飛散を防止する飛散防止プレート11A,12A,13A,14Aが取り付けられている。飛散防止プレート11Aは、散布ノズル40Aよりも液体散布装置の長手方向の前側に、液体散布装置の幅方向に延在するように配置されている。飛散防止プレート12Aは、散布ノズル40Aよりも液体散布装置の長手方向の後側に、液体散布装置の幅方向に延在するように配置されている。飛散防止プレート13Aは、散布ノズル40Aよりも液体散布装置の幅方向の外側に、液体散布装置の長手方向に延在するように配置されている。飛散防止プレート14Aは、散布ノズル40Aよりも液体散布装置の幅方向の内側に、液体散布装置の長手方向に延在するように配置されている。
【0028】
飛散防止プレート11A,12A,13Aは、いずれも装置本体10に固定されている。
図3に示すように、飛散防止プレート13Aには、散布ノズル40Aから装置本体10の幅方向の外側に向けて噴出された除草剤の飛散する範囲を制限する飛散制限部15Aが設けられている。飛散制限部15Aは、半円筒形状部17aと、半円筒形状部17aの内側を仕切るように取り付けられた隔壁部17bとを備えている。飛散防止プレート13Aの下縁は一部が切り欠かれており、飛散制限部15Aは、その切り欠かれた部分を覆うように、かつ半円筒形状部17aの長手方向の軸線を装置本体10の上下方向に一致させるようにして飛散防止プレート13Aに取り付けられている。飛散制限部15Aは、飛散防止プレート13Aに対する高さ方向の取付位置を段階的に変化させることが可能であり、これによって飛散制限部15Aの散布ノズル40Aに対する高さを変更することができる。
【0029】
飛散防止プレート14Aは、装置本体10に対する高さ方向の取付位置を段階的に変化させることが可能である。
図4に示すように、飛散防止プレート14Aには、散布ノズル40Aから装置本体10の幅方向の内側に向けて噴出された除草剤の飛散する範囲を制限する飛散制限部16Aが設けられている。飛散制限部16Aは、半円筒形状部18aと、半円筒形状部18aの内側を仕切るように取り付けられた隔壁部18bとを備えている。飛散防止プレート14Aの下縁は一部が切り欠かれており、飛散制限部16Aは、その切り書かれた部分を覆うように、かつ半円筒形状部18aの長手方向の軸線を装置本体10の上下方向に一致させるようにして飛散防止プレート13Aに固定されている。飛散制限部16Aは、飛散防止プレート14Aとともに装置本体10に対する取付位置を変化させることが可能であり、これによって飛散制限部16Aの散布ノズル40Aに対する高さを変更することができる。
【0030】
飛散制限部15A,16Aは、液体散布装置を畝に沿って移動させる際、農作物の株に当接してその株を傾ける株傾斜部としての機能を有する。
【0031】
図2に示すように、液体散布装置の進行方向に向かって左側の散布ノズル40Bは、装置本体10の幅方向の中央よりも車輪20B寄り、かつ車輪20Bの回転軸の後方に配置され、定位置に固定されている。散布ノズル40Bも、散布ノズル40Aと同様に、除草剤を霧状よりも粒の大きな飛沫状にして、装置本体10の下方に向けて噴出する。散布ノズル40Bから噴出される除草剤も、装置本体10の幅方向に、扇状に広がって噴出される。なお、扇状に広がる飛沫の角度は、140°程度が望ましい。
【0032】
上記と同様に、装置本体10には、散布ノズル40Bの周囲を覆うように、除草剤の余計な飛散を防止する飛散防止プレート11B,12B,13B,14Bが取り付けられている。飛散防止プレート11Bは、散布ノズル40Bよりも液体散布装置の長手方向の前側に、液体散布装置の幅方向に延在するように配置されている。飛散防止プレート12Bは、散布ノズル40Bよりも液体散布装置の長手方向の後側に、液体散布装置の幅方向に延在するように配置されている。飛散防止プレート13Bは、散布ノズル40Bよりも液体散布装置の幅方向の外側に、液体散布装置の長手方向に延在するように配置されている。飛散防止プレート14Bは、散布ノズル40Bよりも液体散布装置の幅方向の内側に、液体散布装置の長手方向に延在するように配置されている。
【0033】
飛散防止プレート11B,12B,13Bは、いずれも装置本体10に固定されている。
飛散防止プレート13Bには、散布ノズル40Bから装置本体10の幅方向の外に向けて噴出された除草剤の飛散する範囲を制限する飛散制限部15Bが設けられている。飛散制限部15Bの構造は既に説明した飛散制限部15Aと同じなので、詳細な説明は省略する。飛散制限部15Bは、飛散防止プレート13Bに対する高さ方向の取付位置を段階的に変化させることが可能であり、これによって飛散制限部15Bの散布ノズル40Bに対する高さを変更することができる。
【0034】
飛散防止プレート14Bは、装置本体10に対する高さ方向の取付位置を段階的に変化させることが可能である。
飛散防止プレート14Bには、散布ノズル40Bから装置本体10の幅方向の内側に向けて噴出された除草剤の飛散する範囲を制限する飛散制限部16Bが設けられている。飛散制限部16Bの構造も既に説明した飛散防止部16Aと同じなので、詳細な説明は省略する。飛散制限部16Bは、飛散防止プレート14Bとともに装置本体10に対する取付位置を変化させることが可能であり、これによって飛散制限部16Bの散布ノズル40Bに対する高さを変更することができる。
【0035】
飛散制限部15B,16Bは、液体散布装置を畝に沿って移動させる際、農作物の株に当接してその株を傾ける株傾斜部としての機能を有する。
【0036】
図1に示すように、ハンドル30は、装置本体10と同じく金属製のパイプからなる。ハンドル30の基端には、装置本体10に対する剛性を高めるために補剛プレート30aが取り付けられている。ハンドル30の内側には、フレキシブルホース31が挿通されている。ハンドル30の基端から突き出したフレキシブルホース31の一端は二股に分岐されており、一方の分岐ホース31Aが散布ノズル40Aに接続され、他方の分岐ホース31Bが散布ノズル40Bに接続されている。
【0037】
ビニールパイプ31の他端は、ハンドル30の先端に設けられた接続部を介して除草剤供給機構50に接続されている。除草剤供給機構50は、除草剤を収容する容器51と、容器51から除草剤を押し出すポンプ52と、ポンプ52によって押し出された除草剤を液体散布装置に導くフレキシブルホース53とを備えている。容器51およびポンプ52はパッケージ化され、図示しないショルダーベルトを使って作業者が肩に背負うことができる。そして、ポンプ52を駆動させると、除草剤が容器51から押し出され、フレキシブルホース53,31を通じて2つの散布ノズル40A,40Bに供給される。
【0038】
2つの散布ノズル40A,40Bを、図2に示すように、装置本体10を上方から平面視すると、右側の散布ノズル40Aは、左側の散布ノズル40Bよりも前に配置されている。すなわち、散布ノズル40A,40Bは、前後にオフセットして装置本体10に固定されている。散布ノズル40A,40Bが前後にオフセットされることにより、飛散防止プレート13Aに取り付けられた飛散制限部15Aは、飛散防止プレート13Bに取り付けられた飛散制限部15Bよりも前に配置されている。また、飛散防止プレート14Aに取り付けられた飛散制限部16Aは、飛散防止プレート14Bに取り付けられた飛散制限部16Bよりも前に配置されている。
【0039】
飛散防止プレート14Aと飛散防止プレート14Bとは、装置本体10の幅方向のほぼ中央で平行に配置されている。飛散制限部16Aおよび16Bは、上記のごとく前後にオフセットされるとともに、飛散防止プレート14Aと飛散防止プレート14Bとの間の空間に突き出すように設けられている。
【0040】
飛散防止プレート14Aの前端部、および飛散防止プレート14Bの前端部は、前方に向かうほど両プレートの間隔が広がるように、装置本体10の幅方向の外側に屈曲されている。また、装置本体10の幅方向の中央には、液体散布装置の進行方向前方を指し示す1本の指示棒19が固定されている。指示棒19は、作業者が液体散布装置を使って押す際の進行方向の目安となる。
【0041】
上記のように構成された液体散布装置を使用して、3条の畝に沿って農作物の株元および畝間の地面に除草剤を散布する作業について説明する。本実施形態の液体散布装置は、3条の畝のうち中央の畝の農作物の株元に両側から除草剤を散布するとともに、2条の畝の両側の畝の農作物の株元に内側から外側に向けて除草剤を散布する。さらに、各畝間の地面にも除草剤を散布する。
【0042】
まず、図5に示すように、作業者は、除草剤を散布しようとする3条の畝の端に、畝の方向と進行方向とを一致させるようにして液体散布装置を配置する。このとき、中央の畝が、飛散防止プレート14Aおよび飛散防止プレート14Bの間に配置されるようにする。なお、液体散布装置の装置本体10の幅方向の長さは、隣り合う畝どうしの間隔の二倍、すなわち3条分の畝の間隔よりも短くなっている。言い換えると、農作物は、3条分の畝の間隔が液体散布装置の装置本体10の幅方向の長さよりも長くなるように植え付けられている。したがって、中央の畝が飛散防止プレート14Aおよび飛散防止プレート14Bの間に配置されるように液体散布装置を配置すると、装置本体10は両側の畝の間に収まる。そして、右側の車輪20Aは中央の畝と右側の畝の間の地面に接地し、左側の車輪20Bは中央の畝と左側の畝との間の地面に接地する。
【0043】
作業者は、除草剤供給機構50のポンプ51を駆動させるとともに、ハンドル30を握り、液体散布装置を畝の方向に沿って押し進める。ハンドル30を介して押推されると、装置本体10は車輪20A,20Bを転動させ、畝に沿って移動を開始する。ほぼ同時に、2つの散布ノズル40A,40Bからは除草剤が噴出され始める。
【0044】
散布ノズル40Aから噴出される除草剤は、装置本体10が押し進められるに従い、中央の畝と右側の畝との間の地面に散布される。さらに、右側の畝の農作物が、飛散制限部15Aに当接する。そして、飛散制限部15Aの株傾斜部としての働きによって外側に傾斜させられ、株元を露わにする。詳述すると、飛散制限部15Aを構成する半円筒形状部17aの進行方向の前面に農作物が当たり、半円筒形状部17aの湾曲した側面にそって移動するうち、装置本体10の幅方向の外側、すなわち装置本体10の進行方向に向かって右側に撓るように傾斜させられる。傾斜の角度はさほど大きくはなく、茎が折れてしまうことはない。そして、その傾斜させられた農作物の株元に、散布ノズル40Aから噴出された除草剤が散布される。
【0045】
散布ノズル40Aから噴出される除草剤は、図6に示すように、飛散制限部15Aの本来の働きにより、飛散する範囲を制限される。すなわち、散布ノズル40Aから斜め下方に向けて噴出された除草剤は、半円筒形状部17aの下端の半円形の広がりに従って、装置本体10の幅方向の外側に突き出す半楕円の領域に限って散布される。飛散制限部15Aに飛散を制限された除草剤の飛沫は、低い位置から農作物の株元に向けて散布されるので、株元に近い位置に生えた葉にもかからない。もしも、株元に近い位置に生えた葉に除草剤がかかるようであれば、飛散制限部15Aの散布ノズル40Aに対する高さを低くして飛散範囲を調整する。反対に、株まで除草剤が届いていないようであれば、飛散制限部15Aの散布ノズル40Aに対する高さを高くして飛散範囲を調整する。
また、除草剤を散布すべき範囲は、農作物の種類や成長の時期によって異なるので、これらの条件に合わせて飛散制限部15Aの高さを変化させ、散布すべき範囲を適正に設定するのが好ましい。
【0046】
散布ノズル40Bから噴出される除草剤は、装置本体10が押し進められるに従い、中央の畝と左側の畝との間の地面に散布される。さらに、左側の畝の農作物が、飛散制限部15Bに当接する。そして、飛散制限部15Bの株傾斜部としての働きによって装置本体10の幅方向の外側、すなわち装置本体10の進行方向に向かって左側に傾斜させられ、株元を露わにする。そして、上記のようにして傾斜させられた農作物の株元に、散布ノズル40Bから噴出された除草剤が散布される。散布ノズル40Bから噴出される除草剤は、飛散制限部15Bの本来の働きによって飛散の範囲を制限され、低い位置から農作物の株元に向けて散布されるので、株元に近い位置に生えた葉にもかからない。なお、飛散制限部15Bの散布ノズル40Bに対する高さの変更は、上記の飛散制限部15Aと同じ要領で適宜行うものとする。
【0047】
中央の畝の農作物は、装置本体10が押し進められるに従い、飛散防止プレート14Aおよび飛散防止プレート14Bの間に進入する。両プレート間に進入した農作物は、まず、飛散防止プレート14Aに設けられた飛散制限部16Aに当接する。そして、飛散制限部16Aの株傾斜部としての働きにより、装置本体10の幅方向の内側、すなわち装置本体10の進行方向に向かって左側に傾斜させられ、株元を露わにする。そして、上記のようにして傾斜させられた農作物の株元に、散布ノズル40Aから噴出された除草剤が散布される。散布ノズル40Aから噴出される除草剤は、飛散制限部16Aの本来の働きによって飛散の範囲を制限され、低い位置から農作物の株元に向けて散布されるので、株元に近い位置に生えた葉にもかからない。なお、飛散制限部16Aの散布ノズル40Aに対する高さの変更は、上記の飛散制限部15Aと同じ要領で適宜行うものとする。
【0048】
散布ノズル40Aから噴出される除草剤を散布された農作物は、飛散防止プレート14Bに設けられた飛散制限部16Bに立て続けに当接する。そして、飛散制限部16Bの株傾斜部としての働きにより、今度は装置本体10の幅方向の内側、すなわち装置本体10の進行方向に向かって右側に傾斜させられ、株元を露わにする。そして、上記のようにして傾斜させられた農作物の株元に、散布ノズル40Bから噴出された除草剤が散布される。散布ノズル40Bから噴出される除草剤は、飛散制限部16Bの本来の働きによって飛散の範囲を制限され、低い位置から農作物の株元に向けて散布されるので、株元に近い位置に生えた葉にもかからない。なお、飛散制限部16Bの散布ノズル40Bに対する高さの変更は、上記の飛散制限部15Aと同じ要領で適宜行うものとする。
このように、飛散防止プレート14Aおよび飛散防止プレート14Bの間に進入する農作物は、左右に立て続けに傾斜させられ、株元を露わにした方向から除草剤を散布される。
【0049】
作業者が液体散布装置を畝の方向に沿って押し進めると、3条の畝のうち中央の畝の農作物の株元に両側から除草剤が散布されるとともに、2条の畝の両側の畝の農作物の株元に内側から外側に向けて除草剤が散布される。さらに、各畝間の地面にも除草剤が散布される。
【0050】
3条の畝に沿って上記のように除草剤の散布を終えたら、散布を終えた畝の反対側の端で折り返し、往路では装置本体10の右側であった畝が、再び装置本体10の右側に位置するようにして、隣の3条の畝の端に液体散布装置を配置する。そして、液体散布装置を畝の方向に沿って押し進めると、上記と同様に、隣の3条の畝の農作物に除草剤が散布される。このとき、右側の畝の農作物には、往路のときとは反対側から除草剤が散布される。
【0051】
上記のように構成された液体散布装置によれば、作業者は、ハンドル30を持ち、装置本体10を畝に沿って移動させるだけで、農作物の株元および畝間の地面に向けて除草剤を散布することができる。したがって、従来の除草剤を使う作業と比較して、作業効率を大幅に改善させることができる。
【0052】
上記の液体散布装置によれば、飛散制限部15A,16Aが、散布ノズル40Aから噴出される除草剤の飛散する範囲を制限し、飛散制限部15B,16Bが、散布ノズル40Bから噴出される除草剤の飛散する範囲を制限するので、散布すべき範囲にだけ除草剤を的確に散布し、散布すべきでない範囲には除草剤が飛散しないようにすることができる。
【0053】
除草剤を散布すべき範囲は、農作物の種類や成長の時期によって異なる。そこで、上記の液体散布装置によれば、これらの条件に合わせて飛散制限部15A,16A、および飛散制限部15B,16Bの高さをそれぞれ変化させ、散布すべき範囲を適正に設定することにより、上記のように適切な範囲に除草剤を散布することができる。
【0054】
上記の液体散布装置によれば、飛散制限部15A,16A、および飛散制限部15B,16Bの株傾斜部としての働きにより、農作物の株に当接して株を傾けるので、除草剤を散布すべき範囲に含まれる農作物の株元が、装置本体10から見て露わになる。したがって、農作物の葉等に邪魔されず、その株元に除草剤を的確に散布することができる。
【0055】
上記の液体散布装置によれば、飛散制限部15A,16A、および飛散制限部15B,16Bが、株傾斜部としての働きをも担うので、装置の構造が簡易化される。したがって、装置を小型化したり製造コストを下げたりすることができる。
【0056】
次に、 本発明の液体散布装置の第2の実施形態について、図7から図10を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態において既に説明した構成要素には同一符号を付してそれらの説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態の液体散布装置は、装置本体110と、2つの車輪120A,120Bと、ハンドル130と3つの散布ノズル140A,140B,140Cとを備えている。
装置本体110は、樹脂製の一体成型品である。2つの車輪120A,120Bは、装置本体110の両側に、同一方向に転動自在に支持されている。車輪120A,120Bの外周面には、ほぼ等間隔を空けてスパイク121が固定されている。車輪120A,120Bは、農作物を植え付けた畝に沿って装置本体110を移動させる際、地上に接地して畝に沿って転動する。また、装置本体110のほぼ中央には、ハンドル130の基端が固定されている。ハンドル130は、2つの車輪120A,120Bが離間する方向に直交する方向に延在しており、作業者はハンドル130の先端を持ち、液体散布装置を押すように操作して装置本体110を移動させる。3つの散布ノズル140A,140B,140Cは、除草剤供給機構50に接続されており、液状の除草剤を農作物の株元および畝間の地面に向けて噴出する。
以下では、2つの車輪120A,120Bが離間する方向を液体散布装置(または装置本体110)の幅方向とし、ハンドル130が延在する方向を同装置の長手方向とする。
【0057】
図8に示すように、装置本体110は、バスタブを上下逆転させたような形状をなしており、3つの散布ノズル140A,140B,140Cは、装置本体110の裏側、すなわち車輪120A,120Bを地面に接地させたときに地面に向かう側に取り付けられている。
【0058】
図9に示すように、装置本体110には、移動時に地面に接し、地面の起伏に沿って上下する2つのソリ状部150A,150Bが設けられている。また、装置本体110には、右側の車輪120Aの外側、かつ車輪120Aの後方であって、車輪120Aの回転軸よりも低い位置に、車輪120A,120Bの回転軸と平行に、軸151Aが固定されている。一方のソリ状部150Aは、この軸151Aに基端を軸支されることにより、先端を上下させるように揺動することが可能である。また、装置本体110とソリ状部150Aとの間には、ソリ状部150Aを装置本体110から遠ざける方向、すなわち車輪120A,120Bを地面に接地させたときにソリ状部150Aを地面に向けて付勢するバネ体152Aが設けられている。
【0059】
さらに、装置本体110には、左側の車輪120Bの外側、かつ車輪120Bの後方であって、車輪120Bの回転軸よりも低い位置に、車輪120A,120Bの回転軸と平行に、軸151Bが固定されている。他方のソリ状部150Bは、この軸151Bに基端を軸支されることにより、先端を上下させるように揺動することが可能である。また、装置本体110とソリ状部150Bとの間には、ソリ状部150Bを装置本体110から遠ざける方向、すなわち車輪120A,120Bを地面に接地させたときにソリ状部150Bを地面に向けて付勢するバネ体152Bが設けられている。
ソリ状部150Aの先端は、バネ体152Aに付勢されることによって移動時に地面に押し付けられ、ソリ状部150Aは地面の起伏に応じて上下に揺動する。また、ソリ状部150Bの先端も、バネ体152Bに付勢されることによって移動時に地面に押し付けられ、ソリ状部150Bも地面の起伏に応じて上下に揺動する。
【0060】
3つの散布ノズル140A,140B,140Cのうち、散布ノズル140Aは、ソリ状部150Aの基端からわずかに先端側に離間した位置に固定されている。散布ノズル140Aは、装置本体110の幅方向の中央よりも右側の車輪120A側、かつ車輪120Aの後方であって、車輪120Aの回転軸よりも低い位置に配置され、ソリ状部150Aの揺動に従って上下に変位する。
散布ノズル140Bも、ソリ状部150Bの基端からわずかに先端側に離間した位置に固定されている。散布ノズル140Bは、装置本体110の幅方向の中央よりも左側の車輪120B側、かつ車輪120Bの後方であって、車輪120Bの回転軸よりも低い位置に配置され、ソリ状部150Bの揺動に従って上下に変位する。
【0061】
散布ノズル140Cは、装置本体110の幅方向の中央、かつ車輪120A,120Bの後方であって、両輪の回転軸よりも低い位置に固定されている。散布ノズル140Cは、除草剤を霧状よりも粒の大きな飛沫状にして、装置本体10の下方に向けて噴出する。
3つの散布ノズル140A,140B,140Cは、除草剤を霧状よりも粒の大きな飛沫状にして、装置本体110の下方に向けて噴出する。各散布ノズルから噴出される除草剤は、装置本体110の幅方向に、扇状に広がって噴出される。
【0062】
装置本体110の両側には、装置本体110を側方から見て散布ノズル140Aが上下に変位する範囲に、下縁から切り欠かれた切欠部110aが形成されている。さらに、装置本体110の両側には、切欠部110aを仕切る仕切板111が取り付けられている。仕切板111の下縁は、装置本体110の下縁とほぼ平行であり、仕切板111は、装置本体110に対する取付位置を変化させることが可能であり、これによって下縁の高さを段階的に変化させることができる。つまり、仕切板111は、上記第1の実施形態の飛散制限部としての機能を有する。
【0063】
上記のように構成された液体散布装置を使用して、2条の畝に沿って農作物の株元および畝間の地面に除草剤を散布する作業について説明する。本実施形態の液体散布装置は、2条の畝の農作物の株元に内側から外側に向けて除草剤を散布するとともに、各畝間の地面に除草剤を散布する。
【0064】
まず、図10に示すように、作業者は、除草剤を散布しようとする2条の畝の端に、畝の方向と進行方向とを一致させるようにして液体散布装置を配置する。このとき、装置本体110が、2条の畝の間に配置されるようにする。なお、液体散布装置の装置本体110の幅方向の長さは、隣り合う畝どうしの間隔よりも短くなっている。言い換えると、農作物は、2条分の畝の間隔が液体散布装置の装置本体110の幅方向の長さよりも長くなるように植え付けられている。したがって、2条の畝の間に液体散布装置を配置すると、装置本体110は両側の畝の間に収まる。そして、右側の車輪120Aは右側の畝の内側の地面に接地し、左側の車輪120Bは左側の畝の内側の地面に接地する。
【0065】
作業者は、除草剤供給機構50のポンプ51を駆動させるとともに、ハンドル30を握り、液体散布装置を畝の方向に沿って押し進める。ハンドル130を介して押推されると、装置本体110は車輪120A,120Bを転動させ、畝に沿って移動を開始する。ほぼ同時に、3つの散布ノズル140A,140B,140cからは除草剤が噴出され始める。
【0066】
散布ノズル140Aから噴出される除草剤は、装置本体110が押し進められるに従い、右側の畝の農作物の株元に向けて散布される。散布ノズル140Bから噴出される除草剤は、装置本体110が押し進められるに従い、左側の畝の農作物の株元に向けて散布される。さらに、散布ノズル140Cから噴出される除草剤は、装置本体110が押し進められるに従い、畝間の地面に向けて噴出される。
【0067】
散布ノズル140Aから噴出される除草剤は、仕切板111の働きにより、飛散する範囲を制限されるため、除草剤の飛沫は、低い位置から農作物の株元に向けて散布されるので、株元に近い位置に生えた葉にもかからない。同様に、散布ノズル140Bから噴出される除草剤は、仕切板111の働きにより、飛散する範囲を制限されるため、除草剤の飛沫は、低い位置から農作物の株元に向けて散布されるので、株元に近い位置に生えた葉にもかからない。
もしも、株元に近い位置に生えた葉に除草剤がかかるようであれば、仕切板111の装置本体110に対する高さを低くして飛散範囲を調整する。反対に、株まで除草剤が届いていないようであれば、仕切体111の装置本体110に対する高さを高くして飛散範囲を調整する。
また、除草剤を散布すべき範囲は、農作物の種類や成長の時期によって異なるので、これらの条件に合わせて仕切板111の高さを変化させ、散布すべき範囲を適正に設定するのが好ましい。
【0068】
装置本体110を畝に沿って押し進めると、ソリ状部150Aは、右側の畝の地面の起伏に上下する。そして、上下するソリ状部150Aに追従して散布ノズル140Aが上下する。これにより、地面からの散布ノズル140Aまでの高さがほぼ一定に保たれたまま、散布ノズル140Aによる散布が行われる。同様に、装置本体110を畝に沿って押し進めると、ソリ状部150Bは、左側の畝の地面の起伏に上下する。そして、上下するソリ状部150Bに追従して散布ノズル140Bが上下する。これにより、地面からの散布ノズル140Bまでの高さがほぼ一定に保たれたまま、散布ノズル140Bによる散布が行われる。したがって、いずれの散布ノズル140A,140Bによっても、除草剤の散布範囲が、地面からほぼ一定の高さまでの株元に制限される。
【0069】
作業者が液体散布装置を畝の方向に沿って押し進めると、2条の畝の農作物の株元に、内側から外側に向けて除草剤が散布されるとともに、各畝間の地面に除草剤が散布される。
【0070】
2条の畝に沿って上記のように除草剤の散布を終えたら、散布を終えた畝の反対側の端で折り返し、往路では装置本体10の右側であった畝が、再び装置本体10の右側に位置するようにして、隣の2条の畝の端に液体散布装置を配置する。そして、液体散布装置を畝の方向に沿って押し進めると、上記と同様に、隣の2条の畝の農作物に除草剤が散布される。このとき、右側の畝の農作物には、往路のときとは反対側から除草剤が散布される。
【0071】
上記のように構成された液体散布装置によれば、作業者は、ハンドル130を持ち、装置本体110を畝に沿って移動させるだけで、農作物の株元および畝間の地面に向けて除草剤を散布することができる。したがって、従来の除草剤を使う作業と比較して、作業効率を大幅に改善させることができる。
【0072】
上記の液体散布装置によれば、地面の起伏に応じてソリ状部150A,150Bが別個に上下し、各ソリ状部150A,150Bに追従して散布ノズル140A,140Bが別個に上下することにより、地面からの散布ノズル140Aの高さ、および地面から散布ノズル140Bの高さがそれぞれほぼ一定となるので、地面の起伏が激しくても、散布ノズル140A,140Bから当初意図した範囲よりも広く除草剤が散布されたり、その逆に当初意図した範囲よりも狭く除草剤が散布されたりすることがない。つまり、いずれの散布ノズル140A,140Bによっても、除草剤の散布範囲が、地面からほぼ一定の高さまでに制限される。したがって、除草剤を的確に散布することができる。
【実施例】
【0073】
上記第1の実施形態において説明した液体散布装置を使用して、その有効性を確認する試験を行った。試験を実施した圃場の広さは12平方メートル(3メートル×4メートルの矩形地)、耕起・整地の際にはロータリ耕を実施した。また、供試作物には大豆を採用した。除草剤には、土壌処理剤(300ミリリットル)、2種の薬剤A,B(いずれも500ミリリットル)に使用し、下記のそれぞれのパターンに従って散布を行い、以後の圃場の状況を観察した。具体的には、除草剤散布からさらに30日が経過した後の圃場に生育した雑草の乾燥重量を種類ごとに計測した。また、比較のために上記2種の薬剤A,Bを使用しないで以後の圃場の状況を上記と同様に観察した。さらに、土壌処理剤すら使用しないで以後の圃場の状況を上記と同様に観察した。
【0074】
I.播種時に土壌処理剤の散布は行わず、播種後30日目に上記液体散布装置を使用して除草剤Aを散布した
II.播種時に土壌処理剤の散布は行わず、播種後30日目に上記液体散布装置を使用して除草剤Bを散布した
III.播種と同時期に土壌処理剤を圃場に全面散布し、播種後30日目に上記液体散布装置を使用して除草剤Aを散布した
IV.播種と同時期に土壌処理剤を圃場に全面散布し、播種後30日目に上記液体散布装置を使用して除草剤Bを散布した
V.播種と同時期に土壌処理剤を圃場に全面散布し、播種後30日目には除草剤の散布を行わなかった
【0075】
上記試験の観察結果を下表に示す。
【表1】

除草効果の評価の仕方としては、土壌処理剤すら使用せずに播種後60日が経過した圃場に生育した雑草の乾燥重量を種類ごとに計測し、これらを評価の基準とした。そして、上記の各散布パターンに従って散布を行った圃場に生育した各雑草の乾燥重量の、評価の基準とした雑草の乾燥重量に対する割合を算出した。例えば、散布パターンIに従って散布を行った圃場に生育したシロザの乾燥重量の、評価の基準としたシロザの乾燥重量(168.8グラム)に対する割合は、約1パーセントであった。また、散布パターンAに従って散布を行った圃場に生育した雑草すべての乾燥重量の、評価の基準とした雑草すべての乾燥重量(584.6グラム)に対する割合は、約1パーセントであった。
【0076】
上記の試験結果から、上記第1の実施形態において説明した液体散布装置を使用すれば、上記IからIVのいずれのパターンに従って散布を行っても、無処理の場合に生育する雑草の99パーセントを除去する効果が確認された。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された事項よってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、農作物の畝に沿って移動しながら、前記農作物の株元および畝間の地面に農薬や肥料等の液体を散布する液体散布装置に関する。対象となる農作物としては、大豆、タマネギ、唐辛子、トウモロコシ、ピーマン、ナス、花木等がある。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態の液体散布装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、上記第1の実施形態の液体散布装置の装置本体を示す平面図である。
【図3】図3は、上記第1の実施形態の液体散布装置の要部を示す斜視図である。
【図4】図4は、上記第1の実施形態の液体散布装置の別の要部を示す斜視図である。
【図5】図5は、上記第1の実施形態の液体散布装置を3条の畝に沿わせて圃場に配置した状態を示す平面図である。
【図6】図6は、上記第1の実施形態の液体散布装置が圃場を移動しながら除草剤を散布する状態を示す側面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態の液体散布装置を示す斜視図である。
【図8】図8は、上記第2の実施形態の液体散布装置の装置本体を一部破断して示す側面図である。
【図9】図9は、上記第2の実施形態の液体散布装置の要部を示す側面図である。
【図10】図10は、上記第2の実施形態の液体散布装置を2条の畝に沿わせて圃場に配置した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0080】
10:装置本体、11A,12A,13A,14A:飛散防止プレート、11B,12B,13B,14B:飛散防止プレート、15A,16A:飛散制限部、15B,16B:飛散制限部(株傾斜部)、20A,20B:車輪、30:ハンドル、31A,31B:分岐ホース、40A,40B:散布ノズル、50:除草剤供給機構、110:装置本体、111:仕切板(飛散制限部)、120A,120B:車輪、130:ハンドル、140A,140B,140C:散布ノズル、150A,150B:ソリ状部、152A,152B:バネ体、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物の畝に沿って移動しながら、前記農作物の株元および畝間の地面に農薬や肥料等の液体を散布する液体散布装置であって、
装置本体と;
前記装置本体に設けられ、前記畝に沿って転動する車輪と;
前記装置本体に設けられ、作業者によって操作されるハンドルと;
前記装置本体に設けられ、前記液体を、農作物の株元および畝間の地面に噴出する散布ノズルと;
を備える液体散布装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体散布装置であって、
前記装置本体に、前記散布ノズルから噴出される液体の飛散する範囲を制限する飛散制限部が設けられている液体散布装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体散布装置であって、
前記飛散制限部は、前記装置本体に対して変位可能である液体散布装置。
【請求項4】
請求項1記載の液体散布装置であって、
前記装置本体に、前記畝に沿って移動する際に前記農作物の株に当接して前記株を傾ける株傾斜部が設けられている液体散布装置。
【請求項5】
請求項2記載の液体散布装置であって、
前記飛散制限部は、前記畝に沿って移動する際に前記農作物の株に当接して前記株を傾ける株傾斜部を兼ねる液体散布装置。
【請求項6】
請求項1記載の液体散布装置であって、
前記装置本体に設けられ、移動時に地面に接して前記地面の起伏に沿って上下するソリ状部を備え、
前記散布ノズルは前記ソリ状部に設けられ、前記ソリ状部に追従して上下に変位する液体散布装置。
【請求項7】
請求項6記載の液体散布装置であって、
前記ソリ状部は、前記装置本体の両側にそれぞれ設けられている液体散布装置。
【請求項8】
請求項1記載の液体散布装置であって、
前記散布ノズルに供給される前記液体を収容する容器を備え、前記容器は、前記作業者が背負う液体散布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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