説明

液体柔軟剤組成物

【課題】 トリエタノールアミンと脂肪酸とのエステル化物の4級アンモニウム塩を含有する柔軟剤組成物であって、優れた柔軟性と低温貯蔵安定性の両方を満足させる柔軟剤組成物の提供。
【解決手段】 (a):トリエタノールアミン(a1)とC8-26の脂肪酸又はその低級アルキルエステル(a2)とを(a1)/(a2)=1/1.9〜1/1.4のモル比で反応させ、更に4級化した4級アンモニウム塩、(b):式(1)で表される化合物、(c):式(2)で表される化合物及び(d):水を特定割合で含有する液体柔軟剤組成物。
1O(R2O)nH (1)
3COO(R4O)p5 (2)
(式中、R1はC8-26のアルキル基等、R2及びR4はC2-3のアルキレン基、nは5〜50の数、R3COはC8-26のアシル基、pは50〜200の数、R5はH又はR3COで示される基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟剤組成物の柔軟基剤として、水不溶性の4級アンモニウム型柔軟基剤が知られており、トリエタノールアミンと脂肪酸とのエステル化物を更に4級化して得られる4級アンモニウム塩を柔軟基剤として用いることは周知である。また、安定化剤として非イオン性界面活性剤を併用することも通常行われている。特許文献1及び特許文献2にはエステル型4級アンモニウム塩を用いた柔軟剤組成物が開示されており、これらの特許文献にはポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル類を併用した例も記載されている。特許文献3には、低温貯蔵、特に凍結時の復元性の向上の観点からシリコーン化合物と、アミン化合物又は4級アンモニウム塩を併用する技術が開示されているが、その他の柔軟剤組成物に適用できるものではない。
【特許文献1】特開平10−317280号公報
【特許文献2】特開平6−228873号公報
【特許文献3】特開2000−110077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トリエタノールアミンと脂肪酸又はその低級アルキルエステルとのエステル化反応は、その反応モル比でモノエステル体、ジエステル体、トリエステル体の生成モル比が一義的に決まることが知られており、トリエタノールアミンと脂肪酸とのエステル化物の4級アンモニウム塩の製造法としては、通常トリエタノールアミン1モルに対して脂肪酸又はその低級アルキルエステル2モルを用いてエステル化し更にアルキル化剤で4級化する方法が採用されている。本発明者らはこのモル比を低減させて特定の比率とした場合、柔軟効果が特に向上することを見出した。しかし、一方で低温貯蔵において組成物中のある種の成分が結晶化し、審美的に好ましくない状態になることがわかり、この解決が強く求められている。
【0004】
上記特許文献1〜3には、トリエタノールアミンと脂肪酸とのエステル化物の4級アンモニウム塩を含有する柔軟剤組成物であって、極めて優れた柔軟性と低温貯蔵安定性の両方を満足させる柔軟剤組成物については全く記載されていない。
【0005】
従って本発明の課題は、トリエタノールアミンと脂肪酸とのエステル化物の4級アンモニウム塩を含有する柔軟剤組成物であって、優れた柔軟性と低温貯蔵安定性の両方を満足させる柔軟剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量が4〜30質量%、(b)成分の含有量が0.5〜10質量%、(c)成分の含有量が0.01〜3質量%である液体柔軟剤組成物を提供する。
(a)成分:トリエタノールアミン(a1)と炭素数8〜26の脂肪酸又はその低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステル(a2)を(a1)/(a2)=1/1.9〜1/1.4のモル比で反応させて得られるエステル化合物を、さらに4級化した4級アンモニウム塩
(b)成分:一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル
1O(R2O)nH (1)
(式中、R1は炭素数8〜26のアルキル基又はアルケニル基、R2は炭素数2又は3のアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す5〜50の数である。)
(c)成分:一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン脂肪酸エステル
3COO(R4O)p5 (2)
(式中、R3COは炭素数8〜26のアシル基、R4は炭素数2又は3のアルキレン基、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す50〜200の数、R5は水素原子又はR3COで示される基である。)
(d)成分:水
また、本発明は、さらに(e)成分として、水溶性溶剤を含有する上記液体柔軟剤組成物、さらに(f)成分として、炭素数8〜26の脂肪酸と、水酸基を3〜6個有する炭素数3〜8の多価アルコールとのエステルを含有する上記液体柔軟剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体柔軟剤組成物は、優れた柔軟性を有し、更に低温貯蔵中の結晶化を抑制し良好な低温貯蔵安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、上記(a1)成分と(a2)成分とを、(a1)/(a2)=1/1.9〜1/1.4のモル比で反応させて得られるエステル化合物を、さらに4級化した4級アンモニウム塩である。
【0009】
(a1)/(a2)のモル比は、柔軟性が良好な柔軟剤組成物を得る観点から1/1.9以上であり、1/1.8以上が好ましい。また、高温貯蔵安定性が良好な柔軟剤組成物を得る観点から1/1.4以下であり、1/1.5以下が好ましい。
【0010】
(a2)成分は、炭素数8〜26、好ましくは14〜20の脂肪酸又はその低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステルであり、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、(a2)成分は、JIS K0070-1992に記載の方法で測定した酸価(AV)又は鹸化価(SV)が195〜220mgKOH/gであるものが好ましく、200〜215mgKOH/gであるものがより好ましい。
【0011】
(a2)成分の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪酸又はその低級アルキルエステル;牛脂、豚脂、パーム油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油等の天然油脂を分解・精製して得られる脂肪酸又はその低級アルキルエステル(好適にはメチルエステル、エチルエステル);これらの硬化脂肪酸又はそのメチルエステル、エチルエステル;硬化脂肪酸からリノール酸などの多不飽和脂肪酸を低減化した部分硬化脂肪酸又はそのメチルエステル、エチルエステル等が挙げられ、これらの中でも特にオレイン酸、ステアリン酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、大豆脂肪酸、硬化大豆脂肪酸、及びこれらの低級アルキルエステルが好適である。
【0012】
(a1)成分と(a2)成分との反応において(a2)成分として脂肪酸を用いる場合には、エステル化反応温度を140〜230℃で縮合水を除去しながら反応させることが好ましい。反応を促進させる目的から通常のエステル化触媒を用いても差し支えなく、例えば硫酸、燐酸などの無機酸、酸化錫、酸化亜鉛などの無機酸化物、テトラプロポキシチタンなどのアルコラートなどを選択することができる。反応の進行はJIS K0070-1992に記載の方法で酸価(AV)及び鹸化価(SV)を測定することで確認を行い、好適にはAVが10mgKOH/g以下、好ましくは6mgKOH/g以下となった時、エステル化反応を終了する。得られるエステル化合物は、SVが150〜170mgKOH/gであることが好ましく、155〜168mgKOH/gであることがより好ましい。
【0013】
また(a1)成分と(a2)成分との反応において(a2)成分として脂肪酸低級アルキルエステルを用いる場合には、反応は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは100〜150℃の温度で生成する低級アルコールを除去しながら行う。反応促進のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリや、メチラート、エチラートなどのアルコキシ触媒を用いることも可能である。反応の進行はガスクロマトグラフィーなどを用いて脂肪酸低級アルキルエステルの量を直接定量することが好適であり、未反応脂肪酸低級アルキルエステルが仕込みの脂肪酸低級アルキルエステルに対して10面積%以下、特に6面積%以下で反応を終了させることが好ましい。得られるエステル化合物は、SVが150〜170mgKOH/gであることが好ましく、155〜168mgKOH/gであることがより好ましい。
【0014】
次にこのようにして得られたエステル化合物の4級化を行うが、4級化に用いられるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が好適である。アルキル化剤として、メチルクロリドを用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合は、エタノールやイソプロパノールなどの溶媒を、エステル化合物に対して10〜50質量%程度混合した溶液をチタン製のオートクレーブなどの加圧反応機に仕込み、密封下30〜120℃の反応温度でメチルクロリドを圧入させて反応させる。このときメチルクロリドの一部が分解し塩酸が発生する場合があるため、アルカリ剤を少量加えることで反応が効率よく進むため好適である。メチルクロリドとエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してメチルクロリドを1〜1.5倍当量用いることが好適である。
【0015】
アルキル化剤としてジメチル硫酸、ジエチル硫酸を用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合、エタノールやイソプロパノールなどの溶媒をエステル化合物に対して10〜50質量%程度混合した溶液を40〜100℃に加熱混合し、ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を滴下して行われる。ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸とエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を0.9〜1.1倍当量、特に0.95〜0.99倍当量用いることが好ましい。
【0016】
[(b)成分]
本発明の(b)成分は前記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテルである。
【0017】
一般式(1)において、R1は炭素数8〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数10〜22のアルキル基が好ましく、炭素数12〜18のアルキル基がより好ましい。R2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、エチレン基が好ましい。nは柔軟剤組成物の低温貯蔵時の粘度増加を抑制する観点から5以上の数であり、10以上の数が好ましく、15以上の数がより好ましい。また、柔軟剤組成物の高温貯蔵時の粘度増加を抑制する観点から50以下であり、45以下が好ましく、40以下がより好ましい。
【0018】
[(c)成分]
本発明の(c)成分は前記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン脂肪酸エステルである。
【0019】
一般式(2)において、R3COは炭素数8〜26のアシル基であり、炭素数10〜22のアシル基が好ましく、炭素数12〜18のアシル基がより好ましい。R4は炭素数2又は3のアルキレン基であり、エチレン基が好ましい。pは、柔軟剤組成物の良好な低温貯蔵安定性を得る観点から50以上の数であり、60以上の数が好ましく、80以上の数がより好ましい。また、柔軟剤組成物の高温貯蔵時の粘度増加を抑制する観点から200以下の数であり、180以下の数が好ましく、160以下の数がより好ましい。
【0020】
(c)成分はポリオキシアルキレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンジ脂肪酸エステル又はこれらの混合物のいずれでも良いが、ポリオキシアルキレンモノ脂肪酸エステルが好ましく、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステルがより好ましい。
【0021】
[(d)成分]
本発明の(d)成分は水であり、水道水などを用いることもできるが、微量に混入する重金属を除いたイオン交換水や、次亜塩素酸などの塩素を1〜50ppm含有する塩素滅菌水などを用いることが好適であり、防腐の点から塩素滅菌水を用いることが好ましい。
【0022】
[その他の成分]
本発明では貯蔵安定性をさらに向上させる目的から、(e)成分として水溶性溶剤を用いることが好ましい。
【0023】
水溶性溶剤としては、1)炭素数1〜3の1価アルコール、2)炭素数2〜6の2価又は3価のグリコール、3)炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基もしくはベンジル基を有するグリコールエーテル類、4)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルを挙げることができる。
【0024】
1)としてはエタノール、プロパノールが好ましく、2)としてはエチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、3)としてはエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル等を挙げることができる。ここでアルキル基は炭素数1〜5である。4)としてはアミルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル等を挙げることができる。
本発明では1)、2)が好適であり、特にエチレングリコールが最も好ましい。
【0025】
本発明ではさらに貯蔵安定性を向上させる目的から(f)成分として、炭素数8〜26の脂肪酸と、水酸基を3〜6個有する炭素数3〜8の多価アルコールとのエステルを含有することが好ましい。脂肪酸としては炭素数12〜22の脂肪酸が好ましく、多価アルコールとしてはグリセリン、ペンタエリスルトール、ソルビトールが好適である。
【0026】
(f)成分の具体例としては、炭素数8〜26の脂肪酸の、モノ、ジ、トリグリセリド、ペンタエリスリトールモノ、ジ、トリ、テトラエステル、ソルビトールモノ、ジ、トリエステル等を挙げることができる。
【0027】
本発明ではさらに、貯蔵安定性を向上させる目的から必要に応じて(g)成分として電解質を含有することができる。電解質としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びパラトルエンスルホン酸ナトリウムが貯蔵安定性の点から好ましい。
【0028】
[液体柔軟剤組成物]
本発明の液体柔軟剤組成物は、必須成分として(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有する。
【0029】
本発明の組成物中の(a)成分の含有量は、柔軟効果及び貯蔵安定性の点から、4〜30質量%、好ましくは8〜25質量%、特に好ましくは12〜20質量%である。また、(b)成分の含有量は、貯蔵安定性の点から、0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%、特に好ましくは1.5〜6質量%である。また、(c)成分は低温貯蔵における結晶化を抑制する最も重要な成分であり、組成物中に少量含有することで優れた効果を付与することができる。本発明の組成物中の(c)成分の含有量は、低温貯蔵における結晶化を抑制する観点から、0.01質量%以上であり、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、柔軟剤組成物の高温貯蔵時の粘度増加を抑制する観点から、3質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。本発明の組成物中の(d)成分の含有量は、30〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましく、40〜85質量%が特に好ましい。
【0030】
(e)成分、(f)成分、(g)成分は任意ではあるが貯蔵安定性、特にゲル化や分離などの現象を抑制できるため重要な成分である。本発明の組成物中の(e)成分の含有量は3〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。(f)成分の含有量は0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましい。(g)成分の含有量は0.001〜2質量%が好ましく、0.005〜2質量%がより好ましく、0.01〜2質量%が特に好ましい。
【0031】
本発明の柔軟剤組成物は、通常柔軟剤組成物に使用される香料(特に好ましくは、特開平8−113871号公報記載の成分(c)及び(d)にて示された香気成分の組み合わせ)を含有してもよい.また、柔軟性を向上させる目的からシリコーン化合物、審美的観点から染料を含有することも差し支えない。さらに、消泡剤も含有することができる。
【0032】
本発明の液体柔軟剤組成物の25℃におけるpHは好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6であり、通常の酸剤やアルカリ剤でpHを調整することができる。
【0033】
本発明の(a)成分であるエステル型柔軟基剤の低温保存時の結晶化と、本発明の(b)成分であるエーテル型非イオン性界面活性剤及び(c)成分であるエステル型非イオン性界面活性剤の結晶化抑制効果の作用機構は必ずしも解明されているわけではないが、本発明の(a)成分である、(a1)成分と(a2)成分を、モル比(a1)/(a2)が1/1.9〜1/1.4となる範囲で反応させて得られるエステル化合物を4級化した4級アンモニウム塩の柔軟性付与効果は特に優れるものの、このモル比範囲で生成するモノ、ジ、トリエステル体混合物組成に起因して、低温における溶解性が低下しパール状、針状等の結晶が生成する。この(a)成分のエステル型柔軟基剤に対し、本発明の(b)成分及び(c)成分の界面活性剤を特定割合で含有させる事によって、本発明の柔軟剤組成物の低温での溶解性を著しく改善することができる。特に、(c)成分の効果は顕著である。又、(e)成分、(f)成分、(g)成分の併用により、この効果は更に助長される。
【実施例】
【0034】
以下の例において、酸価(AV)及び鹸化価(SV)は、JIS K0070-1992に記載の方法で測定した値である。また、%は特記しない限り質量%である。
【0035】
合成例1
攪拌機、窒素導入管、温度計、及び脱水管を具備する1L4つ口フラスコにトリエタノールアミンと、牛脂脂肪酸とパーム油由来脂肪酸を質量比で1/1で混合し部分的に水添した脂肪酸(AV=206mgKOH/g、ヨウ素価38、不飽和基を2個有する脂肪酸の含有量7モル%)とを1/1.65のモル比で混合した溶液500gを仕込み、攪拌下窒素を導入し、生成する水を脱水管で系外に除去しながら約3時間かけて180℃まで加熱した。180〜230℃の温度にさらに5時間保持し、反応物の一部を採取し、AVとSVを測定し、AV=2.5mgKOH/g、SV=163.2KOH/gであることを確認した後、室温まで冷却した。
【0036】
得られたエステル化合物の全アミノ基窒素含有量(JIS K7245-2000の全アミノ基窒素含有量の測定方法に従うものとする。)を求め、計算から得られるアミノ基の当量数に対して0.98当量倍のジメチル硫酸で4級化反応を行う。
具体的にはエステル化反応終了物300gを攪拌機、窒素導入管、滴下ロート、温度計、及び冷却管を具備する1L5つ口フラスコに仕込み、窒素を導入しながら攪拌下50℃まで加熱昇温する。滴下ロートより全アミノ基窒素含有量から求めたアミノ基の当量数に対して0.98当量倍のジメチル硫酸を1時間かけて滴下し、50℃でさらに2時間攪拌した。反応終了後、エタノールで90%に希釈し、4級アンモニウム塩を得た。
【0037】
合成例2
合成例1において、トリエタノールアミンと、牛脂脂肪酸とパーム油由来脂肪酸の混合水添脂肪酸とのモル比を1/1.75にした以外は同様の方法でエタノールで90%に希釈した4級アンモニウム塩を得た。合成途中で得られるエステル化合物のAVとSVを測定し、AV=3.1mgKOH/g、SV=165.9mgKOH/gであることを確認した。
【0038】
比較合成例1
合成例1において、トリエタノールアミンと、牛脂脂肪酸とパーム油由来脂肪酸の混合水添脂肪酸とのモル比を1/2.0にした以外は同様の方法でエタノールで90%に希釈した4級アンモニウム塩を得た。合成途中で得られるエステル化物のAVとSVを測定し、AV=3.8mgKOH/g、SV=172.6mgKOH/gであることを確認した。
【0039】
実施例1〜8及び比較例1〜7
以下に示す配合成分を用い、以下に示す方法で表1に示す組成の液体柔軟剤組成物を調製した。得られた液体柔軟剤組成物について、下記方法で低温貯蔵安定性及び柔軟性を評価した。結果を表1に示す。
【0040】
<配合成分>
(a)成分
a−1:合成例1で製造した4級アンモニウム塩(10%エタノール含有)
a−2:合成例2で製造した4級アンモニウム塩(10%エタノール含有)
(a’)成分:(a)成分の比較品
a'−1:比較合成例1で製造した4級アンモニウム塩(10%エタノール含有)
(b)成分
b−1:ポリオキシエチレン(20モル)ラウリルエーテル
(c)成分
c−1:ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル(EO付加モル数=95)
c−2:ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル(EO付加モル数=140)
c−3:ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル(EO付加モル数=140)
(c’)成分:(c)成分の比較品
c'−1:ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル(EO付加モル数=12)
(e)成分
e−1:エチレングリコール
(f)成分
f−1:ステアリン酸モノグリセライド
f−2:ペンタエリスリトールモノステアレート
(g)成分
g−1:パラトルエンスルホン酸ナトリウム
その他の成分
h−1:染料(青色一号)
h−2:香料(特開平8−113871号公報記載の成分(c)及び(d)にて示された香気成分の組み合わせ)
h−3:消泡剤
<組成物の調製方法>
(b)成分、(e)成分及び(h−3)をイオン交換水に分散させ、55℃に加熱する。これに、60℃に加熱溶解させた(a)成分又は(a’)成分、(c)成分又は(c’)成分、及び(f)成分を加えホモミキサーで10分間攪拌する。その後、(g−1)、(h−1)及び(h−2)を加え、再びホモミキサーで5分攪拌し、室温まで冷却する。
【0041】
<低温貯蔵安定性の評価方法>
液体柔軟剤組成物を広口規格ビン(PS−No.6)に35mL注ぎキャップを閉め、5℃の恒温槽にて保存を行い、目視で外観を観察し、下記評価基準で評価した。尚、この評価方法において、30日間結晶生成が見られなければ、貯蔵安定性の観点から効果があると判断できる。
【0042】
・評価基準
61日以上保存しても結晶が見られない:◎
31日〜60日保存で結晶の生成がみられる:〇
30日保存以内で結晶の生成が見られる:×
<柔軟性の評価方法>
(1)柔軟処理タオルの調整
市販の木綿タオル(白色、34cm×86cm、68g/1枚、綿100%)24枚を市販の衣料用洗剤(花王(株)アタック)を用いて洗濯機で洗浄した(東芝製2槽式洗濯機VH−360S1、洗剤濃度0.067%、水道水30L(水温20℃)使用、水温20℃、10分間)。その後洗浄液を排出し、3分間脱水後、30Lの水道水(水温20℃)を注水した。5分間攪拌後、濯ぎ水を排出し、3分間脱水した。次に30Lの水道水(水温20℃)を注水し、5分間攪拌後、濯ぎ水を排出し、3分間脱水した。このサイクルを5回繰り返した後、室温で風乾し、風乾した木綿タオルの質量を測定した。次にこの木綿タオルを衣料用洗剤(花王(株)アタック)を用いて洗濯機で洗浄した(東芝製2槽式洗濯機VH−360S1、洗剤濃度0.0667%、風乾した木綿タオルの質量の17倍の質量の水使用、水温20℃、5分間)。その後洗浄液を排出し、3分間脱水後、風乾した木綿タオルの質量の17倍の質量の水道水(水温20℃)を注水した。5分間攪拌後、濯ぎ液を排水し、3分間脱水した。次に風乾した木綿タオルの質量の17倍の質量の水道水(水温20℃)を注水した。次に風乾した木綿タオルの質量の0.47%に相当する柔軟剤組成物を添加し3分間攪拌した。その後、水を排出し、3分間脱水し室温で風乾した。
【0043】
(2)風合い評価
上記柔軟処理した木綿タオルを八つ折りにし、両手で軽く握りしめた時の風合いを10人のパネラー(30代男性10人)により、下記の基準で判定し、平均点を求めた。尚、この評価において、0点を超える評価点は、基準処理布に柔らかさ付与の観点から効果が有ると判断できる。
【0044】
・評価基準
+1:(a’−1)を配合した柔軟剤組成物で処理した処理布(基準処理布)に比べて柔らかい
0:(a’−1)を配合した柔軟剤組成物で処理した処理布(基準処理布)に比べて柔らかさは同等であった
−1:(a’−1)を配合した柔軟剤組成物で処理した処理布(基準処理布)の方が柔らかい
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量が4〜30質量%、(b)成分の含有量が0.5〜10質量%、(c)成分の含有量が0.01〜3質量%である液体柔軟剤組成物。
(a)成分:トリエタノールアミン(a1)と炭素数8〜26の脂肪酸又はその低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステル(a2)を(a1)/(a2)=1/1.9〜1/1.4のモル比で反応させて得られるエステル化合物を、さらに4級化した4級アンモニウム塩
(b)成分:一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル
1O(R2O)nH (1)
(式中、R1は炭素数8〜26のアルキル基又はアルケニル基、R2は炭素数2又は3のアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す5〜50の数である。)
(c)成分:一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン脂肪酸エステル
3COO(R4O)p5 (2)
(式中、R3COは炭素数8〜26のアシル基、R4は炭素数2又は3のアルキレン基、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す50〜200の数、R5は水素原子又はR3COで示される基である。)
(d)成分:水
【請求項2】
(a2)成分が、JIS K0070-1992に記載の方法で測定した酸価(AV)又は鹸化価(SV)が195〜220mgKOH/gであり、(a1)と(a2)を反応させて得られるエステル化合物のAVが10mgKOH/g以下、SVが150〜170mgKOH/gである請求項1記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
さらに(e)成分として、水溶性溶剤を含有する請求項1又は2記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
さらに(f)成分として、炭素数8〜26の脂肪酸と、水酸基を3〜6個有する炭素数3〜8の多価アルコールとのエステルを含有する請求項1〜3いずれかに記載の液体柔軟剤組成物。

【公開番号】特開2008−150755(P2008−150755A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342282(P2006−342282)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】