説明

液体洗浄剤組成物

【課題】半導体プリント基板の製造工程において付着するフラックスを高度に除去できる洗浄剤組成物に関するものであり、更に、引火点が高い特徴を有する取り扱い安全性の観点に優れた液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される芳香族化合物を含有する液体洗浄剤組成物により、電子・電気部品、光学部品、精密機械部品、自動車部品、治具に付着するフラックス、アスファルトピッチ、ワックス、松脂、油脂、鉱油などからなる機械油、植物油、グリース、レジスト、接着剤、インク等の汚れの除去に好適に使用しうる洗浄剤組成物




(式中、RはOCH、CHOCHを示し、RはCH、OCH、CHOCHを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子・電気部品の汚れの除去に好適に使用しうる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プリント基板における最終製品の高品質を確保するためには、半田付けの際に使用されるロジン系半田フラックスの高清浄度な洗浄が要求されている。また、引火点が高いなどの取り扱い安全性の観点に優れることが求められている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
本分野の洗浄剤に関しては、以下の特許文献の提案を見ることが出来る。
【特許文献−1】特開平04−065495号公報
【特許文献−2】特開2009−190089号公報 特許文献―1は、グリコールエーテル系化合物、炭化水素化合物、非イオン性界面活性剤からなるロジン系半田フラックス洗浄剤が提案されているが、引火点が70℃と低く、慎重に取り扱う必要があり安全性に課題がある。特許文献―2は、ベンジルアルコールを主体にアミノアルコールを含有するハンダフラックス除去用洗浄剤が提案されているが、生産性向上の為の短時間の洗浄においては、洗浄性が不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、半導体プリント基板の製造工程において付着するフラックスを高度に除去できる洗浄剤組成物に関するものであり、更に、引火点が高い特徴を有する取り扱い安全性の観点に優れた液体洗浄剤組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族系溶剤を用いることにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
【0006】

従って本発明は、下記洗浄剤組成物を提供する。
〔1〕
(A)下記一般式(1)で表される芳香族化合物(化1)を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。(式中、RはOCH、CHOCHを示し、RはCH、OCH、CHOCHを示す。)
【0007】
【化1】


【0008】
〔2〕
(B)下記一般式(2)で表される化合物(化2)、及び(C)水をさらに混合してなる液体洗浄剤洗浄剤組成物
【0009】
【化2】


【0010】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ベンジル基 n=1〜30の数を示す)

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体プリント基板の製造工程において付着するフラックスを高度に除去し、更に、引火点が高い特徴を有する取り扱い安全性の観点に優れた液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の液体洗浄剤組成物は、前記一般式(1)で表される芳香族化合物(以下
「A成分」という)を含有するものである。
<A成分>
前記一般式(1)中、Rは、OCH又はCHOCHを示す。 Rは、CH、OCH又はCHOCHを示す。Rの結合位置は、ベンゼン環のo−位、m−位、又はp−位のいずれでもよく、工業的に容易に入手可能であることから、p−位が好ましい。
【0013】
(A)成分として具体的には、たとえば、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、o−メトキシ−α−メトキシトルエン、m−メトキシ−α−メトキシトルエン、p−メトキシ−α−メトキシトルエン、α−メトキシ−o−キシレン、α−メトキシ−m−キシレン、α−メトキシ−p−キシレン、o−キシレングリコールジメチルエーテル、m−キシレングリコールジメチルエーテル、p−キシレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0014】
(A)成分は、前記Rと前記Rの2つの置換基を有するものであればよく、なかでも安価で入手しやすいp−キシレングリコールジメチルエーテルがもっとも好ましい。
【0015】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の洗浄剤組成物における(A)成分の含有割合は、10質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。(A)成分の含有割合が下限値以上であると、製造工程において付着するフラックスを高度に除去できる。一方、(A)成分の含有割合の上限値は、100質量%であってもよく、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明の液体洗浄剤組成物は、さらに前記一般式(2)で表される化合物(以下「B成分」という)と水とを含有すると液安定性、並びに一層の取り扱い安全性が向上する。
<B成分>
前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フェニル基又はベンジル基である。nはエチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数を示し、1〜30の数である。なかでも、当該洗浄剤組成物の液安定性(均一性、透明性)がより向上することから、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、Rのアルキル基は、原料を安定に入手確保しやすいことから、炭素数4〜8が好ましい。nは、液安定性(均一性、透明性)がより向上することから、1〜20が好ましい。(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(B)成分の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。(B)成分の含有割合が下限値以上であると、液安定性がより向上する。一方、(B)成分の含有割合の上限値は、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
(B)成分として具体的には、たとえば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレグリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2−エチルヘキサノールEO4モル付加体、2−エチルヘキサノールEO8モル付加体、2−エチルヘキサノールEO8モル付加体、2−エチルヘキサノールEO20モル付加体、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0018】
<C成分>
(C)成分は水であって、特に制限されず、たとえば蒸留水、イオン交換水、市水を使用できる。(C)成分の含有量は5〜40質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。(C)成分の配合によって、組成物
の取り扱い安全性が向上する。
【0019】

<任意成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記(A)〜(C)成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、たとえば、炭化水素溶剤、プロトン性極性有機溶媒(ただし、前記式(2)で表される化合物を除く)、非プロトン性極性有機溶媒、炭素数4以上のアルコール、酸化防止剤、防錆剤、消泡剤、pH調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の液体洗浄剤組成物(原液)のpHは、特に限定されず、25℃でpH3〜12程度の範囲内であることが好ましく、pH5〜10がより好ましく、pH6〜8が特に好ましい。当該pHが前記範囲であれば、被洗浄物に対して腐食などの不具合を生じる可能性が低くなる。本発明において、液体洗浄剤組成物のpHは、当該洗浄剤組成物を25℃に調温し、ガラス電極式pHメータ(HORIBA pH METER D−51、(株)堀場製作所製)を用い、ガラス電極を、当該洗浄剤組成物に直接に浸漬して、1分間経過後に示すpHの値をいう。
【0021】
本発明の液体洗浄剤組成物の粘度は、特に限定されず、25℃で15mPa・s以下であることが好ましい。本発明において、液体洗浄剤組成物の粘度は、25℃に調温した洗浄剤組成物を、DV−I+VISCOMETER(製品名、BROOKFIELD社製)を用い、ロータNo.1で60rpm、60秒後の測定条件により測定した値(mPa・s)を示す。
【0022】
本発明は 光学部品、精密機械部品、自動車部品、治具に付着するフラックス以外に、アスファルトピッチ/ワックス/松脂/油脂/鉱油などからなる機械油/植物油/グリース/レジスト/接着剤/インク等の汚れに対しても、高度に除去する組成物を提供できるものである。
例えば、電子機器の製造に使用する精密金属部品は、その加工、処理、組立時において油脂、機械油、グリース等の汚れが付くことがさけられない。これら汚れは、最終製品の性能に大きな影響を与えることから、高度な脱脂洗浄が要求される。金属部品の組立、加工等に使用される治工具類も同様である。これらの汚れに対して、本組成物は有効な洗浄剤として提供できるものである。
【0023】
<洗浄方法>
前記液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬洗浄、噴流洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、超音波洗浄などが挙げられる。特に超音波洗浄により、狭い隙間に存在する汚れを効果的に除去することができる。
<実施例>
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて本洗浄剤組成物の有効性を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。尚、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示し、表中の各成分量は組成物中における純分換算した質量%である。表1に示す組成の洗浄剤組成物を常法により調製した。得られた洗浄剤組成物について下記評価を行った。ここに実施例及び比較例に用いた成分を以下に示す。
(A)成分
p−キシレングリコールジメチルエーテル(商品名「PXDM」、イハラニッケイ化学工業製) 略号:PXDM
(A)成分比較品
ドデカン(商品名「カクタスノルマルパラフィンN12D」、ジャパンエナジー製)
ベンジルアルコール(関東化学製)
リモネン(東京化成工業製)
(B)成分
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名「ブチセノール30」、協和発酵ケミカル製)略号:C4E3
ジエチレグリコールモノヘキシルエーテル(日本乳化剤製)略号:C6E2
2−エチルヘキサノールEO20モル付加体(商品名「ニューコール1020」、日本乳化剤製)略号:C8E20

(C)成分
イオン交換水


<モデル汚れの作製>
1)ロジン系フラックス汚れ
プリント基板(東和テック社製 FR−4)に、ロジン系フラックス(サンハヤト(株)製 H−10F)を0.1g塗布し、200℃で15分間焼成を行ってテストピースとした。
2)ロジン汚れ
プリント基板(東和テック社製 FR−4)に、ロジン粉末(関東化学(株)製)を0.1g塗布し、200℃で15分間焼成を行ってテストピースとした。
【0024】

<洗浄実験>
1)超音波洗浄
200ccガラスビーカーに各種洗浄液を150mL入れ、液温を40℃に保った。ここに、テストピースを入れ、1分間超音波照射(28KHz、0.5W/cm)し、洗浄実験を行った。洗浄実験後のテストピースは、10分間温風乾燥し、洗浄液を蒸発除去した。肉眼によりロジン系フラックス汚れ並びにロジン汚れの残渣を以下の基準で確認することで、洗浄力を評価した。
○:汚れの残渣が全く無い(除去率100%)
△:汚れの残渣が僅かに見られる(除去率50%以上 100%未満)
×:汚れの残渣が多く見られる(除去率50%未満)
2)浸漬洗浄
200ccガラスビーカーに各種洗浄液を150mL入れ、液温を40℃に保った。ここに、テストピースを入れ、浸漬洗浄実験を行った。肉眼で観察し、汚れが完全に洗浄液に溶解するまでの時間を測定し、以下の評価基準で浸漬洗浄力を評価した。
○:溶解時間が10分未満である
△:溶解時間が10〜20分である
×:溶解時間が20分を超える

<安全性>
組成物の引火点を測定することで、安全性を以下の基準で評価した。
◎:非危険物
○:引火点100℃以上
△:引火点70℃以上100℃未満
×:危険物第4類2石(引火点21℃以上70℃未満)
尚、引火点は、クリーブランド開放法(JISK2265−4)に準拠し、測定した。また、(A)成分比較品については、下記文献値を用いた。
※1:メーカーMSDS
※2:溶剤ハンドブック第6版(講談社サイエンティフィク)

<液安定性>
組成物の液安定性を以下の基準で評価した
○:調製後1日静置で均一透明を維持
×:調製後1日静置で2層分離する

表1に実施例、比較例を示す。
【0025】
【表1】




【0026】
表1の結果から、本発明品はロジン系フラックス汚れ、ならびに、ロジン汚れに対する高い洗浄性と、取り扱い安全性の観点に優れた組成物であることが判る。
【0027】

実施例4
以下に示す組成の「自動車部品に付着した鉱油系の機械油汚れ落としの洗浄剤組成物」を調製した。高清浄度な洗浄力を与え、取り扱い安全性の観点に優れた組成物であった。
【0028】

・PXDM (50重量%)
・2−エチルヘキサノールEO20モル付加体 (20重量%)
・ヘキシルジグリコール (10重量%)
・水 (20重量%)


実施例5
以下に示す組成の「光学レンズに付着したアスファルトピッチの固定用保護膜汚れ落としの洗浄剤組成物」を調整した。高清浄度な洗浄力を与え、取り扱い安全性の観点に優れた組成物であった。
【0029】

・PXDM (45重量%)
・トリエチレングリコールモノフェニルエーテル (25重量%)
・2−エチルヘキサノールEO20モル付加体 (10重量%)
・水 (20重量%)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される芳香族化合物(化1)を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。(式中、RはOCH、CHOCHを示し、RはCH、OCH、CHOCHを示す。)
【化1】





【請求項2】
(B)下記一般式(2)で表される化合物(化2)、及び(C)水をさらに混合してなる請求項1記載の液体洗浄剤洗浄剤組成物
【化2】



(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、 nはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、1〜30の数を示す。)




























【公開番号】特開2012−131878(P2012−131878A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284171(P2010−284171)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】