説明

液体浮力を利用した揚水式発電装置

【課題】液体浮力を利用し発電用水を揚水させるのに要するエネルギーを循環させて有効利用する。
【解決手段】本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、有底筒状の水槽1、浮水槽浮力用密閉空間部3および発電用水揚水槽部4からなる浮水槽2、ならびにガイド部材5からなるガイド付浮水部Aと、水圧管9を付設してなる上部発電用水槽8、水車10および発電機11、ならびに下部発電用水槽7からなる水車式発電部Bと、上部浮力用水槽20、複数の中間浮力用水槽15および下部浮力用水槽13からなる浮力用水給排水部Cと、揚水管19および揚水ポンプ18からなるパイプ付揚水部Dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体浮力を利用した揚水式発電装置に関する。詳しくは、浮力用水の水位を変化させることにより浮力用水が浮水槽に与える浮力を利用して浮水槽を昇降させ、浮水槽の上部の発電用水を上部発電用水槽に移動させる液体浮力を利用した揚水式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の揚水式発電装置としては、揚水ポンプまたはバケット等による装置が一般的であったが、本願出願人は、液体浮力を利用した新たな揚水式発電装置をすでに提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4349515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、液体の比重より小さい比重を持つ物体を液体に浮かべると、物体は浮力を受け、液面が上昇すると物体も上昇し、液面が下降すると物体も下降する。液面を昇降させるのに要する液体のエネルギーは上昇と下降とで同量であり、これを循環できれば省エネルギーが可能である。そして、高低差のある運河・河川等(パナマ運河・中国長江宜昌)での船舶の垂直通行は自然界の循環エネルギーを有しているので可能であり、しかも環境にもよい。
【0005】
本発明の目的は、上述の点に鑑み、浮水槽浮力用密閉空間部の上に発電用水揚水槽部を設けた浮水槽をガイド部材により昇降自在に案内するとともに、水槽からの浮力用水の排水により浮水槽を下降させて下部発電用水槽から発電用水揚水槽部への排水を可能にするとともに、浮力用水の水槽への給水により浮水槽を上昇させて発電用水揚水槽部から上部発電用水槽への発電用水の給水を可能にするようにした揚水式発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、複数の中間浮力用水排水バルブおよび下位浮力用水排水バルブを付設する有底筒状の水槽、該水槽に浮水用水間隙を介して昇降自在に遊嵌する浮水槽浮力用密閉空間部および該浮水槽浮力用密閉空間部の上に載置されてなり上下に複数の発電用水給水バルブを付設する発電用水揚水槽部からなる浮水槽、ならびに該浮水槽を昇降自在に案内するガイド部材からなるガイド付浮水部Aと、前記ガイド付浮水部Aの側方の前記水槽より上位となる位置に配置され、水圧管を付設してなる上部発電用水槽、前記水圧管に放流される発電用水により発電をする水車および発電機、ならびに該水車および発電機により発電に使用された発電用水を貯水し上下に複数の発電用水排水バルブを付設する下部発電用水槽からなる水車式発電部Bと、前記ガイド付浮水部Aの前記水槽の側方に配置され、前記水槽に浮力用水を給水する上部浮力用水給水バルブを付設する上部浮力用水槽、前記水槽に浮力用水を給水する中間浮力用水給水バルブを付設するとともに前記水槽に付設された中間浮力用水排水バルブから浮力用水を排水される複数の中間浮力用水槽、および前記水槽に浮力用水を給水する浮力用水給水バルブを付設するとともに前記水槽に付設された下部浮力用水排水バルブから浮力用水を排水される下部浮力用水槽からなる浮力用水給排水部Cと、前記下部浮力用水槽と前記上部浮力用水槽とを連結する揚水管、および該揚水管を通じて前記下部浮力用水槽に貯水した浮力用水を前記上部浮力用水槽へ揚水する揚水ポンプからなるパイプ付揚水部Dとを備え、前記上部浮力用水槽および前記中間浮力用水槽から浮力用水を前記水槽に順次給水することにより前記浮水槽浮力用密閉空間部の浮力により前記浮水槽を上昇させ、前記発電用水揚水槽部が前記上部発電用水槽の上縁を越えたときに前記発電用水揚水槽部から発電用水を前記上部発電用水槽に給水し、前記発電用水揚水槽部の発電用水が前記上部発電用水槽に給水されて前記浮水槽の総重量が減少することにより前記浮水槽がさらに上昇し、前記上部発電用水槽から発電用水を前記水圧管を通じて放流させることにより前記水車および前記発電機により発電し、発電に使用された発電用水を前記下部発電用水槽に貯水し、前記水槽から前記中間浮力用水槽および前記下部浮力用水槽に浮力用水を順次排水することにより前記浮水槽を下降させ、前記発電用水揚水槽部が最下位に達したときに前記下部浮力用水槽に貯水された浮力用水を前記揚水ポンプにより前記揚水管を通じて前記上部浮力用水槽に揚水することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、前記浮力用水給排水部Cの複数の中間浮力用水槽が、前記水槽の異なる側方に分散して配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、前記水車式発電部Bを共通にして、前記ガイド付浮水部A、前記浮力用水給排水部Cおよび前記パイプ付揚水部Dからなる揚水装置部を複数設けるようにしたことを特徴する。
【0009】
請求項4記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、前記上部浮力用水槽の前記上部浮力用水給水バルブおよび前記中間浮力用水槽の前記中間浮力用水給水バルブのそれぞれにマイクロ発電機を付設し、前記上部浮力用水槽および前記中間浮力用水槽から浮力用水を前記水槽に給水するときにも各マイクロ発電機により発電が行われることを特徴する。
【0010】
請求項5記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、前記水槽の前記中間浮力用水排水バルブおよび前記下位浮力用水排水バルブのそれぞれにマイクロ発電機を付設し、前記水槽から浮力用水を前記中間浮力用水槽および前記下部浮力用水槽に排水するときにも各マイクロ発電機により発電が行われることを特徴する。
【0011】
請求項6記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、前記浮水槽の浮水槽浮力用密閉空間部に、水素ガス,ヘリウムガス等の空気より軽い気体を封入してなることを特徴する。
【0012】
請求項7記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置は、前記水槽の下部に全浮力用水排水バルブを付設し、前記水槽から浮力用水を全浮力用水排水槽に排水できるようにしたことを特徴する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上説明したように構成されているので、次のような多くの効果を有する。
【0014】
(1) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、浮水槽浮力用密閉空間部の上に発電用水揚水槽部を設けた浮水槽をガイド部材により昇降自在に案内するとともに、水槽からの浮力用水の排水により浮水槽を下降させて下部発電用水槽から発電用水揚水槽部への発電用水の排水を可能にするとともに、浮力用水の水槽への給水により浮水槽を上昇させて発電用水揚水槽部から上部発電用水槽へ発電用水の給水を可能にするようにし、ガイド部材により浮水槽の昇降時の横ブレを少なくして、安定した昇降を行うことができる。
【0015】
(2) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、水槽と上部浮力用水槽、中間浮力用水槽および下部浮力用水槽との間の浮力用水の移動のみで水槽内の浮力用水の水位を調整して浮水槽の昇降を行い、下部発電用水槽から上部発電用水槽への発電用水の揚水を実現することができるので、下部浮力用水槽から上部浮力用水槽への浮力用水の移動に要するきわめて少ないエネルギーで発電を行うことができる。なお、給排水バルブの開閉に要する電磁弁の消費電力が必要であるが、これに要するエネルギーは微少である。
【0016】
(3) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、発電用水揚水槽部の発電用水給水バルブを垂直方向に複数設けることにより、発電用水給水バルブの高さ位置が上部発電用水槽の上縁を越えたときに発電用水給水バルブを開放して発電用水揚水槽部内の発電用水を上部発電用水槽に順次給水するので、これにより浮水槽の総重量が減少して浮水槽をさらに上昇させることができる。
【0017】
(4) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、中間浮力用水槽間の間隔を詰めるとともに複数の中間浮力用水槽を水槽の異なる側方に分散して配置することにより、1つの中間浮力用水槽の容量を小さくすることができ、中間浮力用水槽の多数化小容量化により下部浮力用水槽の容量も小さくなる。その結果、下部浮力用水槽から浮力用水を上部浮力用水槽に揚水するための揚水ポンプの容量も小さくすることができる。
【0018】
(5) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、水車式発電部Bを共通にして、ガイド付浮水部A、浮力用水給排水部Cおよびパイプ付揚水部Dからなる揚水装置部を複数設けるようにしたので、一つの揚水装置部で浮水槽が上昇しているときに、他の揚水装置部で浮水槽が下降しているようにすることができ、複数の揚水装置部から上部発電用水槽に発電用水を交互に貯水することができる。これにより、1つの水車式発電部Bで連続的に円滑な発電をすることができるので、水車式発電部Bにおける発電を効率良く行うことができ、単位時間当たりの発電量を増加させることができる。
【0019】
(6) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、上部浮力用水槽の上部浮力用水給水バルブおよび中間浮力用水槽の中間浮力用水給水バルブのそれぞれにマイクロ発電機を付設し、上部浮力用水槽および中間浮力用水槽から浮力用水を水槽に給水するときにも各マイクロ発電機により発電が行われるようにしたので、総発電量を増やすことができるとともに単位時間当たりの発電量を増やすことができる。
【0020】
(7) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、水槽の中間浮力用水排水バルブおよび下位浮力用水排水バルブのそれぞれにマイクロ発電機を付設し、水槽から浮力用水を中間浮力用水槽および下部浮力用水槽に排水するときにも各マイクロ発電機により発電が行われるようにしたので、総発電量を増やすことができるとともに単位時間当たりの発電量を増やすことができる。
【0021】
(8) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、浮水槽浮力用密閉空間部に水素ガス,ヘリウムガス等の空気より軽い気体を封入するようにしたので、浮水槽全体の比重を低下させることができ、発電用水揚水槽部により多量の発電用水を貯水して揚水することが可能になる。
【0022】
(9) 本発明の液体浮力を利用した揚水式発電装置によれば、水槽の下部に全浮力用水排水バルブを付設し、水槽から浮力用水を全浮力用水排水槽に排水できるようにしたので、水槽の全浮力用水を全浮力用水排水槽に排水して、水槽内の清掃、修理等の保守を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置を示す斜視図。
【図2】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の発電用水揚水槽部を無水状態にしてある初期状態を示す状態遷移図。
【図3】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の発電用水揚水槽部、上部浮力用水槽および中間浮力用水槽を満水にした状態を示す状態遷移図。
【図4】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の下位側の中間浮力用水槽から浮力用水を水槽内へ順次給水して浮水槽を上昇させる状態を示す状態遷移図。
【図5】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の上部発電用水槽の上縁を越えた発電用水給水バルブを開いて発電用水揚水槽部内の発電用水を上部発電用水槽に給水する状態を示す状態遷移図。
【図6】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の上部発電用水槽内の発電用水を放流して水車との落差を利用して発電する状態を示す状態遷移図。
【図7】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の水槽内の浮力用水を上位側から中間浮力用水槽に順次排水して浮水槽を下降させる状態を示す状態遷移図。
【図8】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の水槽内の浮力用水を下部浮力用水槽へ排水して浮水槽を最下位まで下降させる状態を示す状態遷移図。
【図9】本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の下部浮力用水槽内の浮力用水を揚水ポンプで揚水管を通じて上部浮力用水槽に揚水する状態を示す状態遷移図。
【図10】(a)および(b)は、本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置における水槽、浮水槽浮力用密閉空間部および発電用水揚水槽部の関係を示す要部透過側面図および要部透過斜視図。
【図11】本発明の実施例2に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の要部を示す説明概要図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1および図2は、本発明の実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の要部を示し、Aがガイド付浮水部、Bが水車式発電部、Cが浮力用水給排水部、Dがパイプ付揚水部である。
【0026】
ガイド付浮水部Aは、複数の中間浮力用水排水バルブ17および下位浮力用水排水バルブ14を付設する有底四角筒状の水槽1と、水槽1に浮水用水間隙を介して昇降自在に遊嵌する浮水槽浮力用密閉空間部3および浮水槽浮力用密閉空間部3の上に載置されてなり上下に複数の発電用水給水バルブを付設する発電用水揚水槽部4からなる浮水槽2と、発電用水揚水槽部4を昇降自在に案内する直方体枠状のガイド部材5とから、その主要部が構成されている。
【0027】
図10を参照すると、浮水槽浮力用密閉空間部3は、水槽1に浮水用水間隙を介して昇降自在に遊嵌するような直方体状に形成さ、浮水槽浮力用密閉空間部3の上に外径が一回り大きい有底四角凹皿状の発電用水揚水槽部4が一体的に載置されている。浮水槽浮力用密閉空間部3は、水槽1内の浮力用水に浮かべられて浮水槽2の自重と発電用水揚水槽部4に貯水される発電用水の重量とに対向する浮力を生じさせる役目をする。なお、浮水槽浮力用密閉空間部3には、水素ガス,ヘリウムガス等の空気より軽い気体を封入するようにしてもよい。このようにすれば、浮水槽2全体の比重を低下させることができるので、発電用水揚水槽部4により多量の発電用水を貯水することが可能になる。発電用水揚水槽部4には、上部発電用水槽8に発電用水を給水する上下2つの発電用水給水バルブ6が付設されている。なお、水槽1の内壁に浮水槽浮力用密閉空間部3を昇降自在に案内するレールまたはコロ等でなるガイド(図示せず)が設けられている。また、ガイド部材5の内壁にも発電用水揚水槽部4を昇降自在に案内するレールまたはコロ(図示せず)等でなるガイドが設けられている。これらにより、浮水槽2の昇降時の横ブレを少なくして、安定した昇降を行うことができる。
【0028】
水車式発電部Bは、ガイド部材5の一側方に配置され、水圧管9を斜め下方に垂下するように付設してなる上部発電用水槽8と、上部発電用水槽8から水圧管9を通じて放流される発電用水により発電をする水車10および発電機11と、水車10および発電機11により発電に使用された発電用水を貯水するとともに上下2つの発電用水排水バルブ12を付設した下部発電用水槽7とから、その主要部が構成されている。なお、図2中の符号31は浮水槽制御盤を、32は発電機盤をそれぞれ示す。
【0029】
浮力用水給排水部Cは、水槽1の左右両側方に分散して配置され、水槽1に浮力用水を給水する上部浮力用水給水バルブ21を付設する上部浮力用水槽20と、水槽1に浮力用水を給水する中間浮力用水給水バルブ16を付設する複数の中間浮力用水槽15と、下部浮力用水槽13とから、その主要部が構成されている。中間浮力用水槽15間の間隔を詰めるとともに複数の中間浮力用水槽15を水槽1の左右両側方に分散して配置することにより、1つの中間浮力用水槽15の容量を小さくすることができ、中間浮力用水槽15の多数化小容量化により下部浮力用水槽13の容量も小さくなる。その結果、下部浮力用水槽13から浮力用水を上部浮力用水槽20に揚水するための揚水ポンプ18の容量も小さくなる。複数の中間浮力用水槽15には、水槽1内の浮力用水が複数の中間浮力用水排水バルブ17からそれぞれ排水されるようになっている。また、下部浮力用水槽13には、水槽1内の浮力用水が下部浮力用水排水バルブ14から排水されるようになっている。なお、上部浮力用水槽20の上部浮力用水給水バルブ21および中間浮力用水槽15の中間浮力用水給水バルブ16のそれぞれにマイクロ発電機30を付設し、上部浮力用水槽20および中間浮力用水槽15から浮力用水を水槽1に給水するときにも各マイクロ発電機30により発電が行われるようになっている。また、水槽1の中間浮力用水排水バルブ17および下位浮力用水排水バルブ14のそれぞれにマイクロ発電機30を付設し、水槽1から浮力用水を中間浮力用水槽15および下部浮力用水槽13に排水するときにも各マイクロ発電機30により発電が行われるようになっている。
【0030】
なお、水槽1の下部には全浮力用水排水バルブ23が付設されており、全浮力用水排水バルブ23に対応して全浮力用水排水槽22が配置されている。両者はメンテナンス用の設備であり、全浮力用水排水バルブ23を開放して、水槽1内の浮力用水を全浮力用水排水槽22に排水することにより、水槽1内の清掃、修理等の保守を容易に行うことが可能になる。
【0031】
パイプ付揚水部Dは、下部浮力用水槽13と上部浮力用水槽20とを連結する揚水管19と、揚水管19を通じて下部浮力用水槽13から浮力用水を上部浮力用水槽20へ揚水する揚水ポンプ18とから、その主要部が構成されている。
【0032】
なお、各給排水バルブの開閉は液面リレーおよび電磁弁(ともに図示せず)の操作により行い、発電用水給水バルブ6および発電用水排水バルブ12の吐出管部分は、フレキシブルパイプを用いて各水槽と吐出管との物理的な干渉を避けるように構成されている。
【0033】
次に、このように構成された本実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の動作について説明する。
【0034】
まず、図2に示すような発電用水揚水槽部4ならびに上部浮力用水槽20および全ての中間浮力用水槽15の無水状態から、図3に示すように、発電用水揚水槽部4に発電用水を外部から貯水するとともに、上部浮力用水槽20および全ての中間浮力用水槽15に浮力用水を外部から貯水する。このとき、浮水槽2が浮かばない程度に水槽1内にも若干の浮力用水を貯水しておいてもよい。
【0035】
次に、図3に示すように、発電用水揚水槽部4内が発電用水で満水状態になるとともに上部浮力用水槽20および全ての中間浮力用水槽15内が浮力用水で満水状態になったならば、下位側から中間浮力用水槽15の中間浮力用水給水バルブ16を順次開放し、浮力用水を水槽1内へ順次給水する。すると、水槽1内の浮力用水の水位が次第に上がり、浮力用水から受ける浮力により浮水槽浮力用密閉空間部3が浮かんで、浮水槽2が徐々に上昇し始める。
【0036】
続いて、図4に示すように、さらに上位側の中間浮力用水槽15の中間浮力用水給水バルブ16を順次開放すると、水槽1内の浮力用水の水位が上がり、浮水槽2が上昇して発電用水揚水槽部4がガイド部材5に案内されながら上昇することにより、発電用水を貯水する発電用水揚水槽部4が上部発電用水槽8へ次第に近づいていく。
【0037】
次に、図5に示すように、発電用水揚水槽部4の上位側の発電用水給水バルブ6が上部発電用水槽8の上縁の高さ位置を越えたときに、その発電用水給水バルブ6を開放して発電用水揚水槽部4内の発電用水を上部発電用水槽8へ給水する。すると、発電用水揚水槽部4内の発電用水の重量が減ることにより、浮水槽2の総重量が減り、浮水槽2がさらに上昇する。
【0038】
続いて、図6に示すように、前記と同様にして、下位側の発電用水給水バルブ6が上部発電用水槽8の上縁の高さ位置を越えたときに、その発電用水給水バルブ6を開放して、発電用水揚水槽部4内の発電用水を上部発電用水槽8へ給水する。すると、浮水槽2はさらに上昇する。
【0039】
他方、浮水槽2の自重等があるので、上位側の中間浮力用水槽15の中間浮力用水給水バルブ16および上部浮力用水槽20の上部浮力用水給水バルブ21を開放して、中間浮力用水槽15および上部浮力用水槽20内の浮力用水を全て水槽1に給水する。すると、浮水槽2は最上位にまで上昇し、発電用水揚水槽部4内の発電用水が全て上部発電用水槽8に給水される。
【0040】
そして、上部発電用水槽8に給水された発電用水を上部発電用水槽8から水圧管9を通じて放流させることにより、水車10および発電機11により発電が行われる。水車10および発電機11により発電に使用された発電用水は、下部発電用水槽7に貯水される。
【0041】
次に、図7に示すように、発電用水揚水槽部4内の発電用水を全て排水した浮水槽2を下降させるため、水槽1の中間浮力用水排水バルブ17を上位側から順次開放して、水槽1内の浮力用水を中間浮力用水槽15へ順次排水する。すると、水槽1内の浮力用水の水位が下がり、浮水槽2は下降する。
【0042】
続いて、図8に示すように、水槽1の下部浮力用水排水バルブ14を開放して、水槽1内の浮力用水を下部浮力用水槽13に排水して浮水槽2を最下位まで下降させる。また、下部発電用水槽7の発電用水排水バルブ12を開放して、下部発電用水槽7内の発電用水を発電用水揚水槽部4に排水する。
【0043】
そして、図9に示すように、下部浮力用水槽13内の浮力用水を揚水ポンプ18で揚水管19を通じて上部浮力用水槽20に揚水して下部浮力用水槽13内を無水状態にする。
【0044】
以上の一連の動作で一回の発電工程が終了し、この発電工程を繰り返すことにより連続に発電が行われる。
【実施例2】
【0045】
図11は、本発明の実施例2に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置の構成を示す側面図である。本実施例2に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置は、実施例1に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置における水車式発電部Bを共通にして、ガイド付浮水部A、浮力用水給排水部Cおよびパイプ付揚水部Dからなる揚水装置部を左右2つ設けるようにしたものである。
【0046】
このように構成された実施例2に係る液体浮力を利用した揚水式発電装置では、一方の揚水装置部で浮水槽2が上昇しているときに、他方の揚水装置部で浮水槽2が下降しているようにすることができる。このようにすることにより、左右の揚水装置部により上部発電用水槽8に交互に貯水することができ、水車式発電部Bで連続的に発電をすることができる。このため、水車式発電部Bにおける発電を円滑に効率良く行うことができ、単位時間当たりの発電量をより増加させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 水槽
2 浮水槽
3 浮水槽浮力用密閉空間部
4 発電用水揚水槽部
5 ガイド部材
6 発電用水給水バルブ
7 下部発電用水槽
8 上部発電用水槽
9 水圧管
10 水車
11 発電機
12 発電用水排水バルブ
13 下部浮力用水槽
14 下部浮力用水排水バルブ
15 中間浮力用水槽
16 中間浮力用水給水バルブ
17 中間浮力用水排水バルブ
18 揚水ポンプ
19 揚水管
20 上部浮力用水槽
21 上部浮力用水排水バルブ
22 全浮力用水排水槽
23 全浮力用水排水バルブ
30 マイクロ発電機
31 浮水槽制御盤
32 発電機盤
A ガイド付浮水部
B 水車式発電部
C 浮力用水給排水部
D パイプ付揚水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中間浮力用水排水バルブおよび下位浮力用水排水バルブを付設する有底筒状の水槽、該水槽に浮水用水間隙を介して昇降自在に遊嵌する浮水槽浮力用密閉空間部および該浮水槽浮力用密閉空間部の上に載置されてなり上下に複数の発電用水給水バルブを付設する発電用水揚水槽部からなる浮水槽、ならびに該浮水槽を昇降自在に案内するガイド部材からなるガイド付浮水部Aと、
前記ガイド付浮水部Aの側方の前記水槽より上位となる位置に配置され、水圧管を付設してなる上部発電用水槽、前記水圧管に放流される発電用水により発電をする水車および発電機、ならびに該水車および発電機により発電に使用された発電用水を貯水し上下に複数の発電用水排水バルブを付設する下部発電用水槽からなる水車式発電部Bと、
前記ガイド付浮水部Aの前記水槽の側方に配置され、前記水槽に浮力用水を給水する上部浮力用水給水バルブを付設する上部浮力用水槽、前記水槽に浮力用水を給水する中間浮力用水給水バルブを付設するとともに前記水槽に付設された中間浮力用水排水バルブから浮力用水を排水される複数の中間浮力用水槽、および前記水槽に浮力用水を給水する浮力用水給水バルブを付設するとともに前記水槽に付設された下部浮力用水排水バルブから浮力用水を排水される下部浮力用水槽からなる浮力用水給排水部Cと、
前記下部浮力用水槽と前記上部浮力用水槽とを連結する揚水管、および該揚水管を通じて前記下部浮力用水槽に貯水した浮力用水を前記上部浮力用水槽へ揚水する揚水ポンプからなるパイプ付揚水部Dとを備え、
前記上部浮力用水槽および前記中間浮力用水槽から浮力用水を前記水槽に順次給水することにより前記浮水槽浮力用密閉空間部の浮力により前記浮水槽を上昇させ、前記発電用水揚水槽部が前記上部発電用水槽の上縁を越えたときに前記発電用水揚水槽部から発電用水を前記上部発電用水槽に給水し、前記発電用水揚水槽部の発電用水が前記上部発電用水槽に給水されて前記浮水槽の総重量が減少することにより前記浮水槽がさらに上昇し、前記上部発電用水槽から発電用水を前記水圧管を通じて放流させることにより前記水車および前記発電機により発電し、発電に使用された発電用水を前記下部発電用水槽に貯水し、前記水槽から前記中間浮力用水槽および前記下部浮力用水槽に浮力用水を順次排水することにより前記浮水槽を下降させ、前記発電用水揚水槽部が最下位に達したときに前記下部浮力用水槽に貯水された浮力用水を前記揚水ポンプにより前記揚水管を通じて前記上部浮力用水槽に揚水することを特徴とする液体浮力を利用した揚水式発電装置。
【請求項2】
前記浮力用水給排水部Cの複数の中間浮力用水槽が、前記水槽の異なる側方に分散して配置されていることを特徴とする請求項1記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置。
【請求項3】
前記水車式発電部Bを共通にして、前記ガイド付浮水部A、前記浮力用水給排水部Cおよび前記パイプ付揚水部Dからなる揚水装置部を複数設けるようにしたことを特徴する請求項1または2記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置。
【請求項4】
前記上部浮力用水槽の前記上部浮力用水給水バルブおよび前記中間浮力用水槽の前記中間浮力用水給水バルブのそれぞれにマイクロ発電機を付設し、前記上部浮力用水槽および前記中間浮力用水槽から浮力用水を前記水槽に給水するときにも各マイクロ発電機により発電が行われるようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置。
【請求項5】
前記水槽の前記中間浮力用水排水バルブおよび前記下位浮力用水排水バルブのそれぞれにマイクロ発電機を付設し、前記水槽から浮力用水を前記中間浮力用水槽および前記下部浮力用水槽に排水するときにも各マイクロ発電機により発電が行われるようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置。
【請求項6】
前記浮水槽の前記浮水槽浮力用密閉空間部に、水素ガス,ヘリウムガス等の空気より軽い気体を封入してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置。
【請求項7】
前記水槽の下部に全浮力用水排水バルブを付設し、前記水槽から浮力用水を全浮力用水排水槽に排水できるようにしたことを特徴する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液体浮力を利用した揚水式発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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