説明

液体滴下装置

【課題】高速動作が可能であり、液化ガスのロスが少なく、かつ滴下量を連続的かつ高精度に調整可能な液体滴下装置を提供すること。
【解決手段】液体滴下装置は、上面が貯液タンクに面し、それぞれが略円盤状であり、対向面が当接しながら一方が回転可能であり、一方には対向面に孔が複数個設けられ、他方には対向面の孔と対応する位置に孔あるいは切り欠きが設けられた回転側バルブおよび固定側バルブからなるバルブ手段と、回転側バルブを指定された角度だけ回転させる回転手段と、所定位置における容器の通過信号を出力する手段と、容器通過信号に基づき、容器の口に液体が所望量だけ滴下するように回転手段を制御する制御手段とを備える。円盤形状の回転側バルブの回転によって滴下量を制御するので、高速動作が可能であり、開閉時の応答性も良い。また、滴下量を連続的に変更可能であり、高精度で制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体窒素等の液体を任意の正確な流量で滴下する液体滴下装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料等の液体を金属製あるいはプラスティック製の容器に充填し、密封直前に液体窒素を添加し、容器内部の圧力を高めて変形を防止する充填方法がある。この液体窒素を添加する方法としては、内容物が充填された缶またはPETボトル等の容器が蓋にて密封される直前の搬送時に容器上方から液化ガスを滴下して添加する方法が採用されている。
【0003】
下記の特許文献1には上記したような液体窒素の充填に使用する液化ガス流下装置が開示されている。この液化ガス流下装置は、周囲に複数の溝を備えたシリンダーとプラグの組み合わせによって複数のノズル孔を形成すると共に、プラグの上下によって液化ガスの単位時間当たりの流下量を連続的且つ無段階的に変化させることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3587647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような従来の液体滴下装置においては、滴下量は容器の搬送速度に基づいて調整はされるが、容器の口が添加位置を通過する時以外においても添加ノズルは開いたままであり、容器外に滴下した液化窒素は無駄になっていた。
【0006】
近年、PETボトルあるいは缶容器のボトル形状製品の製造に伴い、容器の口の径が従来の50mm前後から20〜35mmと大幅に小さくなっており、従来の液体滴下装置においては容器外に滴下してロスとなる液化ガス量が増加するという問題点があった。特に酸性飲料の熱間充填の場合は、飲料の温度が85〜90度の時に液化ガスを添加するので大量の液化ガスを添加する必要があり、更にロス分が大きくなっていた。
【0007】
そこで、容器の口が添加位置を通過する時のみ液化ガス添加ノズルを開いて添加する方法が考えられる。しかし、近年、製造速度が600本/分以上というような高速化が要求されており、上記したような従来の液体滴下装置においては、ノズルの開閉がプラグの上下動作により行われるので、高速の開閉動作による液化ガスの添加量制御が物理的に難しく、添加精度が落ちるという問題点があった。また、ノズル開閉時の上下動作における流量不安定時間が長く、容器のロが通過するかなり前からノズルを開くため、実際には容器外で消耗する液化ガスが増加するという問題点もあった。更に、高速動作による耐久性も懸念されている。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、高速動作が可能であり、液化ガスのロスが少なく、かつ滴下量を連続的かつ高精度に調整可能な液体滴下装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体滴下装置は、ノズルが固定側部分と摺動側部分の摺り合わせ構造で構成されており、それぞれの摺動面に貫通する孔が複数個設けられ、摺動側ノズルを回転させる角度を制御することにより、孔を流れる液体窒素量を制御する液体滴下装置である。
【0010】
本発明の液体滴下装置は、液体を貯蔵する貯液タンクを備え、下方を通過する容器の口に対して所望量の前記液体を滴下する液体滴下装置において、上面が前記貯液タンクあるいは貯液タンクと連結された空間に面し、それぞれが略円盤状であり、対向面が当接しながら一方が他方に対して回転可能であり、一方には前記対向面に孔が複数個設けられ、他方には前記対向面の前記孔と対応する位置に孔あるいは切り欠きが設けられた回転側バルブおよび固定側バルブからなるバルブ手段と、前記バルブ手段の回転側バルブを指定された角度だけ回転させることが可能な回転手段と、所定位置における前記容器の通過信号を出力する容器通過信号出力手段と、前記容器通過信号出力手段からの出力情報に基づき、前記容器の口に前記液体が所望量だけ滴下するように前記回転手段を制御する制御手段とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【0011】
また、前記した液体滴下装置において、前記制御手段は、前記容器の口が下方に位置していない時には前記回転手段を制御して前記バルブ手段を閉じ、前記液体の滴下を止める点にも特徴がある。
【0012】
また、前記した液体滴下装置において、前記バルブ手段は、垂直断面が台形である円錐台形形状であり、円錐側面の部分に複数の孔が設けられている回転側バルブと、前記回転バルブが勘合する垂直断面が台形である円錐台形形状の凹部を備え、前記回転側バルブの孔と対応する位置に孔あるいは切り欠きが設けられた固定側バルブからなる点にも特徴がある。
【0013】
また、前記した液体滴下装置において、前記回転側バルブを固定側バルブに押し付ける力を調節する押圧調節手段を備えた点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体滴下装置によれば、以下のような効果がある。
(1)円盤形状の回転側バルブの回転によって滴下量を制御するので、高速動作が可能であり、回転側バルブが回転しても液体窒素を撹拌しないので開閉時の応答性も良い。従って、高速で動作させても液体窒素のロスを少なくできる。
(2)滴下量を連続的に変更可能であり、高精度で制御できる。
(3)バルブの構造が単純であり、安価に製造可能である。
(4)バルブの摺動面にかかる力(荷重)を調節する手段を設けたので、バルブのシール面の摩耗を防止でき、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液体滴下装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の液体滴下装置の要部構成を示す断面図である。
【図3】本発明の液体滴下装置のノズル部分の構成を示す断面図および平面図である。
【図4】本発明の液体滴下装置のノズルにおける開口面積の変化を示す説明図である。
【図5】本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成1を示す断面図である。
【図6】本発明の液体滴下装置の動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の液体滴下装置の制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成2を示す断面図および平面図である。
【図9】本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成2における開口面積の変化を示す説明図である。
【図10】本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成3を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に実施例として飲料等の液体をPETボトルに充填し、密封直前に液体窒素を滴下する例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の液体滴下装置の全体構成を示すブロック図である。飲料が充填されたPETボトル21は容器搬送装置20の搬送ガイド22によって設定された所定の速度(例えば搬送ピッチ約120mmで数百本/分)で等間隔に搬送され、本発明の液体滴下装置10の下部を所定の速度で通過する。但し、通過速度は製品の種類によって異なり、かつシステムの起動時および停止時には速度が0から所望の速度まで徐徐に変化する。また運転中にも速度変化が発生する。なお、容器搬送装置20としてはコンベアやフィードターレットなど公知の任意の搬送装置を使用可能である。
【0018】
本発明の液体滴下装置10は、本発明の容器通過信号出力手段に相当する容器センサー14によって容器の位置や速度を検出し、所望の量の液体窒素25が容器21内部に滴下するように液体窒素25の滴下タイミングおよび/または滴下量を調節する。液体窒素25が添加されたPETボトル21は直ちに公知の蓋装着装置23に搬送され、滴下された液体窒素25がある程度気化して内部の空気を追い出した時点で蓋が装着される。
【0019】
本発明の液体滴下装置10は、液体窒素の貯液タンクからなる本体10および本体の下方に設けられたノズル27からなる。液体滴下装置10は、本体の上部にノズルの開閉を制御するステッピングモーター18、ステッピングモーター18の軸の角度を検出するロータリーエンコーダー26、ノズルに掛かる圧力(荷重)を制御するトルクモーター19を備えている。弁制御装置15は貯液タンクの液面の位置が一定になるように、液体窒素の貯液タンクに設けられた液面センサー27からの出力に基づいて電磁弁16を開閉する。
【0020】
制御装置(コンピューター)11が容器センサー14およびロータリーエンコーダー26の出力情報を読み取り、ステッピングモーター18およびトルクモーター19を制御することによって、液体滴下装置10は容器21がノズルの下に来た時に所望の量の液体窒素25を滴下する。なお、容器21の外部に滴下した液体窒素25は無駄になるので、外部に滴下する液体窒素25の量はなるべく少ない方が好ましい。
【0021】
本発明の制御手段に相当する制御装置(コンピューター)11は、キーボード等の入力装置12や液晶ディスプレイ装置等の表示装置13、監視制御用の入出力端子を備えた公知の制御用のコンピューターであり、後述する処理を実行する。容器センサー14は光センサーを使用してPETボトル21の口部分の通過情報を出力する。なお、容器搬送装置20からPETボトル21の位置および速度情報が得られる場合にはその情報に基づいて制御してもよい。
【0022】
本発明の回転手段に相当するステッピングモーター18は減速ギアを備え、制御装置11からの駆動信号に基づき所定の角度づつ回転する周知のモーターである。ステッピングモーター18の軸の角度を検出するロータリーエンコーダー26はステッピングモーター18に予め装備されている、所定の回転角度の時のみ信号を出力するエンコーダーでもよいが、例えばノズルに設けられた複数の孔が全開状態になる角度が到来するたびに信号を出力するロータリーエンコーダーを装着してもよい。
【0023】
本発明の押圧調整手段に相当するトルクモーター19は停止時においてもモーターのトルクを制御可能な公知のモーターであり、ステッピングモーター18が固着された支持台28がトルクモーター19の回転に従って上下に移動するように構成されている。従って、トルクモーター19によって支持台28が上方に移動する方向に所定のトルクをかけることによって、軸33の下端に装着されているノズルにかかるステッピングモーター18および軸33の荷重を調節(キャンセル)することができる。この結果、ノズルの回転時における摺動摩擦抵抗を減少させて、ノズルの摩耗を防止することができる。
【0024】
図2は、本発明の液体滴下装置の要部構成を示す断面図である。液体窒素の貯液タンクからなる本体10は、間に真空室32を備えた二重の金属容器からなり、魔法瓶と同様の構造によって液体窒素17を低温に保っている。液面センサー27は光ファイバー28を用いて液体窒素17の液面の位置を監視しており、光ファイバー28の先端が液面に触れているか否かの信号を出力する。なお、このような液面センサー自体は公知である。
【0025】
弁制御装置15は液面センサー27からの信号に基づいて電磁弁16を開閉し、液面の位置が一定になるように液化窒素17を貯液タンクに供給する。また、貯液タンク内において気化した窒素ガスは排気管29から外部に排気され、貯液タンク内は大気圧と等しくなっている。
【0026】
貯液タンク内には軸33が設置されており、軸33の上端はシール31、軸受30を貫通してステッピングモーター18の軸と連結されている。なお、シール31、軸受30は軸33が回転および上下に摺動可能であるように構成されている。軸33はノズル部分まで延びており、軸33の下端には回転側バルブ35が固着されている。なお、ノズル27を細くして下方に延ばしているのは貯液タンクと他の装置との干渉を避けるためである。
【0027】
貯液タンクと連通しており、内部が液体窒素17で満たされているノズル部の下端には円盤状の固定側バルブ36が固着されている。固定側バルブ36の上面には凹部が形成されており、回転側バルブ35が勘合している。また、回転側バルブ35および固定側バルブ36には同じ位置に上下に貫通する細い孔が複数個設けられており、ステッピングモーター18により軸33を介して回転側バルブ35を回転して回転側バルブ35および固定側バルブ36の孔の位置が一致すると液体窒素25が孔を通過して固定側バルブ36の下面から滴下する。
【0028】
図3は、本発明の液体滴下装置のノズル部分の構成を示す断面図および平面図である。図3(a)はノズル部分の断面図、図3(b)は固定側バルブ36を上から見た平面図、図3(c)は回転側バルブ35を上から見た平面図である。ノズル27は貯液タンクと同様に真空室32を備えた金属製の二重容器となっている。
【0029】
ノズル27の下端には固定側バルブ36が固着されている。固定側バルブ36は厚い円盤状部材であり、上面に回転側バルブ35と勘合する凹部が形成されている。軸33と固着されている回転側バルブ35は例えば円錐形を軸と垂直な平面で切断した、断面が台形の形状であり、固定側バルブ36の凹部に勘合した場合には側面の曲面が固定側バルブ36の凹部の側面の曲面と接触し、底面は接触しない。なお、回転側バルブ35および固定側バルブ36が本発明におけるバルブ手段に相当する。
【0030】
回転側バルブ35および固定側バルブ36には同じ位置に上下に貫通する細い孔43、42が同心円上に等間隔に複数個(例えば12個)設けられている。回転側バルブ35および固定側バルブ36の材質は異種材の組み合わせとし、ステンレス等の金属材料およびPEEK樹脂のような樹脂材料で作成する。また回転側バルブ35および固定側バルブ36の側面(曲面)は摺動させるので、耐摩耗性の高い材料で表面をコーティングするなどの表面加工を施してもよい。
【0031】
固定側バルブ36の外側には下部に円形の開口部40を備えた円筒形状のノズルカバー37が装着されている。ノズルカバー37と固定側バルブ36の間にはノズル内空間38が形成されており、このノズル内空間38には外部から窒素ガス44が供給され、ノズルカバー37の下部の開口部40から下方に吹き出している。これは、液体窒素の滴下によって跳ねた飲料や空気中の水蒸気が固定側バルブ36の孔に付着して凍結するのを防ぐためである。なお、ノズルカバー37は跳ねた飲料が付着して凍結するのを防ぐために、図示しない内蔵電気ヒーターによって30度程度に加熱されている。
【0032】
ステッピングモーター18により軸33を介して回転側バルブ35を回転して回転側バルブ35および固定側バルブ36の孔43、42の位置が一致するとノズル内部の液体窒素17が孔43、42を通過して固定側バルブ36の下面から滴下する。また、回転側バルブ35および固定側バルブ36の孔43、42の重なりが完全になくなると液体窒素17は流出しなくなる。更に、回転側バルブ35および固定側バルブ36の孔43、42の一部が重なっている場合には重なっている部分の開口面積に比例した量の液体窒素17が流出し、滴下する。
【0033】
図4は、本発明の液体滴下装置のノズルにおける開口面積の変化を示す説明図である。図4(a)は固定側バルブ孔42と回転側バルブ孔43とが完全に重なった状態を示しており、この状態においては滴下量は最大となる。なお、斜線を施した部分は開口部分を示している。また、一方の孔を他方の孔よりわずかに大きくしておくことにより、全開時の角度のマージンが増す。
【0034】
図4(b)は固定側バルブ孔42と回転側バルブ孔43の一部が重なった状態を示しており、この状態においては滴下量は重なった部分の開口面積に比例する。図4(c)は固定側バルブ孔42と回転側バルブ孔43が全く重なっていない状態を示しており、この状態においては滴下量はほぼ0となる。
【0035】
図5は、本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成1を示す断面図である。図5(a)は、複数の孔52、53が等間隔に配置される同心円を二重に設けた例である。なお、同心円の数およびそれぞれの同心円の半径は任意に設定可能である。図5(b)は、図3の実施例1のノズルの構成において、更に固定側バルブ61の中心に固定側バルブ軸63を設け、回転側バルブ60の下端に軸受となる回転側バルブ中心孔62を設けたものである。軸を設けることにより、回転側バルブ60がよりスムーズに回転できる。
【0036】
図5(c)は、回転側バルブ70の形状=固定側バルブ71の凹部形状を円筒形状としたものである。また、図5(d)は(c)のバルブ形状において、更に(b)に示す軸構造を採用したものである。なお、(d)の場合には回転側バルブ80の周囲を固定側バルブ81で覆う必要はないので、固定側バルブ81は軸83があれば凹部のない単なる円盤でもよい。また、(a)の構造と(b)、(c)、(d)の構造とを組み合わせてもよい。
【0037】
図6は、本発明の液体滴下装置の動作を示すタイムチャートである。本発明においては液体窒素の利用効率を向上させるために、容器がノズルの下部にある間にのみ液体窒素を滴下し、容器がない期間においては極力滴下を停止する。図6(a)は、容器を一定の速度で搬送し、液体滴下装置において連続的に液体窒素を滴下した場合の液体窒素が容器内に投入される率を示すタイムチャートである。容器が真下に来た場合には投入率は100%となり、その前後においては徐徐に増加、減少する。
【0038】
図6(b)は、液体窒素の容器への投入量の第1の調整方法を示すタイムチャートである。本発明の液体滴下装置においては図4に示したように回転側ノズル35の回転角度によって単位時間当たりの滴下量を調節できる。そこで、容器がノズル直前の所定の位置を通過した時点をt0とした場合、時刻t1において、回転側ノズル35を全閉状態から滴下したい量と対応する所望の角度だけ回転させる。
【0039】
時刻t2においては所望の滴下量に達する。時刻t3においては回転側ノズル35を全閉状態まで回転させ、時刻t4においては滴下量が0になる。時刻t0に対して時刻t1およびt3は固定であり、回転側ノズル35の回転角度によって滴下量を制御し、投入量を調節する。なお、液体窒素の投入量は(b)の滴下量と(a)の投入率を乗算したものとなる。この方法の場合には、回転側ノズル35の回転角度によって滴下量を制御するので、回転角度を高精度で制御する必要がある。
【0040】
図6(c)は、液体窒素の容器への投入量の第2の調整方法を示すタイムチャートである。この方法は、回転側ノズル35の回転角度は例えば全開角度のように一定とし、開閉のタイミングによって投入量を調節するものである。図6(c)においてはバルブを閉じる時刻t5〜t7を制御することによって投入量を調節する例を示しているが、バルブを開く時刻t1を可変制御してもいいし、開く時刻および閉じる時刻の双方を制御してもよい。
【0041】
更に、第2の調整方法において開閉の時刻と共に回転側ノズル35の回転角度も制御してもよい。また、容器の搬送速度に応じて、低速の場合には第2の方法を使用し、高速の場合には第1の方法を使用するなど、第1、第2の調整方法を使い分けてもよい。
【0042】
図7は、本発明の液体滴下装置の制御装置の処理内容を示すフローチャートである。この例は図6(b)の第1の調整方法を使用した例である。電源が投入されると、S10においてはトルクモーター19を制御してノズルにかかる荷重をキャンセルする。S11においてはロータリーエンコーダー26が信号を出力する初期位置までステッピングモーター18を回転させる。なお、液体滴下装置の製造時においては例えば初期位置において固定側バルブ孔42と回転側バルブ孔43とが完全に重なる全開状態となるように調整しておく。
【0043】
S12においてはステッピングモーター18を全閉位置まで所定の角度だけ回転させる。S13においてはトルクモーター19をオフとする。トルクモーターをオフにすることによって、ステッピングモーター18および軸33の荷重が軸33の下端に装着されているノズルにかかり、回転側バルブ35が固定側バルブ36に押圧されるので、全閉時のバルブからの液体窒素の漏れが減少する。
【0044】
S14においては容器センサー14が容器の到来を新たに検出したか否かによって搬送開始か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS21に移行するが、肯定の場合にはS15に移行する。S15においてはトルクモーター19を制御してバルブにかかる荷重をキャンセルする。S16においては前回の容器検出時刻から所定の時間が経過したか否かによって停止か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS17に移行するが、肯定の場合にはS13に移行する。
【0045】
S17においては後述するセンサー割込み処理において設定された開時刻が到来したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS16に移行するが、肯定の場合にはS18に移行する。S18においてはステッピングモーター18を後述するセンサー割込み処理において設定された指定角度だけ回転してバルブを開く。
【0046】
S19においては後述するセンサー割込み処理において設定された閉時刻が到来したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS19に移行するが、肯定の場合にはS20に移行する。S20においてはステッピングモーター18を全閉位置まで回転させ、S16に移行する。S21においては例えば終了操作が行われたか否かによって終了か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS14に移行するが、肯定の場合には処理を終了する。
【0047】
センサー割込は、ノズル直前の所定の位置にある容器センサー14が容器の到来を新たに検出した場合に発生する。センサー割込みが発生すると、S30においては制御装置11が内蔵する時計回路から現在時刻を読み出してメモリのリングバッファに保存する。S31においてはメモリに保存されている前回割込み時刻を読み出し、現在時刻との差を計算する。
【0048】
S32においてはS31において算出した差から回転側バルブの回転角度を求めて保存する。回転角度の求め方は、予め設定された近似式によって計算してもよいし、予め登録してある複数の差の値と対応する回転角度値が記載された対応テーブルを用いて周知の補間演算によって求めてもよい。なお、近似式あるいはテーブルの値は実験によって求める。
【0049】
S33においては現在時刻に予め定められた所定値を加算して開時刻を求めて保存する。所定値は予め実験によって決定する。S34においては現在時刻に予め定められた所定値を加算して閉時刻を求めて保存する。所定値は予め実験によって決定する。
【0050】
以上、説明したような本発明の液体滴下装置を試作し、テストを行った結果、従来はバルブ開制御してから滴下量が安定するまでに100msec以上かかっていたものが、バルブ開制御後約10〜15msecで所定の滴下量となり、またバルブ閉後10msecで閉状態になることを確認した。本発明の液体滴下装置においては高速に開閉することにより液体窒素のロスを低減できる。
【実施例2】
【0051】
図8は、本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成2を示す断面図および平面図である。前記した実施例1においては固定側バルブおよび回転側バルブにそれぞれ同じ径の孔を開けていたが、孔の径が1mm程度と小さいので、孔の重なる開口面積を調節するためには回転角度を高精度で制御する必要があった。実施例2は、実施例1よりも広い角度で開口面積の調整が可能な実施例である。
【0052】
図8(a)は実施例2のノズルの構成を示す断面図、図8(b)は固定側バルブ92の構成を示す平面図、図8(c)は回転側バルブ90の構成を示す平面図、図8(d)は固定側バルブ92の上に回転側バルブ90を乗せた状態(全開位置)を示す平面図である。固定側バルブ92は実施例1と同様に固定側バルブ孔93が同心円上に等間隔に配置されている。
【0053】
一方、回転側バルブ90には孔の代わりに切り欠き91が設けられている。切り欠き91は例えば水平断面が円弧状であってもよく、(d)に示すように切り欠きの一番深い部分を固定側バルブ孔93と合わせた場合に、固定側バルブ孔93が全開になるように形成されている。
【0054】
図9は、本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成2における開口面積の変化を示す説明図である。図9(a)は切り欠き91の一番深い部分を固定側バルブ孔93と合わせた全開状態を示している。この状態においては滴下量は最大となる。なお斜線を施した部分は開口部分を示している。
【0055】
図9(b)は固定側バルブ孔93と回転側バルブの切り欠き91の一部が重なった状態を示しており、この状態においては滴下量は重なった部分の開口面積に比例する。図9(c)は固定側バルブ孔93と切り欠き91が全く重なっていない状態を示しており、この状態においては滴下量はほぼ0となる。実施例2の構成は図4に示した実施例1の構成と比べるとより広い角度を使用して滴下量の制御が可能であり、制御が容易になると共に滴下量の精度も向上する。
【0056】
図10は、本発明の液体滴下装置のノズルの他の構成3を示す平面図である。この実施例は図8に示した実施例の変形例であり、切り欠きの水平断面を鋸歯状とし、また、回転側バルブ101の1つの切り欠き103に対して固定側バルブ100に複数の孔102を設けたものである。図10においては全開状態を示しており、回転側バルブ101を22.5度回転させると全閉状態となる。
【0057】
1つの切り欠き103に対応する複数の孔102は直線状に配列され、この直線の傾斜は切り欠き103の傾斜よりも大きくなっている。更に、全ての孔102について孔と中心軸との距離をそれぞれ等間隔で異なるように配置してもよい。このようにすれば、回転側バルブ101の回転角度に従って、滴下量がほぼ連続的に変化する。
【0058】
切り欠きの水平断面は円弧状や鋸歯状の他、V字状、大括弧「{」を横に寝かせた(90度回転させた)形状などであってもよく、直線、即ち回転側バルブ90の水平断面が正多角形であってもよい。また、孔の位置、側面形状、軸の有無については図5に示した構成との組み合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の液体滴下装置は、容器入り飲料の製造を初め、任意の液体を充填した任意の容器に正確な量の液体窒素その他の液化ガス等の液体を高速に投入することが必要な任意の用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…液体滴下装置
11…制御装置(コンピューター)
12…入力装置
13…表示装置
14…容器センサー
15…弁制御装置
16…電磁弁
17…液化窒素
18…ステッピングモーター
19…トルクモーター
20…容器搬送装置
21…容器
22…搬送ガイド
23…蓋装着装置
25…液体窒素
26…ロータリーエンコーダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵する貯液タンクを備え、下方を通過する容器の口に対して所望量の前記液体を滴下する液体滴下装置において、
上面が前記貯液タンクあるいは貯液タンクと連結された空間に面し、それぞれが略円盤状であり、対向面が当接しながら一方が他方に対して回転可能であり、一方には前記対向面に孔が複数個設けられ、他方には前記対向面の前記孔と対応する位置に孔あるいは切り欠きが設けられた回転側バルブおよび固定側バルブからなるバルブ手段と、
前記バルブ手段の回転側バルブを指定された角度だけ回転させることが可能な回転手段と、
所定位置における前記容器の通過信号を出力する容器通過信号出力手段と、
前記容器通過信号出力手段からの出力情報に基づき、前記容器の口に前記液体が所望量だけ滴下するように前記回転手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする液体滴下装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記容器の口が下方に位置していない時には前記回転手段を制御して前記バルブ手段を閉じ、前記液体の滴下を止めることを特徴とする請求項1に記載の液体滴下装置。
【請求項3】
前記バルブ手段は、垂直断面が台形である円錐台形形状であり、円錐側面の部分に複数の孔あるいは切り欠きが設けられている回転側バルブと、
前記回転バルブが勘合する垂直断面が台形である円錐台形形状の凹部を備え、前記回転側バルブの孔あるいは切り欠きと対応する位置に孔が設けられた固定側バルブからなることを特徴とする請求項1に記載の液体滴下装置。
【請求項4】
前記回転側バルブを固定側バルブに押し付ける力を調節する押圧調節手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体滴下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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