説明

液体濾過方法及び濾過装置

【課 題】 磁気力を利用して濾過材を構築及び解離自在とするとともに、解離自在な状態で洗浄処理を施す。
【解決手段】 磁性材をバインダとして繊維状支持体に分散させた濾材や磁性繊維に対して、濾過槽2内において磁石装置9により磁気力を作用させて層状の濾過材4を構築させて濾過を行う。濾過材4に対する磁石装置9からの磁気力を解放して濾材を解離自在な状態として洗浄処理を施して濾過物を除去した後に、磁石装置9により磁気力を再作用させて濾過材4を再構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被濾過液中から分散した所定粒径の粒子状物質(以下、濾過物と称する。)を濾過する液体濾過方法及び濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過装置は、一般に容器や流体管内の液体流路中に濾紙や濾過膜或いは多孔質膜等の濾過体設け、通過する被濾過液中から分散した所定粒径の濾過物を捕捉して純化した濾過液のみを通過させる。濾過装置は、濾過の進行に伴って捕捉した濾過物がスラジとなって濾過体に目詰まりを生じさせることで濾過効率が低下する。濾過体は、濾過特性を再生することが困難であるために新しいものと交換されて廃棄される。
【0003】
また、濾過装置には、粉体や粒子や繊維を支持体上に圧力、重力等によって積層して構成した濾過体を備えたものも提供されており、例えば大規模な浄排水処理施設に設置されている。かかる濾過装置は、濾過体が目詰まりが生じた場合に液体流路から取り外されて再生処理を行うことが可能であるが、濾過体からスラジを除去する処理が極めて面倒であるとともに、濾過特性も低下する。
【0004】
濾過装置には、液体流路に沿って永久磁石や電磁石装置を付設し、内部を流れる被濾過液に磁力を作用させて濾過物を除去する。かかる濾過装置は、被濾過液中に分散した磁性濾過物のみを濾過することが可能であり、非磁性濾過物を濾過することはできない。また、かかる濾過装置は、磁気力が距離の二乗に反比例することから高精度の濾過を行うためには大型の磁石が必要なり、また安定した濾過を行い得ない。
【0005】
例えば特許文献1には、磁気分離部に綿状磁性繊維を磁化した濾過材を用いることにより、液体中から広範囲な磁性粒子を分離する工夫がなされた磁力を用いた濾過装置が開示されている。また、特許文献2には、磁気分離フィルタとして磁気力の異なる磁気フィルタを多段に設けることにより分離効果を上げる工夫がなされた濾過装置が開示されている。さらに、特許文献3には、磁性繊維を用いた磁気フィルタを備える濾過装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−276624号公報
【特許文献2】特開平10−192620号公報
【特許文献3】特開平9−220417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された濾過装置は、磁性粒子が連続的に綿状繊維を通過する構造になっていることから粒子物質の除去効率に限界があるとともに、超電導磁石を利用することで高額となるといった問題がある。また、特許文献2に開示された濾過装置は、粒子状物質を効率的に分離することが困難であるとともに、非磁性体の粒子状物質を分離するための設備も必要であって装置が大規模になってしまうといった問題がある。さらに、特許文献3に開示された濾過装置は、磁性繊維を使用した磁気フィルターが支持体に磁気がない場合の粒子除去率が5%程度であることから、除去対象が非磁性体の粒子物質に対して除去効果がないといった問題があり、さらに磁気発生源と粒子捕集部である磁性繊維が一体であることから再生して使用することもできないといった問題がある。
【0008】
上述したように、濾過装置においては、従来より永久磁石や電磁石の磁気力を利用して被濾過液から磁性濾過物の濾過が行われていた。しかしながら、いずれの濾過装置においても、磁気力によって被濾過液中に分散された磁性濾過物を濾過することを目的としたものである。
【0009】
濾過装置においては、磁性濾過物ばかりでなく被濾過液中に分散するあらゆる性質の濾過物を効率的に濾過する特性が要求される。濾過装置は、構造が簡易であって廉価であり、ランニングコストがさほどかからないことが理想である。濾過装置は、濾過の進行に伴う目詰まりに対して濾過材が使い捨されずに、簡易でかつすばやく再生が可能であることが理想である。
【0010】
したがって、本発明は、磁気力を利用して濾過材を構築及び解離自在とし、効率的な濾過と洗浄再生とを可能とする新規な液体の濾過方法及び液体の濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明にかかる液体の濾過方法は、磁性粉体や磁性粒体、これら磁性粉体や磁性粒体と繊維状支持体或いは磁性繊維からなり磁性特性を有する解離自在な濾材に、磁石手段からの磁気力を作用させることによって液体流路中において濾材を互いに磁気結合させて濾過材を構築して被濾過液中に分散した粒子状物質の濾過を行う。液体の濾過方法は、濾過の進行に伴って濾材により捕捉した粒子状物質によって濾過材に目詰まりが生じて濾過効率が低下した場合に、磁石手段からの磁気力を解放することによって濾材を解離させた状態として洗浄処理を施して粒子状物質を洗浄除去する。液体の濾過方法は、洗浄処理を行った後に磁石手段から濾材に磁気力を再作用させて濾過材を再構築する。
【0012】
本発明にかかる液体の濾過方法によれば、磁石手段からの磁気力によって磁性特性を有する濾材が互いに強固に磁気結合されて液体流路中に濾過材を構築し、この液体流路中に供給された被濾過液中に分散された所定粒径の濾過物を捕捉して濾過して純化された濾過液のみを通過させるようにする。液体の濾過方法によれば、濾過の進行に伴って濾過材に捕捉された濾過物により次第に目詰まりが生じて濾過効率が低下した場合に、被濾過液の供給を中止するとともに磁石手段からの磁気力を解放することで濾材が解離自在な状態とする。液体の濾過方法によれば、液体流路中にやや高圧の洗浄水を注入することによって解離自在な状態となった濾材の洗浄を行って付着したスラジ状の濾過物を除去する。液体の濾過方法によれば、洗浄処理後に再び磁石手段からの磁気力を濾材に作用させて濾過材を再構築させることにより、引き続いて再濾過操作が行われるようにする。液体の濾過方法によれば、磁気力を利用して濾過材の構築と解離とを自在とすることによって、一般的な濾過方法と同様に被濾過液中に分散した濾過物の濾過を行うとともに、濾過材を使い捨てとはせずに簡易な洗浄処理によって再使用することを可能とする。
【0013】
また、上述した目的を達成する本発明にかかる液体の濾過装置は、濾過材と、この濾過材を液体流路中に支持する支持部材と、磁石手段とを備える。液体の濾過装置は、濾過材が、磁性粉体や磁性粒体、これら磁性粉体や磁性粒体と繊維状支持体或いは磁性繊維からなり磁性特性を有する解離自在な濾材によって構成される。液体の濾過装置は、濾過材を液体流路中に支持する綿状、マット状、網状の繊維層状或いは多孔性の平板等によって構成される。液体の濾過装置は、磁石手段が、支持部材に対向して液体流路に沿って設けられ、濾材に対して磁気力を作用させる第1状態と磁気力を解放する第2状態とに切り替えられる。
【0014】
本発明にかかる液体の濾過装置においては、磁石手段からの磁気力によって磁性特性を有する濾材が支持部材上で互いに強固に磁気結合されて液体流路中に濾過材を構築し、液体流路中に供給された被濾過液中に分散された所定粒径の濾過物を捕捉して濾過し純化された濾過液のみを通過させるようにする。液体の濾過装置によれば、濾過の進行に伴って濾過材に捕捉された濾過物により次第に目詰まりが生じて濾過効率が低下した場合に、被濾過液の供給を中止するとともに磁石手段からの磁気力を解放することで濾材が解離自在な状態とする。液体の濾過装置によれば、解離状態な状態となった濾材に対して、例えば液体流路中にやや高圧の洗浄水を注入することによって濾材に付着したスラジ状の濾過物を洗浄除去する。液体の濾過装置によれば、洗浄処理後に再び磁石手段からの磁気力を濾材に作用させることによって磁気結合させて支持部材上に濾過材を再構築させて、再濾過操作が行われるようにする。液体の濾過装置によれば、磁気力を利用して濾過材の構築と解離とを自在とすることによって、一般的な濾過装置と同様に被濾過液中に分散した濾過物の濾過を行うとともに、濾過材を使い捨てとはせずに簡易な洗浄処理によって再使用を可能とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁性特性を有する解離自在な濾材に磁気力を作用させて液体流路内に濾過材を構築して被濾過液中に分散した濾過物の濾過を行うとともに、磁気力を開放して解離自在な状態とした濾材に対して洗浄処理を施した後に、濾材に磁気力を再作用させて濾過材を再構築する。本発明によれば、濾過材を使い捨てとはせずに再使用することを可能とするとともに高精度の濾過を行うことを可能とする。本発明によれば、省資源化が図られるようにするとともに、低コストで効率的な濾過処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態として示す濾過装置1は、図1に示すように供給された被濾過液が重力によって流れる濾過槽2を備えており、この濾過槽2の内部を上下空間部に区割りするように濾過材支持部材3を設けるとともにこの濾過材支持部材3によって被濾過液から分散された所定粒径の濾過物を濾過する濾過材4を支持する。濾過槽2には、濾過材支持部材3によって区割りされた上部空間部が被濾過液供給部5から供給される被濾過液を貯水する貯水空間部2Aとして構成するとともに、下部空間部が濾過材4を通過して濾過処理が行われた濾過液を受け入れる導水空間部2Bとして構成される。
【0017】
濾過槽2には、上部に上述した被濾過液供給部5とともに、後述する洗浄処理を行う際に貯水空間部2Aに洗浄水を供給する洗浄水供給部6が設けられている。濾過槽2には、導水空間部2Bの下方部位に濾過処理を施された濾過液を側方へと取り出す濾過液取り出し部7が設けられるとともに、洗浄水やスラジを下方へと排出する洗浄水排水部8が設けられている。
【0018】
濾過装置1は、詳細を後述するように濾過材4に、磁気的に一体に結合する第1状態と解離自在な第2状態となる磁性特性を有する濾材が用いられる。濾材は、濾過槽2に対して解離自在な第2状態で貯水空間部2Aに装填されて濾過材支持部材3上に支持される。濾材は、後述する磁石装置9から作用される磁気力によって濾過材支持部材3上において強固に磁気結合して濾過材4を構築する。
【0019】
濾過材4には、例えば所定粒径を有する強磁性粉体や強磁性粒体、或いはこれら強磁性粉体や強磁性粒体と繊維物との混合体、又は磁性繊維からなる強磁性特性を有する濾材が用いられる。濾過材4は、濾過対象となる被濾過液の性状や除去する被濾過物の粒径或いは目的とする被濾過物の除去率を考慮して適宜選定される。濾過材4には、例えば油性の被濾過液に濾過を施す場合には耐油性の繊維を基材とした濾材が用いられる。また、濾過材4には、被濾過液に分散された微少な粒径の被濾過物を濾過する場合に、繊維径の小さい繊維を基材とした濾材が用いられる。
【0020】
濾過材4には、繊維物として、有機繊維材や無機繊維材が用いられる。濾過材4には、有機繊維材として、例えばポリエステル、ポリビニールアルコール、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリアクリルニトリル、アラミド、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクラール等の化学繊維或いはレーヨン、アセテート、キュブラ等の半合成繊維、さらにセルロース等の天然繊維が用いられる。濾過材4は、これら繊維に限定されず、様々な繊維材を用いることが可能である。濾過材4には、無機繊維材として、例えば鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、鋼、真鍮、リン青銅、鉄ーアルミニウム合金等を素材とする金属繊維が用いられる。また、濾過材4には、フェライト−鉄ーケイ素合金や高透磁性合金等の繊維材を用いることも可能である。
【0021】
濾過材4には、強磁性粉体や強磁性粒体として、例えば磁性フェライト類、マンガン、マンガン合金、マグネタイト、クロム鋼、高コバルト鋼、鉄、ケイ素鋼、ニッケル、ニッケル合金、アモルファス合金、アルコニ系合金或いは希土類コバルト軽合金等が用いられる。濾過材4は、これら磁性粉末に限定されず、その他強磁性で形状が粉体状や粒子状或いは繊維状のであれば特に限定はない。
【0022】
濾過材4は、濾材として上述した化学繊維や半合成繊維或いは天然繊維に、上述した磁性材を固着したり含有させることによって構成した磁性繊維が用いられる。
【0023】
濾過装置1は、濾過材支持部材3が、濾過槽2に適宜の固定構造によって所定位置に保持される繊維材や金属材による綿状体、マット状体、網状体或いは多孔質の平板体等によって構成され、上述した解離自在な状態の濾材を濾過槽2内に支持する。
【0024】
濾過装置1には、濾過材支持部材3上において濾過材4を構築させる磁石装置9が付設される。磁石装置9は、濾過材支持部材3に対向して濾過槽2の外周部に配置され、濾過材4に対して磁気力を作用させる第1状態と、磁気力を開放する第2状態との切り換えが可能とされるいかなる構成の磁石装置であってもよい。
【0025】
磁石装置9は、第1状態において濾過槽2内に供給される被濾過液の水圧によって濾材がばらけることなく濾過材4として支持されるようにする磁気力を作用させて磁気的に結合させる。磁石装置9は、第2状態において濾過材4に対して磁気力を全く作用させない状態とする必要は無く、後述する洗浄処理に際して濾材がばらける状態まで磁気力が低減されればよい。
【0026】
磁石装置9は、例えば濾過槽2の外周部に対して駆動構造を介して接離自在に設置された永久磁石によって構成するようにしてもよい。また、磁石装置9は、濾過槽2の外周部に対して絶縁を支持されて固定されたコイルを備える電磁石装置によって構成するようにしてもよい。磁石装置9は、濾過槽2の外周部に全周に亘って配置されて濾過槽2の内部に均一な状態で磁気力を作用させることによって濾材を磁気結合させ、濾過材支持部材3上において濾過材4を構築させる。
【0027】
磁石装置9には、永久磁石として、セラミックス磁石類として例えばバリウムフェライト磁石、ストロンチウムフェライト磁石、鉛フェライト磁石或いはコバルトフェライト磁石が用いられる。また、磁石装置9には、永久磁石として、希土類鉄磁石類として例えばネオジウム磁石や鉄ホウ素磁石が用いられる。磁石装置9は、かかる永久磁石ばかりでなく着磁によって永久磁石となるものであれば特に限定しない。磁石装置9は、永久磁石を適宜のスライドガイド機構によって濾過槽2に対して接離自在に支持することによって、濾過材4に作用させる磁気力の大きさを可変とさせる。
【0028】
磁石装置9は、コアに組み合わせたコイルに通電することによってコアに磁気力を励起させる周知の電磁石装置も用いられる。電磁石装置は、コイルに通電することによってコアに励起された磁気力を濾過材4に作用させ、通電を絶つことによって濾過材4を磁気的に開放する。なお、電磁石装置は、電流切換器を設けてコイルへの電流量を調整することによって磁気力を調整自在とするように構成されてもよい。また、電磁石装置は、詳細な構成を省略するが濾過材支持部材3に直接磁気力を励起させる構造であってもよい。
【0029】
以上のように構成された濾過装置1においては、磁石装置9が動作されて濾過槽2内の濾材に磁気力を作用させることによって、磁性特性を有する濾材が互いに強固に磁気結合して全体が多孔質の固体化した状態となり濾過材支持部材3上において濾過材4を構築する。濾過材4は、例えば繊維状の濾材が磁気的に結合して、いわゆる不織布状態となって濾材間に微細な間隙を構成して固体化される。濾過材4は、強磁性粉末や強磁性粒体が互いに磁気結合して濾過材支持部材3上において微細な間隙を構成して固体化される。
【0030】
濾過装置1においては、濾過槽2の貯水空間部2A内に被濾過液供給部5から所定量の被濾過液が供給され、この被濾過液が浸透圧と重力とにより濾過材4の微細間隙を通過して導水空間部2B内に落下する。濾過装置1においては、濾過材4が微細間隙を通過する被濾過液から分散された濾過物を濾材によって補足することで濾過し、純化された濾過液のみを通過させるようにする。濾過装置1においては、濾過材4を通過して導水空間部2B内に溜まった濾過液が、濾過液取り出し部7を介して回収される。
【0031】
濾過装置1においては、濾過の進行に伴って濾過材4に捕捉された濾過物によって濾過材4に次第に目詰まりが生じて濾過効率が低下する。濾過装置1においては、被濾過液の供給を中止するとともに磁石装置9を第1状態から第2状態へと切換操作を行うことにより、濾過材4に対する磁気力の作用を開放させる。濾過装置1においては、これによって濾過材4が、濾過材支持部材3上において互いに磁気結合していた濾材が解離自在な状態となる。
【0032】
濾過装置1においては、濾材を解離自在な状態とした濾過材4に対して、洗浄水排水部8から濾過槽2内にやや高圧の洗浄水を注入して洗浄処理が施される。濾過装置1においては、濾過材4が、磁気力を開放されて解離自在な状態となっている濾材に洗浄水が吹き付けられることによって付着したスラジ状の濾過物が飛ばされて除去される。濾過装置1においては、除去された濾過物が洗浄水とともに濾過材支持部材3を通過して導水空間部2B内に落下する。濾過装置1においては、導水空間部2Bから洗浄水排水部8を介して濾過物を洗浄水とともに回収することによって洗浄処理を終了する。濾過装置1においては、洗浄水排水部8からの洗浄水の供給を停止する。
【0033】
濾過装置1においては、上述した濾過材4の洗浄処理を終了した後に磁石装置9が再動作されて濾過槽2内の濾材に磁気力を作用させることによって、繊維状の濾材が分散させた磁性物をバインダとして互いに磁気結合して全体が固体化した状態となり濾過材支持部材3上において濾過材4を再構築する。濾過装置1においては、被濾過液供給部5から濾過槽2内に被濾過液を供給して、濾過処理を行う。
【0034】
濾過装置1においては、上述した洗浄処理時において濾材が濾過材支持部材3上に支持された状態で洗浄が行われる。濾過装置1においては、濾過材4を濾過槽2から取り出して洗浄するといった操作を不要とし、効率的な洗浄処理が行われるようにする。濾過装置1においては、解離自在な状態の濾材を洗浄することで、付着した濾過物を効率よく除去することを可能とする。濾過装置1においては、濾過材4を使い捨てすることなく、上述した簡易な洗浄処理によってほぼ未使用の状態とすることが可能であり、コストの低減と省資源化とが図られるようにする。濾過装置1においては、洗浄処理を含んで効率的な濾過作業を行うことが可能である。
【0035】
上述した濾過装置1に基づいて、図2に示す実施例装置10を製作して、被濾過液の濾過処理を行って濾過特性の測定を行った。
【0036】
[実施例1]
実施例濾過装置10は、板厚2mmの塩化ビニル樹脂板によって流路の断面寸法が2.5cm×2.5cmの正方形流路からなる被濾過液の流路を有する濾過槽2が構成され、その外周部に縦3cm×横3cm×厚さ1.7cmのネオジウム磁石2個を備えた磁石装置9を各磁石が対向するようにして設置し、流路内に磁界を形成する。実施例濾過装置10は、磁界が作用する流路中に濾過材支持部材3によって支持するようにして線径0.35mmのスチールウールに防食メッキを施したマット状物を厚さ5cmに充填して繊維層状に構築した。実施例濾過装置10は、強磁性ろ過材として3gのマンガンフェライト粉末(粒径20μm、透磁率2000)を繊維基材に分散させて濾過材4を構成した。
【0037】
実施例濾過装置10には、洗浄水供給部6及び濾過液取り出し部7と洗浄水排水部8のそれぞれのバルブを閉じた状態で、被濾過液供給部5から被濾過液をポンプ11によって100cc/minの流量で貯水空間部2A内に供給した。被濾過液は、放電加工機から排出される加工液であり、鉄、銅、アルミニウム、モリブデン或いはタングステン等の粒子径が0.1μm〜1μmの範囲の種々の粒子状物質が約200ppm含有されている。
【0038】
上述した実施例濾過装置100について、被濾過液中の粒子状物質の除去率を、
100×(1−濾過後の濾過液中の粒子状物質の重量/被濾過液中の粒子状物質の重量)
式により算出した。算出結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
また、上述した実施例濾過装置10において、被濾過液の濾過処理を4時間連続して行い、濾過材4に濾過物を蓄積させてポンプ11による濾過圧力が初期の2倍になった時点で同様に除去率を算出するとともにこのときの濾過圧力を測定した。結果を表2に示す。
【0041】
実施例濾過装置10は、この時点でポンプ11を止めて被濾過液の供給を停止して、濾過処理が中止される。実施例濾過装置10は、磁石装置9が各永久磁石を濾過槽2から遠ざけるように動作されることで、濾過材4に作用させていた磁気力が開放されるようにする。実施例濾過装置10は、洗浄水排出部8のバルブを開放して濾過槽2内から被濾過液の抜き取り処理を行った後に、洗浄水供給部6から洗浄水を供給して濾過材4の洗浄処理を施す。なお、洗浄処理については、洗浄水排出部8のバルブを閉じて濾過槽2内において濾過材4が洗浄水によって所定時間浸されるようにしてもよい。
【0042】
実施例濾過装置10においては、所定時間の洗浄処理を施した後に、洗浄水排出部8から洗浄水が排水される。実施例濾過装置10においては、濾過材4に付着した濾過物も洗浄水とともに洗浄水排出部8から排出される。実施例濾過装置10においては、磁石装置9が各磁石を濾過槽2に近づけられ、濾材に磁気力を作用させて濾過材4の再構築が行われて濾過処理が開始される。
【0043】
実施例濾過装置10について、最初の濾過処理と同様に、濾過物の除去率を算出しこのときの濾過圧力を測定してその結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例濾過装置10と同一に構成され、磁界内に繊維材を存在させた濾過材を用いた比較例装置によって上記被濾過液に対する濾過処理を行った。この比較例について、同様にして濾過物の除去率を算出した結果を上述した表1内に示す。
【0046】
濾過装置10は、表1に示す結果から明らかなように、強磁性体を繊維基材に分散させて磁気装置9から作用させる磁気力によって磁気結合してなる濾過材を備えることによって、従来の磁気フィルタを用いた濾過方法と比較して極めて優れた除去率によって濾過物を除去する。
【0047】
濾過装置10は、表2に示す結果から明らかなように、上述した濾過材4を用いるとともにこの濾過材4に対して上述した洗浄処理を施すことによって、濾過処理に伴って生じた濾過材4の目詰まりが効率よく排除されて再使用される。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、磁性特性を有する濾材に対して磁気力を利用して濾過材を構築及び解離自在とするとともに、解離自在な状態で洗浄処理を施す基本的態様に基づいて種々に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態として示す濾過装置の要部構成図である。
【図2】濾過装置の濾過特性を検証するための説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 濾過装置、2 濾過槽、3 濾過材支持部材、4 濾過材、5 被濾過液供給部、6 洗浄水供給部、7 濾過液取り出し部、8 洗浄水排水部、9 磁石装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉体や磁性粒体、これら磁性粉体や磁性粒体と繊維状支持体或いは磁性繊維からなり磁性特性を有する解離自在な濾材に、磁石手段からの磁気力を作用させることによって液体流路中において上記濾材を互いに磁気結合させて濾過材を構築して被濾過液中に分散した粒子状物質の濾過を行うとともに、
濾過の進行に伴って上記濾材により捕捉した粒子状物質による上記濾過材の目詰まり状態を、上記磁石手段からの磁気力を解放することによって上記濾材を解離させた状態として洗浄処理を施して上記粒子状物質を洗浄除去した後に、
上記磁石手段から上記濾材に磁気力を再作用させて上記濾過材を再構築することを特徴とする液体の濾過方法。
【請求項2】
磁性粉体や磁性粒体、これら磁性粉体や磁性粒体と繊維状支持体或いは磁性繊維からなり磁性特性を有する解離自在な濾材によって構成される濾過材と、
上記濾過材を液体流路中に支持する綿状、マット状、網状の繊維層状或いは平板状の支持部材と、
上記支持部材に対向して上記液体流路に沿って設けられ、上記濾材に対して磁気力を作用させる第1状態と磁気力を解放する第2状態とに切り替えられる磁石手段とを備え、
上記磁石手段からの磁気力によって上記濾材を上記支持部材上において互いに磁気結合させて濾過材を構築して上記液体流路に供給された被濾過液中に分散した粒子状物質の濾過を行うとともに、上記磁石手段からの磁気力を解放して上記濾材を解離自在な状態とさせて洗浄処理を施して上記濾材に付着したスラジを除去した後に、上記磁石手段から上記濾材に磁気力を再作用させて再構築を行うことを特徴とする液体の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−239614(P2006−239614A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60673(P2005−60673)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(591267855)埼玉県 (71)
【出願人】(592169459)株式会社忍足研究所 (3)
【Fターム(参考)】