説明

液体濾過用のムライト・モジュール

本発明は、液体を濾過するためのハニカム・モノリスを形成するのに適した材料に関し、特に原料を濾過液と残余液とに分離させるためのクロスフロー濾過装置を形成するためのムライト材料、上記濾過装置の形成方法、および上記材料から形成された濾過装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、「液体濾過用のムライト・モジュール」と題して2008年8月18日付けで提出された米国仮特許出願第61/089,718号、および「液体濾過用のムライト・モジュール」と題して2008年11月21日付けで提出された米国特許出願第12/276,028号に優先権を主張した出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、液体濾過用のハニカム・モノリスを形成するのに適した材料に関し、特に、原料を濾過液と残余液とに分離するためのクロスフロー濾過装置を形成するためのムライト材料、この濾過装置の形成方法、および上記材料から形成された濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
スロットを備えたクロスフロー濾過装置は、汚染された液体原料を濾過液と残余液とに分離するために用いられて来た(例えば、特許文献1および2を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,781,831号明細書
【特許文献2】米国特許第4,983,423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用時において、これらの装置は、かなりの高圧に耐えるのみでなく、危険なまたは腐食性の汚染物を含有し得る、粒子状物質または不溶性成分で著しく汚染された可能性のある高pH、低pHの液体流に耐える必要がある。これらの条件は、長期の耐用期間に亘ってこれらの化学的および物理的難題に耐え得ることを材料に要求する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数の実施の形態において、本発明は、適当な強度および耐食性を保ちながら、適当な濾過流量を有する液体濾過用のムライト材料を提供するものである。複数の実施の形態において、上記ムライト材料の流水量は、60psi(414kPa)において1200ミリリットル/分よりも多い(あるいは、水銀透過率が140ミリダルシーを上回る)。
【0007】
複数の実施の形態において、本発明は、30重量%よりも多いムライトおよび10〜15重量%のベントナイト、および随意的に15%未満の細かいアルミナ、随意的に8〜42%の粗いアルミナ、および随意的に2〜10%のシリカを含んで、100%の全重量パーセントとし、かつ10〜15%のグラファイトおよび5〜15%の馬鈴薯澱粉を含む細孔形成剤の上乗せ添加物を含む液体濾過用のムライト材料を提供する。
【0008】
本発明の複数の実施の形態はまた、処理流を受容するための、かつかつこの処理流を濾過液と残余液とに分離させるための濾過装置を形成するための方法を提供し、この方法は、30%重量よりも多いムライト粉末および10〜15重量%のベントナイト、随意的に15%未満の細かいアルミナ、随意的に8〜42%の粗いアルミナ、および随意的に2〜10%のシリカを乾燥混合して100%の全重量パーセントにするステップ、10〜15%のグラファイトと5〜15%の馬鈴薯澱粉を含む細孔形成剤の上乗せ添加物を加えるステップ、十分な水を加えて変形可能なバッチを形成するステップ、上記バッチを押出し成形するステップ、および1550℃を超える温度で焼成するステップを含む。
【0009】
さらなる実施の形態において、本発明は、30%よりも多いムライト、10〜15%のベントナイト、15%未満の細かいアルミナ、随意的に10〜42%の粗いアルミナ、随意的に2〜10%のシリカを含む組成物から作製された、焼成されたセラミック物品を提供し、このセラミック物品は8〜11μmの直径中央値を有する多数の細孔をさらに含んでいる。
【0010】
本発明のさらなる実施の形態および効果は、ある程度、下記の詳細な説明および何れかの請求項に記載され、または本発明の実施によって学ぶことができるであろう。上述の概略説明および下記の詳細な説明は、例示的および説明のためのみのものであって、限定するものではない。
【0011】
添付図面は、本発明のいくつかの実施の形態を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による典型的なモノリス体の斜視図である。
【図2a】内部に形成された複数の濾過コンジットをさらに有する本発明による典型的なモノリス体の斜視図である。
【図2b】図2aに示されたb−b面に沿った、図2aに示されたモノリス体の概略的断面図である。
【図3】実施例2の濾過テストに利用されたクロスフロー濾過システムの概略図である。
【図4】本発明のムライト・モノリス体の多数の実施の形態に関する流水量と濾過圧力との間の関係を示すグラフである。
【図5】本発明のムライト・モノリス体の多数の実施の形態に関する水銀透過率の測定値と60psi(414kPa)における流水量(ミリリットル/分で測定された)との間の関係を示すグラフである。
【図6】酸および塩基環境での多サイクルに亘る酸/塩基耐性テストにおける本発明のムライト材料の多数の実施の形態の耐性を示すグラフである。
【図7】本発明のムライト材料の多数の実施の形態に関する水銀透過率の測定値とMORとの間の関係を示すグラフである。
【図8】本発明のムライト材料の多数の実施の形態に関する水銀透過率の測定値とロッドのMOR強度との関係を示すグラフである。
【図9】水銀透過率の測定値と細孔直径との間の関係を示すグラフである。
【図10】細孔容積と比較した水銀透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
複数の液体流を分離させ、かつ液体流から液体と固体粒子とを分離させることは、多くの工業および製造業における重要な工程である。これらの工業的液体濾過用途には、クロスフロー・セラミックハニカム・モノリスが用いられてきた。これらのセラミック・モノリスは、混合液体流が入口面を通過してセラミックハニカム・モノリス内に流入し、かつ濾過液流と残余液の液流とに分離するのを可能にする適当な多孔性を有する押出し成形材料から作製されている。濾過液は、上記入口面を流れ抜けてこのセラミックハニカム・モノリス内に流入し、セラミック・モノリスの壁を流れ抜け、そしてこのセラミック・モノリスの壁を流れ抜けて、セラミックハニカム・モノリスの外に出るか、あるいはセラミック・モノリス内の孔またはスロットを通って濾過液コレクタ内に入る。残余液流は、上記入口面を通ってセラセラミックハニカム・モノリス内に流入し、このモノリスのハニカムフローチャンネルに沿って流れ、出口面においてモノリスを出て残余液コレクタ内に入る。ハニカム・モノリスの表面に膜が施されて、物理的分離または化学的または触媒的分離を可能にし、これらは上記モノリスの分離特性を改善する。例えば、ムライト、コージェライトおよび炭化珪素(SiC)がこれらの液体濾過用途に用いることができる。
【0014】
良好な工業的特性を有するためには、上記材料がより高い透過性と組合せられたむずかしい環境において、良好な強度および耐性を持たなければならない。むずかしい環境とは、高pH、低pH、高温、低温を含み、さらには、高温と低温との間の変動、高pHと低pHとの間の変動、および水性材料と有機材料との混合を含む水性液体、有機液体、反応性化学液体、またはこれらの組合せへの露出を含む。良好な強度および耐性と高い透過性との組合せは、潜在的に低い処理圧力を用いて、より高い生成物濾過流および、より高い処理能力を誘導する。
【0015】
透過率が高いことは一般に、より高い多孔度および、より大きい細孔サイズを意味する。より高いレベルの多孔度は一般に、腐食作用に対するより大きい露出とともに、より高いレベルの内部表面積を伴う。一般に、より高い透過率は強度低下に対応する。本発明の複数の実施の形態においては、強度および耐食性等のその他の重要な製品特性を維持しながら、増大された濾過流量(増大された細孔サイズまたは細孔密度)を有する多孔質ムライト膜体支持構造が提供される。
【0016】
本発明の種々の実施の形態が図面を参照して詳細に説明されている。種々の実施の形態を参照することは、本発明の範囲を限定することではない。したがって、本明細書において、複数の実施例の何れかが説明されることは、限定ではなく、請求項に記載された本発明に関する多くの実施の形態のいくつかを説明するに過ぎない。
【0017】
本発明の下記の記載は、現在知られている最良の実施の形態において本発明の教示を可能にするものとして提供されるものである。そのため、本発明の有益な結果をなおも享受しながら、ここに説明されている本発明の種々の実施の形態に対して種々の変更を行ない得ることを、当業者であれば認識しかつ理解するであろう。また、本発明の特徴のいくつかを選択することによって、その他の特徴を利用することなく、本発明の所望の効果を得ることができることも明らかである。したがって、本発明に対する多くの変更および適応が可能であり、状況によってはそれが望ましくもあることを当業者は認識するであろう。それ故に、下記の説明は、本発明の原理を示すために提供されるものであって、本発明を限定するものではない。
【0018】
本明細書およびそれに続く請求項において、多くの用語が引用されるが、それらは下記のような意味を持つものと定義される。すなわち、ここに用いられているような単数形の名詞は、単数形以外はないと明らかに指示されている場合を除き、複数のものを含む。それ故に、例えば、一つの要素または成分が引用された場合、一つ以外はないと明らかに指示されている場合を除き、二つまたはそれ以上のこのような要素を有する実施の形態をも含む。
【0019】
「随意的な」または「随意的に」は、その後に説明されている事象または状況が起こり得る場合もあり、起こり得ない場合もあることを意味し、かつその説明は、上記事象または状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、随意的な要素または随意的な成分という言い回しは、その成分が存在し得る場合と、存在し得ない場合とがあることを意味し、その説明は、上記成分を含む実施の形態と、上記成分を含まない実施の形態との双方を含むことを意味する。
【0020】
ここで、実施例が添付図面に示されている本発明の複数の実施の形態について詳細に説明する。全図を通じて、同一または類似の部品については、可能な限り、同一または類似の参照番号が用いられている。しかしながら、図面は説明を目的とするためのみのものであって、必ずしも同一縮尺ではない。
【0021】
図1を参照すると、基体内に配置され、かつ基体の長さ方向に沿って上流の入口端すなわち供給端1101から下流の出口端すなわち排出端1102まで延びる複数のフローチャンネル110を画成する多孔質モノリス体すなわちモジュール150を有する多孔質多チャンネルモノリス基体10が示されている。多孔質のチャンネル壁114が、複数のフローチャンネル110のそれぞれを取り囲んでいる。この多孔質モノリス体150はさらに、曲がりくねった流体通路すなわちコンジット152を形成する互いに連結された網状細孔組織を備えている。上記多孔質体150によって形成された曲がりくねった流体通路152は、濾過液を残余液から分離させるための流路を提供し、この濾過液は、濾過液コレクタ内に集めるために上記多孔質材料内を基体の外表面まで流れ通り、残余液は、上記濾過液コレクタから分離している残余液コレクタまで上記フローチャンネル内を流れ通る。複数の実施の形態において、上記濾過液はモノリス体内の孔またはスロットを通ってこのモノリス体の外へ流出することができる。複数の実施の形態において、本発明の多チャンネルモノリス基体は、下記に例示されているように、液体処理流から一つまたは複数の成分を抽出するために、研究室規模または工業規模における液相分離に用いることができる。
【0022】
上記モノリス体150は、如何なる所望の所定サイズおよび形状をも有することができる。例えば、図1にはほぼ円形の断面を備えた円柱としてモノリス体すなわちモジュール150が例示されているが、モジュール150が楕円形または多角形の何れかの断面を備えるように整形されることが可能であることを理解すべきである。そのためには、例示的であって限定的でないモノリスの断面形状は、楕円形、円形、長方形、正方形、五角形、六角形、八角形等を含む。以下の説明では、整合性および単純性のために、円柱形状のモノリス体150が主として用いられる。
【0023】
フローチャンネル110は、モジュールの断面全体に亘って平行および対称的に分布されることができる。これらのフローチャンネルはまた、モジュールの上流の入口端1101から下流の出口端1102まで延びて、処理流が通過することができる通路を形成している。典型的な実施の形態においては、フローチャンネルの断面形状が円形すなわち丸みを帯びている。しかしながら、フローチャンネルの断面形状は、連続的でかつ尖った角を有しない如何なる所望の楕円形または多角形にもすることができることを理解すべきである。典型的なチャンネルの断面形状は、楕円形、円形、長方形、正方形、五角形、六角形、八角形等を含む。図1にはチャンネルの分布が均一に示されているが、フローチャンネル110は、モジュール内において非均一に分布されていてもよい。一つの実施の形態においては、複数のフローチャンネルがほぼ平行である。しかしながら、モジュールの幾何学的形状に応じて、フローチャンネルが直線的経路を辿らなくても、平行でなくてもよい。例えば、もし非整列チャンネルのオーバーラップまたは交差がないようにウェブの厚さが十分でありさえすれば、チャンネル110は、非平行分布において傾斜していてもよい(傾斜角は90度未満)。非均一チャンネル分布に関しては、ウェブの厚さ130が種々の厚さの範囲にある(例えば、0.2mm〜2mm)。周縁部における外皮の厚さ120(例えば1mmまたは0.04インチを超える)はウェブの厚さ130よりも厚いことが有利である。外皮すなわち周縁部の厚さ120は、ウェブの厚さ130とは別個のパラメータである。ウェブの厚さ130は、チャンネル110間の距離を測ったものであるが、外皮すなわち周縁部の厚さ120は、外側チャンネルからモジュールの外表面までの距離を測ったものであり、モジュール全体の強度および透過率に影響する。
【0024】
複数の実施の形態において、モノリス体150は、無機または有機材料を含む適当な多孔質材料から形成することが可能である。いくつかの実施の形態において、このモノリス体は、例えばポリマー材料から構成されていてもよい。別の複数の実施の形態においては、このモノリス体が金属またはセラミックから構成されていてもよい。一つの実施の形態において、モノリス体が多孔質セラミックから構成される。例えば、そして限定ではなく、いくつかの実施の形態においては、ムライト(3Al−2SiO)、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、コージェライト(2MgO−2Al−5SiO)、炭化珪素(SiC)、チタン酸アルミニウム、アルミナ・シリカ混合液から選ばれたセラミック組成物、ガラス、無機耐火材料、展性金属酸化物、細孔形成剤、および焼成助剤から作製される。例えば、ムライトは高い強度、高い耐食性、および処理の容易性を有する。
【0025】
モジュールすなわちモノリス体150は、従来から知られている鋳込み成形法または押出し成形法の何れかによって調製可能である。例えば、モジュールすなわちモノリス体は、一次相としてのムライトを有する焼成されたセラミック組成物から構成されることができる。この焼成されたセラミックは、セラミック形成用原材料、有機バインダ系、および随意的な液状ビヒクルを含む、押出し成形可能な可塑化されたバッチ組成物から調製可能である。この押出し成形可能な混合物は、押し出されて所望の構造を有する未焼成体を形成する。この未焼成体は、乾かされ、かつ焼結されたセラミック組織が形成されるのに十分な時間および温度において焼成される。濾過液コンジットは、例えば押出し成形による、または押出し成形後の他の手段による製造時にモノリス内に形成することが可能である。例えば、濾過液コンジットは、押出し成形後にモノリス内に切り込まれてもよい。粗いマイクロフィルタレーション、抽出、流体混合等の用途における流体流の処理に関しては、追加的な膜体の不存在において多孔質モノリス体150自体が用いられる。しかしながら、その他の流体流処理の用途に関しては、多孔質フローチャンネル壁の少なくとも一部分に多孔質の膜体が堆積される。
【0026】
必要に応じて、モノリスマトリクスの細孔よりも小さい細孔サイズを有する多孔質材料からなる随意的な中間層160が、基体すなわちマトリクス部分150のチャンネル壁114上に堆積されることが可能であり、かつ単独でまたは付加的な層140とともに用いられることができる。この被覆層160は、一つもしくは複数の機能を果たすことができる。いくつかの実施の形態においては、上記被覆層160が、細孔サイズ、表面の平滑性等のパラメータを含むフローチャンネルの形状および壁の肌理を修正するために施される。別の実施の形態においては、上記被覆層160が、モノリス体150の強化に用いられる。さらに別の実施の形態においては、上記被覆層160が、上記膜体の堆積効率および接着性を高めるのに用いられる。
【0027】
上記多孔質被覆層160は、存在する場合、約5〜150μmの範囲内の層厚さを示すように堆積されるのがよい。さらに、この随意的な被覆層160の細孔容積は、2〜500nm程度の範囲内の細孔サイズを有するのがよい。したがって、1層または複数層の多孔質被覆層160は、複数のフィードフローチャンネル110の内壁上に随意的に堆積されて、微小なまたは中間的な多孔質層を形成する。
【0028】
上記随意的な層160は、アルミナ、シリカ、ムライト、ガラス、ジルコニア、チタニア、およびそらのうちの二つまたはそれ以上の組合せからなる群から選ばれた材料とすることができる。一つの実施の形態において、上記中間層160は、アルミナ、ジルコニア、シリカまたはチタニアからなる。この中間被覆層160は、常套的なゾル・ゲル法、または鋳込み成形等の従来から知られている湿式化学的方法により施される。
【0029】
随意的に、分離機能を備えた付加的被覆140が、随意的な中間被覆層160上に、またはモノリス体150の複数のフィードフローチャンネル110の内表面すなわち壁114上に直接施される。そのため、層160は他の層を伴わずに単独で用いられることができために、ここで用いられている用語「被覆」は、層160単独の使用、層140単独の使用、または層140および160の使用を含む実施の形態を意味する。多層の被覆層もあり得る。被覆140は無機または有機材料からなる。例えば、いくつかの実施の形態において、被覆140は緻密な層、または混合液中の或る分子の浸透を許容する、SiCまたはガラス等の非金属の緻密なフィルムとすることができる。さらに別の実施の形態においては、上記被覆140が、例えばゼオライト、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニアまたはガラスからなる微小多孔質層とすることができる。これらの典型的な微小多孔質材料は、分子サイズレベルにおける分離機能を提供するために用いることができる。さらに別の実施の形態においては、上記被覆層140がポリマーフィルムであり得る。存在する場合、この多孔質被覆層140は約1〜20μmの範囲内の層厚さを示す。さらに、この随意的な付加的被覆層140の細孔容積は、約200nm未満の細孔サイズを有する。
【0030】
本発明の組成物から作製されるモノリスの実施の形態は、被覆された部分1521および被覆されていない多孔質体部分1522を有する多孔質体150のマトリクスを通じた複数の曲がりくねった通路152を通じた種々の液相混合物に対する分離、浄化、濾過またはその他の処理機能に関して用いることができる。一般に、曲がりくねりの概念は、チャンネルの方向および/またはチャンネルの断面積が変化した結果としてのチャンネルによって形成された通路を液体または液体の混合液の任意の部分が通過する流路の長さに対する、方向または断面積が変化しないチャンネル、換言すれば、断面積が変化しない直線チャンネル内を混合液の同様の部分が通過する流路の長さの差と定義される。直線通路からの逸脱は、言うまでもなく、より長いまたはより曲がりくねった通路を招来し、直線通路からの逸脱が大きい程、通路はより長くなる。
【0031】
複数の実施の形態において、本発明のモノリスすなわち基体10は、使用時には、図1に示されているように垂直に置かれ、図3に示されているように水平に横たえられ、あるいは傾けられ、その他の如何なる姿勢においても用いることができる。各フィードフローチャンネル110は、上流の入口端、すなわち供給端1101と、下流の出口端1102を有する。被覆層160および140は、複数のフローチャンネル110の供給端1101にフィードされた不純な混合供給流180を、正の圧力勾配の下で受容するように支持されかつ適応される。上記正の圧力勾配は、膜体140および随意的な被覆層160を横切る第1の圧力低下と、多孔質モノリス体150を過る第2の圧力低下とからなる。被覆層160および140は、被覆層140の外表面を通過してモノリス体150のマトリクスの曲がりくねった通路152内に流入する不純な混合供給流180を処理して、この不純な混合供給流180の一部から形成される純化された濾過液すなわち透過液1852にするのに適しており、この透過液1852は、被覆された部分1521に入り、被覆されていな多孔質体部分1522を通って外部へ出る。不純な混合供給流180から残った副産物すなわち残余液の流れ1802は、被覆されたフィルム160および140を通過せずに、複数のフィードフローチャンネル110の出口端1102を通って外部へ出る。
【0032】
図2aおよび図2bを参照すると、さらなる実施の形態において、モノリス150は、図2aに示されかつ図2bの一部に説明されているように、モノリス150は複数のフローチャンネル110と、図2aおよび図2bに示されているように、モノリス150の内部に形成された1本または複数本の濾過液コンジット190を備えている。これらの濾過液コンジットは、残余液とは別の流れで濾過液がモノリスの内部を通って流れるための通路を提供するように構成されかつ配置された特別のフローチャンネルである。
【0033】
いくつかの実施の形態において、上記濾過液コンジット190は、構造体の入口端すなわち供給端から下流の出口端すなわち排出端まで縦方向に延びている。あるいは、上記濾過液コンジットの少なくとも1本は、その長さの少なくとも一部に沿った1本または複数本のフローチャンネルとともに縦方向に延びている。図2にさらに示されているように、上記濾過液コンジットは、モノリス150の外表面または濾過液コレクション・ゾーン(図3の300参照)に濾過液を導くために、縦方向部分から濾過液コレクション・ゾーン300まで横方向に延びるチャンネルまたはスロット192を備えることができる。この濾過液コンジットは、チャンネルで連結する複数の縦方向の室をさらに備えていてもよい。上記スロット192は、モノリスの一端における開口部、スロットまたはチャンネルであるか、あるいは濾過液コンジットの縦方向部分を濾過液コレクション・ゾーン300(図3参照)に連結するためにモノリス内に形成された孔であってもよい。複数の実施の形態において、少なくとも一つのスロットが濾過液コンジット内に形成されていてもよく、あるいは複数のスロットが、このデバイスの供給端および出口端の双方に形成されていてもよい。あるいは、スロット192が、モノリスの長さ方向に沿った何れかの点においてモノリス体の外表面を通過して案内された複数の孔であってもよい。これらの濾過液コンジット190は、供給端および出口端において仕切り194によって閉塞されている。これらの仕切り194は、モノリスの供給端において処理流が濾過液コンジットに直接入ったり、または出口端において濾過液コンジットから直接出たりするのを禁止する。この仕切り194は、濾過液コンジット190内に挿入または導入された栓材であってもよい。仕切り194は、構造体と同一の材料から作製されていても、別の適当な材料から作製されていてもよく、栓は、構造体材料の多孔度に類似またはそれ以下の多孔度を有していればよい。
【0034】
供給端1101および出口端1102の双方において仕切り194で閉塞された複数の濾過液コンジット190を備えた本発明の複数の実施の形態において、受容した処理流は、モノリスの入口端1101においてモノリス150内に流入する。受容した処理流の一部、すなわち残余液は、図2aおよび図2bに矢印225によって示されているように、フローチャンネル110を通ってモノリス150を出口端1102まで通過する。受容した処理流の一部、すなわち濾過液は、フローチャンネル110内に入り、モノリス構造体内に埋め込まれている濾過液コンジット190までモノリス150の網状細孔組織を通過する。濾過液コンジット190は、仕切り194によって両端を閉塞されたフローチャンネルであり、かつスロットすなわち出口通路192を通じてモノリスの側面に開口して、モノリスの多孔質構造を通って濾過液コンジット190まで流れる濾過液がモノリスの外部へ流出するのを可能にしている。濾過液コンジット190は両端が閉塞されているから、これらはモノリス構造内で低圧通路を形成している。モノリス構造の細孔内に入った処理流の一部は、この低圧通路へ流れて材料の細孔内を通過し、次いでスロット、すなわち出口通路192を通って、残余液が集められるモノリスの出口端から離れた濾過液コレクション・ゾーン300(図3参照)内に流出する。このようにして、処理流は、入口端から出口端までチャンネル110を通って流れる残余液と、モノリス内に流入し、多孔質材料の細孔構造に入り、濾過液コンジット190に流入し、モノリス150の側部のスロット192を通ってモノリスを出る(図2bに矢印226によって示されているように)濾過液とに分離される。上記濾過液コンジット190は、フローチャンネルと比較して低い流動抵抗を有する通路を提供し、濾過液がモノリスの網状細孔組織を濾過液コンジット190まで通り抜けるのを可能にする圧力低下を創出する。濾過液コンジットは仕切り194によってモノリス体の外表面に対して閉塞されている。
【0035】
上記濾過液コンジット190は、多孔質材料を抜けるフローチャンネル110の流動抵抗よりも低い流動抵抗を備え、上記網状細孔組織は、上記濾過液コンジットが上記通路の間に分布されて、上記通路から近くの濾過液コンジットまで上記多孔質材料を通る圧力低下の低い流路を提供する。上記複数の濾過液コンジットは、上記組織内から濾過液を、モノリス体すなわちモジュール150の外表面の周りに配置された濾過液コレクション・ゾーン300(図3参照)まで運ぶことができる。典型的な個々の濾過液コンジット190は、例えば特許文献1に開示されかつ説明されている。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態に用いることができる液体濾過システム350を示す。図3に示された液体濾過システム350は、ハウジング310内のハニカム・モノリス150を示す。液体流はポンプ320によってハウジング310内のモノリス150の入口側に汲み上げられる(Pf,in)。液体はモノリス150を通って流れ、濾過液は矢印によって示されているように、液体から分離される。濾過液はハウジングから濾過液コレクション・ゾーン300へ取り出される(F)。残余液(R)はモノリスの出口面から出て(Pf,out)残余液ゾーン340内に集められる。この残余液はモノリスを通ってリサイクルされるか、または排出される。このシステムは、実施例2に説明されている水流試験の実施に用いることができる。
【0037】
使用に際して本発明の濾過装置は、混合供給流が、他のより大きい成分を含む水溶液または水と油性溶液との混合液である場合等の液相流である場合に用いることができる。より大きい成分は、より大きい分子および/または粒子であり得る。例えば、混合水は、工場排水からの細かく分散された油滴を含む。混合水は、飲料ジュース等の粒子を含むものもある。混合水は、蛋白質等の微粒子を含むものもある。水を透過物とする分離処理には膜体の補助が適している。何故ならば、水は最小の分子であるため、この混合液は、基体の網状組織に対して他の成分よりも大きい透過性を有するからである。さらに、膜体による補助は、有機溶剤が透過物としての有機溶剤を含む混合液の分離処理にも適している。液相流は、他の大きな成分を含む有機溶剤とすることができる。
【0038】
複数の実施の形態において、濾過液コンジット190は無くても(図1に示されているように)、有っても(図2aおよび図2bに示されているように)よい。一般に、より小さいモジュール水力直径を有する(例えば50mm未満)モノリス基体は、濾過液コンジット190が無くとも妥当な濾過特性を備えている。より大きい基体は、このより大きい基体の内部からの濾過液の取り出しを容易にするために、濾過液コンジットを必要とする。
【0039】
表1は、液体濾過用のムライト組成物およびそれらの物理的特性および性能データを示す。アルミナ、シリカ、およびムライト原材料の粒子サイズおよび細孔形成剤が透過性を創出させるために用いられた。強度および化学的耐性を向上させるために、細かいおよび/または反応性材料とともに焼成助剤およびより高い焼成温度が用いられた。表1に示された物理的データは、水銀多孔度判定法、標準バーおよびロッド破壊係数(MOR)試験ならびに物理的収縮測定を用いて得られた。このデータを用いて選択されたサンプルは耐食性試験および製品使用性能試験のシミュレーションを目的とする水流試験のために用意された。
【表1】

【0040】
表2は、ムライト・モノリス組成を示す。組成コードKJC−166,NLI−102,NLJ−102,NLK−102,NLL−102,NLM−102およびNLO−102に関する優れた性能が注目される。
【表2】

【0041】
表2に示された材料は、無機材料、細孔形成剤または燃え切り材料、有機バインダおよび滑剤を含む。表2に示された無機材料は、重量%で組み合わせられて100%の全無機混合物を形成した。細孔形成剤は、100%の全無機混合物に対して上乗せ添加物として重量%で添加された。本発明の複数の実施の形態において、細かいアルミナはαアルミナである。複数の実施の形態において、細かいアルミナ成分は粒子サイズの中央値(d50)が1μm未満である。典型的な実施の形態において、細かいアルミナは、Alcoa社(米国ペンシルヴェニア州所在)から販売されている、0.6μmの粒子サイズの中央値を有するA1000SGD(R)であった。複数の実施の形態において、粗いアルミナ成分は、5μmと20μmとの間の、または10μmと20μmとの間の粒子サイズの中央値(d50)を有するのがよい。本発明の典型的な実施の形態において、粗いアルミナは、Almatis社(独国フランクフルト所在)から販売されている、11μmの粒子サイズの中央値を有するA10および/または、同じくAlmatis社から販売されている、16μmの粒子サイズの中央値を有するT64−325Mであった。複数の実施の形態において、ムライトは、約50μm未満または30μm未満の粒子サイズの中央値を有するムライト粉末である。本発明の典型的な実施の形態において、ムライトは、C−E Mierals社(米国ペンシルヴェニア州、キング・オブ・プルシア所在)から販売されているMulcoa(R)70−325であった。複数の実施の形態において、水膨潤性粘土は、Southern Clay Products社(テキサス州ゴンザレス所在)から販売されているBentonite Lである。複数の実施の形態においてチタニアはDuPont社(デラウェア州、ウイルミントン所在)から販売されているTiPure R−101であった。複数の実施の形態において、細かいシリカはUnimin社(コネチカット州ニューカナーン所在)から販売されているIm−sil A−25であった。複数の実施の形態において、長石は、セラミックにするために約200メッシュの粉末にされた珪酸ナトリウム/カリウム/カルシウム・アルミニウムである。典型的な実施の形態において、長石は、Feldspar Corp社(フロリダ州エドガー所在)から販売されているG−200であった。複数の実施の形態において、グラファイトおよび馬鈴薯澱粉は細孔形成剤すなわち燃え切り材料である。典型的な実施の形態において、グラファイトは、Asbury社(ニュージャージー州アスブリー所在)から販売されている4602(A625)グラファイトおよび4740グラファイトである。典型的な実施の形態において、馬鈴薯澱粉(白袋)は、National Starch and Chemical社(ニュージャージー州ブリッジウォーター所在)、Emsland Starke社(独国エムリッヒハイム所在)から入手することができる。さらなる複数の実施の形態において、米澱粉、胡桃殻の粉末またはその他の材料も細孔形成剤として使用可能である。複数の実施の形態において、有機バインダは、メチルセルロースおよびその誘導体を含む。典型的な複数の実施の形態において、メチルセルロースは、Dow Chemical社(ミシガン州ミッドランド所在)から入手可能なMethocel A4M(R)およびMethocel F240M(R)であった。複数の実施の形態において、滑剤は、Peter Greven社(独国ムンスタライフェル所在)から販売されているLiga(R)であった。
【0042】
本発明の複数の実施の形態において、細孔形成剤は、焼成時に燃え切る組成を有する如何なる材料をも含む。典型的な複数の実施の形態において、細孔形成剤はグラファイトおよび馬鈴薯澱粉であるが、如何なる材料をも用いることができる。例えば、米澱粉または胡桃の殻の粉末を用いることができる。これらの細孔形成剤のそれぞれは、性質およびサイズの異なる細孔を発生させることができる。例えば馬鈴薯澱粉は、より大きい細孔を発生させる。本発明の複数の実施の形態において、10〜30%の細孔形成剤が所望の特性を有する焼成された材料内に細孔を発生させることが判明している。30%を超える細孔形成剤は、より高い多孔度を導き、かつ材料の強度を低下させる。10%未満の細孔形成剤は、多孔度の低い材料を生成させ、かつ所望よりも低い透過性を備えた材料にする。さらなる複数の実施の形態において、細孔形成剤成分がグラファイトと馬鈴薯澱粉との組合せで存在し、その場合、グラファイトが5〜10%の範囲内で存在し、かつ馬鈴薯澱粉が5〜20%の範囲内で存在する。さらなる複数の実施の形態において、細孔形成剤はグラファイトと馬鈴薯澱粉とが組合されて20%の細孔形成剤を形成する。本発明の複数の実施の形態によれば、上記セラミック・モノリスの細孔容積すなわち多孔度%Pは、典型的な多孔度値である37.9%、41.3%、42.2%、43.3%、43.8%、46.8%および49.6%を含む10から60%まで、20から60%まで、30から60%まで、40から60%まで、または40から50%までの範囲内にあればよい。またさらに、セラミック・モノリスの全多孔度は、上述の多孔度値のうちの何れか二つから導き出される範囲内にあればよい。
【0043】
複数の実施の形態において、細孔容積すなわち全浸透度(cc/g)は、典型的な細孔容積である0.1940、0.2325、0.2354、0.2295、0.2544、0.2781、および0.3096を含む0.10〜0.40cc/g、0.15〜0.35cc/g、0.18〜0.32cc/g、0.2〜0.30cc/gであればよい。さらに上記モノリス体の全多孔度は上述の多孔度値のうちの何れか二つから導き出される範囲内にあればよい。
【0044】
図4は、本発明のムライト材料の多数の実施の形態に関する流水量と増大する圧力との間の関係を示すグラフである。本発明のムライト材料の実施の形態を代表する大多数のムライト組成物は、標準的な材料であるEJQと比較して、増大する処理圧力に対して優れた流水量特性を有する。テストサンプルは、5.66インチ(14.4cm)の被覆されたモノリスからドリルで孔を開けられたコアであった。
【0045】
細孔サイズおよび全体の多孔度%Pは、一般に知られている測定方法およびモデルを用いて数量化が可能である。例えば、細孔サイズおよび多孔度は水銀ポロシメータ等の標準化された技法によって測定可能である。図5は、本発明のムライト材料の多数の実施の形態に関する測定された水銀透過率と60psi(414kPa)における流水量(ミリリットル/分で測定)との間の関係を示すグラフである。全ての水銀透過率の測定は、水銀ポロシメータMicrometrics Autopore IV 9520を用いて行なわれた。一つの実施の形態において、水銀透過率の目標値は140ミリダルシーに選ばれた。一般に、標準組成(EJQ)の2倍の流水量を得るためには、水銀透過率は、標準組成の透過率の約4倍に設定されなければならない。したがって、水銀透過率の目標値は140ミリダルシーに設定された(図5および図7〜図10参照)。140ミリダルシーまたはそれを超える水銀透過率の目標値を有する材料サンプルは、望ましい組成物であると考えられる。しかしながら、本発明の複数の実施の形態はこの目標値から離れている。この水銀透過率値限界は、流水量テストに基づいた用途に用いた場合に標準EJQの流水量の約2倍に相当する。
【0046】
図6は、本発明のムライト材料の酸および塩基環境における多数回の耐性サイクルに亘る耐性を示すグラフである。酸および塩基環境におけるムライトロッドのMOR(psiでの破壊係数)強度は低下し、多数の繰り返し区間内でいくらか横ばい状態になる。4サイクル後、いくつかの組成は標準よりも高い強度を有する。図6は、4サイクルMORデータに基づく標準のEJQサンプルと比較して優れたMOR特性を示しているいくつかの組成を示す。
【0047】
図7は、本発明のムライト材料の多数の実施の形態に関する水銀透過率測定値(図5に示されている)とMOR(図6に示されている)との間の関係を示すグラフである。140ミリダルシー(図5からのEJQ標準の4倍、目標値)よりも大きい水銀透過率の測定値と、EJQ標準値(図6からの目標値)よりも大きい4サイクルMOR測定値とを示した組成が特定された。いくつかの成分、HLM,NLK,NLJ,NLOおよびNLLが、4サイクル耐性強度目標値および水銀透過率目標値を満足しまたは超えている。
【0048】
図8は、本発明のムライト材料の多数の実施の形態に関する水銀透過率測定値とロッドのMOR強度との関係を示すグラフである。相対水銀透過率およびMOR強度限界は、成功した流水量および腐食耐性性能テストデータに基づいて設定された。透過率およびロッドのMOR強度は、4サイクル耐性テストの後に測定された。一般に、4サイクル耐性テストは、ムライト組成物が5500psi(38MPa)またはそれを超える出発MOR強度(4サイクル耐性テストを受ける前に)を有する場合にはパスされる。図8は初期のロッドのMOR強度とともに水銀透過率を示す。本発明の複数の実施の形態において、流水量および腐食耐性テストに基づく我々の用途を満足する組成もここに示されていて、水銀透過率および初期のMOR強度に関して設定された限界に適合している。さらなる物理的特性データは、より一般的な水銀透過率テストおよび初期のMOR強度テストを用いて得られる。
【0049】
図9は、水銀透過率測定値と細孔直径との間の関係を示すグラフであり、約8.0μmと約11.0μmとの間の細孔直径の範囲を有する本発明のムライト材料の実施の形態が透過率および強度における特徴を提供することを示している。
【0050】
図10は、細孔容積と比較した水銀透過率を示すグラフであり、約0.2079cc/gと約0.2780cc/gとの間の細孔容積範囲(2本の垂直な点線の間)を有する本発明のムライト材料の実施の形態が、水銀透過率および初期MOR強度目標値に基づく透過率および強度における特徴の良好な範囲を提供することを示している。標準的ムライト(実験対照)であるEJQは、約0.2049cc/gの細孔容積を示した。複数の実施の形態において、本発明のムライトは、約0.185と0.30cc/gとの間の細孔容積を有する。
【0051】
本発明の複数の実施の形態において、図3に示された流水量テストによって測定され、かつ図4に示されているように、改良されたムライト組成物は、標準ムライト材料(EJQ)と比較して、濾過透過率が2倍にまで増大された結果を招いている。
【0052】
複数の実施の形態において、表2に示された本発明の組成物は、下記のような生の材料特性を有する。ムライト組成に関する基本材料としてムライト(Mulcoa 70−325)を用い、透過率と強度をバランスさせるための鍵となる材料は、細孔形成剤および焼成助剤としての水膨潤性粘土(ベントナイト)(10〜15%)、細孔形成剤としての粗いアルミナ(10〜40%)、焼成助剤としての細かいアルミナ(10%以下)、細かく連結された細孔のための細孔形成剤としてのグラファイト(5〜10%)、および透過率のための、より粗い細孔を発生させる細孔形成剤としての澱粉(10〜15%)である。複数の実施の形態において、所望の透過率および強度を備えたムライト・モノリスを与えるこれらの材料の範囲は、10〜15%の水膨潤張性粘土(ベントナイト)、10%未満の細かいアルミナ、10〜40%の粗いアルミナ、20%の細孔形成剤、5%〜10%のグラファイトおよび10%〜15%の澱粉である。
【実施例】
【0053】
本発明の原理をさらに説明するために、下記の実施例は、本発明の多孔質モノリス基体が如何にして作製されかつ評価されたかを本明細書とともに等業者に提供するために提出されたものである。これらは純粋に本発明の例示であって、本発明者等が彼等の発明の範囲を限定することを意図するものではない。そうではないと示されない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧である。
【0054】
実施例1:モノリスの調製およびモノリスのサンプル
表2に記載された各実施例に対し、ラム押出し成形機が用いて、1平方インチ当たり100セル(1cm当たり15セル)および約0.24インチ(6mm)の壁の厚さ(材料の収縮に左右される)を備えた直径5.66インチ(14.4cm)のハニカム・モノリス基体を形成した。基本材料として Mulcoa 70−325を用いた。強度測定のためのロッドも作製した。基礎的工程は、上記表2において定義された比率の材料を5分間Littlefordミキサー内でドライブレンドし、次いで混合/粉砕機を用いて、十分な量の水を加えて、変形可能な可塑性バッチを形成した。次に、200トンのLoomisラム押出し成形機を用いて、脱気および可塑化し、最終的に直径5.66インチ(14.4cm)のハニカムを押出し成形した。このハニカムをマイクロウェーブ乾燥し、次いでガス炉または電気炉内で1495℃、1550℃、または1600℃の温度で焼成した。これらのハニカムは、図4〜図10に示されたデータを得るために用いた。
【0055】
これらの複数の実施の形態において、焼成温度は、透過率を高めながら材料強度を維持する鍵となる要素である。1600℃よりも低い温度において、細孔形成剤と焼成助剤との極めて少ない組合せが所望の性能特性を生む。表1は、いくつかの材料が1495℃および1550℃で焼成されたことを示している。1495℃において焼成された後のKKS組成は、十分な強度を有するように見えるが、透過性が不十分であり、1550℃で焼成された後のNLHは、強度および透過性の双方において理想よりも僅かに低かった。
【0056】
直径約5.66インチ(14.4cm)×長さ10インチ(25.4cm)のフルサイズのモノリスを塗装した。塗膜層は粗いシリカ粉末と細かいシリカ粉末との混合物であり、水およびポリマー・バインダ(ポリビニルアルコール)と混合して、約3.5のpHに調整して安定な懸濁液を生成させた。モノリスはスリップ注型法を用いて塗装し、乾燥させ、焼成して膜体を支持体に接着した。流水量テストのために、直径1インチ(2.54cm)×長さ2インチ(5.08cm)の複数のサンプルを芯抜きドリルを用いて支持体から芯抜きした。これらの選択されたサンプルから芯抜きしたテストモノリスを、「流水量テスト」によって液体濾過流量改善をシミュレートするのに用いた。図4は、標準のEJQ組成を上回る、増大する処理圧力に伴う改善された流水量を有するいくつかの組成を示す。
【0057】
実施例2:流水量テスト
流水量テストは、図3に示すようなクロスフロー濾過装置を用いて行なった。膜体チャンネル内部の圧力Pは、膜体の外部の圧力Pよりも高くなるように制御してある。その結果、水は膜体を透過してモノリス体の外皮の外に出る。透過流量Fを測定し、かつ記録した。水をポンプで一定の圧力に加圧し、モノリスサンプルを通って循環させた。その圧力においてセル壁を通り抜ける流量を測定した。単位流量は、15psi,30psi,45psiおよび60psi(103kPa,207kPa,310kPaおよび414kPa)の4通りの圧力において測定した。単位流量Fluxは下記の等式で計算した。すなわち、
Flux=F/SA
ここで、Fは浸透流量、SAは膜体の表面積である。
【0058】
実施例3:腐食テスト
実施例1により作製した、選択された組成からなるロッドに対し耐食性テストを実施した。この耐食性テストは4サイクルからなる。各サイクルは、95℃、0.5pHのHNO3内における24時間と、95℃、13.5pHのNaOH内における24時間とを含む。次に各サイクル後のロッドの強度を測定した。図6は、耐食性テストサイクル後において、いくつかの組成を標準のEJQムライトと比較した場合の等しいかまたはそれを超えるMOR強度を示す。
【0059】
本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、本発明に対してセンサ等の処理用途を含む種々の変形および変更を行なうことが可能なことは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の請求項およびそれらの均等物の範囲内に属するそれらの変形および変更をカバーすることを意図するものである。
【符号の説明】
【0060】
10 モノリス基体
110 フローチャンネル
114 チャンネル壁
120 外皮の厚さ
130 ウェブの厚さ
150 多孔質モノリス体(モジュール)
152 液体通路
160 中間層
180 混合液流
190 濾過液コンジット
192 スロット
194 仕切り
300 濾過液コレクション・ゾーン
310 ハウジング
320 ポンプ
340 残余液ゾーン
350 液体濾過システム
1101 入口端(供給端)
1102 出口端(排出端)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理流を受容するための、かつ該処理流を濾過液と残余液とに分離させるための濾過装置を形成するための組成物であって、
30%よりも多いムライト粉末および10〜15%のベントナイト、
随意的に15%未満の細かいアルミナ、
随意的に8〜42%の粗いアルミナ、および
随意的に2〜10%のシリカを含み、
この場合、前記ムライトおよびベントナイト、ならびに前記随意的な細かいアルミナ、随意的な粗いアルミナ、および随意的なシリカが組み合わさって100%の全重量パーセントを形成し、
10〜30%の細孔形成剤の上乗せ添加物をさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記細孔形成剤がグラファイトと澱粉との組合せであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
5〜10%のMethocelの上乗せ添加物をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
処理流を受容するための、かつ該処理流を濾過液と残余液とに分離させるための濾過装置を形成するための方法であって、
30%よりも多いムライト粉末および10〜15%のベントナイト、随意的に15%未満の細かいアルミナ、随意的に8〜42%の粗いアルミナ、および随意的に2〜10%のシリカを乾燥混合して100%の全重量パーセントにするステップ、
10〜15%のグラファイトと5〜15%の馬鈴薯澱粉を有する細孔形成剤の上乗せ添加物を加えるステップ、
十分な水を加えて変形可能なバッチを形成するステップ、
前記バッチを押出し成形するステップ、および
1550℃を超える温度で焼成するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
30%よりも多いムライト、
10〜15%のベントナイト、
15%未満の細かいアルミナ、
随意的に10〜42%の粗いアルミナ、および
随意的に2〜10%のシリカ
を含む組成物から作製された、焼成されたセラミック物品であって、
該セラミック物品が8〜11μmの細孔直径中央値を有する細孔をさらに含むことを特徴とするセラミック物品。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−500176(P2012−500176A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523797(P2011−523797)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/004646
【国際公開番号】WO2010/021674
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】