説明

液体燃料漏洩警報システム

【課題】バーナ装置における液体燃料の漏洩を、人手がなくても漏洩が発生した時点で作業員に漏洩を報知する。
【解決手段】ボイラ内の石炭を燃焼させるバーナ装置に対して油を供給する配管における所定部位の下方に設置され、前記配管から漏れて落下した油滴を検知して検知信号を出力する油漏洩検知装置20と、油の漏洩の発生を報知する警報装置60と、警報装置60の出力を監視し、警報装置60からの検知信号を受信した場合に、警報装置60を駆動させる管理端末50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ装置に供給する液体燃料の漏洩を検出して、警報を発生させる液体燃料漏洩警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電を行う火力発電所では、ボイラ内に供給される燃料、例えば石炭を燃やして蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すことで、発電を行っている。また、ボイラにはバーナ装置が設けられている。バーナ装置は、液体燃料を噴射させて燃焼させるものであり、バーナ装置から発生する火炎によってボイラ内の燃料が燃焼する。
【0003】
ボイラ周辺には、バーナ装置に液体燃料や蒸気を供給する配管が配設されている。ここでボイラを作動させていると、経時によって、例えば、バーナ装置と配管との接続に用いるパッキンが変形して、バーナ装置と配管との接続部から、使用されている液体燃料が漏洩することがある。このため、従来、ガス検知装置をバーナ装置近傍に設置し、このガス検知装置が、気化した液体燃料を検出することによって、液体燃料の漏洩を発見している。
【0004】
また、従来、液体燃料の漏洩を早期に発見するために、出願人は、支持軸に対して一方側に漏洩した液体を溜める皿状部が設けられ、他方側に漏洩の有無を表示する表示板が立設されたシーソー部材をバーナの下部に設置し、シーソー部材の回動に伴う表示板の変化により漏洩の有無を表現する。そして、表示板の状態変化を監視カメラによって監視することによって、液体燃料の漏洩の有無を判断することができるようにした漏洩検出装置を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−14458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ボイラ施設には複数のバーナ装置が設置されており、これらのバーナ装置に対してそれぞれ漏洩検出装置が設置されているため、監視カメラも複数のバーナ装置に対応して設置する必要がある。このため、コスト高になるおそれがある。さらに、漏洩を早期に発見するためには、これら監視カメラの撮影画像を確認する作業員が必要となるが、いつ発生するかわからない液体燃料の漏洩を監視するために作業員を常時配置することは、それだけ人手や人件費がかかり、コスト高になるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決し、人手がなくても漏洩が発生した時点で作業員に漏洩を報知することを実現した液体燃料漏洩警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0009】
(1) ボイラ内の燃料を燃焼させるバーナ装置における所定部位の下方に配置され、前記バーナ装置から漏れて落下した油滴を検知する油滴検知手段と、当該油滴検知手段が油滴を検知した場合に、検知信号を出力する信号出力手段と、油の漏洩の発生を報知する警報手段と、当該信号出力手段の出力を監視し、前記信号出力手段からの検知信号を受信した場合に、前記警報手段を駆動させる警報制御手段とを有することを特徴とする液体燃料漏洩警報システム。
【0010】
(1)によれば、油滴検知手段が油滴を検知した場合に、信号出力手段が検知信号を警報制御手段に出力され、警報制御手段が検知信号を受信することにより、自動的に警報手段が警報を発動する。これにより、人手がなくても漏洩が発生した時点で作業員に漏洩を自動的に報知することができる。
【0011】
(2) (1)において、前記油滴検知手段は、前記バーナ装置と当該バーナ装置に液体燃料を供給する配管との接続部位に介在するパッキンの下方に設置されたことを特徴とする液体燃料漏洩警報システム。
【0012】
(2)によれば、油の漏洩が発生する可能性がある場所の下方に、油滴検知手段を設置することにより、油の漏洩を早期に検知することが可能になる。
【0013】
(3) (1)、(2)において、前記信号出力手段は、前記検知信号を前記警報制御手段に無線送信し、前記警報制御手段は、前記信号出力手段から無線送信された前記検知信号を受信する受信手段を備えたことを特徴とする液体燃料漏洩警報システム。
【0014】
(3)によれば、検知手段と警報制御手段とを接続する信号線がないため、バーナ装置周辺における油滴検知手段の設置の自由度を高くすることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人手がなくても漏洩が発生した時点で作業員に漏洩を報知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態における液体燃料漏洩警報システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】油漏洩検知装置及び管理端末の概略構成を示すブロック図である。
【図3】油漏洩検知部による油滴の検知原理を示す説明図である。
【図4】油漏洩検知装置の概略構成を示す説明図である。
【図5】油漏洩検知装置の配置例を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態における油漏洩検知装置及び管理端末の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態における液体燃料漏洩警報システムの概略構成を示すブロック図である。液体燃料漏洩警報システム1は、油漏洩検知装置20、警報制御手段に相当する管理端末50、及び警報手段に相当する警報装置60を備えている。
【0018】
油漏洩検知装置20は、バーナ装置10において、軽油あるいは重油といった液体燃料が漏洩する可能性が有る場所に設置され、バーナ装置10から漏洩した油滴を検知した場合に、検知信号を管理端末50に送信するものである。
【0019】
ここで、バーナ装置10は、火力発電所のボイラ5内の燃料、例えば石炭を燃焼させるものであり、1つのボイラ5に対して複数のバーナ装置10が設置されている。このため、油漏洩検知装置20も複数設置されている。
【0020】
管理端末50は、油漏洩検知装置20の状態を監視し、油漏洩検知装置20から検知信号を受信した場合に、警報装置60を駆動させる制御を行うものである。
【0021】
警報装置60は、管理端末50からの制御信号に基づいて警報を発生し、油漏洩の発生を作業員に報知するものである。具体的には、音声出力によって作業員に報知するスピーカ装置、画像表示によって作業員に報知する画像表示装置、さらには、スマートフォンと称される携帯端末装置等が、警報装置60として適用可能である。
【0022】
図2は、油漏洩検知装置及び管理端末の概略構成を示すブロック図である。
油漏洩検知装置20は、油滴検知手段に相当する油漏洩検知部22、テストボタン24、信号出力手段に相当する無線送信部26、電池28及び制御IC30を備えている。
【0023】
油漏洩検知部22は、詳細については図3を用いて後述するが、発光素子42と受光素子44、46を用いて光学的にバーナ装置10から漏洩した油滴を検知するものであり、バーナ装置10から油滴が漏洩した場合に、受光素子44、46の少なくともいずれか一方の出力が変化するように構成されている。この受光素子44、46の検知結果が制御IC30に出力される。
【0024】
テストボタン24は、油漏洩検知装置20と管理端末50との送受信テストを行うために用いるボタンである。
【0025】
無線送信部26は、管理端末50の無線受信部52と無線接続して、油漏洩検知装置20から管理端末50に信号を送信するものである。
【0026】
電池28は、油漏洩検知装置20全体の電源であり、油漏洩検知装置20に備えた電池ボックス(図示せず)に収納される。
【0027】
制御IC30は、油漏洩検知部22から検知結果を受信して、検知結果に変化があったと判定した場合に、無線送信部26を駆動して、バーナ装置10から液体燃料が漏洩した旨を伝達する検知信号を管理端末50に送信する制御を行う。また、制御IC30は、テストボタン24が押下されたことを検知した場合に、無線送信部26を駆動して、テスト信号を管理端末50に送信する制御を行う。また、制御IC30は、電池28の残量を監視し、電池の残量が所定値以下になった場合に、無線送信部26を駆動して、電池残量信号を管理端末50に送信する制御を行う。
【0028】
管理端末50は、無線受信部52及びCPU54を備えている。
無線受信部52は、油漏洩検知装置20の無線送信部26と無線接続して、油漏洩検知装置20からの信号を受信するものである。
【0029】
CPU54は、管理装置54を制御するものであり、油漏洩検知装置20から出力される検知信号、テスト信号及び電源残量信号の有無を監視する検知信号監視手段としての機能と、この検知信号監視手段が油漏洩検知装置20から検知信号を受信したと判断した場合に、警報装置60を駆動させる警報制御手段として機能を備えている。
【0030】
具体的に、CPU54は、油漏洩検知装置20から検知信号を受信した場合には、警報装置60を駆動して、音声及び画像表示によって警報を発生させる。そして、この警報が作業員に伝達されることにより、作業員は、バーナ装置10、ボイラ及びその補機を停止させ、液体燃料が漏れた箇所を確認するとともに、修理を行う。また、油漏洩検知装置20からテスト信号又は電池残量信号を受信した場合には、画像表示装置に警報が表示される。電池残量信号による警報を確認した作業員は、油漏洩検知装置20の電池交換を行った後に、テストボタン24を押下する。そして、テスト信号による警報が画像表示装置に表示された場合には、油漏洩検知装置20が正常に起動していると判断することができる。
【0031】
次に、油漏洩検知部22の構成について説明する。
図3は、油漏洩検知部による油滴の検知原理を示す説明図である。油漏洩検知部22は、油滴を貯留する筒体40、発光素子42及び受光素子44、46を備えている。
【0032】
筒体40は、透明部材からなり、三角柱型の内部空間を有している。この内部空間は、一滴分の油滴によって満たされる程度の容積に設定されている。
【0033】
発光素子42は、筒体40の平面Aに対して斜め方向から光を照射するように配置されている。
【0034】
受光素子44、46は、発光素子42の光を受光し、受光量に応じた電圧を出力するものである。受光素子44は、筒体40の平面Aからの反射光を受光する位置に配置されている。受光素子46は、筒体40を通過した屈折光を受光する位置に配置されている。
【0035】
この受光素子44、46の検知結果は、制御IC30に送信される。制御IC30は、受光素子44、46の出力が変化したか否かを判断し、少なくともいずれか一方が変化したと判断した場合に、無線送信部26を駆動して、検知信号を管理端末50に送信する。
【0036】
すなわち、バーナ装置10に液体燃料漏れが発生した場合には、筒体40に油滴が貯留される。このとき、例えば、油滴が重油であれば、重油には色がついているため、筒体40による反射光量及び屈折光量が低減する。このため、受光素子44、46の出力が変化する。油滴が軽油又はドレン水であれば、発光素子42の光が筒体40において屈折し、受光素子46における光の入射位置が変わるため、受光素子46の出力が変化する。このように、筒体40に油滴が貯留されると、受光素子44、46の出力の少なくともいずれか一方が変化する。したがって、制御IC30は、受光素子44、46の出力の少なくともいずれか一方が変化した場合に、液体燃料漏れが発生したと判断することが可能になる。
【0037】
図4は、油漏洩検知装置の概略構成を示す説明図である。油漏洩検知装置20は、漏斗70、及び筐体72を備えている。
【0038】
漏斗70は、筐体72の上部に配置されている。筐体72は、断熱性を有する部材によって構成されており、内部に、油漏洩検知部22(図2参照)、テストボタン24(図2参照)及び制御基板32が収納されている。制御基板32には、制御IC30及び無線送信部26を構成する回路が実装されている。
【0039】
筐体72内における上部に筒体40が設けられており、この筒体40に対向して漏斗70が設けられている。このとき、漏斗70の中心孔に筒体40が対向するように漏斗70が位置付けられる。
【0040】
図5は、油漏洩検知装置の配置例を示す説明図である。バーナ装置10には、燃料を供給する配管102、及び蒸気を供給する配管104が連結されている。本実施形態においては、バーナ装置10と配管102、104との連結部に介在するパッキン106の下部に設置される。
【0041】
配管102、104の連結部において油滴が発生した場合、蒸気が凝結してなるドレン水に液体燃料が混じった油滴が、漏斗70に落下する。漏斗70に落下した油滴は、漏斗70の中心孔に向かって移動し、油漏洩検知装置20の筒体40に送られることにより、筒体40に油滴が貯留される。筒体40に油滴が貯留されると、受光素子44、46の出力の少なくともいずれか一方が変化する。制御IC30は、受光素子44、46に出力変化があったと判断することにより、油漏洩検知装置20から管理端末50に検知信号が無線出力される。
【0042】
管理端末50は、油漏洩検知装置20から検知信号を受信した場合に、警報装置60を駆動させる。そして、音声及び画像表示によって警報を発生させ、作業員にバーナ装置10の液体燃料漏れの発生を報知する。
【0043】
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、油漏洩検知装置20が油滴を検知した場合に、警報装置60が警報を発動することにより、人手がなくても漏洩が発生した時点で作業員に漏洩を自動的に報知することができる。
【0044】
また、バーナ装置10と燃料を供給する配管102との接続部分に介在するパッキン106の下方に、油漏洩検知装置20を設置する。このように、油の漏洩が発生する可能性がある場所の下方に、油漏洩検知装置20を設置することにより、油の漏洩を早期に検知することが可能になる。
【0045】
また、油漏洩検知装置20が液体燃料の漏洩を検知した場合に、無線によって検知信号を管理端末50に送信し、かつ電源を電池28としたことにより、油漏洩検知装置20に電源線や信号線を接続する必要がなくなる。このため、電源線や信号線が、バーナ装置10によって発生した熱によって不具合を起こすことがなくなる。また、油漏洩検知装置20を設置する自由度を高くすることが可能になる。
【0046】
ところで、前述した実施形態によれば、油漏洩検知装置20において、油漏洩検知部22と無線送信部26とが筐体72内に収納されているが、油漏洩検知部22と無線送信部26とを別体として構成し、油漏洩検知部22と無線送信部26とを独立させてもよい。また、前述した実施形態によれば、油漏洩検知部22は、液体燃料の漏洩を光学的に検知しているが、他の検知方法によって検知してもよい。例えば、静電容量の変化を検知したり、あるいは、従来技術として提示した特許文献1のように、機械的に検知してもよい。次に記載する第2実施形態は、液体燃料の漏洩を機械的に検知する油漏洩検知装置を用いた場合を示すものである。
【0047】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態における油漏洩検知装置及び管理端末の概略構成を示すブロック図である。なお、図2に示す第1実施形態における部材と同一の部材については、同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。
【0048】
油漏洩検知装置90は、液体燃料の漏洩を機械的に検知するものである。例えば、シーソー部材を用い、一端部に、漏洩した液体燃料を貯留させることによって、他端部が上方に移動するという、シーソー部材の状態変化によって液体燃料の漏洩の検知を行うものである。
【0049】
無線送信装置92は、図2に示す第1実施形態における油漏洩検知装置20において、油漏洩検知部22の代わりにスイッチ94を設けたものである。
【0050】
スイッチ94は、油漏洩検知装置90のシーソー部材の他端部が上方に移動した場合に、オンになるものである。すなわち、液体燃料が漏洩していない場合には、スイッチ94はオフの状態で維持されるが、液体燃料が漏洩した場合には、スイッチ94がオンになる。
【0051】
そして、制御IC30は、スイッチ94がオンになった場合に、検知信号を管理端末50に送信し、検知信号を受信した管理端末50は、警報装置60を制御して警報を発動させる。
【0052】
これにより、油漏洩検知装置90が油滴を検知した場合に、警報装置60が警報を発動することにより、人手がなくても漏洩が発生した時点で作業員に漏洩を自動的に報知することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態においては、火力発電所のボイラに用いるバーナ装置における液体燃料漏れを検知しているが、他にも、焼却炉のバーナ装置に液体燃料漏れの検知に用いることも可能である。また、上述した実施形態においては、油漏洩検知装置側に無線送信部を設け、管理端末に無線受信部を設けているが、それに限らず、油漏洩検知装置側及び管理端末に無線送受信部を設け、定期的に管理端末から信号を送り、油漏洩検知装置側から応答信号を出力させることによって、油漏洩検知装置側の無線送受信部が正常に作動していることを確認させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 液体燃料漏洩警報システム
5 ボイラ
10 バーナ装置
20 油漏洩検知装置
22 油漏洩検知部
24 テストボタン
26 無線送信部
28 電池
30 制御IC
32 制御基板
40 筒体
42 発光素子
44、46 受光素子
50 管理端末
52 無線受信部
54 CPU
60 警報装置
70 漏斗
72 筐体
90 油漏洩検知装置
92 無線送信装置
94 スイッチ
102、104 配管
106 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ内の燃料を燃焼させるバーナ装置における所定部位の下方に配置され、前記バーナ装置から漏れて落下した油滴を検知する油滴検知手段と、
当該油滴検知手段が油滴を検知した場合に、検知信号を出力する信号出力手段と、
油の漏洩の発生を報知する警報手段と、
当該信号出力手段の出力を監視し、前記信号出力手段からの検知信号を受信した場合に、前記警報手段を駆動させる警報制御手段とを有することを特徴とする液体燃料漏洩警報システム。
【請求項2】
前記油滴検知手段は、前記バーナ装置と当該バーナ装置に液体燃料を供給する配管との接続部位に介在するパッキンの下方に設置されたことを特徴とする請求項1記載の液体燃料漏洩警報システム。
【請求項3】
前記信号出力手段は、前記検知信号を前記警報制御手段に無線送信し、
前記警報制御手段は、前記信号出力手段から無線送信された前記検知信号を受信する受信手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の液体燃料漏洩警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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