説明

液体現像剤の製造方法および液体現像剤

【課題】均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーが分散した液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率良く製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供すること。特に、環境に優しい方法で、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーが分散した液体現像剤を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤の製造方法は、高絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を製造する方法であって、着色剤と樹脂材料とを含む材料を混練して混練物を得る混練工程と、前記混練物を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中にトナー用材料で構成された分散質が分散した水系乳化液を得る水系乳化液調製工程と、前記水系分散媒を除去して、乾燥微粒子を得る水系分散媒除去工程と、前記乾燥微粒子を前記高絶縁性液体中に分散させる分散工程とを有し、前記樹脂材料として自己分散型樹脂を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤の製造方法および液体現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーによる方法と、トナーを電気絶縁性の担体液に分散した液体現像剤を用いる方法とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
従来、液体現像剤は、従来、樹脂を粉砕することによりトナーを製造する粉砕法(例えば、特許文献1参照)、モノマー成分を電気絶縁性液体中で重合させることにより、前記電気絶縁性液体に不溶な樹脂微粒子を形成する重合法(例えば、特許文献2参照)等により、製造されてきた。
しかしながら、従来の液体現像剤の製造方法では、以下のような問題点があった。
【0005】
すなわち、粉砕法では、トナー粒子を十分小さな大きさ(例えば、5μm以下)に粉砕するのが困難であり、トナー粒子の大きさを、上述したような液体現像剤を用いることによる効果を十分に発揮し得る大きさとするには、非常に長い時間、非常に大きな粉砕エネルギーを要し、液体現像剤の生産性が著しく低かった。また、粉砕法では、トナー粒子の粒度分布が広く(粒径のばらつきが大きく)なり易く、また、トナー粒子の形状が不定形で不均一になり易い。その結果、各トナー粒子間での特性(例えば、帯電特性等)のばらつきが大きくなり易い。
【0006】
また、重合法では、重合反応の条件を好適なものとするのが困難で、好適な分子量の樹脂材料を生成したり、所望の大きさのトナー粒子を形成したり、トナー粒子の大きさのばらつきを十分に小さくするのが困難である。その結果、トナーの品質の安定性、信頼性は、低いものになり易い。また、重合法では、トナー粒子の形成に比較的長い時間を要し、液体現像剤の生産性に劣る。
【0007】
【特許文献1】特開平7−234551号公報
【特許文献2】特公平8−7470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーが分散した液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率良く製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することにある。特に、環境に優しい方法で、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーが分散した液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤の製造方法は、高絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を製造する方法であって、
着色剤と樹脂材料とを含む材料を混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中にトナー用材料で構成された分散質が分散した水系乳化液を得る水系乳化液調製工程と、
前記水系分散媒を除去して、乾燥微粒子を得る水系分散媒除去工程と、
前記乾燥微粒子を前記高絶縁性液体中に分散させる分散工程とを有し、
前記樹脂材料として自己分散型樹脂を用いることを特徴とする。
【0010】
これにより、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーが分散した液体現像剤を効率良く(生産性良く)製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することができる。特に、環境に優しい方法で、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーが分散した液体現像剤を製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することができる。
【0011】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記自己分散型樹脂は、その分子内に親水基を含むものであることが好ましい。
このような自己分散型樹脂は、水系液体に対する分散性が特に優れているため、分散剤を用いることなく、または、極めて少量の分散剤を用いるだけで、水系分散液を好適に調製することができる。
【0012】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記親水基は、−COO基および/または−SO基であることが好ましい。
このような自己分散型樹脂は、水系液体に対する分散性が特に優れており、また、製造が比較的容易で、比較的安価に入手でき、その結果、液体現像剤の製造の更なる低コスト化を図ることができる。
【0013】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記自己分散型樹脂に含有されている前記親水基のmol数が前記自己分散型樹脂100gに対して0.001〜0.050molであることが好ましい。
これにより、トナーとして必要な特性をより効果的に維持しつつ、自己分散型樹脂を主材料とする分散質の分散性を向上させることができる。
【0014】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系乳化液中の分散質の平均粒径は、0.01〜5μmであることが好ましい。
これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。また、トナー粒子を、十分に円形度が高く、各粒子間(トナー粒子間)での特性、大きさ、形状の均一性が特に優れたものとして得ることができる。
【0015】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記混練工程は、前記樹脂材料の軟化温度以上の温度で行うことが好ましい。
これにより、トナー粒子を各構成成分がより均一に混ざり合ったものとして得ることができ、各トナー粒子間での特性(帯電特性等)のばらつきを特に小さくすることができる。
【0016】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記混練物の少なくとも一部を溶解可能な溶媒に溶解して得られる溶液を用いて、前記水系乳化液の調製を行うことが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さくすることができ、各トナー粒子間での特性(帯電特性等)のばらつきを特に小さくすることができる。また、トナー粒子の粒径をより小さくすることができる。
【0017】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系乳化液から前記溶媒を除去することにより得られる水系懸濁液を前記水系分散媒除去工程に供することが好ましい。
これにより、水系分散媒除去工程等における粒子の不本意な凝集を、より効果的に防止することができ、結果として、トナー粒子の形状、大きさの均一性を特に優れたものとすることができる。また、溶媒の除去とともに、脱気処理を施すことができ、例えば、乾燥微粒子を複数個の分散質の凝集体として得る場合において、異形状の乾燥微粒子(トナー粒子)が形成されるのをより効果的に防止することができる。
【0018】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系乳化液を用いて、固形の分散質が前記水系分散質中に分散した水系懸濁液を得、当該水系懸濁液を前記水系分散媒除去工程に供することが好ましい。
これにより、水系分散媒除去工程等における粒子の不本意な凝集を、より効果的に防止することができ、結果として、トナー粒子の形状、大きさの均一性を特に優れたものとすることができる。
【0019】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系懸濁液中の分散質の平均粒径は、0.01〜5μmであることが好ましい。
これにより、トナー粒子を、十分に円形度が高く、各粒子間(トナー粒子間)での特性、大きさ、形状の均一性が特に優れたものとして得ることができる。また、液体現像剤を用いて形成される画像の解像度を特に高いものとすることができる。
【0020】
本発明の液体現像剤は、本発明の方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーが分散した液体現像剤を提供することができる。
本発明の液体現像剤では、トナー粒子の平均粒径が0.1〜5μmであることが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきを特に小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を特に高いものとしつつ、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、各トナー粒子間での粒径の標準偏差が3.0μm以下であることが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【0021】
本発明の液体現像剤では、トナー粒子についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)が0.85以上であることが好ましい。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
これにより、トナー粒子の粒径を十分に小さいものとしつつ、トナー粒子の転写効率、機械的強度を特に優れたものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.15以下であることが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の液体現像剤の製造方法および液体現像剤の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、水系乳化液の調製に用いる混練物を製造するための混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図、図2は、本発明の液体現像剤の製造に用いられる乾燥微粒子製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図3は、図2に示す乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。以下、図1中、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
【0023】
本発明の液体現像剤の製造方法は、着色剤と樹脂材料とを含む材料を混練して混練物を得る混練工程と、混練物を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中にトナー用材料で構成された分散質が分散した水系乳化液を得る水系乳化液調製工程と、水系分散媒を除去して、乾燥微粒子を得る水系分散媒除去工程と、乾燥微粒子を高絶縁性液体中に分散させる分散工程とを有することを特徴とする。
【0024】
<混練物の構成材料>
後述する混練工程で得られる混練物は、液体現像剤のトナーを構成する成分を含むものであり、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と着色剤とを含むものである。
まず、混練物の調製に用いられる材料について説明する。
【0025】
1.樹脂(バインダー樹脂)
液体現像剤を構成するトナーは、通常、主成分としての樹脂(バインダー樹脂)を含む材料で構成されている。
そして、本発明では、混練物を構成する樹脂材料として、後述する水系液体に対して自己分散性を有する自己分散型樹脂を用いる。なお、本明細書中において、「自己分散性」とは、分散剤を用いなくても分散媒に対する分散性を有する性質のことを指す。そして、「自己分散型樹脂」とは、このような自己分散性を有する樹脂材料のことを指す。
自己分散型樹脂としては、特に限定されないが、例えば、後述する水性液体に対する親液性(親水性)を有する基を多数有する樹脂が挙げられる。
【0026】
前記親液性(親水性)を有する基(官能基)としては、例えば、−COO基、−SO、−CO基、−OH基、−OSO基、−COO−基、−SO−、−OSO−基、−PO、−PO基、および第4級アンモニウムならびにそれらの塩等が挙げられる。このような自己分散型樹脂は、水系液体に対する分散性が特に優れているため、分散剤を用いることなく、または、極めて少量の分散剤を用いるだけで、後述するような水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)を好適に調製することができる。これにより、例えば、最終的な液体現像剤中に分散剤が含まれることによる問題の発生を効果的に防止することができる。より具体的には、液体現像剤において、分散剤がトナー粒子の帯電特性に悪影響を与えるのを効果的に防止することができる。また、分散液の調製に分散剤を用いることに起因する消泡性の低下による発泡を効果的に防止することができ、後述するような水系分散液(水系懸濁液)の吐出時における吐出安定性が向上する。また、液体現像剤を構成するキャリア液に粒子を分散する際、分散剤や帯電制御剤を吸着しやすくなり、分散性および帯電性をさらに安定化することができる。
【0027】
また、上記のような基は、それ自体が電荷を帯び易い性質を有しており、トナー粒子そのものの帯電性を向上させる上でも有利である。
また、前述した基の中でも、特に、−COO−基、−SO−基が好ましい。このような基を有する自己分散型樹脂は、水系液体に対する分散性が特に優れており、また、製造が比較的容易で、比較的安価に入手でき、その結果、液体現像剤の製造の更なる低コスト化を図ることができる。
【0028】
上記のような基は、樹脂材料を構成する高分子の側鎖に存在するものであるのが好ましい。これにより、水系液体に対する親和性を特に優れたものとすることができ、水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)中における、自己分散型樹脂で構成された分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。また、極性有機溶媒を用いることなく環境に優しい方法で、液体現像剤を好適に製造することができる。
【0029】
上記のような自己分散型樹脂は、例えば、後述する原料となる樹脂材料(原料樹脂)またはそのモノマー(単量体)、ダイマー(2量体)、オリゴマー等に、前述したような官能基を有する材料を結合させることにより、製造することができる。
例えば、−COO−基を有する自己分散型樹脂は、水難溶性または水不溶性の樹脂(原料樹脂)に不飽和カルボン酸類をグラフト共重合またはブロック共重合させること、または、熱可塑性樹脂を構成する単量体と不飽和カルボン酸類とをランダム共重合させることにより、製造することができる。
【0030】
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸またはその無水物、その不飽和カルボン酸のメチル、エチル、プロピル等のモノエステル、ジエステル等のエステル化物、また、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の不飽和カルボン酸塩類等を用いることができる。
【0031】
また、例えば、−SO−基を有する自己分散型樹脂は、熱可塑性樹脂(原料樹脂)に不飽和スルホン酸類をグラフト共重合またはブロック共重合させること、付加重合性熱可塑性樹脂を構成する不飽和単量体と不飽和スルホン酸類を含有する単量体とをランダム共重合させること、または、重縮合系熱可塑性樹脂を構成する単量体と不飽和スルホン酸類を含有する単量体とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0032】
不飽和スルホン酸類としては、例えば、スチレンスルホン酸類、スルホアルキル(メタ)アクリレート類、またはこれらの金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。また、スルホン酸類を含有する単量体としては、スルホイソフタル酸類、スルホテレフタル酸類、スルホフタル酸類、スルホコハク酸類、スルホ安息香酸類、スルホサリチル酸類、またはこれらの金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。
【0033】
原料となる樹脂(原料樹脂)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記のような自己分散型樹脂は、例えば、前述したような官能基を有する前駆体(例えば、対応するモノマー(単量体)、ダイマー(2量体)、オリゴマー等)を重合させること等によっても製造することができる。
【0034】
前記自己分散型樹脂に含有されている前記官能基(親水基)の数は、前記自己分散型樹脂100gに対して0.001〜0.050molであるのが好ましく、0.005〜0.030molであるのがより好ましい。これにより、トナーとして必要な特性をより効果的に維持しつつ、自己分散型樹脂を主材料とする分散質の分散性を向上させることができる。
【0035】
上記のような自己分散型樹脂の、混練物中における含有率(混練物の調製に用いる組成物中における含有率)は、特に限定されないが、55〜95wt%であるのが好ましく、60〜90wt%であるのがより好ましく、65〜85wt%であるのがさらに好ましい。自己分散型樹脂の含乳率が前記下限値未満であると、水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)における分散質の分散性を十分に高いものとするのが困難となる可能性がある。一方、自己分散型樹脂の含乳率が前記上限値を超えると、相対的に着色剤の含有率が低下し、最終的な液体現像剤を用いた際に、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。
なお、混練物は、上述したような自己分散型樹脂以外の樹脂材料を含むものであってもよい。このような樹脂材料(自己分散型樹脂以外の樹脂材料)としては、例えば、上記で原料樹脂として例示したものを用いることができる。
【0036】
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜120℃であるのが好ましく、60〜115℃であるのがより好ましく、65〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスターにおける昇温速度5℃/min、ダイ穴径1.0mmの条件で規定される軟化開始温度のことを指す。また、複数種の樹脂成分を含む場合、樹脂(樹脂材料)の軟化温度としては、これらの成分についての加重平均値を採用することができる。
【0037】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいる。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
3.その他の成分
また、混練物の調製には、上記以外の成分を用いてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0040】
また、混練物の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
また、混練物の構成材料(成分)としては、例えば、無機溶媒、有機溶媒等の溶媒として用いられるような材料を用いてもよい。これにより、例えば、混練の効率を向上させることができ、各成分がより均一に混ざり合った混練物を容易に得ることができる。
【0041】
<混練物>
次に、上記のような成分を含む原料K5を混練して、混練物K7を得る方法の一例について説明する。
混練物K7は、例えば、図1に示すような装置を用いて製造することができる。
【0042】
[混練工程]
混練に供される原料K5は、前述したような成分を含むものである。特に、原料K5が着色剤を含むことにより、本工程で原料K5中に含まれる空気(特に着色剤が抱き込んだ空気)を効率よく除去することができ、トナー粒子の内部に気泡が混入(残存)するのを効果的に防止することができる。混練に供される原料K5は、これらの各成分が予め混合されたものであるのが好ましい。
【0043】
本実施形態では、混練機として、2軸混練押出機を用いる構成について説明する。
混練機K1は、原料K5を搬送しつつ混練するプロセス部K2と、混練された原料(混練物K7)を所定の断面形状に形成して押し出すヘッド部K3と、プロセス部K2内に原料K5を供給するフィーダーK4とを有している。
プロセス部K2は、バレルK21と、バレルK21内に挿入されたスクリューK22、スクリューK23と、バレルK21の先端にヘッド部K3を固定するための固定部材K24とを有している。
【0044】
プロセス部K2では、スクリューK22、スクリューK23が、回転することにより、フィーダーK4から供給された原料K5に剪断力が加えられ、均一な混練物K7が得られる。
プロセス部K2の全長は、50〜300cmであるのが好ましく、100〜250cmであるのがより好ましい。プロセス部K2の全長が前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2の全長が前記上限値を超えると、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0045】
また、混練時の原料温度は、原料K5の組成等により異なるが、80〜260℃であるのが好ましく、90〜230℃であるのがより好ましい。なお、プロセス部K2内での原料温度は、均一であっても、部位により異なるものであってもよい。例えば、プロセス部K2は、設定温度の比較的低い第1の領域と、該第1の領域より基端側に設けられ、かつ、その設定温度が第1の領域より高い第2の領域とを有するようなものであってもよい。
【0046】
また、原料K5のプロセス部K2での滞留時間(通過に要する時間)は、0.5〜12分であるのが好ましく、1〜7分であるのがより好ましい。プロセス部K2での滞留時間が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2での滞留時間が、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0047】
スクリューK22、スクリューK23の回転数は、バインダー樹脂の組成等により異なるが、50〜600rpmであるのが好ましい。スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記上限値を超えると、剪断により、樹脂の分子鎖が切断され、樹脂の特性が劣化する場合がある。
【0048】
また、本実施形態で用いる混練機K1では、プロセス部K2の内部は、脱気口K25を介して、ポンプPに接続されている。これにより、プロセス部K2の内部を脱気することができ、原料K5(混練物K7)が加熱されたり、発熱すること等によるプロセス部K2内の圧力の上昇を防止することができる。その結果、混練工程を安全かつ効率よく行うことができる。また、プロセス部K2の内部が脱気口K25を介してポンプPに接続されていることにより、得られる混練物K7中に気泡(特に、比較的大きな気泡)が含まれるのを効果的に防止することができ、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の特性をより優れたものとすることができる。
【0049】
[押出工程]
プロセス部K2で混練された混練物K7は、スクリューK22とスクリューK23との回転により、ヘッド部K3を介して、混練機K1の外部に押し出される。
ヘッド部K3は、プロセス部K2から混練物K7が送り込まれる内部空間K31と、混練物K7が押し出される押出口K32とを有している。
【0050】
内部空間K31内での混練物K7の温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、原料K5中に含まれる樹脂材料の軟化温度以上の温度であるのが好ましい。これにより、トナー粒子を各構成成分がより均一に混ざり合ったものとして得ることができ、各トナー粒子間での特性(帯電特性、定着性等)のばらつきを特に小さくすることができる。
内部空間K31内での混練物K7の具体的な温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、80〜150℃であるのが好ましく、90〜140℃であるのがより好ましい。内部空間K31内での混練物K7の温度が上記範囲内の値であると、混練物K7が内部空間K31で固化せず、押出口K32から押し出しやすくなる。
【0051】
図示の構成では、内部空間K31は、押出口K32の方向に向って、その横断面積が漸減する横断面積漸減部K33を有している。このような横断面積漸減部K33を有することにより、押出口K32から押し出される混練物K7の押出量が安定し、また、後述する冷却工程における混練物K7の冷却速度が安定する。その結果、これを用いて製造されるトナーは、各トナー粒子間での特性のばらつきが小さいものとなり、全体としての特性に優れたものになる。
【0052】
[冷却工程]
ヘッド部K3の押出口K32から押し出された軟化した状態の混練物K7は、冷却機K6により冷却され、固化する。
冷却機K6は、ロールK61、K62、K63、K64と、ベルトK65、K66とを有している。
ベルトK65は、ロールK61とロールK62とに巻掛けられている。同様に、ベルトK66は、ロールK63とロールK64とに巻掛けられている。
【0053】
ロールK61、K62、K63、K64は、それぞれ、回転軸K611、K621、K631、K641を中心として、図中e、f、g、hで示す方向に回転する。これにより、混練機K1の押出口K32から押し出された混練物K7は、ベルトK65−ベルトK66間に導入される。ベルトK65−ベルトK66間に導入された混練物K7は、ほぼ均一な厚さの板状となるように成形されつつ、冷却される。冷却された混練物K7は、排出部K67から排出される。ベルトK65、K66は、例えば、水冷、空冷等の方法により、冷却されている。冷却機として、このようなベルト式のものを用いると、混練機から押し出された混練物と、冷却体(ベルト)との接触時間を長くすることができ、混練物の冷却の効率を特に優れたものとすることができる。
【0054】
ところで、混練工程では、原料K5に剪断力が加わっているため、相分離(特に、マクロ相分離)等が十分防止されているが、混練工程を終えた混練物K7は、剪断力が加わらなくなるので、混練物の構成材料によっては、長期間放置しておくと再び相分離(マクロ相分離)等を起こしてしまう可能性がある。従って、上記のようにして得られた混練物K7は、できるだけ早く冷却するのが好ましい。具体的には、混練物K7の冷却速度(例えば、混練物K7が60℃程度まで冷却される際の冷却速度)は、−3℃/秒以上であるが好ましく、−5〜−100℃/秒であるのがより好ましい。また、混練工程の終了時(剪断力が加わらなくなった時点)から冷却工程が完了するまでに要する時間(例えば、混練物K7の温度を60℃以下に冷却するのに要する時間)は、20秒以下であるのが好ましく、3〜12秒であるのがより好ましい。
【0055】
本実施形態では、混練機として、連続式の2軸混練押出機を用いる構成について説明したが、原料の混練に用いる混練機はこれに限定されない。原料の混練には、例えば、ニーダーやバッチ式の三軸ロール、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。
また、図示の構成では、スクリューを2本有する構成の混練機について説明したが、スクリューは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、混練装置にディスク(ニーディングディスク)部があってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、1つの混練機を用いる構成について説明したが、2つの混練機を用いて混練してもよい。この場合、一方の混練機と、他方の混練機とで、原料の加熱温度、スクリューの回転速度等が異なっていてもよい。
また、本実施形態では、冷却機として、ベルト式のものを用いた構成について説明したが、例えば、ロール式(冷却ロール式)の冷却機を用いてもよい。また、混練機の押出口K32から押し出された混練物の冷却は、前記のような冷却機を用いたものに限定されず、例えば、空冷等により行うものであってもよい。
【0057】
[粉砕工程]
次に、上述したような冷却工程を経た混練物K7を粉砕する。このように、混練物K7を粉砕することにより、後述する水系乳化液を、比較的容易に、より微小な分散質が分散したものとして得ることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、トナー粒子の大きさをより小さなものとすることができ、高解像度の画像形成に好適に用いることができる。
【0058】
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
粉砕の工程は、複数回(例えば、粗粉砕工程と微粉砕工程との2段階)に分けて行ってもよい。また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0059】
原料K5に対して上記のような混練を施すことにより、原料K5中に含まれる空気を効果的に除去することができる。言い換えると、上記のような混練により得られる混練物K7は、その内部に空気(気泡)をほとんど含まない。これにより、後述する水系分散媒除去工程において、異形粒子(中空粒子、欠落粒子、融合粒子等)が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においては、異形トナー粒子による転写性、クリーニング性等の低下等の問題が発生するのを効果的に防止することができる。
【0060】
本発明では、上記のような混練物を用いて、水系乳化液を調製する。
水系乳化液の調製に混練物K7を用いることにより、以下のような効果が得られる。すなわち、トナーの構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、顔料(着色剤)は、通常、後述するような溶媒として用いられる液体に対する分散性が低いが、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、後述する水系乳化液の分散媒(水系分散媒)に対する分散性に劣る成分(以下、「難分散性成分」とも言う。)や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分(以下、「難溶性成分」とも言う。)が含まれる場合であっても、水系乳化液における分散質の分散性を特に優れたものとすることができ、また、この水系乳化液を用いて調製される水系懸濁液3(液滴9)においても、分散質31の分散性が優れたものとなる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、各トナー粒子間での組成、特性のばらつきが小さくなり、全体としての特性が特に優れたものとなる。
【0061】
これに対し、水系乳化液の調製に、混練を施していない原料を用いると、難分散性成分や難溶性成分が凝集して、水系乳化液中や後述する水系懸濁液中で沈降したり、主として難分散性成分や難溶性成分で構成され、他の成分と十分に混ざり合っていない粒径の比較的大きい分散質が水系乳化液(および後述する水系懸濁液)中に存在することとなり(主として難分散性成分および/または難溶性成分で構成された大粒径の分散質と、主として難分散性成分、難溶性成分以外の成分で構成された分散質とが混在することとなり)、後に詳述する水系分散媒除去工程で得られる乾燥微粒子(トナー粒子)は、各粒子間での組成、大きさ、形状等のばらつきが大きくなる。その結果、トナー全体(液体現像剤全体)としての特性が低下する。
【0062】
また、上記のようにして得られる混練物の粉砕物を、後述するような水系乳化液の調製に用いることなく、直接、トナー粒子とする場合、トナー中における構成成分の均一性(分散性)を高めるには限界があった。また、このような方法では、一般に比較的強固な凝集体である(強固な凝集体となり易い)顔料の分散(微分散)は、特に困難となる。
これに対し、本発明では、上記のような混練物を水系乳化液の調製に用いることにより、最終的に得られるトナー粒子は、各成分が十分均一に相溶、分散(微分散)したものとなる。
【0063】
また、本発明で用いるような水系乳化液においては、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)ため、分散質はその表面張力により、円形度(真球度)の大きい形状になる傾向を示す。したがって、当該水系乳化液を用いて調製される懸濁液(水系懸濁液)も、分散質の形状が比較的円形度(真球度)の大きいものとなり、結果として、最終的に得られるトナー粒子も比較的円形度(真球度)の大きいものとなる。また、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)乳化液では、乳化液を攪拌すること等により、比較的容易に分散質の大きさの均一性を十分に高いものとすることができる。これに対して、後述する乾燥微粒子の製造に用いられる懸濁液として、水系乳化液を経由することなく調製されたものを用いた場合、懸濁液中に含まれる分散質は、円形度の小さいものとなり、特に、各粒子間での形状、粒子径のばらつきが大きいものとなる。また、このような形状のばらつきを抑制するために、後述するような乾燥微粒子の形成時または乾燥微粒子の形成後に、熱球形化処理を施すことも考えられるが、このような場合(特に、乾燥微粒子の形成時に熱球形化を行う場合)、熱球形化処理の条件を比較的過酷なものとしなければ、得られる乾燥微粒子の形状のばらつきを十分に小さくするのが困難であり、乾燥微粒子の構成材料の劣化や、乾燥微粒子中での各構成成分の相溶化状態、微分散状態の破壊を招き易く、最終的に得られる液体現像剤において、十分な特性を発揮させるのが困難となる。
【0064】
<水系乳化液調製工程>
次に、上記のような混練物K7を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中に、トナー材料で構成された分散質が分散した水系乳化液を調製する(水系乳化液調製工程)。前述したように、混練物K7が自己分散型樹脂を含むものであるため、本工程で得られる水系乳化液は、分散質の分散状態が良好なものである。また、分散媒として、水系液体を用いるので、環境にも優しい方法で液体現像剤を製造することができる。
【0065】
水系乳化液の調製方法は、特に限定されないが、本実施形態では、混練物K7の少なくとも一部が溶解した混練物K7の溶液を得、当該溶液を水系液体に分散させることにより水系乳化液を調製する。なお、本明細書中において、「乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)」とは、液状の分散媒中に、液状の分散質(分散粒子)が分散した分散液のことを指し、「懸濁液(サスペンション)」とは、液状の分散媒中に、固体状(固形)の分散質(懸濁粒子)が分散した分散液(懸濁コロイドを含む)のことを指す。また、分散液中に、液状の分散質と、固体状の分散質とが併存する場合には、分散液中において、液状の分散質の総体積が、固体状の分散質の総体積よりも大きいものを乳化液とし、分散液中において、固体の分散質の総体積が、液状の分散質の総体積よりも大きいものを懸濁液とする。
【0066】
以下、水系乳化液の調製方法について詳細に説明する。
[混練物溶液(混練物の溶液)の調製]
本実施形態では、まず、混練物の少なくとも一部が溶解した混練物の溶液を得る。
溶液は、混練物と、混練物の少なくとも一部を溶解し得る溶媒とを混合することにより調製することができる。
【0067】
溶液の調製に用いる溶媒は、混練物の少なくとも一部を溶解しうるものであればいかなるものであってもよいが、通常、後述する水系液体(水系乳化液の調製の用いる水系液体)との相溶性の低いもの(例えば、25℃における水系液体100gに対する溶解度が10g以下の液体)が用いられる。
このような溶媒としては、例えば、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、2−ヘプタノン等のケトン系溶媒、ペンタノール、n−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、フラン、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、アクリル酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0068】
溶液中における溶媒の含有率は、特に限定されないが、5〜75wt%であるのが好ましく、10〜70wt%であるのがより好ましく、15〜65wt%であるのがさらに好ましい。溶媒の含有率が前記下限値未満であると、溶媒に対する混練物の溶解性(溶解度)によっては、混練物を十分に溶解するのが困難になる可能性がある。一方、溶媒の含有率が前記上限値を超えると、後の処理で溶媒を除去するのに要する時間が長くなり、液体現像剤の生産性が低下する。また、溶媒の含有率が高すぎると、前述した混練工程で、十分均一に混ざり合った各成分が相分離してしまう可能性があり、これにより、最終的に得られる液体現像剤における各トナー粒子の特性のばらつきを十分に小さくするのが困難になる可能性がある。
なお、溶液中においては、混練物を構成する成分の少なくとも一部が溶解(膨潤を含む)していればよく、溶液中に、溶解していない不溶分が存在していてもよい。
【0069】
[水系乳化液の調製]
次に、上記のような溶液を水系液体と混合することにより、水系乳化液を得る。この水系乳化液においては、通常、前述した溶媒と混練物の構成材料とを含む分散質が、水系液体で構成された水系分散媒中に分散している。
本発明において、「水系液体」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系液体は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。このようなものを用いることにより、乾燥微粒子製造装置において、分散媒(水性液体)を回収するための液体回収装置(分散媒回収装置)を省略または簡素化しても、環境に優しい方法で、液体現像剤(トナー粒子)を製造することができる。
【0070】
水系液体の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
【0071】
溶液と水系液体との混合は、少なくとも一方の液体を攪拌しつつ行うのが好ましい。これにより、大きさ、形状のばらつきの小さい分散質が均一に分散した乳化液(水系乳化液)を、容易かつ確実に得ることができる。
溶液と水系液体との混合の具体的な方法としては、例えば、容器内の水系液体中に溶液を加える方法(例えば、滴下する方法)、容器内の溶液中に水系液体を加える方法(例えば、滴下する方法)等が挙げられる。これらの場合、少なくとも、攪拌した状態の液体中に、他方の液体を加えるのが好ましい。これにより、上述した効果は更に顕著に発揮される。
【0072】
水系乳化液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
水系乳化液中における分散質の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、個数基準の平均粒径のことを指すものとする。
なお、上記の説明では、水系乳化液中において、混練物中の成分が分散質に含まれるものとして説明したが、混練物の構成成分の一部が分散媒中に含まれていてもよい。
また、水系乳化液中には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
【0073】
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフミン酸等が挙げられる。
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、水系乳化液中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
【0074】
<水系懸濁液調製工程>
上記のようにして得られた水系乳化液は、そのまま、後述する水系分散媒除去工程に供するものであってもよいが、本実施形態においては、(液状の分散質が水系分散媒中に分散した)水系乳化液から、固形状の分散質31が分散媒(水系分散媒)32中に分散した水系懸濁液3を得、当該水系懸濁液3を水系分散媒除去工程に供する。これにより、水系分散媒除去工程等における粒子の不本意な凝集を、より効果的に防止することができ、結果として、トナー粒子の形状、大きさの均一性を特に優れたものとすることができる。また、上述したように水系乳化液の分散質は、水系液体との親和性に優れた自己分散型樹脂を含む材料で構成されたものであるため、本工程で得られる水系懸濁液においても、分散質の良好な分散性を保持することができる。
【0075】
以下、水系懸濁液3の調製方法について詳細に説明する。
水系懸濁液3の調製は、水系乳化液から分散質を構成する溶媒を除去することにより行うことができる。
溶媒の除去は、例えば、水系乳化液を加熱(加温)したり、減圧雰囲気下に置くことにより行うことができるが、水系乳化液を減圧下で加熱することにより行うものであるのが好ましい。これにより、分散質31の大きさ、形状のばらつきが特に小さい水系懸濁液3を、比較的容易に得ることができる。また、上記のように溶媒を除去することにより、溶媒の除去とともに、脱気処理を施すことができる。これにより、水系懸濁液3中の気体の溶存量を低減させることができ、乾燥微粒子製造装置M1の分散媒除去部M3において、水系懸濁液3の液滴9から分散媒32を除去する際に、当該水系懸濁液3中に気泡等が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中に異形状のトナー粒子(中空粒子、欠落粒子等)が混入するのをより効果的に防止することができる。
【0076】
水系乳化液を加熱(加温)する場合、加熱温度は、30〜110℃であるのが好ましく、40〜100℃であるのがより好ましい。加熱温度が前記範囲内の値であると、異形状の分散質31の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
また、水系乳化液を減圧雰囲気下に置く場合、水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力は、0.1〜50kPaであるのが好ましく、0.5〜5kPaであるのがより好ましい。水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力が前記範囲内の値であると、異形状の分散質31の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
なお、溶媒の除去は、少なくとも分散質が固形状となる程度に行われるものであればよく、水系乳化液中に含まれる実質的に全ての溶媒を除去するものでなくてもよい。
水系懸濁液3中における分散質31の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。
【0077】
<水系分散媒除去工程>
次に、水系分散液(水系懸濁液3)から水系分散媒を除去することにより、水系分散液(水系懸濁液3)の分散質に対応する乾燥微粒子を得る(水系分散媒除去工程)。このようにして得られる乾燥微粒子は、液体現像剤のトナー粒子に相当するものである。
水系分散媒の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、水系分散媒中に分散質が分散した分散液(水系分散液)の液滴を間欠的に吐出することにより行うのが好ましい。これにより、分散質の凝集等を効果的に防止しつつ、水系分散媒の除去をより効率良く行うことができ、液体現像剤の生産性が向上する。また、水系分散液の液滴を間欠的に吐出して水系分散媒の除去を行うことにより、前述した水系懸濁液の調製において、溶媒の一部が残存している場合であっても、この残存している溶媒を水系分散媒とともに効率良く除去することができる。
【0078】
特に、本実施形態では、図2、図3に示すような乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置)を用いて、水系分散媒の除去を行う。
[乾燥微粒子製造装置]
図2に示すように、乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置)M1は、上述したような水系懸濁液(水系分散液)3を、液滴9として間欠的に吐出するヘッド部M2と、ヘッド部M2に水系懸濁液3を供給する水系懸濁液供給部(水系分散液供給部)M4と、ヘッド部M2から吐出された液滴状(微粒子状)の水系懸濁液3(液滴9)を搬送しつつ分散媒32を除去し、乾燥微粒子(トナー粒子)4とする分散媒除去部M3と、製造された乾燥微粒子(トナー粒子)4を回収する回収部M5とを有している。
【0079】
水系懸濁液供給部M4は、ヘッド部M2に水系懸濁液3を供給する機能を有するものであればよいが、図示のように、水系懸濁液3を攪拌する攪拌手段M41を有するものであってもよい。これにより、例えば、分散質31が分散媒(水系分散媒)32中に分散しにくいものであっても、分散質31が十分均一に分散した状態の水系懸濁液3を、ヘッド部M2に供給することができる。
【0080】
ヘッド部M2は、水系懸濁液3を微細な液滴(微粒子)9として、吐出する機能を有するものである。
ヘッド部M2は、分散液貯留部M21と、圧電素子M22と、吐出部M23とを有している。
分散液貯留部M21には、水系懸濁液3が貯留されている。
【0081】
分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3は、圧電素子M22の圧力パルス(圧電パルス)により、吐出部M23から、液滴9として分散媒除去部M3に吐出される。
吐出部M23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、吐出される水系懸濁液3や、分散媒除去部M3内において形成される乾燥微粒子4の真球度を高めることができる。
【0082】
吐出部M23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。吐出部M23の直径が前記下限値未満であると、目詰まりが発生し易くなり、吐出される液滴9の大きさのばらつきが大きくなる場合がある。一方、吐出部M23の直径が前記上限値を超えると、分散液貯留部M21の負圧と、ノズルの表面張力との力関係によっては、吐出される水系懸濁液3(液滴9)が気泡を抱き込んでしまう可能性がある。
【0083】
また、ヘッド部M2の吐出部M23付近(特に、吐出部M23の開口内面や、ヘッド部M2の吐出部M23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、水系懸濁液3に対し撥液性(撥水性)を有するのが好ましい。これにより、水系懸濁液3が吐出部付近に付着するのを効果的に防止することができる。その結果、いわゆる、液切れの悪い状態になったり、水系懸濁液3の吐出不良が発生するのを効果的に防止することができる。また、吐出部付近への水系懸濁液3の付着が効果的に防止されることにより、吐出される液滴の形状の安定性が向上し(各液滴間での形状、大きさのばらつきが小さくなり)、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのばらつきも小さくなる。
このような撥液性を有する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、シリコーン系材料等が挙げられる。
【0084】
図3に示すように、圧電素子M22は、下部電極(第1の電極)M221、圧電体M222および上部電極(第2の電極)M223が、この順で積層されて構成されている。換言すれば、圧電素子M22は、上部電極M223と下部電極M221との間に、圧電体M222が介挿された構成とされている。
この圧電素子M22は、振動源として機能するものであり、振動板M24は、圧電素子(振動源)M22の振動により振動し、分散液貯留部M21の内部圧力を瞬間的に高める機能を有するものである。
【0085】
ヘッド部M2は、圧電素子駆動回路(図示せず)から所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体M222に変形が生じない。このため、振動板M24にも変形が生じず、分散液貯留部M21には容積変化が生じない。したがって、吐出部M23から水系懸濁液3は吐出されない。
【0086】
一方、圧電素子駆動回路から所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に所定の電圧が印加された状態では、圧電体M222に変形が生じる。これにより、振動板M24が大きくたわみ(図3中下方にたわみ)、分散液貯留部M21の容積の減少(変化)が生じる。このとき、分散液貯留部M21内の圧力が瞬間的に高まり、吐出部M23から粒状の水系懸濁液3が吐出される。
【0087】
1回の水系懸濁液3の吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極M221と上部電極M223との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子M22は、ほぼ元の形状に戻り、分散液貯留部M21の容積が増大する。なお、このとき、水系懸濁液3には、水系懸濁液供給部M4から吐出部M23へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気が吐出部M23から分散液貯留部M21へ入り込むことが防止され、水系懸濁液3の吐出量に見合った量の水系懸濁液3が水系懸濁液供給部M4から分散液貯留部M21へ供給される。
上記のような電圧の印加を所定の周期で行うことにより、圧電素子M22が振動し、粒状の水系懸濁液3が繰り返し吐出される。
【0088】
このように、水系懸濁液3の吐出(噴射)を、圧電体M222の振動による圧力パルスで行うことにより、水系懸濁液3を一滴ずつ間欠的に吐出することができ、また、吐出される水系懸濁液3の液滴9の形状が安定する。その結果、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
また、分散液の吐出に圧電体の振動を用いることにより、より確実に分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される液滴9同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、異形状の乾燥微粒子4の形成をより効果的に防止することができる。
【0089】
ヘッド部M2から分散媒除去部M3に吐出される水系懸濁液3(液滴9)の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。水系懸濁液3の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、水系懸濁液3の初速度が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナー粒子の真球度が低下する傾向を示す。
【0090】
また、ヘッド部M2から吐出される水系懸濁液3の粘度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜200[mPa・s]であるのが好ましく、1〜25[mPa・s]であるのがより好ましい。水系懸濁液3の粘度が前記下限値未満であると、吐出される水系懸濁液3の大きさを十分に制御するのが困難となり、最終的に得られるトナー粒子のばらつきが大きくなる場合がある。一方、水系懸濁液3の粘度が前記上限値を超えると、形成される粒子の径が大きくなり、水系懸濁液3の吐出速度が遅くなるとともに、水系懸濁液3の吐出に要するエネルギー量も大きくなる傾向を示す。また、水系懸濁液3の粘度が特に大きい場合には、水系懸濁液3を液滴として吐出できなくなる。
【0091】
また、ヘッド部M2から吐出される水系懸濁液3は、予め冷却されたものであってもよい。このように水系懸濁液3を冷却することにより、例えば、吐出部M23付近における水系懸濁液3からの分散媒32の不本意な蒸発(揮発)を効果的に防止することができる。その結果、吐出部の開口面積が経時的に小さくなることによる水系懸濁液3の吐出量変化等を効果的に防止することができ、各粒子間での大きさ、形状のばらつきが特に小さいトナーを得ることができる。
【0092】
また、水系懸濁液3の一滴分の吐出量は、水系懸濁液3中に占める分散質31の含有率等により若干異なるが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.5〜50plであるのがより好ましい。水系懸濁液3の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、形成される乾燥微粒子4を適度な粒径のものにすることができる。
また、ヘッド部M2から吐出される液滴9の平均粒径は、水系懸濁液3中に占める分散質31の含有率等により若干異なるが、1.0〜100μmであるのが好ましく、5〜50μmであるのがより好ましい。液滴9の平均粒径をこのような範囲の値にすることにより、形成される乾燥微粒子4を適度な粒径のものにすることができる。
【0093】
圧電素子M22の振動数(圧電パルスの周波数)は、特に限定されないが、1kHz〜500MHzであるのが好ましく、5kHz〜200MHzであるのがより好ましい。圧電素子M22の振動数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、圧電素子M22の振動数が前記上限値を超えると、粒状の水系懸濁液3の吐出が追随できなくなり、水系懸濁液3一滴分の大きさのばらつきが大きくなり、結果として、形成される乾燥微粒子(トナー粒子)4の大きさのばらつきが大きくなる可能性がある。
【0094】
図示の構成の乾燥微粒子製造装置M1は、ヘッド部M2を複数個有している。そして、これらのヘッド部M2から、それぞれ、粒状の水系懸濁液3(液滴9)が分散媒除去部M3に吐出される。
各ヘッド部M2は、ほぼ同時に水系懸濁液3(液滴9)を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、水系懸濁液3(液滴9)の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部M2から吐出された液滴9から乾燥微粒子4が形成される前に、液滴9同士が衝突し、不本意な凝集が発生するのをより効果的に防止することができる。
【0095】
また、図2に示すように、乾燥微粒子製造装置M1は、ガス流供給手段M10を有しており、このガス流供給手段M10から供給されたガスが、ダクトM101を介して、ヘッド部M2−ヘッド部M2間に設けられた各ガス噴射口M7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部M23から間欠的に吐出された液滴9の間隔を保ち、液滴9同士が衝突するのを効果的に防止しつつ、乾燥微粒子4を形成することができる。その結果、形成される乾燥微粒子4の大きさ、形状のばらつきをより小さくすることができる。
【0096】
また、ガス流供給手段M10から供給されたガスをガス噴射口M7から噴射することにより、分散媒除去部M3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、分散媒除去部M3内で形成された乾燥微粒子4をより効率良く搬送することができる。これにより、乾燥微粒子4の回収効率が向上し、液体現像剤の生産性が向上する。
また、ガス噴射口M7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部M2から吐出される液滴9の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各液滴間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
【0097】
また、ガス流供給手段M10には、熱交換器M11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、分散媒除去部M3に吐出された粒状の水系懸濁液3から分散媒32を効率良く除去することができる。
また、このようなガス流供給手段M10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部M23から吐出された水系懸濁液3からの分散媒32の除去速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0098】
ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度は、水系懸濁液3中に含まれる分散質31、分散媒32の組成等により異なるが、通常、0〜70℃であるのが好ましく、15〜60℃であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られる乾燥微粒子4の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、液滴9中に含まれる分散媒32を効率良く除去することができる。
また、ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、30%RH以下であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する分散媒除去部M3において、水系懸濁液3に含まれる分散媒32を効率良く除去することが可能となり、乾燥微粒子4の生産性がさらに向上する。
【0099】
分散媒除去部M3は、筒状のハウジングM31で構成されている。分散媒除去部M3内の温度を所定の範囲に保つ目的で、例えば、ハウジングM31の内側または外側に熱源、冷却源を設置したり、ハウジングM31を、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットとしてもよい。
また、図示の構成では、ハウジングM31内の圧力は、圧力調整手段M12により調整される構成となっている。このように、ハウジングM31内の圧力を調整することにより、より効率良く乾燥微粒子4を形成することができ、結果として、液体現像剤の生産性が向上する。なお、図示の構成では、圧力調整手段M12は、接続管M121でハウジングM31に接続されている。また、接続管M121のハウジングM31と接続する端部付近には、その内径が拡大した拡径部M122が形成されており、さらに、乾燥微粒子4等の吸い込みを防止するためのフィルターM123が設けられている。
【0100】
ハウジングM31内の圧力は、特に限定されないが、150kPa以下であるのが好ましく、100〜120kPaであるのがより好ましく、100〜110kPaであるのがさらに好ましい。ハウジングM31内の圧力が前記範囲内の値であると、例えば、液滴9からの急激な分散媒32の除去(沸騰現象)等を効果的に防止することができ、異形状の乾燥微粒子4の発生等を十分に防止しつつ、より効率良く乾燥微粒子4を製造することができる。なお、ハウジングM31内の圧力は、各部位でほぼ一定であってもよいし、各部位で異なるものであってもよい。
また、ハウジングM31には、電圧を印加するための電圧印加手段M8が接続されている。電圧印加手段M8で、ハウジングM31の内面側に、乾燥微粒子4(液滴9)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0101】
通常、乾燥微粒子4等は、正または負に帯電している。このため、乾燥微粒子4と異なる極性に帯電した帯電物があると、乾燥微粒子4は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、乾燥微粒子4と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物と乾燥微粒子4とは、互いに反発しあい、前記帯電物表面に乾燥微粒子4が付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジングM31の内面側に、粒状の乾燥微粒子4と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジングM31の内面に乾燥微粒子4が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状の乾燥微粒子4の発生をより効果的に防止することができるとともに、乾燥微粒子4の回収効率も向上する。
また、ハウジングM31は、回収部M5付近に、図2中の下方向に向けて、その内径が小さくなる縮径部M311を有している。このような縮径部M311が形成されることにより、乾燥微粒子4を効率良く回収することができる。
【0102】
そして、上記のようにして形成された乾燥微粒子4は、回収部M5に回収される。
上記のようにして得られる乾燥微粒子4は、通常、各分散質31に対応する大きさ、形状を有するものである。これにより、最終的に得られる液体現像剤は、比較的小粒径で、円形度(球形度)が高く、各粒子間での形状、大きさのばらつきの小さいトナー粒子を含むものとなる。
また、上記のようにして得られる乾燥微粒子4は、水系懸濁液3の分散媒32が除去されることにより得られる粒状物であればよく、例えば、その内部に分散媒の一部が残存していてもよい。
【0103】
得られた乾燥微粒子4は、そのまま、後述する分散工程に供してもよいし、熱処理等の各種処理を施してもよい。これにより、乾燥微粒子(トナー粒子)の機械的強度(形状の安定性)をさらに優れたものとしたり、乾燥微粒子中の含水量を低下させることができる。また、得られた乾燥微粒子4に対してエアレーション等の処理を施したり、乾燥微粒子4を減圧雰囲気下に放置すること等によっても、上記と同様に、含水量を低下させることができる。
また、上記のような乾燥微粒子4に対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
【0104】
<分散工程>
次に、上記のようにして得られた乾燥微粒子4を高絶縁性液体中に分散させる(分散工程)。これにより、乾燥微粒子4としてのトナー粒子が、高絶縁性液体(担持液)中に分散した液体現像剤が得られる。
高絶縁性液体は、十分に絶縁性の高い液体であればよいが、具体的には、室温(20℃)での電気抵抗が10Ωcm以上のものであるのが好ましく、1011Ωcm以上のものであるのがより好ましく、1013Ωcm以上のものであるのがさらに好ましい。
また、高絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0105】
このような条件を満足する高絶縁性液体としては、例えば、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン社の商品名)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルゾール;シエルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)シリコーンオイル、植物油およびこれらの混合物、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0106】
高絶縁性液体中への乾燥微粒子4の分散は、いかなる方法で行うものであってもよいが、攪拌した状態の高絶縁性液体中に乾燥微粒子4を加えることにより行うのが好ましい。これにより、液体現像剤の調整時における乾燥微粒子4の不本意な凝集を防止しつつ、得られた液体現像剤においては、トナー粒子の良好な分散状態を長期間にわたって安定的に保持することができる。
以上説明したような製造方法においては、比較的少量(例えば、樹脂材料100重量部に対して、2重量部以下)であれば分散剤を用いてもよいが、分散剤を用いないのが好ましい。これにより、最終的に得られる液体現像剤に分散剤が残存することによる悪影響の発生を防止することができる。
【0107】
<液体現像剤>
上記のようにして得られる液体現像剤は、トナー粒子の形状、大きさのばらつきが小さい。したがって、このような液体現像剤は、トナー粒子が高絶縁性液体中(液体現像剤中)で泳動し易く、高速現像にも有利である。また、トナー粒子の形状、大きさのばらつきが小さいため、トナー粒子の分散性に優れており、液体現像剤中でのトナー粒子の沈降や浮遊等が効果的に防止される。したがって、このような液体現像剤は、長期安定性にも優れている。
【0108】
上記のようにして得られる液体現像剤中におけるトナー粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.4〜4μmであるのがより好ましく、0.5〜3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきを特に小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を特に高いものとしつつ、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での粒径の標準偏差は、3.0μm以下であるのが好ましく、0.1〜2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【0109】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.85以上であるのが好ましく、0.90〜0.99であるのがより好ましく、0.95〜0.99であるのがさらに好ましい。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
これにより、トナー粒子の粒径を十分に小さいものとしつつ、トナー粒子の転写効率、機械的強度を特に優れたものとすることができる。
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での平均円形度の標準偏差は、0.5以下であるのが好ましく、0.001〜0.1であるのがより好ましく、0.001〜0.05であるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【0110】
上述したように、本発明の製造方法においては、分散剤を用いることなく、または、極めて少量の分散剤を用いるだけで、好適に液体現像剤を製造することができる。したがって、最終的な液体現像剤を、分散剤を実質的に含まないものとして得ることができる。液体現像剤中における分散剤の含有率は、5wt%以下であるのが好ましく、2wt%以下であるのがより好ましく、分散剤を実質的に含まないのが好ましい。
【0111】
次に、上述したような本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
図4は、本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。画像形成装置P1には、円筒状の感光体P2のドラムを有し、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器P3によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等によって記録すべき情報に応じた露光P4が行なわれて静電潜像が形成される。
【0112】
現像器P10は、現像剤容器P11中にその一部が浸漬された塗布ローラP12、現像ローラP13を有している。塗布ローラP12は、例えば、ステンレス等の金属製のグラビアローラであり、現像ローラP13と対向して回転する。また、塗布ローラP12の表面には、液体現像剤塗布層P14が形成され、メータリングブレードP15によってその厚さが一定に保持される。
【0113】
そして、塗布ローラP12から現像ローラP13に対して液体現像剤が転写される。現像ローラP13は、ステンレス等の金属製のローラ芯体P16上に低硬度シリコーンゴム層を有し、その表面には導電性のPFA(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)製の樹脂層が形成されており、感光体P2と等速で回転して液体現像剤を潜像部に転写する。感光体P2へ転写後に現像ローラP13に残った液体現像剤は、現像ローラクリーニングブレードP17によって除去されて現像剤容器P11内へ回収される。
【0114】
また、感光体から中間転写ローラへのトナー画像の転写の後には、感光体は、除電光P21によって除電されるとともに、感光体上に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP22によって除去される。
同様に、中間転写ローラP18から情報記録媒体P20へ転写後に中間転写ローラP18に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP23によって除去される。
感光体P2上に形成されたトナー像は、中間転写ローラP18に対して転写された後に、二次転写ローラP19に転写電流を通電して、両者の間を通過する紙等の情報記録媒体P20に画像が転写され、紙等の情報記録媒体P20上でのトナー画像は図6に示す定着装置使用して定着が行われる。
【0115】
図5は、本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。非接触方式にあっては、現像ローラP13には0.5mm厚のリン青銅板で構成された帯電ブレードP24が設けられる。帯電ブレードP24は液体現像剤層に接触して摩擦帯電させる機能を有すると共に、塗布ローラP12がグラビアロールであるために現像ローラP13上にはグラビアロール表面の凹凸に応じた現像剤層が形成されるので、その凹凸を均一に均す機能を果たすものであり、配置方向としては現像ローラの回転方向に対してカウンタ方向でもトレイル方向のいずれでもよく、また、ブレート形状ではなくローラ形状でもよい。
【0116】
また、現像ローラP13と感光体P2との間は、200μm〜800μmの間隔が設けられると共に、現像ローラP13と感光体P2との間には直流電圧200〜800Vに重畳される500〜3000Vpp、周波数50〜3000Hzの交流電圧が印加されるのが好ましい。それ以外は、図4を参照しつつ説明した画像形成装置と同様である。
なお、図4、図5共に一色の液体現像剤による画像形成について説明したが、複数色のカラートナーを用いて画像形成する場合には、複数色の現像器を用いて各色の画像を形成してカラー画像を形成することができる。
【0117】
図6は定着装置の断面図であり、F1は熱定着ロール、F1aはハロゲンランプ、F1bはロール基材、F1cは弾性体、F2は加圧ロール、F2aは回転軸、F2bはロール基材、F2cは弾性体、F3は耐熱ベルト、F4はベルト張架部材、F4aは突壁、F5はシート材、F5aは未定着トナー像、F6はクリーニング部材、F7はフレーム、F9はスプリング、Lは押圧部接線である。
【0118】
図に示すように、定着装置F40は、熱定着ロール(以下、加熱ロールともいう)F1、加圧ロールF2、耐熱ベルトF3、ベルト張架部材F4、およびクリーニング部材F6を備えている。
熱定着ロールF1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体F1cを被覆して形成され、ロール基材F1bの内部に、加熱源として1,050W、2本の柱状ハロゲンランプF1aが内蔵されており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。また、加圧ロールF2は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F2bとして、その外周に厚み0. 2mm程度の弾性体F2cを被覆して形成し、熱定着ロールF1と加圧ロールF2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成し、熱定着ロールF1に対向して配置し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0119】
このように、熱定着ロールF1および加圧ロールF2の外径が25mm程度の小径に構成されているため、定着後のシート材F5が熱定着ロールF1または耐熱ベルトF3に巻き付くことがなく、シート材を強制的に剥がすための手段が不要となっている。また、熱定着ロールF1の弾性体F1cの表層には約30μmのPFA層を設けることで、その分剛性が向上する。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ロールF1の周速に対して耐熱ベルトF3またはシート材F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0120】
また、熱定着ロールF1の内部に、加熱源を構成する2本のハロゲンランプ1a、1aが内蔵されており、これらのハロゲンランプ1a、1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各ハロゲンランプ1a、1aが選択的に点灯されることにより、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接する部位との異なる条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材との異なる条件下での温度コントロールが容易に行われるようになっている。
【0121】
耐熱ベルトF3は、加圧ロールF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。この耐熱ベルトF3は0.03mm以上の厚みを有し、その表面(シート材F5が接触する側の面)をPFAで形成し、また、裏面(加圧ロールF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0122】
ベルト張架部材F4は、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との定着ニップ部よりもシート材F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロールF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材F4は、シート材F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架するように構成されている。シート材F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架する構成にすることで、シート材F5の進入がスムーズに行われるシート材F5の導入口部が形成でき、安定したシート材F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0123】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ロールF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1と加圧ロールF2との押圧部接線Lより熱定着ロールF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ロールF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ロールF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接して位置決めされる。
【0124】
耐熱ベルトF3を加圧ロールF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ロールF2で安定して駆動するには、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗等によって不安定になる場合がある。
【0125】
そこで、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロールF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱等に対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ロールF2で安定して駆動することができるようになる。
【0126】
更に、クリーニング部材F6が加圧ロールF2とベルト張架部材F4との間に配置されており、このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、この凹部F4fは、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0127】
ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ロールF1に加圧ロールF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。そして、シート材F5はニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ロールF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、シート材F5上に形成された未定着トナー像F5aが定着され、その後、熱定着ロールF1への加圧ロールF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0128】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、乾燥微粒子製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
【0129】
また、前述した実施形態では、水系分散媒除去工程で得られた乾燥微粒子を一旦回収した後、分散工程に供するものとして説明したが、乾燥微粒子を粉体として回収することなく、直接、分散工程に供してもよい。例えば、図示のような乾燥微粒子製造装置は、高絶縁性液体を貯留し、かつ、製造された乾燥微微粒子が供給される分散部を有するものであってもよい。これにより、液体現像剤をより効率良く製造することができるとともに、乾燥微粒子間での不本意な凝集等をより効果的に防止することができる。
【0130】
また、図7に示すように、ヘッド部M2に、音響レンズ(凹面レンズ)M25が設置されていてもよい。このような音響レンズM25が設置されることにより、例えば、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)を、吐出部M23付近の圧力パルス収束部M26で収束させることができる。その結果、圧電素子M22が発生した振動エネルギーを、水系懸濁液3を吐出させるためのエネルギーとして、効率よく利用することができる。したがって、分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3が比較的高粘度のものであっても、確実に吐出部M23から吐出させることができる。また、分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3が凝集力(表面張力)の比較的大きいものであっても、微細な液滴として吐出することが可能となるため、容易かつ確実に、乾燥微粒子(トナー粒子)9の粒径を比較的小さい値にコントロールすることができる。
このように、図示のような構成とすることにより、水系懸濁液3として、より粘度の高い材料や、凝集力の大きい材料を用いた場合であっても、乾燥微粒子4を所望の形状、大きさにコントロールすることができるので、材料選択の幅が特に広くなり、所望の特性を有するトナーをさらに容易に得ることができる。
【0131】
また、図示のような構成とした場合、収束した圧力パルスにより水系懸濁液3を吐出させるため、吐出部M23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、吐出する水系懸濁液3の大きさを比較的小さいものにすることができる。すなわち、乾燥微粒子4の粒径を比較的小さくしたい場合であっても、吐出部M23の面積を大きくすることができる。これにより、水系懸濁液3が比較的高粘度のものであっても、吐出部M23における目詰まりの発生等をより効果的に防止することができる。
【0132】
音響レンズとしては、凹面レンズに限定されず、例えば、フレネルレンズ、電子走査レンズ等を用いてもよい。
さらに、図8〜図10に示すように、音響レンズM25と吐出部M23との間に、吐出部M23に向けて、収斂する形状を有する絞り部材M13等を配置してもよい。これにより、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)の収束を補助することができ、圧電素子M22が発生した圧力パルスをさらに効率よく利用することができる。
【0133】
また、前述した実施形態では、トナーの構成成分が固形成分として、分散質中に含まれるものとして説明したが、トナーの構成成分の少なくとも一部は、分散媒中に含まれていてもよい。
また、前述した実施形態では圧電パルスによりヘッド部から分散液(水系懸濁液)を間欠的に吐出するものとして説明したが、分散液の吐出方法(噴射方法)としては、他の方法を用いることもできる。例えば、分散液を吐出(噴射)する方法としては、スプレードライ法や、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法等の方法のほか、「分散液を、ガス流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄層流とし、当該薄層流を前記平滑面から離して微小な液滴として噴射するようなノズルを用いて、分散液を液滴状に噴射する方法(特願2002−321889号明細書に記載されたような方法)」等を用いてもよい。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、液体(分散液)を噴射(噴霧)させることにより、液滴を得る方法である。また、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法を適用した方法としては、特願2002−169348号明細書に記載された方法等が挙げられる。すなわち、分散液を吐出(噴射)する方法として、「気体の体積変化によりヘッド部から分散液を間欠的に吐出する方法」を適用することができる。
【0134】
また、乾燥微粒子の形成は、分散液(水系懸濁液)の吐出により行うものでなくてもよい。例えば、水系懸濁液をろ過することにより、分散質に相当する微粒子を濾別し、これを乾燥微粒子としてもよい。
また、前述した実施形態では、水系懸濁液中の各分散質に対応する大きさ、形状の乾燥微粒子を得るものとして説明したが、乾燥微粒子は、例えば、水系懸濁液の複数個の分散質に対応する微粒子が凝集(接合)してなる凝集体であってもよい。
【0135】
また、前述した実施形態では、混練物の粉砕物を用いて水系乳化液の調製を行うものとして説明したが、混練物の粉砕工程等は省略してもよい。
また、水系乳化液、水系懸濁液の調製方法は、前述したような方法に限定されない。例えば、固体状態の分散質が分散した分散液を加熱することにより、分散質を一旦液状として水系乳化液を得、当該水系乳化液を冷却することにより水系懸濁液を得てもよい。
【0136】
また、前述した実施形態では、水系乳化液を用いて一旦水系懸濁液を得た後、当該水系懸濁液を用いて乾燥微粒子を製造するものとして説明したが、水系懸濁液を介することなく、水系乳化液から直接乾燥微粒子を得る構成であってもよい。例えば、水系乳化液を液滴状に吐出し、当該液滴から分散媒中の溶媒とともに分散媒を除去することにより乾燥微粒子を得てもよい。
【実施例】
【0137】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
まず、自己分散型樹脂としての、側鎖に−SO基(スルホン酸Na基)を有するスチレン樹脂(軟化温度:75℃):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。自己分散型樹脂は、当該自己分散型樹脂100g中に、−SO基を0.1mol有するものであった。
これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0138】
次に、この原料(混合物)を、図1に示すような2軸混練押出機を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長は160cmとした。
また、プロセス部における原料の温度が125〜135℃となるように設定した。
また、スクリューの回転速度は120rpmとし、原料の投入速度は20kg/時間とした。
このような条件から求められる、原料がプロセス部を通過するのに要する時間は約4分間である。
なお、上記のような混練は、脱気口を介してプロセス部に接続された真空ポンプを稼動させることにより、プロセス部内を脱気しつつ行った。
【0139】
プロセス部で混練された原料(混練物)は、ヘッド部を介して2軸混練押出機の外部に押し出した。ヘッド部内における混練物の温度は、130℃となるように調節した。
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図1中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約40℃であった。
混練物の冷却速度は、−9℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却工程が終了するのに要した時間は、10秒であった。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.5mmの粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
【0140】
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、このよう溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
【0141】
前記水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が3μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
その後、温度、100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は25.0wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は1.8μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0142】
上記のようにして得られた懸濁液を、図2、図3に示す構成の乾燥微粒子製造装置の水系懸濁液供給部内に投入した。水系懸濁液供給部内の水系懸濁液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部に供給し、吐出部から分散媒除去部に吐出(噴射)させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。なお、水系懸濁液供給部内における水系懸濁液の温度は、25℃になるように調節した。
【0143】
水系懸濁液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を25℃、圧電体の振動数を10kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される水系懸濁液の一滴分の吐出量を4pl(粒径:20.8μm)に調整した状態で行った。また、水系懸濁液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、水系懸濁液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0144】
また、水系懸濁液の吐出時には、ガス噴射口から温度:25℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、45℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約1.5kPaであった。分散媒除去部の長さ(搬送方向の長さ)は1.0mであった。
また、分散媒除去部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に水系懸濁液(乾燥微粒子)が付着するのを防止するようにした。
分散媒除去部内において、吐出した水系懸濁液から分散媒が除去され、各分散質に対応する形状、大きさの多数の乾燥微粒子(トナー粒子)が形成された。
分散媒除去部で形成された乾燥微粒子をサイクロンにて回収した。回収された乾燥微粒子の含水量は0.42wt%であった。
【0145】
次に、回収された乾燥微粒子を、高絶縁性液体中に分散させることにより液体現像剤を得た。高絶縁性液体としては、アイソパーH(エクソン化学社製):360重量部を用いた。この高絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は1.5×1015Ωcm、高絶縁性液体の誘電率は2.2であった。
【0146】
(実施例2〜4)
混練物のトルエン溶液調製時におけるトルエンの使用量、水系乳化液の調製時における水系液体の攪拌条件、溶液の滴下速度を変更することにより、水系乳化液中における分散質の平均粒径、含有率を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0147】
(実施例5)
混練物の調製において、自己分散型樹脂として、側鎖に−PO基を有するスチレン(軟化温度:105℃)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。なお、自己分散型樹脂は、当該自己分散型樹脂100g中に、−PO基を0.1mol有するものであった。
【0148】
(比較例1)
乳化液の調製に混練物ではなく、スチレン樹脂(前記実施例1で用いたのと同様のスチレン樹脂):80重量部と、シアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部との混合物を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0149】
(比較例2)
まず、前記実施例1と同様にして混練物の粗粉砕物(平均粒径:1.5mm)を得た。
次に、ジェットミル粉砕機を用いて、この粗粉砕物を微粉砕し、平均粒径:3.5μmの微粉末とした。
その後、上記のようにして得られた微粉砕物を、高絶縁性液体としてのアイソパーH(エクソン化学社製)中に分散させることにより、液体現像剤を得た。この高絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は1.5×1015Ωcm、高絶縁性液体の誘電率は2.2であった。
【0150】
(比較例3)
オクタデシルメタクリレート:100g、トルエン:150gおよびイソプロパノール:50gの混合溶液を窒素気流下攪拌しながら温度75℃に加温した。2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸):30gを加え8時間反応した。冷却後、メタノール:2リットル中に再沈し白色粉末を凝集後、乾燥した。得られた白色粉末:50g、酢酸ビニル:3.3g、ハイドロキノン:0.2gおよびトルエン:100gの混合物を温度40℃に加温して、2時間反応した。次に70℃に昇温し、100%硫酸:3.8×10−3mlを加え10時間反応した。温度25℃まで冷却し酢酸ナトリウム三水和物:0.02gを加え30分間攪拌した後、メタノール:1リットル中に再沈し、凝集後、乾燥し、分散安定用樹脂を得た。
【0151】
次に、得られた上記の分散安定用樹脂:12g、酢酸ビニル:100g、オクタデシルメタクリレート:1.0gおよびアイソパーH:384gの混合液を窒素気流下攪拌しながら温度70℃に加温した。2,2’−アゾビス(イソバレロニトリル):0.8gを加え6時間反応した。開始剤添加後20分して白濁を生じ、反応温度は88℃まで上昇した。温度を100℃に上げ2時間攪拌し未反応の酢酸ビニルを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し白色ラテックス粒子を得た。平均粒径は0.26μmであった。
【0152】
さらに、ドデシルメタクリレート/アクリル酸共重合体:10g、ニグロシン:10gおよびアイソパーG:30gをガラスビーズと共にペイントシェーカー(東京精機製)に入れ、4時間分散しニグロシンの微小分散物を得た。
上記の白色ラテックス粒子:30g、上記ニグロシン分散物:2.5g、オクタデセン/半マレイン酸オクタデシルアミド共重合体:0.07gをアイソパーG:1リットルに希釈することにより液体現像剤を得た。
【0153】
(比較例4)
混練物の調製において、自己分散型樹脂の代わりに、分子内に親水性官能基を有さないスチレン樹脂(軟化温度:120℃)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして水系懸濁液の調製を試みた。しかしながら、上記スチレン樹脂で構成された微粒子を分散させることができなかった。すなわち、水系懸濁液を得ることができなかった。したがって、比較例4では、液体現像剤を得ることができなかった。
【0154】
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造条件を、分散液の吐出安定性の評価とともに表1に示した。なお、液滴の吐出安定性の評価は、均一な大きさ(平均粒径のばらつきが5%以下)の液滴を長時間(6時間以上)にわたって安定的に吐出することができたものを「良」、分散液の吐出開始から3時間以内に吐出液滴の大きさのばらつきが極端に大きくなったもの(平均粒径のばらつきが5%以上)を「不良」で示した。
【0155】
【表1】

【0156】
表1から明らかなように、本発明では、液滴の吐出を安定的に行うことができたのに対し、比較例1〜3では、液滴の吐出を安定的に行うことができなかった。
[2]液体現像剤の評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、画像濃度、解像度および保存性の評価を行った。
【0157】
[2.1]画像濃度
図4に示すような画像形成装置、図6に示すような定着装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙上に形成し、記録紙上の画像濃度を、X−Rite社製の色彩色差計により測定した。
[2.2]解像力
図4に示すような画像形成装置、図6に示すような定着装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙上に形成し、目視にて解像力を調べた。
【0158】
[2.3]保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:15〜25℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
○:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
△:トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められる。
×:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がはっきりと認められる。
【0159】
これらの結果を、トナー粒子の平均円形度R、円形度標準偏差、個数基準の平均粒径、粒径標準偏差とともに表2に示す。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0160】
【表2】

【0161】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤では、いずれも、トナー粒子の円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものであった。また、トナー粒子の形状のばらつき(円形度の標準偏差)も小さかった。
これに対し、比較例の液体現像剤では、トナー粒子の形状、大きさのばらつきが大きかった。また、比較例の液体現像剤では、トナー粒子が不定形状をなし、円形度も低かった。
【0162】
また、表2から明らかなように、本発明の液体現像剤は、画像濃度、解像度および保存性に優れていた。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
また、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0163】
また、乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造を、図3に示すような構成のものから、図7〜図10に示すような構成のものに変更して、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。また、図7〜図10に示すようなヘッド部を備えた乾燥微粒子製造装置では、比較的高粘度(分散質の含有率の高い)分散液でも好適に吐出することができた。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】水系乳化液の調製に用いる混練物を製造するための混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の液体現像剤の製造に用いられる乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置)の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図2に示す乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図4】本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の液体現像剤が適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【図7】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図8】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図9】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図10】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0165】
K1…混練機 K2…プロセス部 K21…バレル K22、K23…スクリュー K24…固定部材 K25…脱気口 K3…ヘッド部 K31…内部空間 K32…押出口 K33…横断面積漸減部 K4…フィーダー K5…原料 K6…冷却機 K61、K62、K63、K64…ロール K611、K621、K631、K641…回転軸 K65、K66…ベルト K67…排出部 K7…混練物 M1…乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置) M2…ヘッド部 M21…分散液貯留部 M22…圧電素子 M221…下部電極 M222…圧電体 M223…上部電極 M23…吐出部 M24…振動板 M25…音響レンズ M26…圧力パルス収束部 M3…分散媒除去部 M31…ハウジング M311…縮径部 M4…水系懸濁液供給部(水系分散液供給部) M41…攪拌手段 M5…回収部 M7…ガス噴射口 M8…電圧印加手段 M10…ガス流供給手段 M101…ダクト M11…熱交換器 M12…圧力調整手段 M121…接続管 M122…拡径部 M123…フィルター M13…絞り部材 P…ポンプ 3…水系懸濁液(水系分散液) 31…分散質 32…分散媒(水系分散媒) 4…乾燥微粒子(トナー粒子) 9…液滴 P1…画像形成装置 P2…感光体 P3…帯電器 P4…露光 P10…現像器 P11…現像剤容器 P12…塗布ローラ P13…現像ローラ P14…液体現像剤塗布層 P15…メータリングブレード P16…ローラ芯体 P17…現像ローラクリーニングブレード P18…中間転写ローラ P19…二次転写ローラ P20…情報記録媒体 P21…除電光 P22…クリーニングブレード P23…クリーニングブレード P24…帯電ブレード F40…定着装置 F1…熱定着ロール(加熱ロール) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ロール基材 F1c…弾性体 F2…加圧ロール F2a…回転軸 F2b…ロール基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…シート材 F5a…未定着トナー像 F6…クリーニング部材 F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を製造する方法であって、
着色剤と樹脂材料とを含む材料を混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中にトナー用材料で構成された分散質が分散した水系乳化液を得る水系乳化液調製工程と、
前記水系分散媒を除去して、乾燥微粒子を得る水系分散媒除去工程と、
前記乾燥微粒子を前記高絶縁性液体中に分散させる分散工程とを有し、
前記樹脂材料として自己分散型樹脂を用いることを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項2】
前記自己分散型樹脂は、その分子内に親水基を含むものである請求項1に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項3】
前記親水基は、−COO基および/または−SO基である請求項2に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項4】
前記自己分散型樹脂に含有されている前記親水基のmol数が前記自己分散型樹脂100gに対して0.001〜0.050molである請求項2または3に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項5】
前記水系乳化液中の分散質の平均粒径は、0.01〜5μmである請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項6】
前記混練工程は、前記樹脂材料の軟化温度以上の温度で行う請求項1ないし5のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項7】
前記混練物の少なくとも一部を溶解可能な溶媒に溶解して得られる溶液を用いて、前記水系乳化液の調製を行う請求項1ないし6のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項8】
前記水系乳化液から前記溶媒を除去することにより得られる水系懸濁液を前記水系分散媒除去工程に供する請求項7に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項9】
前記水系乳化液を用いて、固形の分散質が前記水系分散質中に分散した水系懸濁液を得、当該水系懸濁液を前記水系分散媒除去工程に供する請求項1ないし8のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項10】
前記水系懸濁液中の分散質の平均粒径は、0.01〜5μmである請求項8または9に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする液体現像剤。
【請求項12】
トナー粒子の平均粒径が0.1〜5μmである請求項11に記載の液体現像剤。
【請求項13】
各トナー粒子間での粒径の標準偏差が3.0μm以下である請求項11または12に記載の液体現像剤。
【請求項14】
トナー粒子についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)が0.85以上である請求項11ないし13のいずれかに記載の液体現像剤。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【請求項15】
各粒子間での平均円形度の標準偏差が0.15以下である請求項11ないし14のいずれかに記載の液体現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−178118(P2006−178118A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370232(P2004−370232)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】