説明

液体現像剤調製システムおよびそれを備えた画像形成装置

【課題】画像の濃度および画像の定着性を確保することが可能な液体現像剤を調製する液体現像剤調製システムおよびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】液体現像剤調製システム50は、調製容器51中の着色粒子の濃度を検出する着色粒子濃度検出部と、調製容器51中の樹脂の濃度を検出する樹脂濃度検出部と、調製容器51中の第1キャリア液C1と第2キャリア液C2との混合比を検出する混合比検出部と、着色粒子C3の濃度、樹脂C4の濃度および混合比に基づいて第1供給手段71、第2供給手段72、第3供給手段73および第4供給手段74を選択的に制御して、第1キャリア液C1、第2キャリア液C2、着色粒子C3および樹脂C4を調製容器51に供給することにより、所定の着色粒子濃度、所定の樹脂濃度および所定の混合比を有する液体現像剤を調製する調製制御部56とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤を調製する液体現像剤調製システムおよびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体現像剤を用いてシート上に画像を形成する画像形成装置は、現像装置において画像形成に用いられなかった液体現像剤を回収して、該液体現像剤を再利用可能に調製する液体現像剤調製システムを含む(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の液体現像剤調製システムは、回収された液体現像剤中で回転する攪拌部材と、攪拌部材の回転トルクを計測するトルク計と、回転トルクと液体現像剤の濃度との間の関係を示すデータテーブルとを有する。液体現像剤調製システムは、データテーブルを参照して回転トルクを濃度に換算することで濃度を検出し、その濃度に基づいて濃度調整剤を液体現像剤に加えることで、液体現像剤を再利用可能に調製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−219068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の液体現像剤調製システムは、濃度検出によって画像の濃度を安定化させることができるものの、液体現像剤には他の成分も含まれているため、濃度検出だけでは、例えば画像のシートに対する定着性を確保することが難しい。画像の定着性が確保されないと、画像がシートから剥がれ易い。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、画像の濃度および画像の定着性の両方を確保することが可能な液体現像剤を調製する液体現像剤調製システムおよびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体現像剤調製システムは、シート上に画像を形成するために用いられる液体現像剤であって、着色粒子と、前記着色粒子を前記シート上に定着させるための樹脂と、前記着色粒子が分散される第1キャリア液と、前記樹脂が溶解される第2キャリア液とを含む液体現像剤を調製するための調製容器と、前記第1キャリア液を貯留する第1タンクと、前記第2キャリア液を貯留する第2タンクと、前記着色粒子を貯留する第3タンクと、前記樹脂を貯留する第4タンクと、前記第1タンクから前記第1キャリア液を前記調製容器に供給する第1供給手段と、前記第2タンクから前記第2キャリア液を前記調製容器に供給する第2供給手段と、前記第3タンクから前記着色粒子を前記調製容器に供給する第3供給手段と、前記第4タンクから前記樹脂を前記調製容器に供給する第4供給手段と、前記調製容器中の前記着色粒子の濃度を検出する着色粒子濃度検出部と、前記調製容器中の前記樹脂の濃度を検出する樹脂濃度検出部と、前記調製容器中の前記第1キャリア液と前記第2キャリア液との混合比を検出する混合比検出部と、前記着色粒子の前記濃度、前記樹脂の前記濃度および前記混合比に基づいて前記第1供給手段、前記第2供給手段、前記第3供給手段および前記第4供給手段を選択的に制御して、前記第1キャリア液、前記第2キャリア液、前記着色粒子および前記樹脂を前記調製容器に供給することにより、所定の着色粒子濃度、所定の樹脂濃度および所定の混合比を有する液体現像剤を調製する調製制御部とを含む。
【0008】
本発明に係る液体現像剤調製システムでは、第1キャリア液には、着色粒子が分散されるため、第1キャリア液の割合は、画像の濃度に影響する要素であり、一方、第2キャリア液には、樹脂が溶解されるため、第2キャリア液の割合は、画像のシートに対する定着性に影響する要素である。そして、本発明に係る液体現像剤調製システムの調製制御部は、着色粒子の濃度および樹脂の濃度に加え、第1キャリア液と第2キャリア液との混合比に基づいて液体現像剤を適正に調製する。したがって、このように調製された液体現像剤を用いることで、画像の濃度および画像のシートに対する定着性の両方を確保することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、前記着色粒子濃度検出部は、前記着色粒子の濃度と透過率との間の関係を予め求めて作成した第1テーブルと、前記着色粒子の実際の透過率を測定する透過率センサとを有し、前記第1テーブルを参照することで、前記透過率を前記着色粒子の前記濃度に換算し、前記樹脂濃度検出部は、前記樹脂の濃度と前記液体現像剤の粘度との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第2テーブルと、前記樹脂の前記濃度と前記液体現像剤の導電率との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第3テーブルと、前記液体現像剤の実際の粘度を測定する粘度センサと、前記液体現像剤の実際の導電率を測定する導電率センサとを有し、前記第2テーブルおよび前記第3テーブルを参照することで、前記粘度および前記導電率を前記樹脂の濃度に換算し、前記混合比検出部は、前記第1キャリア液と前記第2キャリア液との混合比と前記液体現像剤の粘度との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第4テーブルと、前記混合比と前記液体現像剤の導電率との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第5テーブルと、前記粘度センサと、前記導電率センサとを有し、前記第4テーブルおよび前記第5テーブルを参照することで、前記粘度および前記導電率を前記混合比に換算する。
【0010】
液体現像剤の透過率は着色粒子の濃度のみに依存する一方、液体現像剤の粘度は、樹脂の濃度および混合比に大きく依存し、液体現像剤の導電率は、着色粒子の濃度、樹脂の濃度および混合比に依存する。つまり、樹脂の濃度および混合比のそれぞれは、1つの物性を測定するだけでは、正確に得られない。そこで、本発明に係る液体現像剤調製システムでは、樹脂の濃度を得るために、第2テーブルおよび第3テーブルを予め作成すると共に、混合比を得るために、第4テーブルおよび第5テーブルを予め作成している。これにより、液体現像剤の粘度および導電率を、樹脂の濃度に正確に換算することができると共に、混合比にも正確に換算することができる。
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、液体現像剤を用いた画像が形成される像担持体と、前記液体現像剤を用いて前記画像を形成する現像動作を行う現像装置と、前記現像動作で用いられなかった液体現像剤を回収する回収部と、上記構成の液体現像剤調製システムとを含み、前記液体現像剤調製システムは、前記回収部が回収した前記液体現像剤を再利用可能に調製する。
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、現像動作で用いられなかった液体現像剤を再利用可能に調製する液体現像剤調製システムを有しているので、現像装置の現像動作に伴って変動しやすい、第1キャリア液と第2キャリア液との混合比が適正に調整される。これにより、本発明に係る画像形成装置は、画像の濃度および画像のシートに対する定着性を確保することが可能な液体現像剤を用いて画像を形成することができるので、高画質の画像を提供することができる。
【0013】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記現像装置は、前記像担持体に前記液体現像剤を供給する現像ローラを含み、前記回収部は、前記現像ローラが前記像担持体に前記液体現像剤を供給した後に前記現像ローラに対して前記第2キャリア液を供給して、前記現像ローラ上の樹脂を除去する。
【0014】
現像ローラ上の樹脂を除去するために、第2キャリア液が現像ローラに供給される構成の場合であっても、液体現像剤調製システムにより、第1キャリア液と第2キャリア液との混合比が適正に調整される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る液体現像剤調製システムによれば、画像の濃度および画像の定着性の両方を確保することが可能な液体現像剤を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る液体現像剤調製システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】着色粒子の濃度と透過率との間の関係を示す図である。
【図3】樹脂の濃度、混合比および液体現像剤の粘度間の関係を示す図である。
【図4】樹脂の濃度、混合比および液体現像剤の導電率間の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るカラープリンタの全体概略断面図である。
【図6】液体現像剤循環装置の部分を除いた、カラープリンタの概略断面図である。
【図7】液体現像剤循環装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る液体現像剤調製システム50の構成を模式的に示す図である。液体現像剤調製システム50は、液体現像剤を用いてシート上に画像を形成する湿式の画像形成装置に適用される。画像形成装置は、感光体ドラム等の像担持体上の静電潜像に液体現像剤を供給して画像を現像する現像動作を行う現像装置14を含み、液体現像剤調製システム50は、現像装置14の現像動作において用いられなかった液体現像剤を再利用可能に調製する。なお、現像装置14の構成については後で詳述する。
【0018】
具体的には、本実施形態で用いられる液体現像剤は、着色粒子と、着色粒子をシート上に定着させるための樹脂と、着色粒子が分散される第1キャリア液と、樹脂が溶解される第2キャリア液とを含むものであり、現像動作において用いられなかった液体現像剤(以下、回収液体現像剤という)では、着色粒子の濃度、樹脂の濃度および第1キャリア液と第2キャリア液との混合比のそれぞれが所定値から変動している場合が多い。
【0019】
特に、第1キャリア液には、着色粒子が分散されるため、第1キャリア液の割合は、画像の濃度に影響する要素であり、一方、第2キャリア液には、樹脂が溶解されるため、第2キャリア液の割合は、画像のシートに対する定着性に影響する要素である。そして、第1キャリア液は電気絶縁性の特性を有し、一方、第2キャリア液は導電性の特性を有する。したがって、第1キャリア液と第2キャリア液との混合比が所定値から変動してしまうと、画像の濃度および画像のシートに対する定着性が確保され難くなる。
【0020】
第1キャリア液と第2キャリア液との混合比は現像動作を繰り返していると変動しやすい。混合比が変動する要因として、第2キャリア液の樹脂に対する高い溶解性が挙げられる。第2キャリア液は樹脂に対して親和性が高いため、樹脂の周りには第2キャリア液のほうが第1キャリア液よりも多く存在し、現像動作に伴って樹脂が感光体ドラムに移動する際に第2キャリア液のほうが第1キャリア液よりも多く感光体ドラムに移動しやすい。そのため、混合比が変動する。また、第2キャリア液が第1キャリア液よりも着色粒子に対して高い親和性を有している場合も、現像動作に伴って着色粒子が感光体ドラムに移動する際に第2キャリア液のほうが第1キャリア液よりも多く感光体ドラムに移動しやすい。そのため、混合比が変動する。
【0021】
さらに、現像装置14の現像ローラのクリーニング性を向上させるために、現像動作の終了後に現像ローラに対して第2キャリア液を添加して、現像ローラに付着した樹脂を除去する構成(つまり、樹脂を溶解させて現像ローラから剥がれ易くする構成)を採用している場合、現像ローラのクリーニング後に第2キャリア液の添加量に対応する所定量の第1キャリア液を液体現像剤に加えても、現像動作を繰り返していると、実際には、混合比が変動することがある。
【0022】
そこで、本実施形態に係る液体現像剤調製システム50は、着色粒子の濃度および樹脂の濃度だけでなく、混合比も所定値となるように回収液体現像剤を調製する。液体現像剤の成分については後で詳述する。
【0023】
液体現像剤調製システム50は、調製容器51と、分析部52と、着色粒子濃度換算部53と、樹脂濃度換算部54と、混合比換算部55と、調製制御部56とを含む。
【0024】
調製容器51は、回収液体現像剤RDを貯留することが可能な容器であって、現像装置14と回収パイプ57および供給パイプ58によって接続されている。回収パイプ57には、回収ポンプ59が配設されており、供給パイプ58には、供給ポンプ60が配設されている。現像装置14の現像動作において用いられなかった液体現像剤は、回収ポンプ59の駆動によって調製容器51に供給される。液体現像剤調製システム50によって調製容器51内で再利用可能に調製された回収液体現像剤RDは、供給ポンプ60の駆動によって現像装置14に再び供給される。
【0025】
また、調製容器51は、第1タンク61と第1パイプ65を介して接続され、第2タンク62と第2パイプ66を介して接続され、第3タンク63と第3パイプ67を介して接続され、第4タンク64と第4パイプ68を介して接続されている。
【0026】
第1タンク61は、着色粒子を分散させるための第1キャリア液C1を貯留する。第1パイプ65には、第1ポンプ71が配設されており、第1ポンプ71の駆動により、第1タンク61から第1キャリア液C1が調製容器51に供給される。第1ポンプ71は、本発明の第1供給手段の一例である。
【0027】
第2タンク62は、樹脂を溶解させるための第2キャリア液C2を貯留する。第2パイプ66には、第2ポンプ72が配設されており、第2ポンプ72の駆動により、第2タンク62から第2キャリア液C2が調製容器51に供給される。第2ポンプ72は、本発明の第2供給手段の一例である。
【0028】
第3タンク63は、着色粒子が分散媒中に分散された着色粒子分散液C3を貯留する。第3パイプ67には、第3ポンプ73が配設されており、第3ポンプ73の駆動により、第3タンク63から着色粒子分散液C3が調製容器51に供給される。第3ポンプ73は、本発明の第3供給手段の一例である。
【0029】
第4タンク64は、樹脂が絶縁性有機溶剤中に溶解された樹脂溶液C4を貯留する。第4パイプ68には、第4ポンプ74が配設されており、第4ポンプ74の駆動により、第4タンク64から樹脂溶液C4が調製容器51に供給される。第4ポンプ74は、本発明の第4供給手段の一例である。
【0030】
さらに、調製容器51は、該調製容器51中で回転可能な攪拌羽根76を有する。攪拌羽根76が回転することで、調製容器51に供給された第1キャリア液C1、第2キャリア液C2、着色粒子分散液C3および樹脂溶液C4が、既に貯留されている回収液体現像剤RDと共に攪拌され、均一に混合される。
【0031】
分析部52は、調製容器51中の回収液体現像剤RDの透過率を測定する透過率センサS1と、調製容器51中の回収液体現像剤RDの粘度を測定する粘度センサS2と、調製容器51中の回収液体現像剤RDの導電率を測定する導電率センサS3とを含む。分析部52は、調製容器51と環状パイプ77によって接続されており、環状パイプ77には、回収液体現像剤RDを調製容器51と分析部52との間で還流させる還流ポンプ75が配設されている。
【0032】
透過率センサS1は、例えば、近赤外線を利用するLEDセンサであって、一対のセルと、発光部と、一対のセルを挟んで発光部の反対側に配置された受光部とを有する。セル間に流通される回収液体現像剤RDに対して発光部から光が放射され、回収液体現像剤RDを透過した透過光が受光部によって受光される。そして、受光量(透過光量)に基づいて回収液体現像剤RDの透過率が検出される。
【0033】
粘度センサS2は、例えば、回収液体現像剤RDに浸漬されるねじれ振動子を有する振動式粘度計であって、そのねじれ振動子を回収液体現像剤RD中で微小振動させ、振動の振幅が回収液体現像剤RDの粘度に応じて変化することを利用するものである。そして、振幅の大きさに基づいて回収液体現像剤RDの粘度が検出される。
【0034】
導電率センサS3は、例えば、一対の電極を有し、電極間で流通される回収液体現像剤RDに対して電圧を印加し、電気抵抗が回収液体現像剤RDの導電率に応じて変化することを利用するものであり、電気抵抗の変化量に基づいて回収液体現像剤RDの導電率が検出される。
【0035】
着色粒子濃度換算部53は、透過率センサS1が測定した回収液体現像剤RDの透過率に基づいて着色粒子の濃度を検出する。液体現像剤の透過率は着色粒子の濃度のみに依存する。言い換えれば、樹脂、第1キャリア液および第2キャリア液は近赤外光を吸収しない。したがって、液体現像剤の透過率を測定することで、着色粒子の濃度を得ることができる。図2は、着色粒子の濃度と透過率との間の関係を示す。図2から、着色粒子の濃度が高くなるにつれて透過率が低下する一方、着色粒子の濃度が低下するにつれて透過率が高くなることが分かる。着色粒子濃度換算部53は、着色粒子の透過率と着色粒子の濃度との間の関係を予め求めて作成した第1テーブルT1を有し、第1テーブルT1を参照することにより、透過率センサS1が測定した透過率を着色粒子の濃度に換算する。これにより、着色粒子の濃度が得られる。本実施形態では、着色粒子濃度換算部53および透過率センサS1が着色粒子濃度検出部を構成する。
【0036】
樹脂濃度換算部54は、粘度センサS2が測定した回収液体現像剤RDの粘度および導電率センサS3が測定した回収液体現像剤RDの導電率に基づいて樹脂の濃度を検出する。混合比換算部55も、粘度センサS2が測定した回収液体現像剤RDの粘度および導電率センサS3が測定した回収液体現像剤RDの導電率に基づいて第1キャリア液C1と第2キャリア液C2との混合比を検出する。
【0037】
液体現像剤の粘度は、樹脂の濃度、および第1キャリア液と第2キャリア液との混合比に大きく依存する。着色粒子の濃度が液体現像剤の粘度に与える影響は小さい。また、液体現像剤の導電率は、着色粒子の濃度、樹脂の濃度および混合比に依存する。図3は、樹脂の濃度、混合比および液体現像剤の粘度間の関係を示す。図3では、混合比A中の第2キャリア液の割合が混合比B中の第2キャリア液の割合よりも大きく設定されている。図3から、樹脂の濃度が混合比Aおよび混合比B間で同一であっても、第2キャリア液の割合が異なっていると、液体現像剤の粘度が異なることが分かる。また、図4は、樹脂の濃度、混合比および液体現像剤の導電率間の関係を示す。図4においても、混合比A中の第2キャリア液の割合が混合比B中の第2キャリア液の割合よりも大きく設定されている。図4から、樹脂の濃度が混合比Aおよび混合比B間で同一であっても、第2キャリア液の割合が異なっていると、液体現像剤の導電率が異なることが分かる。
【0038】
つまり、樹脂の濃度および混合比のそれぞれは、1つの物性を測定するだけでは正確に得られない。そのため、樹脂濃度換算部54は、粘度および導電率の2つの物性を利用して樹脂の濃度を検出し、混合比換算部55も、粘度および導電率の2つの物性を利用して混合比を検出する。
【0039】
そこで、予め、着色粒子の濃度、樹脂の濃度および混合比を様々に異ならせて調製した多数のサンプル(液体現像剤)を用意し、それらのサンプルの透過率、粘度および導電率を測定し、それらの測定結果に基づき、透過率毎に(つまり、着色粒子の濃度毎に)樹脂の濃度および混合比を示す参照テーブルを作成し、樹脂濃度換算部54および混合比換算部55は、その参照テーブルを利用するように構成されている。
【0040】
具体的には、樹脂濃度換算部54は、参照テーブルとして第2テーブルT2および第3テーブルT3を有する。第2テーブルT2は、樹脂の濃度と液体現像剤の粘度との間の関係を着色粒子の濃度毎に予め求めて作成されたものであり、第3テーブルT3は、樹脂の濃度と液体現像剤の導電率との間の関係を着色粒子の濃度毎に予め求めて作成されたものである。そして、樹脂濃度換算部54は、第2テーブルT2および第3テーブルT3を参照することで、回収液体現像剤RDの粘度および導電率を樹脂の濃度に換算する。これにより、回収液体現像剤RD中の樹脂の濃度が得られる。
【0041】
また、混合比換算部55は、参照テーブルとして第4テーブルT4および第5テーブルT5を有する。第4テーブルT4は、混合比と液体現像剤の粘度との間の関係を着色粒子の濃度毎に予め求めて作成されたものであり、第5テーブルT5は、混合比と液体現像剤の導電率との間の関係を着色粒子の濃度毎に予め求めて作成されたものである。そして、混合比換算部55は、第4テーブルT4および第5テーブルT5を参照することで、回収液体現像剤RDの粘度および導電率を混合比に換算する。これにより、回収液体現像剤RD中の混合比が得られる。
【0042】
調製制御部56は、第1ポンプ71〜第4ポンプ74を選択的に制御することが可能に構成されている。調製制御部56は、着色粒子濃度換算部53が検出した着色粒子の濃度、樹脂濃度換算部54が検出した樹脂の濃度、および混合比換算部55が検出した混合比に基づき、第1ポンプ71〜第4ポンプ74を選択的に制御して、第1タンク61中の第1キャリア液C1、第2タンク62中の第2キャリア液C2、第3タンク63中の着色粒子分散液C3、および第4タンク64中の樹脂溶液C4を調製容器51に供給させる。調製制御部56は、選択した第1ポンプ71〜第4ポンプ74の、例えば動作時間を制御することで、動作時間に応じた所定量の第1キャリア液C1、第2キャリア液C2、着色粒子分散液C3および樹脂溶液C4を調製容器51に供給させる。これにより、調製容器51中の回収液体現像剤RDは、所定の着色粒子濃度、所定の樹脂濃度および所定の混合比を有する液体現像剤として再利用可能に調製される。
【0043】
また、調製制御部56は、還流ポンプ75を制御することが可能に構成されている。調製制御部56は、回収液体現像剤RDを再利用可能に調製するにあたり、まず、還流ポンプ75を制御して、調製容器51中の回収液体現像剤RDを分析部52に導く。そして、分析部52の透過率センサS1、粘度センサS2および導電率センサS3のそれぞれは、回収液体現像剤RDの透過率、粘度および導電率を測定する。上述したように、着色粒子濃度換算部53は、第1テーブルT1を参照して透過率を着色粒子の濃度に換算し、樹脂濃度換算部54は、第2テーブルT2および第3テーブルT3を参照して、粘度および導電率を樹脂の濃度に換算し、混合比換算部55は、第4テーブルT4および第5テーブルT5を参照して、粘度および導電率を混合比に換算する。その後、調製制御部56は、着色粒子の濃度、樹脂の濃度および混合比に基づいて第1ポンプ71〜第4ポンプ74を選択的に制御して、回収液体現像剤RDを再利用可能に調製する。調製された液体現像剤は、供給パイプ58を通って現像装置14に再び供給され、画像形成に用いられる。
【0044】
(画像濃度および定着性に関する実験)
次に、本実施形態に係る液体現像剤調製システム50を用いて行った実験について説明する。実験は、画像の濃度および画像のシートに対する定着性を調べるために行われ、実験では、着色粒子の濃度および樹脂の濃度だけでなく、混合比も調整する実施例と、着色粒子の濃度および樹脂の濃度の調整を行うが、混合比の調整を行わない比較例とが用いられた。
【0045】
実験では、次の成分を有する液体現像剤が用いられた。すなわち、セルロースエーテル(樹脂)としてのエチルセルロース(日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」(エトキシ化率:45〜49.5%))3.8質量部を、第2キャリア液としてのトール油脂肪酸(ハリマ化成社製の「ハートールFA−1」)15.2質量部に溶解させることにより、樹脂溶液を調製した。一方、第1キャリア液としての流動パラフィン(松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−200」)18質量部に、着色粒子としてのシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)5質量部と、分散安定剤としてのルーブリゾール社製のISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」2質量部とを混合・分散させることにより、顔料分散液(着色粒子分散液)を調製した。顔料分散液中の顔料の平均粒子径(D50)は0.5μmであった。そして、樹脂溶液19質量部と顔料分散体25質量部とトール油脂肪酸56質量部で混合することにより、顔料を5質量%、エチルセルロースを3.8質量%含有し、キャリア液全体におけるトール油脂肪酸(第2キャリア液)の含有量が79.8質量%である、シアンの液体現像剤を製造した。このシアン液体現像剤では、混合比は、第1キャリア液:第2キャリア液=20:80であった。
【0046】
また、実験では、実施例および比較例の両方において、現像ローラを116mm/sの回転速度で回転させて周面上に5μmの現像剤層を形成させつつ、かつ、現像ローラに対して4kVを印加して現像剤層を帯電させつつ、印字率が5%の画像を感光体ドラム上に10分間現像した。この後、実施例および比較例の両方において、現像動作に用いられなかった液体現像剤を回収した。回収液体現像剤は、実施例および比較例の両方において65gであった。
【0047】
そして、実施例では、65gの回収液体現像剤を再利用可能に調製するために、回収液体現像剤の透過率、粘度および導電率をそれぞれ、顔料の濃度、樹脂の濃度および混合比に換算した。顔料濃度は5.4%、樹脂濃度は2.9%、混合比は、第1キャリア液:第2キャリア液=16:84であった。次に、実施例では、それらの結果に基づき、顔料分散液を5.0g、樹脂溶液を15.4g、第1キャリア液を3.2g、第2キャリア液を1.5g調製容器内の回収液体現像剤に加えて、回収液体現像剤の顔料濃度、樹脂濃度および混合比が初期の状態となるように調整した。
【0048】
一方、比較例では、65gの回収液体現像剤を再利用可能に調製するために、顔料濃度および樹脂濃度のみに基づき、顔料分散液、樹脂溶液、第1キャリア液および第2キャリア液が調製容器内の回収液体現像剤に加えられた。
【0049】
この後、実施例および比較例の両方において、調製した回収液体現像剤を用いて、印字率が5%の画像をシート上に形成した。画像濃度および画像のシートに対する定着性の評価は、以下の表1に示す通りである。なお、画像濃度は分光濃度計を用いて測定された。また、定着性は、シート上の画像を布で所定回数擦り、画像の周囲が汚れたか否かを目視で確認することにより判定した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すように、実施例では、画像濃度は1.21であった。初期時の液体現像剤を用いて形成した画像の画像濃度は1.23であった。また、実施例では、シート上の画像を所定回数擦っても、画像の周囲が汚れなかった。つまり、画像がシートから剥がれなかった。したがって、実施例によって調製された回収液体現像剤は、画像の濃度および画像のシートに対する定着性の両方を確保できるものであった。
【0052】
一方、比較例では、画像濃度は1.13であった。また、比較例では、シート上の画像を所定回数擦った後、画像の周囲に汚れが確認された。つまり、画像がシートから剥がれた。したがって、比較例によって調製された回収液体現像剤は、画像の濃度および画像のシートに対する定着性の両方を確保できるものではなかった。比較例が画像の濃度および定着性の両方を確保できなかった理由として、混合比に基づいて回収液体現像剤を調製しなかったことが挙げられる。比較例では、顔料濃度は高かったが、第1キャリア液が適切に添加されなかったため、第1キャリア液の割合が低くなり過ぎ、その結果、画像の濃度が確保されなかった。また、比較例では、顔料濃度が高かったことから、顔料と親和性の高い第2キャリア液が顔料の周囲に移動してしまい、樹脂が十分に溶解されなかった。その結果、定着性が確保されなかった。
【0053】
以上説明した本実施形態に係る液体現像剤調製システム50は、着色粒子の濃度および樹脂の濃度に加え、第1キャリア液C1と第2キャリア液C2との混合比に基づいて回収液体現像剤RDを再利用可能に適正に調製する。第1キャリア液C1には、着色粒子が分散されるため、第1キャリア液C1の割合は、画像の濃度に影響する要素であり、一方、第2キャリア液C2には、樹脂が溶解されるため、第2キャリア液C2の割合は、画像のシートに対する定着性に影響する要素である。したがって、着色粒子の濃度、樹脂の濃度および混合比が変動している場合であっても、上述のように回収液体現像剤RDを再利用可能に調製することで、画像の濃度および画像のシートに対する定着性の両方を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る液体現像剤調製システム50では、回収液体現像剤RD中の樹脂の濃度を得るために、第2テーブルT2および第3テーブルT3を予め作成すると共に、回収液体現像剤RD中の混合比を得るために、第4テーブルT4および第5テーブルT5を予め作成している。これにより、回収液体現像剤RDの粘度および導電率を、樹脂の濃度に正確に換算することができると共に、混合比にも正確に換算することができる。
【0055】
(湿式画像形成装置)
図5は、上述の液体現像剤調製システム50が組み込まれたカラープリンタ1(湿式画像形成装置)の概略構成図であり、図6は、液体現像剤循環装置の部分を除いたカラープリンタ1の概略断面図である。図7は、液体現像剤循環装置の構成図である。なお、図5および図6は、画像形成装置としてカラープリンタを例示している。
【0056】
図5に示すように、カラープリンタ1は、画像形成のための様々なユニットや部品が収納される上側本体部1Aと、この上側本体部1Aの下部に配置され、各色用の液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBが収納される下側本体部1Bとから構成されている。
【0057】
図6に示すように、上側本体部1Aには、画像データに基づいて画像を形成するタンデム式の画像形成部2と、シートを収容するシート収納部3と、画像形成部2で形成された画像をシート上に転写する二次転写部4と、画像が形成されたシートを排紙する排出部6と、シート収納部3から排出部6までシートを搬送するシート搬送部7とが含まれている。
【0058】
画像形成部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBとを備える。
【0059】
中間転写ベルト21は、導電性を有する、幅広の、無端状のベルト部材であり、図1において時計回りに循環駆動される。
【0060】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、中間転写ベルト21の下側走行面に沿って並べて配置されている。画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、感光体ドラム10と、帯電装置11と、LED露光装置12と、現像装置14と、一次転写ローラ20と、クリーニング装置26と、除電装置13と、キャリア液除去ローラ30とを備える。
【0061】
円柱状の感光体ドラム10の表面(周面)は、帯電(本実施形態ではプラス極性に帯電)された着色粒子で顕像化された画像を担持可能である。図示される感光体ドラム10は、反時計回りに回転可能である。帯電装置11は、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる。
【0062】
LED露光装置12は、LEDを光源として有し、外部の機器から入力された画像データに基づいて、一様に帯電された感光体ドラム10の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム10の表面に、画像データに基づいた静電潜像が形成される。
【0063】
現像装置14は、液体現像剤を、感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に対向するように保持する。これにより、帯電された液体現像剤で感光体ドラム10表面の静電潜像が顕像化され、画像として現像される。
【0064】
現像装置14は、具体的には、図7に示すように、現像ローラ31、供給ローラ32、ニップ形成ローラ33、規制ブレード35、現像ローラ帯電器34、およびクリーニングブレード36を含む。
【0065】
ニップ形成ローラ33は、現像装置14内で回転可能に配置されたローラである。供給ローラ32は、ニップ形成ローラ33の斜め上方位置でニップ形成ローラ33の回転軸方向に沿って延びるローラである。ニップ形成ローラ33は、供給ローラ32に当接した状態で配置されている。これにより、ニップ形成ローラ33と供給ローラ32との間には、供給ニップ部が形成されている。液体現像剤は、供給ノズル39から供給ニップ部に吐出される。図7では、ニップ形成ローラ33は、反時計方向に回転され、供給ローラ32は、時計方向に回転される。
【0066】
供給ニップ部NPに吐出された液体現像剤は、供給ニップ部において一時的に滞留された後、ニップ形成ローラ33および供給ローラ32の回転に伴って供給ニップ部を通過し、供給ローラ32の周面上に保持された状態で上方に運ばれる。供給ローラ32の周面には、液体現像剤を保持するための溝が形成されている。
【0067】
規制ブレード35は、その先端が供給ローラ32の周面に圧接されている。その圧接状態により、規制ブレード35は、供給ローラ32の周面上の液体現像剤の量が所定量になるように規制する。また、規制ブレード35は、例えば、ウレタンゴム等の材料から形成されている。規制ブレード35によって掻き落とされた余剰の液体現像剤は、自然落下に従って現像装置14内の溝部40で受け取られる。溝部40は、規制ブレード35によって掻き落とされた液体現像剤を回収する第1回収路を構成しており、液体現像剤は第1搬送スクリュー45の回転によって液体現像剤回収容器70に搬送される。
【0068】
現像ローラ31は供給ローラ32と接するように配置されている。現像ローラ31は、ニップ形成ローラ33や供給ローラ32に平行に延び、図7では時計方向に回転される。したがって、現像ローラ31と供給ローラ32とが接するニップ部では、現像ローラ31の周面は供給ローラ32の周面と逆方向に移動する。これにより、現像ローラ31の周面に、供給ローラ32の周面に保持されている液体現像剤が受け渡される。供給ローラ32上の液体現像剤の層厚が所定値に規制されているので、現像ローラ31の周面に形成される液体現像剤層の層厚も所定値に保たれる。
【0069】
現像ローラ帯電器34は、着色粒子の帯電極性と同極性の帯電電位を与えることで、現像ローラ31に担持された液体現像剤層中の着色粒子を現像ローラ31の周面側に移動させ、現像効率を向上させる作用を果たすものである。現像ローラ帯電器34は、現像ローラ31の回転方向から見て現像ローラ31と供給ローラ32との間のニップ部よりも下流側であって、現像ローラ31と感光体ドラム10との間のニップ部よりも上流側において、現像ローラ31の周面に対向するように設けられている。
【0070】
現像ローラ31は、感光体ドラム10に接しており、感光体ドラム10との間でニップ部を形成している。感光体ドラム10の周面上の静電潜像の電位と現像ローラ31に印加される現像バイアスとの電位差により、着色粒子が感光体ドラム10の周面上に移動して静電潜像が現像される。これにより、着色粒子像が感光体ドラム10の周面上に形成される。
【0071】
現像ローラ31の回転方向から見て感光体ドラム10の下流側の位置には、図略のクリーニングローラが配置されている。クリーニングローラはその周面が現像ローラ31の周面に接触している。これにより、現像ローラ31の周面上に残留する液体現像剤が掻き落とされる。掻き落とされた液体現像剤は、現像装置内の溝部46に受け取られる。
【0072】
クリーニングブレード36は、現像ローラ31の回転方向から見て前記クリーニングローラよりもさらに下流側に配置され、その先端部が現像ローラ31の周面に接触している。これにより、前記クリーニングローラによって掻き落とされなかった現像ローラ31の周面上に残留する液体現像剤がさらに掻き落とされる。掻き落とされた液体現像剤は、クリーニングブレード36の表面に沿って流下し、溝部46に受け取られる。溝部46は、液体現像剤の第2回収路として構成される。第2回収路46内の液体現像剤は、第2搬送スクリュー47の回転により、第2回収路46と第1回収路40とを連通させる合流路48に導かれる。その後、合流路48に導かれた液体現像剤は、第1回収路40を通って液体現像剤回収容器70に搬送される。
【0073】
図6に戻り、一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21と接触している位置で、中間転写ベルト21に着色粒子と逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧を印加する。中間転写ベルト21は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト21の表面側及びその周辺に着色粒子が引き付けられる。つまり、感光体ドラム10の表面に現像された画像が中間転写ベルト21に転写される。
【0074】
クリーニング装置26は、感光体ドラム10から中間転写ベルト21に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置である。
【0075】
除電装置13は、除電用の光源を有し、次の周回による画像形成に備えて、クリーニング装置26による液体現像剤の除去後、感光体ドラム10の表面を光源からの光によって除電する。
【0076】
略円柱状のキャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10と中間転写ベルト21とが接触する位置よりも二次転写部4が配置されている側に配置されており、中間転写ベルト21の表面からキャリア液を除去する。
【0077】
シート収容部3は、上側本体部1Aの下部に配置されると共に、シートを収容する給紙カセット(図示せず)を含む。
【0078】
二次転写部4は、中間転写ベルト21上に形成された画像をシートに二次転写する。二次転写部4は、中間転写ベルト21を支持する支持ローラ41と、支持ローラ41に対向して配置された二次転写ローラ42とを有する。
【0079】
二次転写部4の上側には、搬送ローラ8,8が備えられている。上側本体部1Aの上面に設けられた排出部6には、画像が転写され、画像の定着が完了したシートが排出される。シート搬送部7は、複数の搬送ローラ対を備え、シート収容部3から、二次転写部4を経て、排出部6までシートを搬送する。
【0080】
本実施形態に係る上側本体部1Aでは、次に説明する液体現像剤を用いることにより、シートに転写された画像を熱や光のエネルギーを用いてシートに定着させる定着工程を経ることなく、シートに転写された画像をシートに定着させることができる。
【0081】
(液体現像剤)
本実施形態に係る液体現像剤は、上述したように、着色粒子と、着色粒子を分散させるための第1キャリア液と、樹脂であるセルロースエーテルと、セルロースエーテルが溶解された第2キャリア液とを含む。
【0082】
着色粒子として、顔料を結着樹脂に分散させたトナーではなく、顔料そのものを用いる。そのような顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0083】
第1キャリア液は電気絶縁性の液体キャリアの役割を果たし、液体現像剤の電気絶縁性を高める。第1キャリア液としては、例えば、25℃における体積抵抗が1010Ω・cm以上(換言すれば導電率が100pS/cm以下)の有機溶剤が好ましい。第1キャリア液としては、例えば、流動パラフィン等の、常温で液体の脂肪族炭化水素が用いられる。
【0084】
樹脂であるセルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が例えばヒドロキシル基等によって置換されていてもよい。セルロースエーテルによって形成された被膜は、強靭性、熱安定性等に優れている。
【0085】
第2キャリア液としては、セルロースエーテルを溶解させることができるもの(セルロースエーテルの溶解度が相対的に高いもの)が用いられる。第2キャリア液として、例えば、植物性の油、動物性の油、鉱物性の油等の油類が挙げられ、これらのうちでも植物性の油が好ましく、さらには植物性の油のうちでも、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)が用いられる。
【0086】
本実施形態で用いられる液体現像剤では、セルロースエーテルは、第2キャリア液に溶解した状態で存在しており、画像のシートへの定着のメカニズムはおよそ次のようなものである。すなわち、現像装置14内に貯留されている液体現像剤中のセルロースエーテルは、第2キャリア液に溶解した状態で存在している。この状態は、現像ローラ31上、感光体ドラム10上、中間転写ベルト21上においても同様である。もっとも、液体現像剤中に占める第2キャリア液の比率は次第に低減していくが、液体現像剤中のセルロースエーテルは第2キャリア液に溶解した状態のままである。そして、二次転写部4により、画像が中間転写ベルト21からシートに転写されると、第2キャリア液中のセルロースエーテルと第1キャリア液に分散された着色粒子(顔料)とはシートの表面に残留する一方、第1キャリア液および第2キャリア液はシートの内部に吸収される。これに伴い、シートの表面上において第2キャリア液中のセルロースエーテルの濃度が高くなり、飽和溶解量を超える。飽和溶解量を超えたセルロースエーテルは、シートの表面上に留まっている顔料を被覆しつつ、シートの表面上に留まって被膜を形成する。このセルロースエーテルの被膜によって顔料がシートに定着されることとなり、熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、顔料つまりシートに転写された画像をシートに定着させることができ、湿式画像形成装置における消費エネルギーの削減が図られる。
【0087】
また、第1キャリア液は電気絶縁性である一方、第2キャリア液は導電性であるため、キャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くならないように留意する。液体現像剤の導電率が過度に高くなると、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性がある。一方、液体現像剤の導電率を低く抑えると、つまり、第2キャリア液の量が少なくなると、セルロースエーテルを良好に溶解させることが難しくなる。その結果、画像のシートに対する定着性が低下する。したがって、第1キャリア液と第2キャリア液との混合比は、画像の濃度および画像のシートに対する定着性の両方が得られるように調整される。
【0088】
(液体現像剤循環装置)
次に、液体現像剤の供給及び回収系統について説明する。図7は、一つの液体現像剤循環装置LCの全体の概略を示すブロック図である。他の液体現像剤循環装置LM、LY、LBも同じ構成である。液体現像剤循環装置LCは、現像装置14へ液体現像剤を供給すると共に、現像に利用されずに回収された液体現像剤を循環させ、再利用するための液体現像剤調製システムである。
【0089】
液体現像剤循環装置LCは、液体現像剤回収容器70、現像剤調製容器272、分析部273、第1キャリアタンク281、第2キャリアタンク282、樹脂溶液タンク283、顔料分散液タンク284、現像剤リザーブタンク277、調整制御部277、換算部278および複数のポンプP1〜P12を含む。
【0090】
液体現像剤回収容器70は、第1パイプ83を介して現像剤調製容器272に接続されている。第1パイプ83には、第1ポンプP1が配設されており、液体現像剤回収容器70に回収された液体現像剤は、第1ポンプP1の駆動によって現像剤調製容器272に送られる。
【0091】
現像剤調製容器272は、回収された液体現像剤を貯留するための容器である。現像剤調製容器272内において、第1キャリア液、第2キャリア液、樹脂溶液、及び顔料分散液が回収液体現像剤に加えられることで、回収液体現像剤が再利用可能に調製される。調製された回収液体現像剤は、現像装置14に再度供給される。
【0092】
分析部273は、現像剤調製容器272内の回収液体現像剤の透過率を測定する透過率センサ、回収液体現像剤の粘度を測定する粘度センサ、および回収液体現像剤の導電率を測定する導電率センサを有する。分析部273は、現像剤調製容器272に接続されている環状の第2パイプ84に接続されている。また、第2パイプ84には、第2ポンプP2が取り付けられている。現像剤調製容器272内の回収液体現像剤は、第2ポンプP2の駆動により第2パイプ84を通って分析部273へ導かれる。
【0093】
第1キャリアタンク281は、第2キャリア液を貯留するタンクである。第2キャリアタンク282は、第1キャリア液を貯留するタンクである。第1キャリアタンク281は、現像剤調製容器272と第3パイプ85で接続されており、第3パイプ85には、第3ポンプP3が配設されている。また、第3パイプ85は、流路変更部291が備えられている。流路変更部291には、現像装置14の現像ローラ31に向かって延びるクリーニングパイプ292が接続されている。第3ポンプP3を駆動させ、流路変更部291を切り替えることによって、第1キャリアタンク281から、第2キャリア液が現像剤調製容器272および現像ローラ31のいずれか一方に選択的に供給される。第2キャリア液が流路変更部291によってクリーニングパイプ292を通って現像ローラ31に供給されると、現像ローラ31上に残留する樹脂が溶解される。これにより、クリーニングブレード36によって現像ローラ31上の液体現像剤が回収されやすくなる。
【0094】
第2キャリアタンク282は、現像剤調製容器272と第4パイプ86で接続されており、第4パイプ86には、第4ポンプP4が配設されている。第4ポンプP4の駆動によって、第2キャリアタンク282から現像剤調製容器272に第2キャリア液が供給される。
【0095】
樹脂溶液タンク283は、樹脂溶液を貯留するタンクである。樹脂溶液タンク283は、現像剤調製容器272と第5パイプ87で接続されており、第5パイプ87には、第5ポンプP5が配設されている。第5ポンプP5の駆動によって、樹脂溶液タンク283から現像剤調製容器272に、樹脂溶液が供給される。
【0096】
顔料分散液タンク284は、顔料分散液を貯留するタンクである。顔料分散液タンク284は、現像剤調製容器272と第6パイプ88で接続されており、第6パイプ88には、第6ポンプP6が配設されている。第6ポンプP6の駆動によって、顔料分散液タンク284から現像剤調製容器272に、顔料分散液が供給される。
【0097】
現像剤調製容器272内には、液体現像剤を攪拌するための攪拌装置276が配設されている。攪拌装置276によって攪拌させることによって、現像剤調製容器272内へ導入された第1キャリア液、第2キャリア液、樹脂溶液、及び顔料分散液が、現像剤調製容器272内の既存の回収液体現像剤と均一に混合することができる。
【0098】
換算部278は、分析部273で測定された透過率、粘度および導電率を、それぞれ顔料の濃度、樹脂の濃度および第1キャリア液と第2キャリア液との混合比に換算する。
【0099】
調製制御部277は、換算部278によって換算された顔料濃度、樹脂濃度および混合比に基づき、第3ポンプP3、第4ポンプP4、第5ポンプP5および第6ポンプP6を選択的に制御して、第1キャリア液、第2キャリア液、樹脂溶液および顔料分散液を現像剤調製容器272に供給させる。これにより、現像剤調製容器272中の回収液体現像剤は、所定の顔料濃度、所定の樹脂濃度および所定の混合比を有する液体現像剤に調製され、再利用可能となる。
【0100】
現像剤リザーブタンク277は、供給ノズル39を介して現像装置14に補給する液体現像剤を収納するタンクである。現像剤リザーブタンク277は、現像剤調製容器272と第7パイプ871で接続されており、第7パイプ871には、第7ポンプP7が配設されている。第7ポンプP7の駆動によって、現像剤調製容器272から現像剤リザーブタンク277に液体現像剤が供給される。
【0101】
また、現像剤リザーブタンク277は、供給ノズル39と供給チューブ872によって接続されている。供給チューブ872には、第8ポンプP8が配設されており、第8ポンプP8の駆動によって液体現像剤が現像剤リザーブタンク277から供給ノズル39に供給される。
【0102】
さらに、現像剤リザーブタンク277は、第1キャリアタンク281と、第1直結管路911で接続されている。また、現像剤リザーブタンク277は、第2キャリアタンク282と、第2直結管路912で接続されている。また、現像剤リザーブタンク277は、樹脂溶液タンク283と、第3直結管路913で接続されている。また、現像剤リザーブタンク277は、顔料分散液タンク284と、第4直結管路914で接続されている。第1直結管路911、第2直結管路912、第3直結管路913、及び第4直結管路914には、第9ポンプP9、第10ポンプP10、第11ポンプP11、第12ポンプP12が、それぞれ配置されている。すなわち、現像剤リザーブタンク277には、第1キャリアタンク281、第2キャリアタンク282、樹脂溶液タンク283、及び顔料分散液タンク284から、第1キャリア液、第2キャリア液、樹脂溶液、及び顔料分散液を直接的に供給されることが可能となっている。第1直結管路911、第2直結管路912、第3直結管路913、及び第4直結管路914からの、第1キャリア液、第2キャリア液、樹脂溶液、及び顔料分散液の供給系統は、未だ回収液体現像剤が発生していないカラープリンタ1の使用開始時等に、既知の配合比に従って速やかに液体現像剤を生成する場合に活用される。
【0103】
なお、第1キャリアタンク281及び第2キャリアタンクには、ブラック、マゼンタおよびイエローの各色用の現像剤調製容器が接続されているとともに、ブラック、マゼンタおよびイエローの各色用の現像剤リザーブタンクが接続されている。
【0104】
上記構成の画像形成装置1は、現像装置14の現像動作で用いられなかった液体現像剤を回収し、回収した液体現像剤を再利用可能に調製する液体現像剤循環装置(液体現像剤調製システム)を有しているので、現像装置14の現像動作に伴って変動しやすい顔料濃度および樹脂濃度だけでなく、第1キャリア液と第2キャリア液との混合比が適正に調整される。これにより、画像形成装置1は、画像の濃度および画像のシートに対する定着性を確保することが可能な液体現像剤を用いて画像を形成することができるので、高画質の画像を提供することができる。
【0105】
また、本実施形態では、第2キャリア液を現像ローラ31に供給して現像ローラ31上の樹脂を除去する構成、言い換えれば、混合比の変動が発生し得る構成を採用しているが、液体現像剤循環装置により、第1キャリア液と第2キャリア液との混合比が適正に調整される。
【符号の説明】
【0106】
1 画像形成装置
50 液体現像剤調製システム
51 調製容器
53 着色粒子濃度換算部
54 樹脂濃度換算部
55 混合比換算部
56 調製制御部
61 第1タンク
62 第2タンク
63 第3タンク
64 第4タンク
71 第1ポンプ
72 第2ポンプ
73 第3ポンプ
74 第4ポンプ
C1 第1キャリア液
C2 第2キャリア液
C3 着色粒子分散液
C4 樹脂溶液
S1 透過率センサ
S2 粘度センサ
S3 導電率センサ
T1 第1テーブル
T2 第2テーブル
T3 第3テーブル
T4 第4テーブル
RD 回収液体現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上に画像を形成するために用いられる液体現像剤であって、着色粒子と、前記着色粒子を前記シート上に定着させるための樹脂と、前記着色粒子が分散される第1キャリア液と、前記樹脂が溶解される第2キャリア液とを含む液体現像剤を調製するための調製容器と、
前記第1キャリア液を貯留する第1タンクと、
前記第2キャリア液を貯留する第2タンクと、
前記着色粒子を貯留する第3タンクと、
前記樹脂を貯留する第4タンクと、
前記第1タンクから前記第1キャリア液を前記調製容器に供給する第1供給手段と、
前記第2タンクから前記第2キャリア液を前記調製容器に供給する第2供給手段と、
前記第3タンクから前記着色粒子を前記調製容器に供給する第3供給手段と、
前記第4タンクから前記樹脂を前記調製容器に供給する第4供給手段と、
前記調製容器中の前記着色粒子の濃度を検出する着色粒子濃度検出部と、
前記調製容器中の前記樹脂の濃度を検出する樹脂濃度検出部と、
前記調製容器中の前記第1キャリア液と前記第2キャリア液との混合比を検出する混合比検出部と、
前記着色粒子の前記濃度、前記樹脂の前記濃度および前記混合比に基づいて前記第1供給手段、前記第2供給手段、前記第3供給手段および前記第4供給手段を選択的に制御して、前記第1キャリア液、前記第2キャリア液、前記着色粒子および前記樹脂を前記調製容器に供給することにより、所定の着色粒子濃度、所定の樹脂濃度および所定の混合比を有する液体現像剤を調製する調製制御部と、
を備えた液体現像剤調製システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液体現像剤調製システムにおいて、
前記着色粒子濃度検出部は、前記着色粒子の濃度と透過率との間の関係を予め求めて作成した第1テーブルと、前記着色粒子の実際の透過率を測定する透過率センサとを有し、前記第1テーブルを参照することで、前記透過率を前記着色粒子の前記濃度に換算し、
前記樹脂濃度検出部は、前記樹脂の濃度と前記液体現像剤の粘度との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第2テーブルと、前記樹脂の前記濃度と前記液体現像剤の導電率との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第3テーブルと、前記液体現像剤の実際の粘度を測定する粘度センサと、前記液体現像剤の実際の導電率を測定する導電率センサとを有し、前記第2テーブルおよび前記第3テーブルを参照することで、前記粘度および前記導電率を前記樹脂の濃度に換算し、
前記混合比検出部は、前記第1キャリア液と前記第2キャリア液との混合比と前記液体現像剤の粘度との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第4テーブルと、前記混合比と前記液体現像剤の導電率との間の関係を前記着色粒子の前記濃度毎に予め求めて作成した第5テーブルと、前記粘度センサと、前記導電率センサとを有し、前記第4テーブルおよび前記第5テーブルを参照することで、前記粘度および前記導電率を前記混合比に換算する液体現像剤調製システム。
【請求項3】
液体現像剤を用いた画像が形成される像担持体と、
前記液体現像剤を用いて前記画像を形成する現像動作を行う現像装置と、
前記現像動作で用いられなかった液体現像剤を回収する回収部と、
請求項1または2に記載の液体現像剤調製システムと、
を備え、
前記液体現像剤調製システムは、前記回収部が回収した前記液体現像剤を再利用可能に調製する画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記現像装置は、前記像担持体に前記液体現像剤を供給する現像ローラを含み、
前記回収部は、前記現像ローラが前記像担持体に前記液体現像剤を供給した後に前記現像ローラに対して前記第2キャリア液を供給して、前記現像ローラ上の樹脂を除去する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−128089(P2012−128089A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278200(P2010−278200)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】