説明

液体用紙容器

【課題】プラスチック製の注出口栓を備えたゲーブルトップ型液体用紙容器において、本来の容器の強度や耐久性を維持し、容器の解体を容易にできるようにすることである。
【解決手段】板紙を基材層とし、熱融着性を有する表面層/基材層/バリア性を有する中間層/熱融着性を有する裏面層からなる積層板で、前記積層板のブランクを、熱融着性を有する裏面層を裏面とし、折り畳み成形した頂部が切妻屋根形の液体用紙容器において、前記ブランクの左側パネル(120)、表パネル(130)、右側パネル(140)、裏パネル(150)のそれぞれのトップシール板(E)の裏面に微細傷(170)が刻設されたことを特徴とする液体用紙容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒類、果汁飲料、調味料や台所洗剤などの液体内容物に用いる液体用紙容器に関するものであり、詳しくは、使用後の空容器を解体するときに、トップシール部が開封し易い液体用紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体内容物に使用される液体用紙容器は、表面層及び裏面層に熱融着層をもつ板紙を基材層とする積層板を用い、図8に示すようなブランク70を作成する。折り線160を介して連接する背シールパネル110、左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150を横に順に連接するブランク70を作成し、背シールパネル110を裏パネル150と熱融着してスリーブを作成し、このスリーブを液体用充填機に装着し、底部Dを熱融着して封し、液体内容物を充填して頂部Bを熱融着して封しして液体用紙容器90を作成する。この液体用容器90は、図10に示すように、トップシール部A、頂部B、側壁部C、底部Dからなっている。頂部Bが切妻屋根形状で側壁部Cが四角柱状である。また必要に応じては、表パネルの頂部Bの傾斜板に口栓30を突設したものである。
【0003】
ところで、最近環境保全の問題から使用後の液体用紙容器の空容器の分別収集、再商品化が促進されている。しかしながら、前述した従来の液体用紙容器は、使用後の空容器を解体して分別回収するときに、トップシール部のシールが強固であるため、手でトップシール部を開封して容器を解体するには、力を必要とし難しい面がある。
【0004】
このような問題を改善するために、出来るだけ解体し易い提案がなされている。
【0005】
特許文献1によれば、矩形状トップ板の上部に連接されて対向する重ね合わせトップシール板の内面の一部と、折り込み二等辺三角板の上部に連接された折り込みトップシール板の内外面のそれぞれ一部に容器解体用の易剥離性二スが塗布され、対向する重ね合わせトップシール板と折り込みトップシール板とによりヒートシールされたトップシール部を、その突き合わせ対向部の両側部分の剥離層を介して剥離しながら外側に引き出し、トップ部を開封して、更にボトム部を四角底板の三方を切り開いて四角状に開封し、容器を四角筒状体にした後、扁平状に折り畳んで解体するものである。
【0006】
しかし、シール部の一部に剥離剤を塗布して剥離し易くすることは、例えばお酒などのアルコール類の内容物には、容器の落下や郵送時での振動、などでシール部が剥離したりする危険が伴う。特に完全密封性を要求されることから問題である。
【0007】
特許文献2によれば、樹脂からなる最外層及び最内層を備えた包材を所定の形状に成形し、加熱部位によって、融着させシールするときに、融着力を小さくした融着力抑制部位により、融着力を小さくし開封し易くする提案がある。
【0008】
しかし加熱シールして密封容器にするときに、部分的にシール部の樹脂自体の融着力を小さくするため、融着力の管理に難しい面がある。シール強度を低下させ、剥離し易くすることは、輸送時での容器の落下や、振動での漏れの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−87771号公報
【特許文献2】特開2007−168851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液体用紙容器の頂部にプラスチック製の注出口栓を備えたゲーブルトップ型液体用紙容器において、本来の容器の強度や耐久性を維持し、容器の解体を容易にできるようにすることである。容易に扁平状に解体して容器の嵩を縮小できるようにして、分別回収し易くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、板紙を基材層とし、熱融着性を有する表面層/基材層/バリア性を有する中間層/熱融着性を有する裏面層からなる積層板で、
前記積層板のブランクを、熱融着性を有する裏面層を裏面とし、折り畳み成形した頂部が切妻屋根形の液体用紙容器において、
前記ブランクの左側パネル(120)、表パネル(130)、右側パネル(140)、裏パネル(150)のそれぞれのトップシール板(E)の裏面に微細傷(170)が刻設されたことを特徴とする液体用紙容器である。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、前記微細傷(170)が、それぞれのトップシール板(E)の裏面の中央部分に刻設されたことを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器である。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、前記中央部分が、表パネル(130)と裏パネル(150)のそれぞれのトップシール板(E)が重なり合ったトップシール部(A)と、
左側パネル(120)と右側パネル(140)の上部が折り込み成形され、その上部のそれぞれのトップシール板(E)が重なり合ったトップシール部(A)とが、
それぞれ重ね合わせて、ヒートシールされ、その突き合わせ対向部位(180)であることを特徴とする請求項2記載の液体用容器である。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、前記中間層が、酸化珪素または酸化アルミニウムの蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液体紙容器である。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、前記微細傷は、レーザーによってなされ、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに刻設されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0016】
頂部が切妻屋根形の液体用紙容器は、使用後の空容器を別回収するために、まず図5に示す頂部のトップシール部Aを、即ち左側パネル、表パネル、右側パネル、裏パネルのトップシール部を手で開封し、液体用紙容器を解体するものである。本発明のトップシール部Aの開封の仕方は、図6に示すように、まず折り込まれてシールされている左側パネル120のトップシール部120Aと120Aを、右側パネルのトップシール部140Aと140Aを、それぞれ矢印のように剥離する。但し表パネル130と裏パネル150の高さが左側パネル120と右側パネル140より高く設計している場合は、表パネル130と裏パネル150の上部が接着しているので、まずこの部分を剥離することになる。
【0017】
次に図7に示すように、内面どうしが熱融着されている表パネルのトップシール部130Aと左側パネル及び右側パネルのトップシール120Aと140Aとを、また内面どうしが熱融着されている裏パネルのトップシール部150Aと左側パネル及び右側パネルのトップシール120Aと140Aとを、矢印のように剥離して開封するものである。
【0018】
本発明の請求項1によれば、図1、2に示すブランク40、50の左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150のそれぞれのトップシール板Eの裏面に微細傷170が刻設されたことを特徴とする液体用紙容器である。それぞれのトップシール板Eをシールしたトップシール部Aに微細傷が刻設されていることから、図7のように開封するときには、その微細傷170がきっかけとなり開封し易くなる。
【0019】
本発明の請求項2、3によれば、図3に示すブランク60の左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150のそれぞれのトップシール板Eの裏面の中央部分に微細傷170が刻設されたことを特徴とする。またこのブランク60を成形して内容物を挿入後、トップシールして紙容器を形成すると、中央部分が、表パネル130と裏パネル150のそれぞれのトップシール板Eが重なり合ったトップシール部Aと、左側パネル120と右側パネル140の上部が折り込み成形され、その上部のそれぞれのトップシール板Eが重なり合ったトップシール部Aとが、それぞれ重ね合わせて、ヒートシールされ、その突き合わせ対向部位180であることを特徴とする。例えば、図6に示すように、シールされた表パネル130のトップシール部130Aの左半分と左側パネル120のトップシール部120Aの右半分とを、またシールされた右側パネル140のトップシール部140Aの右半分と裏パネル150のトップシール部150Aの左半分とを、それぞれ両手で掴み、外側に引っ張ることで、その突合せ部分180に有する微細傷がきっかけとなり、開封し易くなるのである。
【0020】
即ち、図7に示すように、内面どうしが熱融着されている表パネルのトップシール部130Aと左側及び右側パネルのトップシール120Aと140A、また内面どうしが熱融着されている裏パネルのトップシール部150Aと左側及び右側パネルのトップシール120Aと140Aとを矢印のように剥離して開口し易くしたものである。
【0021】
本発明の請求項4によれば、前記中間層が、酸化珪素または酸化アルミニウムの蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする。液体内容物により酸素バリア、水蒸気バリアが必要なものには、酸化珪素または酸化アルミニウムが好ましい。内容物の金属混入を防ぐ金属探知機が使用できる。また回収されるときに分別回収される。
【0022】
本発明の請求項5によれば、前記微細傷は、レーザーによってなされ、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに刻設されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液体用紙容器である。
【0023】
本発明の液体用紙容器は、板紙を基材層とし、熱融着性を有する表面層/基材層/バリア性を有する中間層/熱融着性を有する裏面層からなる積層板である。この積層体の裏面層からレーザーにより、裏面層には、微細傷を付けずにバリア層を有する中間層のポリエチレンテレフタレートフィルムに微細傷を刻設することで、ピンホール、傷などなく液体内容物の漏れなどがない紙容器を作成することができる。またトップシール部での開封性を向上させることができる。
【0024】
即ち、ブランク60の左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150のそれぞれのトップシール板Eの裏面の中央部に微細傷170が刻設されることは、ブランクを成形後、表パネル130と裏パネル150のそれぞれのトップシール板Eが重なり合ったトップシール部Aと、左側パネル120と右側パネル140の上部が折り込み成形され、その上部のそれぞれのトップシール板Eが重なり合ったトップシール部A
とが、それぞれ重ね合わせて、ヒートシールされ、その突き合わせ対向部位180になる。図6に示すように、手で対向したトップシール部Aを掴み、外側に引っ張るようにすると、ポリエチレンテレフタレートフィルムに刻設した微細傷の部分が弱い強度のために、その部分が剥離のきっかけとなり、板紙の層間から剥がれ、手で容易に剥離してトップシール部を開封することができる。図7に示すようにトップシール部が開封される。
【0025】
トップシール部を角状に引き出し開封した後、開口部から、パネル間の折れ線に沿って切り離し、解体し扁平状態にし、分別回収することができる。この場合は、口栓を有する頂部と側壁部と底部に分離し、側壁部は分別回収し、頂部、底部は燃焼ゴミとして廃棄すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の液体用紙容器の表面の状態の一例を示すブランクの説明図である。
【図2】本発明の液体用紙容器の裏面の状態の一例を示すブランクの説明図である。
【図3】本発明の液体用紙容器の裏面の状態の一例を示すブランクの説明図である。
【図4】本発明の液体用紙容器の微細傷を刻設した部分一例を示す説明図である。
【図5】本発明の液体用紙容器のトップシール部の開封の段階の開口前の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の液体用紙容器のトップシール部の開封の段階の開口途中の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の液体用紙容器のトップシール部の開封の段階の開口後の一例を示す説明図である。
【図8】従来の液体用紙容器の表面の状態の一例を示すブランクの説明図である。
【図9】従来の液体用紙容器の裏面の状態の一例を示すブランクの説明図である。
【図10】従来の液体用紙容器(口栓付)の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の液体用紙容器の一例を示すブランク40の説明図である。ブランクを構成する構成としては、通常坪量が200〜500g/m、密度0.6〜1.1g/cmを基材層とし、表面には15μm〜30μmのポリエチレンを貼り合わせ、その上に印刷層を設けている。
【0029】
基材層の裏面には、ポリエチレン層を介して基材層とバリア層の接着を行い、またバリア層の上に接着剤を介して30μm〜100μmのポリエチレンからなるシーラント層から形成される。バリア層は、紙容器の強度も同時に向上させるために、ポリエチレンレフタレートフィルムに無機酸化物を蒸着したもの、例えばアルミナ蒸着、酸化珪素、アルミ蒸着などを用いることができる。蒸着の厚みは、5nm〜100nmがよい。またポリエチレンレフタレートフィルムの厚みは6〜25μmが使用でき、レーザー加工としては12μmが好ましい。またポリエチレンレフタレートフィルムにアルミニウム箔を貼り合わせたものも使用できる。アルミニウム箔は5〜15μmが使用できる。
【0030】
またバリア層は、ポリエチレンレフタレートフィルムに無機酸化物を蒸着したものが使用できる。このバリア層を積層する面は、シーラント層側にポリエチレンレフタレートフィルムを設けるように積層する方が好ましい。
【0031】
本発明の液体用紙容器の一例を示すブランク40は、図1に示すように背シールパネル110、左側パネル120、表側パネル130、右側パネル140、裏パネル150からなり、各パネルに上部にトップシール板が設けられ、左側パネル、右側パネルの上部には
それぞれ折り込み板があり、その折り込み板にお上部にトップシール板がある。。また背シールパネル、左側パネル120、表側パネル130、右側パネル140、裏パネル150の下部には、それぞれ成形されて密封する底部Dが形成されている。
【0032】
図2は、本発明の液体用紙容器のトップシール部の裏面の状態の一例を示すブランク50の説明図である。図2に示すように、左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150のそれぞれのトップシール板に、レーザーにより微細傷170を刻設されている。
図3は、本発明の液体用紙容器のトップシール部の裏面の状態の一例を示すブランク60の説明図である。図3に示すように、左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150のそれぞれのトップシール板Eの中央部分に、レーザーにより微細傷170を刻設する。即ちバリア性を有する中間層を形成するポリエチレンレフタレートフィルム12μmに微細傷170を刻設する。それぞれのトップシール板Eの中央部分は、ブランクの裏パネル150と表パネル130のそれぞれの重なり合ったトップシール板Eと、右側パネル140と左側パネル120の折り込み成形されたそれぞれのトップシール板Eとを、それぞれ重ねあわせてヒートシールされ、その突き合わせ対向部位180のところに刻設することになる。
【0033】
図4は、本発明の液体用紙容器の微細傷を刻設した部分一例を示す説明図である。液体用紙容器の基材1は、一例を示すと、上から順に印刷層2/ポリエチレン層3/基材層4/ポリエチレン層5/無機酸化物蒸着層6/ポリエチレンテレフタレートフィルム層7/接着層8/ポリエチレン層(シーラント層)9である。ブランクの裏面、即ちシーラント層からレーザー光線を照射することにより、バリア層のポリエチレンテレフタレートフィルム層7に微細傷170を刻設する。レーザーで微細傷を刻設するときは、ブランクの状態で裏面、即ちシーラント層から順次照射し刻設すればよい。
【0034】
レーザーとしては、例えば連続またはパルス発振形式を有する炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザーが挙げられるが、特に本発明の液体用紙容器の積層材料に使用される、ポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミド系フィルムなどの各フィルムなどに吸収する波長10.63μm(赤外線)の炭酸ガスレーザーが好適に使用できる。即ち、この炭酸ガスレーザーの光を集光レンズで集光し、紙容器の積層体の裏面から照射する。シーラント層、接着層には、微細傷を生じさせないように、バリア層を形成するポリエチレンテレフタレートフィルムのみに微細傷を刻設する。
【0035】
図5は、本発明の液体用紙容器10のトップシール部Aの開封の段階の開封前の一例を示す説明図である。液体用紙容器の平面図である。左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150のそれぞれのトップシール板Eがシールされ、平面図では、表パネル130、裏パネル150のトップシール部Aが形成されている。表パネル130の矩形状の板部には、口栓30を設けている。
【0036】
図6は、本発明の液体用紙容器のトップシール部Aの開封の段階の開封途中の一例を示す説明図である。まず折り込まれて表面どうしが熱融着されている左側のトップシール部120Aと右側パネルのトップシール部140Aを矢印のように剥離する。
【0037】
図7は、本発明の液体用紙容器のトップシール部Aの開封の段階の開封後の一例を示す説明図である。例えば、図6に示すように、内面どうしが熱融着されている表パネル130のトップシール部130Aの左半分と、左側パネル120のトップシール部120Aの右半分と、内面どうしが熱融着されている右側パネル140のトップシール部140Aの右半分と、裏パネル150のトップシール部150Aの左半分とを、両手でそれぞれ掴み
、外側に引っ張ることで、その突合せ部分180に有する微細傷がきっかけとなり、開封し易くなる。
【0038】
また、内面どうしが熱融着されている左側パネル120のトップシール部120Aの左半分と、裏パネル150のトップシール部150Aの右半分と、内面どうしが熱融着されている右側パネル140のトップシール部140Aの右半分と、裏パネル150のトップシール部150Aの左半分とを、両手でそれぞれ掴み、外側に引っ張ることで、その突き合わせ対向部位180に有する微細傷がきっかけとなり開封できる。また外側に引っ張ることで、最終的には、図7に示す矢印のように開封させることができる。
【0039】
トップシール部Aの開封は、トップシール部Aのポリエチレンテレフタレートフィルム7に刻設された微細傷170がきっかけとなり、基材層4とバリア層との接着に用いるポリエチレン層5をも破断し、紙の層間で剥離した状態になり、従来の液体用紙容器の開封に比べると容易にできる。
【0040】
レーザーによって、ポリエチレンテレフタレートフィルム7に刻設された微細傷170は、その光線により形成される微細傷の形状は、直線状または点状で連続に、縦方向または横方向に刻設することができる。また線幅も自由に設定できる。特に形状は、限定されず、開封性が向上し開封し易くなればよい。またレーザーによって開封性がコントロールできる。
【0041】
トップシール部Aを開封した後は、従来の液体用紙容器90と同じように解体することができる。即ち、胴部を形成するパネルの折れ線160に沿って切り、側壁部Cから口栓を有した頂部Bを切断し、またシールされた底部Dを切断分離して、得られた側壁部Cのみを分別回収する。切断分離された頂部Bと底部Dは、燃焼ゴミとして廃棄する。
【0042】
図8は、従来の液体用紙容器の表面の状態の一例を示すブランク70の説明図である。図9は、従来の液体用紙容器の裏面の状態の一例を示すブランク80の説明図である。図10は、従来の液体用紙容器(口栓付)90の一例を示す説明図である。従来の液体用紙容器とは、ブランクも紙容器の形状も同一である。本発明の紙容器は。従来の紙容器と比べてトップシール部が易開封になっている。
【0043】
本発明液体用紙容器のブランク40は、基材層の表面には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンを主体とするプレンド樹脂などオレフィン樹脂、またはポリエチレンを主体とするポリエチレンテレフタレート樹脂とのブレンド樹脂などの熱溶融接着性のポリオレフィン樹脂が積層形成することができる。そのポリオレフィン樹脂層の表面または裏面には、適宜なる印刷層(絵柄インキ層)が形成されている。一方、ブランク40の裏面には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンを主体とするブレンド樹脂など熱溶融接着性のポリオレフィン樹脂層からなるシーラント層が積層されている。
【0044】
また、基材層とシーラント層との中間層に、アルミニウム箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルム7にアルミニウム箔、及びアルミニウム蒸着層、酸化ケイ素蒸着層、酸化マグネシウム蒸着層、その他の無機酸化物蒸着層を積層したバリア層を設けている。
【0045】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0046】
坪量350g/mの板紙の表面に、ポリエチレンを30μm押出しラミネートして貼り合わせた。次に中間層に使用するバリア層として、酸化珪素蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。酸化珪素の蒸着層の厚みは30nmとした。ポリエチレン
テレフタレートフィルムは12μを用いた。このポリエチレンテレフタレートフィルム12μの裏面と、シーラント層として直鎖状ポリエチレン60μmをポリウレタン系接着剤を用いて貼り合わせた。シーラント層は予め押出し法により作成した。
【0047】
次に基材層の裏面と上記バリア層の酸化珪素蒸着面とを、ポリエチレン30μmにて押出しラミネートした。
【0048】
このように作成した液体用紙容器の基材を、900ml用液体用紙容器のブランクを作成し、次に左側パネル、表パネル、右側パネル、底パネルのそれぞれのトップシール板の裏面の中央部分に炭酸ガスレーザーを用いて微細傷を縦方向に刻設した。
【0049】
次にこのブランクをスリーブ状に組み立て、その後、底部の成形、組み立て、口栓装着、トップシール板のシールを行って、液体用紙容器を得た。
【実施例2】
【0050】
左側パネル、表パネル、右側パネル、底パネルのそれぞれのトップシール板の裏面の中央部分に炭酸ガスレーザーを用いて微細傷を横方向に刻設した以外は、実施例1と同様に行い液体用紙容器を得た。
【0051】
<比較例1>
左側パネル、表パネル、右側パネル、底パネルのそれぞれのトップシール板の裏面に微細傷を刻設せずに、実施例1と同様に行い液体用紙容器を得た。
【0052】
作成した液体用紙容器を以下の方法で評価した。
【0053】
<開封強度>
屋根形部の開封後に、引っ張り試験機の上下の固定部にトップシール部を差し込み固定して、引っ張り速度300mm/min、試験レンジ・単位0〜100{N}で開封強度を測定した。
【0054】
<剥離面の確認>
開封強度評価後の剥離面を確認し、ポリエチレンテレフタレートフィルムによる紙剥けを良とする。
【0055】
<官能評価>
屋根形部開封後に、両手でトップシール部を掴み、外側に引っ張り、開封を行い、開封し易いか官能にて評価。成人男性・女性30人に対し、70%以上の人が容易に開封できることを○とした。
【0056】
<落下試験>
開封強度が低下した分、落下強度に変化があるか確認した。水を900ml充填した液体用紙容器を、正立で80cmの高さより、コンクリート面に向かって5回落下させて、破袋の有無を確認した。破袋しないを○とした。
【0057】
表1に実施例、比較例の評価結果を示す。
【0058】
【表1】

評価結果から、実施例1、実施例2は、容易に開封ができ、落下試験も○であった。比較例1の従来の容器では、開封強度が強いため、開封ができず、レーザーによる微細傷の刻設効果があり、易開封性を増すことができた。また実施例1、実施例2の微細傷の刻設
の縦方向、横方向の差もなく、剥離面も紙剥けであった。易開封性を増すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
液体用紙容器の頂部において、容易に開封を可能とするとこで、解体性を高め、再資源化の促進に寄与することができる。日本酒、ワイン、焼酎、梅酒などのお酒類、果汁飲料、タレなどの調味料や台所洗剤などの液体内容物を収納する液体用紙容器に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 :本発明の液体用紙容器の基材
2 :印刷層
3 :ポリエチレン層
4 :基材層(板紙)
5 :ポリエチレン層
6 :無機酸化物蒸着層
7 :ポリエチレンテレフタレートフィルム層
8 :接着層
9 :シーラント層
10:本発明の液体用紙容器
20:口栓開口部
30:口栓
40:本発明の液体用紙容器のブランク(表面)
50:本発明の液体用紙容器のブランク(裏面)
60:本発明の液体用紙容器のブランク(裏面)
70:従来の液体用紙容器のブランク(表面)
80:従来の液体用紙容器のブランク(裏面)
90:従来の液体用紙容器(口栓付き)
110:背シールパネル
120:左側パネル
130:表パネル
140:右側パネル
150:裏パネル
160:折れ線
170:微細傷
180:それぞれパネルのトップシール部が突き合わせた対向部位
A :トップシール部
B :頂部
C :側壁部
D :底部
E :トップシール板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙を基材層とし、熱融着性を有する表面層/基材層/バリア性を有する中間層/熱融着性を有する裏面層からなる積層板で、
前記積層板のブランクを、熱融着性を有する裏面層を裏面とし、折り畳み成形した頂部が切妻屋根形の液体用紙容器において、
前記ブランクの左側パネル(120)、表パネル(130)、右側パネル(140)、裏パネル(150)のそれぞれのトップシール板(E)の裏面に微細傷(170)が刻設されたことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項2】
前記微細傷(170)が、それぞれのトップシール板(E)の裏面の中央部分に刻設されたことを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器。
【請求項3】
前記中央部分が、表パネル(130)と裏パネル(150)のそれぞれのトップシール板(E)が重なり合ったトップシール部(A)と、
左側パネル(120)と右側パネル(140)の上部が折り込み成形され、その上部のそれぞれのトップシール板(E)が重なり合ったトップシール部(A)とが、
それぞれ重ね合わせて、ヒートシールされ、その突き合わせ対向部位(180)であることを特徴とする請求項2記載の液体用容器。
【請求項4】
前記中間層が、酸化珪素または酸化アルミニウムの蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液体紙容器。
【請求項5】
前記微細傷は、レーザーによってなされ、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに刻設されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−86864(P2012−86864A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234265(P2010−234265)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】