説明

液体組成物、該液体組成物を用いたカラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート及びインク

【課題】溶剤への溶解性が高く、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有する液体組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、媒体中、一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする液体組成物。


〔一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基を表し、どちらか一方が炭素数7以上を含有するアルキル基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキ、トナー、カラーフィルター、感熱転写記録用シート、樹脂成型品等の製造工程において用いられる液体組成物及びその製造方法に関する。更に、該液体組成物を着色剤とするカラーフィルター用赤色レジスト組成物、感熱転写記録用シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶ディスプレイを始めとするカラー画像の普及が盛んで高画質化への要求が高まっている。カラーフィルターは液晶ディスプレイのカラー表示化には必要不可欠であり、液晶ディスプレイの性能を左右する重要な部品である。従来のカラーフィルターの製造方法としては、染色法、印刷法、インクジェット法、フォトレジスト法等が知られている。中でも、分光特性の制御や再現性を容易にできること、解像度が高いためより高精細なパターニングが可能であることから、近年フォトレジスト法が製造方法の主流となっている。
【0003】
このフォトレジスト法では、一般に着色剤として顔料が用いられている。しかし顔料は一定の粒径を有するため消偏作用(偏光が崩されること)を伴い、液晶ディスプレイのカラー表示のコントラスト比が低下することが知られている。又、顔料を用いた系ではバックライト光の高い透過性を得ることが困難であり、カラーフィルターの明度を向上させるには限界がある。更に、顔料は有機溶剤やポリマーに不溶であるため、着色レジスト組成物は分散物として得られるが、その分散の安定化は難しい。これに対して、染料は一般に有機溶剤やポリマーに可溶であり、着色レジスト組成物中でも凝集を起こさずに安定している。このため、染料を着色剤として用いたレジスト組成物から得られるカラーフィルターは、染料が分子レベルで分散されているため消偏作用がなく、バックライト光の透過性も優れている。これまで、分光特性が良好で表示コントラストの高い画像表示を可能とするため、モノアゾ系色素であるC.I.Acid Red 6を用いた赤色カラーフィルターが報告されている(特許文献1参照)。ブロードバンド化が進むにつれ、より高精細な画像を表示するために、分光特性や、高いコントラスト比が実現できるカラーフィルターの開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−005361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した課題を解決することを目的とする。
【0006】
即ち本発明は、溶剤への溶解性が高く、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有する液体組成物を提供することを目的とする。また、該液体組成物を用いたカラーフィルター用赤色レジスト組成物、感熱転写記録用シート及びインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下の発明によって達成される。
【0008】
即ち、本発明は、少なくとも、媒体中、一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする液体組成物を提供するものである。また、明度が高く赤色の色相に優れるため、分光特性および表示コントラストが高い画像表示を可能とするカラーフィルター用赤色レジスト組成物、感熱転写記録用シート及びインクを提供するものである。
【0009】
【化1】

(一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、どちらか一方が炭素数7以上を含有するアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶剤への溶解性が高く、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有する液体組成物を提供することができる。更に、該液体組成物を用いることで、良好な赤色の色調を有するカラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート及びインクを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一般式(1)で表される化合物(2)のCDCl3中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施するための形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、溶剤への溶解性が高く、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有する液体組成物が得られることを見出した。また、得られた液体組成物を使用した良好な赤色の色調を有するカラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート及びインクを提供することを見出し本発明に至った。
【0013】
【化2】

(一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、どちらか一方が炭素数7以上を含有するアルキル基を表す。)
【0014】
一般式(1)中のR1及びR2におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、または、エチルヘキシル基等の直鎖、分岐、または、環状の炭素数1乃至20個のアルキル基が挙げられる。炭素数が7以上のアルキル基としては、溶剤への溶解性が高いという点で、2−エチルへキシル基等の分岐状のアルキル基が好ましい。特に炭素数8以上の分岐状のアルキル基が好ましい。
【0015】
一般式(1)中のR1及びR2におけるアルコキシアルキル基(−R−O−R’)、特に限定されるものではないが、例えば、3−ブトキシプロピル基、3−(2−エチルヘキシシルオキシ)プロピル基等が挙げられる。これらは、溶剤への溶解性が高いという点で特に好ましい。
【0016】
更に、化合物の安定性を著しく阻害するものでなければ、R1及びR2は置換基を有してもよい。置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基などのアリール基、メチルアミノ基、プロピルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、または、N−エチル−N−フェニル基等のジ置換アミノ基等が挙げられる。
【0017】
本発明にかかる一般式(1)で表される化合物は、公知の方法によって合成することが可能である。
【0018】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法について、一態様を示すが、製造方法がこれに限定されるわけではない。
【0019】
即ち、化号物Aを無水酢酸でアセチル化させ、化合物Bを得ることが出来る。さらに環化させて化合物Cを得る。化合物Cとアミン化合物を縮合させて、本発明の一般式(1)で表わされる化合物を得る。また、各化合物の官能基において必要に応じて、公知の保護・脱保護反応、加水分解等の反応を追加することは、当該事業者には適宜選択可能である。
【0020】
【化3】

【0021】
本発明で一般式(1)で表される化合物は単独、または2種以上での組み合わせ、あるいは公知のマゼンタ顔料や染料を2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0022】
<液体組成物について>
本発明における液体媒体とは、一般式(1)で表される化合物を分散又は溶解できるものであれば特に限定されないが、水または有機溶剤であることが好ましい。
【0023】
本発明の液体組成物は、液体媒体中、一般式(1)で表される化合物を分散処理、または、溶解させることで得られる。
【0024】
本発明の液体組成物は例えば、以下のようにして得られる。液体媒体中に前記一般式(1)、および必要に応じて樹脂を入れ、必要により分散機で機械的せん断力を加えることで、均一な溶液とすることができる。
【0025】
本発明で用いる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
【0026】
本発明の液体組成物中の一般式(1)で表される化合物の量は、液体媒体100質量部に対して1.0乃至30.0質量部、好ましくは2.0乃至20.0質量部、より好ましくは3.0乃至15.0質量部である。一般式(1)で表される化合物の含有量が少なすぎると着色力が低くなり、含有量が多すぎると溶剤に未溶解の化合物が残るため、発色性が悪くなる。
【0027】
本発明で液体組成物は良好な分散安定性を得るために乳化剤を用いて水に分散させることが出来る。乳化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
本発明で用いられる乳化剤として用いられるカチオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0029】
また、アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
さらにノニオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0031】
本発明の液体組成物の媒体に使用し得る有機溶剤としては着色剤の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、変成エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄・窒素含有有機化合物類が挙げられる。
【0032】
また本発明で用いる有機溶剤としては、重合性単量体を用いることもできる。重合性単量体は、付加重合性あるいは縮重合性単量体であり、好ましくは、付加重合性単量体である。具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン化合物を挙げることができる。これらは使用用途に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の液体組成物を重合トナー用途に用いる場合は、上記重合性単量体の中でも、スチレン、または、スチレン系単量体を単独もしくは、他の重合性単量体と混合して使用することが好ましい。特に扱い易さから、スチレンが好ましい。
【0033】
液体組成物にはさらに樹脂を加えてもよい。液体組成物に使用し得る樹脂としては目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。その他ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0034】
本発明の液体組成物を構成する着色剤としては、本発明の液体組成物の分散性を阻害しない限りは、他の着色剤を併用することできる。併用できる着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等、様々なものが挙げられる。
【0035】
本発明の液体組成物は、溶剤への溶解性が高く、鮮やかな色調を有し、その優れた分光特性により、マゼンタの着色剤、好ましくは画像情報の記録用材料として用いることができる。例えば、媒体が水系の場合には、インクジェット用インク、印刷用水性インク、水性塗料、筆記具用水性インク等の着色剤に用いることが出来る。また、媒体が有機溶剤系の場合には、カラーフィルター用レジスト組成物、印刷用油性インク、油性塗料、筆記具用油性インク等の着色剤に用いることが出来る。
【0036】
<カラーフィルター用レジスト組成物について>
本発明の液体組成物は、鮮やかな赤色の色調を有し、その分光特性により赤色用色材、好ましくは、カラーフィルター用着色剤として用いることが出来る。
【0037】
本発明の液体組成物を用いて、カラーフィルター用レジスト組成物を調製する際、他の着色剤と併用して、任意の色のレジスト組成物とすることもできるが、他の着色剤と併用せずに、或いは、本発明の液体組成物の色調を阻害しない程度の量で他の着色剤と併用して、赤色レジスト組成物とすることが好ましい。
【0038】
本発明のレジスト組成物は、少なくともバインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶剤、本発明の液体組成物を1種以上含有してなる。
【0039】
また、基板上に異なる分光特性を持つ二種以上の画素が隣接して配列されてなるカラーフィルターにおいて、その複数の画素(例えば、赤、緑、青)のうち、少なくとも1つに本発明の液体組成物を用いることによって、高透明で高色純度な画素を得ることができるが、更に、染料を混合することで分光特性を改善することもできるため、本発明の液体組成物と染料との混合物を用いてもよい。染料は要望の色相を得るために2種類以上を混合して用いても構わない。
【0040】
本発明の液体組成物の一般式(1)で表される化合物の含有量としては、下記バインダー樹脂の質量に対して、0.01乃至400質量%が好ましく、0.1乃至200質量%がより好ましい。
【0041】
本発明のカラーフィルター用のレジスト組成物に使用できるバインダー樹脂としては、光照射部、あるいは、遮光部が有機溶剤、アルカリ水溶液、水、または市販の現像液によって溶解可能なものであればよく、特に限定されるものではない。更に、作業性、廃棄物処理などの観点からは水あるいはアルカリ現像可能な組成を有すものがより好ましい。
【0042】
このような樹脂としては、一般にアクリル酸やメタクリル酸、2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−ビニルピロリドンやアンモニウム塩を有するモノマーなどに代表されるような親水性のモノマーとアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、N−ビニルカルバゾールなどに代表されるような親油性のモノマーとを適度な混合比で既知の手法で共重合したバインダー樹脂が知られている。これらのバインダー樹脂はエチレン性の不飽和基を有するラジカル重合性のモノマーやオキシラン環、あるいは、オキセタン環を有するカチオン重合性のモノマー、ラジカル発生剤或いは酸発生剤や塩基発生剤との組み合わせによってネガ型、即ち遮光部分が現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる。
【0043】
また、ポリヒドロキシスチレンのtert−ブチル炭酸エステル、tert−ブチルエステル、テトラヒドロキシピラニルエステル、あるいは、テトラヒドロキシピラニルエーテルなどに代表されるバインダー樹脂を使用することもできる。この種のバインダー樹脂は、酸発生剤との組み合わせによってポジ型、即ち光照射部分が現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる。
【0044】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、光の照射によって付加重合するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとして、エチレン性不飽和二重結合を1個以上有する光重合性モノマーを含有する。前記光重合性モノマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物が挙げられる。例えば、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシエチルアクリレートフェノキシエチルメタクリレート等の単官能アクリレートや、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリアクリレート、グリセリントリメタクリレートなどの多官能アクリレートおよびメタクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリンなどの多官能アルコールにエチレンオキシドにプロピレンオキシドを付加した後アクリレート化またはメタクリレート化したものなどの多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0045】
さらに、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸またはメタクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能アクリレートやメタクリレートも挙げられる。上記の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレートが好ましい。
【0046】
エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する光重合成モノマーは、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。前記重合性化合物の含有量としては、着色感光性組成物の質量(全固形分)の5乃至50質量%が一般的であり、特に10乃至40質量%が好ましい。
【0047】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、紫外線硬化性である場合には、光重合開始剤を含有して構成される。該光重合開始剤としては、ビシナールポリケトアルドニル化合物、α−カルボニル化合物、アシロインエーテル、多岐キノン化合物、トリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組み合わせ、トリオキサジアゾール化合物などが挙げられ、好ましくは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(商品名:イルガキュア369、BASF社製)が挙げられる。なお、本発明の着色レジストによる画素の形成に際し、電子線を用いる場合には、上記光重合開始剤は必須ではない。
【0048】
本発明のカラーフィルター用のレジスト組成物は上記バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、着色剤などを溶解若しくは分散させるための溶剤を含有する。使用できる溶剤としては、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤などが挙げられる。これらは単独若しくは混合して用いることができる。
【0049】
以上のように、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、着色剤として本発明の液体組成物を含有して構成されるので、形成される画素の色相が良好で透明性、透光性を向上させることができる。
【0050】
<インクについて>
本発明の液体組成物は、インクとして利用可能である。特に好ましくは、媒体が水系の場合である。また、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を使用しても良い。この際に使用する水溶性有機溶剤は、水溶性を示すものであれば制限はなく、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶剤、含硫黄極性溶剤などが挙げられる。
【0051】
本発明の液体組成物を含有するインクを製造する場合に、インクのpHは特に限定されるものではないが、安全性の面を考慮すると、pH4.0乃至11.0の範囲内のものが好ましい。また、インクジェット用のインクを作製する場合には、インクの保持性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパンなどの保湿性固形分もインクの成分として用いても良い。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般的には、インクに対して0.1質量%以上20.0質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは3.0質量%以上10.0質量%以下の範囲である。
【0052】
更に、インクとする場合には、前記成分以外にも、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0053】
以上説明したようにして、本発明の液体組成物を含有するインクは、熱エネルギーの作用により液滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方式にとりわけ好適に用いられる。本発明の液体組成物を含有するインクは、他のインクジェット記録方法に適用するインクや、一般の筆記用具等の材料としても使用できることはいうまでもない。
【0054】
<感熱転写記録用シートについて>
本発明の感熱転写記録用シートは、基材と色材層を有し、該色材層に本発明の液体組成物を含有することが特徴である。本発明の感熱転写記録用シートにおいては、本発明の液体組成物と共に、明度、彩度に大きな影響を与えない色素化合物であれば、併用して用いてもよい。
【0055】
本発明の感熱転写記録用シートは、通常、本発明の液体組成物を結着剤とともに媒体中に溶解あるいは微粒子状に分散することにより調製したインクを基材であるベースフィルムに塗布、乾燥することにより作製することができるが、本発明はこの方法で作製された感熱転写記録用シートに限定されるわけではない。
【0056】
液体組成物調製のための結着剤としては、様々な樹脂が挙げられる。中でも、セルロース系、アクリル酸系、澱粉系及びエポキシ系等の水溶性樹脂、並びに、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボオネート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリエステル、AS樹脂及びフェノキシ樹脂等の有機溶剤に可溶性の樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種で、又は2種以上併用して用いることができる。液体組成物中の結着剤と一般式(1)で表わされる化合物の使用比率(結着剤:色素化合物)は、質量比で1:2乃至2:1の範囲が適当である。
【0057】
また、液体組成物調製のための媒体としては、水の他に、様々な有機溶剤が挙げられる。中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びイソブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類、トルエン、キシレン及びクロロベンゼン等の芳香族類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム及びトリクロロエチレン等の塩素系溶剤、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、並びに、N−メチルピロリドン等が好ましい。これらの有機溶剤は、1種で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0058】
本発明においては、上記の液体組成物中に、必要に応じて有機または無機の非昇華性微粒子、分散剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、及び、粘度調整剤などを添加することができる。
【0059】
液体組成物を塗布する基材であるベースフィルムとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、コンデンサー紙、グラシン紙等の薄葉紙、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、及び、ポリアラミド等の耐熱性の良好なプラスチックのフィルムが好ましい。基材の厚さは、3乃至50μmであることが好ましい。これらのベースフィルムのうち、ポリエチレンテレフタレートフィルムが機械的強度、耐溶剤性、及び、経済性等の点で特に好ましい。
【0060】
更に、本発明においては、耐熱性やサーマルヘッドの走行性を向上させる目的で、基材の色材層の反対面に潤滑剤、滑性の高い耐熱性微粒子、界面活性剤及び結着剤等熱性樹脂の層を設けることが好ましい。かかる潤滑剤としては、アミノ変性シリコーン化合物、カルボキシ変性シリコーン化合物等が挙げられ、耐熱性微粒子としては、シリカ等の微粒子が、結着剤としては、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0061】
液体組成物をベースフィルムに塗布する方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、バーコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター等が挙げられる。インクは色材層の乾燥後の厚さが0.1乃至5μmの範囲となるように塗布することが好ましい。
【0062】
更に、本発明の感熱転写記録用シートを加熱する加熱手段としては、特に限定されるわけではないが、例えば、サーマルヘッドのみならず赤外線またはレーザー光等も利用することができる。また、ベースフィルムそのものに電気を流すことによって発熱する通電発熱フィルムを用いて、通電型染料転写シートとして用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。得られた反応生成物の同定は、下記に挙げる装置を用いた複数の分析方法によって行った。即ち、使用した分析装置は、1H及び13C核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、質量分析器LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)、UV/Vis分光光度計(UV−36000形分光光度計、島津製作所)を用いた。尚、LC/TOF MSにおけるイオン化法はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を適用した。
【0064】
[一般式(1)で表される化合物の製造]
本発明の一般式(1)で表わされる化合物公知の方法によって合成することも可能である。
【0065】
以下に記載する方法で本発明の一般式(1)で表される化合物を製造した。
【0066】
〈製造例1:化合物(2)の製造例〉
4−ブロモ−1−シクロヘキシルアミノアントラキノン76.9gの1,2−ジクロロベンゼン20g溶液に無水酢酸102gを入れ、濃硫酸1gを入れ110℃で6時間撹拌した。反応終了後、メタノール1000gで希釈してろ過して1−(アセチルシクロヘキシルアミノ)−4−ブロモアントラキノン59.8g(収率70.1%)を得た。さらに、1−(アセチルシクロヘキシルアミノ)−4−ブロモアントラキノンのイソブタノール150gの溶液に苛性ソーダ12g/水150g溶液を滴下し、90℃で6時間撹拌した。反応終了後、冷却し、得られた固体をろ過して4−ブロモ−1,9−N−シクロヘキシルアントラピリドン28.7g(70.4%)を得た。次に、4−ブロモ−1,9−N−シクロヘキシルアントラピリドン20.4gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン40g溶液に2−エチルヘキシルアミン25.8g、炭酸ナトリウム8.6g、銅粉6.8gを仕込み、190℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却して、酢酸エチル希釈してろ過した。カラムクロマトグラフィー精製(トルエン/THF)を行い、18g(収率82.7%)の化合物(2)を得た。図1に、この化合物(2)のCDCl3中、室温・400MHzにおける1H NMRスペクトルを示す。
【0067】
[化合物(2)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.95(td、3H、J=15.1、7.79Hz)、1.34−1.59(m、11H)、1.66(s、2H)、1.87(tt、6H、J=41.7、10.5Hz)、3.35(dt、2H、J=16.2、6.53Hz)、7.20(d、1H、J=10.1Hz)、7.65−7.75(m、3Hz)、8.00(s、1H)、8.24(d、1H、J=7.79Hz)、8.52(dd、1H、J=7.79、1.37Hz)、10.7(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=457.2850(M+H)+
【0068】
<他の色素化合物の製造例>
上記製造例1に準じた方法で、下記表1に示す他の化合物を合成した。これらの化合物の構造は、前記した化合物と同様にして確認した。
【0069】
[化合物(3)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.97(tt、8H、J=20.8、7.17Hz)、1.36(dd、4H、J=9.16、5.50Hz)、1.48−1.60(m、5H)、1.64(s、2H)、1.78(dt、3H、J=20.2、6.98Hz)、3.34−3.39(m、2H)、4.42(t、2H、J=7.79Hz)、7.25(t、2H、J=6.18Hz)、7.65−7.76(m、4Hz)、8.24(d、1H、J=7.79Hz)、8.53(dd、1H、J=7.79、1.37Hz)、10.7(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=430.9556(M+H)+
【0070】
[化合物(4)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.91(td、6H、J=14.7、7.48Hz)、1.29−1.58(m、12H)、1.68(s、2H)、1.90(dd、3H、J=21.5、7.79Hz)、2.14(t、2H、J=13.5Hz)、3.66(s、1H)、4.37(s、2H)、7.25(t、1H、J=6.87Hz)、7.63−7.76(m、4Hz)、8.24(d、1H、J=7.79Hz)、8.51(dd、1H、J=8.01、1.60Hz)、10.7(d、1H、J=7.79Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=456.8830(M+H)+
【0071】
[化合物(5)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.93(tt、12H、J=19.7、7.48Hz)、1.29−1.60(m、15H)、1.76(td、2H、J=13.5、7.94Hz)、1.92(t、1H、J=6.18Hz)、3.35(dt、2H、J=15.9、6.41Hz)、4.36(s、2H)、7.21(d、1H、J=9.62Hz)、7.64−7.75(m、4Hz)、8.23(d、1H、J=7.33Hz)、8.52(dd、1H、J=7.79、1.37Hz)、10.7(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=487.9323(M+H)+
【0072】
[化合物(6)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.98(dt、6H、J=35.7、7.33Hz)、1.35−1.64(m、8H)、1.75−1.82(m、2H)、2.02−2.09(m、2H)、3.46(t、2H、J=6.64Hz)、4.42(t、2H、J=7.79Hz)、7.28(t、2H、J=8.47Hz)、7.70(ddd、4Hz、J=25.3、11.8,5.61Hz)、8.25(d、1H、J=7.79Hz)、8.51(t、1H、J=4.58Hz)、10.6(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=433.2524(M+H)+
【0073】
[化合物(7)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.86−0.90(m、6H)、1.02(t、3H、J=7.33Hz)、1.34(ddd、8H、J=30.3,17.1、6.75Hz)、1.62(s、3H)、1.79(t、2H、J=7.79)、2.05(t、2H、J=6.18Jz)、3.34(d、2H、J=5.95Hz)、3.54−3.60(m、4H)、4.42(t、2H、J=7.79Hz)、7.29(t、1H、J=9.16Hz)、7.70(dq、4Hz、J=24.8、6.03Hz)、8.25(d、1H、J=7.79Hz)、8.51(dd、1H、J=8.01、1.60Hz)、10.6(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=489.3205(M+H)+
【0074】
[化合物(8)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.88(t、3H、J=6.87Hz)、1.02(t、3H、J=7.33Hz)、1.20−1.30(m、16H)、1.53(m、4H)、1.80(dt、4H、J=15.5、8.55)、3.43(q、2H、J=6.41Hz)、4.43(t、2H、J=7.79Hz)、7.24(t、1H、J=7.10Hz)、7.66−7.77(m、4Hz)、8.25(d、1H、J=7.33Hz)、8.52(dd、1H、J=7.79、1.37Hz)、10.6(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=487.3319(M+H)+
【0075】
[化合物(9)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=1.02(t、3H、J=7.33Hz)、1.48−1.81(m、8H)、2.04(t、4H、J=7.56Hz)、2.42(t、2H、J=7.10Hz)、3.48(dd、2H、J=12.4、7.33Hz)、4.39(t、2H、J=7.79Hz)、5.65(s、1H)、7.21(d、1H、J=9.62Hz)、7.68(tt、4Hz、J=17.2、7.40Hz)、8.21(d、1H、J=8.24Hz)、8.49(d、1H、J=7.79Hz)、10.5(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=427.2431(M+H)+
【0076】
[化合物(10)についての分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=1.01(t、3H、J=7.33Hz)、1.51(dd、2H、J=15.1、7.33Hz)、7.75(t、2H、J=6.87)、2.13(t、2H、J=7.33Hz)、8.84(t、2H、J=7.56Hz)、3.39(q、2H、J=6.41Hz)、4.35(d、2H、J=7.79Hz)、7.09(d、1H、J=9.62Hz)、7.23(t、3H、J=6.64Hz)、7.31(t、2H、J=7.56Hz)、7.57(d、1H、J=9.62Hz)、7.62−7.73(m、3Hz)、8.18(d、1H、J=7.79Hz)、8.47(d、1H、J=6.41Hz)、10.6(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=437.2225(M+H)+
【0077】
[液体組成物の製造]
以下に記載する方法で本発明の液体組成物及び比較液体組成物を製造した。
【0078】
<実施例1>
化合物(1)17部とスチレン120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により1時間分散させて本発明の液体組成物(1)を得た。
【0079】
<実施例2乃至10>
実施例1において、化合物(1)を化合物(2)乃至(10)に変更した以外は、実施例1と同様な操作で、液体組成物(2)乃至(10)を得た。
【0080】
<比較例1乃至5>
実施例1において、化合物(1)を下記構造の比較用化合物(1)乃至(5)に変更した以外は実施例1と同様な操作で、比較用液体組成物(1)乃至(5)を得た。
【0081】
【化4】

【0082】
<評価>
[化合物の溶解度調査]
室温下で、化合物(1)乃至(10)及び比較化合物(1)乃至(5)をトルエンに溶解させ、溶解性の評価とした。トルエンへの溶解度が5%以上であれば、高い樹脂相溶性であると判断した。
A:トルエンへの溶解度が10%以上(溶解性が非常に良い)
B:トルエンへの溶解度が3%以上10%未満(溶解性が良い)
C:トルエンへの溶解度が3%未満(溶解性が悪い)
【0083】
[色調評価]
色調の評価を以下のように行った。本発明の液体組成物(1)乃至(10)及び比較液体組成物(1)乃至(5)をバーコート法(Bar No.10)により、隠ぺい率測定紙に塗布して、一晩風乾した。Gretag Macbeth社製 SpectroLinoにて、L***表色系のおける光学濃度及び色度(L*、a*、b*)を測定した。彩度(C*)は色特性の測定値に基づき、下記式によって算出した。
【0084】
【数1】

【0085】
評価は以下のように行った。同じL*におけるC*が大きい程、色調が良好であるといえる。L*が50の時におけるC*の値で評価した。
A:C*が85以上(色調が非常に良い)
B:C*が65以上85未満(色調が良い)
C:C*が65未満(色調が悪い)
【0086】
[着色力評価]
バーコート法(Bar No.10)により、隠ぺい率測定紙に本発明の液体組成物(1)乃至(10)及び比較液体組成物(1)乃至(5)を、単位面積(5cm×5cm)当たりの顔料量が6.5mgとなるように塗布して、一晩風乾した。Gretag Macbeth社製 SpectroLinoにて、L***表色系のおける光学濃度及び色度(L*、a*、b*)を測定した。彩度(C*)は色特性の測定値に基づき、前記式によって算出した。
【0087】
評価を以下のように行った。単位面積当たりの顔料量が同じであるため、C*が大きい程、着色力が高いといえる。
A:C*が80以上(着色力が非常に高い)
B:C*が70以上80未満(着色力が高い)
C:C*が70未満(着色力に劣る)
【0088】
上記のように合成した色素化合物の合成例及び波長の測定結果を表1に、化合物の溶解性、液体組成物の実施例及び比較例の各評価結果を表2にまとめた。表1の化合物中の「*」は置換基の結合部位を表す。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
表1、表2より明らかなように、本発明で得られる液体組成物は対応する比較用液体組成物と比較して溶剤への溶解性が高く、明度、彩度、着色力が高く、色域の広い分光反射特性を有していることが明らかである。
【0092】
<赤色レジスト組成物の調製>
<実施例11>
化合物(3)12部にシクロヘキサノン120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により1時間分散させて液体組成物(11)を調製した。
【0093】
アクリル共重合組成物6.7部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート1.3部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光重合開始剤)0.4部のシクロヘキサノン96部の溶液に、上記液体組成物(1)22部をゆっくり加え室温で3時間撹拌した。これを1.5μmフィルターで濾過することで、赤色レジスト組成物(1)を得た。
【0094】
<実施例12>
実施例11において、化合物(3)を化合物(6)に変更した以外は、実施例11と同様にして液体組成物(12)を調製し、それを用いて赤色レジスト組成物(2)を作製した。
【0095】
<比較例6及び7>
実施例11において、化合物(3)を比較用化合物(1)、(5)に変更した以外は実施例11と同様にして比較用液体組成物(6)及び(7)を調製し、それを用いて比較用赤色レジスト組成物(1)、(2)を作製した。
【0096】
上記で得られた各赤色レジスト組成物を、ガラス上にスピンコートし、その後これを90℃で3分間乾燥させ全面露光し、180℃でポストキュアすることで評価用塗布サンプル(1)及び(2)、比較用塗布サンプル(1)及び(2)を作製した。
【0097】
<インクの調製>
<実施例13>
化合物(4)6部、ドデシル硫酸ナトリウム1.2部の混合物に水60部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により1時間分散させて本発明の液体組成物(13)を得た。さらに、この液体組成物(13)74部にアセチレノールEH(川研ファインケミカル(株)製)1部、エチレングリコール7.5部、グリセリン7.5部、及び尿素7.5部を加え、十分に撹拌させて、インクを作製した。
【0098】
上記で得られたインクをガラス上にスピンコートし、乾燥して、塗布サンプル(3)を作成した。
【0099】
<実施例14>
実施例13において、化合物(4)を化合物(7)に変更した以外は実施例13と同様にして液体組成物(14)を調製した。それを用いてインクを調製し、塗布サンプル(4)を作製した。
【0100】
<比較例8>
実施例13において、化合物(4)を比較用化合物(2)に変更した以外は実施例13と同様にして、比較用液体組成物(8)を調製した。それを用いて比較用インクを調製し、比較用塗布サンプル(3)を作製した。
【0101】
<感熱転写記録用シートの調製>
<実施例15>
化合物(5)5部のメチルエチルケトン45部/トルエン45部の混合溶液に撹拌しながらポリビニルブチラール樹脂(デンカ3000−K;電気化学工業(株)製)5部を少しずつ添加し、液体組成物(15)を得た。
【0102】
上記液体組成物(15)を厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラー;東レ(株)製)上に、乾燥後の厚みが1μmになるように塗布し、乾燥することによって、感熱転写記録用シート(1)を作製した。
【0103】
<実施例16>
実施例15において、化合物(5)を化合物(8)に変更した以外は実施例15と同様にして、液体組成物(16)を調製し、それを用いて感熱転写用記録用シート(2)を作製した。
【0104】
<比較例9>
実施例15において、化合物(5)を比較用化合物(4)に変更した以外は実施例15と同様にして、比較用液体組成物(9)を調製した。それを用いて比較用感熱転写記録用シート(1)を得た。
【0105】
[感熱転写記録用印画紙上の画像の色調評価]
以上のように作製された感熱転写記録用シート(1)及び(2)、比較用感熱転写記録用シート(1)をCP710用インクカセット[キヤノン(株)製]のMagenta部に切貼りし、SELPHY CP710[キヤノン(株)製]を用いて専用の印画紙に画像形成した。形成した画像はMagenta単色のベタ画像である。形成された各画像についてSpectroLino(Gretag Machbeth社製)にてL***表色系における色度(L*、a*、b*)を測定した。彩度(C*)は色特性の測定値に基づき、前記式によって算出した。
【0106】
[色調評価]
評価は以下のように行った。同じL*におけるC*が大きい程、色調が良好であるといえる。L*が50の時におけるC*の値で評価した。評価結果を表3に示す。
A:C*が85以上(色調が非常に良い)
B:C*が65以上85未満(色調が良い)
C:Cが65未満(色調に劣る)
【0107】
【表3】

【0108】
表3より明らかなように、本発明で得られるカラーフィルター用赤色レジスト組成物、インク、感熱転写記録用シートは対応する比較用液体組成物の場合と比較して、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、溶剤への溶解性が高く、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有する液体組成物を得ることができる。この液体組成物を使用することによって発色性、塗膜の仕上がり外観、物理的性質等の塗膜性能に優れ、しかも高濃度化可能な塗料組成物を得ることができる。更に、この液体組成物を使用することによって、発色性、分散安定性が良好で、鮮明性、透明性、発色性などに優れたインキ組成物を得ることができる。また、トナー、インクジェットインク、カラーフィルター用の着色剤、感熱転写記録シート、光記録媒体用の色素としても使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体中に、一般式(1)で表される化合物を含む液体組成物。
【化1】

〔一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、少なくともR1及びR2のどちらか一方が炭素数7以上である。〕
【請求項2】
前記一般式(1)におけるR1及びR2のいずれかが、2−エチルヘキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるR1及びR2のいずれかが、3−ブトキシプロピル基、または、3−(2−エチルヘキシシルオキシ)プロピル基である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用レジスト組成物。
【請求項5】
基材と、該基材上に、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体組成物を、少なくとも1種以上用いて作成される色材層を有することを特徴とする感熱転写記録用シート。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体組成物を、少なくとも1種以上含有してなることを特徴とするインク。

【図1】
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【公開番号】特開2013−47337(P2013−47337A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166751(P2012−166751)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】