説明

液体色材の設計方法

【課題】色材粘度と色材流度の何れもが十分に高い液体色材を、確実に、系統的に、効率的に、簡便に設計する方法、それを用いて決定された液体色材の材料組成と製造方法を提供すること。
【解決手段】ある色材用途に使用したとき優れた色材性能を示す複数種類の液体色材を選択し、それらについて、色材流度F並びにレオメータにより降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを測定し、数値代入法により下記色材流度式(1)におけるm、n及びpを求めて得られた式(1)を用いる液体色材の設計方法であって、
F=A×(S×H×G)+B ・・・(1)
[式(1)中、m、n及びpは0以上の実数であり、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
設計対象の液体色材の色材粘度Eを、上記ある色材用途に応じて十分高く保ちつつ、上記式(1)におけるFの値が所望の値になるように、該設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定する液体色材の設計方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体色材の設計方法に関し、更に詳しくは、特定の色材用途ごとに特定の色材流度式を得て、得られた特定の色材流度式を用いることを特徴とする液体色材の設計方法及びその設計方法で得られた液体色材に関する。
【背景技術】
【0002】
液体色材の物性については、その液体色材の使用方法に直接関係し、その印刷機の使用方法に即した形の測定方法で測定した、液体色材に特化された専用の色材粘度と色材流度があり、例えば、印刷インキ工業連合会や新聞インキ協会がその測定方法と団体規格を規定している。そして、このような液体色材に関する実際の印刷の現象論的物性に関しては、印刷の原理からして、版胴にスムースに印刷インキが載り、画線部にくっきり印刷インキが付着するものが優れているため、印刷インキ等の液体色材の色材粘度と色材流度は、一般に何れも高いことが望ましい。
【0003】
しかしながら、色材粘度の大小と色材流度の大小は裏腹の関係にあり、色材粘度を高く設計しようとすると色材流度は低くなり、色材流度を高く設計しようとすると色材粘度が低くなってしまっていた。
【0004】
従来、色材粘度と色材流度の何れもが十分に高い液体色材を製造するためには、試行錯誤にたよっていた。例えば、種々の材料を使用し、高粘度・低流度の液体色材を高粘度・高流度のインキにしたという技術が報告されている(例えば、特許文献1ないし特許文献4参照)。
【0005】
近年の印刷技術の向上と共に、色材粘度と色材流度の何れもが十分に高い又は所望の値より高い液体色材への要望はますます高くなってきており、かかる試行錯誤では十分にその要求を満足できる液体色材はできなかった。また、そのような液体色材の研究開発効率も極めて悪いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−063497号公報
【特許文献2】特開2006−233035号公報
【特許文献3】特開2004−026910号公報
【特許文献4】特開2003−105243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、色材粘度と色材流度の何れもが十分に高い又は所望の値より高い液体色材を、確実に、系統的に、効率的に、簡便に設計する方法を提供することにある。また、その設計方法を用いて決定された液体色材の材料組成及び液体色材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、一般的なレオロジー測定で得られた基礎物性である降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを用いて、「印刷方法を反映した測定方法で測定された実用物性である色材流度F」を特定の式で表した場合、極めて良い相関が得られることを見出した。すなわち、一般的なレオロジー測定で得られた降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを用いて、数値代入法によりそれぞれの冪であるm、n及びpを求めて得られた「色材流度Fを表す特定の色材流度式」が、液体色材の設計に有用であることを見出した。そして、その色材流度式を用いれば、確実に、系統的に、効率的に、簡便に、色材流度Fの予想がつくため、色材粘度Eと色材流度Fの何れもが十分に高い又は所望の値より高い液体色材を設計する極めて優れた方法が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、特定された一の色材用途に使用したときに優れた色材性能を示す既存の複数種類の液体色材を選択し、該選択された複数種類の液体色材のそれぞれについて、色材流度F、並びにレオメータにより降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを測定し、数値代入法により下記色材流度式(1)におけるm、n及びpを求めて得られた下記色材流度式(1)を用いる液体色材の設計方法であって、
F=A×(S×H×G)+B・・・・・・(1)
[式(1)中、m、n及びpは0以上の実数であり、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
設計対象の液体色材の色材粘度Eを、上記特定された一の色材用途に応じて十分高く保ちつつ、上記色材流度式(1)における色材流度Fの値が所望の値になるように、該設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定することを特徴とする液体色材の設計方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の液体色材の設計方法を用いることを特徴とする液体色材の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記の液体色材の設計方法を用いて製造されたものであることを特徴とする液体色材を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、フレキソ印刷インキ、活版印刷インキ、刷毛塗り塗料、スプレー塗布液又はバーコート液である上記の液体色材を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記問題点を解消し、上記課題を解決し、色材粘度と色材流度の何れもが十分に高い又は所望の値より高い「液体色材の成分組成」及び「液体色材の製造方法」を、確実に、系統的に、効率的に、簡便に設計する方法を提供することができる。また、かかる設計方法によれば、色材粘度と色材流度の何れもが十分に高い又は所望の値より高い液体色材自体を、確実に、系統的に、効率的に、簡便に得ることができる。
【0014】
また、将来、液体色材を構成する材料の化学構造や組成から、液体色材の「降伏項S、粘性項H、弾性項G等のレオロジー基礎物性」がコンピューターで計算できるようになったときには、かかる計算された基礎物性から、液体色材の「色材粘度、色材流度等の実用物性」が予想できるようになり、現象論的な実用物性の値であっても、最初から最後まで殆ど実験せずに分かるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】縦軸(y軸)に、色材流度Fとして、ガラス板流度計で測定した「色材流度F1」をとり、横軸(x軸)に、市販の69種のオフセット印刷インキについて、n、m、pを相関係数が最も大きくなるように求めて、「(σ0.2×[(η0.1−η10)/η0.10.12×G'(5(rad/s)、1(%)、1000(s))0.68)」の値をとったときのxとyの相関を示すグラフである。
【図2】縦軸(y軸)に、色材流度Fとして、静置流動板で測定した「色材流度F2」をとり、横軸(x軸)に、市販の69種のオフセット印刷インキについて、n、m、pを相関係数が最も大きくなるように求めて、「(σ0.4×[(η0.1−η10)/(10−0.1)]0.15×G’(5(rad/s)、1(%)、3000(s))0.45)」の値をとったときのxとyの相関を示すグラフである。
【図3】縦軸(y軸)に、色材流度Fとして、スプレッドメータで測定した「色材流度F3」をとり、横軸(x軸)に、市販の69種のオフセット印刷インキについて、n、m、pを相関係数が最も大きくなるように求めて、「(σ×η(5(rad/s)、1(%)、1000(s))0.12×G'(10(rad/s)、1(%))0.68)」の値をとったときのxとyの相関を示すグラフである。
【図4】縦軸(y軸)に、色材流度Fとして、ロータリータックメータで測定した色材粘着度T1をとり、横軸(x軸)に、市販の69種のオフセット印刷インキについて、n、m、pを相関係数が最も大きくなるように求めて、「(σ×η’(100(rad/s)、100(%))1.0×G')」の値をとったときのxとyの相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0017】
本発明は、まず、特定された一の色材用途に使用したときに優れた色材性能を示す既存の複数種類の液体色材を選択し、該選択された複数種類の液体色材のそれぞれについて、色材流度F、並びにレオメータにより降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを測定し、数値代入法により下記色材流度式(1)におけるm、n及びpを求めて、下記色材流度式(1)を得る。
F=A×(S×H×G)+B・・・・・・(1)
[式(1)中、m、n及びpは0以上の実数であり、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【0018】
本発明において、「液体色材」とは、基材に着色(ここでの色には、白、黒、灰色等の白から黒に至る無彩色も含まれる。)、印字又は描画に使用する材料であり、使用時に流動性があるものを言う。好ましくは更に20℃でも流動性があるものを言う。「特定された一の色材用途」としては、液体色材が用いられる用途であるならば特に限定はないが、オフセット枚葉印刷、オフセット輪転印刷等のオフセット印刷;グラビア印刷;スクリーン印刷;フレキソ印刷;活版印刷;刷毛塗り、スプレー塗布;バーコート等が挙げられる。
【0019】
特定された一の色材用途に使用したときに優れた色材性能を示す既存の複数種類の液体色材を選択する方法は特に限定はないが、市販品は少なくとも使用可能であり優れた液体色材性能を示すと考えられることから、市販品を選択することが好ましい。また、複数種類の液体色材を改めて調製し、その中から優れた色材性能を示す液体色材を複数選択してもよい。上記用途(上記印刷方法)が更に細分化され、その細分化された印刷用途に好適な液体色材を開発するときは、その細分化された印刷用途に使用したときに優れた色材性能を示す既存の複数種類の液体色材を選択する。
【0020】
ここで、「優れた色材性能」には、後述する実用性能である色材粘度E及び/又は色材流度Fが高いことのみならず、それ以外の実用性能(例えば、ローラ間でのインキ転移性、飛散性、乳化性、汚れ性、保存安定性等)に優れていることも含まれる。また、きれいな印刷物が刷り上がる、インキの乗りが良い、スムースな塗布ができる、画線部や非画線部に滲みがない、印刷速度が上げられる、印刷物にカスレがない、着色性に優れる等といった、最終性能に優れていることや、職人的・感覚的に優れていること等も含まれる。ただし、安全性に優れる、価格的に優れる等、液体色材のレオロジーに全く関係のない性質に関するものは除かれる。
【0021】
また、上記「特定された一の色材用途」が特殊な色材用途であるならば、その特殊性を反映した性能に優れていることも含まれる。この場合、既存の複数種類の液体色材をそのように選択すれば、特殊な色材用途の液体色材の設計方法が得られる。
【0022】
選択する液体色材の種類の数は、10〜300個が好ましく、30〜200個がより好ましく、40〜100個が特に好ましい。液体色材の種類の数が少な過ぎると、相関係数Rが十分に大きくならず、色材流度式(1)中のm、n及びpとして信頼性に欠ける値しか得られない場合がある。一方、液体色材の種類の数が多過ぎると、それ以上、相関係数Rが大きくならず、色材流度式(1)中のm、n及びpとして、それ以上信頼性が上がらず、色材流度式(1)を得るのに無駄な時間を費やす場合がある。
【0023】
なお、このように選択された既存の複数種類の液体色材を使用して得られた色材流度式(1)を用いた場合、かかる使用した既存の液体色材の何れよりも、色材粘度Eや色材流度Fがバランス良く大きい液体色材が設計できる可能性は当然にある。
【0024】
色材流度式(1)中の「色材流度F」は、液体色材の使用方法に直接関係した方法で測定されるものである。言い換えれば、液体色材を用いる印刷機の使用方法に即した形の測定方法で測定した現象論的な流度である。すなわち、「色材流度F」は、液体のレオロジーから求められる基礎的な流度ではなく、液体色材の印刷方法を反映した実用物性である。色材流度式(1)は、液体のレオロジーから求められる基礎的な値である「降伏項S」、「粘性項H」及び「弾性項G」と、印刷方法を反映した測定方法で測定された実用物性である「色材流度F」との関係を示す式である。
【0025】
「色材流度F」としては、例えば、印刷インキ工業連合会や新聞インキ協会がその測定方法と団体規格を規定している「新聞オフセット輪転インキの試験方法 団体規格:2000年」記載のものが好ましく用いられる。また、「JIS規格K−5701 平版及び凸版インキの試験方法」で規定しているものも好ましく用いられる。印刷の原理からして、版胴にスムースに印刷インキが載り、画線部にくっきり印刷インキが付着するものが優れているので、印刷インキ等の液体色材の色材流度Fは、一般に高いことが望ましい。液体色材の開発においては、後述する「液体色材の色材粘度E」を大きく保ちつつ、如何に色材流度Fを大きくするかがポイントとなる。
【0026】
上記色材流度式(1)の左辺である「色材流度F」としては、特に限定はないが、具体的には、
(1)ガラス板流度計で測定した色材流度F1(以下単に、「色材流度F1」又は「F1」と略記することがある)
(2)静置流動板で測定した色材流度F2(以下単に、「色材流度F2」又は「F2」と略記することがある)
(3)スプレッドメータで測定した色材流度F3(以下単に、「色材流度F3」又は「F3」と略記することがある)
(4)ロータリータックメータで測定した色材粘着度T1(以下単に、「色材粘着度T1」又は「T1」と略記することがある)
等が挙げられる。
【0027】
これらの測定方法と定義は、上記(2)「色材流度F2」以外は、印刷インキ工業連合会及び新聞インキ協会が発行している「新聞オフセット輪転インキの試験方法 団体規格」(2000年発行)に詳しく記載されている。また、上記(2)「色材流度F2」は、本発明者が作ったもので、実施例にその測定方法と定義が記載されている。「色材流度F2」は、実施例記載の測定方法で測定され、そのように測定された値として定義される。
【0028】
上記4種の「色材流度F」のうちF2を除く3種は、「新聞オフセット輪転インキの試験方法 団体規格:2000年」に、それぞれ以下のように表現されている。
「色材流度F1」 :流動性−ガラス板流度計による方法
「色材流度F2」 :(記載なし、本発明者が作成)
「色材流度F3」 :流動性−スプレッドメータによる方法
「色材粘着度T1」:「粘着性」と表現されている。
【0029】
「新聞オフセット輪転インキの試験方法 団体規格:2000年」に記載のそれぞれの色材流度Fは、測定条件に、例えば、荷重板重量、試験温度、液体色材の使用量、ローラ回転数、分散の経過時間等の可変要因があるものがあるが、そのような可変要因はどのように設定しても、それで得られた色材流度Fは色材流度式(1)の左辺として使用できる。本発明において、測定装置は、より具体的には実施例に記載のものが用いられ、その測定装置で測定されたものとしてそれぞれ定義される。
【0030】
液体色材において、他の性能が同じならば(例えば、後述する色材粘度が同じならば)、色材流度Fは大きいほど好ましい。すなわち、印刷インキ工業連合会や新聞インキ協会がその測定方法と団体規格を規定している「粘着性」は適正な値をもつことが好ましい。
【0031】
上記「選択された複数種類の液体色材」のそれぞれについて、色材流度F1、色材流度F2、色材流度F3、色材粘着度T1等の色材流度Fを測定し、一方で、レオメータにより、降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを測定し、数値代入法により相関係数Rが最も大きくなるように、上記色材流度式(1)におけるm、n及びpを求める。
【0032】
数値代入法により、下記色材流度式(1)におけるm、n及びpを求める方法としては、例えば、具体的には以下がある。
すなわち、例えば、m=0に固定し、n+p=1となるように、n=0、0.1、0.2、0.3、・・・・1.0、及びp=1.0、0.9、0.8、0.7、・・・・0といった、nとpの組み合わせを作り、色材流度式(1)の右辺の値を計算する。以下、同様に、m=0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、・・・・1.0とし、n+p=1−mとなるようにnとpの値を決定し、色材流度式(1)の右辺の値を計算する。
この計算から得られた右辺の値をx軸に、実用物性Fをy軸にとり、一次直線を求め、そのときの相関係数Rを算出する方法が挙げられる。そこでは、相関係数Rが最大になるように、m+n+p=1の条件下で、m、n及びpを決定する。
F=A×(S×H×G)+B・・・・・・(1)
[式(1)中、m、n及びpは0以上の実数であり、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【0033】
本発明は、数あるレオロジー基本物性の中の降伏項S、粘性項H及び弾性項Gにより、色材流度Fを表現した上記色材流度式(1)に特徴がある。
【0034】
降伏項Sとしては、横軸に剪断速度の関数を、縦軸に剪断応力の関数をとり、剪断速度を0に外挿させたときの「剪断応力の関数」であって、かかる「剪断応力の関数」が大きくなれば降伏項Sも大きくなるものであれば特に限定はない。なかでも、降伏項Sとしては、レオメータを用い、剪断速度を変化させて測定した降伏値σであることが好ましい。すなわち、レオメータの定常流測定から得られた粘度曲線において、剪断速度を0に外挿させたときの剪断応力である降伏値σが、レオロジー基本物性であるために好ましい。降伏値σは、例えば、横軸に剪断速度の0.5乗をとり、縦軸に剪断応力の0.5乗をとって求めてもよいし、横軸に剪断速度(の1乗)をとり、縦軸に剪断応力(の1乗)をとって求めてもよい。
【0035】
粘性項Hとしては、「粘度の関数」であって、かかる「粘度の関数」が大きくなれば粘性項Hも大きくなるものであれば特に限定はない。上記条件を満たせば、粘性項Hは粘度のディメンションを有していてもいなくてもよい。なかでも、粘性項Hとしては、下記H1、H2、H3又はH4であることが、せん断速度や時間、及びひずみの依存性を示しており、また、相関が取り易いために好ましい。であるため好ましい。また、m、n及びpを相関係数Rが最大になるように決めて作成した色材流度式(1)の中でも、相関係数Rがより大きい優れた色材流度式(1)が得られる点で好ましい。
【0036】
(H1)レオメータの定常流粘度測定モードを用い、剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点でそれぞれ測定した粘度η及び粘度ηから求めた(η−η)/η
(H2)レオメータの定常流粘度測定モードを用い、剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点でそれぞれ測定した粘度η及び粘度ηから求めた(η−η)/(b−a)
(H3)レオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における複素粘度η(ω,d,t)
(H4)レオメータの動的ひずみ依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における複素粘度η'(ω,d,t)
【0037】
ここで、「定常流粘度測定」とは、例えば、Step Rate Testを言い、「動的時間依存性測定」とは、例えば、Dynamic Time Sweep Testを言い、「動的ひずみ依存性測定」とは例えば、Dynamic Strain Sweep Testを言い、何れも通常の汎用のレオメータに、測定モードとして組み込まれているものである。
【0038】
H1[(η−η)/η]は、粘度のディメンションを有していないが、粘性項Hとして好ましい。H1、H2、H3及びH4において、剪断速度a[s−1]は特に限定はないが、0.01〜1[s−1]の範囲から選ばれることが好ましく、0.05〜0.5[s−1]の範囲から選ばれることが特に好ましい。また、剪断速度b[s−1]は特に限定はないが、1〜100[s−1]の範囲から選ばれることが好ましく、5〜15[s−1]の範囲から選ばれることが特に好ましい。b/aの値は特に限定はないが、10〜1000の範囲から選ばれることが好ましく、30〜300の範囲から選ばれることが特に好ましい。
【0039】
測定の周波数ω[rad・s−1]は特に限定はないが、0.01〜1000[rad・s−1]の範囲から選ばれることが好ましく、0.1〜300[s−1]の範囲から選ばれることが特に好ましい。測定のひずみd[%]は特に限定はないが、0.01〜300[%]の範囲から選ばれることが好ましく、0.03〜100[%]の範囲から選ばれることが特に好ましい。測定時間t[s]とは、動的時間依存性測定の時の時間をいい、特に限定はないが、10秒〜100時間の範囲から選ばれることが好ましく、1分〜10時間の範囲から選ばれることがより好ましく、3分〜3時間の範囲から選ばれることが特に好ましい。
【0040】
粘性項Hとしては、上記H1、H2、H3、H4以外にも、レオメータの測定モードをそれぞれ変化させたものも用いられる。また、損失弾性率G”も用いられ得る。
【0041】
弾性項Gとしては、弾性率の関数であって、かかる「弾性率の関数」が大きくなれば弾性項Gも大きくなるものであれば特に限定はない。なかでも、弾性項Gとしては、下記G1又はG2であることが、時間及び周波数の依存性を示しており、また、相関が取り易いため好ましい。また、m、n及びpを決めることにより、相関係数Rが大きい色材流度式(1)が得られる点で好ましい。
【0042】
(G1)レオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における貯蔵弾性率G'(ω,d,t)
(G2)レオメータの動的周波数依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における貯蔵弾性率G'(ω,d,t)
【0043】
ここで、「動的時間依存性測定」とは前記したものと同じであり、「動的周波数依存性測定」とは、例えば、Dynamic Frequency Sweep Testを言い、何れも通常の汎用のレオメータに、測定モードとして組み込まれているものである。
【0044】
好ましい測定時の周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]及び測定時間t[s]については、粘性項Hの個所で記載したものと同じである。
【0045】
弾性項Gとしては、上記G1、G2以外にも、レオメータの測定モードをそれぞれ変化させたものも用いられる。
【0046】
F=A×(S×H×G)+B・・・・・・(1)
[式(1)中、m、n及びpは0以上の実数であり、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
上記色材流度式(1)において、色材流度Fが、色材流度F1、色材流度F2、色材流度F3、色材粘着度T1の何れであっても、粘性項Hとして、上記H1、H2、H3又はH4が好ましく用いられ、弾性項Gとして、上記G1、G2が好ましく用いられるが、上記色材流度式(1)において、m、n及びpを相関係数Rが最も大きくなるように設定したときに、そのなかでも相関係数Rが最も大きくなるのは(すなわち、最適のm、n及びpをとったときに、多くの液体色材が最も上記色材流度式(1)にフィットするのは)、F1、F2、F3、T1について、それぞれ以下の場合である。
【0047】
すなわち、色材流度Fが色材流度F1のときは、粘性項Hが(H1)であり、弾性項Gが(G1)の場合、すなわち以下の色材流度式(1−1’)の場合が、相関係数Rが大きくなり易いために好ましい。
F1=A×(S×(H1)×(G1))+B・・・・・・(1−1’)
また、m、n、pも好ましい範囲に限定すると、以下の色材流度式(1−1)がより好ましい。
F1=A×(σ×[(η−η)/η×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−1)
[式(1−1)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、η及びηはレオメータの定常流粘度測定モードを用い、それぞれ剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点で測定した粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0.1≦m≦0.3、0≦n≦0.2、0.6≦p≦0.8、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【0048】
式(1−1)において、0.15≦m≦0.25が特に好ましい。また、0.05≦n≦0.15が特に好ましい。また、0.65≦p≦0.75が特に好ましい。「特に好ましい」の意味は、その範囲にすると相関係数Rが最も大きくなり易いという意味である。
【0049】
色材流度Fが色材流度F2のときは、粘性項Hが(H2)であり、弾性項Gが(G1)の場合、すなわち以下の色材流度式(1−2’)の場合が、相関係数Rが大きくなり易いために好ましい。
F2=A×(S×(H2)×(G1))+B・・・・・・(1−2’)
また、m、n、pも好ましい範囲に限定すると、以下の色材流度式(1−2)がより好ましい。
F2=A×(σ×[(η−η)/(b−a)]×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−2)
[式(1−2)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、a及びbは剪断速度を示し、η及びηはレオメータの定常流粘度測定モードを用い、それぞれ剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点で測定した粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0.3≦m≦0.5、0.05≦n≦0.25、0.35≦p≦0.55、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【0050】
式(1−2)において、0.35≦m≦0.45が特に好ましい。また、0.1≦n≦0.2が特に好ましい。また、0.4≦p≦0.5が特に好ましい。「特に好ましい」の意味は、その範囲にすると相関係数Rが最も大きくなり易いという意味である。
【0051】
色材流度Fが色材流度F3のときは、粘性項Hが(H3)であり、弾性項Gが(G2)の場合、すなわち以下の色材流度式(1−3’)の場合が、相関係数Rが大きくなり易いために好ましい。
F3=A×(S×(H3)×(G2))+B・・・・・・(1−3’)
また、m、n、pも好ましい範囲に限定すると、以下の色材流度式(1−3)がより好ましい。
F3=A×(σ×[η(ω,d,t)]×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−3)
[式(1−3)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、η(ω,d,t)はレオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における複素粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的周波数依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0≦m≦0.2、0.2≦n≦0.4、0.6≦p≦0.8、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【0052】
式(1−3)において、0≦m≦0.1が特に好ましい。また、0.25≦n≦0.4が特に好ましい。また、0.6≦p≦0.7が特に好ましい。「特に好ましい」の意味は、その範囲にすると相関係数Rが最も大きくなり易いという意味である。
【0053】
色材流度Fが色材粘着度T1のときは、粘性項Hが(H4)であり、弾性項Gが(G2)の場合、すなわち以下の色材流度式(1−4’)の場合が、相関係数Rが大きくなり易いために好ましい。
なお、色材流度Fが色材粘着度T1のときは、「色材流度式」を「色材粘着度式」ということもある。
T1=A×(S×(H4)×(G2))+B・・・・・・(1−4’)
また、m、n、pも好ましい範囲に限定すると、以下の色材流度式(1−4)がより好ましい。
T1=A×(σ×[η'(ω,d,t)]×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−4)
[式(1−4)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、η'(ω,d,t)はレオメータの動的ひずみ依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における複素粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的周波数依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0≦m≦0.2、0.7≦n≦1、0≦p≦0.2、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【0054】
式(1−4)において、0≦m≦0.1が特に好ましい。また、0.8≦n≦1が特に好ましい。また、0≦p≦0.1が特に好ましい。「特に好ましい」の意味は、その範囲にすると相関係数Rが最も大きくなり易いという意味である。
【0055】
本発明の「液体色材の設計方法」は、上記のようにm、n及びpを求めて得られた下記色材流度式(1)を用いる液体色材の設計方法であって、
F=A×(S×H×G)+B・・・・・・(1)
[式(1)中、m、n及びpは0以上の実数であり、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
設計対象の液体色材の色材粘度Eを、上記特定された一の色材用途に応じて十分高く保ちつつ、上記色材流度式(1)における色材流度Fの値が所望の値になるように、該設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定することを特徴とする。
【0056】
例えば、液体色材であるオフセット輪転印刷インキの材料組成と製造方法を決定しようとしたら、まず、複数種類の優れた既存のオフセット輪転印刷インキを選択し、これら複数種類のオフセット輪転印刷インキを用いて、前記の方法で色材流度式(1)を得る。その後、得られたオフセット輪転印刷インキ用の色材流度式(1)を用いて、液体の基礎物性である降伏項S、粘性項H及び弾性項Gから、色材流度Fを求める又は予想する。すなわち、同じ色材用途の既存の複数の液体色材から、まずその色材用途用の色材流度式(1)を得、その得られた色材流度式(1)を用いて、新たな同じ色材用途の液体色材を開発する。特定の用途に専用の色材流度式(1)を用いることによって、同じ用途の液体色材の色材流度Fを求めることができる又は予想することができる。
【0057】
なお、色材流度式(1)を得るために使用した既存の液体色材の何れよりも、色材粘度Eや色材流度Fがバランス良く大きい液体色材が設計できる可能性があることは当然である。
【0058】
ここで、「色材粘度E」は、液体色材の使用方法に直接関係した方法で測定されるものである。言い換えれば、液体色材を用いる印刷機の使用方法に即した形の測定方法で測定した現象論的な流度である。すなわち、「色材粘度E」は、液体のレオロジーから求められる基礎的な粘度ではなく、液体色材の印刷方法を反映した実用物性である。
【0059】
「色材粘度E」としては、例えば、印刷インキ工業連合会や新聞インキ協会がその測定方法と団体規格を規定しているものが好ましく用いられる。また、「JIS規格K−5701 平版及び凸版インキの試験方法」で規定しているものも好ましく用いられる。印刷の原理からして、版胴にスムースに印刷インキが載り、画線部にくっきり印刷インキが付着するものが優れているので、印刷インキ等の液体色材の色材粘度Eは、一般に高いことが望ましい。液体色材の開発においては、後述する「色材粘度E」を大きく保ちつつ、如何に前述した色材流度Fを大きくするかがポイントとなる。
【0060】
上記「色材粘度E」としては、特に限定はないが、具体的には、L型粘度計で測定した色材粘度E1(以下、「色材粘度E1」と略記することがある)等が好ましいものとして挙げられる。
【0061】
「色材粘度E1」は、「新聞オフセット輪転インキの試験方法 団体規格:2000年」には以下のように表現されている。
「色材粘度E1」:流動性−L型粘度計による方法、インキの粘度
「色材粘度E1」の測定方法と定義、及び測定に用いられるL型粘度計の構造等は、印刷インキ工業連合会及び新聞インキ協会が発行している「新聞オフセット輪転インキの試験方法 団体規格」(2000年発行)に詳しく記載されており、本発明においてはその記載に従って測定されたものとして定義される。より具体的には、実施例記載のL型粘度計で測定され、そのように測定されたものとして定義される。
【0062】
本発明においては、設計対象の液体色材の色材粘度Eを、特定された一の色材用途に応じて十分高く保ちつつ、上記のようにして得られた色材流度式(1)における色材流度Fの値が所望の値になるように、該設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定する。液体色材においては、実用物性である色材粘度Eと色材流度Fは、何れも大きいことが望ましい。しかし、色材粘度Eを大きくすると、一般には色材流度Fは小さくなってしまう。本発明によれば、色材粘度Eを大きく設計したとき、色材流度Fの振れ幅が色材流度式(1)から分かるので、十分色材流度Fが大きくならない系(材料組成の系と製造方法の系を含む)の場合、その系に深入りして検討することなく早期に諦めることによって、研究開発の効率化が達成できる。
【0063】
また、逆に、色材流度式(1)を用いれば、色材粘度Eを大きく設計したときでも、色材流度Fが十分大きくなる系(材料組成の系と製造方法の系を含む)が容易に見出せるので、その系に注力して検討することによって、無駄をせず効率よく色材粘度Eと色材流度Fの何れもが大きい優れた液体色材を創出することができる。なお、色材粘度Eと色材流度Fは、何れも実用物性であるので、その両方が大きい液体色材は、少なくとも印刷実用特性に限れば、常に優れた液体色材である。
【0064】
前記、色材流度式(1−1)、色材流度式(1−2)、色材流度式(1−3)の何れにおいても、弾性項Gの冪であるpが、mやnに比較して大きな値となった。このことは、色材流度Fを大きくしようとすれば、弾性項Gを小さくすることが最も効果的であることを示している。従って、本発明の他の一の態様は、弾性項Gができるだけ小さくなるように、設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定することを特徴とする上記の液体色材の設計方法である。
【0065】
本発明においては、上記色材流度式(1)における色材流度Fの値が所望の値になるように、該設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定することを特徴とする。振る(スクリーニング)ことができる又は検討することができる材料組成としては、通常、液体色材に用いられるものは勿論のこと、新規な配合剤も含まれる。「材料」としては、特に限定はないが、具体的には例えば、樹脂;着色顔料、体質顔料等の顔料;植物油等の油脂;ゲル化剤等の添加助剤;溶剤等が挙げられる。色材流度式(1)が得られた後は、これら材料の種類と含有量を変化させて、色材流度Fの値が所望の値になるように(又は、十分大きくなるように)、液体色材を設計する。
【0066】
液体色材としてオフセット枚葉インキを例にとれば、限定はされないが例えば以下の組成である。顔料が10〜25質量%、樹脂ワニス用の樹脂としてロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂25〜30質量%、植物油10〜25質量%、溶剤20〜40質量%、添加助剤としてドライヤーやワックスコンパウンド等2〜10質量%の範囲の構成である。
【0067】
また、上記オフセット輪転インキを例にとれば、限定はされないが例えば以下の組成である。顔料が10〜30質量%、樹脂ワニスとしてロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂25〜35質量%、植物油5〜50質量%、溶剤10〜40質量%、添加助剤としてワックスコンパウンド等2〜10質量%の範囲の構成である。
【実施例】
【0068】
以下に、色材流度式作成例、色材流度式使用例、実施例、比較例等を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0069】
色材流度式作成例1
市販の69種のオフセット印刷インキについて、表1の装置名に記載のレオメータを用い、表1記載の測定条件によって、基礎物性である各項目の粘弾性を測定し、降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを得た。
【0070】
すなわち、TA Instruments社製のレオメータであるARESの定常流粘度測定モードによって、降伏項Sとして降伏値σを求め、粘性項Hとして、表1記載の剪断速度(a=0.1(s−1)、b=10(s−1))における「(η−η)/η」(粘度変化率)を求めた。
また、TA Instruments社製のレオメータであるARESの動的時間依存性測定モードによって、温度25℃、時間1000秒における貯蔵弾性率「G’(ω、d、t)=G’(5(rad/s)、1(%)、1000(s))」を求めた。
【0071】
一方、実用物性である4種の色材流度F(色材流度F1、色材流度F2、色材流度F3及び色材粘着度T1)を、それぞれ表4に示す測定装置を用い、表4に示す測定条件によって求めた。また、実用物性である色材粘度Eを、表4に示す測定装置を用い、表4に示す測定条件によって求めた。
【0072】
次いで、縦軸に、ガラス板流度計で測定した「色材流度F1」をとり、横軸に「(σ×[(η0.1−η10)/η0.1×G’(5(rad/s)、1(%)、1000(s)))」をとったとき、相関係数が最大になるように、n、m及びpを求めた。
相関係数は、例えば、m=0に固定し、n+p=1となるように、n=0、0.1、0.2、0.3、・・・・1.0、及びp=1.0、0.9、0.8、0.7、・・・・0といった、nとpの組み合わせを作り、色材流度式(1)の右辺の値を計算した。
以下、同様に、m=0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、・・・・1.0とし、n+p=1−mとなるようにnとpの値を決定し、色材流度式(1)の右辺の値を計算した。
【0073】
この計算から得られた右辺の値をx軸に、実用物性である色材流度Fをy軸にとり、一次直線を求め、そのときの相関係数Rを算出した。得られた各m、n、pの組み合わせの中で、相関係数が最も高い値を示すm、n、pの組み合わせを求めた。その結果、m=0.2、n=0.12、p=0.68 のとき、相関係数Rは0.64で最大になった。
【0074】
すなわち、下記色材流度式(1−1a)が得られた。
F1=A×(σ0.2×[(η0.1−η10)/η0.10.12×G'(5(rad/s)、1(%)、1000(s))0.68)+B・・・・・・(1−1a)
なお、上記色材流度式(1−1a)において、定数Aは−0.564、定数Bは2.78であった。
【0075】
縦軸yに「色材流度F1」をとり、相関係数Rが最大になるようにm、n及びpを決め、横軸に「(σ0.2×[(η0.1−η10)/η0.10.12×G’(5(rad/s)、1(%)、1000(s))0.68)」をとったときの関係を図1に示す。測定に用いた市販の69種のオフセット印刷インキ全てについて、極めて良く相関直線上に乗った。
【0076】
色材流度式作成例1’
色材流度式作成例1において、粘性項Hとして、「(η−η)/η」(粘度変化率)に代えて、剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点でそれぞれ測定した粘度η及び粘度ηから求めた「(η−η)/(b−a)」を用いても、相関係数Rが最大になるように、m、n及びpを決め、m=0.23、n=0.1及びp=0.67としたところ、相関係数Rは0.630であり、良く相関直線上に乗った。このことから、ここで得られた色材流度式(1−1a’)も使用できることが分かった。ただ、色材流度式作成例1で得られたものの方が、相関係数Rが大きく、色材流度F1を予想するためには優れていることが分かった。
【0077】
色材流度式作成例1”
色材流度式作成例1において、弾性項Gとして、G’(5(rad/s)、1(%)、1000(s))に代えて、動的時間依存性測定から得られた時間3000秒における貯蔵弾性率G’を用いても、相関係数Rが最大になるように、m、n及びpを決め、m=0.2、n=0.1及びp=0.7としたところ、相関係数Rは0.598であり、良く相関直線上に乗った。このことから、ここで得られた色材流度式(1−1a”)も使用できることが分かった。ただ、色材流度式作成例1で得られたものの方が、相関係数Rが大きく、色材流度F1を予想するには優れていることが分かった。
【0078】
色材流度式作成例2
市販の69種のオフセット印刷インキについて、色材流度式作成例1と同様に、表1の装置名に記載のレオメータを用い、表1記載の測定条件によって、基礎物性である各項目の粘弾性を測定し、降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを得た。
【0079】
すなわち、同様に降伏項Sとして降伏値σを求め、粘性項Hとして、表1記載の剪断速度(a=0.1(s−1)、b=10(s−1))における「(η−η)/(b−a)」(粘度変化)を求めた。
また、動的時間依存性測定モードによって、温度25℃、時間3000秒における貯蔵弾性率「G’(ω、d、t)=G’(5(rad/s)、1(%)、3000(s))」を求めた。
【0080】
次いで、縦軸に、静置流動板で測定した「色材流度F2」をとり、横軸に「(σ×[(η−η)/(b−a)]×G’(5(rad/s)、1(%)、3000(s)))」をとったとき、相関係数が最大になるように、n、m及びpを求めた。相関係数は、色材流度式作成例1と同様に数値代入法により求めた。その結果、m=0.4、n=0.15、p=0.45 のとき、相関係数Rは0.54で最大になった。
【0081】
すなわち、下記色材流度式(1−2a)が得られた。
F2=A×(σ0.4×[(η0.1−η10)/(10−0.1)]0.15×G'(ω,d,t)0.45)+B・・・・・・(1−2a)
なお、上記色材流度式(1−2a)において、定数Aは−91.2、定数Bは210であった。
【0082】
縦軸に「色材流度F2」をとり、相関係数Rが最大になるようにm、n及びpを決め、横軸に「(σ0.4×[(η0.1−η10)/(10−0.1)]0.15×G’(5(rad/s)、1(%)、3000(s))0.45)」をとったときの関係を図2に示す。測定に用いた市販の69種のオフセット印刷インキ全てについて、極めて良く相関直線上に乗った。
【0083】
色材流度式作成例2’
色材流度式作成例2において、粘性項Hとして、「(η−η)/(b−a)」(粘度変化)に代えて、剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点でそれぞれ測定した粘度η及び粘度ηから求めた「(η−η)/η」を用いても、相関係数Rが最大になるように、m、n及びpを決め、m=0.37、n=0.15及びp=0.48としたところ、相関係数Rは0.537であり、良く相関直線上に乗った。このことから、ここで得られた色材流度式(1−2a’)も使用できることが分かった。ただ、色材流度式作成例2で得られたものの方が、相関係数Rが大きく、色材流度F2を予想するためには優れていることが分かった。
【0084】
色材流度式作成例2”
色材流度式作成例2において、弾性項Gとして、G’(5(rad/s)、1(%)、3000(s))に代えて、動的周波数依存性測定モードを用いて測定した貯蔵弾性率G'(ω,d,t)を用いても、相関係数Rが最大になるように、m、n及びpを決め、m=0.375、n=0.15及びp=0.475としたところ、相関係数Rは0.425であり、良く相関直線上に乗った。このことから、ここで得られた色材流度式(1−2a”)も使用できることが分かった。ただ、色材流度式作成例2で得られたものの方が、相関係数Rが大きく、色材流度F2を予想するには優れていることが分かった。
【0085】
【表1】

【0086】
色材流度式作成例3
市販の69種のオフセット印刷インキについて、表2の装置名に記載のレオメータを用い、表2記載の測定条件によって、基礎物性である各項目の粘弾性を測定し、降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを得た。
【0087】
すなわち、降伏項Sとして降伏値σを求め、粘性項Hとして、動的時間依存性測定モードで得られた時間1000秒における複素粘度η(ω,d,t)=η(5(rad/s),1(%),1000(s))、弾性項Gとして、表2記載の動的周波数依存性測定モードで、周波数10(rad/s)における貯蔵弾性率G'(ω,d,t)=G'(10(rad/s),1(%))を求めた。
【0088】
次いで、縦軸に、スプレッドメータで測定した「色材流度F3」をとり、横軸に「(σ×η(5(rad/s),1(%),1000(s))×G’(10(rad/s)、1(%)))」をとったとき、相関係数が最大になるように、n、m及びpを求めた。相関係数は、色材流度式作成例1と同様に数値代入法により求めた。その結果、m=0、n=0.37、p=0.63 のとき、相関係数Rは0.72で最大になった。
【0089】
すなわち、下記色材流度式(1−3a)が得られた。
F3=A×(σ×η*0.12×G'0.68)+B・・・・・・(1−3a)
なお、上記色材流度式(1−3a)において、定数Aは−13.4、定数Bは86.1であった。
【0090】
縦軸に「色材流度F3」をとり、相関係数Rが最大になるようにm、n及びpを決め、横軸に「(σ×η(5(rad/s),1(%),1000(s))0.12×G'(10(rad/s)、1(%))0.68)」をとったときの関係を図3に示す。測定に用いた市販の69種のオフセット印刷インキ全てについて、極めて良く相関直線上に乗った。
【0091】
【表2】

【0092】
色材粘着度式作成例4
市販の69種のオフセット印刷インキについて、表3の装置名に記載のレオメータを用い、表3記載の測定条件によって、基礎物性である各項目の粘弾性を測定し、降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを得た。
【0093】
すなわち、降伏項Sとして降伏値σを求め、粘性項Hとして、レオメータの動的ひずみ依存性測定モードを用い、周波数100(rad/s)、ひずみ100(%)における複素粘度η’(ω,d,t)=η’(100(rad/s),100(%))、弾性項Gとして、表3記載の動的周波数依存性測定モードで、周波数10(rad/s)における貯蔵弾性率G'(ω,d,t)=G'(10(rad/s),1(%))を求めた。
【0094】
次いで、縦軸に、ロータリータックメータで測定した色材粘着度T1をとり、横軸に「(σ×η’(100(rad/s),100(%))×G'(10(rad/s),1(%)))」をとったとき、相関係数が最大になるように、n、m及びpを求めた。相関係数は、色材流度式作成例1と同様に数値代入法により求めた。その結果、m=0、n=1.0、p=0 のとき、相関係数Rは0.82で最大になった。
【0095】
すなわち、下記色材流度式(1−4a)が得られた。
T1=A×(σ×η’1.0×G')+B
=A×η’1.0+B・・・・・・(1−4a)
なお、上記色材粘着度式(1−4a)において、定数Aは−0.538、定数Bは0.187であった。
【0096】
縦軸に「色材粘着度T1」をとり、相関係数Rが最大になるようにm、n及びpを決め、横軸に「η’(100(rad/s),100(%))1.0」をとったときの関係を図4に示す。測定に用いた市販の69種のオフセット印刷インキ全てについて、極めて良く相関直線上に乗った。
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
スプレッドメータを用いて測定した色材流度F3は、印刷インキ工業連合会の新聞オフセット輪転インキの試験方法における「スプレッドメータ直径」である。また、色材流度F3の測定においては、液体色材を0.5×10−6用い、スプレッドメータに1.5kgの荷重を使用した。
【0100】
色材粘着度T1の測定においては、測定温度32℃、液体色材の使用量1.32×10−6、デジタルインコメータのローラの回転数1200rpm、表面速度294m/分、液体色材の分散から読み取るまでの経過時間30秒に設定した。
【0101】
<色材流度F2の測定装置と測定方法>
[要旨]
一定量の液体色材を静置流動板にチャージし、一定時間静置したあとで、静置流動板を垂直に立て、一定時間で液体色材の流れた長さを測定する。
[測定装置]
表面が清浄で平滑な金属(ステンレス)製の静置流動板を用いる。静置流動板には、1.32mLの液体色材チャージ孔がある。
[測定の条件と方法]
(1)測定条件
測定は、25℃±2℃の温度制御された環境で行う。
(2)測定方法
(イ)測定前に、液体色材約2mLをガラス板に取り、へらで30回練って、液体色材の温度等を均一にする。
(ロ)へらで30回練った液体色材を、気泡や間隙が残らないようにインキピペットに1.32mL正確に採取する。
(ハ)水平に置いた静置流動板(金属であるステンレス製)の液体色材チャージ孔に滴下する。
(二)30分間静置させたあと、静置流動板を垂直に立てる。
(ホ)静置流動板を垂直に立てたときから10分後に静置流動板を水平置き、流れた長さ(mm)を測定し、「色材流度F2」とする。
【0102】
以下に、上記色材流度式作成例1〜4で得られた色材流度式が、液体色材の設計方法として優れていることを示す。
表5に示した組成で液体色材を調製した。液体色材の色材用途としてはオフセット印刷、従って、液体色材としてはオフセット枚葉インキ及びオフセット輪転インキである。
【0103】
<インキ製造例>
[材料組成]
樹脂として以下を使用した。
A;ロジン変性樹脂、ハリフェノールPA−720(ハリマ化成株式会社製)
B;ロジン変性樹脂、KG−2212(荒川化学工業株式会社製)
C;ロジン変性樹脂、T−336G(荒川化学工業株式会社製)
D;ロジン変性樹脂、SU−3000(荒川化学工業株式会社製)
【0104】
顔料としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製)、補色剤としてアルカリブルートーナー(オリエント化学工業株式会社製)、カーミン6B(大日精化工業株式会社製)、シアニンブルー(大日精化工業株式会社製)、体質顔料(白石工業株式会社製)を使用した。
【0105】
植物油として亜麻仁油、大豆油を使用し、溶剤として、AF−6号ソルベント、AF−7号ソルベント(新日本石油株式会社製)を使用し、助剤としてゲル化剤ALCH(川研ファインケミカル株式会社製)50質量%をAF−6号ソルベント50質量%に溶解したものを使用した。また、必要に応じ、マンガンドライヤー6.5%(F)(日本化学産業株式会社製)、ワックスコンパウンド(自社製)を添加した。
【0106】
上記オフセット枚葉インキ組成の例は、顔料が10〜25質量%、樹脂ワニス用の樹脂として、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂25〜30質量%、植物油10〜25質量%、溶剤20〜40質量%、添加助剤としてドライヤーやワックスコンパウンド等2〜10質量%の範囲の構成である。
また、上記オフセット輪転インキ組成の例として、顔料が10〜30質量%、樹脂ワニスとしてロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂25〜35質量%、植物油5〜50質量%、溶剤10〜40質量%、添加助剤としてワックスコンパウンド等2〜10質量%の範囲の構成である。
【0107】
[製造方法]
3本ロールを用いて、常法に従い、表5記載の実施例1、2、3、比較例1、2の液体色材を得た。なお、表5に示す組成の単位は質量部である。
【0108】
【表5】

【0109】
<色材流度式(1)を用いて優れた液体色材が設計された実施例>
実施例1
上記色材流度式作成例1で得られた色材流度式(1−1a)を評価した。すなわち、色材粘度Eが40[Pa・s]、粘着度が11と十分に大きい値を保ちつつ、色材流度式(1−1a)で最も寄与率が高かった「動的時間依存性測定モードによって測定した貯蔵弾性率「G’(ω、d、t)=G’(5(rad/s)、1(%)、1000(s))」の値が小さくなるように樹脂を選択しインキ化した。得られた実施例1の液体色材を、表4に示す条件下でガラス板流度計を用い、色材流度F1を測定した。その結果、表6に示すように色材流度F1が70mmとなり、高い色材流度Fのインキが設計された。その結果、色材粘度Eと色材流度Fの何れもが高い液体色材(この場合は、オフセット印刷インキ)が得られた。
【0110】
実施例2
上記色材流度式作成例2で得られた色材流度式(1−2a)を評価した。すなわち、色材粘度Eが28[Pa・s]、粘着度が7.5と十分に大きい値を保ちつつ、色材流度式(1−2a)で最も寄与率が高かった「動的時間依存性測定モードによって測定した貯蔵弾性率「G’(ω、d、t)=G’(5(rad/s)、1(%)、3000(s))」の値が小さくなるように樹脂を選択しインキ化した。得られた実施例2の液体色材を、表4に示す条件下で静置流動板を用い、色材流度F2を測定した。その結果、表6に示すように色材流度F2が75mmとなり、高い色材流度Fのインキが設計された。その結果、色材粘度Eと色材流度Fの何れもが高い液体色材(この場合は、オフセット印刷インキ)が得られた。
【0111】
実施例3
上記色材流度式作成例3で得られた色材流度式(1−3a)を評価した。すなわち、色材粘度Eが12[Pa・s]、粘着度が4と十分に大きい値を保ちつつ、色材流度式(1−3a)で最も寄与率が高かった「動的周波数依存性測定モードで測定した貯蔵弾性率G'(10(rad/s),1(%)」の値が小さくなるように樹脂を選択しインキ化した。得られた実施例3の液体色材を、表4に示す条件下でスプレッドメータにおける広がり直径を求め、色材流度F3を測定した。その結果、表6に示すように色材流度F3が60mmとなり、高い色材流度Fのインキが設計された。その結果、色材粘度Eと色材流度Fの何れもが高い液体色材(この場合は、オフセット印刷インキ)が得られた。
【0112】
<色材流度式(1)を用いない比較例>
比較例1
ロジン変性フェノール樹脂を用いてワニスを作成しインキ化した。比較例1の液体色材は、表6に示すように、最適化したものでも、色材粘度Eが7Pa・sで色材流度F1は85mmであった。すなわち、色材流度F1は大きかったが、色材粘度Eは極めて小さいものであった。
【0113】
比較例2
色材流度Fは粘度が影響していると考え、粘度の最適化を図って作られた比較例2の液体色材は、表6に示すように、色材粘度Eが6Pa・sで色材流度F1は20mmであった。すなわち、色材流度F1も色材粘度Eも極めて小さいものであった。
【0114】
【表6】

【0115】
最後に、表7に、粘弾性測定結果及び色材流度式(1)から計算された色材流度Fの値を示す。

【表7】

【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明における色材流度式(1)を用いると、色材粘度と色材流度の何れもが十分に高い又は所望の値より高い液体色材を、確実に、系統的に、効率的に、簡便に設計できるので、オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、フレキソ印刷インキ、活版印刷インキ、刷毛塗り塗料、スプレー塗布液、バーコート液等の液体色材の開発分野に極めて広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定された一の色材用途に使用したときに優れた色材性能を示す既存の複数種類の液体色材を選択し、該選択された複数種類の液体色材のそれぞれについて、色材流度F、並びにレオメータにより降伏項S、粘性項H及び弾性項Gを測定し、数値代入法により下記色材流度式(1)におけるm、n及びpを求めて得られた下記色材流度式(1)を用いる液体色材の設計方法であって、
F=A×(S×H×G)+B・・・・・・(1)
[式(1)中、m、n及びpは0以上の実数であり、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
設計対象の液体色材の色材粘度Eを、上記特定された一の色材用途に応じて十分高く保ちつつ、上記色材流度式(1)における色材流度Fの値が所望の値になるように、該設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定することを特徴とする液体色材の設計方法。
【請求項2】
上記色材流度Fが、ガラス板流度計で測定した色材流度F1、静置流動板で測定した色材流度F2、スプレッドメータで測定した色材流度F3、又はロータリータックメータで測定した色材粘着度T1である請求項1に記載の液体色材の設計方法。
【請求項3】
上記色材粘度Eが、L型粘度計で測定した色材粘度E1である請求項1又は請求項2に記載の液体色材の設計方法。
【請求項4】
上記降伏項Sが、レオメータを用い、剪断速度を変化させて測定した降伏値σである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
【請求項5】
上記粘性項Hが、下記H1、H2、H3又はH4である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
(H1)レオメータの定常流粘度測定モードを用い、剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点でそれぞれ測定した粘度η及び粘度ηから求めた(η−η)/η
(H2)レオメータの定常流粘度測定モードを用い、剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点でそれぞれ測定した粘度η及び粘度ηから求めた(η−η)/(b−a)
(H3)レオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における複素粘度η(ω,d,t)
(H4)レオメータの動的ひずみ依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における複素粘度η'(ω,d,t)
【請求項6】
上記弾性項Gが、下記G1又はG2である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
(G1)レオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における貯蔵弾性率G'(ω,d,t)
(G2)レオメータの動的周波数依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における貯蔵弾性率G'(ω,d,t)
【請求項7】
上記「特定された一の色材用途」が、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、活版印刷、刷毛塗り塗布、スプレー塗布又はバーコートである請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
【請求項8】
上記「特定された一の色材用途」がオフセット印刷であり、上記液体色材がオフセット印刷インキであり、上記色材流度式(1)における色材流度Fがガラス板流度計で測定した色材流度F1であり、上記色材流度式(1)が下記色材流度式(1−1)である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
F1=A×(σ×[(η−η)/η×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−1)
[式(1−1)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、η及びηはレオメータの定常流粘度測定モードを用い、それぞれ剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点で測定した粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0.1≦m≦0.3、0≦n≦0.2、0.6≦p≦0.8、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【請求項9】
上記「特定された一の色材用途」がオフセット印刷であり、上記液体色材がオフセット印刷インキであり、上記色材流度式(1)における色材流度Fが静置流動板で測定した色材流度F2であり、上記色材流度式(1)が下記色材流度式(1−2)である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
F2=A×(σ×[(η−η)/(b−a)]×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−2)
[式(1−2)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、a及びbは剪断速度を示し、η及びηはレオメータの定常流粘度測定モードを用い、それぞれ剪断速度をa[s−1]及びb[s−1](a<b)の2点で測定した粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0.3≦m≦0.5、0.05≦n≦0.25、0.35≦p≦0.55、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【請求項10】
上記「特定された一の色材用途」がオフセット印刷であり、上記液体色材がオフセット印刷インキであり、上記色材流度式(1)における色材流度Fがスプレッドメータで測定した色材流度F3であり、上記色材流度式(1)が下記色材流度式(1−3)である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
F3=A×(σ×[η(ω,d,t)]×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−3)
[式(1−3)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、η(ω,d,t)はレオメータの動的時間依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]、測定時間t[s]における複素粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的周波数依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0≦m≦0.2、0.2≦n≦0.4、0.6≦p≦0.8、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【請求項11】
上記「特定された一の色材用途」がオフセット印刷であり、上記液体色材がオフセット印刷インキであり、上記色材流度式(1)における色材流度Fがロータリータックメータで測定した色材粘着度T1であり、上記色材流度式(1)が下記色材流度式(1−4)である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
T1=A×(σ×[η'(ω,d,t)]×[G'(ω,d,t)])+B・・・・・・(1−4)
[式(1−4)中、σはレオメータを用いて測定した降伏値を示し、η'(ω,d,t)はレオメータの動的ひずみ依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における複素粘度を示し、G'(ω,d,t)はレオメータの動的周波数依存性測定モードを用い、周波数ω[rad・s−1]、ひずみd[%]における貯蔵弾性率を示し、m、n及びpは、それぞれ、0≦m≦0.2、0.7≦n≦1、0≦p≦0.2、m+n+p=1を満たし、A及びBは定数である。]
【請求項12】
弾性項Gができるだけ小さくなるように、設計対象の液体色材の材料組成と製造方法を決定する請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法を用いることを特徴とする液体色材の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の液体色材の設計方法を用いて製造されたものであることを特徴とする液体色材。
【請求項15】
オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、フレキソ印刷インキ、活版印刷インキ、刷毛塗り塗料、スプレー塗布液又はバーコート液である請求項14記載の液体色材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−242034(P2010−242034A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95314(P2009−95314)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】