説明

液体貯留タンク

【課題】 無理な力をかけずに簡単に分配用のソケットを装着することができる液体貯留タンクを提供する。
【解決手段】 可撓性バッグ2内から液体を取り出すには、ポート部材30のガス供給口からガスを供給する。供給されたガスは、ソケット本体21の内側面とバルブシート部材27の外側面との間のガス流路31、プラグ5に形成した流路13及びブラケット3に形成した穴12を介して外側容器1と可撓性バッグ2との間の空間S2に導入される。空間S2にガスが導入されると、可撓性バッグ2が収縮し、内部に充填されている液体がチューブ8内、バルブ24とバルブシートとの間の流路、小径流路26及び流路23を介して外部に取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸、溶剤、アルカリ溶液、ホトレジストなどの各種液体を貯留し、ガス圧を利用して液体を取り出すことが可能な液体貯留タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
外側容器内にチューブを挿入した可撓性バッグを収め、この可撓性バッグ内に薬液を充填し、この状態で外側容器内側との間にガスを供給して、可撓性バッグを外側から圧縮することでバッグ内の液体を前記チューブを介して外部に取り出すようにした液体貯留タンクが特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される液体貯留タンクにあっては、可撓性バッグの口部にポートを画成する取付体を設け、この取付体を介して汲み出し用のチューブを可撓性バッグ内に挿入し、汲み出し用のチューブの上端に設けたカップリングを前記取付体に係止することで、チューブが可撓性バッグ内に落下しないようにしている。
【0004】
そして、特許文献1では前記取付体の上端開口(ポート)を破断可能な膜で気密に閉塞し、使用を開始する際にソケット(ディスペンサー)側に設けたプローブにて前記膜を破断し、プローブ先端を前記カップリングの空所に収めるようにしている。プローブ先端を前記カップリングの空所に収めた状態で可撓性バッグ内の液体は外からのガス圧でチューブ内およびプローブ内の流路を介して外部に取り出される。
【0005】
また、可撓性バッグ内には液体の他に高圧のガスが上部に溜まっていることがある。特許文献1では、このガスはプローブにて膜を破断した際に瞬時に外部に放出されるので、プローブにて膜を破断した際に液体がチューブ内を伝って突沸することがない。
【特許文献1】特許第3464232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように特許文献1にあっては、取付体の上端開口を塞ぐ膜をプローブによって破断しなければならず手間がかかり、部品点数も増加する。
【0007】
また特許文献1にあっては、チューブの上端にカップリングを取り付け、このカップリングを取付体内で保持するようにしている。そして、タンクを使用する際には、カップリングの空所にプローブの先端を嵌め込むようにしているが、この嵌め込みの際に前記したように膜を破断しなければならず力が必要で芯がずれやすい。そして芯がずれると、カップリングが斜めの状態のまま取付体内で固定されてしまい抜けなくなってしまう。
【0008】
抜けなくなった場合、そのまま捨てることになるが、チューブとカップリングは可撓性バッグに比べると製作にコストがかかり、リサイクルの面でも好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る液体貯留タンクは、外側容器内に収納された可撓性バッグと外側容器内側との間にガスを供給して、可撓性バッグ内の液体を可撓性バッグ内に挿入したチューブを介して外部に取り出すようにした液体貯留タンクにおいて、前記可撓性バッグの口部はカップ状ブラケットに取り付けられ、このカップ状ブラケットはプラグによって外側容器の開口部に内側から気密に保持され、前記プラグには可撓性バッグ内に挿入したチューブの上端部が係止し、更に前記プラグにはソケットが着脱自在とされ、このソケットには液体の流路を開閉するバルブとバルブシートが設けられ、プラグにソケットを取り付けた状態で液体の流路が開となる構成とした。
【0010】
具体的な形状の一例としては、前記チューブの上端にはプラグの開口部上端に係止するフランジ部が形成され、前記チューブ外側面とプラグ開口部内側面との間に形成されるガス抜き用の隙間が形成され、さらにこのガス抜き用の隙間に連通する穴が前記フランジ部に形成された構成が考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特許文献1に開示されるような、破断すべき膜がないため、破断に要する手間がかからず、また力をかけて膜を破ってプローブの先端をカップリングに押し込むことも不要なため、作業性が向上する。
【0012】
更に、使用済みの可撓性バッグとこの可撓性バッグに挿入されていたチューブとの分離も簡単に行え、リサイクルにも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る液体貯留タンクの全体図、図2は同液体貯留タンクのキャップを装着した状態の要部拡大図、図3は同液体貯留タンクのキャップを外しソケットを装着した状態の要部拡大図である。
【0014】
液体貯留タンクはステンレス製の外側容器1の内部に可撓性バッグ2が配置されている。可撓性バッグ2の口部にはカップ状をなすブラケット3が取り付けられ、このブラケット3の上端の凸部を外側容器1の開口部4の段部に係止するように嵌め込み、内側からプラグ5を差し込んでブラケット3を開口部4の内側面に押し付け、更に開口部4の外周面に刻設した雄ネジ部にナット6を締め付けて
ブラケット3をプラグ5との間で固定することで、可撓性バッグ2を外側容器1内で保持する。
【0015】
前記プラグ5には前記ブラケット3の開口部に挿入される筒部7が設けられ、この筒部7を介して可撓性バッグ2内にチューブ8が挿入されている。このチューブ8は筒部7内に位置する部分が上方に向かって徐々に肉厚に形成され、上部はフランジ部9となっており、このフランジ部9をプラグ5の筒部7の上端に係止することで、チューブ8が可撓性バッグ2内に落下しないようにしている。
【0016】
前記チューブ8の外側面と前記筒部7の内側面との間には、可撓性バッグ2内の上部空間S1につながる流路10が形成され、前記フランジ部9には流路10と外部とを連通する穴11が形成されている。
【0017】
また、前記ブラケット3には外側容器1の内側面と可撓性バッグ2の外側面との間に形成される空間S2とブラケット3とプラグ5との間の空間S3とを連通する穴12が形成され、更に前記プラグ5には空間S3と外部とを連通する流路13が形成されている。
【0018】
そして、前記ナット6の外周面に刻設した雄ネジ部にキャップ14を取り付けた状態で、外部につながる前記穴11及び流路13はキャップ14下面によって気密にシールされる。
【0019】
一方、ディスペンサーとして上記プラグ5に取り付けられるソケット20は筒状をなすソケット本体21の上部内側に形成した雌ネジ部に流路部材22を螺合し、この流路部材22の中心部に形成された流路23の下端にバルブ24の上端を取り付けている。このバルブ24の上端には小径流路26が形成されている。
【0020】
前記ソケット本体21内で流路部材22の下端にはバルブ24を囲むようにバルブシート部材27が取り付けられている。このバルブシート部材27は筒状をなす上半体27aとカップ状をなす下半体27bとからなり、上半体27aと下半体27bとは伸縮自在な蛇腹28で連結し、下半体27bと流路部材22との間にはスプリング29を縮装し、スプリング29の弾発力で下半体27bのシート面をバルブ24に押し付けている。
【0021】
一方、ソケット本体21の側面にはガス供給用のポート部材30が取り付けられ、またソケット本体21の内側面と前記バルブシート部材27の外側面との間には前記ポート部材30のガス供給口につながるガス流路31が形成されている。
【0022】
また、ソケット本体21の下端にはスチールボール32を収納する窓部33が形成され、ソケット本体21の下端外側にはスチールボール32が径方向外側に外れるのを規制する筒状操作部材34が摺動自在に配置され、この筒状操作部材34とソケット本体21の下端外側との間に、リング部材35を配置している。このリング部材35はスプリング36によって前記筒状操作部材34を下限位置、つまりスチールボール32が径方向外側に外れるのを規制する位置に留めておく。
【0023】
以上において、薬液メーカなどにおいてタンク内に液体を充填するには、先ず、外側容器1内に可撓性バッグ2を押し込み、可撓性バッグ2の口部を取り付けているカップ状ブラケット5を外側容器1の開口部4の内側に入れ、プラグ5をブラケット3内に上方から押し込むことでカップ状ブラケット5を外側容器1の開口部4の内側に押し付け、更にナット6を締め付けることでカップ状ブラケット5を開口部4とプラグ5の間で強固に保持する。
【0024】
次いで、可撓性バッグ2を膨らました後に、可撓性バッグ2内に薬液などの液体を充填し、充填し終わったらプラグ5の筒部7を介して可撓性バッグ2内にチューブ8を差し込む。このときチューブ8の上端フランジ部9が筒部7の上端に係止するので可撓性バッグ2内に落下することはない。
【0025】
この後、キャップ14を取り付けて、薬液メーカ側での出荷準備が完了する。尚、キャップ14の下面によって搬送中にチューブ8の上端開口は封止されているので、搬送中に液が漏れることはない。
【0026】
一方、ユーザサイドにおいて液体貯留タンクから液体を取り出すには、キャップ14を外してソケット20を取り付ける。キャップ14を外した時点で、チューブ8のフランジ部9に形成された穴11が外部に開放され、可撓性バッグ2の上部空間S1に高圧のガスが溜まっている場合には、流路10及び穴11を介して外部に排出される。
【0027】
ソケット20を取り付けるには、筒状操作部材34をスプリング36の弾発力に抗して上方に持ち上げる。すると、スチールボール32が径方向外方に移動できる状態になる。この状態でソケット本体21をプラグ5に上方から差し込む。このときプラグ5によってスチールボール32は径方向外方に移動せしめられるが、窓部33の形状を絞ることでスチールボール32は落下しない構造になっている。
【0028】
ソケット本体21が所定位置まで挿入されたら、筒状操作部材34を放す。すると筒状操作部材34はスプリング36の弾発力で下方に移動し、突部によってスチールボール32を径方向内側に移動させ、スチールボール32がプラグ5に形成した溝に嵌り込み、抜けが防止される。この状態を図3で示している。
【0029】
次に、可撓性バッグ2内から液体を取り出すには、ポート部材30のガス供給口からガスを供給する。供給されたガスは、ソケット本体21の内側面とバルブシート部材27の外側面との間のガス流路31、プラグ5に形成した流路13及びブラケット3に形成した穴12を介して外側容器1と可撓性バッグ2との間の空間S2に導入される。
【0030】
一方、ソケット20をプラグ5に装着した状態で、バルブシート27の下半体27bの下端面はチューブ8の上端に当接して持ち上げられ、バルブ24とバルブシートとの間の流路が開成する。
【0031】
したがって、空間S2にガスが導入されると、可撓性バッグ2が収縮し、内部に充填されている液体がチューブ8内、バルブ24とバルブシートとの間の流路、小径流路26及び流路23を介して外部に取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る液体貯留タンクの全体図
【図2】同液体貯留タンクのキャップを装着した状態の要部拡大図
【図3】同液体貯留タンクのキャップを外しソケットを装着した状態の要部拡大図
【符号の説明】
【0033】
1…外側容器、2…可撓性バッグ、3…カップ状をなすブラケット、4…外側容器の開口部、5…プラグ、6…ナット、7…筒部、8…チューブ、9…フランジ部、10…流路、11…穴、12…穴、13…流路、14…キャップ、20…ソケット、21…ソケット本体、22…流路部材、23…流路、24…バルブ、26…小径流路、27…バルブシート部材、27a…バルブシート部材の上半体、27b…バルブシート部材の下半体、28…蛇腹、29…スプリング、30…ポート部材、31…ガス流路、32…スチールボール、33…窓部、34…筒状操作部材、35…リング部材、36…スプリング、S1…可撓性バッグの上部空間、
S2…外側容器の内側面と可撓性バッグの外側面との間に形成される空間、S3…ブラケットとプラグとの間の空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側容器内に収納された可撓性バッグと外側容器内側との間にガスを供給して、可撓性バッグ内の液体を可撓性バッグ内に挿入したチューブを介して外部に取り出すようにした液体貯留タンクにおいて、前記可撓性バッグの口部はカップ状ブラケットに取り付けられ、このカップ状ブラケットはプラグによって外側容器の開口部に内側から気密に保持され、前記プラグには可撓性バッグ内に挿入したチューブの上端部が係止し、更に前記プラグにはソケットが着脱自在とされ、このソケットには液体の流路を開閉するバルブとバルブシートが設けられ、プラグにソケットを取り付けた状態で液体の流路が開となることを特徴とする液体貯留タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の液体貯留タンクにおいて、前記チューブの上端にはプラグの開口部上端に係止するフランジ部が形成され、前記チューブ外側面とプラグ開口部内側面との間に形成されるガス抜き用の隙間が形成され、さらにこのガス抜き用の隙間に連通する穴が前記フランジ部に形成されていることを特徴とする液体貯留タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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