説明

液体貯留装置

【課題】貯留タンクに設けられる排気手段を、故障が少なく、メンテナンスの必要が少ないものにする。
【解決手段】内部に液体wを貯留可能な空間を有する貯留タンクTを備え、その貯留タンクT内から貯留タンクT外へ排出管4が引き出されており、前記排出管4を通じて前記貯留タンクT内の液体wを前記貯留タンクT外へ排出可能とした液体貯留装置において、前記排出管4は液体w取込用の開口4aと、前記貯留タンクT内の上部に臨む吸引孔30bとを備え、前記排出管4を通じて前記開口4aから取り込んだ液体wを前記貯留タンクT外へ排出する際に、前記吸引孔30bを通じて前記貯留タンクT内の上部に介在する気体aを前記排出管4内に吸引して、その吸引した気体aを前記液体wとともに前記貯留タンクT外へ排出する機能を有するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水などの飲料水、あるいは、その他各種液体を一定の温度管理を行い貯蔵、保管するために用いられる液体貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水などの飲料水、あるいは、その他各種液体を一定の温度管理を行い貯蔵、保管するために、各種装置、各種設備等に、貯留タンクを備えた液体貯留装置が用いられている。
【0003】
このような液体貯留装置として、例えば、水道等の外部からの供給水を貯留タンク内に一旦移してそこで一定の温度管理を行い貯留した後、それを必要な時に必要な量だけ外部に供給できるようにしたものが挙げられる。
この種の液体貯留装置では、貯留タンクから排出管が引き出され、その排出管に供給バルブが設けられているので、その供給バルブを開閉操作することで、外部への供給量を適宜調整できる。
【0004】
また、液体貯留装置の例として、着脱自在の容器から貯留タンクに飲料水を供給できるようにした飲料水用サーバーがある。
この飲料水用サーバーでは、ミネラルウォーター等の飲料水を収容した容器を用い、その容器内の飲料水をサーバー本体に設けた貯留タンク内に移して貯留した後、その貯留した飲料水を常温又は冷温で、あるいは、その貯留した飲料水を加熱して、適宜外部に用意したコップやペットボトル等に供給できるようにしている。
【0005】
例えば、特許文献1に示すように、貯留タンクT内において、飲料水wと空気aとが触れにくいようにしたエアレスタンク構造の飲料水用サーバーSがある。
この飲料水用サーバーSでは、容器1から導水管2を通じて貯留タンクT内に飲料水wを注入した際、内部の飲料水wの減少とともに縮小変形可能な柔軟なフィルムで構成された容器1が用いられる。
【0006】
このエアレスタンク構造では、当初使用時(貯留タンクTがカラの状態で、飲料水wの入った容器1を導水管2に取り付けた際)、及び、その使用途中において貯留タンクT内に空気aが混入した際に、飲料水wの上部に空気aの層ができ、飲料水wと空気aとが継続して接した状態になってしまうことがある。
【0007】
そこで、図5に示すように、貯留タンクTの上部に、排気手段として排気弁6を備えることが有効である。
排気弁6としては、例えば、図6(a)(b)に示すものが挙げられ、この排気弁6を手動で操作することにより、空気aが貯留タンクT外に排出されると、その排出後の空隙を満たすように、飲料水wが導水管2を通じて貯留タンクTに流下する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−35322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記飲料水用サーバーSによれば、貯留タンクTの排気手段として設けた排気弁6が故障等により機能しなくなった際に、その排気弁6から飲料水wが漏れ続ける事態が想定される。
【0010】
また、排気弁6は可動部を有するので、その可動部が確実に機能するよう、定期的なメンテナンスが必要であるという問題もある。
【0011】
そこで、この発明は、液体貯留装置の貯留タンクに設けられる排気手段を、故障が少なく、メンテナンスの必要が少ないものにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、内部に液体を貯留可能な空間を有する貯留タンクを備え、その貯留タンク内から貯留タンク外へ排出管が引き出されており、前記排出管を通じて前記貯留タンク内の液体を前記貯留タンク外へ排出可能とした液体貯留装置において、前記排出管は液体取込用の開口と、前記貯留タンク内の上部に臨む吸引孔とを備え、前記排出管を通じて前記開口から取り込んだ液体を前記貯留タンク外へ排出する際に、前記吸引孔を通じて前記貯留タンク内の上部に介在する気体を前記排出管内に吸引して、その吸引した気体を前記液体とともに前記貯留タンク外へ排出する機能を有することを特徴とする液体貯留装置の構成を採用した。
【0013】
これらの構成によれば、貯留タンクの上部に気体が介在している場合に、排出管を通じて内部の液体を外部に排出すると、排出管内を液体が移動し、その排出管内の流体の流れによって、貯留タンクの上部に介在する気体(空気)が、吸引孔を通じて排出管内へ引かれる現象が起きる。この作用は、排出管内の流体の流れが速いほど顕著であり、いわゆる毛細管現象(ベンチュリ効果)を期待したものである。
この作用により、貯留タンクの上部に介在する気体を、貯留タンク内の液体とともに貯留タンク外へ排出することができる。
【0014】
なお、この液体貯留装置には、貯留タンク内の液体、及び、貯留タンク内に介在していた気体が、排出管内の液体の流れに引かれて貯留タンク外に排出された際に、その排出した液体、及び、排出した気体の介在していた空間に見合う量の液体が貯留タンク内に補充することができる手段を備えることができる。
例えば、上流側から所定の液圧が付加されることで貯留タンクに液体を供給できる液体供給管(例えば、水道管等)を接続して、排出管に設けた弁の開閉動作に連動して液体供給管から貯留タンク内に自動的に液体を補充できるようにする手法がある。また、所定量の液体を溜めた別の液体供給源(例えば、液体を収容した可塑性を有する容器等)を貯留タンクに接続しておき、落差圧や、あるいは、貯留タンク内の液体及び気体の排出に伴って負圧になる貯留タンク内とその液体供給源内との圧力バランスにより、自動的に液体供給源から貯留タンクに液体を補充できるようにしてもよい。
【0015】
以上のように、排気手段を簡素な構成とすることができるから、その排気手段を、故障が少なく、メンテナンスの必要が少ないものにすることができる。
【0016】
なお、その吸引孔の機能としては、排出管内の液体の流速と、その吸引孔の内径等を適宜設定することにより、前記貯留タンク内の気体を残らず前記貯留タンク外へ排出する機能を有するものとすることができる。前記貯留タンク内の気体を残らず前記貯留タンク外へ排出することができれば、貯留タンク内が常時エアーレスの状態に保たれ、品質保持上最も好ましい状態とすることができる。なお、吸引孔の内径は、排出管の内径よりも極めて細いことが望ましい。
【0017】
これらの構成において、前記排出管は、前記貯留タンクの上面部材を貫通してその貯留タンク外へ引き出されており、前記吸引孔は、前記排出管の前記上面部材を貫通する部分の直下に設けられている構成を採用することができる。
貯留タンクの上面部材とは、その貯留タンク内の空間の上方を閉じる部材であり、この部材の直下に空気が溜まることとなる。このため、この上面部材の直下、すなわち、この上面部材の下面近傍に吸引孔を設けることが、タンク内の空気を残らず排出する上で有効である。
【0018】
また、これらの構成において、その吸引孔としては、例えば、前記排出管から分岐する管で構成してもよいし、前記排出管の周壁に設けられた内外を貫通する孔で構成することもできる。内外を貫通する孔であれば、排出管を構成する管体に穿孔するだけで簡単に作ることができる。
【0019】
これらの構成において、前記貯留タンク内の上部に上方へ突出するポケット部を設け、前記吸引孔を、前記ポケット部内の空間に臨ませた構成とすることができる。
ポケット部があれば、そのポケット部内の空間に気体が溜まりやすくなり、排出管内を流れる液体の流れによる気体の吸引も効果的である。
【0020】
また、これらの各構成において、前記排出管の開口は、前記貯留タンクの下部に臨む構成を採用することができる。
排出管の開口が貯留タンクの下部に臨んでいれば、貯留タンク内における上部と下部の温度差に対し、比較的低温状態にある液体を主として排出し、気体の存在しない状態で吸引孔より混入する比較的高温状態のタンク上部の液体との混合によって生じ得る温度上昇を軽減することができる。
【0021】
これらの各構成からなる液体貯留装置は、飲料水用サーバーとして用いることができる。その構成は、前記貯留タンクから上方に伸びる導水管に対し、内部に液体を収容した容器が着脱可能であり、前記容器内の液体が前記導水管を通じて前記貯留タンク内へ流下するようになっている構成とすることができる。
【0022】
なお、この飲料水用サーバーにおいて、飲料水を収容した容器として、例えば、内部の飲料水が減少した際に容器が変形せず、その飲料水に代わって気体が侵入することを前提とした硬質の素材からなる容器を採用する場合においては、貯水タンクと容器との間に容器用の吸気装置(例えば逆止弁や容器より上方に延びる吸気口)を取り付けた構造とすることができる。これは、液体貯留装置内の品質向上を前提にした構造であり、容器の品質維持を目的として、別途の吸気装置の滅菌機構を備えることもできる。
また、可撓性を有する素材で形成され、その容器内の飲料水が導水管を通じて貯留タンク内へ流下してその容器内の飲料水が減少する際に前記容器は収縮変形してその内部に前記導水管側から気体が侵入しないようになっている容器を採用することもできる。
【0023】
すなわち、貯留タンク内の液体、及び、貯留タンク内に介在していた気体が、排出管内の液体の流れに引かれて貯留タンク外に排出された際に、その排出した液体、及び、排出した気体の介在していた空間に見合う量の液体が貯留タンク内に補充される機能を有していればよい。
【0024】
また、これら各構成からなる液体貯留装置を、以下の構成からなる飲料水用サーバーに適用することができる。
【0025】
その構成は、上記の各構成からなるいずれかの液体貯留装置を備えた飲料水用サーバーであって、内部に液体を貯留可能な第一のタンクを上方に第二のタンクを下方に並列して設け、前記第一のタンクから引き出した導水管を貯留タンクに接続して前記第一タンク内の液体が前記貯留タンクに供給されるようにし、前記貯留タンクから引き出した前記排出管を前記第二のタンクに接続して、その貯留タンク内の液体がその排出管を通じて前記貯留タンク外へ排出されてその排出された液体が前記第二のタンクに供給されるようになっていることを特徴とする液体貯留装置を備えた飲料水用サーバーである。
【0026】
これらの構成によれば、貯留タンクの上部に気体が介在している場合に、排出管を通じて内部の液体を外部に(第二のタンク側へ)排出すると、その排出管内を液体が移動し、その液体の圧力バランスにより、貯留タンクの上部に介在する気体(空気)が、吸引孔を通じて引かれる現象が起きる。この作用により、前述の各構成と同様、貯留タンクの上部に介在する気体を、貯留タンク内の液体とともに貯留タンク外へ排出することができる。
なお、この液体貯留装置及び飲料水用サーバーには、貯留タンク内の液体、及び、貯留タンク内に介在していた気体が、排出管内の液体の流れに引かれて貯留タンク外に排出された際に、その排出した液体、及び、排出した気体の介在していた空間に見合う量の液体が、第一のタンクから貯留タンク内に補充される手段を付加することができる。
【0027】
なお、飲料水用サーバーでは、前記第一のタンクと第二のタンクのうち、上方に位置する第一のタンクを冷水供給用、あるいは常温水供給用とし、下方に位置する第二のタンクを温水供給用とするのが従来から一般的である。上方に位置する第一のタンクが冷水供給用である場合は、その第一のタンクに冷却装置が設けられ、また、下方に位置する第二のタンクが温水供給用である場合は、その第二のタンクに加熱装置が設けられる。
第一のタンクと第二のタンクの間に、このような貯留タンクを介在させることにより、加熱装置によって温められた液体(飲料水)が冷水供給用又は常温水供給用のタンクに、また、冷却装置により冷やされた液体が温水供給用のタンクに相互に影響する熱量的ロス(燃費ロス)及び品質維持性能の障害を抑制することができる。
【0028】
このように機能するのは、第一のタンクと第二のタンクとを上下方向の直線配管で結んだ場合と比較して、配管をS字状に、すなわち、一度下げた配管を再び上げさらに下げた状態を作ることにより、上昇する温水と降下する冷水との融合を阻害する形状となることが理由として挙げられる。このとき、その配管に気体が混入する危惧があるが、上記貯留タンクの構成を採用することにより、混入した気体を液体とともに第二のタンク側へ排出でき、さらにスペース的にも縮小した上で双方の温度上の阻害を抑制できる構成となる。
【0029】
以上の構成としたことから、貯留タンク内において、液体と気体とが接触する機会を減らしつつ、その貯留タンクに設けられる排気手段を、故障が少なく、メンテナンスの必要が少ないものにすることができる。
【0030】
なお、このように、第一のタンクと第二のタンクとの間に貯留タンクを介在させた飲料水用サーバーの構成において、その第一のタンクと第二のタンクのそれぞれ、あるいはどちらか一方を、前述の各構成からなる排出管による気体排出機能を備えた液体貯留装置としてもよい。すなわち、第一のタンクや第二のタンクを、前述の気体排出機能を備えた各構成からなる液体貯留装置の貯留タンクの構成としてもよい。
【0031】
さらに、これらの各構成からなる液体貯留装置を用いた貯留タンク内に混入した気体の排気方法及び、貯留タンクの使用終了時又メンテ時の排水方法として、以下の手法を採用することができる。
【0032】
すなわち、その構成は、前述の各構成からなるいずれかの液体貯留装置の貯留タンク内に混入した気体の排気方法であって、内部に液体を貯留可能な空間を有する貯留タンクを備え、その貯留タンク内から貯留タンク外へ排出管が引き出されており、前記排出管は液体取込用の開口と、前記貯留タンク内の上部に臨む吸引孔とを備え、前記排出管を通じて前記開口から取り込んだ液体を前記貯留タンク外へ排出する際に、前記吸引孔を通じて前記貯留タンク内の上部に介在する気体を前記排出管内に吸引して、その吸引した気体を前記液体とともに前記貯留タンク外へ排出することを特徴とする液体貯留装置の貯留タンクの排気方法である。
【発明の効果】
【0033】
この発明は、排出管内の液体の流れを利用して、貯留タンクの上部に溜まる気体及びタンク管の連結管内の気体を排出できるようにしたので、貯留タンク内において、液体と気体とが接触する機会を減らし、品質保持上好ましい状態とすることができる。また、気体の排出に際し、排出管内の液体の流れを利用したことから可動部を解消することができ、故障が少なく、メンテナンスの必要が少ない排気手段とすることができる、その上で温度管理や燃費性の向上も計ることの出来る構成である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施形態の全体図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】(a)〜(d)は、同実施形態の作用を示す説明図
【図4】他の実施形態の全体図
【図5】従来例の全体図
【図6】(a)(b)は、従来例の排気弁の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を、図1乃至図3に基づいて説明する。この実施形態の液体貯留装置を備えた飲料水用サーバーSは、図1に示すように、内部に飲料水(液体)wを収容可能な空間を有する貯留タンクTから上方に伸びる導水管2に、樹脂製の容器1が着脱可能である。その容器1を導水管2に装着することで、容器1内の飲料水wが、その自重により、導水管2を通じて貯留タンクT内へ流下するようになっている。なお、貯留タンクTは、図示しない冷却装置を備えている。以下、この貯留タンクTを「貯水タンク3」と称する。
【0036】
この実施形態において、容器1は可撓性を有する素材で形成され、前記容器1内の飲料水wが前記導水管2を通じて前記貯水タンク3内へ流下してその容器1内の飲料水wが減少する際に、前記容器1は、図3(a)〜(d)に示すように、内部の容積が減少するように収縮変形して、その内部に前記導水管2側から空気(気体)aが侵入しないようになっている。
【0037】
液体貯留装置の構成について説明すると、図1に示すように、貯留タンクTとしての前記貯水タンク3から排出管4が引き出されて外部へ伸びており、その排出管4に開閉自在の供給バルブ5が設けられている。
供給バルブ5を開放すれば、貯水タンク3内の飲料水wが、適宜外部のコップやペットボトル等の容器へ供給でき、また、供給バルブ5を閉鎖すれば、その供給が止まるようになっている。その供給バルブ5の開閉は、例えば、レバーの操作により可能である。
【0038】
また、この実施形態では、前記貯水タンク3の下部に、第二のタンク13(以下、「温水タンク13」と称し、第一のタンク3に相当する前記貯水タンク3と区別する)を備えている。
この温水タンク13は、内部に飲料水wを収容可能な空間を備えるとともに、図示しない加熱装置を備え、内部の飲料水wが温められた状態で貯留されるようになっている。
【0039】
この温水タンク13から排出管14が引き出されて外部へ伸びており、その排出管14に開閉自在の供給バルブ15が設けられている。
供給バルブ15を開放すれば、温水タンク13内の温められた飲料水wが、適宜外部のコップやペットボトル等の容器へ供給でき、また、供給バルブ15を閉鎖すれば、その供給が止まるようになっている点は、貯水タンク3の場合と同様である。
【0040】
なお、前記貯水タンク3と温水タンク13とは、導水管12で接続されている。導水管12は、前記貯水タンク3の上部と温水タンク13の下部とに接続されており、その導水管12の途中に開閉バルブ11を備えている。
この導水管12を通じて、貯水タンク3内の飲料水wが、その自重により、前記温水タンク13内へ流下するようになっている。
【0041】
なお、この実施形態では、貯水タンク3内の飲料水wに対する温水タンク13からの熱影響を最小限にするため、導水管12を、貯水タンク3の上部から引き出して温水タンク13の下部に接続し、その長さを充分長く確保している。また、貯水タンク3内には、導水管12の開口部付近に仕切板3bを配置して、仮に、温水タンク13から飲料水wが逆流した場合に、その飲料水wが貯水タンク3全体に行き渡らないようにしている。さらに、導水管12内における滞留水の発生を防ぐため、前記開閉バルブ11は、その導水管12の上端に設けられている。
【0042】
この貯水タンク3は、その上端に、上方へ突出するポケット部30aを備えている。このポケット部30aによって、貯水タンク3内の空間は、その最上部に、貯水タンク3内における他の部分の上面よりもさらに上方へ突出する空間を備える。すなわち、このポケット部30a内の空間が、貯水タンク3内で最も上方に位置する。
【0043】
この実施形態では、貯水タンク3の上面は、図1に示すように、フラットな下面を有する蓋3aで閉じられており、そのフラットな下面に対しポケット部30aの内面が上方へ突出した形態である。なお、そのフラットな下面は、ポケット部30aへ近づくにつれて徐々に上昇する傾斜面とすることもできる。このようにすれば、空気aをポケット部30aに誘導する機能を発揮することができる。
【0044】
また、この実施形態では、ポケット部30aは、貯水タンク3の上面を閉じる開閉自在の蓋3aに一体に設けられているが、このように、ポケット部30aは蓋3aに設けても良いし、蓋3aが無い場合はタンクの上部を閉じる上面部材と一体に設けてもよい。以下、各実施形態の貯留タンクTにおいて同じである。
【0045】
飲料水wを外部に供給するための排出管4は、図1に示すように、貯水タンク3内の下部に臨む下向きの開口4aを有している。
また、その排出管4は、前記開口4aから上方へ伸びて、前記貯水タンク3の前記ポケット部30aにおいて、上面部材である蓋3aを貫通してその貯水タンク3外へ引き出されている。
【0046】
さらに、その排出管4には、前記ポケット部30a内の空間に臨む吸引孔30bが設けられている。前記吸引孔30aは、前記排出管4の周壁に設けられた内外を貫通する孔であり、前記排出管4が前記蓋3aを貫通する部分の直下に設けられている。
【0047】
貯水タンク3内に空気aが混入すると、その貯水タンク3の空間において、蓋3aの直下に空気aが溜まることとなるから、この蓋3aの直下、すなわち、この上面部材としての蓋3aの下面近傍に吸引孔30bを設けることが、貯水タンク3内の空気を残らず排出する上で有効である。
【0048】
また、この実施形態では、蓋3aの直下のうち、ポケット部30a内の空間に空気aが溜まりやすくなり、排出管4内を流れる飲料水wの流れによる空気aの吸引も効果的である。
【0049】
また、排出管4の開口4aが貯水タンク3の下部に臨んでいれば、貯水タンク3内における上部と下部の温度差に対し、下部の比較的低温状態にある液体wを主として排出し、気体aの存在しない状態で吸引孔30bより混入する比較的高温状態のタンク上部の液体との混合によって生じ得る温度上昇を軽減することができる。
【0050】
この吸引孔30bは、排出管4よりも細い内径を有し、前記供給バルブ5を開いて前記排出管4の開口4aから取り込んだ飲料水wを前記貯水タンク3外へ排出する際に、その排出管4内の飲料水wの流れによって、前記ポケット部30a内の空気aを、いわゆるベンチュリ効果により吸引して同時に前記貯水タンク3外へ排出する機能を有する。
すなわち、図2に矢印aで示すように、排出管4内の飲料水wに流れが生じると、その流れによって、吸引孔30bに矢印b方向の吸引力が作用し、その結果、吸引孔30bから排出管4内に空気aが引き込まれるのである。
【0051】
なお、この実施形態では、吸引孔30bは、排出管4の周壁を横向きに貫通するように形成されているが、仮に、排出管4の向きが横向きである場合は、その横向きの排出管4の上部、下部あるいは側部に吸引孔30bを設けてもよい。
また、吸引孔30bを、排出管4から分岐する管で構成してもよい。その管の向きは、その上端に開口する上向きであることが好ましいが、空気aを吸引可能な位置であれば、側方に開口する横向きとすることもできる。
例えば、排出管4が上下方向に配管されて上面部材を貫通している場合において、前記吸引孔30bとしては、その上面部材の直下で、排出管4から分岐して側方に開口する横向きの管とすることができる。
【0052】
この飲料水用サーバーSの作用、すなわち、この飲料水用サーバーSを用いた貯水タンク3内の空気aの排気方法について説明する。
【0053】
図3(a)に示すように、貯水タンク3内に飲料水wが全くない状態において、容器1を導水管2に差し込んで、その容器1を固定する。なお、この図3では、下部の温水タンク13の図示を省略している。
容器1内の飲料水wが、その自重により、徐々に貯水タンク3内へ流下していくとともに、容器1は、その内部空間の容積が縮小するように収縮変形していく(図3(b)参照)。
【0054】
このとき、貯水タンク3内の気圧が高まると、一定のところで容器1から貯水タンク3への飲料水wの流下が停止するが、供給バルブ5を適宜開放することにより、貯水タンク3内の空気aを外部へ排出し、貯水タンク3内の気圧の上昇を制御することができる。
【0055】
飲料水wの流下により貯水タンク3内の飲料水wが徐々に水位を上げ、最終的に、図3(c)に示すように、その水位が貯水タンク3の上面近くに至る。
【0056】
このとき、ポケット部30b内の空間には空気aが残存している。ポケット部30b内の空間が、貯水タンク3内で最も上方に位置するからである。
【0057】
ここで、供給バルブ5を開いて、前記開口4aから取り込んだ飲料水wを前記貯水タンク3外へ排出する。この飲料水wの排出により、排出管4内を飲料水wが移動し、その流れに引かれて、吸引孔30bを通じてポケット部30a内の空気aが引かれる現象(図2の矢印b参照)が起き、これらが空気aの排出手段30として機能とする。結果、貯水タンク3内の空気aを残らず貯水タンク3外に排出することができる。
【0058】
これにより、貯水タンク3内に残存する空気aが無くなり、その結果、飲料水wと空気aとが接触する機会を減らし、品質保持上、衛生上好ましい状態とすることができる。また、排気手段30としての吸引孔30b、ポケット部30a等は、従来の排気弁のような可動部を備えないことから、故障が少なく、メンテナンスの必要が少ない排気手段とすることができる。
【0059】
なお、一般的に、排出管4に設けられる供給バルブ5の位置は、それを扱う人が操作しやすい高さであることが望ましい。また、その供給バルブ5の下にコップやペットボトルを置くスペースが必要である。また、貯水タンク3の上部には、飲料水wの供給源(この実施形態では容器1)を装填する必要がある。
この点、特に、飲料水用サーバーSを机やテーブル等の卓上に載置する場合を想定すると、供給バルブ5の位置は、床面に立った人が操作しやすい高さであることが望ましく、また、その卓上において、供給バルブ5の下にコップやペットボトル等を置くスペースが必要となる。このため、卓上飲料水用サーバーの場合は、供給バルブ5の位置は、必然的に、その机やテーブルへの載置面よりも一定距離以上の高い位置となることが一般的であった。
【0060】
しかし、従来の飲料水用サーバーSでは、飲料水wを外部へ供給するための排出管4は、貯水タンク3の底部から引き出す構成となっていたため(例えば、従来例を示す図6参照)、その排出管4に設けられる供給バルブ5よりも上方に、貯水タンク3を配置せざるを得ない。このため、飲料水用サーバーSが大型化する(装置の高さが高くなる)という問題があった。供給バルブ5の高さは、操作しやすい高さ、コップやペットボトル等に対応した高さに限定されるから、貯水タンク3の位置も高くなるのである。また、貯水タンク3の位置が高くなれば、容器1の装填位置も高くなるので、その容器1の着脱が容易に行うことができなくなる事態も想定される。
【0061】
その点、この発明の構成によれば、排出管4は、吸引孔30bが、貯水タンク3内の空気aの滞留箇所(貯水タンク3内の空間の上部)に臨んでいる限りにおいて、貯水タンク3外への引き出し位置は自由である。このため、前述のように、排出管4を、貯水タンク3の上方部分において外部へ引き出すことが可能となる。
このため、従来の飲料水用サーバーSの場合と比較して、貯水タンク3に対する供給バルブ5の位置を高くすることができる。すなわち、これにより、飲料水用サーバーSを小型化することが可能となる。装置が小型化することにより、容器1の装填位置を低く設定することができ、その結果、容器1の着脱が容易となる。
【0062】
この効果は、この実施形態のほか、以下に示す他の実施形態においても同様に有効であり、また、机やテーブル等の卓上に載置して使用される卓上飲料水用サーバーSにおいて、特に有効である。
【0063】
なお、温水タンク13の設置を省略し、飲料水wの供給を、冷水又は常温の飲料水wを対象とする貯水タンク3のみとした構成も実施可能である。このとき、その貯水タンク3が、液体貯留装置の貯留タンクTとして機能する点は同様である。
【0064】
他の実施形態を、図4に示す。この実施形態は、主たる構成は、前述の実施形態と同様であるので説明を省略し、前述の実施形態との差異点を中心に、以下説明する。
【0065】
この飲料水用サーバーS、貯水タンク3と温水タンク13との間を結ぶ導水管の途中に、中間タンク43を設けた点が、前述の実施形態と異なっている。
【0066】
貯水タンク3における気体aの排出機能は、前述の実施形態と同様であり、その貯水タンク3から引き出された排出管4を通じて飲料水wを貯水タンク3外へ排出することで、その排出管4内の飲料水wの流れによって貯水タンク3内に混入した空気aが吸引され、空気aが外部に排出されるようになっている。
【0067】
また、この実施形態では、さらに、貯水タンク3と温水タンク13との間に設けた前記中間タンク43も、空気aの排出機能を備えている。
すなわち、貯水タンク3を、気体aの排出機能を有する液体貯留装置の貯留タンクTとして機能させているほか、中間タンク43も、気体aの排出機能を有する液体貯留装置の貯留タンクTとして機能させている。
【0068】
以下、この実施形態では、貯水タンク3を第一のタンク3と、温水タンク13を第二のタンク13とを称する。第一のタンク3と第二のタンク13とは、上下方向に並列して設けられている。
【0069】
前記第一のタンク3から引き出した連通管42(導水管)は下方に伸びて、中間タンク43の蓋43aを貫通してその内部空間に連通するように接続されている。連通管42の下端は、中間タンク43の比較的下部において下向きに開口している。前記第一のタンク3内の飲料水wが、この連通管42を通じて中間タンク43に供給される。
この実施形態では、第二のタンク13からの熱影響を最小限にするため、連通管42を、第一のタンク3の上部から引き出している点は、前述の実施形態と同様である。
【0070】
また、中間タンク43からは排出管44(導水管)が引き出され、その排出管44は、前記第二のタンク13内の空間に連通するように接続されている。排出管44は、第二のタンク13の下部に接続されている。
【0071】
この中間タンク43は、その上端に、上方へ突出するポケット部30aを備えている。このポケット部30aによって、中間タンク43内の空間は、その最上部に、中間タンク43内における他の部分の上面よりもさらに上方へ突出する空間を備える。すなわち、このポケット部30a内の空間が、中間タンク43内で最も上方に位置する。
【0072】
この実施形態では、中間タンク43の上面は、図1に示すように、フラットな下面を有する蓋43aで閉じられており、そのフラットな下面に対しポケット部30aの内面が上方へ突出した形態である。なお、そのフラットな下面は、ポケット部30aへ近づくにつれて徐々に上昇する傾斜面とすることもできる。このようにすれば、空気aをポケット部30aに誘導する機能を発揮することができる。
【0073】
また、この実施形態では、ポケット部30aは、中間タンク43の上面を閉じる開閉自在の蓋43aに一体に設けられているが、このように、ポケット部30aは蓋43aに設けても良いし、蓋43aが無い場合はタンクの上部を閉じる上面部材と一体に設けてもよい。
【0074】
飲料水wを外部に供給するための排出管44は、図4に示すように、貯水タンク3内の下部に臨む下向きの開口44aを有している。
また、その排出管44は、前記開口44aから上方へ伸びて、前記中間タンク43の前記ポケット部30aにおいて、上面部材である蓋43aを貫通してその中間タンク43外へ引き出されている。
【0075】
さらに、その排出管44には、前記ポケット部30a内の空間に臨む吸引孔30bが設けられている。前記吸引孔30aは、前記排出管44の周壁に設けられた内外を貫通する孔であり、前記排出管44が前記蓋43aを貫通する部分の直下に設けられている。
中間タンク43内の空間において、蓋43aの直下に空気aが溜まることとなるから、この蓋43aの直下、すなわち、この上面部材としての蓋43aの下面近傍に吸引孔30bを設けることが、中間タンク43内の空気を残らず排出する上で有効である。吸引孔30bの作用は、前述の実施形態の排出手段30と同様である。
【0076】
また、この実施形態では、ポケット部30a内の空間に空気aが溜まりやすくなり、排出管4内を流れる飲料水wの流れによる空気aの吸引も効果的である。
【0077】
この構成からなる液体貯留装置の作用、すなわち、貯留タンクTとしての中間タンク43内に混入した空気aの排気方法について説明する。
【0078】
今、中間タンク43のポケット部30a内の空間に、空気aが残存しているとする。このように空気aが介在している場合において、第二のタンク13の供給バルブ15を開くことにより、その第二のタンク13内の飲料水wが減少すると、中間タンク43内の飲料水wが、排出管44を通じて第二のタンク13に向かって供給される。
【0079】
この飲料水wの排出により、排出管44内を飲料水wが移動し、その流れに引かれて、吸引孔30bを通じてポケット部30a内の空気aが引かれる現象(図2の矢印b参照)が起き、結果、中間タンク43内の空気aを残らず中間タンク43外に排出することができる。また、その中間タンク43には、適宜、第一のタンク3から連通管42を通じて、飲料水wが補充される。
【0080】
これらの実施形態では、液体貯留装置として飲料水用サーバーSを例に説明したが、これらの実施形態に限定されず、この発明の排出手段30の構成は、例えば、各種液体の運搬用タンクや保管用タンク等、その他、各種液体を貯蔵、保管するために用いられる各種貯留タンクを備えた液体貯留装置として採用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 容器
2 導水管
3 貯水タンク(第一のタンク)
3a,43a 蓋
3b 仕切板
4 排出管
4a,44a 開口
5 供給バルブ
6 排気弁
7 冷却装置
9 排出路
10 導入装置
11,41 開閉バルブ
12 導水管
13 温水タンク(第二のタンク)
14 排出管
15 供給バルブ
17 加熱装置
18 ドレン管
19 ドレンバルブ
30 排出手段
30a ポケット部
30b 吸引孔
42 連通管(導水管)
43 中間タンク
44 排出管(導水管)
a 気体(空気)
w 液体(飲料水)
S 飲料水用サーバー
T 貯留タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体(w)を貯留可能な空間を有する貯留タンク(T;3,43)を備え、その貯留タンク(T;3,43)内から貯留タンク(T;3,43)外へ排出管(4,44)が引き出されており、前記排出管(4,44)を通じて前記貯留タンク(T;3,43)内の液体(w)を前記貯留タンク(T;3,43)外へ排出可能とした液体貯留装置において、
前記排出管(4,44)は液体(w)取込用の開口(4a,44a)と、前記貯留タンク(T;3,43)内の上部に臨む吸引孔(30b)とを備え、前記排出管(3)を通じて前記開口(4a,44a)から取り込んだ液体(w)を前記貯留タンク(T;3,43)外へ排出する際に、前記吸引孔(30b)を通じて前記貯留タンク(T;3,43)内の上部に介在する気体(a)を前記排出管(4,44)内に吸引して、その吸引した気体(a)を前記液体(w)とともに前記貯留タンク(T;3,43)外へ排出する機能を有することを特徴とする液体貯留装置。
【請求項2】
前記排出管(4,44)は、前記貯留タンク(T;3,43)の上面部材(3a,43a)を貫通してその貯留タンク(T;3,43)外へ引き出されており、前記吸引孔(30b)は、前記排出管(4,44)の前記上面部材(3a,43a)を貫通する部分の直下に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体貯留装置。
【請求項3】
前記吸引孔(30b)は、前記排出管(4,44)の周壁に設けられた内外を貫通する孔であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体貯留装置。
【請求項4】
前記貯留タンク(T;3,43)内の上部に上方へ突出するポケット部(30a)を設け、前記吸引孔(30b)は、前記ポケット部(30a)内の空間に臨むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の液体貯留装置。
【請求項5】
前記排出管(4,44)の開口(4a,44a)は、前記貯留タンク(T;3,43)の下部に臨むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の液体貯留装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の液体貯留装置を備えた飲料水用サーバーであって、内部に液体(w)を貯留可能な第一のタンク(3)を上方に第二のタンク(13)を下方に並列して設け、前記第一のタンク(3)から引き出した導水管(42)を貯留タンク(T;43)に接続して前記第一タンク(3)内の液体が前記貯留タンク(T;43)に供給されるようにし、前記貯留タンク(T;43)から引き出した前記排出管(44)を前記第二のタンク(13)に接続して、その貯留タンク(T;43)内の液体(w)がその排出管(44)を通じて前記貯留タンク(T;43)外へ排出されてその排出された液体(w)が前記第二のタンク(13)に供給されるようになっていることを特徴とする液体貯留装置を備えた飲料水用サーバー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の液体貯留装置の貯留タンク(T;3,43)内に混入した気体(a)の排気方法であって、内部に液体(w)を貯留可能な空間を有する貯留タンク(T;3,43)を備え、その貯留タンク(T;3,43)内から貯留タンク(T;3,43)外へ排出管(4,44)が引き出されており、前記排出管(4,44)は液体(w)取込用の開口(4a,44a)と、前記貯留タンク(T;3,43)内の上部に臨む吸引孔(30b)とを備え、前記排出管(4,44)を通じて前記開口(4a,44a)から取り込んだ液体(w)を前記貯留タンク(T;3,43)外へ排出する際に、前記吸引孔(30b)を通じて前記貯留タンク(T;3,43)内の上部に介在する気体(a)を前記排出管(4,44)内に吸引して、その吸引した気体(a)を前記液体(w)とともに前記貯留タンク(T;3,43)外へ排出することを特徴とする液体貯留装置の貯留タンクの排気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−46207(P2012−46207A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189243(P2010−189243)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501295707)株式会社フジヤマ (11)
【Fターム(参考)】