液体貯蔵用タンク
【課題】複数の車種で同一の貯蔵タンクを使用することが出来て、しかも、必要以上の液体を充填しなくても、貯蔵タンクの規定位置まで液面を上昇させることが出来るような液体貯蔵用タンクを提供する。
【解決手段】内部に液体を貯蔵するタンク本体(1)と、タンク本体(1)内に取り付けられ且つタンク本体(1)の容量を変更することが出来るタンク容量変更装置(2)とを有しており、タンク容量変更装置(2)は内部に空気を充填することが出来る第2のタンク(3)を有しており、第2のタンク(3)によりタンク本体(1)内に充填された液体を排除する容積を調節する調節機構(4)を備えている。
【解決手段】内部に液体を貯蔵するタンク本体(1)と、タンク本体(1)内に取り付けられ且つタンク本体(1)の容量を変更することが出来るタンク容量変更装置(2)とを有しており、タンク容量変更装置(2)は内部に空気を充填することが出来る第2のタンク(3)を有しており、第2のタンク(3)によりタンク本体(1)内に充填された液体を排除する容積を調節する調節機構(4)を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばキャブオーバタイプの貨物自動車の円滑な運転に必要不可欠な各種液体、例えばパワーステアリング用オイルや、尿素水や、洗浄液等を貯蔵するための液体貯蔵用タンクの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の商用車においては、燃料、潤滑油以外にも各種補機類の運転作動等に必要な各種液体、例えば、パワーステアリング用オイル、触媒用尿素水、ウインドウォシャ用洗浄液等を使用しており、これらはそれぞれのシステムに必要かつ充分な容量をタンク(リザーバ)に貯蔵して搭載している。
【0003】
図9で示す様に、キャブオーバタイプの貨物自動車のキャブC後方にキャブマウントMが設けられている。そして、図10で示すように、キャブマウントMにブラケットBを介してパワーステアリング用のオイルタンクTが取り付けられている。
このオイルタンクTには、注入口、オイルポンプへの吐出口、ギヤボックスからの戻り口を有し、異物の流入を防ぐフィルタが設けられており、また、適正なシステムの油量を維持するために、HIGH/LOWレベルを示す刻印が設けられている。
【0004】
パワーステアリング・システムでは、図11に示すように、リザーブタンクT、エンジンで駆動されるギヤポンプP、ステアリングギアボックスGを経由し、タンクTへ戻る循環回路が構成されている。そして、通常、タンク容量は、オイルポンプの吐出流量に対する割合、或いはシステムの総油量に対する割合から決定されている。
したがって、車種によってギヤボックスなどの相違からシステムの油量に差異があり、多くの車種に対応するためには、容量の異なる複数種のタンクを用意するか、或いは大きめのタンクを用意して、当該タンク内に規定レベル(許容最低液位以上のレベル)までオイルを注入する(適正量以上のオイルを注入する)ことになる。
【0005】
この様に、既成のタンクを流用し必要量(適正量)以上の油量で運転した場合には、重量の増加、或いは交換油量の増大に伴う経費の増加などの問題がある。それ故、多くの車種に対応出来るよう異なった貯溜油量が可能なタンクを提供してかかる無駄を省き、かつ部品を統一して管理部品の低減を可能とすることが望まれている。
【0006】
その他の従来技術としては、リザーバタンクの内部に構成品固定構造を設けた技術(特許文献1参照)や、リザーバタンクの天板下側空間に溜まった空気が容易に天板上側空間に移動出来る様にした技術(特許文献2参照)が存在する。
しかし、これ等の従来技術(特許文献1、特許文献2)は、貯蔵タンクに必要以上の液体を充填することによる上述した問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−182609号公報
【特許文献2】実開平5−83404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、複数の車種に対し同一の貯蔵タンクを使用することが出来て、しかも、必要以上の液体を充填しなくても、貯蔵タンクの規定位置まで液面を上昇させることが出来るような液体貯蔵用タンクの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体貯蔵用タンクは、内部に液体を貯蔵するタンク本体(1、10)と、タンク本体(1、10)内に取り付けられ且つタンク本体(1、10)の容量を変更することが出来るタンク容量変更装置(2)とを有しており、タンク容量変更装置(2)は内部に空気を充填することが出来る第2のタンク(3、30)を有しており、第2のタンク(3、30)によりタンク本体(1、10)内に充填された液体を排除する容積を調節する調節機構(4)を具備していることを特徴としている。
【0010】
また本発明において、第2のタンク(エアー室:3)は中空の立体(3a)であり、調節機構(4)は、一端が第2のタンク(エアー室:3)を構成する中空の立体(3a)に接続され他端がタンク本体の隔壁(1a)を貫通しているロッド(5)を有し、ロッド(5)には雄ネジ(5a)が形成されており、ロッド(5)が貫通しているタンク本体の隔壁部分(1a)には雌ネジ(1s)が形成されており、ロッド(5)のタンク本体の隔壁外部側には回り止め部材としてナット(6)が螺合していることが好ましい。
【0011】
或いは、本発明において、第2のタンク(エアー室:30)内には空気及びタンク本体に貯蔵される液体を充填可能であり、調節機構(40)は、第2のタンク(エアー室:30)の上方に形成された空気注入部(エアー注入口:41)及び空気排出部(エアー排出口:42)と、第2のタンク(エアー室:20)の下方に形成された開口(43)とを有しているのが好ましい。
【0012】
本発明において、前記液体はパワーステアリング用オイルであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明によれば、タンク容量変更装置(2)は内部に空気を充填することが出来る第2のタンク(3、30)を有しており、第2のタンク(3、30)によってタンク本体(1、10)に充填された液体を排除することにより、タンク本体(1、10)に貯蔵されている液体の量を変更し、タンク本体(1、10)の液位を調節することが出来る。
例えば、液量の少ない場合に、タンク本体(1、10)に充填されている液体中に空気が充填された第2のタンク(3)を完全に浸漬することにより、タンク本体(1、10)における液位は上昇する。そして、第2のタンク(3)の容積を適宜設定することにより、貯蔵(或いは充填)されている液体内に第2のタンク(3)を浸漬させれば、タンク本体(1、10)の液位を適宜調節して、複数の車種について同一種類の貯蔵タンクを用いた場合に、タンク本体(1、10)の液位を許容最低液位(LOWレベル)と許容最高液位(HIGHレベル)との間の規定液位にとすることが出来る。
【0014】
そして、本発明において、一端が第2のタンク(エアー室:3)を構成する中空の立体に接続され他端がタンク本体の隔壁(1a)を貫通しているロッド(5)と、ロッド(5)に形成した雄ネジ(5a)と、ロッド(5)が貫通しているタンク本体の隔壁部分(1a)に形成した雌ネジ(1s)により調節機構(4)を構成すれば、第2のタンク(3)のタンク本体(1)における取付位置を調節して、タンク本体(1)内に充填された液体を第2のタンク(3)が排除する容積を適宜調節することが出来る。そして、タンク本体(1)内に充填された液体を第2のタンク(3)が排除する容積を適宜変更することにより、タンク本体(1)における液位を、許容最低液位(LOWレベル)と許容最高液位(HIGHレベル)との間の適切なレベルに調節することが出来る。
その際に、ロッドの雄ネジ(5a)とタンク本体隔壁の雌ネジ(1s)とを螺合し、タンク本体の隔壁(1a)外部側に回り止め部材であるナット(6)を螺合することにより、第2のタンク(3)のタンク本体(1)における位置を保持して、液体中に浸漬された状態を維持することが出来る。
【0015】
或いは、本発明において、調節機構(40)を、第2のタンク(エアー室:30)の上方に形成された空気注入部(エアー注入口:41)及び空気排出部(エアー排出口:42)と、第2のタンク(エアー室:30)の下方に形成された開口(43)で構成すれば、第2のタンク(エアー室:30)の下方に形成された開口(43)から液体を第2のタンク(30)内に侵入させ、或いは、第2のタンク(30)から排出し、空気注入部(エアー注入口:41)から第2のタンク(30)内に空気を注入し或いは空気排出部(エアー排出口:42)を介して第2のタンク(30)から空気を排出して、第2のタンク(30)において空気が充填されている領域の容積を適宜調節することが出来る。
これにより、タンク本体(10)内に充填された液体を第2のタンク(30)が排除する容積を適宜調節し、以て、第2のタンク(30)がタンク本体(10)内に充填された液体を排除する容積を適宜調節して、タンク本体(10)の液位を許容最低液位(LOWレベル)と許容最高液位(HIGHレベル)との間の規定液位にとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示す正面断面図である。
【図2】図1の実施形態の調節機構を示す断面図である。
【図3】図1で示す状態に比較して、オイル充填量を多くした状態を示す正面断面図である。
【図4】第1実施形態において、オイル充填量を最も多くした状態を示す正面断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す正面断面図である。
【図6】第2実施形態において、オイル充填量を最も少なくした状態を示す正面断面図である。
【図7】図6で示す状態に比較して、オイル充填量を多くした状態を示す正面断面図である。
【図8】第2実施形態において、オイル充填量が図6よりも多く、図7よりも少ない状態を示す正面断面図である。
【図9】キャブオーバタイプの貨物自動車におけるキャブマウントのレイアウトを示す模式平面図である。
【図10】パワーステアリング用オイルタンクのレイアウトを示す模式図である。
【図11】パワーステアリング・システムの油圧回路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に図1〜図4を参照し、本発明の第1実施形態を説明する。
図1〜図4において、パワーステアリング用オイルを貯溜するタンク本体1は、その下方側面にオイルポンプPへ連通する吐出口12が設けられ、そして、下面にはパワーステアリングギヤボックスGからのオイルの戻り口11が設けられている。また、タンク本体1内には、フィルタ13が設けられ、その上方には、注入口が設けられてキャップ14で蓋がされており、前記戻り口11は、フィルタ13内に連通されている。
そして、タンク本体1の側面には、貯溜するオイル量を規正する許容最低液位(HIGHレベル)および許容最低液位(LOWレベル)を示す刻線8が設けられている。
【0018】
つぎに、容量変更装置2について説明する。タンク本体1内には、第2のタンク3が設けられており、この第2のタンク3は中空の立体3aで構成され、その内部はエアー室となっている。そして、その上面には、タンク本体1の上面隔壁1aを貫通して垂直に延びるロッド5が固着されている。そのロッド5は、そのほぼ全長に亘って雄ネジ5aが切られており、タンク本体1の上面隔壁1aに設けられた雌ネジ1sと螺合されている。
【0019】
タンク容積の調節機構4は、図2に示すように前記本体隔壁1aに設けられた雌ネジ1s、ロッド5、およびロックナット6で構成されている。第2のタンク3を回転してロッド5の雄ネジ5aとタンク本体隔壁の雌ネジ1sとの螺合位置を変えることにより、第2のタンク3を上下方向に移動させ、タンク本体1内のオイルレベルがHIGHレベル/LOWレベル刻線8間に位置する様に調整する。
調節後、ロックナット6で固定して弛み止めをする。
【0020】
上記構成により、タンク本体1の容積に比較して適正なオイル量が少ない場合には、図1に示すように、第2のタンク3全体をオイル内に浸けて、オイルレベルを最大限に上昇させる。
これに対して、図3に示すように、タンク本体1の容積に比較して適正なオイル量が図1で示す場合ほど少なくはない場合には、第2のタンク2を上方に移動して、第2のタンク3のオイル内に浸かる容積を、図1で示す状態に比較して減少する。
適正なオイル量がタンク本体1の容積に対して適正である場合には、図4で示すように、第2のタンク2を取り外してプラグ9で栓をする。
このように、適正なオイル量とタンク本体1の容積との相対的な関係により、第2のタンク3をオイル内に浸ける容積を適宜調節して、タンク本体1内のオイルレベルを、HIGHレベルの刻線8とLOWレベル刻線8との間に位置させることが出来る。
【0021】
次に、図5〜図8を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図5に示すように、タンク本体10内には第2のタンク30が、その上端部がタンク本体10の上面隔壁10aに密接し、下端部がタンク本体10の底部と間隔をおいて設けられている。
第2のタンク20の上面には、外部と連通する空気注入部41および空気排出部42が設けられており、下端部にはタンク本体10内と連通する開口43が設けられており、以って、調節機構40が構成されている。
【0022】
ここで、空気注入部41は、例えばチェック弁機構を設けて空気の注入のみ可能で空気を排出しない様に構成されている。
空気排出部42は、例えば、ネジ付きキャップのように、常時閉で必要時に開口して内部の空気を排出する構成となっている。
タンク下端部の開口43は、常時オイルがタンク本体10へ流通可能に構成されている。
【0023】
図5を参照して説明された上記の構成により、調整機構の空気注入部41および空気排出部42を用い、外部から第2のタンク30へ空気の注入或いは排出を行い、下端の開口43を通じて第2のタンク30内のオイルを流出入させることができる。これにより、タンク本体10本体内のオイルレベルを、HIGHレベルの刻線8とLOWレベル刻線8との間に位置させることが出来る。
図6〜図8は、適正なオイル量と、第2のタンク30内のオイルの量と、タンク本体10内のオイルレベルとの関係を示す。
【0024】
図6は、適正なオイル量がタンク本体10の容積に比較して少量である場合を示している。この場合には、第2のタンク20内の全体に空気が満たされている。
図7は、適正なオイル量が多い場合を示している図7の場合には、空気排出部42から空気を排出して、第2のタンク20内のオイルレベルを高位置L1としている。図7の場合、タンク10本体内のオイル量は、図6及び図8の場合に比較して多い。
図8は、適正なオイル量は図7よりは少ないが、図6よりも多い場合を示している。図8の場合は、図7の場合に比較して空気注入部41からより多くの空気を第2のタンク20内に注入し、第2のタンク20内のレベルを符号L2で示すレベル(図7における第2のタンク20内のレベルL1よりも下方のレベル)としている。
なお、第2のタンク20内のオイルは、前記開口43を通じて流出入するように構成されている。
【0025】
第2実施形態における上記説明以外の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
【0026】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
図示の実施形態では、パワーステアリング用のオイルタンクに対して本発明を適用しているが、本発明は、パワーステアリング用のオイルタンク以外にも適用可能である。例えば、尿素を用いた排気ガス浄化装置において尿素水を貯蔵するための尿素水タンクや、ウインドウォッシャ用洗浄液を貯蔵する洗浄液タンク等について、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1、10・・・タンク本体
2・・・タンク容量変更装置
3、30・・・第2のタンク
4、40・・・調節機構
5・・・ロッド
6・・・ナット
8・・・HIGH/LOWレベル刻線
41・・・空気注入部
42・・・空気排出部
43・・・第1、第2タンク流通開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばキャブオーバタイプの貨物自動車の円滑な運転に必要不可欠な各種液体、例えばパワーステアリング用オイルや、尿素水や、洗浄液等を貯蔵するための液体貯蔵用タンクの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の商用車においては、燃料、潤滑油以外にも各種補機類の運転作動等に必要な各種液体、例えば、パワーステアリング用オイル、触媒用尿素水、ウインドウォシャ用洗浄液等を使用しており、これらはそれぞれのシステムに必要かつ充分な容量をタンク(リザーバ)に貯蔵して搭載している。
【0003】
図9で示す様に、キャブオーバタイプの貨物自動車のキャブC後方にキャブマウントMが設けられている。そして、図10で示すように、キャブマウントMにブラケットBを介してパワーステアリング用のオイルタンクTが取り付けられている。
このオイルタンクTには、注入口、オイルポンプへの吐出口、ギヤボックスからの戻り口を有し、異物の流入を防ぐフィルタが設けられており、また、適正なシステムの油量を維持するために、HIGH/LOWレベルを示す刻印が設けられている。
【0004】
パワーステアリング・システムでは、図11に示すように、リザーブタンクT、エンジンで駆動されるギヤポンプP、ステアリングギアボックスGを経由し、タンクTへ戻る循環回路が構成されている。そして、通常、タンク容量は、オイルポンプの吐出流量に対する割合、或いはシステムの総油量に対する割合から決定されている。
したがって、車種によってギヤボックスなどの相違からシステムの油量に差異があり、多くの車種に対応するためには、容量の異なる複数種のタンクを用意するか、或いは大きめのタンクを用意して、当該タンク内に規定レベル(許容最低液位以上のレベル)までオイルを注入する(適正量以上のオイルを注入する)ことになる。
【0005】
この様に、既成のタンクを流用し必要量(適正量)以上の油量で運転した場合には、重量の増加、或いは交換油量の増大に伴う経費の増加などの問題がある。それ故、多くの車種に対応出来るよう異なった貯溜油量が可能なタンクを提供してかかる無駄を省き、かつ部品を統一して管理部品の低減を可能とすることが望まれている。
【0006】
その他の従来技術としては、リザーバタンクの内部に構成品固定構造を設けた技術(特許文献1参照)や、リザーバタンクの天板下側空間に溜まった空気が容易に天板上側空間に移動出来る様にした技術(特許文献2参照)が存在する。
しかし、これ等の従来技術(特許文献1、特許文献2)は、貯蔵タンクに必要以上の液体を充填することによる上述した問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−182609号公報
【特許文献2】実開平5−83404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、複数の車種に対し同一の貯蔵タンクを使用することが出来て、しかも、必要以上の液体を充填しなくても、貯蔵タンクの規定位置まで液面を上昇させることが出来るような液体貯蔵用タンクの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体貯蔵用タンクは、内部に液体を貯蔵するタンク本体(1、10)と、タンク本体(1、10)内に取り付けられ且つタンク本体(1、10)の容量を変更することが出来るタンク容量変更装置(2)とを有しており、タンク容量変更装置(2)は内部に空気を充填することが出来る第2のタンク(3、30)を有しており、第2のタンク(3、30)によりタンク本体(1、10)内に充填された液体を排除する容積を調節する調節機構(4)を具備していることを特徴としている。
【0010】
また本発明において、第2のタンク(エアー室:3)は中空の立体(3a)であり、調節機構(4)は、一端が第2のタンク(エアー室:3)を構成する中空の立体(3a)に接続され他端がタンク本体の隔壁(1a)を貫通しているロッド(5)を有し、ロッド(5)には雄ネジ(5a)が形成されており、ロッド(5)が貫通しているタンク本体の隔壁部分(1a)には雌ネジ(1s)が形成されており、ロッド(5)のタンク本体の隔壁外部側には回り止め部材としてナット(6)が螺合していることが好ましい。
【0011】
或いは、本発明において、第2のタンク(エアー室:30)内には空気及びタンク本体に貯蔵される液体を充填可能であり、調節機構(40)は、第2のタンク(エアー室:30)の上方に形成された空気注入部(エアー注入口:41)及び空気排出部(エアー排出口:42)と、第2のタンク(エアー室:20)の下方に形成された開口(43)とを有しているのが好ましい。
【0012】
本発明において、前記液体はパワーステアリング用オイルであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明によれば、タンク容量変更装置(2)は内部に空気を充填することが出来る第2のタンク(3、30)を有しており、第2のタンク(3、30)によってタンク本体(1、10)に充填された液体を排除することにより、タンク本体(1、10)に貯蔵されている液体の量を変更し、タンク本体(1、10)の液位を調節することが出来る。
例えば、液量の少ない場合に、タンク本体(1、10)に充填されている液体中に空気が充填された第2のタンク(3)を完全に浸漬することにより、タンク本体(1、10)における液位は上昇する。そして、第2のタンク(3)の容積を適宜設定することにより、貯蔵(或いは充填)されている液体内に第2のタンク(3)を浸漬させれば、タンク本体(1、10)の液位を適宜調節して、複数の車種について同一種類の貯蔵タンクを用いた場合に、タンク本体(1、10)の液位を許容最低液位(LOWレベル)と許容最高液位(HIGHレベル)との間の規定液位にとすることが出来る。
【0014】
そして、本発明において、一端が第2のタンク(エアー室:3)を構成する中空の立体に接続され他端がタンク本体の隔壁(1a)を貫通しているロッド(5)と、ロッド(5)に形成した雄ネジ(5a)と、ロッド(5)が貫通しているタンク本体の隔壁部分(1a)に形成した雌ネジ(1s)により調節機構(4)を構成すれば、第2のタンク(3)のタンク本体(1)における取付位置を調節して、タンク本体(1)内に充填された液体を第2のタンク(3)が排除する容積を適宜調節することが出来る。そして、タンク本体(1)内に充填された液体を第2のタンク(3)が排除する容積を適宜変更することにより、タンク本体(1)における液位を、許容最低液位(LOWレベル)と許容最高液位(HIGHレベル)との間の適切なレベルに調節することが出来る。
その際に、ロッドの雄ネジ(5a)とタンク本体隔壁の雌ネジ(1s)とを螺合し、タンク本体の隔壁(1a)外部側に回り止め部材であるナット(6)を螺合することにより、第2のタンク(3)のタンク本体(1)における位置を保持して、液体中に浸漬された状態を維持することが出来る。
【0015】
或いは、本発明において、調節機構(40)を、第2のタンク(エアー室:30)の上方に形成された空気注入部(エアー注入口:41)及び空気排出部(エアー排出口:42)と、第2のタンク(エアー室:30)の下方に形成された開口(43)で構成すれば、第2のタンク(エアー室:30)の下方に形成された開口(43)から液体を第2のタンク(30)内に侵入させ、或いは、第2のタンク(30)から排出し、空気注入部(エアー注入口:41)から第2のタンク(30)内に空気を注入し或いは空気排出部(エアー排出口:42)を介して第2のタンク(30)から空気を排出して、第2のタンク(30)において空気が充填されている領域の容積を適宜調節することが出来る。
これにより、タンク本体(10)内に充填された液体を第2のタンク(30)が排除する容積を適宜調節し、以て、第2のタンク(30)がタンク本体(10)内に充填された液体を排除する容積を適宜調節して、タンク本体(10)の液位を許容最低液位(LOWレベル)と許容最高液位(HIGHレベル)との間の規定液位にとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示す正面断面図である。
【図2】図1の実施形態の調節機構を示す断面図である。
【図3】図1で示す状態に比較して、オイル充填量を多くした状態を示す正面断面図である。
【図4】第1実施形態において、オイル充填量を最も多くした状態を示す正面断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す正面断面図である。
【図6】第2実施形態において、オイル充填量を最も少なくした状態を示す正面断面図である。
【図7】図6で示す状態に比較して、オイル充填量を多くした状態を示す正面断面図である。
【図8】第2実施形態において、オイル充填量が図6よりも多く、図7よりも少ない状態を示す正面断面図である。
【図9】キャブオーバタイプの貨物自動車におけるキャブマウントのレイアウトを示す模式平面図である。
【図10】パワーステアリング用オイルタンクのレイアウトを示す模式図である。
【図11】パワーステアリング・システムの油圧回路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に図1〜図4を参照し、本発明の第1実施形態を説明する。
図1〜図4において、パワーステアリング用オイルを貯溜するタンク本体1は、その下方側面にオイルポンプPへ連通する吐出口12が設けられ、そして、下面にはパワーステアリングギヤボックスGからのオイルの戻り口11が設けられている。また、タンク本体1内には、フィルタ13が設けられ、その上方には、注入口が設けられてキャップ14で蓋がされており、前記戻り口11は、フィルタ13内に連通されている。
そして、タンク本体1の側面には、貯溜するオイル量を規正する許容最低液位(HIGHレベル)および許容最低液位(LOWレベル)を示す刻線8が設けられている。
【0018】
つぎに、容量変更装置2について説明する。タンク本体1内には、第2のタンク3が設けられており、この第2のタンク3は中空の立体3aで構成され、その内部はエアー室となっている。そして、その上面には、タンク本体1の上面隔壁1aを貫通して垂直に延びるロッド5が固着されている。そのロッド5は、そのほぼ全長に亘って雄ネジ5aが切られており、タンク本体1の上面隔壁1aに設けられた雌ネジ1sと螺合されている。
【0019】
タンク容積の調節機構4は、図2に示すように前記本体隔壁1aに設けられた雌ネジ1s、ロッド5、およびロックナット6で構成されている。第2のタンク3を回転してロッド5の雄ネジ5aとタンク本体隔壁の雌ネジ1sとの螺合位置を変えることにより、第2のタンク3を上下方向に移動させ、タンク本体1内のオイルレベルがHIGHレベル/LOWレベル刻線8間に位置する様に調整する。
調節後、ロックナット6で固定して弛み止めをする。
【0020】
上記構成により、タンク本体1の容積に比較して適正なオイル量が少ない場合には、図1に示すように、第2のタンク3全体をオイル内に浸けて、オイルレベルを最大限に上昇させる。
これに対して、図3に示すように、タンク本体1の容積に比較して適正なオイル量が図1で示す場合ほど少なくはない場合には、第2のタンク2を上方に移動して、第2のタンク3のオイル内に浸かる容積を、図1で示す状態に比較して減少する。
適正なオイル量がタンク本体1の容積に対して適正である場合には、図4で示すように、第2のタンク2を取り外してプラグ9で栓をする。
このように、適正なオイル量とタンク本体1の容積との相対的な関係により、第2のタンク3をオイル内に浸ける容積を適宜調節して、タンク本体1内のオイルレベルを、HIGHレベルの刻線8とLOWレベル刻線8との間に位置させることが出来る。
【0021】
次に、図5〜図8を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図5に示すように、タンク本体10内には第2のタンク30が、その上端部がタンク本体10の上面隔壁10aに密接し、下端部がタンク本体10の底部と間隔をおいて設けられている。
第2のタンク20の上面には、外部と連通する空気注入部41および空気排出部42が設けられており、下端部にはタンク本体10内と連通する開口43が設けられており、以って、調節機構40が構成されている。
【0022】
ここで、空気注入部41は、例えばチェック弁機構を設けて空気の注入のみ可能で空気を排出しない様に構成されている。
空気排出部42は、例えば、ネジ付きキャップのように、常時閉で必要時に開口して内部の空気を排出する構成となっている。
タンク下端部の開口43は、常時オイルがタンク本体10へ流通可能に構成されている。
【0023】
図5を参照して説明された上記の構成により、調整機構の空気注入部41および空気排出部42を用い、外部から第2のタンク30へ空気の注入或いは排出を行い、下端の開口43を通じて第2のタンク30内のオイルを流出入させることができる。これにより、タンク本体10本体内のオイルレベルを、HIGHレベルの刻線8とLOWレベル刻線8との間に位置させることが出来る。
図6〜図8は、適正なオイル量と、第2のタンク30内のオイルの量と、タンク本体10内のオイルレベルとの関係を示す。
【0024】
図6は、適正なオイル量がタンク本体10の容積に比較して少量である場合を示している。この場合には、第2のタンク20内の全体に空気が満たされている。
図7は、適正なオイル量が多い場合を示している図7の場合には、空気排出部42から空気を排出して、第2のタンク20内のオイルレベルを高位置L1としている。図7の場合、タンク10本体内のオイル量は、図6及び図8の場合に比較して多い。
図8は、適正なオイル量は図7よりは少ないが、図6よりも多い場合を示している。図8の場合は、図7の場合に比較して空気注入部41からより多くの空気を第2のタンク20内に注入し、第2のタンク20内のレベルを符号L2で示すレベル(図7における第2のタンク20内のレベルL1よりも下方のレベル)としている。
なお、第2のタンク20内のオイルは、前記開口43を通じて流出入するように構成されている。
【0025】
第2実施形態における上記説明以外の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
【0026】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
図示の実施形態では、パワーステアリング用のオイルタンクに対して本発明を適用しているが、本発明は、パワーステアリング用のオイルタンク以外にも適用可能である。例えば、尿素を用いた排気ガス浄化装置において尿素水を貯蔵するための尿素水タンクや、ウインドウォッシャ用洗浄液を貯蔵する洗浄液タンク等について、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1、10・・・タンク本体
2・・・タンク容量変更装置
3、30・・・第2のタンク
4、40・・・調節機構
5・・・ロッド
6・・・ナット
8・・・HIGH/LOWレベル刻線
41・・・空気注入部
42・・・空気排出部
43・・・第1、第2タンク流通開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯蔵するタンク本体と、タンク本体内に取り付けられ且つタンク本体の容量を変更することが出来るタンク容量変更装置とを有しており、タンク容量変更装置は内部に空気を充填することが出来る第2のタンクを有しており、第2のタンクによりタンク本体内に充填された液体を排除する容積を調節する調節機構を具備していることを特徴とする液体貯蔵用タンク。
【請求項2】
第2のタンクは中空の立体であり、調節機構は、一端が第2のタンクを構成する中空の立体に接続され他端がタンク本体の隔壁を貫通しているロッドを有し、ロッドには雄ネジが形成されており、ロッドが貫通しているタンク本体の隔壁部分には雌ネジが形成されており、ロッドのタンク本体の隔壁外部側には回り止め部材としてナットが螺合している請求項1の液体貯蔵用タンク。
【請求項3】
第2のタンク内には空気及びタンク本体に貯蔵される液体を充填可能であり、調節機構は、第2のタンクの上方に形成された空気注入部及び空気排出部と、第2のタンクの下方に形成された開口とを有している請求項1の液体貯蔵用タンク。
【請求項4】
前記液体はパワーステアリング用オイルである請求項1〜3の何れか1項の液体貯蔵用タンク。
【請求項1】
内部に液体を貯蔵するタンク本体と、タンク本体内に取り付けられ且つタンク本体の容量を変更することが出来るタンク容量変更装置とを有しており、タンク容量変更装置は内部に空気を充填することが出来る第2のタンクを有しており、第2のタンクによりタンク本体内に充填された液体を排除する容積を調節する調節機構を具備していることを特徴とする液体貯蔵用タンク。
【請求項2】
第2のタンクは中空の立体であり、調節機構は、一端が第2のタンクを構成する中空の立体に接続され他端がタンク本体の隔壁を貫通しているロッドを有し、ロッドには雄ネジが形成されており、ロッドが貫通しているタンク本体の隔壁部分には雌ネジが形成されており、ロッドのタンク本体の隔壁外部側には回り止め部材としてナットが螺合している請求項1の液体貯蔵用タンク。
【請求項3】
第2のタンク内には空気及びタンク本体に貯蔵される液体を充填可能であり、調節機構は、第2のタンクの上方に形成された空気注入部及び空気排出部と、第2のタンクの下方に形成された開口とを有している請求項1の液体貯蔵用タンク。
【請求項4】
前記液体はパワーステアリング用オイルである請求項1〜3の何れか1項の液体貯蔵用タンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−116270(P2011−116270A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276218(P2009−276218)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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