説明

液切れ検知装置

【課題】
送液配管内の液切れを検知するためのエアセンサの感度調節の操作性と信頼性を向上させる。
【解決手段】
エアセンサ1の出力はセンサ出力変換部2に入力されて適宜増幅された後、デジタル変換値に変換される。デジタル変換値はセンサ出力記憶部3にて一定のサンプリング間隔で記憶され、センサ出力表示部5に表示される。閾値入力記憶部6には作業者がセンサ出力表示部5の表示を参考にして閾値を入力する。比較演算部4はセンサ出力記憶部3からのセンサ出力と、閾値入力記憶部6からの閾値とを比較して液切れに関する判定結果をカウンタ7に出力する。カウンタ7は連続して液切れと判定された回数をカウントする。他方、カウント設定値入力記憶部9には連続液切れ回数の基準となるカウント設定値が入力される。カウント比較部8はカウンタ7の連続液切れ回数と、カウント設定値入力記憶部9のカウント設定値とを比較して液切れ判定結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液流路の液切れを検知するための液切れ検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料の自動分析装置において、送液配管を用いて液体状の試料や溶媒を移送することは、装置の基本的な機能の一つである。とくに液体クロマトグラフ分析を自動化するためには、限られた容量の試料や溶媒を収容した貯槽から試料や溶媒を、空気が混入することなく安定的に、送液配管を介して分離カラムに供給する必要がある。液体貯槽から送液配管に液体を移送させる仕方として通常行われるのは、送液配管の一端を液体貯槽の底部まで浸漬させて、吸引送液ポンプで液体を吸引することである。この場合、吸引送液中に送液が途絶える液切れの状態を検知する必要がある。そのためには送液配管内の途中に気体が混入したことを検知するエアセンサを取り付けるのが普通である。
【0003】
送液配管の途中に取り付けられて液切れを検知する装置として、たとえば特許文献1に記載された液切れセンサがある。この液切れセンサは、液体供給配管の途中にフォトセンサを備えた光透過性の専用フローセルを割り込ませて装着するものである。この装置は、適当なジョイントにより専用フローセルを送液配管の途中に装着できるならば、送液配管の種類や管径に関わりなく、一定の検出感度で長期間安定した液切れ検知を可能とする。
【0004】
【特許文献1】特開2003−248012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の「発明が解決しようとする課題」には、液体供給配管のチューブの外側に取り付けてチューブ内の液の有無を検知するタイプが主流であるが、このタイプでは、チューブ径や液の種類に応じてエアセンサを選択したり感度調節したりしなければならないという問題が記載されている。しかしながら、特許文献1のように専用のフローセルを液体供給配管の途中に割り込ませて装着するものは、精巧な製造技術を必要とし、コスト高になりがちで、汎用性にかける面を有する。
【0006】
また、液切れの判定は、たとえばエアセンサの出力電圧を増幅させたものと電圧発生手段からの閾値とを比較器に入力しておこない、感度調節の一つの方法として閾値を増減させることがおこなわれる。実際は、閾値を手動でアナログ的にボリューム調整することで感度調節をおこなうことが多く、たとえば液体クロマトグラフ分析において溶離液の種類などの分析条件を頻繁に変えるごとに閾値を調整するのは、手間のかかる煩雑な作業であり、液切れの判定の信頼性が低くなるという課題を有する。
【0007】
したがって本発明は、送液配管内の液切れを検知するためのセンサの感度調節の操作性と、液切れの判定の信頼性を向上させることを目的とする。この目的が達成できれば、液体供給配管の外側に取り付けるタイプのエアセンサを広く活用できるようになる。また、特許文献1に記載されているような専用フローセルを使用するタイプの液切れセンサであっても、液性の異なる種々の液体を細い流路に流す場合のように感度調節の必要な場面に有用な技術を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、エアセンサの出力の信号をデジタル化する一方で、閾値もまた数値化して比較演算手段に入力する構成とすることに着目し、鋭意研究の結果、上記課題を解決する液切れ検知装置を完成した。すなわち本発明の第1は、送液配管内の液切れを検知するための液切れ検知装置であって、前記送液配管内の特定部位に気体が存在することを検知するエアセンサと、このエアセンサの出力を適宜増幅しデジタル変換値を出力するセンサ出力変換部と、前記デジタル変換値を受信して一定のサンプリング間隔で記憶し、センサ出力を出力するセンサ出力記憶部と、前記センサ出力を画面に表示するセンサ出力表示部と、液切れと判定するための閾値の入力を受け、記憶する閾値入力記憶部と、前記センサ出力記憶部からのセンサ出力と前記閾値入力記憶部からの閾値とを比較して液切れに関する判定結果を出力する比較演算部と、を備えた前記液切れ検知装置である。
【0009】
センサ出力表示部には、デジタル変換されたセンサ出力の瞬間値またはサンプリング複数回分の平均値を表示してもよいし、経過時間を横軸、センサ出力を縦軸としたグラフを表示してもよい。
【0010】
閾値入力記憶部には、作業者が所定範囲の任意の閾値を、キーボード、タッチパネル等の入力装置により入力することができる。入力すべき閾値は、たとえばつぎのようにして決められる。まず、あらかじめ送液配管内に液体を満たしたときのセンサ出力Wをセンサ出力表示部から確認する。つぎに、送液配管内に気体を満たしたときのセンサ出力Aをセンサ出力表示部から確認する。作業者は、これらのセンサ出力を両端とする範囲内で、その状況に最適な閾値を決定して、閾値入力記憶部に入力することができる。送液の目的により、たとえ小さな気泡であっても絶対に空気が混入してはならないという状況においては、閾値をセンサ出力Wに近い値に設定し、逆に、少しくらい気泡が混入しても、その液体を無駄なく使い切りたいという状況においては、閾値をセンサ出力Aに近い値に設定するのが好適である。
【0011】
閾値の入力を作業者の判断にゆだねるのではなく、装置が閾値を自動的に決定することにより、液切れ検知装置の客観性を高め、作業者の負担を軽減することが望まれることがある。本発明の第2はこのような要請にこたえるものである。すなわち本発明の第2は、送液配管内の液切れを検知するための液切れ検知装置であって、前記送液配管内の特定部位に気体が存在することを検知するエアセンサと、このエアセンサ出力を適宜増幅しデジタル変換値を出力するセンサ出力変換部と、前記デジタル変換値を受信して一定のサンプリング間隔で記憶し、センサ出力を出力するセンサ出力記憶部と、このセンサ出力記憶部から、送液配管内に液体を満たしたときのセンサ出力Wと前記送液配管内に気体を満たしたときのセンサ出力Aとを受信し、
閾値=F(A−W)+W; (0.1<F<0.9) ・・・[式1]
を用いて前記閾値を算出する閾値自動設定部と、前記閾値自動設定部から液切れと判定するための閾値の入力を受け、記憶する閾値入力記憶部と、前記センサ出力記憶部からのセンサ出力と前記閾値入力記憶部からの閾値とを比較して液切れに関する判定結果を出力する比較演算部と、を備えた前記液切れ検知装置を提供する。式1において、係数Fのとりうる値の範囲は0.1〜0.9であるが、特別な要請がなければ一般的には0.5付近の値とするのが好適である。
【0012】
送液配管内の特定部位に気体が存在することを検知するエアセンサは、それ自体送液配管内の特定部位を連続的に監視している。このエアセンサの出力は、センサ出力変換部を経てデジタル変換値に変換されたのち、センサ出力記憶部で一定のサンプリング間隔で記憶される。そのサンプリング間隔は送液の流速により適宜決定すればよい。たとえば、液体クロマトグラフィにおいては100ms程度のサンプリング間隔が選ばれる。デジタル化されサンプリングされた個々のセンサ出力は、送液配管内の特定部位の瞬間値である。したがって、第1のサンプリングデータは流れる液体中に混在した小さな気泡をたまたま検出したという可能性がある。しかし、引き続く第2のサンプリングデータ、さらに第3のサンプリングデータも気体を検出したならば、有意に液切れであると判定する、そういうアルゴリズムを導入することは、液切れ検出の信頼性を増すために有用である。すなわち、本発明に係る液切れ検知装置は、上記の構成要素に加えて、前記比較演算部の判定結果を受信して、その判定結果が連続して何回液切れの判定となったか、すなわち連続液切れ回数をカウントするカウンタと、連続して何回液切れとなれば液切れと判定するかの基準となるカウント設定値の入力を受け、記憶するカウント設定値入力記憶部と、前記カウンタからの連続液切れ回数と前記カウント設定値入力記憶部からのカウント設定値とを比較して液切れに関する判定結果を出力するカウント比較部と、を備えることで信頼性が増す。
【0013】
本発明における送液配管内の特定部位とは、液切れ検知装置を取り付ける部位であり、送液配管内の位置に限定はない。また、送液配管内の特定部位に気体が存在することを検知するエアセンサについても限定はなく、フォトセンサをはじめ、電気伝導度センサ、静電容量センサ等が例示できる。ただしエアセンサとして透過型フォトセンサを使用する場合には、送液配管内の特定部位が光透過性である必要がある。要するに、使用されている送液配管に適したエアセンサであれば好適である。さらに、特許文献1に開示されているような専用フローセルを配管に割り込ませて装着するタイプであっても、もちろん差し支えない。
【0014】
しかしながら、本発明に係る液切れ検知装置は、送液配管のチューブの外側に取り付けてチューブ内の液の有無を検知するタイプの液切れ検知装置に適用するのが最も効果的である。すなわち、送液配管の光透過性管部の外側に取り付けるのに適した透過型フォトセンサを使用するのが最も好適である。送液配管の材質や管径により、内部を流れる液体の濡れの程度が変わり、センサの誤動作・誤判定が起こりやすくなる状況下において、本発明の有効性が発揮される。
【発明の効果】
【0015】
発明の第1においては、デジタル化して表示される液切れセンサの出力信号を参照した上で、作業者が閾値を入力する構成としたので、送液配管の材質や管径が変わり、センサの誤動作・誤判定が起こりやすくなる状況下においても、センサの感度調節がそのつど容易かつ正確にできる。発明の第2においては、装置が閾値を自動的に決定することにより、液切れ検知装置の客観性を高め、作業者の負担をいっそう軽減することができる。
【0016】
したがって本発明においては、分析条件に合わせた閾値を簡便に設定可能となり、信頼性の高い液切れの判定を提供することになる。また、エアセンサが透過型フォトセンサである場合、送液配管の光透過性管部の外側に取り付け、液の有無を検知することが可能となり、送液配管を切断することなく、装着が簡単で、配管上をスライドさせて最適な装着位置を決めるといったことが容易にできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のさらなる理解のため、実施の形態を図面を用いて説明する。
【0018】
図3に、本発明の液切れ検知装置が適用される送液配管と、この送液配管内の特定部位に気体が存在することを検知するエアセンサの代表的な実施例を示す。発光ダイオード21とフォトトランジスタ22を組み合わせて構成した透過型フォトセンサを、テフロン(登録商標)チューブ20(断面を示す。)の外側に取り付けて、チューブ内の液体が気体に置き換わったときの屈折率の違いに起因する透過光の強度を電圧出力に変換して測定するものである。23はフォトトランジスタ回路の電源電圧、24は負荷抵抗である。
【0019】
図4は、送液配管内に液体が存在する状態から、液切れにより気体が存在する状態に移行するときのセンサ出力の変化を模式的に表した説明図である。この図は、液切れを検知するためには、判断の基準としての閾値を一定範囲の中から選択して設定する必要があることを示している。
【0020】
図1は、本発明の第1に係る液切れ検知装置の構成と情報の流れを例示したものである。エアセンサ1の出力は、センサ出力変換部2に入力されて適宜増幅された後、デジタル変換値に変換される。このデジタル変換値はセンサ出力記憶部3にて一定のサンプリング間隔で記憶され、センサ出力表示部5に表示される。閾値入力記憶部6には、作業者が所定範囲の任意の閾値を、キーボード、タッチパネル等の入力装置により入力することができる。入力すべき閾値は、たとえばつぎのようにして決められる。まず、あらかじめ送液配管内に液体を満たしたときのセンサ出力Wをセンサ出力表示部5から確認する。つぎに、送液配管内に気体を満たしたときのセンサ出力Aを同じくセンサ出力表示部5から確認する。作業者は、これらのセンサ出力を両端とする範囲内で、その状況に最適な閾値を決定して、閾値入力記憶部6に入力する。図中、センサ出力表示部5から閾値入力記憶部6に向かう点線の矢印は、作業者がセンサ出力表示部5の表示を参考にして閾値入力記憶部6に閾値を入力するということを表す。比較演算部4は、センサ出力記憶部3からのセンサ出力と、閾値入力記憶部6からの閾値とを比較して液切れに関する判定結果をカウンタ7に出力する。カウンタ7は、連続して液切れと判定された回数をカウントする。他方、カウント設定値入力記憶部9には、連続して何回液切れとなれば液切れと判定するかの基準となるカウント設定値が入力され記憶される。つぎに、カウント比較部8は、カウンタ7からの連続液切れ回数と、カウント設定値入力記憶部9からのカウント設定値とを比較して液切れに関する判定結果を出力する。その出力先を、この図では液切れ表示部10に出力するとしているが、判定結果の出力先は必ずしも液切れ表示部に限定されるものではない。たとえば液切れ検知部の下流に制御手段を備えた流路切り替えバルブを設置しておき、判定結果の出力先をその制御手段にすることにより、混入した気体を流路内から排出させるなどの措置を取ることも可能である。
【0021】
図2は、本発明の第2に係る液切れ検知装置の構成と情報の流れを例示したものである。エアセンサ1の出力は、センサ出力変換部2に入力されて適宜増幅された後、デジタル変換値に変換される。このデジタル変換値はセンサ出力記憶部3にて一定のサンプリング間隔で記憶され、閾値自動設定部11に送られる。閾値自動設定部11は、このセンサ出力記憶部3から、たとえば送液配管内に液体を満たしたときのセンサ出力Wと、前記送液配管内に気体を満たしたときのセンサ出力Aとを受信し、
閾値=F(A−W)+W; (0.1<F<0.9) ・・・[式1]
を用いて閾値を自動的に算出する。閾値入力記憶部6は、閾値自動設定部11で算出された閾値の入力を受け記憶する。この段階以降は、図1に示したのと同様の比較演算および連続液切れ回数のチェックがおこなわれて、液切れの判定が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1に係る液切れ検知装置の構成と情報の流れを例示する図である。
【図2】本発明の第2に係る液切れ検知装置の構成と情報の流れを例示する図である。
【図3】本発明の液切れ検知装置が適用されるチューブ状の送液配管と、この送液配管の外側に取り付けられて液切れを検知する透過型フォトセンサとを用いる液切れ検知部の構成と作動原理を説明する図である。
【図4】送液配管内に液体が存在する状態から、液切れにより気体が存在する状態に移行するときのセンサ出力の変化を模式的に表した説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 センサ
2 センサ出力変換部
3 センサ出力記憶部
4 比較演算部
5 センサ出力表示部
6 閾値入力記憶部
7 カウンタ
8 カウント比較部
9 カウント設定値入力記憶部
10 液切れ表示部
11 閾値自動設定部
20 テフロン(登録商標)チューブ
21 発光ダイオード
22 フォトトランジスタ
23 電源電圧
24 負荷抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液配管内の液切れを検知するための液切れ検知装置であって、
前記送液配管内の特定部位に気体が存在することを検知するエアセンサと、
このエアセンサの出力を適宜増幅しデジタル変換値を出力するセンサ出力変換部と、
前記デジタル変換値を受信して一定のサンプリング間隔で記憶し、センサ出力を出力するセンサ出力記憶部と、
前記センサ出力を画面に表示するセンサ出力表示部と、
液切れと判定するための閾値の入力を受け記憶する閾値入力記憶部と、
前記センサ出力記憶部からのセンサ出力と前記閾値入力記憶部からの閾値とを比較して液切れに関する判定結果を出力する比較演算部と、
を備えた前記液切れ検知装置。
【請求項2】
送液配管内の液切れを検知するための液切れ検知装置であって、
前記送液配管内の特定部位に気体が存在することを検知するエアセンサと、
このエアセンサの出力を適宜増幅しデジタル変換値を出力するセンサ出力変換部と、
前記デジタル変換値を受信して一定のサンプリング間隔で記憶し、センサ出力を出力するセンサ出力記憶部と、
このセンサ出力記憶部から、送液配管内に液体を満たしたときのセンサ出力Wと、前記送液配管内に気体を満たしたときのセンサ出力Aとを受信し、
閾値=F(A−W)+W; (0.1<F<0.9) ・・・[式1]
を用いて前記閾値を算出する閾値自動設定部と、
前記閾値自動設定部から液切れと判定するための閾値の入力を受け記憶する閾値入力記憶部と、
前記センサ出力記憶部からのセンサ出力と前記閾値入力記憶部からの閾値とを比較して液切れに関する判定結果を出力する比較演算部と、
を備えた前記液切れ検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液切れ検知装置において、さらに
前記比較演算部の判定結果を受信して、その判定結果が連続して何回液切れの判定となったか、すなわち連続液切れ回数をカウントするカウンタと、
連続して何回液切れとなれば液切れと判定するかの基準となるカウント設定値の入力を受け、記憶するカウント設定値入力記憶部と、
前記カウンタからの連続液切れ回数と、前記カウント設定値入力記憶部からのカウント設定値とを比較して液切れに関する判定結果を出力するカウント比較部と、
を備えた前記液切れ検知装置。
【請求項4】
前記エアセンサは、送液配管の光透過性管部の外側に取り付けるのに適した透過型フォトセンサである請求項1〜3のいずれかに記載の液切れ検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−214912(P2006−214912A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29011(P2005−29011)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】