説明

液収容容器

【目的】 希釈液が外気へ揮発したり、誤って外部へ流出してしまったりせず、無駄なく使用できると共に、外部へ流出における皮膚への接触による人的危険性を回避する高揮発性液体収容容器を提供する。
【構成】 本発明は、容器内壁に周状当接し、容器内を、開口部を備える使用液収容室と、使用溶液の溶剤を収容する溶剤収容室とに区画する隔壁に、溶剤収容室から使用液収容室への液の流動は許容するが使用液収容室から溶剤収容室への液の移動は遮断する逆止弁を配置すると共に、該隔壁を容器の外に露出した操作部の操作に連動して溶剤収容室を縮小するように移動可能となし、この隔壁の移動によって溶剤収容室から使用液収容室へ溶剤を供給するようになした液収容容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペイントマーカーや修正液、接着剤、マニキュアやアイライナー、靴クリームなど、主に揮発性の溶剤を配合した液を収容する液収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
修正具やマニキュアなどの揮発性の溶剤を配合した液体を収容した容器では、キャップを取り外して外気へ開口すると、収容した液の溶剤が揮発していき、使用頻度を増す程高濃度となって、液粘度が増大して容器から出にくくなったり、塗布が困難となることがある。特許文献1には、希釈液を収容した容器を別途またはキャップと一体化させて設け、使用中に高粘度化した塗布液へ適宜希釈液を注入して希釈できるようにしたものが開示されている。
【特許文献1】実開平03−068497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような希釈液を別途収容した容器を設けるものでは、希釈液を、収容した容器の開口部から塗布液が収容される容器の開口部へ、使用者が注入を行う必要性があり、注入中の希釈液が、揮発や外部へ誤って流出してしまうことによる無駄な液量の減少に対する配慮が必要となる。さらには、外部へ誤って流出した希釈液の皮膚への接触による人的危険性も伴う。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、容器内壁に周状当接し、容器内を、開口部を備える使用液収容室と、使用液の溶剤成分を収容する溶剤収容室とに区画する隔壁に、溶剤収容室から使用液収容室への液の流動は許容するが使用液収容室から溶剤収容室への液の移動は遮断する逆止弁を配置すると共に、該隔壁を容器の外に露出した操作部の操作に連動して溶剤収容室を縮小するように移動可能となし、この隔壁の移動によって溶剤収容室から使用液収容室へ溶剤を供給するようになした液収容容器を要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、希釈液等の供給を容器内で行うので、希釈液が外気へ揮発したり、誤って外部へ流出してしまったりせず、無駄なく希釈液が使用できると共に、希釈液の皮膚への接触による人的危険性も抑制でき、かつ、使用中に高粘度化した塗布液へ適宜希釈液を注入して希釈できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
容器としては、内容物である使用液及び使用液の溶剤に対して、溶解、溶融を伴わない材質で形成されるものであればよく、例えば、修正液などの希釈液として用いられるメチルシクロヘキサンに対しては、金属の他、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12,ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリオキシメチレン、ポリエチレンナフタレート・ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリブチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポエチレングリコール共重合体などを一種若しくは二種以上混合した合成樹脂を成形したものが挙げられるが、特に、透明性を有する合成樹脂を成形したものであれば、内容物の希釈状態などを外部から確認できて好適である。
【0007】
溶剤は、修正液では、塗布後の塗布面の速乾性が必要とされ、蒸気圧、蒸発速度などからメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、イソヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの有機溶剤を適宜選択することができる。中でも、大気中に放出しても光化学スモッグの原因にならず、また、有機溶剤中毒予防規制を受けず比較的毒性の低い炭化水素系有機溶剤であるメチルシクロヘキサンが好適である。
【0008】
隔壁は、塗布液と接して配置されることになるので、容器と同様に希釈液に対して、溶解、溶融を伴わない材質で形成されると共に、隔壁を容器の外に露出した操作部の操作に連動して、容器側壁に周状当接しつつ移動可能となしたものであればよい。例えば、希釈液がメチルシクロヘキサンであれば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12,ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート・ポリブチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポエチレングリコール共重合体などの、容器の材質に対して比較的軟質の合成樹脂が挙げられる。また、隔壁は特に一体で形成される必要性はなく、例えば、隔壁の容器の内壁に対する周状当接する部分をニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴムなどの加硫ゴム、ポリエステル系、ニトリル系、ポリアミド系、フッ素系などの熱可塑性エラストマーなどのエラストマーにて形成し、前述にて例示した容器の材質と組み合わせて形成してもよい。
【0009】
逆止弁としては、希釈液を収容した溶剤収容室から塗布液を収容した使用液収容室への液の流動は許容するが使用液収容室から溶剤収容室への液の移動は遮断すると共に、隔壁と同様に希釈液に対して、溶解、溶融を伴わない材質で形成されていればよく、例えば、希釈液がメチルシクロヘキサンであれば、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴムなどの加硫ゴム、ポリエステル系、ニトリル系、ポリアミド系、フッ素系などの熱可塑性エラストマーなどのエラストマーの成形品に密閉開閉部を設けたものや、金属や合成樹脂製の弁体をコイルスプリングで付勢したものなどが挙げられる。
【0010】
容器の外に露出した隔壁に連動した操作部の連動手段としては、隔壁を連動により容器内側壁に沿って移動可能となすものであればよく、ネジ螺合による連動、棒状のシリンジ体による連動などが例示できる。また、連動部分が希釈液と接する場合には、前述と同様に希釈液に対して、溶解、溶融を伴わない材質で連動部分を形成する必要がある。
【実施例】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明における実施例を説明する。
図1に本発明における実施例の全体像の縦断面図を示す。
容器本体1に口部材2が圧入固定され、口部材2の開口部にはハケなどの塗布体4を有するキャップ3が螺合されている。容器本体1と口部材2及びキャップ3はポリブチレンテレフタレートの射出成形である。塗布体4はナイロン6製の繊維を束ねたものを用いた。
容器本体1の底部には操作つまみ5が回転可能な状態で配置され、ネジ体5aにはポリブチレンテレフタレート・ポリブチレングリコール共重合体の射出成形品よりなる隔壁6が螺合されて、容器本体内部を区画している。
隔壁6で区画された容器内部上方は、使用液収容室7であり、メチルシクロヘキサンを主溶剤とし、酸化チタンを白色材料として分散配合した修正液8が収容されている。一方、容器下部は、溶剤収容室10であり、修正液8の主溶剤成分であるメチルシクロヘキサンが希釈液9として収容されている。
【0012】
図1のI部拡大図である図2に示すように、隔壁6には、連通孔6aが開けられ、連通孔6aを使用液収容室7側から被覆するようにナイロン6製の射出成形品よりなる弁11が、係止部11aを隔壁6に係止して固定されている。
この、弁11は、連通孔6aを被覆する被覆部11bの径を、連通孔6aの孔径よりも大径とし、使用液収容室7からの圧力が付与しても被覆部11bは、連通孔6aを開口させず、溶剤収容室9からの圧力の付与によってのみ、屈曲部11cによって被覆部11bが屈曲して、連通孔6aを開口する、所謂逆止弁となしている。
【0013】
図3は図1のA−A’線の横断面を示したものである。
隔壁6の断面は、容器の内壁と略同形状の楕円体になっており、操作つまみ5の回転動作によってネジ体5aと一緒に回転することを防止して、廻り止めの役目をしている。
操作つまみ5は容器本体1と回転可能に嵌合され、容器本体1との接合部には、フッ素系ゴムで形成されたOリング12を配置することにより、希釈液9の漏れを防止している。また、図示はしないが、操作つまみ5の容器本体1との摺動面には、回転方向垂直に歯車のように溝が全周に形成され、一方、その溝に向けて容器本体1側から薄肉の突起物が回転方向側へ突出している。そのため、逆方向へ回転させようとすると薄肉の突起物が溝部に食い込み、逆方向へは回転できないようになっている。操作つまみ5を時計回転方向へ回転させたときに隔壁6が容器底部方向に移動するようにネジ体5aが形成されているので、隔壁6は容器内部上部である使用液収容室7側には移動しない。従って、操作つまみ5を時計回転方向に回転させると連動して、隔壁6は容器底部方向に移動し、溶剤収容室10を縮小、その結果、希釈液9が圧縮されて、連通孔6aに被覆された弁11が開口して、希釈液9が使用液収容室7内の修正液8へ流入する。操作つまみ5の回転を止めれば隔壁6の移動も停止し、弁11が閉塞されて希釈液9の使用液収容室7側への流入も中止される。
キャップを閉めた状態で容器全体を振ることにより、高粘度化した修正液を希釈することができ、文字修正用として適正化された粘度の修正液を得ることができる。
【0014】
図4に他の一例を示す。
図4に示したものは、操作つまみ5及び、これに連結しているネジ体5aを隔壁6の中心から外した側方へ配置し、隔壁6の使用液収容室7側に、すり鉢状の凹部6bを形成し、このすり鉢状の凹部6bの中心部分となる底部に弁11を配置したものである。
修正液8は、主溶剤に比べて重い比重の酸化チタンを白色材料として分散配合しているため、静置状態が続く程、修正液8中に分散した酸化チタンは、使用液収容室7の底部に沈降することになるが、使用液収容室7の底部が、すり鉢状の凹部6bとなるため、沈降する酸化チタンは、この凹部6b内に向かって堆積沈降する。操作つまみ5の回転によって、溶剤収容室10が圧縮されて、希釈液9が弁11より使用液収容室7内の修正液8へ流入するが、このとき希釈液9は、凹部6b内に堆積沈降した酸化チタン全体の真下に位置することになる。希釈液9の流入による加圧と、修正液8の主溶剤と同じ希釈液9の軽い比重によって、希釈液9は、堆積沈降した酸化チタン全体を真下から、障害となる酸化チタンの粒子を掻き分けながら、修正液8の界面へ向かって押し広がっていくため、結果的に、修正液8を希釈しつつ、沈降物全体を破壊しながら分散させることになる。これにより、使用する前に、キャップを閉めた状態で容器全体を振るという煩わしい作業を行うことなく、希釈後の修正液8をそのまま使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一例を示す縦断面図。
【図2】図1のI部拡大図。
【図3】図1のA−A’線断面矢視図。
【図4】他の一例を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 容器本体
2 口部材
3 キャップ
4 塗布体
5 操作つまみ
5a ネジ体
6 隔壁
6a 連通孔
6b 凹部
7 使用液収容室
8 修正液
9 希釈液
10 溶剤収容室
11 弁
11a 係止部
11b 被覆部
11c 屈曲部
12 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内壁に周状当接し、容器内を、開口部を備える使用液収容室と、使用液の溶剤成分を収容する溶剤収容室とに区画する隔壁に、溶剤収容室から使用液収容室への液の流動は許容するが使用液収容室から溶剤収容室への液の移動は遮断する逆止弁を配置すると共に、該隔壁を容器の外に露出した操作部の操作に連動して溶剤収容室を縮小するように移動可能となし、この隔壁の移動によって溶剤収容室から使用液収容室へ溶剤を供給するようになした液収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−184731(P2009−184731A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333234(P2008−333234)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】