液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置
【課題】液吐出不良検出装置の出力調整を低コストな構成でかつ容易に行うことが可能な液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置であって、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する第1の調整手段と、前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する第2の調整手段と、を備えている。
【解決手段】発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置であって、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する第1の調整手段と、前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する第2の調整手段と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置、その調整方法、およびその装置を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、微細なノズルから微小な各色インク滴を吐出する各色のインクジェットヘッドを備え、用紙等の記録媒体に対してそのインクジェットヘッドを移動させながらインク滴を吐出することで記録媒体上に画像形成を行う。高解像度の画像形成のためには、ノズルを微細化してインク滴サイズを微小化する必要がある。この場合、ノズルが微細なため、印刷停止時にインクが乾燥するなどによりノズル詰まりが起きてインク滴の吐出不良が発生し、画像にドット抜けなどが生じて画像品質の低下を引き起こしてしまう。
【0003】
従来より、このノズル詰まりによる画像品質の低下を防ぐために、液吐出不良を検出する液吐出不良検出装置がインクジェット記録装置に備えられていた。このような液吐出不良検出装置は、例えば、ノズルから吐出するインク滴などの液滴に、レーザダイオードなどの発光素子から射出したレーザ光を照射して散乱光を発生させ、その散乱光をフォトダイオードなどの受光素子で受光し、受光素子の出力に基づく出力電圧と基準電圧値とを比較して、インク滴が正常に吐出されたか否かを判定することで液吐出不良を検出する。
【0004】
例えば、特許文献1では、記録ヘッドが長い場合においても、光の回折を受けずに確実な不吐出検出を行うために、2本のビームを検出する2つの受光素子を副走査方向の互いに反対の位置に設け、各受光素子に近い位置のノズルを用い、これらノズルからビームに向かってインク滴を順次時系列的に吐出制御しながら、そのインク滴の吐出タイミングと受光素子の検知タイミングとに基づいて吐出不良を特定する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、発光素子と受光素子を2組設ける必要があるので、コストが高くなり、また、制御が複雑になってしまう。
【0006】
また、特許文献2では、不動作ノズルの検出の精度を高めるために、検査対象のノズル位置に応じて、インク滴の軌跡に光束点が位置するように、光束点を光軸に沿った方向に移動させる構成が開示されている。かかる光束点の移動は、発光素子とレンズの距離を変化させる駆動部により調整している。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、発光素子とレンズの距離を変化させる駆動部に高い位置精度が要求されるため、コストが高くなり、また、制御が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3501599号公報
【特許文献2】特許第4273627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液吐出不良検出装置の出力調整を低コストな構成でかつ容易に行うことが可能な液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置であって、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する第1の調整手段と、前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する第2の調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置の調整方法であって、前記ノズルのインク吐出位置と前記受光素子間の距離を決定する工程と、前記光ビームの焦点位置を決定する工程と、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する工程と、前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる液吐出不良検出装置によれば、液吐出不良検出装置の出力調整を低コストな構成でかつ容易に行うことが可能な液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態に係る液吐出不良検出装置を備えるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)の一例の構造を正面から示す図である。
【図2】図2は、インクジェットプリンタの一部を斜め上から観察した図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかるインクジェットプリンタの要部構成の一例を示すブロック図である。
【図4−1】図4−1は、移動部の一構成例を示す図である。
【図4−2】図4−2は、移動部の他の構成例を示す図である。
【図5】図5は、液吐出不良検出装置の動作原理を説明するための説明図である。
【図6】図6は、光ビームの強度分布の一例を示す図である。
【図7】図7は、光ビームとノズルから吐出されたインク滴との位置関係を示す図である。
【図8】図8は、インク滴が光ビームと交わった時に発生する散乱光を受光素子で受光した場合に得られる電圧値を示す図である。
【図9】図9は、光ビームを平行(焦点が無限遠)にしている状態で、各ノズルn1〜n5からインク滴を吐出して、それぞれのインク滴に対応する散乱光Sを任意の位置の受光素子PDで計測した場合を示す図である。
【図10】図10は、図9の場合の散乱光出力値の計測結果を示す図である。
【図11】図11は、光軸Lからの各角度θにおける散乱光Sの強度分布1−1を示す図である。
【図12】図12は、各インク滴吐出位置で発生した散乱光Sの受光素子の受光面への入射角度θを示す図である。
【図13】図13は、散乱光出力値の強度分布1−1を示す図である。
【図14】図14は、受光素子の光軸Lからの高さHPDを遠ざけたときにおける、各吐出位置からの散乱光Sの受光素子の受光面への入射角度を示す図である。
【図15】図15は、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDと強度分布の関係を示す図である。
【図16】図16は、光ビームLBの焦点を受光素子より後方に焦点STを結んだ場合における、インク滴の吐出位置と受光素子までのX方向距離XPDn1〜XPDn5と光ビーム強度の関係を示す図である。
【図17】図17は、強度分布1と強度分布2を併せた図である。
【図18】図18は、ヘッドの各インク吐出位置で散乱光出力を一定にする調整方法の処理手順を説明するためのフローの一例を示す図である。
【図19】図19は、図4に示す液吐出不良判定装置の発光素子高さ調整処理および発光素子出力調整処理を説明するためのフローの一例を示す図である。
【図20】図20は、変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明にかかる液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
[液吐出不良検出装置の構成]
図1は、実施形態に係る液吐出不良検出装置を備えるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)1の一例の構造を正面から示す。また、図2は、インクジェットプリンタ1の一部を斜め上から観察した図を示す。
【0017】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1の筐体10の左右の側板11、12には、ガイドシャフト13とガイド板14とが平行に掛け渡して設けられている。ガイドシャフト13およびガイド板14は、キャリッジ15に摺動可能に貫通される。キャリッジ15には、不図示の無端ベルトが取り付けられる。無端ベルトは、筐体10内の左右に設けられる図示しない駆動プーリと従動プーリに掛けまわされる。そして、駆動プーリの回転と共に従動プーリが従動回転されて無端ベルトを走行する。これにより、キャリッジ15が、図1の矢印で示されるよう左右に移動される。
【0018】
キャリッジ15には、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクジェットヘッド16y、16c、16m、16b(以下、ヘッド16で代表させて記述する)が、キャリッジ15の移動方向に並列配置されている。各ヘッド16は、下向きのノズル面に複数のノズルを直線状に並べたノズル列を有する。図示しないが、直線状のノズル列は、キャリッジ15の移動方向と直交する方向に設けられる。
【0019】
そして、キャリッジ15が図1のように右端のホームポジションに存在するときには、各ヘッド16は、筐体10内の底板17上に設置する単独回復装置18と対向する。単独回復装置18は、液吐出不良検出装置20でインク滴吐出不良を検出したノズルからインクを吸い出し、インクジェットプリンタ1自身で単独で液体吐出不良を回復する装置である。
【0020】
液吐出不良検出装置20は、筐体10内の底板17上に、単独回復装置18に隣接して配置される。液吐出不良検出装置20の詳細については後述する。
【0021】
液吐出不良検出装置20に隣接する位置には、板状のプラテン22を設置する。プラテン22の背面側には、記録媒体である用紙23をプラテン22上に供給する給紙台24が斜めに立てて設けられる。また、図示を省略するが、給紙台24上の用紙23をプラテン22上に送り出す給紙ローラが備えられる。さらに、プラテン22上の用紙23を矢示方向に搬送して正面側に排出する搬送ローラ25が設けられる。
【0022】
筐体10内の底板17上には、さらに左端に駆動装置26が設置される。駆動装置26は、不図示の給紙ローラや搬送ローラ25などを駆動するとともに、上述した駆動プーリを駆動することにより無端ベルトを走行してキャリッジ15を移動する。
【0023】
そして、記録時は、駆動装置26で駆動されることにより用紙23がプラテン22上に移動され、所定位置に位置決めされる。また、キャリッジ15が移動されて用紙23上を走査され、左方向に移動しながら4色のヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルからインク滴が吐出され、用紙23上に画像が記録される。画像記録後、キャリッジ15が右方向に戻されるとともに、用紙23が図2の矢印の方向に所定量搬送される。
【0024】
次いで、再びキャリッジ15が左方向に移動されながら往路で4色のヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルからインク滴が吐出され、用紙23上に画像が記録される。そして、同様に画像記録後、キャリッジ15が右方向に戻されるとともに、用紙23が図2の矢印の方向に所定量搬送される。以下同様の動作が繰り返され、1枚の用紙23上に画像が記録される。
【0025】
次に、本実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の構成について説明する。図3は、本実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の要部構成の一例を示すブロック図である。なお、図3では、主に液吐出不良検出装置に関連する構成を示しており、画像の記録に関連する構成は図示を省略している。本実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1は、ヘッド16と、発光素子30と、吐出制御部101と、発光制御部120と、受光ユニット103と、良/不良判定部104と、移動制御部105と、移動部106とを主に備えている。
【0026】
本実施の形態のインクジェットプリンタ1は、ノズルnx(1≦x≦M、Mはノズルの個数)からインク滴が正常に吐出するか否かを検出する液吐出不良検出処理を行う。液吐出不良検出処理では、インク滴の飛行経路に対して発光素子30から光ビームを出射し、出射した光ビームにノズルnxからインク滴を吐出して、インク滴による散乱光を発生させる。この散乱光を受光素子PDが受光し、受光して得られる出力電圧によって良/不良判定部104が、インク滴が正常に吐出されたか否かを検出する。
【0027】
また、液吐出不良検出装置20は、図3のうち、少なくとも発光素子30と、発光制御部120と、受光ユニット103と、良/不良判定部104と、移動制御部105と、移動部106とを備えている。
【0028】
吐出制御部101は、ヘッド16の各ノズルからインク滴を吐出する吐出処理を制御する。また、吐出制御部101は、液吐出不良検出処理では、ヘッド16のノズルnxから、発光素子30とノズルnxとの距離、または、受光素子PDとノズルnxとの距離に応じて定められる大きさのインク滴を吐出するように制御する。
【0029】
発光制御部120は、第2の調整手段として機能する。発光制御部120は、発光素子30を発光させる発光処理を制御する。発光制御部120は、液吐出不良検出処理では、一定電圧値の発光制御信号を送出して、発光素子30を連続点灯させる。また、発光制御部120は、散乱光出力値と駆動電流の関係を規定するテーブルを備えており、後述する発光素子出力調整処理において、テーブルを参照して、フィードバックされるTP2(散乱光出力値)に応じて駆動電流を変化させ、光ビームLBの光量を調整する。
【0030】
発光素子30は、例えば、半導体レーザ等の発光素子であって、発光制御部120から送出される発光制御信号にしたがって点灯し、光ビームLBを発生する。ヘッド16が短尺である場合には、発光素子30としてレーザダイオードを用いてコスト低減を図ることもできる。
【0031】
受光ユニット103は、受光素子PDと、I/V変換部111と、1段目増幅部112と、ハイパスフィルタ113と、2段目増幅部114と、を主に備えている。
【0032】
受光素子PDは、例えば、フォトダイオード等の光を受光する素子であって、受光する光の強度に比例して電流を発生させる。受光素子PDは、図5に示すように、発光素子30が発生した光ビームLBの光軸Lから角度θずれ、ノズル直下よりも発光素子30から離れた位置に配置される。受光素子PDは、液吐出不良検出処理では、インク滴36が光ビームLBに照射されて散乱光S1〜S7が発生した場合に、光ビームLBの光軸方向に散乱された前方散乱光S1〜S3を受光し、受光した光の強度に応じた電流を発生させる。受光素子PDは、他の態様として、発生させた電流を電圧に変換する電流電圧変換部を備え、電圧を出力するように構成してもよい。
【0033】
I/V変換部111は、受光素子PDで発生した電流を電流値の大きさに応じた電圧に変換する。
【0034】
1段目増幅部112は、I/V変換部111で電流電圧変換された電圧を増幅して、出力信号TP1を出力する。この出力信号TP1によりオフセット電圧を計測することができる。
【0035】
ハイパスフィルタ113は、出力信号TP1のDC成分(ノイズ成分)を除去・低減する。
【0036】
2段目増幅部114は、ハイパスフィルタ113で得られた電圧を増幅する。液吐出不良検出処理では、2段目増幅部114により散乱光に応じた出力電圧(散乱光出力値)を表す出力信号TP2が出力される。
【0037】
なお、図3のような受光ユニット103の構成は一例であり、受光した光ビームLBに応じた出力電圧(出力信号TP1、TP2)を出力するものであれば、あらゆる構成を適用できる。
【0038】
良/不良判定部104は、受光ユニット103から出力された出力信号TP2から、インク滴の吐出不良を検出する。例えば、良/不良判定部104は、出力信号TP2と、不良吐出を判定するための基準電圧として予め定められた閾値VSHとを比較し、出力信号TP2が閾値VSHより小さい場合に、インク滴に曲がりが発生したことを検出する。検出部104が、閾値VSHより小さい所定の閾値より出力信号TP2が小さい場合に、不吐出の状態であることを検出するように構成してもよい。また、良/不良判定部104が、散乱光のパルス波形と基準電圧(閾値VSH)とを比較するときに、ヒステリシスを掛けることにより、ノイズ成分による出力のばたつきをなくすように構成してもよい。
【0039】
移動部106は、移動制御部105の制御に従って、光軸Lに対して受光素子PDを高さ方向(垂直方向)に移動させることが可能となっており、光軸−受光素子間距離HPD
(「光ビームLBの光軸Lに対する受光素子高さHPD」ともいう)を調整可能に構成されており、受光素子PDを光軸Lに対して、近付けたり遠退けたりすることができるようになっている。
【0040】
移動制御部105は、後述する、受光素子高さ調整処理において、受光ユニット103から出力された出力信号TP2に基づいて、受光素子PDの移動方向および移動量を決定し、決定した移動方向および移動量で移動部106を移動させる。移動制御部105および移動部106は、第1の調整手段として機能する。
【0041】
図4−1は、移動部106の一構成例を示す図である。図4−1に示すように、受光素子移動部42は、受光面37を有する受光素子35を保持するホルダ43と、そのホルダ43に上端側が固定されてホルダ43とともに自身の長さ方向にスライド自在に支持されているスライダ杆44と、そのスライダ杆44の下端側のラック45と噛み合うモータギア46を有する駆動モータ47とで構成されている。そして、駆動モータ47を駆動することにより、モータギア46を回転してスライダ杆44を長さ方向にスライドし、ホルダ43を移動して、光ビームLBの光軸Lに対する受光素子高さHPDを可変し、光軸Lに対して受光素子PDを近付けたり遠退けたりすることができるようになっている。
【0042】
図4−2は、移動部106の他の構成例を示す図である。図4−2に示すように、移動部106は、受光面PDmを有する受光素子35を保持するホルダ43と、そのホルダ43に上端側のねじ部48がねじ付けられているねじ軸49と、そのねじ軸49の下端側に設けられる外周ねじ50と噛み合うモータギア46を有する駆動モータ47とで構成されている。そして、駆動モータ47を駆動することにより、モータギア46を回転してねじ軸49をまわし、ホルダ43を移動して、光ビームLBの光軸Lに対するオフセット高さOHを可変し、光軸Lに対して受光素子PDを近付けたり遠退けたりすることができるようになっている。
【0043】
[液吐出不良検出装置の動作原理および調整原理]
次に、図5〜図19を用いて、液吐出不良検出装置20の動作原理および調整原理について説明する。図5は、液吐出不良検出装置20の動作原理を説明するための説明図である。図5のノズルn1、n2、…、nx、…、nNは、キャリッジ15に搭載する1個のヘッド16で、1つのノズル列を構成する。ヘッド16において、各ノズルn1、n2、…、nx、…、nNのインク滴吐出口側の面37を、ノズルヘッド面37と呼ぶ。実施形態1の液吐出不良検出装置20が備えられたインクジェットプリンタ1では、このノズル列のうち一度に1つのノズルnxからインク滴36が吐出される。
【0044】
発光素子30で発光された拡散光は、コリメートレンズ32で任意の位置に焦点STを結ぶ光ビームLBに変換される。同図に示す例では、焦点STは受光素子PDの後方となっている。発光素子30は、光ビームLBの光軸Lがインク滴36の吐出方向と直交する方向に配置される。
【0045】
受光素子PDは、例えばフォトダイオード(PD)からなり、受光面PDmに受光した光量に比例する電流を発生する。受光素子PDで発生された電流は、受光ユニット103内で電圧値に変換される。受光素子PDは、発光素子30から照射された光ビームLBがインク滴36に衝突して生じる散乱光を受光可能なように、インクジェットプリンタ1の筐体10内に配置される。
【0046】
ここで、受光素子PDは、光ビームLBのビーム径を外れた位置に配置される。具体的には、受光素子PDは、受光面が光ビームLBのビーム径と重ならない位置で、できるだけ光軸Lの中心近くにオフセットして配設される。これにより、効率の良い検知が可能となる。図5では、光ビームLBの下部であって、ノズル直下よりも発光素子30から離れた位置に受光素子PDが配置された例が示されている。
【0047】
図5に例示される構成で、ヘッド16のノズルnxからインク滴36が吐出され、光ビームLBと交わると、散乱光S1〜S7が発生する。受光素子PDは、この散乱光S1〜S7のうち、特に光強度が強い前方散乱光S1〜S3を受光し、受光した散乱光の光強度を表す電圧値VPDを光出力値として出力する。光ビームLBの光強度が強い場合、散乱光S1〜S7の光強度も高くなる。
【0048】
図6は、光ビームLBの強度分布の一例を示している。発光素子30として半導体レーザを使用した場合、垂直および水平方向にそれぞれ角度を持って発光する。一般的な半導体レーザの垂直および水平方向の角度は、それぞれ14°および30°となっている。以下では、発光素子30として半導体レーザを使用するものとして説明する。このような光をコリメートレンズ32で平行光にした場合、その進行方向に対し垂直方向の断面は、図5にビーム断面40として例示されるように、縦横比が異なる楕円形状となる。
【0049】
ここで、図6において、X方向すなわち水平方向は、インク滴の吐出方向に対して直角の方向を示す。また、Y方向すなわち垂直方向は、インク滴の吐出方向を示す。これにより、光ビームLBの中心(光軸L)で最も光強度が強く、縁に行くに従い光強度は低下しており、ガウシアン分布となっていることがわかる。
【0050】
図7は、光ビームLBとノズルnxから吐出されたインク滴との位置関係を示す図であり、ノズルnxから吐出されたインク滴36を吐出方向すなわち垂直下方向から観察した図である。図7では、光ビームLB内に、図面奥手に配置されたノズルnxから吐出された、正常吐出時のインク滴36aおよび吐出不良時のインク滴36bの一例が示されている。
【0051】
ヘッド16のノズル列が光ビームLBの光軸L上に存在する場合、正常吐出したインク滴36aはそのまま鉛直方向に飛翔する。このため、インク滴36aは光ビームLBの中心を通過する。一方、曲がりが発生したインク滴36bは、光ビームLBの中心から外れた位置を通過する。また、不吐出のときはインク滴36が吐出しないため、光ビームLBを通過しない。
【0052】
図8は、インク滴36が光ビームLBと交わった時に発生する散乱光を受光素子PDで受光した場合に得られる電圧値VPDTP2を示す図である。正常吐出されたインク滴36aは、光強度が最も高い光ビームLBの中心を通過するため、散乱光強度も高くなる。図8では、実線で表される電圧値の最大値V’が、この場合に出力される散乱光出力値(出力信号TP2)に相当する。
【0053】
これに対し、曲がりが発生したインク滴36bは、光ビームLBの中心から外れるため、散乱光強度が低くなる。図8では、破線で表される電圧値の最大値V’’(<V’)が、この場合に出力される散乱光出力値を表している。
【0054】
また、インク滴36が不吐出の場合、インク滴36が光ビームLBを通過しないため散乱光が発生せず、散乱光強度が計測されない。図8では、一点鎖線で表される電圧値が、この場合に出力される散乱光出力値(V0=0)を表している。
【0055】
ここで、不良吐出であるか否かを判定するための閾値をVSHとすると、インク滴36aに対する出力信号TP2=V’は閾値VSHより大きいため、インク滴36aは正常吐出されていると判断できる。一方、インク滴36bに対する出力信号TP2=V’’は閾値VSHより小さいため、例えばインク滴36bは曲がりが発生したと判断できる。上述のように、閾値VSHより低い閾値を用いれば、不吐出の状態を検出することができる。
【0056】
以下の説明では、説明を簡単にするため、ヘッド16のノズルが5つの場合について説明する。図9は、光ビームLBを平行(焦点が無限遠)にしている状態で、各ノズルn1〜n5からインク滴36を吐出して、それぞれのインク滴36に対応する散乱光Sを任意の位置の受光素子PDで計測した場合を示している。同図において、XPDn1は、ノズルn1のインク滴吐出位置と受光素子PDの距離、XPDn5は、ノズルn5のインク滴吐出位置と受光素子PDの距離、HPDは光ビームLBの光軸Lからの受光素子PDの高さを示している。
【0057】
図10は、図9の場合の散乱光出力値の計測結果を示す図である。図10において、横軸は、受光素子PDとインク滴36間の距離XPD、縦軸は、散乱光出力値VPDTP2を示している。図10に示すように、ヘッド2の各ノズル位置(XPDn1〜XPDn5)で散乱光出力値が異なっている(強度分布1)。これは、(1)散乱光強度に角度依存性があること、(2)インク滴36の吐出位置と受光素子PDまでのX方向距離XPDn1〜XPDn5(光ビーム照射方向)が起因している。
【0058】
まず、(1)の散乱光強度の角度依存性について説明する。光ビームLBが平行な場合、光ビームLBの光強度は場所に依存せずに一定であるが、散乱光Sは光軸Lからの角度θにより散乱光強度が異なる。図11は、光軸Lからの各角度θにおける散乱光Sの強度分布1−1を示す図である。同図において、横軸は、散乱光Sの光軸からの角度θ、縦軸は散乱光強度を示している。同図に示すように、光軸Lに近いところ(θ=0)では散乱光強度が高く、光軸Lから離れるにしたがい、散乱光強度が低くなる強度分布1−1となっていることがわかる。
【0059】
次に、(2)のインク滴の吐出位置−受光素子X方向距離について説明する。図12は、各インク滴吐出位置で発生した散乱光Sの受光素子PDの受光面PDmへの入射角度θを示す図である。同図では、説明の簡単のために、受光素子PDに最も近いノズルn5と、最も遠いノズルn1のそれぞれのインク滴吐出位置のみを示している。同図に示すように、各インク滴吐出位置により、受光素子PDの受光面PDmに入射する角度θが異なっている。ノズルn1のインク滴吐出位置から受光面の上側に入る角度をθ1U、ノズルn1のインク滴吐出位置から受光面の下側に入る角度をθ1D、ノズルn5のインク滴吐出位置から受光面の上側に入る角度をθ5U、ノズルn5のインク滴吐出位置から受光面の下側に入る角度をθ5Dとする。受光素子PDに近いインク吐出位置(n5)では、入射角度(θ5=θ5D−θ5U)が広く、反対に、受光素子PDに遠いインク吐出位置(n1)では、入射角度(θ1=θ1D−θ1U)が狭いことがわかる。
【0060】
上記(1)と(2)の条件が重なった結果、図13のような散乱光出力値の強度分布1−1が発生する。これは、例えば、ノズル位置がXPDn5では、入射角度が広いとそれだけ多くの散乱光Sを取り入れることができるが(θ=θ5)、取り入れている散乱光Sの光強度が弱いため、受光素子PDで計測する散乱光出力値は高くならない(面積S=S5)。これに対して、ノズル位置がXPDn1では、入射角度が狭くても(θ=θ1)、取り入れている散乱光Sの光強度が高いため、散乱光出力値は高くなる(面積S=S1)。
【0061】
また、上記(1)と(2)に加え、(3)受光素子PDの光軸Lからの高さHPDにより強度分布は変化する。図14は、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDを遠ざけたときにおける、各吐出位置からの散乱光Sの受光素子PDの受光面PDmへの入射角度を示している。図15は、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDと強度分布の関係を示す図である。
【0062】
図14に示すように、受光素子PDを光軸Lから遠ざけると(受光素子高さHPD→HPD’)入射角度が狭くなる(θ1>θ1’、θ5>θ5’)とともに、散乱光Sの弱い部分が受光面PDmに入射するため、受光素子PDを光軸Lから遠ざけるほど、図15に示すように、散乱光出力値は小さくなる。図15において、光軸Lからの距離は、HPD1<HPD2(強度分布(傾きα))<HPD3<HPD4の順に大きくなっている。
【0063】
上記図5および図16〜図18を参照して、ヘッド16の各インク吐出位置で散乱光出力を一定に調整する方法について説明する。まず、上記図5に示すように、発光素子30から発した光をコリメートレンズ32により受光素子PDより後方に焦点STを結ぶようにする。図16は、光ビームLBの焦点を受光素子PDより後方に焦点STを結んだ場合における、インク滴36の吐出位置と受光素子PDまでのX方向距離XPDn1〜XPDn5と光ビーム強度の関係を示す図である。図16に示すように、受光素子PDより後方に焦点STを結んだ場合、光軸L方向にある傾斜をもった光強度分布2(傾きβ)となる。これは、焦点STの位置に近いところでは、光ビームLBの密度が高くなるため、光強度は高くなるためである。他方、コリメートレンズ32側では密度が低いため、光強度は低くなる。
【0064】
上述したように、散乱光Sの角度依存性とインク吐出位置から受光素子PDまでの距離XPDにより、受光素子PDで受光する散乱光出力値に強度分布1(図10参照)がある。この強度分布1は、光ビームLBを集光したことによる強度分布2とは傾斜が反転している。図17は、強度分布1と強度分布2を併せた図であり、強度分布1は、図15の受光素子高さHPD2の場合を示している。図17において、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDを、光ビームLBを集光したことによる強度分布2の傾斜β(点線)と相反する傾斜(−β=α)になるように調整する。これにより、実線で示すような、各インク滴吐出位置によらず、ほぼ均一な散乱光出力値を取得することが可能となる。なお、図5で示した例では、受光素子PDの後方に焦点STを結んだ場合としているが、受光素子PDで受光する散乱光出力値の強度分布1と相反する様な、光ビームLBを集光したことによる強度分布2であれば、焦点位置STは受光素子PDの前方、後方、または受光素子PDの近傍でも構わない。
【0065】
図18は、ヘッド16の各インク吐出位置で散乱光出力を一定にする調整方法の処理手順を説明するためのフローである。実機や検査機に吐出不良検出装置20を組み込む際には、機械的な制約上、ヘッド16(インク滴吐出位置)と光学系の配置位置はおおよそ決定されてしまう。そこで、まず、インク吐出位置−受光素子距離XPDを決定する(ステップS1)。これにより、図13に示すような受光素子PDの受光面PDmに入射する散乱光の強度分布1の傾斜αを把握することができる。
【0066】
次に、上記強度分布1と相反する傾斜(−α=β)の強度分布2に近くなるような焦点STの位置を決定し、発光素子30とコリメートレンズ32間の距離を固定する(ステップS2)。これにより、機器の継続的な使用や振動による位置ズレを防ぐことができる。発光素子30とコリメートレンズ32間の距離を固定するのは、コリメートレンズ32の数μmのズレにより焦点STの位置が大きくずれてしまい、結果として強度分布が当初のものから崩れてしまうためである。コリメートレンズ32の性能にもよるが、約10μmの位置ズレで、焦点距離は約10mmのズレが発生してしまう。発光素子30とコリメートレンズ32間の距離を固定する以外にも、距離を調整できる機構を設けることにしてもよいが、位置精度が良く、経時変化に強いものが望ましい。
【0067】
コリメートレンズ32の固定方法としては、メカ的にネジ締めする方法や接着剤を使用する方法などを使用することができる。コリメートレンズ32を固定する際にはズレが発生してしまう。そこで、最終的には受光素子PDを光軸Lから離す方向に移動させ(受光素子高さHPD調節)、各インク滴吐出位置での散乱光出力値を調整する(ステップS3)。調整する方法としては、例えば、ヘッド16の両端のノズル(図9のn1とn5)からインク滴36を交互に吐出させ、それぞれの出力が同一になるように受光素子PDを移動させる。
【0068】
ここまでで、各インク滴吐出位置での散乱光出力値はほぼ均一化できることとなるが、所定の出力を得ることができていない可能性がある。欠損や曲がり判定では、図8に示したように、得られる散乱光出力値の値に対し、任意の閾値VSHとの比較により、欠損や曲がりを検出している。
【0069】
そこで、閾値VSHに対し、適切な散乱光出力値が得られるように発光素子30の光出力を調整する(ステップS4)。光ビームLBの光出力を調整する方法としては、散乱光出力値が目標値となるように、発光素子30への駆動電流の値を増加/減少させる方法がある。また、受光素子PDで得られる散乱光出力値の値をフィードバックさせ、駆動電流を自動的に調整するような方法を使用してもよい。
【0070】
このように、発光素子30の光出力を調整することにより、強度分布の傾斜を変化させずにインク滴吐出位置での光ビームLBの強度分布が変化させることができる。これにより、散乱光Sの光強度を調整することができ、結果として、受光素子PDで得られる散乱光出力値を最適値にすることができ、欠損や曲がり判定を容易に行うことが可能となる。
【0071】
一度、光学系を設定すると、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、ほぼ一定の散乱光出力値を得ることができる。ほぼ一定の散乱光出力値とすることにより、良/不良判定部104で用いる閾値を統一することができ、良/不良判定部104のプログラムを簡略化することが可能となる。また、散乱光出力値をデータ処理により均一化する方法では、必要な情報が削られてしまう可能性があるので、本実施の形態のように、光学的およびメカ的構成で散乱光出力値をほぼ均一化する方法の方が優れている。
【0072】
図19は、上記図15は、上記図4に示す液吐出不良判定装置の発光素子高さ調整処理および発光素子出力調整処理を説明するためのフローの一例を示す図である。なお、光軸Lとヘッドノズル列は平行に配置されているものとする。
【0073】
同図において、まず、発光制御部120は、発光素子30を駆動して、発光素子30からの光ビームの照射を開始させる(ステップS11)。ヘッド制御部16は、ノズルn1からインク滴を吐出させる(ステップS12)。受光ユニット103は、その散乱光出力値VPDn1を測定して、移動制御部105は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1としてメモリに記録する(ステップS13)。
【0074】
次に、発光制御部120は、ノズルn5からインク滴を吐出させる(ステップS14)。受光ユニット103は、その散乱光出力値VPDn5を測定して、移動制御部105は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn5として記録する(ステップS15)。移動制御部105は、ノズルn1の散乱光出力値Vn1=ノズルn5の散乱光出力値VPDn5であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0075】
ノズルn1の散乱光出力値VPDn1=ノズルn5の散乱光出力値VPDn5でない場合には(ステップS16の「No」)、VPDn1>VPDn5の場合は、移動制御部105は、移動部106を制御して、所定量、受光素子PDを光軸Lに近づける一方、VPDm1<VPDm5の場合は、移動制御部105は、移動部106を制御して、所定量、受光素子PDを光軸Lから遠ざける(ステップS17)。この後、ステップS12に戻り、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1=ノズルn5の散乱光出力値VPDn5となるまで(ステップS16の「Yes」)、ステップS12〜S17の処理を繰り返し実行する。
【0076】
他方、ノズル1の散乱光出力値VPDn1=散乱光出力値VPDn5の場合は(ステップS16の「Yes」)、発光制御部120は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5が目標値VTARGETであるか否かを判断する(ステップS18)。ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5が目標値VTARGETでない場合には(ステップS18の「No」)、発光制御部120は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5>目標値VTARGETの場合は、発光素子30の出力を下げ、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5<目標値VTARGETの場合は発光素子30の出力を上げる(ステップS19)。この後、ステップS12に戻り、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5=目標値VTARGETとなるまで(ステップS18の「Yes」)、ステップS12〜S19の処理を繰り返し実行する。
【0077】
ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5=目標値VTARGETとなった場合は(ステップS18の「Yes」)、発光素子30からの光ビームの照射を停止する。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光ビームLBの光軸Lから受光素子PDまでの高さHPDを調整する第1の調整手段(移動制御部105,移動部106)と、発光素子30から照射される光ビームLBの光量を調整する第2の調整手段(発光制御部120)と、を備えているので、液吐出不良検出装置の出力調整を低コストな構成(調整部を最小限とした構成)でかつ容易に行うことが可能となる。付言すると、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、出力調整を行うことが可能となる。ほぼ一定の散乱光出力値を得ることが可能となる。
【0079】
また、光軸Lから受光素子PDまでの高さHPDを調整した後に、光ビームLBの光量を調整する順番としたので、調整時間を短縮するが可能となる。
【0080】
また、光軸Lから受光素子PDまでの高さHPDの調整は、予め決定した焦点STの位置による光ビームLBの照射方向の強度分布と相反する傾きとなる受光感度の位置としたので、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、ほぼ一定の散乱光出力値を得ることが可能となる。
【0081】
また、本実施の形態の液吐出不良検出装置をインクジェット記録装置に搭載することとしたので、吐出不良検知の判断が可能で、印字性能が安定した低コストなインクジェット記録装置を実現することが可能となる。
【0082】
[変形例]
ここまでは、一度光学系を決定すれば、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、ほぼ一定の出力が得られる方法を示してきたが、構造は複雑になるが、インク滴Bの吐出位置により、光軸Lから受光素子PDの受光面PDmまでの高さHPDや光ビームLBの出力を自動調整させる方法を使用することにしてもよい。また、位置精度は厳しくなるが、発光素子30とコリメートレンズ32の距離や光ビームLBの出力を自動調整する方法を使用することにしてもよい。
【0083】
図20は、変形例を示す図である。構造が大きくなるが、図20に示すように、光ビームLBを略平行光にし、受光素子PDから離れたところ(受光面PDmへの散乱光Sの入射角度分布の変化が少ないところ)にインク吐出場所(ヘッド16)を配置する構成としてもよい。これにより、ヘッド16内のインク滴吐出位置XPD1‘〜XPD5‘によらずに均一な散乱光出力値を得ることができる。この場合、受光素子PDからインク滴Sまでの距離XPDn5‘が長いと、上記図9で説明したように、散乱光Sの受光面PDmへの入射角度θが小さくなるため、受光素子PDで得られる散乱光出力値も小さくなってしまうが、受光面PDmを光軸Lに近いところにもってくることにより、散乱光Sの強いところを受光面PDmへ入射できるため、散乱光出力値を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 インクジェットプリンタ
16 ヘッド
30 発光素子
31 光ビーム
101 吐出制御部
103 受光ユニット
104 良/不良判定部
105 移動制御部
106 移動部
111 I/V変換部
112 1段目増幅部
113 ハイパスフィルタ
114 2段目増幅部
120 発光制御部
PD 受光素子
PDm 受光面
LB 光ビーム
L 光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置、その調整方法、およびその装置を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、微細なノズルから微小な各色インク滴を吐出する各色のインクジェットヘッドを備え、用紙等の記録媒体に対してそのインクジェットヘッドを移動させながらインク滴を吐出することで記録媒体上に画像形成を行う。高解像度の画像形成のためには、ノズルを微細化してインク滴サイズを微小化する必要がある。この場合、ノズルが微細なため、印刷停止時にインクが乾燥するなどによりノズル詰まりが起きてインク滴の吐出不良が発生し、画像にドット抜けなどが生じて画像品質の低下を引き起こしてしまう。
【0003】
従来より、このノズル詰まりによる画像品質の低下を防ぐために、液吐出不良を検出する液吐出不良検出装置がインクジェット記録装置に備えられていた。このような液吐出不良検出装置は、例えば、ノズルから吐出するインク滴などの液滴に、レーザダイオードなどの発光素子から射出したレーザ光を照射して散乱光を発生させ、その散乱光をフォトダイオードなどの受光素子で受光し、受光素子の出力に基づく出力電圧と基準電圧値とを比較して、インク滴が正常に吐出されたか否かを判定することで液吐出不良を検出する。
【0004】
例えば、特許文献1では、記録ヘッドが長い場合においても、光の回折を受けずに確実な不吐出検出を行うために、2本のビームを検出する2つの受光素子を副走査方向の互いに反対の位置に設け、各受光素子に近い位置のノズルを用い、これらノズルからビームに向かってインク滴を順次時系列的に吐出制御しながら、そのインク滴の吐出タイミングと受光素子の検知タイミングとに基づいて吐出不良を特定する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、発光素子と受光素子を2組設ける必要があるので、コストが高くなり、また、制御が複雑になってしまう。
【0006】
また、特許文献2では、不動作ノズルの検出の精度を高めるために、検査対象のノズル位置に応じて、インク滴の軌跡に光束点が位置するように、光束点を光軸に沿った方向に移動させる構成が開示されている。かかる光束点の移動は、発光素子とレンズの距離を変化させる駆動部により調整している。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、発光素子とレンズの距離を変化させる駆動部に高い位置精度が要求されるため、コストが高くなり、また、制御が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3501599号公報
【特許文献2】特許第4273627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液吐出不良検出装置の出力調整を低コストな構成でかつ容易に行うことが可能な液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置であって、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する第1の調整手段と、前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する第2の調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置の調整方法であって、前記ノズルのインク吐出位置と前記受光素子間の距離を決定する工程と、前記光ビームの焦点位置を決定する工程と、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する工程と、前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる液吐出不良検出装置によれば、液吐出不良検出装置の出力調整を低コストな構成でかつ容易に行うことが可能な液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態に係る液吐出不良検出装置を備えるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)の一例の構造を正面から示す図である。
【図2】図2は、インクジェットプリンタの一部を斜め上から観察した図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかるインクジェットプリンタの要部構成の一例を示すブロック図である。
【図4−1】図4−1は、移動部の一構成例を示す図である。
【図4−2】図4−2は、移動部の他の構成例を示す図である。
【図5】図5は、液吐出不良検出装置の動作原理を説明するための説明図である。
【図6】図6は、光ビームの強度分布の一例を示す図である。
【図7】図7は、光ビームとノズルから吐出されたインク滴との位置関係を示す図である。
【図8】図8は、インク滴が光ビームと交わった時に発生する散乱光を受光素子で受光した場合に得られる電圧値を示す図である。
【図9】図9は、光ビームを平行(焦点が無限遠)にしている状態で、各ノズルn1〜n5からインク滴を吐出して、それぞれのインク滴に対応する散乱光Sを任意の位置の受光素子PDで計測した場合を示す図である。
【図10】図10は、図9の場合の散乱光出力値の計測結果を示す図である。
【図11】図11は、光軸Lからの各角度θにおける散乱光Sの強度分布1−1を示す図である。
【図12】図12は、各インク滴吐出位置で発生した散乱光Sの受光素子の受光面への入射角度θを示す図である。
【図13】図13は、散乱光出力値の強度分布1−1を示す図である。
【図14】図14は、受光素子の光軸Lからの高さHPDを遠ざけたときにおける、各吐出位置からの散乱光Sの受光素子の受光面への入射角度を示す図である。
【図15】図15は、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDと強度分布の関係を示す図である。
【図16】図16は、光ビームLBの焦点を受光素子より後方に焦点STを結んだ場合における、インク滴の吐出位置と受光素子までのX方向距離XPDn1〜XPDn5と光ビーム強度の関係を示す図である。
【図17】図17は、強度分布1と強度分布2を併せた図である。
【図18】図18は、ヘッドの各インク吐出位置で散乱光出力を一定にする調整方法の処理手順を説明するためのフローの一例を示す図である。
【図19】図19は、図4に示す液吐出不良判定装置の発光素子高さ調整処理および発光素子出力調整処理を説明するためのフローの一例を示す図である。
【図20】図20は、変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明にかかる液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液吐出不良検出装置、その調整方法、およびインクジェット記録装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
[液吐出不良検出装置の構成]
図1は、実施形態に係る液吐出不良検出装置を備えるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)1の一例の構造を正面から示す。また、図2は、インクジェットプリンタ1の一部を斜め上から観察した図を示す。
【0017】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1の筐体10の左右の側板11、12には、ガイドシャフト13とガイド板14とが平行に掛け渡して設けられている。ガイドシャフト13およびガイド板14は、キャリッジ15に摺動可能に貫通される。キャリッジ15には、不図示の無端ベルトが取り付けられる。無端ベルトは、筐体10内の左右に設けられる図示しない駆動プーリと従動プーリに掛けまわされる。そして、駆動プーリの回転と共に従動プーリが従動回転されて無端ベルトを走行する。これにより、キャリッジ15が、図1の矢印で示されるよう左右に移動される。
【0018】
キャリッジ15には、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクジェットヘッド16y、16c、16m、16b(以下、ヘッド16で代表させて記述する)が、キャリッジ15の移動方向に並列配置されている。各ヘッド16は、下向きのノズル面に複数のノズルを直線状に並べたノズル列を有する。図示しないが、直線状のノズル列は、キャリッジ15の移動方向と直交する方向に設けられる。
【0019】
そして、キャリッジ15が図1のように右端のホームポジションに存在するときには、各ヘッド16は、筐体10内の底板17上に設置する単独回復装置18と対向する。単独回復装置18は、液吐出不良検出装置20でインク滴吐出不良を検出したノズルからインクを吸い出し、インクジェットプリンタ1自身で単独で液体吐出不良を回復する装置である。
【0020】
液吐出不良検出装置20は、筐体10内の底板17上に、単独回復装置18に隣接して配置される。液吐出不良検出装置20の詳細については後述する。
【0021】
液吐出不良検出装置20に隣接する位置には、板状のプラテン22を設置する。プラテン22の背面側には、記録媒体である用紙23をプラテン22上に供給する給紙台24が斜めに立てて設けられる。また、図示を省略するが、給紙台24上の用紙23をプラテン22上に送り出す給紙ローラが備えられる。さらに、プラテン22上の用紙23を矢示方向に搬送して正面側に排出する搬送ローラ25が設けられる。
【0022】
筐体10内の底板17上には、さらに左端に駆動装置26が設置される。駆動装置26は、不図示の給紙ローラや搬送ローラ25などを駆動するとともに、上述した駆動プーリを駆動することにより無端ベルトを走行してキャリッジ15を移動する。
【0023】
そして、記録時は、駆動装置26で駆動されることにより用紙23がプラテン22上に移動され、所定位置に位置決めされる。また、キャリッジ15が移動されて用紙23上を走査され、左方向に移動しながら4色のヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルからインク滴が吐出され、用紙23上に画像が記録される。画像記録後、キャリッジ15が右方向に戻されるとともに、用紙23が図2の矢印の方向に所定量搬送される。
【0024】
次いで、再びキャリッジ15が左方向に移動されながら往路で4色のヘッド16y、16c、16m、16bを用いて順にそれぞれのノズルからインク滴が吐出され、用紙23上に画像が記録される。そして、同様に画像記録後、キャリッジ15が右方向に戻されるとともに、用紙23が図2の矢印の方向に所定量搬送される。以下同様の動作が繰り返され、1枚の用紙23上に画像が記録される。
【0025】
次に、本実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の構成について説明する。図3は、本実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の要部構成の一例を示すブロック図である。なお、図3では、主に液吐出不良検出装置に関連する構成を示しており、画像の記録に関連する構成は図示を省略している。本実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1は、ヘッド16と、発光素子30と、吐出制御部101と、発光制御部120と、受光ユニット103と、良/不良判定部104と、移動制御部105と、移動部106とを主に備えている。
【0026】
本実施の形態のインクジェットプリンタ1は、ノズルnx(1≦x≦M、Mはノズルの個数)からインク滴が正常に吐出するか否かを検出する液吐出不良検出処理を行う。液吐出不良検出処理では、インク滴の飛行経路に対して発光素子30から光ビームを出射し、出射した光ビームにノズルnxからインク滴を吐出して、インク滴による散乱光を発生させる。この散乱光を受光素子PDが受光し、受光して得られる出力電圧によって良/不良判定部104が、インク滴が正常に吐出されたか否かを検出する。
【0027】
また、液吐出不良検出装置20は、図3のうち、少なくとも発光素子30と、発光制御部120と、受光ユニット103と、良/不良判定部104と、移動制御部105と、移動部106とを備えている。
【0028】
吐出制御部101は、ヘッド16の各ノズルからインク滴を吐出する吐出処理を制御する。また、吐出制御部101は、液吐出不良検出処理では、ヘッド16のノズルnxから、発光素子30とノズルnxとの距離、または、受光素子PDとノズルnxとの距離に応じて定められる大きさのインク滴を吐出するように制御する。
【0029】
発光制御部120は、第2の調整手段として機能する。発光制御部120は、発光素子30を発光させる発光処理を制御する。発光制御部120は、液吐出不良検出処理では、一定電圧値の発光制御信号を送出して、発光素子30を連続点灯させる。また、発光制御部120は、散乱光出力値と駆動電流の関係を規定するテーブルを備えており、後述する発光素子出力調整処理において、テーブルを参照して、フィードバックされるTP2(散乱光出力値)に応じて駆動電流を変化させ、光ビームLBの光量を調整する。
【0030】
発光素子30は、例えば、半導体レーザ等の発光素子であって、発光制御部120から送出される発光制御信号にしたがって点灯し、光ビームLBを発生する。ヘッド16が短尺である場合には、発光素子30としてレーザダイオードを用いてコスト低減を図ることもできる。
【0031】
受光ユニット103は、受光素子PDと、I/V変換部111と、1段目増幅部112と、ハイパスフィルタ113と、2段目増幅部114と、を主に備えている。
【0032】
受光素子PDは、例えば、フォトダイオード等の光を受光する素子であって、受光する光の強度に比例して電流を発生させる。受光素子PDは、図5に示すように、発光素子30が発生した光ビームLBの光軸Lから角度θずれ、ノズル直下よりも発光素子30から離れた位置に配置される。受光素子PDは、液吐出不良検出処理では、インク滴36が光ビームLBに照射されて散乱光S1〜S7が発生した場合に、光ビームLBの光軸方向に散乱された前方散乱光S1〜S3を受光し、受光した光の強度に応じた電流を発生させる。受光素子PDは、他の態様として、発生させた電流を電圧に変換する電流電圧変換部を備え、電圧を出力するように構成してもよい。
【0033】
I/V変換部111は、受光素子PDで発生した電流を電流値の大きさに応じた電圧に変換する。
【0034】
1段目増幅部112は、I/V変換部111で電流電圧変換された電圧を増幅して、出力信号TP1を出力する。この出力信号TP1によりオフセット電圧を計測することができる。
【0035】
ハイパスフィルタ113は、出力信号TP1のDC成分(ノイズ成分)を除去・低減する。
【0036】
2段目増幅部114は、ハイパスフィルタ113で得られた電圧を増幅する。液吐出不良検出処理では、2段目増幅部114により散乱光に応じた出力電圧(散乱光出力値)を表す出力信号TP2が出力される。
【0037】
なお、図3のような受光ユニット103の構成は一例であり、受光した光ビームLBに応じた出力電圧(出力信号TP1、TP2)を出力するものであれば、あらゆる構成を適用できる。
【0038】
良/不良判定部104は、受光ユニット103から出力された出力信号TP2から、インク滴の吐出不良を検出する。例えば、良/不良判定部104は、出力信号TP2と、不良吐出を判定するための基準電圧として予め定められた閾値VSHとを比較し、出力信号TP2が閾値VSHより小さい場合に、インク滴に曲がりが発生したことを検出する。検出部104が、閾値VSHより小さい所定の閾値より出力信号TP2が小さい場合に、不吐出の状態であることを検出するように構成してもよい。また、良/不良判定部104が、散乱光のパルス波形と基準電圧(閾値VSH)とを比較するときに、ヒステリシスを掛けることにより、ノイズ成分による出力のばたつきをなくすように構成してもよい。
【0039】
移動部106は、移動制御部105の制御に従って、光軸Lに対して受光素子PDを高さ方向(垂直方向)に移動させることが可能となっており、光軸−受光素子間距離HPD
(「光ビームLBの光軸Lに対する受光素子高さHPD」ともいう)を調整可能に構成されており、受光素子PDを光軸Lに対して、近付けたり遠退けたりすることができるようになっている。
【0040】
移動制御部105は、後述する、受光素子高さ調整処理において、受光ユニット103から出力された出力信号TP2に基づいて、受光素子PDの移動方向および移動量を決定し、決定した移動方向および移動量で移動部106を移動させる。移動制御部105および移動部106は、第1の調整手段として機能する。
【0041】
図4−1は、移動部106の一構成例を示す図である。図4−1に示すように、受光素子移動部42は、受光面37を有する受光素子35を保持するホルダ43と、そのホルダ43に上端側が固定されてホルダ43とともに自身の長さ方向にスライド自在に支持されているスライダ杆44と、そのスライダ杆44の下端側のラック45と噛み合うモータギア46を有する駆動モータ47とで構成されている。そして、駆動モータ47を駆動することにより、モータギア46を回転してスライダ杆44を長さ方向にスライドし、ホルダ43を移動して、光ビームLBの光軸Lに対する受光素子高さHPDを可変し、光軸Lに対して受光素子PDを近付けたり遠退けたりすることができるようになっている。
【0042】
図4−2は、移動部106の他の構成例を示す図である。図4−2に示すように、移動部106は、受光面PDmを有する受光素子35を保持するホルダ43と、そのホルダ43に上端側のねじ部48がねじ付けられているねじ軸49と、そのねじ軸49の下端側に設けられる外周ねじ50と噛み合うモータギア46を有する駆動モータ47とで構成されている。そして、駆動モータ47を駆動することにより、モータギア46を回転してねじ軸49をまわし、ホルダ43を移動して、光ビームLBの光軸Lに対するオフセット高さOHを可変し、光軸Lに対して受光素子PDを近付けたり遠退けたりすることができるようになっている。
【0043】
[液吐出不良検出装置の動作原理および調整原理]
次に、図5〜図19を用いて、液吐出不良検出装置20の動作原理および調整原理について説明する。図5は、液吐出不良検出装置20の動作原理を説明するための説明図である。図5のノズルn1、n2、…、nx、…、nNは、キャリッジ15に搭載する1個のヘッド16で、1つのノズル列を構成する。ヘッド16において、各ノズルn1、n2、…、nx、…、nNのインク滴吐出口側の面37を、ノズルヘッド面37と呼ぶ。実施形態1の液吐出不良検出装置20が備えられたインクジェットプリンタ1では、このノズル列のうち一度に1つのノズルnxからインク滴36が吐出される。
【0044】
発光素子30で発光された拡散光は、コリメートレンズ32で任意の位置に焦点STを結ぶ光ビームLBに変換される。同図に示す例では、焦点STは受光素子PDの後方となっている。発光素子30は、光ビームLBの光軸Lがインク滴36の吐出方向と直交する方向に配置される。
【0045】
受光素子PDは、例えばフォトダイオード(PD)からなり、受光面PDmに受光した光量に比例する電流を発生する。受光素子PDで発生された電流は、受光ユニット103内で電圧値に変換される。受光素子PDは、発光素子30から照射された光ビームLBがインク滴36に衝突して生じる散乱光を受光可能なように、インクジェットプリンタ1の筐体10内に配置される。
【0046】
ここで、受光素子PDは、光ビームLBのビーム径を外れた位置に配置される。具体的には、受光素子PDは、受光面が光ビームLBのビーム径と重ならない位置で、できるだけ光軸Lの中心近くにオフセットして配設される。これにより、効率の良い検知が可能となる。図5では、光ビームLBの下部であって、ノズル直下よりも発光素子30から離れた位置に受光素子PDが配置された例が示されている。
【0047】
図5に例示される構成で、ヘッド16のノズルnxからインク滴36が吐出され、光ビームLBと交わると、散乱光S1〜S7が発生する。受光素子PDは、この散乱光S1〜S7のうち、特に光強度が強い前方散乱光S1〜S3を受光し、受光した散乱光の光強度を表す電圧値VPDを光出力値として出力する。光ビームLBの光強度が強い場合、散乱光S1〜S7の光強度も高くなる。
【0048】
図6は、光ビームLBの強度分布の一例を示している。発光素子30として半導体レーザを使用した場合、垂直および水平方向にそれぞれ角度を持って発光する。一般的な半導体レーザの垂直および水平方向の角度は、それぞれ14°および30°となっている。以下では、発光素子30として半導体レーザを使用するものとして説明する。このような光をコリメートレンズ32で平行光にした場合、その進行方向に対し垂直方向の断面は、図5にビーム断面40として例示されるように、縦横比が異なる楕円形状となる。
【0049】
ここで、図6において、X方向すなわち水平方向は、インク滴の吐出方向に対して直角の方向を示す。また、Y方向すなわち垂直方向は、インク滴の吐出方向を示す。これにより、光ビームLBの中心(光軸L)で最も光強度が強く、縁に行くに従い光強度は低下しており、ガウシアン分布となっていることがわかる。
【0050】
図7は、光ビームLBとノズルnxから吐出されたインク滴との位置関係を示す図であり、ノズルnxから吐出されたインク滴36を吐出方向すなわち垂直下方向から観察した図である。図7では、光ビームLB内に、図面奥手に配置されたノズルnxから吐出された、正常吐出時のインク滴36aおよび吐出不良時のインク滴36bの一例が示されている。
【0051】
ヘッド16のノズル列が光ビームLBの光軸L上に存在する場合、正常吐出したインク滴36aはそのまま鉛直方向に飛翔する。このため、インク滴36aは光ビームLBの中心を通過する。一方、曲がりが発生したインク滴36bは、光ビームLBの中心から外れた位置を通過する。また、不吐出のときはインク滴36が吐出しないため、光ビームLBを通過しない。
【0052】
図8は、インク滴36が光ビームLBと交わった時に発生する散乱光を受光素子PDで受光した場合に得られる電圧値VPDTP2を示す図である。正常吐出されたインク滴36aは、光強度が最も高い光ビームLBの中心を通過するため、散乱光強度も高くなる。図8では、実線で表される電圧値の最大値V’が、この場合に出力される散乱光出力値(出力信号TP2)に相当する。
【0053】
これに対し、曲がりが発生したインク滴36bは、光ビームLBの中心から外れるため、散乱光強度が低くなる。図8では、破線で表される電圧値の最大値V’’(<V’)が、この場合に出力される散乱光出力値を表している。
【0054】
また、インク滴36が不吐出の場合、インク滴36が光ビームLBを通過しないため散乱光が発生せず、散乱光強度が計測されない。図8では、一点鎖線で表される電圧値が、この場合に出力される散乱光出力値(V0=0)を表している。
【0055】
ここで、不良吐出であるか否かを判定するための閾値をVSHとすると、インク滴36aに対する出力信号TP2=V’は閾値VSHより大きいため、インク滴36aは正常吐出されていると判断できる。一方、インク滴36bに対する出力信号TP2=V’’は閾値VSHより小さいため、例えばインク滴36bは曲がりが発生したと判断できる。上述のように、閾値VSHより低い閾値を用いれば、不吐出の状態を検出することができる。
【0056】
以下の説明では、説明を簡単にするため、ヘッド16のノズルが5つの場合について説明する。図9は、光ビームLBを平行(焦点が無限遠)にしている状態で、各ノズルn1〜n5からインク滴36を吐出して、それぞれのインク滴36に対応する散乱光Sを任意の位置の受光素子PDで計測した場合を示している。同図において、XPDn1は、ノズルn1のインク滴吐出位置と受光素子PDの距離、XPDn5は、ノズルn5のインク滴吐出位置と受光素子PDの距離、HPDは光ビームLBの光軸Lからの受光素子PDの高さを示している。
【0057】
図10は、図9の場合の散乱光出力値の計測結果を示す図である。図10において、横軸は、受光素子PDとインク滴36間の距離XPD、縦軸は、散乱光出力値VPDTP2を示している。図10に示すように、ヘッド2の各ノズル位置(XPDn1〜XPDn5)で散乱光出力値が異なっている(強度分布1)。これは、(1)散乱光強度に角度依存性があること、(2)インク滴36の吐出位置と受光素子PDまでのX方向距離XPDn1〜XPDn5(光ビーム照射方向)が起因している。
【0058】
まず、(1)の散乱光強度の角度依存性について説明する。光ビームLBが平行な場合、光ビームLBの光強度は場所に依存せずに一定であるが、散乱光Sは光軸Lからの角度θにより散乱光強度が異なる。図11は、光軸Lからの各角度θにおける散乱光Sの強度分布1−1を示す図である。同図において、横軸は、散乱光Sの光軸からの角度θ、縦軸は散乱光強度を示している。同図に示すように、光軸Lに近いところ(θ=0)では散乱光強度が高く、光軸Lから離れるにしたがい、散乱光強度が低くなる強度分布1−1となっていることがわかる。
【0059】
次に、(2)のインク滴の吐出位置−受光素子X方向距離について説明する。図12は、各インク滴吐出位置で発生した散乱光Sの受光素子PDの受光面PDmへの入射角度θを示す図である。同図では、説明の簡単のために、受光素子PDに最も近いノズルn5と、最も遠いノズルn1のそれぞれのインク滴吐出位置のみを示している。同図に示すように、各インク滴吐出位置により、受光素子PDの受光面PDmに入射する角度θが異なっている。ノズルn1のインク滴吐出位置から受光面の上側に入る角度をθ1U、ノズルn1のインク滴吐出位置から受光面の下側に入る角度をθ1D、ノズルn5のインク滴吐出位置から受光面の上側に入る角度をθ5U、ノズルn5のインク滴吐出位置から受光面の下側に入る角度をθ5Dとする。受光素子PDに近いインク吐出位置(n5)では、入射角度(θ5=θ5D−θ5U)が広く、反対に、受光素子PDに遠いインク吐出位置(n1)では、入射角度(θ1=θ1D−θ1U)が狭いことがわかる。
【0060】
上記(1)と(2)の条件が重なった結果、図13のような散乱光出力値の強度分布1−1が発生する。これは、例えば、ノズル位置がXPDn5では、入射角度が広いとそれだけ多くの散乱光Sを取り入れることができるが(θ=θ5)、取り入れている散乱光Sの光強度が弱いため、受光素子PDで計測する散乱光出力値は高くならない(面積S=S5)。これに対して、ノズル位置がXPDn1では、入射角度が狭くても(θ=θ1)、取り入れている散乱光Sの光強度が高いため、散乱光出力値は高くなる(面積S=S1)。
【0061】
また、上記(1)と(2)に加え、(3)受光素子PDの光軸Lからの高さHPDにより強度分布は変化する。図14は、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDを遠ざけたときにおける、各吐出位置からの散乱光Sの受光素子PDの受光面PDmへの入射角度を示している。図15は、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDと強度分布の関係を示す図である。
【0062】
図14に示すように、受光素子PDを光軸Lから遠ざけると(受光素子高さHPD→HPD’)入射角度が狭くなる(θ1>θ1’、θ5>θ5’)とともに、散乱光Sの弱い部分が受光面PDmに入射するため、受光素子PDを光軸Lから遠ざけるほど、図15に示すように、散乱光出力値は小さくなる。図15において、光軸Lからの距離は、HPD1<HPD2(強度分布(傾きα))<HPD3<HPD4の順に大きくなっている。
【0063】
上記図5および図16〜図18を参照して、ヘッド16の各インク吐出位置で散乱光出力を一定に調整する方法について説明する。まず、上記図5に示すように、発光素子30から発した光をコリメートレンズ32により受光素子PDより後方に焦点STを結ぶようにする。図16は、光ビームLBの焦点を受光素子PDより後方に焦点STを結んだ場合における、インク滴36の吐出位置と受光素子PDまでのX方向距離XPDn1〜XPDn5と光ビーム強度の関係を示す図である。図16に示すように、受光素子PDより後方に焦点STを結んだ場合、光軸L方向にある傾斜をもった光強度分布2(傾きβ)となる。これは、焦点STの位置に近いところでは、光ビームLBの密度が高くなるため、光強度は高くなるためである。他方、コリメートレンズ32側では密度が低いため、光強度は低くなる。
【0064】
上述したように、散乱光Sの角度依存性とインク吐出位置から受光素子PDまでの距離XPDにより、受光素子PDで受光する散乱光出力値に強度分布1(図10参照)がある。この強度分布1は、光ビームLBを集光したことによる強度分布2とは傾斜が反転している。図17は、強度分布1と強度分布2を併せた図であり、強度分布1は、図15の受光素子高さHPD2の場合を示している。図17において、受光素子PDの光軸Lからの高さHPDを、光ビームLBを集光したことによる強度分布2の傾斜β(点線)と相反する傾斜(−β=α)になるように調整する。これにより、実線で示すような、各インク滴吐出位置によらず、ほぼ均一な散乱光出力値を取得することが可能となる。なお、図5で示した例では、受光素子PDの後方に焦点STを結んだ場合としているが、受光素子PDで受光する散乱光出力値の強度分布1と相反する様な、光ビームLBを集光したことによる強度分布2であれば、焦点位置STは受光素子PDの前方、後方、または受光素子PDの近傍でも構わない。
【0065】
図18は、ヘッド16の各インク吐出位置で散乱光出力を一定にする調整方法の処理手順を説明するためのフローである。実機や検査機に吐出不良検出装置20を組み込む際には、機械的な制約上、ヘッド16(インク滴吐出位置)と光学系の配置位置はおおよそ決定されてしまう。そこで、まず、インク吐出位置−受光素子距離XPDを決定する(ステップS1)。これにより、図13に示すような受光素子PDの受光面PDmに入射する散乱光の強度分布1の傾斜αを把握することができる。
【0066】
次に、上記強度分布1と相反する傾斜(−α=β)の強度分布2に近くなるような焦点STの位置を決定し、発光素子30とコリメートレンズ32間の距離を固定する(ステップS2)。これにより、機器の継続的な使用や振動による位置ズレを防ぐことができる。発光素子30とコリメートレンズ32間の距離を固定するのは、コリメートレンズ32の数μmのズレにより焦点STの位置が大きくずれてしまい、結果として強度分布が当初のものから崩れてしまうためである。コリメートレンズ32の性能にもよるが、約10μmの位置ズレで、焦点距離は約10mmのズレが発生してしまう。発光素子30とコリメートレンズ32間の距離を固定する以外にも、距離を調整できる機構を設けることにしてもよいが、位置精度が良く、経時変化に強いものが望ましい。
【0067】
コリメートレンズ32の固定方法としては、メカ的にネジ締めする方法や接着剤を使用する方法などを使用することができる。コリメートレンズ32を固定する際にはズレが発生してしまう。そこで、最終的には受光素子PDを光軸Lから離す方向に移動させ(受光素子高さHPD調節)、各インク滴吐出位置での散乱光出力値を調整する(ステップS3)。調整する方法としては、例えば、ヘッド16の両端のノズル(図9のn1とn5)からインク滴36を交互に吐出させ、それぞれの出力が同一になるように受光素子PDを移動させる。
【0068】
ここまでで、各インク滴吐出位置での散乱光出力値はほぼ均一化できることとなるが、所定の出力を得ることができていない可能性がある。欠損や曲がり判定では、図8に示したように、得られる散乱光出力値の値に対し、任意の閾値VSHとの比較により、欠損や曲がりを検出している。
【0069】
そこで、閾値VSHに対し、適切な散乱光出力値が得られるように発光素子30の光出力を調整する(ステップS4)。光ビームLBの光出力を調整する方法としては、散乱光出力値が目標値となるように、発光素子30への駆動電流の値を増加/減少させる方法がある。また、受光素子PDで得られる散乱光出力値の値をフィードバックさせ、駆動電流を自動的に調整するような方法を使用してもよい。
【0070】
このように、発光素子30の光出力を調整することにより、強度分布の傾斜を変化させずにインク滴吐出位置での光ビームLBの強度分布が変化させることができる。これにより、散乱光Sの光強度を調整することができ、結果として、受光素子PDで得られる散乱光出力値を最適値にすることができ、欠損や曲がり判定を容易に行うことが可能となる。
【0071】
一度、光学系を設定すると、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、ほぼ一定の散乱光出力値を得ることができる。ほぼ一定の散乱光出力値とすることにより、良/不良判定部104で用いる閾値を統一することができ、良/不良判定部104のプログラムを簡略化することが可能となる。また、散乱光出力値をデータ処理により均一化する方法では、必要な情報が削られてしまう可能性があるので、本実施の形態のように、光学的およびメカ的構成で散乱光出力値をほぼ均一化する方法の方が優れている。
【0072】
図19は、上記図15は、上記図4に示す液吐出不良判定装置の発光素子高さ調整処理および発光素子出力調整処理を説明するためのフローの一例を示す図である。なお、光軸Lとヘッドノズル列は平行に配置されているものとする。
【0073】
同図において、まず、発光制御部120は、発光素子30を駆動して、発光素子30からの光ビームの照射を開始させる(ステップS11)。ヘッド制御部16は、ノズルn1からインク滴を吐出させる(ステップS12)。受光ユニット103は、その散乱光出力値VPDn1を測定して、移動制御部105は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1としてメモリに記録する(ステップS13)。
【0074】
次に、発光制御部120は、ノズルn5からインク滴を吐出させる(ステップS14)。受光ユニット103は、その散乱光出力値VPDn5を測定して、移動制御部105は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn5として記録する(ステップS15)。移動制御部105は、ノズルn1の散乱光出力値Vn1=ノズルn5の散乱光出力値VPDn5であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0075】
ノズルn1の散乱光出力値VPDn1=ノズルn5の散乱光出力値VPDn5でない場合には(ステップS16の「No」)、VPDn1>VPDn5の場合は、移動制御部105は、移動部106を制御して、所定量、受光素子PDを光軸Lに近づける一方、VPDm1<VPDm5の場合は、移動制御部105は、移動部106を制御して、所定量、受光素子PDを光軸Lから遠ざける(ステップS17)。この後、ステップS12に戻り、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1=ノズルn5の散乱光出力値VPDn5となるまで(ステップS16の「Yes」)、ステップS12〜S17の処理を繰り返し実行する。
【0076】
他方、ノズル1の散乱光出力値VPDn1=散乱光出力値VPDn5の場合は(ステップS16の「Yes」)、発光制御部120は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5が目標値VTARGETであるか否かを判断する(ステップS18)。ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5が目標値VTARGETでない場合には(ステップS18の「No」)、発光制御部120は、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5>目標値VTARGETの場合は、発光素子30の出力を下げ、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5<目標値VTARGETの場合は発光素子30の出力を上げる(ステップS19)。この後、ステップS12に戻り、ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5=目標値VTARGETとなるまで(ステップS18の「Yes」)、ステップS12〜S19の処理を繰り返し実行する。
【0077】
ノズルn1の散乱光出力値VPDn1またはノズルn5の散乱光出力値VPDn5=目標値VTARGETとなった場合は(ステップS18の「Yes」)、発光素子30からの光ビームの照射を停止する。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光ビームLBの光軸Lから受光素子PDまでの高さHPDを調整する第1の調整手段(移動制御部105,移動部106)と、発光素子30から照射される光ビームLBの光量を調整する第2の調整手段(発光制御部120)と、を備えているので、液吐出不良検出装置の出力調整を低コストな構成(調整部を最小限とした構成)でかつ容易に行うことが可能となる。付言すると、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、出力調整を行うことが可能となる。ほぼ一定の散乱光出力値を得ることが可能となる。
【0079】
また、光軸Lから受光素子PDまでの高さHPDを調整した後に、光ビームLBの光量を調整する順番としたので、調整時間を短縮するが可能となる。
【0080】
また、光軸Lから受光素子PDまでの高さHPDの調整は、予め決定した焦点STの位置による光ビームLBの照射方向の強度分布と相反する傾きとなる受光感度の位置としたので、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、ほぼ一定の散乱光出力値を得ることが可能となる。
【0081】
また、本実施の形態の液吐出不良検出装置をインクジェット記録装置に搭載することとしたので、吐出不良検知の判断が可能で、印字性能が安定した低コストなインクジェット記録装置を実現することが可能となる。
【0082】
[変形例]
ここまでは、一度光学系を決定すれば、各ノズルn1〜n5の吐出毎に光学系の調整をせずに、ほぼ一定の出力が得られる方法を示してきたが、構造は複雑になるが、インク滴Bの吐出位置により、光軸Lから受光素子PDの受光面PDmまでの高さHPDや光ビームLBの出力を自動調整させる方法を使用することにしてもよい。また、位置精度は厳しくなるが、発光素子30とコリメートレンズ32の距離や光ビームLBの出力を自動調整する方法を使用することにしてもよい。
【0083】
図20は、変形例を示す図である。構造が大きくなるが、図20に示すように、光ビームLBを略平行光にし、受光素子PDから離れたところ(受光面PDmへの散乱光Sの入射角度分布の変化が少ないところ)にインク吐出場所(ヘッド16)を配置する構成としてもよい。これにより、ヘッド16内のインク滴吐出位置XPD1‘〜XPD5‘によらずに均一な散乱光出力値を得ることができる。この場合、受光素子PDからインク滴Sまでの距離XPDn5‘が長いと、上記図9で説明したように、散乱光Sの受光面PDmへの入射角度θが小さくなるため、受光素子PDで得られる散乱光出力値も小さくなってしまうが、受光面PDmを光軸Lに近いところにもってくることにより、散乱光Sの強いところを受光面PDmへ入射できるため、散乱光出力値を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 インクジェットプリンタ
16 ヘッド
30 発光素子
31 光ビーム
101 吐出制御部
103 受光ユニット
104 良/不良判定部
105 移動制御部
106 移動部
111 I/V変換部
112 1段目増幅部
113 ハイパスフィルタ
114 2段目増幅部
120 発光制御部
PD 受光素子
PDm 受光面
LB 光ビーム
L 光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置であって、
前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する第1の調整手段と、
前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する第2の調整手段と、
を備えたことを特徴とする液吐出不良検出装置。
【請求項2】
前記第1の調整手段と前記第2の調整手段は、いずれか一方が調整を行った後、他方が調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項3】
前記第1の調整手段が前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整した後、前記第2の調整手段が、発光素子から照射される光ビームの光量を調整することを特徴とする請求項2に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項4】
前記第1の調整手段は、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを、予め定めた焦点位置による光ビームの照射方向の強度分布と相反する傾きとなる受光感度の位置に調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の液吐出不良検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の液吐出不良検出装置を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置の調整方法であって、
前記ノズルのインク吐出位置と前記受光素子間の距離を決定する工程と、
前記光ビームの焦点位置を決定する工程と、
前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する工程と、
前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する工程と、
を含むことを特徴とする液吐出不良検出装置の調整方法。
【請求項1】
発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置であって、
前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する第1の調整手段と、
前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する第2の調整手段と、
を備えたことを特徴とする液吐出不良検出装置。
【請求項2】
前記第1の調整手段と前記第2の調整手段は、いずれか一方が調整を行った後、他方が調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項3】
前記第1の調整手段が前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整した後、前記第2の調整手段が、発光素子から照射される光ビームの光量を調整することを特徴とする請求項2に記載の液吐出不良検出装置。
【請求項4】
前記第1の調整手段は、前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを、予め定めた焦点位置による光ビームの照射方向の強度分布と相反する傾きとなる受光感度の位置に調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の液吐出不良検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の液吐出不良検出装置を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
発光素子が照射する光ビームに、ヘッドに設けられる各ノズルから吐出される液滴が衝突し、衝突後の光を受光素子で受光して、その受光結果に基づいて液滴の吐出不良を検出する液吐出不良検出装置の調整方法であって、
前記ノズルのインク吐出位置と前記受光素子間の距離を決定する工程と、
前記光ビームの焦点位置を決定する工程と、
前記光ビームの光軸から前記受光素子までの高さを調整する工程と、
前記発光素子から照射される光ビームの光量を調整する工程と、
を含むことを特徴とする液吐出不良検出装置の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−35522(P2012−35522A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177912(P2010−177912)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
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