説明

液吸収体

【課題】 大型飲食店等で発生する廃棄物のうち、固形の廃棄物に関しては従来特に問題はないが、液体の廃棄物のうち、水を含む油脂(肉汁、アイスクリーム、シェイク等)については、膨大な量が発生するにもかかわらず処理について簡便な手段が存在していないのが実情であった。加えて厨房内のシンクに廃棄し、グリストラップなどの設備によって油水分離するという方法は、多くの場合不十分なものであった。
【解決手段】 容器内に予め投入しておき、その後該容器に投棄される液体を吸収するためのものであって、繊維性物をひとかたまりにしたもの。これにより、現在特に問題のない固形の廃棄物のルートで水を含む油脂が処分できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型飲食店等で発生する廃棄物中、油脂混じりの水、アイスクリーム類、シェイク類、等々を、効果的に吸収する液吸収体の構造に関するものであり、これを飲食店等に設置されている通常のゴミ箱内に予め投入し、ここにこれらの液を廃棄し吸収させ、一般廃棄物として処分する。
【背景技術】
【0002】
大型飲食店、ファストフード店の普及に伴い、廃水の性状や絶対量が好ましくない方向に変化している。
【0003】
例えば、都市近郊で営業されるある程度以上の規模のハンバーガーショップの場合を例に挙げて説明してみると、固形の廃棄物としては、各種残飯や包装袋、容器類、紙ナプキン、使い捨て食器類、等々がありこれらは店内或いは厨房内に設置されたゴミ箱に廃棄され、集合させて一般廃棄物或いは産業廃棄物として処理する。
【0004】
一方、液体の廃棄物は、完全な油脂(例えば揚げ油)については専門回収業者に委託し処理するが、水を含む油脂(肉汁、アイスクリーム、シェイク等)については、膨大な量が発生するにもかかわらず処理について簡便な手段が存在していないのが実情である。
【0005】
最も一般的な方法は、厨房内のシンクに廃棄し、グリストラップなどの設備によって油水分離する。このような設備は、法によって設置が義務づけされている場合が多く、理論的にはこれで支障なく処理が可能となる。更に、グリストラップ内に薬剤或いは微生物を投入し油分の分解を行なうという技術も提案されている。
【特許文献1】特開2002−320985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが現実には、頻繁且つ定期的に行うはずの作業、即ちグリストラップからの油分除去作業、清掃作業が、能力維持にとって不可欠絶対であるのに、現実にはおろそかになりがちである。従って設備の処理能力は、多くの店舗では設計能力を大きく下回る傾向にある。加えて、厨房内に設置された機材によっては、例えばある種のソフトクリーム製造機では、衛生上の観点から定期的な清掃作業が必要となる場合があり、その場合容器内に残存している全ての液体(ソフトクリーム)を廃棄しなければならない。残存量は、平均的な容量のソフトクリーム製造機の場合で10〜20kgになる。これだけの量の液を厨房のシンクを通じて廃棄した場合、グリストラップに依存される液量は大きいものであるし、乳化されているので油水分離は効果的には行い難い。詰まり、乳化されて油水分離が困難な液が、初期能力の発揮できない設備に、初期設定を超える量投入される、という極めて深刻な事態に陥っている店舗が数多く存在していることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは上記点に鑑み鋭意研究の結果、遂に本発明を成したものであるその特徴とするところは、容器内に予め投入しておき、その後該容器に投棄される液体を吸収するためのものであって、繊維性物をひとかたまりにした点にある。
【0008】
ここで「容器」は、本発明においてその構造や材質その他を限定しない。厨房等内に設置される従来のゴミ箱と同様のものが採用可能であるが、固形廃棄物用ゴミ箱と液投入用専用ゴミ箱とを別個に準備しても勿論構わない。更に、廃棄の際の利便性、液漏れによるゴミ箱の汚れ、などを考慮し、ゴミ箱に予めプラスチックフィルム製袋を嵌め入れるようにセットしておくのが望ましい。
【0009】
液体吸収のための「繊維性物」については特に限定しないが、吸収能力、廃棄の際の環境汚染の度合い、等で違いがあるので、できるだけ少量で多くの液を吸収し、且つ処理段階で環境汚染の可能性の小さいものを選択するのが好ましい。本発明者らが実験した限りにおいては、油水の吸収能力に関しては、パルプより成る紙よりも、合成繊維や天然繊維の方がより好適であったし、天然繊維に関しては、油と水全てを吸収する場合においては綿(cotton)が他の繊維よりも優れており、油分のみの吸収力ではカポック( kapok)繊維が優れていた。また合成繊維は吸収力の大きいものもあったが一般廃棄物として処分される場合に環境に及ぼす弊害を勘案した場合、必ずしも最適な材質とは言えない。
【0010】
繊維性物の構造は、編織物、不織布、綿状体いずれでも良いが、本発明者らが実験したところ綿状体(布団綿や脱脂綿のような繊維状構造のもの)が好適であった。従って、天然綿(cotton)の綿状体を50重量%以上とする繊維性物が最適であった。これには、使い捨てタイプのメイク落としシート製造時に端材として生じる要廃棄物がまさに合致し、これがほぼ無加工状態で利用できる。この使い捨てタイプのメイク落としシートは、シート状にした脱脂綿の表裏をそれぞれガーゼ状綿布で覆い、これを端部付近を加圧加熱して融着させながら細幅に切断し、生成された細幅状体を所定長さずつ切断してゆく、という手法で製造される。端材は、細幅に切断する際の両端部分においても生じるし、細幅状体を所定長さずつ切断する際にも生じる。この端材の集合物は、綿状体とガーゼ状体のみから成り、綿状体の重量比率が60%を軽く超える。端材は綿状体とガーゼ状体の混合物であるため取り集めて再度製造原料とすることは現実的には不可能であるため、産業廃棄物として費用を掛け処分していた。従ってこれを本発明液吸収体の材料とした場合、メイク落としシート製造業者にとっては、費用を掛けて処分しなければならない廃棄物がほぼ無料(場合によっては利益を生む形)で処理できるというメリットがあるし、本発明品製造者にとっては、原料コストが極めて小さくて済むというメリットがある。
【0011】
また、繊維性物は容積が大きく、輸送・保管コストが嵩む傾向にあるので、使用時以外は圧縮しておくのが好ましい。具体的には、プラスチックフィルム製袋に繊維性物を充填しておき袋内を減圧するという方法が好ましい。この袋を開封し、その体積を回復させてゴミ箱内に収納しておく、という用い方となる。その際圧縮率は大きい方が好ましいが、これに関しても「綿状体」が最も好ましいという実験結果が出た。
【0012】
本発明において消耗品は、上述した「圧縮のための袋」を具備するものである場合にはその袋も含まれることになるが、基本的に繊維性物のみである。液体等を吸収保持するものだけが消耗されることになり、且つそれを収納する構造物としては厨房内に当然設置されているゴミ箱をそのまま用いることができる。液体等吸収用容器を新たに設置しそれに液体等を廃棄するという場合であっても、当該容器は反復使用されることとなり、廃棄する必要はない。即ち、ランニングコストの極めて小さい処理方法ということになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る液吸収体は、以下述べる如き効果を有する。
(1) ゴミ箱に予め投入しておくと、油脂混じりの水をシンクに廃棄することでグリストラップその他の廃水処理設備に与える負担が大幅に軽減されることとなる。
(2) コットン製品製造時の端材をそのまま利用することが可能であるので、極めて安価に提供できる。
(3) 消耗品は基本的に繊維性物のみであるので、ランニングコストが極めて小さい液体等の処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る液吸収体1(以下「本発明吸収体1」という)の一例を示すものである。図より明らかなように、本例の本発明吸収体1は矩形のプラスチックフィルム製袋2とその内部に充填される繊維性物3とにより構成されるものである。図示状態での本例の本発明吸収体1の大きさは約横200×縦350×高さ50mmであるが、袋の内部空間を減圧した後密閉している関係で繊維性物3は特に高さ方向で圧縮されている。従って開封すると、繊維性物3の復元力にもよるが高さが約2倍に膨らむ。
【0016】
図2は、厨房内に設置されるゴミ箱Dに本発明吸収体1を設置した状態を示すものであり、ゴミ箱Dにまずプラスチックフィルム製ゴミ袋Pをセットしその中に本発明吸収体1を投入した状態を図示している。この状態では本発明吸収体1は、プラスチックフィルム製袋2から取り出されているので充分に膨らんでいる。ここに、液体(肉汁やシェイク類など)を捨てると、繊維性物3に吸収されることになる。
【0017】
ある程度液体を吸収した段階で、本発明吸収体1はゴミ袋Pごと廃棄されるわけであるが、本発明者が関係省庁に問い合わせたところこのような形で生じたゴミは、「一般廃棄物」に相当する可能性が高い。詰まり、グリストラップなどの設備を経由することのない簡便な処理方法となっている。
【0018】
本発明者らは、本発明における繊維性物3として最適な材質・構造を探るべく種々実験を行った。その結果、パルプを材料とする紙は、最も液吸収に長けているトイレットペーパーの場合でも自重と同重量程度しか吸収しないこと、天然綿を材料とするものは、脱脂綿或いはスパンレースの場合で自重の2倍以上吸収することが判った。また脱脂綿のような繊維状天然綿は、圧縮した場合に非常にコンパクトになり且つその圧縮を解除した時の復元性に優れていることも判った。
【0019】
図3(a)(b)(c)は、繊維性物3の最適な材料の一つである「使い捨てタイプのメイク落としシート」の製造時に発生する端材の構造とその形態を示すための概略図である。板状脱脂綿31の表裏両面にガーゼ状体32(通常は「スパンレース」が用いられているが、同程度の吸水性があれば、本来のガーゼ、他の不織布でも採用は可能)をあてがう[同図(a)]。その際脱脂綿31の広さはガーゼ状体32よりも広くし、脱脂綿が欠損した製品が発生しないようになっている。なお図は平面図であり裏面側のガーゼ状体32は本図からは窺えない。
【0020】
次にこの多層構造体を細幅に切断する[同図(b)]。切断の際、切り刃の左右には加圧加熱装置が配されており、該多層構造体の一体化が図られている。詰まり、切断線Aに近接して圧接線Bが並行して形成されている。この時、帯状製品材料41の両端には帯状端材42ができ、これを本発明に係る繊維性物3の材料とする。
【0021】
続いて帯状製品材料41を所定間隔で切断し、製品C(使い捨てタイプのメイク落としシート)が完成する[同図(c)]。この時にも多くの場合矩形端材43ができ、これも本発明に係る繊維性物3の材料となる。その他、製品Cの不良品も本発明に係る繊維性物3の材料となる。
【0022】
こうして得られる帯状端材42、矩形端材43、製品Cの不良品をまとめれば、脱脂綿自体が綿繊維のワックス分が除去されているものであるため吸水力が大きく、非常に好ましい繊維性物3となる。そして特に帯状端材42の発生は、現在の製造方法を余程抜本的に改良しない限り大量且つ必然のものであるので供給量は潤沢にあると言える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る液吸収体の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る液吸収体の使用状態の一例を示す概略断面図である。
【図3】(a)(b)(c)は本発明に係る液吸収体の繊維性物として用いる材料の生成の形態を示すいずれも概略平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 本発明に係る液吸収体
2 プラスチックフィルム製袋
3 繊維性物
41 帯状製品材料
42 帯状端材
43 矩形端材
A 切断線
B 圧接線
C 製品(使い捨てタイプのメイク落としシート)
D ゴミ箱
P ゴミ袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に予め投入しておき、その後該容器に投棄される液体を吸収するためのものであって、繊維性物をひとかたまりにしたものであることを特徴とする液吸収体。
【請求項2】
該繊維性物は、少なくともその50重量%以上は綿状体或いは不織布状体より成るものである請求項1記載の液吸収体。
【請求項3】
該繊維性物は、使用時開封される密閉袋の袋内を減圧することで圧縮され、その状態で収納されているものである請求項1又は2記載の液吸収体。
【請求項4】
該繊維性物は、天然綿である請求項1、2又は3記載の液吸収体。
【請求項5】
該繊維性物は、天然カポック繊維の綿状体であり、且つ該綿状体には吸水性ポリマーが含有されているものである請求項1、2又は3記載の液吸収体。
【請求項6】
投棄される液体は、油脂と水を含む混濁液又は乳化液、或いはこれらのムース状物、乳化固形物である請求項1、2、3、4又は5記載の液吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−306540(P2006−306540A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128833(P2005−128833)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(502253515)株式会社アイデックス (2)
【出願人】(591053579)日本紙パルプ商事株式会社 (4)
【Fターム(参考)】