説明

液圧システムの圧力保持機構

【課題】液圧システムにおいて、作動液体の温度の変動による液体の体積の変化に対しても、圧力の保持性を持つ圧力保持機構とする。
【解決手段】液圧システムの密閉区間の圧力が導入される圧力導入室34と、圧力導入室34に連続して設けられる空気室36と、空気室36に臨み、且つ空気室36と圧力導入室34との境界部分を塞ぐようにして圧力導入室34内の一部に充填される弾性体38と、を備える。弾性体38は、弾性変形によってその一部が空気室36内へと移動可能に且つ空気室36内に移動した一部が圧力導入室34に戻ることが可能となっており、これにより圧力導入室34内の作動液体の為の容積を変化させて、圧力変動を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧システムにおける作動液体の温度の変動による作動液体の体積の変化に対して、液圧システム内の密閉区間内の圧力の変動を抑制する液圧システムの圧力保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液圧システムの圧力保持機構としては、同一出願人による特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この特許文献1では、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る密閉区間内に、作動液体を吸収せず、且つ作動液体の温度変化による圧力変化を体積変化によって吸収する弾性体を固定的に配備している。より詳細には、図8に示すように、密閉区間51に連通する凹部64を設け、凹部64に弾性体68が嵌合されている。弾性体68は、作動液体を吸収せず、且つ、周囲の圧力変化によって弾性変形が可能な弾性体であり、特定の方向からの外力のみに応動して弾性変形する弾性体を含んでおらず、例えば、スプリングやスポンジなどは含まず、シリコーンゴムのようなもので構成することができる。
【0004】
そして、作動液体の温度が低下して、作動液体の体積が減少したときには、弾性体が弾性変形して膨張することで、作動液体の体積の減少分を補完し、一方、作動液体の温度が上昇して、作動液体の体積が増加したときには、弾性体が弾性変形して圧縮することで、作動液体の体積の増加分を吸収しており、これによって、作動液体の圧力の変動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−185185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の圧力保持機構をさらに改良して、作動液体の温度の変動に対する圧力の保持性をさらに高めることができる液圧システムの圧力保持機構を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の発明は、液圧システムにおいてその作動液体が密閉される密閉区間に設けられて、密閉区間内の圧力を保持する圧力保持機構において、
密閉区間の圧力が導入される圧力導入室と、
圧力導入室に連続して設けられる空気室と、
空気室に臨み、且つ空気室と圧力導入室との境界部分を塞ぐようにして圧力導入室内の一部に充填される弾性体と、
を備え、該弾性体は、弾性変形によってその一部が空気室内へと移動可能に且つ空気室内に移動した一部が圧力導入室に戻ることが可能となっており、これにより圧力導入室内の作動液体の為の容積を変化させて、圧力変動を吸収することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記空気室の端部が、大気に開放されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記弾性体の外周囲に、弾性体と圧力導入室の壁面との間を充填する充填材が配設されることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の前記充填材が、前記弾性体よりも粘着性の高いものであることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の前記空気室に、該空気室の開放端部の完全開放を制限する制限手段が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作動液体の温度が上昇して密閉区間内の作動液体が膨張して密閉区間の圧力が上昇すると、弾性体の一部が変形して空気室内へと移動して密閉区間の容積を増加させて、密閉区間の圧力の上昇を抑制する。その後に、作動液体の温度が下降して密閉区間内の作動液体が圧縮して密閉区間の圧力が下降すると、弾性体は、空気室内から戻り、密閉区間の容積を減少させて、密閉区間の圧力の下降を抑制する。こうして、作動液体の温度の変動に対して、密閉区間内の圧力の変動を抑制することができる。
【0013】
従来のように弾性体自身の圧縮、膨張のみに頼るのではなく、空気室への弾性体の移動を利用するために、作動液体の大きな温度の変動に対する圧力の保持性を向上させることができる。
【0014】
さらに、空気室の端部を大気に開放することにより、空気室内による圧力によって弾性体の移動が妨害されることを防ぎ、密閉区間内の圧力に応答性良く弾性体が移動することができるようになり、作動液体の大きな温度の変動に対する圧力の保持性をより向上させることができる。
【0015】
弾性体と圧力導入室の壁面との間を充填材によって充填することによって、弾性体が変形・移動したときに、圧力導入室の壁面との間に発生し得る隙間を防ぎ、該隙間に作動液体が入り込んで、密閉区間内の圧力が本来の圧力に比較して低下することを防ぐことができる。
【0016】
充填材は弾性体よりも粘着性の高いものとすることによって、弾性体の外周面及び圧力導入室の壁面にそれぞれ密着して、作動液体の入り込みを効果的に防ぐことができる。
【0017】
空気室の完全開放を制限する制限手段を設けることにより、弾性体が空気室から脱出することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による圧力保持機構が適用される液圧システムの一例を示す回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態による圧力保持機構の断面図である。
【図3】図2において、密閉区間の圧力が上昇した場合の状態を表す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による圧力保持機構の断面図である。
【図5】図4の例において制限手段を設けた例を表す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態による圧力保持機構の断面図である。
【図7】本発明の圧力保持機構による圧力保持効果を調べるための実験装置を表す説明図である。
【図8】従来の圧力保持機構を用いた実験装置を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の圧力保持機構が適用される液体システム10の一例を示している。液圧システム10は、図示したものに限らず、任意の構成のものとすることができるが、この図示例では、作動液体を吐出するポンプ12と、ポンプ12の高圧ライン20の圧力を設定圧力に制御するリリーフ弁14と、高圧ライン20の逆流を防ぐチェック弁15と、方向制御弁16と、アクチュエータ18と、を備える。
【0021】
アクチュエータ18内は、それぞれ容積可変となった少なくとも2つの液室18a、18bに分けられており、少なくとも2つの液室18a、18bの圧力の差に応じて作動がなされる。アクチュエータ18としては、任意のアクチュエータとすることができるが、シリンダを例示することができ、2つの液室18a、18bを隔てるピストン18c及びそれによって作動するピストンロッド18dを備えることができる。さらに、シリンダとしては、図示したような一方の液室18bがタンク28にドレンされるバネ付きシリンダ単動シリンダを例示することができる。
【0022】
方向制御弁16としては、図示したような3ポート電磁切換弁を例示することができる。方向制御弁16の切換動作によって、方向制御弁16のAポートとポンプ側のPポートとが連通することで、アクチュエータ18の第1液室18aと方向制御弁16のAポートとの間の流路22が高圧ライン20に連通しアクチュエータ18の第1液室18aが高圧室となり、方向制御弁16のAポートとタンク側のTポートとが連通することで、流路22が低圧ライン26に連通して、第1液室18aが低圧室となる。
【0023】
本発明による圧力保持機構30は、この液圧システム10のアクチュエータ18の作動状態を一定に保つべく、いずれかの液室が比較的な長時間にわたり一定の圧力状態を保持しなければならない状態で、アクチュエータ18内で高圧となっている方の液室(この例では、第1液室18a)、該液室に連通する流路(この例では、流路22)、または、高圧ライン20のいずれかで形成される密閉区間に設けることができる。図1では、圧力保持機構30を流路22に設けた場合を示している。以下、この圧力保持機構30について説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態による圧力保持機構30を示す。圧力保持機構30は、密閉区間の圧力が導入される圧力導入室34と、圧力導入室34に連続して設けられた空気室36と、圧力導入室34内に収納された弾性体38と、を備える。
【0025】
この例では、圧力導入室34及び空気室36は、複数のハウジング部材32A、32B、32Cによって画成される。そして、ハウジング部材32Aに形成された開口32aを介して密閉区間と圧力導入室34とが連通している。但し、圧力導入室34は、密閉区間そのものを兼ねることも可能である。
【0026】
圧力導入室34は、例えば、円柱形の空間とし、拡径断面を持つことができる。これに対して、空気室36は、圧力導入室34よりも小さい断面積を持ち、好ましくは円柱形の空間とし、縮径断面を持つ。好ましくは、空気室36と圧力導入室34との境界部分は、鋭角な角度となるのを避けるために、アール加工が施されているとよい。また、空気室36の端部は、蓋40で閉鎖されている。
【0027】
圧力導入室34に収納される弾性体38は、空気室36に臨み、且つ空気室36と圧力導入室34との間の境界部分を塞ぐように圧力導入室34内の一部に充填される。この弾性体38は、作動液体を吸収せず、且つ、周囲の圧力変化によって弾性変形が可能なものであり、好ましくはシリコーンゴムから構成することができる。シリコーンゴムは、広い温度範囲で安定であり、作動液体の温度が変動してもその物質特性が変化しにくく、また、耐薬品性に優れているために、作動液体、例えば機械油に浸した状態であっても、状態の変化が少ない。
【0028】
以上のように構成される圧力保持機構30にあっては、図2に示す状態から、作動液体の温度の上昇があって作動液体が膨張すると、密閉区間の圧力が上昇し、圧力導入室34の圧力が上昇する。そうすると、図3に示すように、圧力導入室34内の作動液体から弾性体38が圧力を受けて、弾性体38が弾性変形して、弾性体38の一部が空気室36へと移動する。この空気室36への弾性体38の移動、即ち、弾性体38の圧力導入室34から脱出する方向への移動によって、圧力導入室34内の作動液体の為の容積が増加するために、圧力の上昇を抑制することができる。
【0029】
また、図3に示す状態から、作動液体の温度が下降すると、作動液体が圧縮して、密閉区間及び圧力導入室34の圧力が下降する。そうすると、弾性体38がその復元力により、空気室36内から圧力導入室34へと戻り、圧力導入室34内の作動液体の為の容積が減少するために圧力の下降を抑制する。こうして、作動液体の温度の変動に対して密閉区間内の圧力の変動を抑制することができる。
【0030】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態を表す図である。第1実施形態と同一・同様の部材は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
この例の圧力保持機構30−1では、空気室36の端部から蓋40が取り除かれており、空気室36が大気に開放されている。
【0032】
但し、空気室36の端部は、完全に開放されている必要はなく、任意には、空気室36の開放端部に完全開放を制限する制限手段42を設けるようにしてもよい。制限手段としては、例えば、複数の開口があいたカバー(図5(a)参照)や網とするか、または、開放端部を横切る複数の部材から構成するか、または空気室36の端部に形成された絞り部(図5(b)参照)とすることができる。
【0033】
この実施形態においては、温度の上昇があったときに、弾性体38の変形が空気室36の空気圧によって妨げられることなく、弾性体38が空気室36へと移動することができ、弾性体38の移動量を大きくすることができるため、より一層の圧力保持能力を持たせることができる。
【0034】
また、制限手段42を設けることによって、圧力導入室34の急激な圧力上昇により、弾性体38が空気室36から脱出するといった事態を防ぐことができる。
【0035】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態を表す図である。第1、第2実施形態と同一・同様の部材は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
本実施形態による圧力保持機構30−2では、弾性体38の外周囲に配設されて弾性体38と圧力導入室34の壁面との間の隙間を充填する充填材44が設けられている。
【0037】
充填材44は、弾性体38と同じ素材で構成することも異なる素材で構成することもでき、任意のゴム材料で構成することができ、例えば、合成ゴム(例えば、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなど)で構成することができる。好ましくは、弾性体38よりも粘着性が高く、弾性体38よりも圧力導入室34の壁面により密着し易いものとするとよい。
【0038】
また、充填材44は、原則的には空気室36には面しておらず、弾性体38と圧力導入室34との間に配設されている。充填材44は、想定される温度範囲で、弾性体38と圧力導入室34の壁面との間で圧縮状態を維持しているように設定されるとよい。
【0039】
温度の上昇があって弾性体38が空気室36へ移動するときに、弾性体38の変形に伴い、圧力導入室34内で弾性体38の断面積が減少し、この減少分に応じた隙間が発生し、この隙間に作動液体が侵入するおそれがある。しかしながら、この実施形態では、弾性体38と圧力導入室34の壁面との間に配設される充填材44によって、弾性体38の断面積の減少による隙間の発生を防ぐことができる。これによって、作動液体が漏れることによる圧力導入室34の圧力の低下を防ぐことができる。
【0040】
以上の各実施形態による効果を以下の実験により説明する。
【0041】
(比較例)
まず、特許文献1及び図8で示された、従来の圧力保持機構60を用いて行った比較例としての実験について説明する。
【0042】
図8において、50は密閉区間51を構成する容器、52は圧力センサ、54、56はストップ弁である。圧力保持機構60は、ハウジング62を有し、ハウジング62内に容器50の密閉区間51に連通する凹部64が画成され、凹部64内に弾性体68が収納される。
【0043】
実験に用いた凹部64の内径は10mmで深さ45mmであり、凹部64内に収納される弾性体68はシリコーンゴム(セメダイン株式会社製、PM−165R)であり、その外径が10mm、高さが30mmの円柱棒とし、ピストン69を用いて凹部64内に挿入した。作動液体としては、ダフニー(登録商標)ハイドロウリックフルイド46(出光興産株式会社製)を用いた。
【0044】
ストップ弁54を開いて、作動液体を容器50内に入れて、ストップ弁54を閉じて封入し、20℃で、容器50の初期封入圧を2.0MPaに設定した後、容器50及び圧力保持機構60を恒温槽58内に入れた。尚、封入の際には、ハウジング62に別途設けた空気抜き弁により空気を抜き、空気の混入を避けた。そして、恒温槽58内に入れて、容器50内の圧力が一定となったら温度を2℃ずつ上昇させて、各温度での圧力センサ52の値を記録したところ、表1の結果が得られた。
【0045】
【表1】

【0046】
(実験例1)
図7は、本発明の圧力保持機構30による圧力保持効果を調べるための実験装置であり、50は密閉区間51を構成する容器、52は圧力センサ、54、56はストップ弁である。
【0047】
実験に用いた圧力導入室34の内径は100mm、空気室36の内径は、30、48、60mmの3種類を用意した。
【0048】
弾性体38は、ショアA硬度30のシリコーンゴム(株式会社ゴム扶桑産業製)を用い、外径50、80、100mm、高さ30mmの3種類の円柱棒のシリコーンゴムを用意した。また、必要に応じて、圧力導入室34と弾性体38との間に両者の隙間を埋めるために、弾性体38よりも弾性がなくハウジング部材32Bと同等の弾性率の隙間カバーを配設した。作動液体としては、ダフニー(登録商標)ハイドロウリックフルイド46(出光興産株式会社製)を用いた。
【0049】
ストップ弁54を開いて、作動液体を容器50内に入れて、ストップ弁54を閉じて封入し、20℃で、容器50の初期封入圧を2.0MPaに設定した後、容器50及び圧力保持機構30を恒温槽58内に入れた。尚、封入の際には、圧力導入室34に別途設けた空気抜き弁55により空気を抜き、空気の混入を避けた。そして、恒温槽58内に入れて、容器50内の圧力が一定となったら温度を上昇させて(最大温度36℃まで)、各温度での圧力センサ52の値を記録したところ、表2の結果が得られた。
【0050】
【表2】

【0051】
比較例と比較して、特に高温での圧力の上昇を抑制できることが分かる。空気室36を設けることにより、弾性体38が空気室36へと移動することができるために、圧力上昇抑制効果が得られたものと推測される。
【0052】
(実験例2)
図7に示す実験装置で、実験例1に対して蓋40を取り除いた圧力保持機構30−1による圧力保持効果を同様に調べた。圧力導入室34の内径は100mm、空気室36の内径は36mmとし、弾性体38は、ショアA硬度30のシリコーンゴム(株式会社ゴム扶桑産業製)を用い、外径60mm、高さ30mmの円柱棒のシリコーンゴムとした。また、圧力導入室34と弾性体38との間に両者の隙間を埋めるために、弾性体38よりも弾性がなくハウジング部材32Bと同等の弾性率の隙間カバーを配設した。
【0053】
実験1と同様に、温度を上昇させて(最大温度38℃まで)、各温度での圧力センサ52の値を記録したところ、表3の結果が得られた。
【0054】
【表3】

【0055】
比較例及び実験例1と比較して、広い温度範囲にわたり、圧力の上昇を抑制できることが分かる。空気室36を開放することによって、弾性体38の変形がより促進されるため、より一層の圧力上昇抑制効果が得られたものと推測される。
【0056】
(実験例3)
図7に示す実験装置で、圧力保持機構30−2による圧力保持効果を同様に調べた。即ち、実験例2に対して、弾性体38の内径を小さくし、その代りに、弾性体38の外周囲に充填材44を配設して、弾性体38と圧力導入室34との間の隙間を充填した。
【0057】
圧力導入室34の内径は100mm、空気室36の内径は36mmとし、弾性体38は、ショアA硬度30のシリコーンゴム(株式会社ゴム扶桑産業製)を用い、外径38mm、高さ30mmの円柱棒のシリコーンゴムとした。また、充填材44としては、厚み30mmの環状のニトリルゴムを用いた。また、圧力導入室34と充填材44との間に両者の隙間を埋めるために、弾性体38よりも弾性がなくハウジング部材32Bと同等の弾性率の隙間カバーを配設した。
【0058】
温度を20℃、封入初期圧2MPaから温度を28℃まで上昇させた後、4℃刻みに減少させて、各温度での圧力センサ52の値を記録したところ、表4の結果が得られた。
【0059】
【表4】

【0060】
一度温度を上昇させて、再び初期温度に戻したときに、封入初期圧と略同等の圧力が再現された。充填材44がないと、温度の上昇により弾性体38が空気室36へと移動したときに、弾性体38と圧力導入室34との間の隙間に作動液体が入りこみ、作動液体の体積が減少して圧力導入室34の圧力が本来の圧力よりも低下する可能性が考えられる。しかしながら、弾性体38の周囲に充填材44を設けることで、弾性体38と圧力導入室34の壁面との間に隙間が形成されることを防止して、作動液体の漏れを防止することで、温度の上下動に対する圧力の再現性を持たせることができることが分かった。
【符号の説明】
【0061】
10 液圧システム
30、30−1、30−2 圧力保持機構
34 圧力導入室
36 空気室
38 弾性体
42 制限手段
44 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧システムにおいてその作動液体が密閉される密閉区間に設けられて、密閉区間内の圧力を保持する圧力保持機構において、
密閉区間の圧力が導入される圧力導入室と、
圧力導入室に連続して設けられる空気室と、
空気室に臨み、且つ空気室と圧力導入室との境界部分を塞ぐようにして圧力導入室内の一部に充填される弾性体と、
を備え、該弾性体は、弾性変形によってその一部が空気室内へと移動可能に且つ空気室内に移動した一部が圧力導入室に戻ることが可能となっており、これにより圧力導入室内の作動液体の為の容積を変化させて、圧力変動を吸収することを特徴とする圧力保持機構。
【請求項2】
前記空気室の端部は、大気に開放されていることを特徴とする請求項1記載の圧力保持機構。
【請求項3】
前記弾性体の外周囲には、弾性体と圧力導入室の壁面との間を充填する充填材が配設されることを特徴とする請求項1または2記載の圧力保持機構。
【請求項4】
前記充填材は、前記弾性体よりも粘着性の高いものであることを特徴とする請求項3記載の圧力保持機構。
【請求項5】
前記空気室には、該空気室の開放端部の完全開放を制限する制限手段が設けられることを特徴とする請求項2記載の圧力保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−133058(P2011−133058A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293837(P2009−293837)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年11月26〜27日社団法人日本フルードパワーシステム学会及び社団法人日本機械学会共催の「平成21年秋季フルードパワーシステム講演会」において、平成21年11月18日発行の講演論文集をもって発表
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】