説明

液圧回転機の摩耗検出装置

【課題】液圧回転機として少なくとも2つ以上の油圧ポンプ又は油圧モータを用いる場合における液圧回転機の故障あるいは摩耗を少ない部品点数で確実に検出することができる液圧回転機の摩耗検出装置を提供する。
【解決手段】作動油を昇圧させる少なくとも2つ以上の液圧回転機を有する液圧回転機の摩耗検出装置であって、前記複数の液圧回転機の各流出ポートからの昇圧された作動油を合流する合流回路と、前記複数の液圧回転機の各流入ポートに前記作動油をそれぞれ分流供給する分流回路と、前記複数の液圧回転機の同等箇所に設けたそれぞれの温度検出部と、前記各温度検出部の温度をそれぞれ測定する温度計測手段と、前記各温度計測手段が測定した前記各温度検出部からの温度信号を取込み、比較演算して、前記複数の液圧回転機の摩耗を検出する演算手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液圧回転機の摩耗検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧回転機である出口ラインを有するポンプの摩耗の程度を表示するために、基準温度信号を発生する第1温度センサと、出口ラインに接続され出口温度信号を発生する第2温度センサと、該基準温度信号と出口ライン温度信号からポンプの摩耗の程度を求め、このポンプの摩耗の程度に応じて故障を表示するプロセッサとを備えた装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−294365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型油圧ショベル等の建設機械において、作業機械の駆動力を増加させるために、例えば2台の油圧ポンプから吐出された昇圧された作動油を合流させて作業機械のアクチュエータに供給する形式(2ポンプ合流形式)のものがある。このような2ポンプ合流形式の油圧ポンプを備えた建設機械においては、作動油供給源となる2台の油圧ポンプの故障や部品の摩耗等をそれぞれ的確に検出することが重要になる。
【0005】
上述した従来技術の基準温度と出口ライン温度から摩耗の進行を検知する方法は、基準温度と出口ライン温度の温度差や温度差の変化率を予め定めた定数と比較することで摩耗の進行を検知している。しかし、これらの定数は、経験に基づいて設定されるものであり、かつ使用条件や使用環境などの影響を考慮して設定する必要があるので、これらの定数を的確に定めることは困難であり、このことにより、故障検出精度を上げるのが難しい場合があった。また、上述した従来技術では、1つの油圧ポンプに対して2つ以上のセンサを設ける必要があり、装置の部品点数が増大するという課題があった。
【0006】
このため、上述した2ポンプ合流形式の油圧ポンプを備えた建設機械において、いずれか一方の油圧ポンプの故障あるいは摩耗を少ない部品点数で確実に検出できる摩耗検出装置が要望されていた。また、昇圧された作動油によって駆動される少なくとも2つの油圧モータの場合にも、同様な摩耗検出装置が要望されていた。
【0007】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、液圧回転機として少なくとも2つ以上の油圧ポンプ又は油圧モータを用いる場合における液圧回転機の故障あるいは摩耗を少ない部品点数で確実に検出することができる液圧回転機の摩耗検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、作動油を昇圧させる少なくとも2つ以上の液圧回転機を有する液圧回転機の摩耗検出装置であって、前記複数の液圧回転機の各流出ポートからの昇圧された作動油を合流する合流回路と、前記複数の液圧回転機の各流入ポートに前記作動油をそれぞれ分流供給する分流回路と、前記複数の液圧回転機の同等箇所に設けたそれぞれの温度検出部と、前記各温度検出部の温度をそれぞれ測定する温度計測手段と、前記各温度計測手段が測定した前記各温度検出部からの温度信号を取込み、比較演算して、前記複数の液圧回転機の摩耗を検出する演算手段とを備えたものとする。
【0009】
また、第2の発明は、昇圧された作動油により駆動される少なくとも2つ以上の液圧回転機を有する液圧回転機の摩耗検出装置であって、前記複数の液圧回転機の各流出ポートからの作動油を合流する合流回路と、前記複数の液圧回転機の各流入ポートに前記昇圧された作動油をそれぞれ分流供給する分流回路と、前記複数の液圧回転機の同等箇所に設けたそれぞれの温度検出部と、前記各温度検出部の温度をそれぞれ測定する温度計測手段と、前記各温度計測手段が測定した前記各温度検出部からの温度信号を取込み、比較演算して、前記複数の液圧回転機の摩耗を検出する演算手段とを備えたものとする。
【0010】
更に、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記複数の液圧回転機はドレンポートからの作動油を排出するドレン回路を有し、前記温度検出部を前記ドレン回路に設けたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記複数の液圧回転機は内部構成部品を収容するケースを有し、前記温度検出部を前記ケース外表面に設けたことを特徴とする。
【0012】
更に、第5の発明は、第1の発明において、前記複数の液圧回転機は油圧ポンプであることを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、第2の発明において、前記複数の液圧回転機は油圧モータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建設機械に備えた少なくとも2つ以上の液圧回転機である油圧ポンプ又は油圧モータのいずれか一方の液圧回転機の故障あるいは摩耗を少ない部品点数で確実に検出することができる。このことにより、部品の修理交換等の対策を事前に実行できるので、修理等に伴うダウンタイムを短縮することができる。この結果、建設機械の生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態を備えた大型油圧ショベルの側面図である。
【図2】本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態が適用される油圧ポンプの側部断面図である。
【図3】本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態の油圧回路を示す油圧回路図である。
【図4】本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態の処理内容を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第2の実施の形態の油圧回路を示す油圧回路図である。
【図6】本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第3の実施の形態が適用される油圧ポンプの側部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態を備えた大型油圧ショベルの側面図、図2は本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態が適用される油圧ポンプの側部断面図、図3は本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態の油圧回路を示す油圧回路図、図4は本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態の処理内容を示すフローチャート図である。
【0018】
図1において、101は建設機械としての大型油圧ショベルを示している。102はその走行フレーム、103は走行フレームの左右両側に装設した無限軌道式走行装置、104は走行フレーム102の上部に旋回可能に搭載された旋回フレーム、105はこの旋回フレーム104上の前方部に上下方向に回動可能に(俯仰動可能に)取り付けられた多関節型のフロント装置、106は旋回フレーム104上の左側前方部に配設された運転室、107は旋回フレーム104上に配設されエンジン等各種機器を収納する機械室、108は旋回フレーム104上の後方部に取り付けられたカウンタウエイトである。
【0019】
上述したフロント装置105は、基端部が旋回フレーム104に回動可能に接続されたブーム111と、このブーム111の先端部に回動可能に接続されたアーム112と、このアーム112の先端に回動可能に接続されたバケット113とを備えており、ブーム111、アーム112、及びバケット113は、それぞれブーム用油圧シリンダ114、アーム用油圧シリンダ115、及びバケット用油圧シリンダ116により動作する。本実施の形態の大型油圧ショベルにおいては、作業機械の駆動力を増加させるために、液圧回転機として2ポンプ合流形式の油圧ポンプを備えている。
【0020】
本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態が適用される油圧ポンプ1は、図2に示すように、ケース2と、カバー3と、軸受4a、4bと、回転軸5と、シリンダブロック6と、ピストン8と、シュー9と、斜板10と、弁部材11とを備えて構成されている。
【0021】
ケース2は、内部にその他の部品を収容し、作動油が流入する流入ポート12と、作動油が流出する流出ポート13と、ケース内部の作動油を排出するためのドレンポート15とを備え、カバー3により閉塞されている。
回転軸5は、ケース2に固定された軸受4aとカバー3に固定された軸受4bにより回転可能に支持されている。シリンダブロック6は、複数のシリンダ7を備え回転軸5と一体に回転可能に設けられている。ピストン8は、シリンダブロック6の各シリンダ7に挿入され、往復運動可能に設けられ、突出側の端部には斜板10と摺接するシュー9を備えている。斜板10は、ケース2に傾転可能に支持され、シュー9の端面が円軌道を描いて摺接するように設けられている。弁部材11は、シリンダブロック6の端面と摺接し、流入ポート12および流出ポート13とシリンダ7との連通/遮断を切り替える連通ポート14を備え、ケース2に固定されている。
【0022】
本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態の油圧回路を図3に示す。図3において、液圧回転機を第1油圧ポンプ1aと第2油圧ポンプ1bの2ポンプ合流形式の油圧ポンプとして構成した場合について説明する。第1油圧ポンプの流入ポート12aとドレンポート15aは、それぞれ流入配管16a及び第1流入配管16bと第1ドレン配管17aとを介してタンク20に接続されている。同様に、第2油圧ポンプの流入ポート12bとドレンポート15bは、それぞれ流入配管16a及び第2流入分岐配管16cと第2ドレン配管17bとを介してタンク20に接続されている。第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの流出ポート13a,13bは、流出配管18a,18bのそれぞれ一端側に接続され、第1及び第2流出配管18a,18bのそれぞれ他端側を合流配管19の一端側で接続することで合流させている。合流配管19の他端側は、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bから流出した作動油をブームシリンダ114,アームシリンダ115,バケットシリンダ116等の各アクチュエータに分配する制御弁21に接続されている。
【0023】
油圧ポンプとして用いられた液圧回転機の摩耗を検出するためには、複数の液圧回転機の温度条件と複数の液圧回転機の負荷条件を合わせる必要がある。具体的には、作動油の温度と圧力の条件を設定しておく必要があり、温度条件としては、各液圧回転機の流入側で作動油の温度を同一にすること、圧力条件としては、各液圧回転機の吐出側を同圧とすることが必要である。より厳密に言えば、流出側と流入側との差圧を合わせる必要がある。
【0024】
温度条件のための構成として、本実施の形態においては、タンク20から流入配管16aを経て第1流入配管16bと第2流入分岐配管16cとで分岐して分流させている。また、圧力条件のための構成として、本実施の形態においては、タンク圧は共通なので流出側を合流させている。
【0025】
第1ドレン配管17aには、第1油圧ポンプ1aのドレンポート15aから流出した作動油の温度を計測するための温度センサ22aが設けられていて、第1温度計測手段を構成している。第2ドレン配管17bには、第2油圧ポンプ1bのドレンポート15bから流出した作動油の温度を計測するための温度センサ22bが設けられていて、第2温度計測手段を構成している。さらに温度センサ22a,22bの出力信号は信号処理装置24に入力されている。信号処理装置24は、これらの入力信号を基に、後述する演算処理を実行して、摩耗状態を判定する。また、信号処理装置24からは、運転室のモニタ等の報知装置40へ診断内容を表す信号が出力されている。
【0026】
なお、ここで第1及び第2油圧ポンプ1a,1bは、大略等しい押しのけ容積を備え、例えば駆動軸を機械的に接続することで略等しい回転数で駆動されることが望ましい。また、温度センサ22a,22bのそれぞれのドレン配管17a,17bへの取付位置は、例えば、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのドレンポート15a,15bから略等しい距離とする等、大略等しい同等箇所とすることが望ましい。
【0027】
次に、本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態の動作を図1乃至図4を用いて説明する。
まず、油圧ポンプにおける作動油の温度の概要について説明する。一般に、油圧ポンプ内での例えば摺動部材の摩耗や破損等が生じることは、発熱の要因となる。このことにより、油圧ポンプ内で漏れた圧油の圧力エネルギが熱エネルギに変換され、油圧ポンプから流出される作動油の温度を上昇させる。また、運転状況の変化により、油圧ポンプの流量や圧力が上昇すると、昇圧された作動油の漏れ量が増加するため、作動油の温度の上昇速度も増加することになる。すなわち、油圧ポンプ内で例えば摺動部材の摩耗や破損等が生じた場合であっても、油圧ポンプの使用条件によっては、作動油の温度変化は大きく異なる。
【0028】
一方、油圧ポンプから流出した作動油は、油圧配管、オイルクーラ、タンク等を流れる際に放熱して冷却されるが、周囲環境温度が高いと放熱量が減少するため、作動油の温度は下がりにくくなる。このように、タンク等に還流され、再び油圧ポンプに流入する作動油の温度は使用環境によって変化する。油圧ポンプに流入する作動油の温度の変化は、当然、油圧ポンプから流出する作動油の温度にも影響を与える。このように油圧ポンプの使用条件や使用環境により油圧ポンプから流出する作動油の温度は様々に変化する。
【0029】
次に、動作の概要について説明する。図3において、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bが駆動されると、同一のタンク20の作動油が流入配管16a,第1流入配管16b及び第2流入分岐配管16cを経由してそれぞれの流入ポート12a,12bに流入する。流入ポート12a,12bから流入した作動油は流出ポート13a,13bからそれぞれ流出し、流出した作動油は第1及び第2流出配管18a,18bを経由して合流配管19にて合流し、その後、制御弁20に流入する。
【0030】
ここで、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの流出ポート13a,13bから流出した作動油は、合流配管において合流するため、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの流出ポート13a,13bにおける圧力は略等しい値となる。また、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの使用条件が略等しくなるため、これら油圧ポンプ1a,1bが正常な状態であれば、作動油による発熱量も略等しくなる。
【0031】
一方、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bに流入する作動油は同一のタンク20からそれぞれ供給されるため、これら油圧ポンプ1a,1bに流入する作動油の温度は略等しくなる。このため、温度センサ22a,22bにより検出される油圧ポンプ1a,1bのドレンポート15a,15bから流出した作動油の温度も大略等しい値となる。
【0032】
第1油圧ポンプ1aにおいて、内部構成部材の異常摩耗が発生したとすると、摩擦により摺動部材の温度が上昇する。このことにより、第1油圧ポンプ1aのケース2内の作動油の温度も上昇する。このため、正常な第2油圧ポンプ1bの第2ドレン配管17bに設けた温度センサ22bで検出した作動油の温度より、異常摩耗が発生した第1油圧ポンプ1aの第1ドレン配管17aに設けた温度センサ22aにて検出した作動油の温度の方が高くなる。このことを利用して異常摩耗を検出できる。
【0033】
本実施の形態において、液圧回転機の摩耗検出装置は、温度センサ22a及び22bによって計測した第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのドレンポート15a,15bから流出した作動油の温度に基づき、信号処理装置24で演算処理を行うことで、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの異常摩耗を検出する。
【0034】
次に、信号処理装置24の処理内容等について図4を用いて説明する。
まず、図4のステップ(S100)では、基準温度差Bを設定する。具体的には、例えば、信号処理装置24の記憶部等に設定値を記憶させることで設定させる。この基準温度差Bは、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの仕様や油圧回路の構成によって異なるものであって、例えば、経験的に定められるものである。本実施の形態においては、第1油圧ポンプ1aと第2油圧ポンプ1bの2ポンプ合流形式の油圧ポンプとして構成しているので、基準温度差Bは、これら油圧ポンプ1a,1bの使用条件や使用環境の影響を受けるものではない。
【0035】
ステップ(S101)では、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのドレンポート15a,15bから流出した作動油の温度をそれぞれ測定する。具体的には、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの第1及び第2ドレン配管17a,17bに設けた温度センサ22a,22bによって計測した各油圧ポンプ1a,1bのドレン油温度Ta,Tbの出力信号を信号処理装置24に入力している。
【0036】
ステップ(S102)では、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのドレン油温度差を算出する。具体的には、信号処理装置24において、第1油圧ポンプ1aのドレン油温度Taの値から第2油圧ポンプ1bのドレン油温度Tbの値を減算してドレン油温度差Dを算出している。
【0037】
ステップ(S103)では、ステップ(S102)で算出したドレン油温度差Dがステップ(S100)で設定した基準温度差Bより大きいか否かの判断を行う。具体的には、信号処理装置24において、ステップ(S102)で算出したドレン油温度差Dの絶対値とステップ(S100)で設定した基準温度差Bとの大小比較を演算する。
【0038】
ステップ(S103)で、ドレン油温度差Dの絶対値が基準温度差Bより大きい場合、YESと判断されてステップ(S105)に進み、基準温度差Bと等しいか小さい場合、NOと判断されてステップ(S104)へ進む。
【0039】
ステップ(S104)は、基準温度差Bよりドレン油温度差Dの絶対値が等しいか小さい場合である。この場合、信号処理装置24は、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのいずれも正常であると判断し、報知装置40へこれらの油圧ポンプ1a,1bの摩耗状態正常を出力する。報知装置40は摩耗状態が正常であることを報知する。
【0040】
ステップ(S105)では、ステップ(S102)で算出したドレン油温度差Dが0より大きいか否かの判断を行う。具体的には、信号処理装置24において、ステップ(S102)で算出したドレン油温度差Dと0との大小比較を演算する。
【0041】
ステップ(S105)で、ドレン油温度差Dが0より大きい場合、YESと判断されステップ(S107)に進み、0と等しいか小さい場合、NOと判断されてステップ(S106)へ進む。
【0042】
ステップ(S106)は、ドレン油温度差Dが0と等しいか小さい場合である。この場合、信号処理装置24は、第2油圧ポンプ1bに異常摩耗が発生していると判断し、報知装置40へ第2油圧ポンプ1bの摩耗状態異常を出力する。報知装置40は第2油圧ポンプ1bに異常摩耗が発生していることを報知する。
【0043】
ステップ(S107)は、ドレン油温度差Dが0より大きい場合である。この場合、信号処理装置24は、第1油圧ポンプ1aに異常摩耗が発生していると判断し、報知装置40へ第1油圧ポンプ1aの摩耗状態異常を出力する。報知装置40は第1油圧ポンプ1aに異常摩耗が発生していることを報知する。
【0044】
上述した本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態によれば、建設機械に備えた少なくとも2つ以上の液圧回転機である第1及び第2油圧ポンプ油圧ポンプ1a,1bのいずれか一方の油圧ポンプ1a,1bの故障あるいは摩耗を少ない部品点数で確実に検出することができる。このことにより、部品の修理交換等の対策を事前に実行できるので、修理等に伴うダウンタイムを短縮することができる。この結果、建設機械の生産効率が向上する。
【0045】
また、上述した本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態によれば、液圧回転機である第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの使用環境および使用条件の影響を受けることなく、確実に油圧ポンプ1a,1bの摩耗を検出することができる。このことにより、建設機械の生産効率が向上する。
【0046】
さらに、上述した本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第1の実施の形態によれば、液圧回転機である第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのそれぞれ1台に対して温度センサ1台で油圧ポンプ1a,1bの摩耗を検出することができる。このことにより、少ない部品点数でしかも確実な検出が可能な信頼性の高い摩耗検出装置を提供することができる。
【0047】
なお、本実施の形態においては、複数の液圧回転機の圧力条件を合わせるために、複数の液圧回転機の流出側ポートからの昇圧された作動油を合流回路で合流させ、また、複数の液圧回転機の温度条件を合わせるために、タンク20からの作動油を流入配管16aを経て第1流入配管16bと第2流入分岐配管16cとで分岐して分流させたが、同一のタンクの作動油を用いる場合には、作動油の温度は同一であるので、例えば、同一のタンクから複数の別管路を複数の液圧回転機の流入ポートにそれぞれ接続してもよい。
【実施例2】
【0048】
以下、本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図5は本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第2の実施の形態の油圧回路を示す油圧回路図である。図5において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、少なくとも2つ以上の液圧回転機として、昇圧された作動油によって駆動される第1油圧モータ25aと第2油圧モータ25bを用いて構成した点が、上述した第1の実施の形態と異なる。
【0049】
図5において、2方向回転形の第1及び第2油圧モータ25a,25bは、一方の流出入ポート33a,33bと他方の流出入ポート32a,32bを切り替えることで、回転方向を変えることができる。第1及び第2油圧モータ25a,25bの一方の流出入ポート33a,33bは、一方の流出入配管26a,26bのそれぞれ一端側に接続されている。一方の流出入配管26a,26bのそれぞれ他端側は、一方の給排配管28の一端側に接続されている。第1及び第2油圧モータ25a,25bの他方の流出入ポート32a,32bは、他方の流出入配管27a,27bのそれぞれ一端側に接続されている。他方の流出入配管27a,27bのそれぞれ他端側は、他方の給排配管29の一端側に接続されている。一方及び他方の給排配管28,29の他端側は、制御弁21を介して作動油の供給源となる油圧ポンプ1又はタンク20に接続されている。
【0050】
第1及び第2油圧モータ25a,25bのドレンポート35a,35bは、それぞれ第1及び第2ドレン配管37a,37bとを介してタンク20に接続されている。
【0051】
油圧モータとして用いられた液圧回転機の摩耗を検出するためには、複数の液圧回転機の温度条件と複数の液圧回転機の負荷条件を合わせる必要がある。具体的には、作動油の温度と圧力の条件を設定しておく必要があり、温度条件としては、各液圧回転機の流入側で作動油の温度を同一にすること、圧力条件としては、各液圧回転機の供給側(流入側)を同圧とすることが必要である。より厳密に言えば、流出側と流入側との差圧を合わせる必要がある。
【0052】
温度条件のための構成として、本実施の形態においては、油圧ポンプ1から制御弁21を介して供給される昇圧された作動油が、一方又は他方の給排配管28,29から一方又は他方の流出入配管26a,26b,27a,27bで分岐して分流されている。また、圧力条件のための構成として、一方又は他方の給排配管28,29と、一方又は他方の流出入配管26a,26b,27a,27bとから構成される流入側と流出側において、流出側を合流させ、流入側を分流させている。
【0053】
第1ドレン配管37aには、第1油圧モータ25aのドレンポート35aから流出した作動油の温度を計測するための温度センサ30aが設けられていて、第1温度計測手段を構成している。第2ドレン配管37bには、第2油圧モータ25bのドレンポート35bから流出した作動油の温度を計測するための温度センサ30bが設けられていて、第2温度計測手段を構成している。さらに温度センサ30a,30bの出力信号は信号処理装置24に入力されている。信号処理装置24は、これらの入力信号を基に、後述する演算処理を実行して、摩耗状態を判定する。また、信号処理装置24からは、運転室のモニタ等の報知装置40へ診断内容を表す信号が出力されている。
【0054】
なお、ここで第1及び第2油圧モータ25a,25bは、大略等しい押しのけ容積を備え、例えば駆動軸を機械的に接続することで略等しい回転数で駆動されることが望ましい。また、温度センサ30a,30bのそれぞれのドレン配管37a,37bへの取付位置は、例えば、第1及び第2油圧モータ25a,25bのドレンポート35a,35bから略等しい距離とする等、大略等しい同等箇所とすることが望ましい。
【0055】
次に、本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第2の実施の形態の動作を図5を用いて説明する。
図5において、作動油供給源となる油圧ポンプ1から供給される作動油(昇圧された作動油)は、制御弁21によって一方の給排配管28に分配される。一方の給排配管28に供給された昇圧された作動油は、一方の流出入配管26a,26bにそれぞれ分岐され、第1及び第2油圧モータ25a,25bの一方の流出入ポート32a,32bに導かれる。
【0056】
ここで、第1及び第2油圧モータ25a,25bの一方の流出入ポート33a,33bに導かれた昇圧された作動油は、一方の給排配管28からそれぞれ分岐されるため、第1及び第2油圧モータ25a,25bの一方の流出入ポート33a,33bにおける圧力は略等しい値となる。また、第1及び第2油圧モータ25a,25bの使用圧力条件が略等しくなるため、これらの油圧モータ25a,25bが正常な状態であれば、作動油による発熱量も略等しくなる。
【0057】
第1油圧モータ25aにおいて、内部構成部材の異常摩耗が発生したとすると、摩擦により摺動部材の温度が上昇する。このことにより、第1油圧モータ25aのケース2内の作動油の温度も上昇する。このため、正常な第2油圧モータ25bの第2ドレン配管37bに設けた温度センサ30bで検出した作動油の温度より、異常摩耗が発生した第1油圧モータ25aの第1ドレン配管37aに設けた温度センサ30aにて検出した作動油の温度の方が高くなる。このことを利用して異常摩耗を検出できる。
【0058】
本実施の形態において、液圧回転機の摩耗検出装置は、温度センサ30a及び30bによって計測した第1及び第2油圧モータ25a,25bのドレンポート35a,35bから流出した作動油の温度に基づき、信号処理装置24で演算処理を行うことで、第1及び第2油圧モータ25a,25bの異常摩耗を検出する。
【0059】
上述した本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第2の実施の形態によれば、建設機械に備えた少なくとも2つ以上の液圧回転機である第1及び第2油圧モータ25a,25bのいずれか一方の油圧モータ25a,25bの故障あるいは摩耗を少ない部品点数で確実に検出することができる。
【0060】
また、上述した本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第2の実施の形態によれば、液圧回転機である流入ポートと流出ポートが切り替わる2方向回転形の油圧モータ25a,25bにおいて、油圧モータ25a,25bの1台に対して温度センサ1台で油圧モータ25a,25bの摩耗を検出することができる。このことにより、少ない部品点数でしかも確実な検出が可能な信頼性の高い摩耗検出装置を提供することができる。
【0061】
なお、本実施の形態においては、複数の液圧回転機の圧力条件を合わせるために、一方又は他方の給排配管28,29と、一方又は他方の流出入配管26a,26b,27a,27bとから構成される流入側と流出側において、流出側を合流させ、流入側を分流させているが、これに限らない。例えば、流出側が共通のタンク圧である場合には、複数の液圧回転機の各流出ポート側を合流させることなく、複数の液圧回転機の各流出ポートにそれぞれ接続した複数の別管路を直接タンクに接続してもよい。
【実施例3】
【0062】
以下、本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。図6は本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第3の実施の形態が適用される油圧ポンプの側部断面図である。図6において、図1乃至図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、温度センサ22a,22bを液圧回転機である第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの外表面に取り付けて構成した点が、上述した第1の実施の形態と異なる。
【0063】
図5において、温度センサ22は、油圧ポンプ1のケース2において弁部材11が取り付けられている側の外表面に設けている。第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの使用条件および使用環境が略等しくなるため、正常な場合であれば、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのケース2a,2bの外表面の温度も略等しい値となる。
【0064】
第1油圧ポンプ1aにおいて、シリンダブロック6と弁部材11との摺動部において異常摩耗が発生すると、摩擦によりシリンダブロック6および弁部材11が発熱する。弁部材11の熱はケース2aを経由してケース2aの外表面へと伝わり、ケース2aの外表面の温度を上昇させる。このため、正常な第2油圧ポンプ1bのケース2bの外表面に設けた温度センサ22bで検出した温度より、異常摩耗が発生した第1油圧ポンプ1aのケース2aの外表面に設けた温度センサ22aにて検出した温度の方が高くなる。このことを利用して異常摩耗を検出できる。
【0065】
本実施の形態において、液圧回転機の摩耗検出装置は、温度センサ22a及び22bによって計測した第1及び第2油圧ポンプ1a,1bのケース2a,2bの外表面の温度に基づき、信号処理装置24で演算処理を行うことで、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの異常摩耗を検出する。
【0066】
上述した本発明の液圧回転機の摩耗検出装置の第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、液圧回転機である油圧ポンプ1a,1bの異常摩耗による発熱を金属間での熱伝導で直接的に検出するため、異常摩耗を確実に検出することができる。この結果、少ない部品点数でしかも確実な検出が可能な信頼性の高い摩耗検出装置を提供することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態によれば、温度センサ22a,22bを油圧配管中に設けず、各油圧ポンプ1a,1bのケース2a,1bの外表面に配設するので、施工が容易である。この結果、生産性が向上すると共に信頼性の高い摩耗検出装置を提供することができる。
【0068】
なお、本発明の実施の形態において、複数の液圧回転機のいずれかの摩耗を複数の温度センサ信号を基に検出することについて説明したが、例えば、複数の液圧回転機の全てが摩耗した場合は、例えばドレン油温度の上限設定値との比較から故障を報知する等の従来技術と併用することで解決することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 油圧ポンプ
1a 第1油圧ポンプ
1b 第2油圧ポンプ
2 ケース
3 カバー
4 軸受
5 回転軸
6 シリンダブロック
8 ピストン
9 シュー
10 斜板
11 弁部材
12 流入ポート
13 流出ポート
15 ドレンポート
16a 流入配管
16b 第1流入配管
16c 第2流入分岐配管
17a 第1ドレン配管
17b 第2ドレン配管
18a 第1流出配管
18b 第2流出配管
19 合流配管
20 タンク
21 制御弁
22a 温度センサ
22b 温度センサ
24 信号処理装置
25a 第1油圧モータ
25b 第2油圧モータ
30a 温度センサ
30b 温度センサ
40 報知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を昇圧させる少なくとも2つ以上の液圧回転機を有する液圧回転機の摩耗検出装置であって、
前記複数の液圧回転機の各流出ポートからの昇圧された作動油を合流する合流回路と、
前記複数の液圧回転機の各流入ポートに前記作動油をそれぞれ分流供給する分流回路と、
前記複数の液圧回転機の同等箇所に設けたそれぞれの温度検出部と、
前記各温度検出部の温度をそれぞれ測定する温度計測手段と、
前記各温度計測手段が測定した前記各温度検出部からの温度信号を取込み、比較演算して、前記複数の液圧回転機の摩耗を検出する演算手段とを備えた
ことを特徴とする液圧回転機の摩耗検出装置。
【請求項2】
昇圧された作動油により駆動される少なくとも2つ以上の液圧回転機を有する液圧回転機の摩耗検出装置であって、
前記複数の液圧回転機の各流出ポートからの作動油を合流する合流回路と、
前記複数の液圧回転機の各流入ポートに前記昇圧された作動油をそれぞれ分流供給する分流回路と、
前記複数の液圧回転機の同等箇所に設けたそれぞれの温度検出部と、
前記各温度検出部の温度をそれぞれ測定する温度計測手段と、
前記各温度計測手段が測定した前記各温度検出部からの温度信号を取込み、比較演算して、前記複数の液圧回転機の摩耗を検出する演算手段とを備えた
ことを特徴とする液圧回転機の摩耗検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液圧回転機の摩耗検出装置において、
前記複数の液圧回転機はドレンポートからの作動油を排出するドレン回路を有し、
前記温度検出部を前記ドレン回路に設けた
ことを特徴とする液圧回転機の摩耗検出装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の液圧回転機の摩耗検出装置において、
前記複数の液圧回転機は内部構成部品を収容するケースを有し、
前記温度検出部を前記ケース外表面に設けた
ことを特徴とする液圧回転機の摩耗検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液圧回転機の摩耗検出装置において、
前記複数の液圧回転機は油圧ポンプである
ことを特徴とする液圧回転機の摩耗検出装置。
【請求項6】
請求項2に記載の液圧回転機の摩耗検出装置において、
前記複数の液圧回転機は油圧モータである
ことを特徴とする液圧回転機の摩耗検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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