説明

液圧式又は空気圧式のアクチュエータを有する操向可能なカテーテル

ハンドル(例えば6)内の液圧補助式アクチュエータは、偏向可能な先端アブレーションチップ(例えば64)を有するカテーテルに連結される。液圧アクチュエータは、臨床医が加えた小さな機械的移動を、連結された操向ケーブル(例えば38、40)の大きな移動に変換し、大きな張力をアブレーションチップに加え、大きく向きを変える。液圧システムは、更に、偏向位置から均衡位置へのアブレーションチップの戻りを減衰させる。更に、液圧作動システムが一組の足ペダル(例えば106、108)に組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年7月20日に出願された米国非仮特許出願第10/895,510号の利益を主張するものである。同特許出願に触れたことにより、この特許出願に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【0002】
本発明は、カテーテルの先端を操向する(steering)ためのアクチュエータに関する。具体的には、アクチュエータは、操向ケーブルの移動範囲を大きくし、カテーテルの先端を精密に制御するため、液圧式制御システムを備えている。
【背景技術】
【0003】
多年に亘り、カテーテルが医療手順で使用されてきた。カテーテルは、他の方法ではより侵襲的手順を使用しないと近づくことができない体内の特定の位置に位置決めした状態で、検査、診断、及び治療を行うため、医療手順で使用できる。これらの手順中、身体の表面近くの血管にカテーテルは挿入され、検査、診断、及び治療を行うため、体内の特定の位置まで案内される。例えば、1つの手順では、人間の身体内の選択された位置に電気刺激を送るため、カテーテルが使用される。別の手順では、人間の身体内の電気的活性の様々な形態を監視するため、感知電極を備えたカテーテルを使用する。
【0004】
更に、カテーテルは、人間の心臓と関連した医療手順で益々使用されている。代表的には、患者の脚部、頸部、又は腕部の動脈又は静脈にカテーテルは挿入され、心臓で医療手順を行うための所望の位置にカテーテルの先端が達するまで、ガイドワイヤや導入器を補助として用いて血管内に通す。
【0005】
人間の心臓は、代表的には、右心室、右心房、左心室、及び左心房を備えている。右心房は、上大静脈及び下大静脈と流体連通している。房室中隔が右心房を右心室から分離する。房室中隔に含まれる三尖弁が、右心房と右心室との間を連通させる。
【0006】
通常の心臓では、電気化学的信号が、右心房の壁に配置された独特の細胞束を含む洞房(SA)結節から、房室(AV)結節まで、次いでヒス−プルキンエ系を含む良好に画成された経路に沿って左右の心室内に心筋を順次通過するとき、心筋(myocardium)の収縮及び弛緩が組織化された態様で生じる。房室結節は、右心房の心房中隔の冠状静脈洞の口の近くにある。洞房結節の各細胞膜は、細胞膜が周期的に休息して、ナトリウムイオンを流入させ、これによって洞房結節の細胞を脱分極するようにナトリウムイオンを経時的に徐々に放出する傾向がある。洞房結節の細胞は、周囲の心房筋肉細胞と関連しており、洞房結節の細胞の脱分極により、隣接した心房筋肉細胞を脱分極させる。その結果、心房収縮が生じ、心房の収縮により血液を心室に送出する。洞房結節からの心房脱分極は、房室結節によって検出され、これにより、僅かな伝達遅延の後、脱分極インパルスをヒス−プルキンエ線維の束を介して心室に伝達する。ヒス−プルキンエ系は、房室結節のところで開始し、膜状心房中隔に沿って三尖弁に向かい、房室中隔を通って膜状心室中隔に入る。ヒス−プルキンエ系は、心室中隔のほぼ中央部のところで、左右の枝部に分かれる。これらの枝部は、心室中隔の筋肉部分の尖部を跨いでいる。
【0007】
心臓の律動が異常になる場合がある。これは、一般的には、不整脈と呼ばれる。例えば、一般的な不整脈は、ウォルフ−パーキンソン−ホワイト症候群(W−P−W)である。W−P−Wの原因は、一般的には、異常伝導経路、又は心房筋肉組織を心室筋肉組織に直接連結させ、かくして通常のヒス−プルキンエ系を迂回する経路が存在することであると考えられている。これらの経路は、通常は、心房と心室とを連結する線維組織に位置する。
【0008】
他の異常な不整脈は、しばしば、心房で生じ、これらの不整脈は心房不整脈と呼ばれる。最も一般的な心房不整脈のうちの3つは、異所性心房頻拍、心房細動、及び心房粗動である。心房細動は、患者に顕著な不快感をもたらし、患者に不快感と不安をもたらす不規則心拍数、心臓の血行動態を損なうことにより様々なレベルの鬱血性心不全を生じる、同調的房室収縮の欠如、及び血栓塞栓症の発症率を高める血流静止といった多くの関連した問題点により、患者を死に至らしめる場合がある。
【0009】
従来、これらの問題点を緩和するための努力には、薬理学的治療を使用することが含まれていた。薬理学的治療は、場合によっては有効であるけれども、場合によっては、薬剤治療が限られた効果しかもたらさず、眩暈感、吐き気、視野についての問題点、及び他の障害等の副作用で苦しめられる。
【0010】
特定の種類の心不整脈を治療するための益々一般的になってきている医療手順は、カテーテルアブレーション(catheter ablation;カテーテル電気的焼灼術)である。従来のカテーテルアブレーション手順中、エネルギ源を心臓組織と接触して配置し、この組織を加熱し、電気的に不活性の即ち非収縮性の永久的な瘢痕又は損傷部位を形成する。一つの手順中、損傷部位は、一般的に不整脈と関連している、心臓内の既存の導電性経路を遮断するように設計される。アブレーションを行うための特定の領域は、潜在する不整脈の種類で決まる。一つの一般的なアブレーション手順は、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)を治療する。高速又は低速の房室結節経路のアブレーションが、電気生理学臨床マニュアル(1993年)の第421頁乃至第431頁に記載された、シンガー、I.等の「不整脈に対するカテーテルアブレーション」に開示されている。
【0011】
経中隔(transseptal)アプローチ及び逆行(retrograde)アプローチの両方を使用する、W−P−Wと関連した補助的経路にアブレーションを施すためのシースを備えたアブレーションカテーテルを使用する別の医療手順が、米国心臓学大学誌第21巻第3号の第571頁乃至第583頁(1993年3月1日)のサウル、J.P.等の「若年患者における補助的房室経路のカテーテルアブレーション(長い心室シース、経中隔アプローチ、及び逆行左後方平行アプローチの使用)」に開示されている。他のカテーテルアブレーション手順は、「循環」第87巻第2号の第487頁乃至第499頁(1993年2月)の、スワーツ、J.F.の「補助的房室経路心房挿入場所の心臓内高周波カテーテルアブレーション」に開示されている。
【0012】
心臓内又は心臓近くの特定の位置にアブレーションを行うには、アブレーションカテーテルを正確に配置することを必要とする。アブレーションカテーテルを正確に配置することは、心臓の生理学のため、特に心臓がアブレーション手順に亘って拍動し続けているため、特に困難である。一般的には、カテーテルの位置の選択は、電気生理学的な案内及びX線透視検査の組み合わせによって決定される(冠状静脈洞、上右心房、及び右心室等の周知の解剖学的構造内に又はこの構造のところに配置した放射線不透過性診断カテーテルによって印を付けた心臓の周知の特徴に関するカテーテルの配置)。
【0013】
代表的には、アブレーションカテーテルの本体は、ポリウレタン、ナイロン、又はこの他の非導電性可撓性材料から形成された可撓性チューブであり、編組(braided)鋼線又は他の非金属ファイバがチューブの壁に補強エレメントとして設けられている。アブレーション手順を行うためにカテーテルの先端チップを正確に配置するため、カテーテルは、偏向可能な(deflectable)先端チップ(tip)を備えていてもよい。偏向可能なチップを備えたカテーテルの先端部分は、代表的には、編組されていない可撓性チューブから形成される。この部分は、カテーテルのハンドルに設けられた手動アクチュエータに使用者が入力することによって、曲率半径が異なる様々な湾曲形態に変形できる。アクチュエータは、一般的には、少なくとも一つの張力ケーブル又は引っ張りケーブルによって、先端チップに内部で連結されている。
【0014】
張力ケーブル又は引っ張りケーブルの基端は、一般的には、ハンドルの張力機構又は引っ張り機構に連結されている。張力ケーブル即ち引っ張りケーブルの先端は、先端チップの先に固定されている。張力機構は、一般的には手動アクチュエータを備えており、このアクチュエータにより先端チップの向きを変えることができる。偏向可能な先端チップを有するカテーテルの設計の間での主な相違点は、カテーテルのハンドルの張力機構又は引っ張り機構にある。この機構は、カテーテルの先端チップに所望の曲率半径を形成するため、ハンドルに設けられたアクチュエータに手で加えた力を先端チップにケーブルを介して伝達する。
【0015】
残念なことに、多くの手動アクチュエータ設計は、先端チップを曲げるために必要な張力をケーブルに加えるのにかなりの手の力を必要とする。更に、現在入手可能なアクチュエータは、ケーブルを引っ張って先端チップの向きを所望量だけ変える場合に十分な移動距離を提供できない。更に、現在の手動アクチュエータは、先端チップを偏向位置に保持する性能又は偏向位置から「真っ直ぐな」位置までの先端チップの戻りを減衰させる(dampen)性能を提供しない。
【0016】
引用文献又はその議論を含む、本明細書中のこの背景技術に含まれる情報は、単に技術的に参照する目的で記載したものに過ぎず、本発明の範囲を定める要旨であると考えられるべきではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、偏向可能な先端アブレーションチップを有するカテーテルを操作するためのハンドルの液圧補助アクチュエータに関する。この液圧アクチュエータは、臨床医の小さな機械的な動きを操向ケーブルの大きな移動に変換し、向きを大きく変えるためにカテーテルのアブレーションチップの張力を増大させる。液圧システムは、更に、偏向位置から均衡位置へのアブレーションチップの戻りを減衰させる。変形例では、液圧アクチュエータシステムは一組の足ペダルに組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態では、操向可能なカテーテル用のアクチュエータアッセンブリは、液圧システム及び機械式アクチュエータを含む。液圧システムは、マスターシリンダと、このマスターシリンダに流体的に連結された少なくとも一つの従動シリンダと、第1端が少なくとも一つの従動シリンダに作動的に連結されており且つ第2端がカテーテルの先端チップに作動的に連結された少なくとも一つの操向ケーブルとを含む。機械式アクチュエータはマスターシリンダに作動的に連結されており、マスターシリンダに機械的な力を加える。アクチュエータの機械的な力はマスターシリンダ内で流体力に変換され、少なくとも一つの従動シリンダとの連結によって、該少なくとも一つの従動シリンダ内の流体力に変換される。少なくとも一つの従動シリンダ内の流体力は、次いで、少なくとも一つの操向ケーブルに作用する張力に変換される。
【0019】
特定の実施形態では、少なくとも一つの従動シリンダは、第1従動シリンダ及び第2従動シリンダを含む。少なくとも一つの操向ケーブルもまた、第1操向ケーブル及び第2操向ケーブルを含む。第1操向ケーブルは、基端が第1従動シリンダに作動的に連結されており、先端がカテーテルの先端チップに作動的に連結されている。第2操向ケーブルは、基端が第2従動シリンダに作動的に連結されており、先端がカテーテルの先端チップに作動的に連結されている。
【0020】
本発明の別の特徴は、カテーテルの先端チップを曲げるための方法である。マスターシリンダに連結された機械式アクチュエータが作動される。マスターシリンダ内の流体を加圧し、マスターピストンをマスターシリンダ内で第1方向に押す。マスターシリンダ内の流体の第1部分が第1従動シリンダに侵入させられる。第1従動シリンダ内の第1従動ピストンが第2方向に押される。第1操向ケーブルは、基端が第1従動ピストンに連結されており、先端がカテーテルの先端チップに連結されている。かくして、第1操向ケーブルに作用する張力が増大する。第1操向ケーブルに作用する張力を増大する工程により、カテーテルの先端チップが第1方向に曲げられる。別の態様では、マスターシリンダ内の流体が加圧され、マスターピストンをマスターシリンダ内で第2方向に押す。マスターシリンダ内の流体の第2部分が第2従動シリンダに侵入させられる。第2従動シリンダ内の第2従動ピストンが第2方向に押される。第2操向ケーブルは、基端が第2従動ピストンに連結されており、先端がカテーテルの先端チップに連結されている。これによって、第2操向ケーブルに作用する張力を増大する。第2操向ケーブルに作用する張力を増大する工程により、カテーテルの先端チップが第2方向に曲げられる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、操向可能なカテーテル用のアクチュエータアッセンブリは、空気圧式システム及び機械式アクチュエータを含む。空気圧式システムは、マスターシリンダと、このマスターシリンダ及びカテーテルの先端チップの両方に流体的に連結された少なくとも一つの従動シリンダとを含む。機械式アクチュエータはマスターシリンダに作動的に連結されており、マスターシリンダに機械的な力を加え、これにより少なくとも一つの従動シリンダ内の流体圧力を増大し、カテーテルの先端チップを偏向させる。
【0022】
本発明の様々な実施形態のこの他の特徴、使用、及び利点は、添付図面に示し且つ特許請求の範囲に定義した本発明の実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、偏向可能な先端チップを有するカテーテルを操作するための液圧補助機械式アクチュエータである。ハンドル内の液圧システムが、臨床医による機械式アクチュエータの小さな機械的な動きを、カテーテルの先端チップに連結された操向ケーブルの大きな移動に変換する。操向ケーブルのより大きな移動が、カテーテルの先端チップに操向ケーブルによって加えられる張力を、純粋に機械式のアクチュエータによって得られる張力以上に増大させ、その結果、先端チップが大きく偏向することとなる。液圧システムによって得られる、より大きな移動距離は、また、カテーテルの先端チップの偏向を微細に制御する。液圧システムは、更に、偏向位置から均衡位置への先端チップの戻りを減衰させる(dampen)。
【0024】
図1乃至図5は、本発明による液圧アクチュエータを備えた操向可能なカテーテルの第1実施形態を示す。図1には、アクチュエータアッセンブリ2が詳細に示してある。このアクチュエータアッセンブリは、主に、ハンドルキャップ8及びハンドル基部10を含むアクチュエータハンドル6に収容されている。ハンドル基部10及びハンドルキャップ8は、共通の接触面(interface)によって互いに接合され、その間にハンドルベイ(bay)12を形成する。ハンドルベイには枢動アクチュエータ18が収容される。ハンドルキャップ8及びハンドル基部10は、成形プラスチック材料製であってよく、内部構成要素を設置した後、例えば超音波溶接によって互いに接合されてもよい。
【0025】
本発明によるアクチュエータアッセンブリ2を図2に良好に示す。図2では、アクチュエータアッセンブリ2の内部構成要素を明瞭に示すため、アクチュエータハンドル6のハンドルキャップ8が仮想線で示してある。図1、図3、及び図4に良好に示すように、枢動アクチュエータ18は、様々な追加の構成要素を内部に収容するチャンバ19を形成する涙滴形状の壁として形成されている。枢動アクチュエータ18は、下側が下アクチュエータパネル56によって閉じられ、上側が上アクチュエータパネル58(図1参照)によって閉じられていてもよい。下アクチュエータパネル56及び上アクチュエータパネル58は、アクチュエータアッセンブリ2の作動を妨げる例えば塵埃や流体等の環境条件から枢動アクチュエータ18内の構成要素を保護するために設けられている。枢動アクチュエータ18、下アクチュエータパネル56、及び上アクチュエータパネル58は、全て、成形プラスチック材料で形成されていてもよい。枢動アクチュエータ18及び下アクチュエータパネル56は、一体の成形構造であってもよいし、例えば超音波溶接によって互いに接合された別体の構成要素であってもよい。枢動アクチュエータ18及び下アクチュエータパネル56によって形成されたチャンバ19内に構成要素を設置し、枢動アクチュエータ18をハンドルベイ12内に設置した後、上アクチュエータパネル58を、枢動アクチュエータ18に超音波溶接してもよい。
【0026】
図2乃至図4Cに示すように、枢動アクチュエータ18によって形成されたチャンバ19内に液圧システムが設置される。マスターシャフト30が涙滴形状の枢動アクチュエータ18の膨出領域の最も広幅の部分間を延びている。マスターシャフト30の各端部は、枢動アクチュエータ18の内方に面した向き合った表面に取り付けられている。マスターシャフト30は、液圧流体で充填された比較的大径の液圧シリンダであるマスターシリンダ22を通って移動する。マスターシャフト30は、マスターシリンダ22の横端の穴を通って横方向に延びている。流体がマスターシャフト30と穴との間の界面を通ってマスターシリンダ22から漏出しないようにマスターシャフト30に対して密封するため、シール部材、例えばO−リングが、マスターシリンダ22の横端の穴に設けられていてもよい。マスターピストン32が、マスターシリンダ22内でマスターシャフト30に、このマスターシャフト30の各端部から等距離のところに取り付けられている。マスターピストン32は、マスターシリンダ22の内壁と係合し、これと流体密シールを形成し、枢動アクチュエータ18及びマスターシャフト30によって作動されたとき、マスターシリンダ22内で軸線方向に移動するようになっている。
【0027】
第1従動シリンダ24及び第2従動シリンダ26が、マスターシリンダ22の横端の夫々と隣接して、マスターシリンダ22の円筒形の側壁と直交するように機械的に取り付けられている。第1従動シリンダ24及び第2従動シリンダ26は、更に、液圧流体を収容しており、マスターシリンダ22との間で液圧流体を交換できるようにマスターシリンダ22に流体的に連結されている。第1従動シリンダ24及び第2従動シリンダ26の各々は、マスターシリンダ22の側壁から先端方向に延びている。第1従動シリンダ24及び第2従動シリンダ26の各々は、又、マスターシリンダ22よりも小径であり、軸線方向長さはマスターシリンダ22の軸線方向長さよりも長くてもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。流体伝達シリンダ28が、マスターシリンダ22と平行に、及び第1従動シリンダ24及び第2従動シリンダ26の各々に対して直交するように延びている。流体伝達シリンダ28は、第1従動シリンダ24及び第2従動シリンダ26の各々に、これらの従動シリンダの先端と隣接して、機械的に連結されているとともに流体的に連結されている。
【0028】
第1従動ピストン34が第1従動シリンダ24内に配置されている。第1従動ピストン34は、第1従動シリンダ24の円筒形の内壁と係合し、この内壁と流体密シールを形成し、第1従動シリンダ24内で軸線方向に移動するようになっている。同様に、第2従動ピストン36が第2従動シリンダ26内に配置されている。第2従動ピストン36は、第2従動シリンダ26の円筒形の内壁と係合し、この内壁に関して液密シールを形成する。第2従動ピストン36は、第2従動シリンダ26内でその軸線方向長さに沿って移動するようになっている。第1操向ケーブル38が第1従動ピストン34の先端側に連結されている。第1操向ケーブル38は、第1従動ピストン34から先端方向に延びており、第1従動シリンダ24の先端から、この第1従動シリンダ24の先端内の穴を通って延出する。同様に、第2操向ケーブル40が第2従動ピストン36の先端側に連結されている。第2操向ケーブル40は、第2従動ピストン36から先端方向に延びており、第2従動シリンダ26から、この第2従動シリンダ26の先端内の穴を通って延出する。第1及び第2の従動シリンダ24、26の各々の先端の穴の各々には、シール部材、例えばO−リングが設けられている。シール部材は、第1操向ケーブル38及び第2操向ケーブル40の各々の周囲を夫々密封し、第1及び第2の従動シリンダ24、26内の流体が穴を通って漏出しないようにする。
【0029】
アクチュエータ溝(channel)20が枢動アクチュエータ18の壁の涙滴形状の尖端のところに形成されている。第1操向ケーブル38と第2操向ケーブル40が、夫々、第1従動シリンダ24と第2従動シリンダ26から、先端方向に延びており、枢動アクチュエータ18によって形成されたチャンバ19から、アクチュエータ溝20を通って延出する。第1操向ケーブル38及び第2操向ケーブル40は、これらの第1操向ケーブル38及び第2操向ケーブル40が絡まらないようにするため、及びこれらのケーブル間に適当な離間距離を維持するため、枢動アクチュエータ18のチャンバ19内で、基端横ガイドピン46、中央ガイドピン48、及び先端横ガイドピン50の周囲を案内される。枢動アクチュエータ18は、枢動ピン44を介してハンドル基部10に枢着されている。枢動ピン44は、第1端部が下アクチュエータパネル56に連結されており、反対側の端部がハンドル基部10にハンドルベイ領域12で連結されている。枢動ピン44は、枢動アクチュエータ18の涙滴形状の尖端の先端側で下アクチュエータパネル56に位置決めされている。
【0030】
マスターシリンダ22は、更に、ハンドル基部10にシリンダ留め具(fastener)42を介して枢動可能に取り付けられている。シリンダ留め具42は、マスターシリンダ22の周囲に、このマスターシリンダ22の横端から等距離のところに取り付けられている。シリンダ留め具42の先端側に設けられたタブは、下アクチュエータパネル56に設けられた円弧状のスロット60を通って延びる留め具(fastener)ピン65を有する。留め具ピンは、ハンドルベイ12の領域内でハンドル基部10に枢動可能に取り付けられる。かくして、シリンダ留め具42は、下アクチュエータパネル56の基端領域を、ハンドル基部10に、シリンダ留め具42と下アクチュエータパネル56の上側との間の接触面を介して連結する。下アクチュエータパネル56、ひいては枢動アクチュエータ18は、枢動ピン44を中心として枢動アクチュエータ18が枢動させられる(以下に更に詳細に説明するように)とき、横方向に往復移動できる。これは、下アクチュエータパネル56に設けられたアクチュエータパネルスロット60により、下アクチュエータパネル56がシリンダ留め具42の留め具ピン43を通り過ぎて摺動できるためである。
【0031】
図1及び図2は、更に、ハンドル基部10内の基端ハンドル溝14内に配置されたワイヤシース62に入る複数のリード線52を示す。心臓カテーテル治療で使用される様々なシステム内にリード線52を接続するため、複数のリード線52の基端にはコネクタプラグ54が設けられている。このようなシステムには、例えば、アブレーション(ablation)を行うための高周波エネルギ発生器、心臓検出−マッピングシステム、又はこれらの両方が含まれる。複数のリード線52は、ワイヤシース62を通ってハンドル基部10内の通路(図示せず)内に差し向けられ、これによって、リード線52は、ハンドル基部10内で、ハンドルベイ12及び枢動アクチュエータ18及び収容された関連した構成要素の下を通ることができる。リード線52は、アクチュエータハンドル6内の、ハンドルベイ12の先端を越えたところで現れる。リード線52は、アクチュエータハンドル6を先端方向に出る前に、基端ハンドル溝14内に配置されたカテーテルシャフト4を通して整列される。第1操向ケーブル38及び第2操向ケーブル40は、アクチュエータ溝20を通ってチャンバ19を出た後、同様に、ハンドル基部10の先端ハンドル溝16内でカテーテルシャフト4を通して整列される。その後、複数のリード線52、及び第1操向ケーブル38及び第2操向ケーブル40は、カテーテルシャフト4の先端に設けられたアブレーションチップ(tip)64内で終端するまで、カテーテルシャフト4内を延びる(図5参照)。
【0032】
図4A、図4B、図4C、及び図5は、枢動アクチュエータ18の変位位置、及びそれによりカテーテルシャフト4のアブレーションチップ64に及ぼされる効果を示す。図4Aは、枢動アクチュエータ18を均衡位置で示す。この位置では、マスターピストン32は、マスターシリンダ22の中央内に、マスターシリンダ22の各横端から等距離のところに位置決めされている。同様に、第1従動ピストン34及び第2従動ピストン36は、夫々、第1従動シリンダ24及び第2従動シリンダ26内で、対応する軸線方向位置に位置決めされる。第1操向ケーブル38は、第2操向ケーブル40と同じ長さである。従って、この均衡位置では、アブレーションチップ64内の終端点65において、第1操向ケーブル38及び第2操向ケーブル40の各々がアブレーションチップ64に及ぼす引張力は、互いに等しく、アブレーションチップ64はほぼ直線状の向き又は姿勢(orientation)を維持する。
【0033】
随意であるが、アクチュエータアッセンブリ2を操作する臨床医は、枢動アクチュエータ18を、図4Bに示すように、横方向右方に押してもよい。枢動アクチュエータ18を右方に変位することによって、マスターシャフト30に取り付けられたマスターピストン32はマスターシリンダ22内で軸線方向右方に移動させられる。シリンダ留め具42及び留め具ピン43によってハンドル基部10に枢着されたマスターシリンダ22は、ハンドル基部10に対し、横方向に関して固定された位置にとどまる。従って、枢動アクチュエータ18は、定置のマスターシリンダ22に関して横方向右方に移動する。
【0034】
マスターピストン32がマスターシリンダ22内で移動することにより、マスターシリンダ22の右横半部内の流体に圧力を加え、これにより、流体をマスターシリンダ22から第1従動シリンダ24に押し込む。第1従動シリンダ24に押し込まれた流体により第1従動ピストン34に圧力を加え、これにより、第1従動ピストン34を、ひいては、取り付けられた第1操向ケーブル38を、第1従動シリンダ24の軸線に沿って先端方向に移動させる。第1従動ピストン34よりも先端側にある、第1従動シリンダ24内の流体は、同様に、第1従動シリンダ24から流体伝達シリンダ28に押し込まれる。元々流体伝達シリンダ28内にあった流体は、これによって、第2従動シリンダ26に押し込まれ、これにより第2従動ピストン36を第2従動シリンダ26の軸線に沿って基端方向に移動する。第2操向ケーブル40が第2従動ピストン36の先端に取り付けられているため、第2操向ケーブル40は、第2従動ピストン36の移動によって基端方向に引っ張られる。最後に、第2従動シリンダ26内で第2従動ピストン36よりも基端側にある流体は、マスターシリンダ22のマスターピストン32の左側に流入する。第2従動シリンダ26からの流体の移動によって、マスターピストン32がマスターシリンダ22内で横方向右方に移動したことにより生じる可能性のある、マスターピストン32の左側の流体空所を充填する。
【0035】
図5は、アクチュエータアッセンブリ2から先端方向に延びるカテーテルシャフト4の端部を形成する代表的なアブレーションチップ64を示す。アブレーションチップ64は、カテーテルシャフト4の外面の周囲にバンドを形成する一連のリング電極66によって覆われていてもよい。アブレーションチップ64の先端は、更に、チップ電極68によって覆われていてもよい。リード線52は、リング電極66又はチップ電極68に、又はアブレーションチップ64に配置された任意の他のセンサ又は電極に様々に接続できる。カテーテルシャフト4のアブレーションチップ64は、更に、アブレーションチップ64が様々な方向に向きを変えるとき、アブレーションチップ64に対して構造的一体性を与えるのを補助するため、渦巻きコイルばね70を収容していてもよい。コイル70は、更に、アブレーションチップ64を特定の方向に向けた後、アブレーションチップ64を「真っ直ぐな」姿勢に戻すための均衡力として作用してもよい。
【0036】
第2従動ピストン36に図4Bに示すように及ぼされた流体力によって、第2操向ケーブル40が基端方向に移動されるとき、増大した引張力がアブレーションチップ64の終端点65に第2操向ケーブル40によって加えられる。第2操向ケーブル40によるこの増大した引張力により、アブレーションチップ64は、図5に示すように、基端側に向けて横方向左方に曲げられる。上述のように、枢動アクチュエータ18を右方に変位すると、第1操向ケーブル38が第1従動シリンダ24から先端方向に押し出される。これにより、第1操向ケーブル38に緩みが生じ、従って、第1操向ケーブル38により加えられる、アブレーションチップ64の終端点65に作用する引張力が減少する。このように第1操向ケーブル38に緩みが生じることにより、アブレーションチップ64が所定の方向に曲げられ、第1操向ケーブル38は、図5に示すように、アブレーションチップ64内で、第2操向ケーブル40の曲率半径と比較して大きな外側曲率半径をとることができる。
【0037】
図4Cに示すように、枢動アクチュエータ18をアクチュエータハンドル6のハンドルベイ12内で均衡位置から横方向左方に変位すると、マスターシャフト30の実際の中間点に取り付けられたマスターピストン32がマスターシリンダ22内で横方向左方に移動する。マスターピストン32とマスターシリンダ22との間のこの相対的移動により、マスターシリンダ22の左横区分内の流体が第2従動シリンダ26に流入する。第2従動シリンダ26に流入したこの流体は、第2従動ピストン36を第2従動シリンダ26の軸線に沿って先端方向に強制的に移動する。第2操向ケーブル40が第2従動ピストン36に取り付けられているため、第2操向ケーブル40は、同様に、先端方向に移動する。これにより、第2操向ケーブル40がアブレーションチップ64の終端点65に及ぼす引張力が減少する。第2従動シリンダ26内で第2従動ピストン36の先端側にある流体は、第2従動シリンダ26から流体伝達シリンダ28に押し込まれる。流体伝達シリンダ28内の流体は、第1従動シリンダ24に押し込まれる。第1従動シリンダ24内のこの流体の移動により第1従動ピストン34の先端側で流体圧力が発生し、第1従動ピストン34を第1従動シリンダ24内で基端方向に押す。
【0038】
第1操向ケーブル38が第1従動ピストン34の先端側に取り付けられているため、第1操向ケーブル38は、第1従動シリンダ24の軸線に沿って基端方向に引っ張られる。これにより、第1操向ケーブル38が、アブレーションチップ64内の終端点65に及ぼす引張力が増大する。引張力の増大により、アブレーションチップ64を、図5に仮想線で示すように、基端側に向けて横方向右方に偏向させる。第2操向ケーブル40に作用する引張力が減少し、第2操向ケーブルに緩みが生じるため、第2操向ケーブル40は、アブレーションチップ64が基端側右方に向きを変えるときにアブレーションチップ64内で大きな曲率半径をとり、かくしてアブレーションチップ64の偏向を妨げない。
【0039】
図4Cに示すように、第1従動シリンダ24内の第1従動ピストン34の基端側の流体は、マスターシリンダ22の右横側に押し込まれる。流体が、マスターピストン32がマスターシリンダ22内で横方向左方に移動したときに形成されたマスターシリンダ22内の余分の容積を充填する。シリンダ間で流体を伝達することによって、最終的には、各ピストン32、34、36の各側に作用する等しい流体圧力が、液圧システム内に維持される。これにより液圧が全体として均衡し、これは、枢着アクチュエータ18を、臨床医によって押された特定の変位位置に保持する傾向がある。また、これは、アブレーションチップ64を、ひとたび偏向された後、偏向位置に維持する傾向がある。図5の説明で上文中に述べたように、アブレーションチップ64には、アブレーションチップ64を偏向位置から全体に真っ直ぐな位置に戻す正常化力(normalizing force)をアブレーションチップ64に及ぼそうとする、例えばコイル70等の構造的構成要素が設けられていてもよい。このような正常化力の作用は、本発明の液圧システムによって或る程度減衰される。これは、ピストン32、34、36の各々の各側に等しい液圧が維持されるためである。従って、アブレーションチップ64は、枢動アクチュエータ18に作用していた作動力を臨床医が解放したとき、最終的には、真っ直ぐな位置に戻るけれども、アブレーションチップ64の偏向状態からの戻りは、液圧システムの減衰効果により、徐々に生じる。
【0040】
カテーテルシャフト4のアブレーションチップ64の向きを変えるために枢動アクチュエータ18を横方向に変位したとき、シリンダ留め具42の留め具ピン43は、枢動ピン44によってハンドル基部10に枢着されており、下アクチュエータパネル56のアクチュエータパネルスロット60内で摺動するということに着目されるべきである。この設計はマスターシリンダ22をハンドル基部10に関して固定された横方向位置に維持すると同時に、マスターピストン32がマスターシリンダ22に関して横方向に移動でき、枢動アクチュエータ18が、横方向に円弧状に移動することができるようにしている。マスターシャフト30が枢動アクチュエータ18の壁に固定的に取り付けられているため、マスターシャフト30は、その姿勢の角度を、枢動アクチュエータ18が均衡位置にある場合の相対的に水平な姿勢から実際に変化させる。シリンダ留め具42の設計は、留め具ピン43を中心として追加に枢動することによって、マスターシャフト30の角度変化を可能にする。従って、シリンダ留め具42の留め具ピン43は、枢動アクチュエータ18が横方向に往復移動するとき、マスターシリンダ22がマスターシャフト30に関して同軸の関係を維持することを可能にする。
【0041】
更に、マスターシリンダ22の直径は、第1及び第2の従動シリンダ24、26の各々の直径よりも大きいということに着目されるべきである。このため、枢動アクチュエータ18が方向を僅かに変えると、大きな容積の流体が第1及び第2の従動シリンダ24、26に流入し、流出する。これにより、枢動アクチュエータ18の最小の移動が、第1及び第2の従動ピストン34、36の各々の、第1及び第2の従動シリンダ24、26内での長い移動距離に変換される。マスターシリンダ22の直径が大きく、従って流体容積が大きいため、臨床医は、枢動アクチュエータ18の小さな変位により、アブレーションチップ64の向きを大きく変え、そして制御する。
【0042】
図6は、図1のアクチュエータアッセンブリ用の液圧システムの変形例を示す。図6では、枢動アクチュエータ18によって形成されたチャンバ内にマスターシリンダ22’がシリンダ留め具42によって、上文中に説明したように取り付けられている。しかしながらこの実施形態では、第1従動シリンダ24’及び第2従動シリンダ26’の各々は、マスターシリンダ22’の横端から直交方向に、マスターシリンダ22’から先端方向に延びている。流体伝達シリンダ28’が、第1従動シリンダ24’及び第2従動シリンダ26’の基端間に位置決めされている。この実施形態では、第1操向ケーブル38及び第2操向ケーブル40が、第1従動ピストン34’及び第2従動ピストン36’とこれらのケーブルとの各取り付け点から先端方向に、マスターシリンダ22の各横端と隣接する、マスターシリンダ22の円筒形の側壁内の穴を通って延びている。
【0043】
この変形例の液圧作動は、1つのことを除き、第1実施形態の液圧作動とほぼ同じである。第1実施形態では、アブレーションチップは、枢動アクチュエータの横方向変位方向とは逆方向に向きを変えるが、この実施形態では、枢動アクチュエータ18を横方向に変位したとき、アブレーションチップ64はこれと同じ方向に向きを変えて湾曲する。例えば、図6の実施形態では、枢動アクチュエータ18が横方向左方に押されると、第2従動ピストン36’が第2従動シリンダ26内で基端方向に移動され、これによって、第2操向ケーブル40に作用する引張力が増大し、かくしてアブレーションチップ64の向きを基端側左方に変える。
【0044】
図7乃至図9Cは、足ペダル式アクチュエータ100の形態の本発明の別の実施形態を示す。足ペダル式アクチュエータ100は、施術中に他の機能を行うために臨床医の手を空けた状態で臨床医がアブレーションチップ64の向きを足で制御できるため、臨床医が使用するのに望ましい。図7及び図8に示すように、足ペダル式アクチュエータ100は、図1のアクチュエータアッセンブリと同様の液圧システムを含む。しかしながら、アクチュエータのリンク機構は、図1とは幾分異なっている。
【0045】
図7に示すように、足ペダルケース102は、液圧システムを収容しており、このシステムの両側で左足ペダル106及び右足ペダル108を支持している。左足ペダル106は、左リンク部材110とは反対側の端部が、足ペダルヒンジ144を介して足ペダルケース102に取り付けられており、これにより、左足ペダル106の基端は垂直な向きに移動できる。左リンク部材110は、左足ペダル106の右内側から突出している。左リンク部材110は、左マスターシャフトケーブル130aに連結されている。このケーブルは、反対側の端部が、マスターシリンダ122内のマスターピストン132の左横側に連結されている。図示のように、左足ペダル106は、液圧システムの平面よりも下の平面内に位置決めされている。マスターシリンダ122は、足ペダルケース102の台にシリンダ留め具142によって固定的に取り付けられている。左マスターシャフトケーブル130aは、従って、足ペダルケース102に左プーリ支持体118によって取り付けられた左プーリ114の周囲を延びる。左プーリ114は、左足ペダル106によって加えられた左マスターシャフトケーブル130aの垂直方向移動を横方向移動に変換し、マスターピストン132をマスターシリンダ122内で変位させる。
【0046】
同様に、右足ペダル108は、右リンク部材112とは反対側の端部が足ペダルヒンジ144を介して足ペダルケース102に取り付けられており、これにより、右足ペダル108の基端は垂直な向きに移動できる。右リンク部材112は、右足ペダル108の左内側から延びている。右リンク部材112は、右マスターシャフトケーブル130bに連結されており、このケーブルの、反対側の端部は、マスターシリンダ122内のマスターピストン132の右横側に連結されている。右足ペダル108の垂直方向移動をマスターピストン132に伝達するため、右マスターシャフトケーブル130bは、足ペダルケース102に右プーリ支持体120によって取り付けられた右プーリ116上を移動する。右プーリ116は、右マスターシャフトケーブル130bを、水平な向きに並進移動させる。上述の実施形態におけるのと同様に、左マスターシャフトケーブル130a及び右マスターシャフトケーブル130bは、各々、マスターシリンダ122の横端の穴を通って延びる。マスターシリンダ122の横端の穴の周囲にはシール部材が設けられており、左マスターシャフトケーブル130a及び右マスターシャフトケーブル130bに対して密封し、液体がマスターシリンダ122の外に漏れないようにする。
【0047】
上述の実施形態におけるのと同様に、第1従動シリンダ124及び第2従動シリンダ126は、各々、マスターシリンダ122に機械的に且つ流体的に連結されている。第1従動シリンダ124及び第2従動シリンダ126の各々は、マスターシリンダ122の側壁と直交し、この側壁から先端方向に延びている。第1操向ケーブル138の基端に連結された第1従動ピストン134は、第1従動シリンダ124内に収容されている。同様に、第2操向ケーブル140の基端に連結された第2従動ピストン136は、第2従動シリンダ126内に収容されている。流体伝達シリンダ128が、第1従動シリンダ124及び第2従動シリンダ126の各々に機械的に且つ流体的に連結されており、第1従動シリンダ124及び第2従動シリンダ126の先端と隣接してこれらの従動シリンダ間を直交して延びている。
【0048】
第1操向ケーブル138及び第2操向ケーブル140は、各々、第1従動シリンダ124及び第2従動シリンダ126の夫々の先端の穴を通って出る。第1操向ケーブル138及び第2操向ケーブル140は、これらのケーブルが絡まないようにするため、及びこれらのケーブルの各々の間に適当な離間距離を維持するため、基端側横ガイドピン146及び先端側横ガイドピン148によって足ペダルケース102内を案内される。第1操向ケーブル138及び第2操向ケーブル140は、ケーブルシース104に連結された穴を通って足ペダルケース102を出る。操向ケーブル138、140は、シース104を通して整列される。
【0049】
図9A、図9B、及び図9Cに示すように、足ペダル式アクチュエータ100の作動は、枢動アクチュエータを備えた図1のアクチュエータアッセンブリの作動と同様である。図9Aは、足ペダル式アクチュエータ100を均衡位置で示す。この位置では、左右の足ペダル106、108は水平な高さ位置から変位されておらず、マスターピストン132はマスターシリンダ122の横端から等距離のマスターシリンダ122の中央に位置決めされており、第1従動ピストン134及び第2従動ピストン136の各々は第1従動シリンダ124及び第2従動シリンダ126の各々内で同じ軸線方向位置にある。図9Bに示すように、右足ペダル108を下方に変位させる。この変位により、右マスターシャフトケーブル130bに作用する張力が増大し、これによりケーブル130bは右リンク部材112によって下方に引っ張られる。右プーリ116は、右マスターシャフトケーブル130bのこの垂直方向下方への移動を水平方向右方への移動に変換し、マスターピストン132をマスターシリンダ122内で右方に引っ張る。同様に、右マスターシャフトケーブル130bの右方への移動により左マスターシャフトケーブル130aが右方に引っ張られ、かくして左足ペダル106の基端が持ち上げられる。
【0050】
マスターピストン132の移動によりマスターシリンダ122の右半部内の流体を第2従動シリンダ126に押し込み、かくして第2従動ピストン136を第2従動シリンダ126の軸線に沿って先端方向に強制的に移動する。第2従動シリンダ126内の流体を流体伝達シリンダ128に押し込み、流体伝達シリンダ128内の流体を第1従動シリンダ124に押し込む。これにより、第1従動ピストン134を第1従動シリンダ124内で基端方向に移動し、これによって、第1操向ケーブル138に作用する引張力を増大し、アブレーションチップを、取り付けられたカテーテルの端部のところで左方に偏向する。
【0051】
別の態様では、図9Cに示すように、左足ペダル106を下方に押すと、左リンク部材110に取り付けられた左マスターシャフトケーブル130aが垂直方向下方に引っ張られる。左マスターシャフトケーブル130aのこの垂直方向下方への移動は、左プーリ114によって、左マスターシャフトケーブル130aの横方向左方への移動に変換され、これによってマスターピストン132をマスターシリンダ122内で軸線方向左方に引っ張る。マスターピストン132の横方向左方への移動により、流体がマスターシリンダ122から第1従動シリンダ124に押し込まれ、これによって第1従動ピストン134を第1従動シリンダの軸線に沿って先端方向に押圧する。第1従動ピストン134のこの変位により、第1操向ケーブル138に作用する引張力が減少する。上文中に説明したように、第1従動シリンダ124から流体が流体伝達シリンダ128に押し込まれ、流体伝達シリンダ128から流体が同様に第2従動シリンダ126に押し込まれる。第2従動シリンダ126に作用する流体圧力により、第2従動ピストン136を、第2従動シリンダ126の軸線に沿って基端方向に移動する。第2操向ケーブル140が第2従動ピストン136に取り付けられているため、第2操向ケーブル140は基端方向に引っ張られ、これによって、取り付けられたカテーテルのアブレーションチップに作用する引張力が増大し、アブレーションチップを右方に偏向する。
【0052】
図10には、足ペダル式アクチュエータ200の変形例が示してある。この実施形態では、液圧式作動システム又は空気圧式作動システムのいずれかが考えられている。図10の空気圧式/液圧式足ペダル式アクチュエータ200は、第1従動シリンダ224及び第2従動シリンダ226がハンドル206に位置決めされており、第1チューブ246及び第2チューブ248によって、夫々、足ペダル式アクチュエータ200と連結されていることを除き、図7の足ペダル式アクチュエータと同様である。左足ペダル206と右足ペダル208を押し下げると、左マスターシャフトケーブル230aと右マスターシャフトケーブル230bがマスターピストン232をマスターシリンダ222内で横方向に移動させる。空気圧式の実施形態では、マスターピストン232の移動により、マスターピストン232の移動方向前方の空気が圧縮され、移動方向と反対側の、マスターピストン232の後方で負圧が発生する。液圧式の実施形態では、マスターピストン232の移動により、マスターピストン232の移動方向前方の流体の流体圧力が増大し、移動方向と逆側の、マスターピストン232の後方での流体圧力が減少する。マスターシリンダ222の横端は、第1従動シリンダ224及び第2従動シリンダ226に第1チューブ246及び第2チューブ248を介して機械的に且つ流体的に連結されている。第1従動ピストン234は第1従動シリンダ224内に位置決めされている。同様に、第2従動ピストン236は第2従動シリンダ226内に位置決めされている。第1チューブ246及び第2チューブ248は、保護のため及び絡まないようにするため、シース250に収容されていてもよい。
【0053】
上文中に説明した実施形態とは対照的に、第1従動シリンダ224及び第2従動シリンダ226は、マスターシリンダ222に直接的に連結されていない。第1従動シリンダ224及び第2従動シリンダ226は、第1チューブ246及び第2チューブ248を介してマスターシリンダ222と流体連通している。これらのチューブは、第1従動シリンダ224及び第2従動シリンダ226の先端に流体的に連結されている。第1従動シリンダ224及び第2従動シリンダ226の基端は、流体伝達シリンダ228によって流体的に連結されている。空気圧式の実施形態では、左足ペダル206を押すと、マスターピストン232がマスターシリンダ222内で左方に引っ張られ、マスターシリンダ222の左区分内の空気を圧縮する。これにより空気を第1チューブ246に押し込み、最終的には第1従動シリンダ224に押し込む。第1従動シリンダ224の直径がマスターシリンダ222の直径と比較して小さいため、マスターピストン232の小さな移動により大きな容積の空気が第1チューブ246及び第1従動シリンダ224に押し込まれる。空気がこのように流入することにより、第1従動シリンダ224内の空気圧が上昇し、第1従動ピストン234を、基端方向に、マスターピストン232の移動よりも大きい直線距離に亘って押す。第1従動ピストン234の移動により第1操向ケーブル238を引っ張り、最終的には、カテーテル204の先端のアブレーションチップを第1方向に偏向する。第1従動ピストン234の基端側の第1従動シリンダ224内の空気は、流体伝達シリンダ228を通って第2従動シリンダ226の基端に押し込まれ、これによって第2従動ピストン236を先端方向に押圧し、それまで第2操向ケーブル240に作用していた張力を解放する。
【0054】
同様に、空気圧式の実施形態において、右足ペダル208を押し下げると、マスターピストン232がマスターシリンダ222内で右方に引っ張られ、マスターシリンダ222の右区分内の空気を圧縮する。これにより空気を第2チューブ248に押し込み、最終的には第2従動シリンダ226に押し込む。第2従動シリンダ226の直径がマスターシリンダ222の直径と比較的して小さいため、マスターピストン232の小さな移動により大きな容積の空気が第2チューブ248及び第2従動シリンダ226に押し込まれる。空気がこのように流入することにより、第2従動シリンダ226内の空気圧が上昇し、第2従動ピストン236を基端方向に、マスターピストン232の移動よりも大きい直線距離に亘って押す。第2従動ピストン236の移動により第2操向ケーブル240が引っ張られ、最終的には、カテーテル204の先端のアブレーションチップを第2方向に偏向する。第2従動ピストン236の基端側の第2従動シリンダ226内の空気は、流体伝達シリンダ228を通って第1従動シリンダ224の基端に押し込まれ、これによって第1従動ピストン234を先端方向に押圧し、それまで第1操向ケーブル238に作用していた張力を解放する。図10に示す種類の空気圧による制御は、例えば、図10の足ペダル式アクチュエータでなく、図1乃至図6、及び図11乃至図15と同様の種類の任意の手持ち式アクチュエータアッセンブリに組み込むこともできるということは明らかである。
【0055】
別の態様では、図10のアクチュエータは、空気圧でなく液圧で制御してもよい。この実施形態では、マスターピストン232がマスターシリンダ222内で移動することにより、マスターピストン232の移動方向に応じて、第1チューブ246又は第2チューブ248のいずれか内の非圧縮性流体に、増大した流体圧力が発生し、最終的には、第1従動シリンダ224及び第2従動シリンダ226のいずれかの流体圧力が増大する。第1従動シリンダ224又は第2従動シリンダ226内の増大した流体圧力により、第1従動ピストン234又は第2従動ピストン236のいずれかを基端方向に移動させ、これにより第1操向ケーブル238又は第2操向ケーブル240のいずれかを引っ張り、最終的には、カテーテル204の先端のアブレーションチップを偏向する。
【0056】
本発明の別の実施形態は、図11及び図12に示すように、トグル(toggle)式アクチュエータアッセンブリ300を組み込む。この実施形態もまた、マスターシリンダ322、第1従動シリンダ324、第2従動シリンダ326、及び流体伝達シリンダ328を使用する。これらは、図1の液圧システムと同様の方法で互いに機械的に且つ流体的に連結されている。第1従動シリンダ324及び第2従動シリンダ326は、第1従動ピストン334及び第2従動ピストン336を夫々収容しており、これらのピストンは、第1操向ケーブル338及び第2操向ケーブル340に夫々取り付けられている。第1操向ケーブル338及び第2操向ケーブル340は、図1の構成と同様に、基端側横ガイドピン346、中央ガイドピン348、及び先端側横ガイドピン350によって、トグル式アクチュエータアッセンブリ300のハンドルケース306を通して先端方向に案内される。
【0057】
この実施形態では、マスターシャフト330は、マスターピストン332と関連してトグルとして作用する。この実施形態のマスターシリンダ322は、シリンダ留め具342によってハンドルケース306に取り付けられており、移動しない。マスターシャフト330の横端には、第1トグルボタン318a及び第2トグルボタン318bが夫々設けられている。取り付けられたカテーテルの端部のアブレーションチップの向きを変えるため、第1トグルボタン318a又は第2トグルボタン318bのいずれかを横方向内方にハンドルケース306に押し込み、これによってマスターピストン332をマスターシリンダ322内で変位する。例えば、図12に示すように、第2トグルボタン318bを横方向内方にハンドルケース306に押し込み、マスターピストン332を右方に押圧する。これによりマスターシリンダ322内の流体を第1従動シリンダ324に押し込み、これによって第1従動ピストン334を第1従動シリンダ324内で先端方向に移動する。第1従動ピストン334の先端側の流体は、流体伝達シリンダ328に押し込まれ、これにより流体を更に第2従動シリンダ326に押し込み、第2従動ピストン336を基端方向に押圧する。
【0058】
第1操向ケーブル338及び第2操向ケーブル340が第1従動ピストン334及び第2従動ピストン336に夫々取り付けられているため、第1操向ケーブル338は先端方向に移動し、これによって、アブレーションチップに及ぼされる張力を減少する。第2操向ケーブル340は基端方向に移動し、これによって、アブレーションチップに及ぼされる張力を増大し、かくしてアブレーションチップを偏向する。従って、代わりに第1トグルボタン318aを押すと、逆の液圧効果が発生し、アブレーションチップが逆方向に偏向されるということは明らかである。上述の実施形態におけるのと同様に、マスターシリンダ322の直径は、第1従動シリンダ324及び第2従動シリンダ326の各々の直径よりも大きく、これによって、マスターシャフト330の小さな移動を、第1操向ケーブル338及び第2操向ケーブル340の大きな直線的変位に変換する。
【0059】
スイッチボタンアクチュエータを組み込んだ本発明の別の実施形態を図13及び図14に示す。スイッチボタンアクチュエータアッセンブリ400の液圧システムは、上述の実施形態におけるように第1操向ケーブル438及び第2操向ケーブル440に対して直交するような向きに配置されているのでなく、第1操向ケーブル438及び第2操向ケーブル440と平行に配置されたマスターシリンダ422を含む。第1従動シリンダ424は、L形状を形成する。このL形状の足部がマスターシリンダ422の側壁に対して直交し、マスターシリンダ422の先端と隣接して位置決めされる。第1従動シリンダ424の基幹部が足部から先端方向に延びている。第1従動シリンダ424の基幹区分は足区分よりも遥かに長く、これにより、第1従動ピストン434及び内部に収容された第1操向ケーブル438の移動距離を長くできる。第2従動シリンダ426は、同様にL形状であり、L形状の足部がマスターシリンダ422の側壁と直交しており、マスターシリンダ422の基端と隣接して位置決めされる。第2従動シリンダ426の基幹区分は足区分よりも長く、これにより第2従動シリンダ426に収容された第2従動ピストン436及び第2操向ケーブル440の移動距離を大きくできる。流体伝達システム428が第1従動シリンダ424及び第2従動シリンダ426の先端を連結する。
【0060】
この実施形態では、マスターシャフトは、マスターシャフトの基端区分430aがマスターピストン432の基端側でマスターシリンダ422を通って延び、マスターシャフトの先端区分430bがマスターピストン432の先端側でマスターシリンダ422を通って延びて、二又に分岐しているように図示されている。マスターシャフトの基端区分430a及び先端区分430bの各々は、マスターシリンダ422から出ると上方に曲がり、ハンドルアクチュエータケーシング406の外側に位置決めされた摺動スイッチアクチュエータ418の基端及び先端と係合する。マスターシリンダ422は、シリンダ留め具442によってスイッチボタンアクチュエータアッセンブリ400の表面に固定的に取り付けられている。本発明のこの実施形態では、臨床医は、スイッチアクチュエータ418を基端方向及び先端方向に摺動するだけで、マスターピストン432を、マスターシャフトの基端区分430a及び先端区分430bを介して移動できる。マスターシリンダ422内でのマスターピストン432の移動は、スイッチアクチュエータ418の小さな直線的移動を、第1従動シリンダ424及び第2従動シリンダ426の夫々内での第1従動ピストン434及び第2従動ピストン436の大きな移動距離に変換する。
【0061】
図13及び図14に示すように、本発明のこの実施形態は、第1従動シリンダ424及び第2従動シリンダ426の各々内でピストンストップ444を使用する。これらのピストンストップ444は、第1従動ピストン434及び第2従動ピストン436がピストンストップ444の点を越えて先端方向へ移動することを妨げるため、第1従動シリンダ424及び第2従動シリンダ426の内壁に取り付けられた中空リングであってもよい。かくして、ピストンストップ444は、カテーテルのアブレーションチップが過度に偏向しないようにする又は第1操向ケーブル438及び第2操向ケーブル440にそれらの作動パラメータを越える過度の引張力が加わらないようにする安全装置として作用する。
【0062】
本発明の別の実施形態を図15に示す。この実施形態は、第1マスターシリンダ522a、第2マスターシリンダ522b、及び単一の従動シリンダ524を含む押しボタンアクチュエータアッセンブリ500を備えている。第1マスターシリンダ522a及び第2マスターシリンダ522bは、互いに対して平行な向きに配置されているが、互いから間隔が隔てられており、従動シリンダ524の両端に位置決めされている。図15に示すように、第1マスターシリンダ522aは、従動シリンダ524の基端に機械的に且つ流体的に連結されている。同様に、第2マスターシリンダ522bは、従動シリンダ524の先端に機械的に且つ流体的に連結されている。第1押しボタンアクチュエータ518aは、第1マスターシリンダ522a内の第1マスターピストン532aにシャフトによって連結されている。第1押しボタンアクチュエータ518aは、臨床医が操作し易くするため、ハンドルケース506の外側に横方向に延びている。同様に、第2押しボタンアクチュエータ518bは、第2マスターシリンダ522b内の第2マスターピストン532bにシャフトによって連結されている。第2押しボタンアクチュエータ518bは、臨床医によるアクセスを容易にするため、ハンドルケース506の外側で横方向に延びている。
【0063】
図15に示すように、従動シリンダ524はシリンダ留め具542によってハンドルケース506に取り付けられている。従動ピストン534が従動シリンダ524に収容されている。このピストンは、基端側が第1操向ケーブル538に取り付けられており、先端側が第2操向ケーブル540に取り付けられている。第2操向ケーブル540は、従動シリンダ524の先端から延出する。第1操向ケーブル538は従動シリンダ524の基端から延出して、ハンドルケース506内の基端軸516に取り付けられた基端プーリ514の周囲に巻き付けてある。第1操向ケーブル538は、基端プーリ514の周囲に巻き付いた後、ハンドルケース506から先端方向に延出する。
【0064】
この実施形態では、第1押しボタンアクチュエータ518aを押すと、第1マスターピストン532aが第1マスターシリンダ522a内の流体を従動シリンダ524の基端に押し込む。流体のこの移動により、従動ピストン534を先端方向に強制的に移動し、第1操向ケーブル538に作用する張力を増大する。この張力は、基端プーリ514の周囲で変換され、取り付けられたカテーテルのアブレーションチップを曲げる。従動ピストン534が先端方向に押されるとき、従動シリンダ524の先端内の流体が第2マスターシリンダ522bに押し込まれる。これにより、第2マスターピストン532bを第2マスターシリンダ522b内で横方向外方に押圧し、追加の流体を受け入れる。
【0065】
別の態様では、臨床医が第2押しボタンアクチュエータ518bを押すと、第2マスターピストン532bが流体を第2マスターシリンダ522bから従動シリンダ524の先端に押し込む。従動シリンダ524の先端内のこの過剰の流体に従動ピストン534が押され、従動シリンダ524内で基端方向に移動する。第2操向ケーブル540が従動ピストン534の先端側に取り付けられているため、第2操向ケーブル540は、従動シリンダ524内で基端方向に引っ張られ、第2操向ケーブル540に作用する引張力を増大し、取り付けられたカテーテルのアブレーションチップを曲げる、即ち偏向する。
【0066】
本発明の様々な実施形態を、一つ又はそれ以上の個々の実施形態を参照して上文中に或る程度詳細に説明したが、当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、開示の実施形態に多くの変更を行うことができる。以上の説明に含まれており且つ添付図面に示した全ての事項は、特定の実施形態を例示するに過ぎず、限定するものではないと解釈されるべきである。方向についての全ての記載(例えば、基端方向、先端方向、上、下、上方、下方、左方、右方、横方向、前方、後方、頂部、底部、上、下、垂直方向、水平方向、時計廻り方向、及び反時計廻り方向)は、読者が本発明を理解するのを補助するために単に同定を目的として使用したものであり、特に本発明の位置、姿勢、又は使用に関して限定しようとするものではない。連結についての言及(例えば、取り付けられた、連結された、接合された、結合された)は広く解釈されるべきであって、特段の表示がない限り、要素の集まりの間に中間部材を含んでもよく、要素間の相対的移動を含んでもよい。このように、連結に関する言及は、必ずしも、2つの要素が直接的に連結されており且つ互いに固定関係にあることを意味するものではない。上文中の説明に含まれた事項及び添付図面に示した事項は、単なる例示であって、限定ではないと解釈されるべきである。特許請求の範囲に記載の本発明の基本的要素から逸脱することなく、詳細又は構造を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態による操向可能なカテーテル用のアクチュエータアッセンブリの斜視図である。
【図2】図2は、アクチュエータアッセンブリの内部構成要素を示すため、ハンドルキャップ及び上アクチュエータパネルを仮想線で示す、図1のアクチュエータアッセンブリの斜視図である。
【図3】図3は、図1のアクチュエータアッセンブリの枢動アクチュエータ及び液圧構成要素の斜視図である。
【図4A】図4Aは、図3の枢動アクチュエータ及び液圧構成要素の均衡位置での平断面図である。
【図4B】図4Bは、図3の枢動アクチュエータ及び液圧構成要素の第1変位位置での平断面図である。
【図4C】図4Cは、図3の枢動アクチュエータ及び液圧構成要素の第2変位位置での平断面図である。
【図5】図5は、図1のアクチュエータアッセンブリの平面図であり、取り付けられたカテーテルのアブレーションチップが拡大断面で示してあり、カテーテルの中間区分は省略され、アブレーションチップがアクチュエータの変位と対応する偏向位置で示してある。アブレーションチップは、更に、アクチュエータの別の変位と対応する別の偏向位置で仮想線で示してある図である。
【図6】図6は、図1のアクチュエータアッセンブリの枢動アクチュエータ及び液圧構成要素の変形例の平断面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施形態による足ペダル式アクチュエータの部分破断斜視図である。
【図8】図8は、図7の足ペダル式アクチュエータの部分破断右側面図である。
【図9A】図9Aは、均衡位置にある図7の足ペダル式アクチュエータの部分破断平面図である。
【図9B】図9Bは、右足ペダルを押した第1変位位置にある図7の足ペダル式アクチュエータの部分断面平面図である。
【図9C】図9Cは、左足ペダルを押した第2変位位置にある図7の足ペダル式アクチュエータの部分断面平面図である。
【図10】図10は、本発明の変形例による空気圧式足ペダル式アクチュエータの部分破断斜視図である。
【図11】図11は、トグルスイッチアクチュエータアッセンブリを組み込んだ本発明の変形例の均衡位置での平断面図である。
【図12】図12は、図11のトグルスイッチアクチュエータアッセンブリの変位位置での平断面図である。
【図13】図13は、摺動スイッチアクチュエータアッセンブリを組み込んだ本発明の追加の実施形態の平面図である。
【図14】図14は、図13の摺動スイッチアクチュエータアッセンブリの部分断面側面図である。
【図15】図15は、押しボタンアクチュエータアッセンブリを組み込んだ本発明の別の実施形態の部分破断斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
2 アクチュエータアッセンブリ
6 アクチュエータハンドル
8 ハンドルキャップ
10 ハンドル基部
12 ハンドルベイ
18 枢動アクチュエータ
19 チャンバ
20 アクチュエータ溝
22 マスターシリンダ
24 第1従動シリンダ
26 第2従動シリンダ
28 流体伝達シリンダ
30 マスターシャフト
32 マスターピストン
34 第1従動ピストン
36 第2従動ピストン
38 第1操向ケーブル
40 第2操向ケーブル
42 シリンダ留め具
44 枢動ピン
46 基端横ガイドピン
48 中央ガイドピン
50 先端横ガイドピン
56 下アクチュエータパネル
58 上アクチュエータパネル
60 スロット
65 留め具ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向可能なカテーテル用のアクチュエータアッセンブリにおいて、
液圧システムであって、
マスターシリンダと、
前記マスターシリンダに流体的に連結された少なくとも一つの従動シリンダと、
第1端が前記少なくとも一つの従動シリンダに作動的に連結されており且つ第2端がカテーテルの偏向可能な先端チップに作動的に連結された少なくとも一つの操向ケーブルとを含む液圧システムと、
前記マスターシリンダに作動的に連結された、前記マスターシリンダに機械的力を加える機械式アクチュエータとを含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、更に、
前記機械式アクチュエータ及び前記マスターシリンダの両方に連結された、前記機械式アクチュエータによって前記マスターシリンダに加えられた機械的力を変換する少なくとも一つの変換部材を含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記マスターシリンダの直径は、前記少なくとも一つの従動シリンダの直径よりも大きく、前記マスターシリンダの長さは、前記少なくとも一つの従動シリンダの長さよりも小さい、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項4】
請求項1に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記少なくとも一つの従動シリンダは、第1従動シリンダ及び第2従動シリンダを含み、
前記少なくとも一つの操向ケーブルは、第1操向ケーブル及び第2操向ケーブルを含み、
前記第1操向ケーブルは、基端が前記第1従動シリンダに作動的に連結されており且つ先端が前記カテーテルの前記先端チップに作動的に連結されており、
前記第2操向ケーブルは、基端が前記第2従動シリンダに作動的に連結されており且つ先端が前記カテーテルの前記先端チップに作動的に連結されている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、更に、
前記マスターシリンダ内のマスターピストンを含み、
前記第1従動シリンダは、前記マスターピストンの第1側で前記マスターシリンダの第1端に流体的に連結されており、
前記第2従動シリンダは、前記マスターピストンの第2側で前記マスターシリンダの第2端に流体的に連結されている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、更に、
前記第1従動シリンダ及び前記第2従動シリンダの両方に流体的に連結された流体伝達シリンダを含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項7】
請求項5に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記第1従動シリンダ及び前記第2従動シリンダは、各々、前記アクチュエータアッセンブリの基端から先端まで延びる軸線とほぼ平行な向きに配置されており、
前記マスターシリンダは、前記第1従動シリンダ及び前記第2従動シリンダの各々に対して横向きに配置されている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記マスターシリンダは、前記第1従動シリンダ及び前記第2従動シリンダの基端側に位置決めされている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項9】
請求項7に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記マスターシリンダは、前記第1従動シリンダ及び前記第2従動シリンダの先端側に位置決めされている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項10】
請求項4に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
ハンドルを更に有し、
前記マスターシリンダ、前記第1従動シリンダ、前記第2従動シリンダ、及び前記機械式アクチュエータの各々は、ハウジングに関して枢動可能に取り付けられている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記機械式アクチュエータは実質的に連続した壁を有し、前記マスターシリンダ、前記第1従動シリンダ、及び前記第2従動シリンダの各々は前記機械式アクチュエータの前記実質的に連続した壁によって境界付けられた領域内に位置決めされる、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記機械式アクチュエータの前記実質的に連続した壁は、涙滴形状を形成し、前記機械式アクチュエータは前記涙滴形状の尖端で前記ハウジングに取り付けられている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項13】
請求項12に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記機械式アクチュエータは、前記涙滴形状の前記尖端を先端方向に向けた状態で前記ハウジングに取り付けられており、
前記涙滴形状の前記尖端において、前記実質的に連続した壁内に溝が形成されており、
前記第1操向ケーブル及び前記第2操向ケーブルの各々は、前記第1従動シリンダ及び前記第2従動シリンダから、夫々先端方向に、前記溝を通って前記カテーテルの内腔内に延びている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項14】
請求項2に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記機械式アクチュエータは、更に、少なくとも一つの足ペダルを含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項15】
請求項14に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記少なくとも一つの変換部材は、マスターシャフトケーブルを含み、
前記アクチュエータアッセンブリは、更に、少なくとも一つのプーリを含み、
前記マスターシャフトケーブルは、前記プーリに巻き掛けられ、前記少なくとも一つの足ペダルによって前記マスターシャフトケーブルに加えられた垂直方向移動を水平方向移動に変換する、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項16】
請求項2に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、更に、
前記マスターシリンダ内に設けられたマスターピストンを有し、
前記変換部材は、
前記マスターピストンの第1側に連結された第1マスターシャフトと、
前記マスターピストンの第2側に連結された第2マスターシャフトとを含み、
前記機械式アクチュエータはトグルスイッチを含み、該トグルスイッチは、
前記第1マスターシャフトに取り付けられた第1トグルボタンと、
前記第2マスターシャフトに取り付けられた第2トグルボタンとを含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項17】
請求項2に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、更に、
前記マスターシリンダ内に設けられたマスターピストンを有し、
前記変換部材は、
前記マスターピストンの第1側に連結された第1マスターシャフトと、
前記マスターピストンの第2側に連結された第2マスターシャフトとを含み、
前記機械式アクチュエータは、第1端が前記第1マスターシャフトに取り付けられており且つ第2端が前記第2マスターシャフトに取り付けられた摺動スイッチを含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項18】
請求項1に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、
前記マスターシリンダは、更に、
前記少なくとも一つの従動シリンダの基端に流体的に連結された第1マスターシリンダと、
前記第1マスターシリンダ内の第1マスターピストンと、
前記少なくとも一つの従動シリンダの先端に流体的に連結された第2マスターシリンダと、
前記第2マスターシリンダ内の第2マスターピストンとを含み、
前記アクチュエータ機構は、更に、
前記第1マスターピストンに連結された第1押しボタンアクチュエータと、
前記第2マスターピストンに連結された第2押しボタンアクチュエータとを含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項19】
請求項18に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、更に、
前記少なくとも一つの従動シリンダ内に位置決めされた従動ピストンを含み、
前記少なくとも一つの操向ケーブルは、第1操向ケーブル及び第2操向ケーブルを含み、
前記第1操向ケーブルは、基端が前記第1従動ピストンの基端側に作動的に連結されており且つ先端が前記カテーテルの前記先端チップに作動的に連結されており、
前記第2操向ケーブルは、基端が前記第2従動ピストンの先端側に作動的に連結されており且つ先端が前記カテーテルの前記先端チップに作動的に連結されている、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項20】
請求項19に記載のアクチュエータアッセンブリにおいて、更に、
前記第1操向ケーブルの移動を第1方向から第2方向に変換するように第1操向ケーブルが作動的に連結されたプーリを含む、アクチュエータアッセンブリ。
【請求項21】
カテーテルの先端チップを曲げるための方法において、
マスターシリンダに連結された機械式アクチュエータを作動する工程と、
前記マスターシリンダ内の流体を加圧し、マスターピストンを前記マスターシリンダ内で第1方向に押す工程と、
前記マスターシリンダ内の前記流体の第1部分を第1従動シリンダに侵入させる工程と、
第1従動ピストンを前記第1従動シリンダ内で第2方向に押す工程と、
基端が前記第1従動ピストンに連結されており且つ先端が前記カテーテルの前記先端チップに連結された第1操向ケーブルに作用する張力を増大させる工程と、
前記第1操向ケーブルに作用する張力を増大させる前記工程によって、前記カテーテルの前記先端チップを第1方向に曲げる工程とを含む、方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法において、更に、
前記マスターシリンダ内の前記流体を加圧し、前記マスターピストンを前記マスターシリンダ内で第2方向に押す工程と、
前記マスターシリンダ内の前記流体の第2部分を第2従動シリンダに侵入させる工程と、
第2従動ピストンを前記第2従動シリンダ内で前記第2方向に押す工程と、
基端が前記第2従動ピストンに連結されており且つ先端が前記カテーテルの前記先端チップに連結された第2操向ケーブルに作用する張力を増大させる工程と、
前記第2操向ケーブルに作用する張力を増大させる前記工程によって、前記カテーテルの前記先端チップを第2方向に曲げる工程とを含む、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、更に、
前記カテーテルの前記先端チップの偏向位置から均衡位置への戻りを減衰させる工程を含む、方法。
【請求項24】
操向可能なカテーテル用のアクチュエータアッセンブリにおいて、
空気圧システムであって、
マスターシリンダと、
前記マスターシリンダ及びカテーテルの先端チップの両方に流体的に連結された少なくとも一つの従動シリンダとを含む空気圧システムと、
前記マスターシリンダに作動的に連結されており、前記マスターシリンダに機械的力を加え、これにより、前記少なくとも一つの従動シリンダ内の流体圧力を増大し、前記カテーテルの前記先端チップを偏向する機械式アクチュエータとを備えている、アクチュエータアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−507355(P2008−507355A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522755(P2007−522755)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/025888
【国際公開番号】WO2006/012421
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(505472746)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】