説明

液圧緩衝器

【課題】走行時のコトコト音の発生を抑えることができるようにする。
【解決手段】内筒のボトム側油室内に蓄圧機構21を設ける。蓄圧機構21は、ボトムバルブ14の締結ボルト16にナット22を介して固定された有蓋筒状の蓄圧ケース23と、蓄圧ケース23との間で体積が可変な可変室Eを区画しボトム側油室内の圧力変化に追従して蓄圧ケース23内を上,下方向に変位する区画部材24と、区画部材24の変位に対して弾性的な抵抗力を与える弾性ディスク25とにより構成している。区画部材24は、環状平板24Aと弾性シール体24Bとから構成している。蓄圧機構21の内部に形成した可変室Eは、その体積がボトム側油室内の圧力変化に応じて増減されることにより、車両の走行時にコトコト音が発生するのを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の振動を緩衝するのに好適に用いられる液圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、2輪または4輪自動車等の車両には、車輪側と車体側との間に液圧緩衝器が設けられ、走行時に発生する上,下方向の振動等を緩衝する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−214951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術による液圧緩衝器では、内部の圧力が変動するときに緩衝器のロッドが振動してコトコト音と呼ばれる異音が発生することがある。本発明の目的は、コトコト音の発生を抑えることができるようにした液圧緩衝器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成は、作動液が封入されたシリンダと、該シリンダ内と連通して設けられたリザーバ室と、前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され前記シリンダ内に第1室と第2室とを画成するピストンと、一端側が前記シリンダ内で該ピストンに固定され他端側が前記シリンダ外にロッドガイドを介して突出したピストンロッドと、前記シリンダの一端側に設けられ前記シリンダ内の第2室を前記リザーバ室に画成するベース部材と、前記ベース部材に設けられ、前記第2室内の圧力変化に応じて可動する区画部材によって区画された可変室を有する蓄圧機構とを備え、前記区画部材は前記第2室に配置される構成としたことにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第2室内の圧力変化に応じて体積が増減される可変室を有した蓄圧機構によりコトコト音と呼ばれる異音の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態による油圧緩衝器を示す縦断面図である。
【図2】図1中のボトムバルブ側を拡大して示す断面図である。
【図3】第2の実施の形態によるボトムバルブと蓄圧機構とを拡大して示す図2と同様位置での断面図である。
【図4】第3の実施の形態によるボトムバルブと蓄圧機構とを拡大して示す図2と同様位置での断面図である。
【図5】第4の実施の形態によるボトムバルブと蓄圧機構とを拡大して示す図2と同様位置での断面図である。
【図6】図5中の蓄圧機構を拡大して示す断面図である。
【図7】第5の実施の形態によるボトムバルブと蓄圧機構とを拡大して示す図2と同様位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態による液圧緩衝器を、車両用の油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0009】
ここで、図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は油圧緩衝器の外殻をなす有底筒状の外筒で、該外筒1は、一端側となる下端側がベースキャップとしてのボトムキャップ2により溶接手段等を用いて閉塞され、他端側となる上端側は開口している。また、外筒1の上端部は、径方向内側に屈曲されたかしめ部1Aとなっている。
【0010】
3は外筒1の上端側に設けられた環状円板からなる蓋体で、該蓋体3は、外筒1の開口端となる上端側を閉塞している。蓋体3の外周側は、後述のロッドガイド9に当接した状態でかしめ部1Aにより固定されている。蓋体3の内周側には、後述のロッドシール11が設けられている。
【0011】
4は外筒1内に同軸上に設けられたシリンダとしての内筒で、該内筒4は、下端側が後述のボトムバルブ14に嵌合して取付けられ、上端側は後述のロッドガイド9に嵌合して取付けられている。内筒4内には作動液としての油液が封入されている。内筒4と外筒1との間には、環状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室A内には、前記油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。また、油液は、オイルでなくとも添加剤を混在させた水等であってもよい。
【0012】
5は内筒4内に摺動可能に挿嵌されたピストンで、該ピストン5は、内筒4内を第1室としてのロッド側油室Bと第2室としてのボトム側油室Cとに画成している。ピストン5には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能な油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
【0013】
ここで、ピストン5の一側となる下端面には、後述するピストンロッド7の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに、各油路5A内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する伸長側の減衰力発生機構6Aが設けられている。この伸長側の減衰力発生機構6Aは、積層され内周がクランプされたディスクからなる。また、ピストン5の他側となる上端面には、ピストンロッド7の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、各油路5B内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する縮小側の減衰力発生機構6Bが設けられている。この縮小側の減衰力発生機構Bは、積層され内周がクランプされたディスクからなる。なお、縮小側については、減衰力発生機構ではなく、実質的に減衰力を発生しない逆止弁を設けてもよい。
【0014】
7は内筒4内を軸方向に延びたピストンロッドで、該ピストンロッド7は、一端側としての下端側が内筒4内に挿入され、ナット8等によりピストン5に固着して設けられている。また、ピストンロッド7の他端側としての上端側は、後述のロッドガイド9および蓋体3等を介して外筒1および内筒4の外部に突出している。
【0015】
9は内筒4の上端側に固定して設けられた段付円筒状のロッドガイドである。このロッドガイド9は、内筒4の上側部分を外筒1の中央に位置決めすると共に、内周側でピストンロッド7を軸方向にガイドしている。また、ロッドガイド9は、蓋体3を外筒1のかしめ部1Aにより外側からかしめ固定するときに、該蓋体3を内側から支持する支持構造体となっている。
【0016】
ロッドガイド9は、例えば金属材料、硬質な樹脂材料等に成型加工、切削加工等を施すことにより所定の段付形状に形成されている。ロッドガイド9には、リザーバ室Aに連通する戻し通路9Aが設けられている。また、ロッドガイド9の内周側には、摺動筒としてのブッシュ10が嵌合して設けられ、該ブッシュ10は、ロッドガイド9の内周側でピストンロッド7が軸方向に摺動変位するのを円滑にガイドするものである。
【0017】
11は蓋体3の内周側に設けられたロッドシールで、該ロッドシール11は、例えばゴム等の弾性材料によって形成されている。ロッドシール11は、ピストンロッド7の外周側に摺接することにより蓋体3とピストンロッド7との間をシールするものである。
【0018】
12はロッドシール11と一体に形成されたチェック弁としてのリップシールで、該リップシール12は、ロッドシール11と同様にゴム等の弾性材料を用いて形成されている。リップシール12は、後述の油溜め室13とリザーバ室Aとの間に配置され、油溜め室13内の油液等がロッドガイド9の戻し通路9Aを介してリザーバ室A側に向け流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
【0019】
13はロッドガイド9とロッドシール11との間に設けられた油溜め室で、該油溜め室13は、ピストンロッド7の外周側に位置しロッドガイド9とロッドシール11とにより囲まれた環状の空間部として形成されている。そして、油溜め室13は、ロッド側油室B内の油液(または、油液中に混入したガス)がピストンロッド7とロッドガイド9との隙間等を介して漏出したときに、この漏出物を溜める機能を有している。
【0020】
14は内筒4の下端側に位置してボトムキャップ2と内筒4との間に設けられたベースバルブとしてのボトムバルブである。このボトムバルブ14は、図1、図2に示すように、ボトムキャップ2の上面側と内筒4の下端側との間に嵌合して固着されたベース部材としてのバルブボディ15と、該バルブボディ15の中心側を軸方向に貫通して設けられた固定軸としての締結ボルト16と、後述のチェックバルブ17およびディスクバルブ18とを含んで構成されている。
【0021】
ここで、ボトムバルブ14のバルブボディ15は、図2に示すように短尺な有蓋筒状体として形成され、その上,下面側には環状の弁座15A,15Bが設けられている。また、バルブボディ15には、軸方向の貫通孔からなる複数の油路15C,15Dが周方向に間隔をあけて設けられている。このうち各油路15Cは、各油路15Dよりも径方向外側に配置され、後述するチェックバブル17の開弁時にリザーバ室Aをボトム側油室Cに連通させるものである。
【0022】
ボトムキャップ2の上面側に固定されたバルブボディ15の下端側には、図1、図2中に点線で示すように、複数の凹溝からなる油通路15Eが形成されている。これらの油通路15Eは、ボトムキャップ2の上面とバルブボディ15の下面との間に形成されるボトム側の空間部Dをリザーバ室Aに常時連通させるものである。
【0023】
締結ボルト16は、軸方向の一端側に設けられた頭部16Aと、該頭部16Aとは軸方向の反対側に位置し外周側に雄ねじが形成されたねじ部16Bとを有している。締結ボルト16のねじ部16Bには後述のナット22が螺着され、これにより、後述のチェックバルブ17、ディスクバルブ18および蓄圧機構21等がボトムバルブ14に締結状態で取付けられている。
【0024】
17はバルブボディ15の上面側に設けられた吸込バルブとしてのチェックバルブで、該チェックバルブ17は、図2に示す如く弾性金属板からなるディスクを用いて形成され、常時は複数の油路15Cを閉塞するようにバルブボディ15の弁座15Aに着座している。しかし、ピストンロッド7の伸長行程では、リザーバ室Aとボトム側油室Cとの間に圧力差が発生することにより、チェックバルブ17が弾性変形して弁座15Aから離座するように開弁し、リザーバ室Aおよび空間部D側の油液が各油路15Cを介してボトム側油室Cに向けて流通する。このチェックバルブ17は実質的に減衰力を発生しない。この実質的に減衰力を発生しないとは、物理的に見れば必ず減衰力は発生するが、その減衰力が伸長側の減衰力発生機構6Aの公差程度と小さく、車体の姿勢変化に殆ど影響しないことをいう。
【0025】
チェックバルブ17には、図3に示す如く複数の貫通穴17Aが形成されている。これらの貫通穴17Aは、バルブボディ15の各油路15Dと常時連通し、ボトム側油室C内の油液が後述のディスクバルブ18を介してボトム側の空間部D、リザーバ室A側に向けて流通するのを許すものである。
【0026】
18はバルブボディ15の下面側に設けられた縮小側のディスクバルブで、該ディスクバルブ18は、図2、図3に示すように複数枚の弾性金属板からなるディスクを重合せて構成され、バルブボディ15の弁座15B側と締結ボルト16の頭部16Aとの間に座金19、リテーナ20を介して固定状態で取付けられている。そして、ディスクバルブ18のうちバルブボディ15の弁座15Bに当接する最上側のディスクには、絞り通路を構成する切欠き18Aが形成され、該切欠き18Aは、バルブボディ15の各油路15Dをボトム側の空間部D、リザーバ室Aに常時連通している。
【0027】
ここで、ボトムバルブ14のディスクバルブ18は、ピストンロッド7の縮小行程でボトム側油室C内の油液がチェックバルブ17の各貫通穴17A、バルブボディ15の各油路15D、切欠き18Aを介して空間部D、リザーバ室A側に流通するときに、切欠き18Aを流通する油液に絞り抵抗を与えて縮小側の減衰力を発生させる。そして、ピストンロッド7の縮小速度が所定の速度よりも速くなると、ボトム側油室C内の圧力がさらに上昇することによりディスクバルブ18が弾性変形して開弁し、この場合にはピストンロッド7の縮小速度に応じた減衰力が発生する。このとき、リテーナ20は、ディスクバルブ18の最大開度を規制するものである。
【0028】
21は本実施の形態で採用した蓄圧機構で、該蓄圧機構21は、内筒4内のボトム側油室C側に位置してボトムバルブ14の上側に固定状態で取付けられている。そして、蓄圧機構21は、ボトム側油室C内の圧力変化に応じて体積が増減される可変室Eを有し、ボトム側油室Cの圧力が上昇するときには可変室Eの体積を減少させて蓄圧を行い、ボトム側油室C内の圧力が低下するときには可変室Eの体積を増加させて前記蓄圧を開放するものである。
【0029】
ここで、蓄圧機構21は、ボトムバルブ14の締結ボルト16にナット22を介して固定された有蓋筒状の蓄圧ケース23と、該蓄圧ケース23の下面側に締代をもって嵌合し該蓄圧ケース23との間に体積の可変室Eを区画すると共に、該可変室Eをボトム側油室Cに対して遮断した状態でボトム側油室C内の圧力変化に追従して上,下方向に移動する区画部材24と、該区画部材24の動きに弾性的な抵抗力を与える弾性部材としての弾性ディスク25とを含んで構成されている。
【0030】
蓄圧機構21の蓄圧ケース23は、内周側を締結ボルト16が貫通した環状の蓋部23Aと、該蓋部23Aの外周側から軸方向下向きに延び後述の弾性シール体24Bよりも下方に突出した外側筒部23Bと、蓋部23Aの内周側に位置し下向きに突出した内側突部23Cと、蓋部23Aと外側筒部23Bとの境界部に位置し内側筒部23Cから径方向に離間して形成された環状段差からなり、前記区画部材24の移動を規制する規制部としてのストッパ部23Dとを含んで構成されている。
【0031】
また、外側筒部23Bの内周面23B1 は、円筒状に形成されている。内側突部23Cの下面は、後述のスペーサ26、座金27との間で環状平板24A、弾性ディスク25を挟持し、締結ボルト16の外周側に環状平板24Aと弾性ディスク25とを位置決め固定している。
【0032】
そして、蓄圧機構21の可変室Eは、蓄圧ケース23の蓋部23A、外側筒部23B、内側筒部23Cおよびストッパ部23Dと区画部材24との間に閉塞空間として形成され、可変室E内には、例えば空気、窒素ガス等の気体が外部から遮断された状態で封入されている。
【0033】
区画部材24は、弾性ディスク25と同様に弾性金属板を用いて形成された環状平板24Aと、該環状平板24Aの下面外周側に焼付け等の手段を用いて固着され外側筒部23Bの内周側に締代を持って嵌合された弾性シール体24Bとにより構成されている。そして、弾性シール体24Bは、ゴム等の弾性材料を用いて厚肉なリング状に形成され、外側のボトム側油室Cに対して内側の可変室Eを気液密にシールしている。
【0034】
また、環状平板24Aと弾性シール体24Bからなる区画部材24は、ボトム側油室C内の圧力が変化するときに、これに追従して可変室Eの体積を増減させるように弾性変形し、外側筒部23Bの内周面に沿って上,下方向に変位できる構成となっている。そして、弾性ディスク25は、区画部材24が上,下方向に変位するときに環状平板24Aと共に撓み変形し、区画部材24の変位に対する弾性的な抵抗力を、その板厚等に応じて調整する機能を有している。
【0035】
また、蓄圧ケース23のストッパ部23Dは、区画部材24の環状平板24Aが上向きに撓んで弾性変形したときに、該環状平板24Aの外周側に接触、当接してこれ以上の変形を規制し、環状平板24Aの過剰な変形を抑えて耐久性、寿命を高める機能を有している。なお、図2、図3中では、環状平板24Aを2枚のディスクにより形成しているが、1枚または3枚以上のディスクを用いて形成してもよいものである。
【0036】
26は弾性シール体24Bの径方向内側に配置されたスペーサで、該スペーサ26は、図3に示すように上,下の座金27,28と共に締結ボルト16の外周側に挿通して設けられ、ボトムバルブ14のチェックバルブ17と蓄圧機構21の環状平板24Aとの間に上,下方向の空間を確保している。即ち、上側の座金27は、蓄圧機構21の環状平板24Aとスペーサ26との間に介挿され、下側の座金28は、ボトムバルブ14のチェックバルブ17とスペーサ26との間に介挿されている。そして、上側の座金27は、下側の座金28よりも板厚が厚く形成されている。
【0037】
ここで、チェックバルブ17は、蓄圧ケース23の外側筒部23Bに当接する位置まで開弁でき、外側筒部23Bの下面により最大開度が規制される。また、区画部材24の環状平板24Aと弾性シール体24Bとは、外側筒部23Bの下面とチェックバルブ17との間の隙間を介してボトム側油室C内の圧力を受圧し、このときのボトム側油室C内の圧力に応じて可変室E内の体積を増減させるものである。
【0038】
第1の実施の形態による油圧緩衝器は上述の如き構成を有するもので、次に、内筒4の下端側に設けるボトムバルブ14と蓄圧機構21との組立て手順について説明する。
【0039】
まず、ボトムバルブ14を組立てるときには、バルブボディ15の中心側に締結ボルト16のねじ部16B側を挿通し、バルブボディ15の弁座15B側と締結ボルト16の頭部16Aとの間で、ディスクバルブ18、座金19およびリテーナ20を軸方向両側から挟持する。また、バルブボディ15を貫通して上向きに突出する締結ボルト16のねじ部16B側には、座金28、スペーサ26、座金27、区画部材24の環状平板24A、弾性ディスク25、蓄圧ケース23を順次下側に向けて挿通する。
【0040】
次に、この状態で締結ボルト16のねじ部16B側にはナット22を螺合し、該ナット22の締付け作業を行うことにより、バルブボディ15の弁座15A側とスペーサ26との間で座金28を介してチェックバルブ17を挟持し、蓄圧ケース23の内側突部23Cとスペーサ26との間には、区画部材24の環状平板24Aと弾性ディスク25とを座金27を介して上,下方向から軸方向で挟持するように固定する。
【0041】
そして、図2に示すようにボトムバルブ14と蓄圧機構21とを一体物として組立てた状態で、内筒4の下端側内周にバルブボディ15の外周側を図2に示す如く嵌合して固定し、蓄圧機構21の蓄圧ケース23をナット22等と共に内筒4内に装入した状態に配置する。次に、図2に示すように、ボトムバルブ14のバルブボディ15をボトムキャップ2内に嵌合して設けると共に、内筒4を外筒1内に固定して設け、外筒1と内筒4との間に環状のリザーバ室Aを形成する。そして、内筒4内には、図1に示すようにピストン5によりロッド側油室Bとボトム側油室Cとを画成する。
【0042】
次に、上述の如く組立てられる油圧緩衝器は、ピストンロッド7の上端側が車両の車体側に取付けられ、ボトムキャップ2側の取付部材29(図1参照)が車輪側に取付けられる。そして、車両の走行時には、路面の凹凸等により上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド7が外筒1から伸長、縮小するように変位し、ピストン5の減衰力発生機構6A,6B、ボトムバルブ14のディスクバルブ18等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。
【0043】
即ち、ピストンロッド7が伸長行程にある場合には、ロッド側油室B内がボトム側油室Cよりも高圧となるので、ロッド側油室B内の圧油が減衰力発生機構6Aを介してボトム側油室C内に流通するときに、伸長側の減衰力を発生することができる。また、このときにはピストンロッド7が内筒4から外側に向けて進出するように変位する。このため、ボトム側油室C内はリザーバ室Aよりも圧力が低くなり、リザーバ室A内の油液がボトムバルブ14のチェックバルブ17を介してボトム側油室C内に、ピストンロッド7の進出体積分を補償するように流入する。
【0044】
一方、ピストンロッド7の縮小行程では、ピストンロッド7が内筒4内へと進入し、ボトム側油室C内がロッド側油室Bよりも高圧になるので、ボトム側油室C内の圧油がピストン5の減衰力発生機構6Bを介してロッド側油室B内に流通するときに、縮小側の減衰力を発生することができる。また、このときにはピストンロッド7の進入体積分に相当する分量の油液が、ボトム側油室Cからボトムバルブ14のディスクバルブ18を介してリザーバ室A内に流入する。
【0045】
これにより、リザーバ室Aは、ピストンロッド7の進入体積分だけ油液量が増加し、内部のガスを加圧するように圧縮してロッド進入体積分の補償を行う。また、ボトムバルブ14のディスクバルブ18は、ボトム側油室C内の圧油がボトム側の空間部D、リザーバ室Aに向けて流通するときに、縮小側の減衰力を発生することができる。
【0046】
ところで、ボトムバルブ14を備えた油圧緩衝器の場合、バネ上共振周波数付近で振動した際に、ピストンロッド7が縮小行程から伸長行程に反転するときに、ボトムバルブ14のチェックバルブ17が開く。そして、チェックバルブ17の開弁に伴ってリザーバ室A内の油液がボトム側の空間部Dからボトム側油室C側に向けて流れ込む。これにより、内筒4内のボトム側油室Cは内部の圧力が急激に変動し(圧力の微分値が大きく変化する)、これに伴った振動がピストンロッド7に発生し易くなり、コトコト音と呼ばれる異音の発生の一因となっている。このコトコト音は、バネ上共振周波数付近で振動した際に、運転者に感じられる。
【0047】
そこで、第1の実施の形態では、内筒4のボトム側油室C内に蓄圧機構21を設け、該蓄圧機構21の内部に形成した可変室Eは、その体積がボトム側油室C内の圧力変化に応じて増減されることにより、コトコト音の発生を低減できるようにしている。即ち、蓄圧機構21は、ボトムバルブ14の締結ボルト16にナット22を介して固定された有蓋筒状の蓄圧ケース23と、該蓄圧ケース23との間で体積が可変な可変室Eを区画しボトム側油室C内の圧力変化に追従して蓄圧ケース23内を上,下方向に変位する区画部材24と、該区画部材24の変位に対して弾性的な抵抗力を与える弾性ディスク25とにより構成している。
【0048】
そして、ピストンロッド7の縮小行程ではボトム側油室C内の圧力が上昇するので、環状平板24Aと弾性シール体24Bとからなる区画部材24は、蓄圧ケース23の外側筒部23Bの下面とチェックバルブ17との間の隙間を介してボトム側油室C内の圧力を受圧し、このときのボトム側油室C内の圧力に応じて可変室E内の体積を減少させるように上向きにストッパ部23Dと当接するまで変位する。
【0049】
このため、蓄圧機構21は、区画部材24、弾性ディスク25の弾性的な撓み量と可変室Eの体積減少分とに相当するエネルギを蓄圧した状態となる。なお、蓄圧ケース23の外側筒部23Bの下面とチェックバルブ17との間の隙間は、円周状に広い面積で開口しており、その内部の圧力は、その他のボトム側油室C内と同圧となる。
【0050】
次に、この状態でピストンロッド7が伸長行程に切り替わると、ボトム側油室C内の圧力がこれに伴って低下する。このため、蓄圧機構21の可変室Eは、これに応じて体積が増加し、前述の如く区画部材24、弾性ディスク25および可変室Eに蓄えたエネルギを開放することにより、ボトム側油室C内での急激な圧力変動(圧力の微分値の変化)を抑えることができる。
【0051】
特に、ボトムバルブ14のチェックバルブ17が開いて油液がボトム側油室C内に流れ込む状態と可変室Eの体積が増加する状態とが重なると、リザーバ室Aから空間部Dを介してボトム側油室C内に流れ込む油液の流量を、可変室Eの体積増加分だけ減少させることができる。この結果、チェックバルブ17が開く際の油液の流れ、これに伴うボトム側油室C内の急激な圧力変動(圧力の微分値の変化)を緩和することができ、ピストンロッド7の振動に伴うコトコト音の発生を小さく抑えることができる。
【0052】
このように、本発明にあっては、チェックバルブ17の開弁に合わせて、弾性ディスク25および可変室Eに蓄えたエネルギの開放を行う必要があるので、ピストンロッド7が伸長行程に切り替わった直後に開放が完了するように弾性ディスク25のバネ特性及び弾性ディスク25の移動に対する抵抗力(弾性シール体24Bの摩擦力)が調整されている。特に、縮小行程に切替ってから、ピストン速度が増加していく過程で弾性ディスク25が動き続けると、周波数感応型油圧緩衝器のように、減衰力特性の低下してしまうので望ましくはない。
【0053】
よって、弾性ディスク25が最大に移動した際の可変室Eの変化する容積Vは、ピストン5の面積をSとすると、V/S<1mm程度と設定することで、ピストン5の微動で弾性ディスク25の移動が完了するので、ミクロには減衰力特性は低下するが、運転者の体感としての減衰力低下をなくすことができる。なお、V/S=0.05mm〜0.2mm程度でコトコト音の発生を小さく抑えることができる。
【0054】
また、蓄圧機構21の区画部材24を、弾性金属板を用いて形成された環状平板24Aと、該環状平板24Aの下面外周側に焼付け等の手段を用いて固着され外側筒部23Bの内周側に締代を持って嵌合された弾性シール体24Bとにより構成している。このため、区画部材24の弾性シール体24Bは、ボトム側油室C内の圧力変化に追従して移動するときに、外側筒部23Bの内周面23B1 に対して摩擦接触し、区画部材24の変位に対して摩擦抵抗を与えることができ、両者の間でのシール性能を高めると共に、摩擦抵抗によるエネルギの蓄積、蓄圧効果も高めることができる。
【0055】
また、蓄圧ケース23の内側突部23Cと区画部材24との間には弾性ディスク25を設けることにより、区画部材24の変位、蓄圧動作に弾性的な抵抗力を与えることができる。そして、弾性ディスク25の板厚、枚数等を適宜に変えることにより、区画部材24の変位に対する弾性的な抵抗力、蓄圧のエネルギを調整することができる。
【0056】
さらに、蓄圧ケース23の蓋部23Aには、区画部材24の移動、変位が過大になるのを制限するストッパ部23Dを設けているので、区画部材24の環状平板24Aが上向きに撓んで弾性変形したときに、該環状平板24Aの外周側がストッパ部23Dに当接することにより、環状平板24Aの過剰な変形を抑えることができ、区画部材24の耐久性、寿命を高めることができる。
【0057】
なお、上記第1の実施の形態において、可変室E内の圧力により容積が変化する弾性体、例えば内部が空洞のOリング等を配置することにより、可変室E内のガスが漏れる虞れがなくなるので、弾性シール体24Bを廃止することができる。
【0058】
次に、図3は本発明の第2の実施の形態を示している。該第2の実施の形態の特徴は、蓄圧機構の可変室をリザーバ室に連通させ、該リザーバ室の油液を可変室内に導く構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0059】
図中、31は第2の実施の形態で採用した蓄圧機構で、該蓄圧機構31は、第1の実施の形態で述べた蓄圧機構21と同様に、有蓋筒状の蓄圧ケース23と、該蓄圧ケース23との間に体積の可変室Eを区画する区画部材24と、弾性ディスク25とを含んで構成されている。しかし、この場合の蓄圧機構31は、可変室E内にリザーバ室Aの油液を導入している点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0060】
32は締結ボルト16に形成された軸方向の油穴で、該油穴32は、締結ボルト16の頭部16A側端面から軸方向の途中部位まで延びる有蓋穴として形成されている。そして、油穴32は、ボトム側の空間部D、バルブボディ15の各油通路15Eを介してリザーバ室(図2参照)に常時連通している。
【0061】
33は締結ボルト16に形成された径方向孔で、該径方向孔33は、後述の環状溝34と油穴32との間に位置し、両者を常時連通させる通路の一部を構成している。そして、径方向孔33は、締結ボルト16の油穴32に比較して油液の流路面積が小さく形成され、内部を流通する油液に対して絞り抵抗を与える絞り部を構成している。
【0062】
34は蓄圧ケース23の内周面に設けられた環状溝で、該環状溝34は、断面コ字形状をなして形成され、径方向孔33の位置で締結ボルト16の外周を全周にわたって取囲んでいる。そして、環状溝34は、径方向孔33を介して締結ボルト16の油穴32に常時連通している。
【0063】
35は蓄圧ケース23の内側突部23Cに形成された複数の油溝で、該各油溝35は、環状溝34から径方向外側に向けて放射状に延びる切欠き溝として形成されている。そして、各油溝35、蓄圧ケース23と区画部材24との間に形成された可変室Eを環状溝34、径方向孔33を介して締結ボルト16の油穴32に常時連通させる。即ち、各油溝35は、環状溝34、径方向孔33および油穴32と共に可変室Eをリザーバ室Aに連通させる通路を構成し、径方向孔33は、この通路途中に位置する絞り部を構成している。
【0064】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、蓄圧機構31の可変室Eをリザーバ室Aに連通させ、該リザーバ室A内の油液を可変室E内に導くことにより、この可変室Eを作動液である油液で満たす構成としている。
【0065】
このように、蓄圧機構31の可変室Eを油液で満たすことにより、油液の温度変化等に影響されて区画部材24の初期作動位置が変動する等の問題をなくすことができる。即ち、図2に示す第1の実施の形態では、可変室Eが外部に対して密閉され空気等の気体で満たされているため、油圧緩衝器の温度変動等に伴う内圧変動の影響で、区画部材24の初期の作動位置が変動してしまう懸念がある。しかし、第2の実施の形態では、可変室Eをリザーバ室Aと連通させることにより、上記の温度変動等の影響をなくすことができる。
【0066】
また、第2の実施の形態では、可変室Eとリザーバ室Aとを連通させる通路途中に絞り部としての径方向孔33を設けているため、ピストンロッド7の縮小行程では、区画部材24の作動、変位に伴って可変室Eの体積が増減するときに径方向孔33を流通する油液に対して絞り抵抗力を発生できる。これにより、ボトム側油室Cの圧力の上昇遅れが抑制され、減衰力応答性の悪化を最小限にすることができる。
【0067】
さらに、ピストンロッド7が縮小行程から伸長行程に反転するときに、蓄圧機構31の可変室Eによる蓄圧の開放が径方向孔33の絞り作用で遅れることにより、ボトムバルブ14のチェックバルブ17が開いてリザーバ室Aから油液がボトム側油室C側に流れ込む状態と前記蓄圧の開放とが重なるタイミングを、径方向孔33の孔径等に応じて調整することも可能となり、これによってもコトコト音の発生を低減、抑制することができる。
【0068】
次に、図4は本発明の第3の実施の形態を示している。該第3の実施の形態の特徴は、蓄圧機構の可変室をリザーバ室に連通させると共に、可変室内には弾性部材を設ける構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0069】
図中、41は第3の実施の形態で採用した蓄圧機構で、該蓄圧機構41は、第1の実施の形態で述べた蓄圧機構21とほぼ同様に構成され、ボトム側油室C内の圧力変化に応じて体積が増減される可変室Eを有している。しかし、この場合の蓄圧機構41は、後述の蓄圧ケース42、区画部材43、内側リング部材44および弾性部材としての弾性リング45とを含んで構成されている。また、締結ボルト16には、前述した第2の実施の形態と同様に油穴32が形成され、該油穴32は、後述の径方向孔46等を介して可変室E内に連通している。
【0070】
42は蓄圧機構41の一部を構成する蓄圧ケースで、該蓄圧ケース42は、第1の実施の形態で述べた蓄圧ケース23とほぼ同様に構成されているものの、この場合の蓄圧ケース42は、上,下が反転して締結ボルト16に取付けられた有底筒状体として形成されている。蓄圧ケース42は、内周側に締結ボルト16が挿通された環状の底部42Aと、該底部42Aの外周側から軸方向上向きに延びた外側筒部42Bと、底部42Aの径方向中間部に位置し上向きに突出した環状のストッパ部42Cと、該ストッパ部42Cと外側筒部42Bとの間で底部42Aに形成された環状の凹溝部42Dとを含んで構成されている。
【0071】
そして、底部42Aの内周側には、ストッパ部42Cの径方向内側に位置して後述の内側リング部材44が嵌合状態で設けられている。また、底部42Aの下面とチェックバルブ17との間には、第1の実施の形態で述べた座金28が配設されている。ここで、チェックバルブ17は、蓄圧ケース42の底部42Aの下面に当接する位置まで開弁でき、底部42Aの下面外周側により最大開度が規制される。
【0072】
43は蓄圧ケース42の上面側に締代をもって配置された区画部材で、該区画部材43は、第1の実施の形態で述べた区画部材24と同様に、環状平板43Aと弾性シール体43Bとにより構成され、蓄圧ケース42との間に体積の可変室Eを区画している。しかし、この場合の区画部材43は、第1の実施の形態とは逆向きに上,下を反転させて蓄圧ケース42上に取付けられている。
【0073】
環状平板43Aと弾性シール体43Bとからなる区画部材43は、可変室Eをボトム側油室Cに対して遮断し、この状態でボトム側油室C内の圧力変化に追従して上,下方向に移動する。ここで、区画部材43の環状平板43Aは、その内周側が後述の内側リング部材44と座金48との間に挟持され、環状平板43Aの外周側は、後述の弾性リング45上に配置されている。そして、区画部材43の環状平板43Aと弾性シール体43Bとは、後述のスペーサ47側からボトム側油室C内の圧力を受圧し、このときのボトム側油室C内の圧力に応じて可変室E内の体積を増減させるものである。
【0074】
44は蓄圧ケース42の内周側に設けられた内側リング部材で、該内側リング部材44は、環状のストッパ部42Cよりも高さ寸法が大きく形成され、ストッパ部42Cの径方向内側に位置して底部42Aの内周側に嵌合状態で固定されている。内側リング部材44は、締結ボルト16の外周側に全周にわたる隙間をもって挿通され、後述の径方向孔46を径方向外側から取囲む位置に配置されている。
【0075】
また、内側リング部材44は、例えば周方向で複数個に分割された分割リングからなり、これらの各リング間には複数の連通路44Aが形成されている。そして、これらの連通路44Aは、後述の径方向孔46を介して締結ボルト16の油穴32と常時連通し、可変室E内にリザーバ室A(図2参照)内の油液を導くものである。
【0076】
45は弾性部材としての弾性リングで、該弾性リング45は、ゴム等の弾性材料を用いたOリング等により構成されている。弾性リング45は、蓄圧ケース42の凹溝部42D内に装着され、環状のストッパ部42Cよりも予め決められた寸法分だけ上向きに突出している。そして、弾性リング45は、区画部材43が上,下方向に変位するときに環状平板43Aと共に撓み変形し、区画部材43の変位に対する弾性的な抵抗力を発生させると共に、区画部材43の変位、作動に対し弾性変形する特性、ばね特性を非線形に増大させる機能を有している。
【0077】
また、蓄圧ケース42のストッパ部42Cは、区画部材43の環状平板43Aが下向きに撓んで弾性変形したときに、該環状平板43Aの下面側に接触してこれ以上の変形を規制し、環状平板43Aの過剰な変形を抑えて耐久性、寿命を高める機能を有している。なお、図5中では、環状平板43Aを2枚のディスクにより形成しているが、1枚または3枚以上のディスクを用いて形成してもよいものである。
【0078】
46は締結ボルト16に形成された径方向孔で、該径方向孔46は、内側リング部材44の各連通路44Aと油穴32との間に位置し、両者を常時連通させる通路の一部を構成している。そして、径方向孔46は、締結ボルト16の油穴32に比較して油液の流路面積が小さく形成され、内部を流通する油液に対して絞り抵抗を与える絞り部を構成している。
【0079】
47は弾性シール体43Bの径方向内側に配置されたスペーサで、該スペーサ47は、座金48と共に締結ボルト16の外周側に挿通して設けられている。そして、スペーサ47は、締結ボルト16のねじ部16Bにナット22を締結したときに、蓄圧ケース42側の内側リング部材44と座金48の間で区画部材43の環状平板43Aを挟持し、ナット22の締付力を環状平板43Aに対し安定して作用させるものである。
【0080】
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、前述した第2の実施の形態と同様に可変室Eをリザーバ室Aに連通させることにより、第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施の形態では、区画部材43の作動に対し非線形にばね定数が増大するように弾性リング45を追加して設けることにより、例えば径方向孔46の絞り作用による抵抗力とほぼ同様に、ボトム側油室Cの圧力の上昇遅れを抑制することが可能となり、減衰力応答性の悪化を最小限にすることができる。
【0081】
次に、図5、図6は本発明の第4の実施の形態を示している。該第4の実施の形態の特徴は、可変室とリザーバ室とを連通させる通路の途中に絞り部を設け、該絞り部による抵抗力を、前記可変室の体積が減少するときに大きく、体積が増加するときには小さくする構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0082】
図中、51は第4の実施の形態で採用した蓄圧機構で、該蓄圧機構51は、第1の実施の形態で述べた蓄圧機構21とほぼ同様に構成され、ボトム側油室C内の圧力変化に応じて体積が増減される可変室Eを有している。そして、蓄圧機構51は、後述の蓄圧ケース52、区画部材24および弾性ディスク25等を含んで構成されている。
【0083】
しかし、この場合の蓄圧機構51は、後述する蓄圧ケース52の形状が異なり、蓄圧ケース52内に形成される通路途中に後述の可変絞り部55が設けられている。また、締結ボルト16には、前述した第2の実施の形態と同様に油穴32が形成され、該油穴32は、後述の径方向孔58等を介して可変室E内に連通している。
【0084】
52は蓄圧機構51の一部を構成する蓄圧ケースで、該蓄圧ケース52は、第1の実施の形態で述べた蓄圧ケース23とほぼ同様に構成され、環状の蓋部52Aと、内周面が屈曲面52B1 となった外側筒部52B等とを有している。しかし、この場合の蓄圧ケース52は、蓋部52Aの下面側が合計4段の段付凹部となり、その内周側は締結ボルト16の周囲に位置する環状凹部52Cとして形成されている。
【0085】
また、蓋部52Aと外側筒部52Bとの境界部側には、前記段付凹部の最外周側に位置する環状段差からなるストッパ部52Dが形成され、該ストッパ部52Dと内周側の環状凹部52Cとの間には、該環状凹部52Cの径方向外側に位置する環状通路部52Eと、該環状通路部52Eの径方向外側に位置する環状の中間段部52Fとが形成されている。
【0086】
そして、この中間段部52Fは、環状のストッパ部52Dよりも所定の寸法分だけ高い位置(深い位置)に配置され、環状通路部52Eは、中間段部52Fよりも一段分だけ高い位置(深い位置)に配置されている。また、内周側の環状凹部52Cは、環状通路部52Eよりもさらに1段分だけ高い位置(深い位置)に配置されている。
【0087】
また、蓄圧ケース52のストッパ部52Dは、第1の実施の形態で述べたストッパ部23Dと同様に、区画部材24の環状平板24Aが上向きに撓んで弾性変形したときに該環状平板24Aの外周側に接触、当接し、これ以上の変形を規制すると共に、環状平板24Aの過剰な変形を抑えて耐久性、寿命を高める機能を有している。
【0088】
さらに、蓄圧ケース52の蓋部52Aは、後述する段付リング53の下面側とスペーサ26側の座金27との間で、環状平板24A、弾性ディスク25を後述のばねディスク57、座金54を介して挟持し、締結ボルト16の外周側に環状平板24Aと弾性ディスク25とを位置決め固定している。
【0089】
53は蓄圧ケース52の環状凹部52C内に嵌合して設けられた段付リングで、該段付リング53は、図7に示すように後述の可変絞り部55の逆止弁ディスク56、ばねディスク57を座金54との間で位置決めし、段付リング53の最下面は、ばねディスク57を座金54との間で挟持している。また、段付リング53には、その径方向に延び可変室Eに連通する複数の油溝53Aと、段付リング53の内周側に形成され該油溝53Aを後述の径方向孔58に常時連通させる環状溝53Bとが形成されている。
【0090】
55は蓄圧ケース52と区画部材24との間に段付リング53を介して設けられた可変絞り部で、該可変絞り部55は、例えば図7に示すように、段付リング53の下部外周側に上,下方向で変位可能に嵌合して設けられ可変絞りとして機能する逆止弁ディスク56と、該逆止弁ディスク56を蓄圧ケース52の中間段部52Fに向けて弱いばね力で常時付勢するばねディスク57とにより構成されている。
【0091】
ここで、逆止弁ディスク56は、複数枚のディスクからなり、このうち蓄圧ケース52の中間段部52Fに当接する最上側のディスクには、絞り通路を構成する切欠き56Aが形成されている。そして、図8に示すように可変室E内の体積が減少されるときには、可変室E内の油液が切欠き56Aを介して環状通路部52E側に流通し、このときの油液に対して切欠き56Aは大きな絞り抵抗を与える。
【0092】
一方、可変室E内の体積が増加するときには、油穴32側の油液(リザーバ室Aからの油液)が後述の径方向孔58、環状溝53Bおよび油溝53Aを介して環状通路部52E側に補給されるので、逆止弁ディスク56がばねディスク57を介して下向きに移動(開弁)し、このときの油液は逆止弁ディスク56と中間段部52Fとの間から可変室E内に流入する。このため、可変室E内に向けて流通する油液に対し、例えば径方向孔58により発生される絞り抵抗は相対的に小さく減少される。
【0093】
58は締結ボルト16に形成された径方向孔で、該径方向孔58は、段付リング53の環状溝53Bと油穴32との間に位置し、両者を常時連通させる。そして、径方向孔58は、蓄圧機構51の可変室Eをリザーバ室A(図2参照)に連通させる通路を、油穴32、段付リング53の環状溝53B、油溝53Aおよび蓄圧ケース52の環状通路部52E等と共に構成している。また、径方向孔58は、例えば逆止弁ディスク56の開弁時に内部を流通する油液に対して絞り抵抗を与え、このときの流路面積は前記切欠き56Aより大きく形成されている。
【0094】
かくして、このように構成される第4の実施の形態でも、前述した第2の実施の形態と同様に可変室Eをリザーバ室Aに連通させることにより、第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第4の実施の形態では、蓄圧ケース52と区画部材24との間に段付リング53を介して可変絞り部55を設け、可変絞り部55の逆止弁ディスク56を段付リング53とばねディスク57との間で上,下方向で変位する可変絞りとして構成している。
【0095】
このため、可変絞り部55の逆止弁ディスク56は、例えば蓄圧ケース52の環状通路部52E側と可変室Eとの間で流通する油液に対し切欠き56Aを介して絞り抵抗力を可変に設定することができ、可変室Eの体積が減少するときには絞り抵抗を大きくし、可変室Eの体積が増加するときには小さくすることができる。
【0096】
即ち、ピストンロッド7(図1参照)の伸長行程でボトム側油室C内の圧力が増加するに伴い、可変室Eの体積が図8に示す如く減少するときには逆止弁ディスク56の切欠き56Aにより大なる絞り抵抗を発生することができる。ピストンロッド7の縮小行程でボトム側油室C内の圧力がリザーバ室Aよりも低下するときには、可変室Eの体積が図9に示す如く増大するに伴って環状通路部52E側から可変室Eに流入する油液により、逆止弁ディスク56が大きく開弁するため、このときの油液に対する絞り抵抗を小さく減じることができる。
【0097】
この結果、第4の実施の形態では、可変絞り部55による油液の絞り抵抗力をピストンロッド7の縮小行程と伸長行程とで独立して調整することができる。これにより、縮小行程での減衰力応答性の悪化対策と伸長行程での区画部材24の作動遅れによる蓄圧開放効果を独立して調整することが可能となる。
【0098】
次に、図7は本発明の第5の実施の形態を示している。該第5の実施の形態の特徴は、蓄圧機構の可変室を画成する区画部材をフリーピストンにより構成したことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0099】
図中、61は第5の実施の形態で採用したベースバルブとしてのボトムバルブで、該ボトムバルブ61は、第1の実施の形態で述べたボトムバルブ14とほぼ同様に構成され、バルブボディ15、チェックバルブ17、ディスクバルブ18、座金19およびリテーナ20等を有している。しかし、この場合のボトムバルブ61は、バルブボディ15の中心側を軸方向に貫通して設けられた固定軸としての締結ボルト62が、第1の実施の形態で述べた締結ボルト16とは異なる形状を有している。
【0100】
ここで、締結ボルト62は、軸方向の一端側に設けられた頭部62Aと、該頭部62Aとは軸方向の反対側に位置し外周側に雄ねじが形成されたねじ部62Bとを有している。締結ボルト62のねじ部62Bには後述する蓄圧機構66の蓄圧ケース67がナットを兼用して螺着され、これにより、チェックバルブ17、ディスクバルブ18および蓄圧機構66等がボトムバルブ61に締結状態で取付けられている。
【0101】
63は締結ボルト62の中心側を軸方向に貫通して設けられた油穴で、該油穴63は、その下端側がバルブボディ15内の空間部Dを介してリザーバ室A(図2参照)に連通している。また、油穴63の上端側は、後述する蓄圧機構66の可変室Eに直接的に開口し、可変室Eに常時連通している。
【0102】
64はチェックバルブ17の開度を規制する環状のリテーナで、該リテーナ64は、後述の蓄圧ケース67とチェックバルブ17との間に弱ばねからなるスプリング65等を介して配設されている。また、リテーナ64には、複数の透し孔64Aが穿設され、これらの透し孔64Aは、リテーナ64の上,下にボトム側油室C(図2参照)内の油液を流通させる。
【0103】
スプリング65は、例えば中心側から放射状をなして延びる十字状または星形状の板ばね部材等により形成され、その周方向にはリテーナ64の各透し孔64Aとチェックバルブ17の各貫通穴17Aとを連通する通路(図示せず)が設けられている。そして、スプリング65は、チェックバルブ17を比較的弱い力で閉弁方向に常時付勢している。
【0104】
66は第5の実施の形態で採用した蓄圧機構で、該蓄圧機構66は、第1の実施の形態で述べた蓄圧機構21とほぼ同様に構成され、ボトム側油室C内の圧力変化に応じて体積が増減される可変室Eを有している。そして、蓄圧機構66は、後述の蓄圧ケース67、区画部材としてのフリーピストン68および弾性ディスク69,70等を含んで構成されている。
【0105】
67は蓄圧機構66の一部を構成する蓄圧ケースで、該蓄圧ケース67は、その下部側が締結ボルト62のねじ部62Bに螺着されるナットを兼用している。また、蓄圧ケース67の上部側には有底な筒状部67Aが一体に形成され、その底部側には環状段部67Bが形成されている。蓄圧ケース67の筒状部67A内には後述のフリーピストン68が上,下方向に摺動可能に挿嵌されている。そして、蓄圧ケース67の筒状部67Aとフリーピストン68の下部との間に可変室Eが形成されている。
【0106】
68は蓄圧ケース67の筒状部67A内に変位可能に設けられた区画部材としてのフリーピストンで、該フリーピストン68には、その上,下両端側に弾性部材としての弾性ディスク69,70が設けられている。また、フリーピストン68の外周側には、シール部材としてのOリング71が設けられ、該Oリング71は、蓄圧ケース67の筒状部67Aとフリーピストン68との間をシールし、可変室E内を後述の連通穴72A(ボトム側油室C)側に対して遮断している。
【0107】
また、弾性ディスク69,70は、ボトム側油室Cと可変室E(即ち、リザーバ室A)との圧力差でフリーピストン68が上,下方向に摺動変位するときに動きに弾性的な抵抗力を与え、その変形量に応じた蓄圧(エネルギの蓄積)作用と蓄圧の開放作用とを行うものである。また、Oリング71は、フリーピストン68に対して弾性的な摺動抵抗を与え、これによっても蓄圧(エネルギの蓄積)作用と蓄圧の開放作用とが行われる。フリーピストン68の上面側には有底穴68Aが形成されている。
【0108】
72は蓄圧ケース67の筒状部67Aに螺着された固定部材としての固定ナットで、該固定ナット72は、蓄圧ケース67の筒状部67A内にフリーピストン68を弾性ディスク69,70と共に装入した状態で、筒状部67Aの外周側に螺合される。これにより、固定ナット72は、下側の弾性ディスク70を蓄圧ケース67の環状段部67Bに上方から押付けると共に、上側の弾性ディスク69をフリーピストン68との間で挟持し、フリーピストン68の抜止めを行っている。また、固定ナット72には、フリーピストン68の有底穴68A内にボトム側油室C(図2参照)を連通させる連通穴72Aが形成されている。
【0109】
かくして、このように構成された第5の実施の形態においても、前述した第2の実施の形態と同様に可変室Eをリザーバ室Aに連通させることにより、第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第5の実施の形態では、蓄圧ケース67の筒状部67A内にフリーピストン68を装入して設ける構成としている。
【0110】
このため、ボトム側油室Cと可変室E(即ち、リザーバ室A)との圧力差でフリーピストン68が上,下方向に摺動変位するときに、弾性ディスク69,70によって弾性的な抵抗力を与え、その変形量に応じた蓄圧(エネルギの蓄積)作用と蓄圧の開放作用とを行うことができる。また、Oリング71によってもフリーピストン68に対して弾性的な摺動抵抗を与え、蓄圧作用と蓄圧の開放作用とを行うことができる。
【0111】
なお、前記第1の実施の形態では、外筒1と内筒4との間にリザーバ室Aを形成する構成とした複筒式の油圧緩衝器を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばシリンダ(内筒4に相当)の外部に別体の容器等からなるアキュムレータを接続して設け、その内部にリザーバ室を形成する構成としてもよい。
【0112】
また、前記第3の実施の形態では、蓄圧ケース42の底部42A側に嵌合して設ける内側リング部材44を、周方向で複数個に分割されたリングにより構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、内側リング部材44を例えば単一のリング体として形成し、その径方向に複数の油穴からなる連通路を設ける構成としてもよい。
【0113】
また、前記各実施の形態では、自動車等の車両に設ける液圧緩衝器としての油圧緩衝器を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる液圧緩衝器にも適用することが可能である。
【0114】
以上の実施の形態で述べたように、本発明によれば、シリンダ内の第2室に蓄圧機構を設け、該蓄圧機構の内部に形成した可変室は、その体積が第2室内の圧力変化に応じて増減される構成とすることにより、例えば車両走行時に液圧緩衝器からコトコト音と呼ばれる異音が発生するのを抑制、低減することができる。
【0115】
また、本発明によれば、蓄圧機構をシリンダ内に位置してベースバルブに設ける構成としている。これにより、蓄圧機構をベースバルブに安定して取付けることができ、蓄圧機構はシリンダ内の第2室の圧力変化に応じて可変室の体積を増減することができる。
【0116】
また、本発明によれば、蓄圧機構は、第2室に対して可変室を遮断した状態で区画し前記第2室内の圧力変化に追従して移動する区画部材と、該区画部材の動きに弾性的な抵抗力を与える弾性部材とを含んで構成している。これにより、例えば蓄圧ケースと区画部材との間には設けられる弾性部材は、区画部材の変位、蓄圧動作に弾性的な抵抗力を与えることができ、区画部材の変位に対する弾性的な抵抗力、蓄圧のエネルギを調整することも可能となる。
【0117】
また、本発明によれば、前記区画部材には、前記第2室内の圧力変化に追従して移動するときに摩擦抵抗を与える構成としている。これにより、区画部材の変位に対して摩擦抵抗を与えることができ、蓄圧ケースと区画部材との間でのシール性能を高めると共に、摩擦抵抗によるエネルギの蓄積、蓄圧効果も高めることができる。
【0118】
また、本発明によれば、前記蓄圧機構は、前記区画部材の移動を制限するストッパ部を有する構成としている。これにより、ストッパ部は、区画部材の移動、変位が過大になるのを制限するので、区画部材の過剰な変形を抑えることができ、区画部材の耐久性、寿命を高めることができる。
【0119】
一方、本発明によれば、前記蓄圧機構の可変室は前記リザーバ室に連通する構成としている。これにより、蓄圧機構の可変室を作動液で満たすことができ、作動液の温度変化等に影響されて区画部材の初期作動位置が変動する等の問題をなくすことができる。
【0120】
また、本発明によると、前記蓄圧機構には、前記可変室をリザーバ室に連通させる通路途中に位置し、前記区画部材の移動に対して抵抗力を発生させる絞り部を設ける構成としている。これにより、ピストンロッドの縮小行程では、区画部材の作動、変位に伴って可変室の体積が増減するときに絞り部を流通する作動液に対して絞り抵抗力を発生できる。このため、第2室の圧力の上昇遅れが抑制され、減衰力応答性の悪化を最小限にすることができる。また、ピストンロッドが縮小行程から伸長行程に反転するときに、蓄圧機構の可変室による蓄圧の開放が絞り部の絞り作用で遅れることにより、ベースバルブのチェックバルブが開いてリザーバ室から作動液が第2室側に流れ込む状態と前記蓄圧の開放とが重なるタイミングを、絞り部の孔径等に応じて調整することも可能となり、これによってもコトコト音の発生を低減、抑制することができる。
【0121】
さらに、本発明によると、前記絞り部による抵抗力は、前記可変室の体積が減少するときに大きく、体積が増加するときには小さくする構成としている。これによって、絞り部により発生する抵抗力をピストンロッドの縮小行程と伸長行程とで独立して調整することができ、絞り抵抗を縮小行程では大きくし、伸長行程では小さくすることができる。この結果、縮小行程での減衰力応答性の悪化対策と伸長行程での区画部材の作動遅れによる蓄圧エネルギの開放効果とを独立して調整することが可能となる。
【0122】
なお、上記実施の形態では、減衰力調整機構が設けられていない所謂標準油圧緩衝器を示したが、これに限らず、減衰力調整機構を有する緩衝器に設けてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 外筒
1A かしめ部
2 ボトムキャップ
3 蓋体
4 内筒(シリンダ)
5 ピストン
7 ピストンロッド
9 ロッドガイド
11 ロッドシール
12 リップシール(チェック弁)
13 油溜め室
14 ボトムバルブ
15 バルブボディ(ベース部材)
16,62 締結ボルト(固定軸)
17 チェックバルブ(吸込バルブ)
21,31,41,51,66 蓄圧機構
22 ナット
23,42,52,67 蓄圧ケース
23D,42C,52D ストッパ部
24,43 区画部材
24A,43A 環状平板
24B,43B 弾性シール体
25,69,70 弾性ディスク(弾性部材)
32,63 油穴(通路)
33,46 径方向孔(絞り部)
35,53A 油溝(通路)
44 内側リング部材
44A 連通路(通路)
45 弾性リング(弾性部材)
55 可変絞り部
56 逆止弁ディスク
56A 切欠き(絞り部)
68 フリーピストン(区画部材)
A リザーバ室
B ロッド側油室(第1室)
C ボトム側油室(第2室)
E 可変室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が封入されたシリンダと、
該シリンダ内と連通して設けられたリザーバ室と、
前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され前記シリンダ内に第1室と第2室とを画成するピストンと、
一端側が前記シリンダ内で該ピストンに固定され他端側が前記シリンダ外にロッドガイドを介して突出したピストンロッドと、
前記シリンダの一端側に設けられ前記シリンダ内の第2室を前記リザーバ室に画成するベース部材と、
前記ベース部材に設けられ、前記リザーバ室から前記第2室への作動液の流れを許す吸込バルブと、
前記ベース部材に設けられ、前記第2室内の圧力変化に応じて可動する区画部材によって区画された可変室を有する蓄圧機構とを備え、
前記区画部材は、前記第2室内に配置されたことを特徴とする液圧緩衝器。
【請求項2】
前記区画部材を前記吸込バルブと対向して設ける構成としてなる請求項1に記載の液圧緩衝器。
【請求項3】
前記区画部材の動きに弾性的な抵抗力を与える弾性部材を含んで構成してなる請求項1または2に記載の液圧緩衝器。
【請求項4】
前記区画部材には、前記第2室内の圧力変化に追従して移動するときに摩擦抵抗を与える構成としてなる請求項3に記載の液圧緩衝器。
【請求項5】
前記蓄圧機構は、前記区画部材の移動を制限するストッパ部を有する構成としてなる請求項3または4に記載の液圧緩衝器。
【請求項6】
前記蓄圧機構の可変室は前記リザーバ室に連通する構成としてなる請求項1,2,3,4または5に記載の液圧緩衝器。
【請求項7】
前記蓄圧機構には、前記可変室をリザーバ室に連通させる通路途中に位置し、前記区画部材の移動に対して抵抗力を発生させる絞り部を設ける構成としてなる請求項6に記載の液圧緩衝器。
【請求項8】
前記絞り部による抵抗力は、前記可変室の体積が減少するときに大きく、体積が増加するときには小さくする構成としてなる請求項6または7に記載の液圧緩衝器。
【請求項9】
前記可変室の変化する容積を前記ピストンの面積で割った値は、1mm以下であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載の液圧緩衝器。
【請求項10】
作動液が封入されたシリンダと、
該シリンダ内と連通して設けられたリザーバ室と、
前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され前記シリンダ内に第1室と第2室とを画成するピストンと、
一端側が前記シリンダ内で該ピストンに固定され他端側が前記シリンダ外にロッドガイドを介して突出したピストンロッドと、
前記シリンダの一端側に設けられ前記シリンダ内の第2室を前記リザーバ室に画成するベース部材と、
前記ベース部材に設けられ、前記第2室側に延びる締結ボルトと、
前記締結ボルトに挿通されて前記ベース部材に設けられ、前記リザーバ室から前記第2室への作動液の流れを許すディスク状の吸込バルブと、
前記締結ボルトに挿通されて前記ベース部材に設けられた有底筒状の蓄圧ケースと、
前記締結ボルトに挿通されて前記蓄圧ケースの開口端側に設けられ、前記第2室と前記蓄圧ケース内を画成する環状平板で弾性変形する区画部材と、からなることを特徴とする液圧緩衝器。
【請求項11】
前記区画部材には、前記蓄圧ケースとの間をシールする弾性シール体を設けたことを特徴とする請求項10に記載の液圧緩衝器。
【請求項12】
前記締結ボルトには軸方向の油穴が形成され、前記油穴により、前記蓄圧ケース内と前記リザーバ室を連通させたことを特徴とする請求項10または11に記載の液圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196502(P2011−196502A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65800(P2010−65800)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】