説明

液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物及び感圧性接着シート、並びに光学フィルム

【課題】光学フィルムや光学用部材と感圧性接着剤層との界面における光の全反射を低減することができる感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層を有する感圧性接着シートを提供する。
【解決手段】芳香族環含有共重合性モノマーを単量体単位として含むアクリル系重合体を主成分として含有する液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物であって、乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49以上且つ1.60以下である液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物。芳香族環含有共重合性モノマーが、芳香族環含有アクリル系モノマー及び/又はスチレン系モノマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の表示パネルに光学フィルムを貼着固定するなど、光学フィルムの貼り合わせに使用する感圧性接着剤組成物、感圧性接着シート及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射防止フィルムや導電性フィルム(ITOフィルム)などの各種光学フィルムを、液晶表示装置等の表示パネルへ貼り合わせるときに使用する感圧性接着剤組成物としては、アクリル系ポリマーからなる接着剤組成物が使用されている。
【0003】
これらの光学フィルムを貼着した表示パネルは、移動体通信端末(携帯電話機、PHS機などのモバイル型電話機端末や、PDA端末等)に広く用いられている。
【0004】
近年、移動体通信端末を中心に、機器の軽量化や薄型化が求められている。このような軽量化や薄型化を目的とした光学フィルムとして、フィルム導光板が注目されている。「フィルム導光板」は、液晶表示装置に用いられて、液晶パネル内部を横方向に伝送する伝送光を、その上面又は下面側に出射する機能を有し、液晶表示装置の側面に光源を配置した場合に容易に照明を行いうる光学フィルムである。フィルム導光板は、従来型の導光板に比較して厚みが薄いため、機器の軽量化や薄型化に有効と考えられている。
【0005】
また、光の有効利用および消費電力の抑制又は低減などの要求特性の高度化が進行している。例えば、液晶表示装置の表示パネルは、液晶とともに、ガラス基板、偏光板(フィルム)、位相差板(フィルム)等の複数の光学用部材を積層した構成となっている。そして、光学フィルムもこれらの表示パネルを構成している光学用部材と貼り合わせて使用されるため、光の有効利用という観点からは、光学フィルム/感圧性接着剤層/光学用部材の各界面において全反射を防止することが求められている。
【0006】
一般的に、光学フィルムや光学用部材に使用されている材料の屈折率は、例えば、ガラスの場合は1.52程度、メタクリル系樹脂の場合は1.51程度、ポリカーボネートの場合は1.54程度である。しかしながら、従来の感圧性接着剤組成物は、乾燥後及び/又は硬化後の屈折率が1.47前後であり、1.49以上の高屈折率を有していない。そのため、光学フィルム/感圧性接着剤層の界面、あるいは、感圧性接着剤層/光学用部材の界面に屈折率差が生じ、浅い角度で全反射が起こり、光の有効利用を妨げることが問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、感圧性接着剤を使用して、各種光学フィルムを表示装置を構成する各種光学用部材に貼り合わせた場合における、光学フィルム/感圧性接着剤層/光学用部材の各界面における光の全反射を低減することができる感圧性接着剤組成物及び該感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層を有する感圧性接着シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、乾燥後及び/又は硬化後の屈折率が、光学フィルムや光学用部材と同等の高屈折率を有する感圧性接着剤組成物及び該感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層を有する感圧性接着シートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、光学フィルム/感圧性接着剤層/光学用部材の各界面における全反射を低減して、光を有効利用することができる光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、感圧性接着剤組成物の単量体単位として特定のモノマー成分を用いると、乾燥後及び/又は硬化後の屈折率が高いものとなり、光学フィルムや光学用部材の屈折率に近い感圧性接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、芳香族環含有共重合性モノマーを単量体単位として含むアクリル系重合体を主成分として含有する液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物であって、乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49以上且つ1.60以下である液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物を提供する。
【0010】
また、本発明では、芳香族環含有共重合性モノマーが、芳香族環含有アクリル系モノマー及び/又はスチレン系モノマーであることが好ましい。
【0011】
本発明では、芳香族環含有アクリル系モノマーが、下記式(1)で表される芳香族環含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基である。R2はアルキレン基、または−R3−(OR3n−である。ここでR3はアルキレン基であり、nは正の整数である。また、Xはアリール基又はアリールオキシ基である。)
【0012】
本発明は、また、液晶パネルに光学フィルムを貼着固定するための感圧性接着シートであって、剥離ライナー上に、前記液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層が形成されている液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着シートを提供する。さらに、液晶パネルに貼着固定するための光学フィルムの一方の面に、前記液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層が形成されている光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感圧性接着剤組成物の単量体単位として特定のモノマー成分を用いているので、感圧性接着剤組成物の乾燥後及び/又は硬化後の屈折率は高屈折率となり、反射防止フィルムや導電性フィルム(ITOフィルム)、フィルム導光板などの光学フィルムや、液晶パネルを構成するガラス基板等の光学用部材の屈折率とほぼ同等である。
そのため、光学フィルム/感圧性接着剤層/光学用部材の各界面における屈折率差が低下し、全反射を最小限に抑えることができる。従って、該感圧性接着剤組成物を用いた光学フィルムを利用すると、光を有効利用することができ、消費電力を大きく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】モノマー成分のフェノキシエチルアクリレートの配合量と、感圧性接着剤組成物の乾燥後及び/又は硬化後の屈折率との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の感圧性接着シートを示す概略断面図である。
【図3】本発明の光学フィルムを示す概略断面図である。
【図4】本発明の光学フィルムガラス基板を用いたを液晶パネルに貼り合わせた状態を示した概略断面図である。
【図5】全反射角度・出射光強度比の評価方法における粘着シートの貼り合わせ状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の感圧性接着剤組成物において単量体として用いる芳香族環含有共重合性モノマーとしては、分子内に芳香族環を有している共重合可能なモノマーであれば特に制限されない。芳香族環含有共重合性モノマーとしては、例えば、芳香族環含有エチレン性不飽和単量体を好適に用いることができる。芳香族環含有共重合性モノマーは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0016】
具体的には、芳香族環含有共重合性モノマーとしては、例えば、芳香族環含有アクリル系モノマー、スチレン系モノマーなどが挙げられる。
【0017】
芳香族環含有アクリル系モノマーとしては、芳香族環を分子内に有するアクリル系モノマーであれば特に制限されない。このような芳香族環含有アクリル系モノマーとしては、芳香族環含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。芳香族環含有(メタ)アクリル酸エステルには、例えば、芳香族環含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル((メタ)アクリル酸フェニルエステルなど)などが含まれる。芳香族環含有(メタ)アクリル酸エステルの中でも、特に芳香族環含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0018】
芳香族環含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【化2】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基である。R2はアルキレン基、または−R3−(OR3n−である。ここでR3はアルキレン基であり、nは正の整数である。また、Xはアリール基又はアリールオキシ基である。)
【0019】
2のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜18のアルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基には、炭素数1〜4のアルキレン基が含まれ、特にメチレン基、エチレン基が最適である。
【0020】
3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基などの炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基には、炭素数1〜4のアルキレン基が含まれ、特にメチレン基、エチレン基が最適である。
【0021】
nは正の整数であり、例えば、1〜10の整数である。好ましいnには1〜6程度の整数が含まれる。
【0022】
Xのアリール基には、フェニル基、ナフチル基などが含まれる。また、アリールオキシ基には、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基などが含まれる。Xのアリール基、アリールオキシ基には、置換基が含まれていてもよい。このような置換基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、スルホ基などが挙げられる。Xのアリール基及びアリールオキシ基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。置換基は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
具体的には、式(1)で表される芳香族環含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アリールC1-18アルキル(メタ)アクリレート、アリールオキシC1-18アルキル(メタ)アクリレート、アリールオキシポリC1-6アルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。より具体的には、芳香族環含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0024】
芳香族環含有アクリル系モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
また、芳香族環含有共重合性モノマーにおけるスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。スチレン系モノマーとしてはスチレンが最適である。スチレン系モノマーは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0026】
本発明の感圧性接着剤組成物における主成分として含有するアクリル系重合体において、単量体としては、芳香族環含有アクリル系モノマー及び/又はスチレン系モノマーからなる芳香族環含有共重合性モノマーのみを用いてもよいが、芳香族環含有共重合性モノマー(芳香族環含有アクリル系モノマーやスチレン系モノマーなど)と、該芳香族環含有共重合性モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとを併用してもよい。前記共重合可能なモノマーとして、芳香族環非含有共重合性モノマー(芳香族環非含有エチレン性不飽和単量体)を用いることができる。芳香族環非含有共重合性モノマーは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0027】
前記芳香族環非含有共重合性モノマーとしては、特に制限されないが、芳香族環を含有せず、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適である。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
また、アクリル系感圧性接着剤の改質用モノマーとして知られる各種モノマーのいずれも使用可能である。該改質用モノマーは、芳香族環非含有共重合性モノマーとしても用いることが可能である。このような改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有共重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有共重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有共重合性単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアミノ基含有共重合性単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有共重合性単量体などが挙げられる。改質用モノマーは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0029】
改質用モノマーとしては、ヒドロキシル基含有共重合性単量体、カルボキシル基含有共重合性単量体が好適に用いられる。カルボキシル基含有共重合性単量体の中でも特に好適なものとしてはアクリル酸が挙げられる。
【0030】
カルボキシル基含有共重合性単量体などの極性基含有共重合性モノマーは、アクリル系重合体に架橋結合を生じさせるのに重要な成分である。
【0031】
本発明の感圧性接着剤組成物は、前記モノマー成分(芳香族環含有共重合性モノマー、芳香族環非含有共重合性モノマー、改質用モノマーなど)を単量体単位として含むアクリル系重合体、すなわち、前記モノマー成分を重合して得られたアクリル系重合体を、主成分として含有している。重合方法としては、アゾ系化合物や過酸化物などの重合開始剤を用いて行う溶液重合方法、エマルジョン重合方法や塊状重合方法、光開始剤を用いて光や放射線を照射して行う重合方法などを採用することができる。
【0032】
本発明では、分解してラジカルを生成させる重合開始剤を用いて重合させる方法(ラジカル重合方法)を好適に採用することができる。このようなラジカル重合では、通常のラジカル重合に用いられる重合開始剤を使用できる。例を挙げれば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなどの過酸化物、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなどのアゾ系化合物等が用いられる。
【0033】
ラジカル重合において、重合開始剤の使用量は、アクリル系モノマーの重合の際に通常用いられる量でよく、例えば、前記モノマーの総量100重量部に対して、0.005〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度である。
【0034】
本発明では、前記モノマー成分(芳香族環含有共重合性モノマー、芳香族環非含有共重合性モノマー、改質用モノマーなど)を用いて重合させて得られたアクリル系重合体は、そのまま乾燥させて用いることができる。また、該重合体を架橋させることにより硬化させて用いることも可能である。重合体を架橋させることにより感圧性接着剤としての凝集力を一層大きくすることができる。
【0035】
このような架橋による硬化に際しては、架橋剤を用いることができる。すなわち、本発明の感圧性接着剤組成物には架橋剤が配合されていてもよい。なお、重合体の架橋は、加熱架橋方法が好適に用いられる。
【0036】
前記架橋剤には従来公知のものが広く包含される。架橋剤としては、特に、多官能性メラミン化合物、多官能性エポキシ化合物、多官能性イソシアネート化合物が好ましい。架橋剤は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0037】
多官能性メラミン化合物としては、例えば、メチル化トリメチロールメラミン、ブチル化ヘキサメチロールメラミンなどが挙げられる。また、多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルアニリン、グリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。多官能性メラミン化合物及び/又は多官能性エポキシ化合物の使用量は、前記重合体100重量部に対して、例えば0.001〜10重量部、好適には0.01〜5重量部の範囲である。
【0038】
また、多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどが挙げられる。多官能性イソシアネート化合物の使用量は、前記重合体100重量部に対して、例えば0.01〜20重量部、好適には0.05〜15重量部の範囲である。
【0039】
本発明の感圧性接着剤組成物はそのまま使用してもよいが、必要に応じて各種添加剤を添加して使用に供してもよい。例えば、前記重合体(特にアクリル系重合体)を主接着性成分とする感圧性接着剤組成物の接着特性を調整するため、公知乃至慣用の粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂など)を配合してもよい。また、粘着付与樹脂以外の添加剤として、可塑剤、微粉末シリカなどの充てん剤、着色剤、紫外線吸収剤などの公知の各種添加剤を配合することもできる。これらの添加剤の使用量は、いずれもアクリル系感圧性接着剤に適用される通常の量でよい。
【0040】
本発明の感圧性接着剤組成物(粘着剤組成物)は、前述にように、芳香族環含有共重合性モノマーを単量体単位として含むアクリル系重合体を主成分として含有している。該感圧性接着剤組成物は、乾燥させて、必要に応じて架橋剤を用いて重合体を架橋させて、感圧性接着剤(粘着剤)として用いることができる。該感圧性接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率は、1.49以上であることが重要である。フィルム導光板等の光学フィルムや、ガラス基板等の光学用部材に使用される材料の屈折率は、先に述べたように、1.51〜1.54程度のものであり、感圧性接着剤組成物を乾燥及び/又は硬化させた後の屈折率が1.49未満であると光学フィルムや光学用部材との屈折率差が大きくなる。そのため、例えば、該感圧性接着剤組成物による層が光学フィルムの一種であるフィルム導光板上に設けられた場合、浅い角度で全反射が起こり、光の有効的な利用性が低下する場合がある。また、光学フィルムや光学用部材との屈折率差を低減するためには、本発明の感圧性接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.60以下であることも重要である。
【0041】
従って、本発明の感圧性接着剤組成物の乾燥後及び/又は硬化後の屈折率は、1.49以上且つ1.60以下(1.49〜1.60)であることが望ましい。特に、1.50以上且つ1.55以下(1.50〜1.55)であることが最適である。
【0042】
本発明では、感圧性接着剤組成物の乾燥後及び/又は硬化後の屈折率は、芳香族環含有共重合性モノマー(芳香族環含有アクリル系モノマー、スチレン系モノマーなど)の種類及びその配合割合により、調整することが可能である。該屈折率は、芳香族環含有共重合性モノマーの配合割合が増加するにつれて、大きくなる傾向がある。
【0043】
図1は、芳香族環含有共重合性モノマーとしてフェノキシエチルアクリレートを用いたアクリル系重合体について、モノマー成分のフェノキシエチルアクリレートの配合量と、感圧性接着剤組成物の乾燥後及び/又は硬化後の屈折率との関係を示すグラフである。図1で示されているように、フェノキシエチルアクリレートの配合量が増加するにつれて屈折率が増加する。
【0044】
図1より、測定範囲内において、フェノキシエチルアクリレートの配合量に対する屈折率の増加割合は、フェノキシエチルアクリレートの配合量をxとし、屈折率をyとすると、
y=0.0009x+1.4658
と表すことができる。なお、測定範囲は、フェノキシエチルアクリレートの配合量が全モノマー成分に対して5〜70重量%の範囲である。
【0045】
なお、フェノキシエチルアクリレート以外のモノマーとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピルが用いられている。これらの2成分のモノマーの割合は、フェノキシエチルアクリレートの全モノマー成分に対する配合割合が50重量%であるとき、アクリル酸ブチル:アクリル酸3−ヒドロキシプロピル=50:0.06(重量部)である。また、フェノキシエチルアクリレートの全モノマー成分に対する配合割合が増加又は減少した分だけ、アクリル酸ブチルの配合割合が増加又は減少している。
【0046】
また、架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートが配合されている。すなわち、アクリル系重合体は架橋され硬化されている。なお、該架橋剤の配合量は、前記重合体100重量部に対して0.8重量部である。
【0047】
従って、芳香族環含有共重合性モノマーの種類によっても異なるが、芳香族環含有アクリル系モノマーの配合割合は、モノマー成分全量に対して30重量%以上(例えば、30〜100重量%)、好ましくは40〜80重量%であることが望ましい。芳香族環含有アクリル系モノマーの配合割合がモノマー成分全量に対して30重量%未満であると、感圧性接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49未満に低下する場合がある。
【0048】
図2は本発明の感圧性接着シートを示す概略断面図である。図2において、1は感圧性接着シート(粘着シート)であり、2は剥離ライナー、3は感圧性接着剤層(粘着剤層)である。感圧性接着シート1は、剥離ライナー2上に感圧性接着剤層3が設けられた基材レス感圧性接着シートである。
【0049】
このような基材レス感圧性接着シートである感圧性接着シートは、例えば、剥離層を有するプラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)などの基材からなる剥離ライナー上に、前記本発明の感圧性接着剤組成物を塗布し、乾燥し、必要に応じて架橋させて硬化させることにより、得ることができる。もちろん、剥離ライナーにおいて、感圧性接着剤組成物を塗布する面は、剥離層側の面であればよい。なお、剥離ライナーにおいて、剥離層は、基材の片面又は両面に設けることができる。
【0050】
感圧性接着剤組成物の塗布は、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いて行うことができる。
【0051】
感圧性接着剤層の厚みは、取扱性等を損なわない範囲で適宜設定できるが、一般には5〜500μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0052】
なお、感圧性接着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層を介して又は介することなく複数の層で構成されていてもよい。例えば、感圧性接着シートは、透明基材の両面に、本発明の感圧性接着剤組成物からなる感圧性接着剤層を設けた両面接着シートであってもよい。
【0053】
剥離ライナーの基材としては、プラスチックフィルムが好適に用いられるが、紙、発砲体、金属箔などであってもよい。基材の厚みは、目的に応じて適宜選択できるが、一般には10〜500μm程度である。
【0054】
なお、前記剥離ライナーの基材のプラスチックフィルムの素材としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。プラスチックフィルムは、無延伸フィルム及び延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムの何れであってもよい。
【0055】
また、剥離層としては、慣用の剥離ライナーにおける剥離層として用いられている剥離層(例えば、シリコーン系剥離層など)を用いることができる。
【0056】
このような感圧性接着シートは、フィルム導光板などの光学フィルムに貼り合わせて、感圧性接着剤層を有する光学フィルムを作製することができる。
【0057】
このような感圧性接着剤層を有する光学フィルムは、表示パネルに貼着固定することにより表示装置を作製して用いることができる。もちろん、表示パネルに貼り合わせる光学フィルムの面は、感圧性接着剤層側の面であり、剥離ライナーを剥離することにより、光学フィルムの感圧性接着剤層側の面を露出させて、表示パネルに貼着固定させることができる。
【0058】
なお、本発明の感圧性接着シートは、適宜の幅に裁断しロール状に巻回することにより、感圧性接着テープとして用いてもよい。
【0059】
図3は本発明の光学フィルムを示す概略断面図である。図3において、4は感圧性接着剤層を有する光学フィルムであり、5はフィルム導光板等の光学フィルム、6は感圧性接着剤層である。
【0060】
このような感圧性接着剤層を一方の面に形成した光学フィルムは、慣用の塗布装置(ロールコーター、リバースコーター、グラビアコーター、バーコーターなど)を用いて、前記感圧性接着剤組成物を光学フィルム上に塗布して乾燥し、必要に応じて加熱架橋させる方法、あるいは、紫外線等の光により硬化させる方法、さらには、前記感圧性接着剤組成物による感圧性接着シートを用いて、光学フィルムに貼り合わせる方法により得ることができる。すなわち、光学フィルムに感圧性接着シートを用いて転写させてもよく、直写してもよい。
【0061】
本発明の光学フィルムにおいて、フィルム導光板としては、例えば、ポリカーボネートフィルムの片面に微細な凹凸形状を形成することで導光機能を付与したフィルムが例示される。なお、これらフィルム導光板に使用されるフィルム材料の屈折率は1.49以上、好ましくは1.50以上、さらに好ましくは1.51以上、最も好ましくは1.52以上である。該屈折率の上限は、1.60であることが好ましい。フィルム導光板の厚みは、用途に応じて、例えば、10〜200μm程度の範囲から適宜選択することができる。
【0062】
その他、光学フィルムとしては、反射防止フィルム、導電性フィルムなどが挙げられ、それらを構成する材料としては、前記屈折率のものが好ましい。
【0063】
なお、本発明では、光学フィルムにおいて、感圧性接着剤層側の面に剥離ライナーを有していてもよい。
【0064】
本発明の光学フィルムは、表示パネル(例えば、液晶とともに、ガラス基板、偏光板、位相差板等の複数の光学用部材を積層した構成の液晶パネル)に貼り合わせて、貼着固定して用いることができる。
【0065】
図4は、液晶パネルに光学フィルムを貼り合わせた状態を示した概略断面図である。図4において、4は一方の面に感圧性接着剤層を有する光学フィルム、5は光学フィルム、6は感圧性接着剤層、7は液晶パネル(ガラス基板等の各種光学用部材の記載は省略している)である。光学フィルム4の感圧性接着剤層6側の面が液晶パネルに貼り合わせられて、貼着固定されている。
【0066】
このように、表示パネルに光学フィルムを貼り合わせて表示装置を作製することができる。なお、図4に示す表示装置は、表示パネルとして液晶パネルが用いられている。該液晶パネルに光学フィルムが貼り合わせられている表示装置(液晶表示装置)は、透過型液晶表示装置として用いることができる。
【0067】
表示パネルとしては液晶パネルが好適に用いられる。液晶パネルとしては、移動体通信におけるモバイル型電話機(携帯電話など)などの表示画面部で利用される液晶パネルを好適に使用することができる。このような液晶パネルの基板としては、ガラス基板、プラスチック基板(特に、ガラス基板)などを用いることができる。その屈折率としては、1.49以上、好ましくは1.50以上、さらに好ましくは1.51以上、最も好ましくは1.52以上であり、その上限は1.60であることが好ましい。
【0068】
本発明の感圧性接着剤組成物は、乾燥後及び/又は硬化後の屈折率が、フィルム導光板等の光学フィルムや、液晶パネルのガラス基板などの光学用部材の屈折率に近い値となっているので、該感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層と光学フィルムとの界面、あるいは、感圧性接着剤層と光学用部材との界面での屈折率差が少なく、これらの光学フィルム/感圧性接着剤層/光学用部材の各界面における全反射を最小限に抑えることができる。そのため、本発明の感圧性接着剤組成物を用いた光学フィルムは、優れた光学性能を発揮することができ、さらに光を有効利用することができる。
【0069】
もちろん、アクリル系重合体を用いているので、接着性能も優れている。
【実施例】
【0070】
以下に、この発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を、%とあるのは重量%を、それぞれ意味する。
【0071】
実施例1
アクリル酸フェノキシエチル:50部、アクリル酸ブチル:49部、アクリル酸:1部、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル:0.06部、および重合溶媒として酢酸エチル:45部を3つ口フラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら2時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、過酸化ベンゾイル:0.2部を添加し、60℃に昇温し10時間反応させた後、75℃に昇温して2時間反応させた。その反応液に、酢酸エチルを加え、固形分濃度25重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
このアクリル系ポリマー溶液に、架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート:0.8部を加えた後、厚さ:38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離ライナー上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、剥離ライナーをカバーし、さらに50℃で72時間エージングを行い、架橋構造化した感圧性接着剤層を有する感圧性接着シートを得た。
【0072】
実施例2
モノマー成分として、スチレン:20部、ベンジルアクリレート:25部、アクリル酸イソノニル:55部、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル:0.1部を用いること以外は、実施例1と同様にして感圧性接着シートを得た。
【0073】
比較例1
モノマー成分として、アクリル酸フェノキシエチル:25部、アクリル酸ブチル:74部、アクリル酸:1部、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル:0.1部を用いること以外は、実施例1と同様にして感圧性接着シートを得た。
【0074】
実施例1又は2、比較例1に係る感圧性接着シートにおける感圧性接着剤組成物による層の屈折率、全反射角度・出射光強度比を、以下の屈折率測定方法、全反射角度・出射光強度比の評価方法により測定した。測定又は評価の結果は、表1に示した。そして、これらの測定又は評価結果より、実施例及び比較例に係る感圧性接着剤組成物について光学性能の効果を判定し、光学性能が優れているものを○、通常又はあまりよくないものを×として、表1に示した。
また、光学フィルムとしての評価も、下記の方法により、行った。
【0075】
(屈折率測定方法)
アッベ屈折率計にて、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を照射して、感圧性接着シートにおける感圧性接着剤組成物による層(感圧性接着剤層)の屈折率(すなわち感圧性接着剤組成物の乾燥後及び/又は硬化後の屈折率)を測定した。
【0076】
(全反射角度・出射光強度比の評価方法)
図5のように、実施例及び比較例により得られた粘着シートを介して、直角プリズム(材質BK−7:nD1.517)とガラス基板(材質BK−7:nD1.517)とを貼り合わせ、ガラス基板端部より光を入射して、その入射角度と粘着シート及びプリズムを通過して出てくる光の有無を調べ、光が出てこなくなった角度θを全反射角度(°)として評価した。
なお、ガラス基板の上下面は平行、上下面と端面(側面)は垂直となるように加工している。また、光源は単一モードのHe−Neレーザを用い、端面に対して偏光方向が45°となるようにして用いた。
【0077】
なお、図5は、全反射角度・出射光強度比の評価方法における粘着シートの貼り合わせ状態を示す概略図である。上部のガラス(断面が方形)は、ガラス基板(材質BK−7:nD1.517)であり、下部のガラス(断面が三角形)は直角プリズム(材質BK−7:nD1.517)である。これらのガラスに、粘着シートが挟まれている。
【0078】
あらかじめ、屈折率nD1.517となるように調整したマッチングオイルを用いて直角プリズムとガラス基板とを貼り合わせ、直角プリズムからの出射光強度を入射させるレーザ光の角度を5°毎に変えながら測定し、その総和を入射光強度とした。
これに対し、実施例及び比較例により得られた粘着シートを用いて直角プリズムとガラス基板とを貼り合わせた場合も同様にして出射光強度を測定し、その総和を求め、前記マッチングオイルを用いた場合の入射光強度との比を求め、出射光強度比とした。なお、出射光強度比は大きいほど良好である。
【0079】
【表1】

【0080】
表1より、実施例に係る感圧性接着剤組成物は、屈折率が光学フィルムや光学用部材とほとんど同じであり、全反射角度が小さく、出射光強度比が大きく、全反射が低く抑えられている。
【0081】
(光学フィルムとしての評価)
実施例及び比較例により得られた粘着シートを使用して、40mm幅で、25mm長に加工した厚さ1.2mmのポリメタクリル酸メチル製の板(PMMA板)に、あらかじめ、フィルム面に対し43°の斜面を持ちピッチ0.25mmの均一なプリズムを有するフィルム導光板を貼り合わせ、フィルム導光板斜面に対向したPMMA板の端面に冷陰極管を配置し、フィルム導光板を貼り合わせた面と対向する面からその発光状態を観察したところ、実施例1及び実施例2に係る粘着シートでは輝度の面内均一性及び正面輝度が良好であったが、比較例1の粘着シートでは冷陰極管から遠ざかるほど暗くなり、中央部分の正面輝度も明らかに低下しており、良好とはとても言えない状態であった。
【符号の説明】
【0082】
1 感圧性接着シート
2 剥離ライナー
3 感圧性接着剤層
4 感圧性接着剤層を有する光学フィルム
5 光学フィルム
6 感圧性接着剤層
7 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族環含有共重合性モノマーを単量体単位として含むアクリル系重合体を主成分として含有する液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物であって、乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49以上且つ1.60以下である液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物。
【請求項2】
芳香族環含有共重合性モノマーが、芳香族環含有アクリル系モノマー及び/又はスチレン系モノマーである請求項1記載の液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物。
【請求項3】
芳香族環含有アクリル系モノマーが、下記式(1)で表される芳香族環含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルである請求項2記載の液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基である。R2はアルキレン基、または−R3−(OR3n−である。ここでR3はアルキレン基であり、nは正の整数である。また、Xはアリール基又はアリールオキシ基である。)
【請求項4】
液晶パネルに光学フィルムを貼着固定するための感圧性接着シートであって、剥離ライナー上に、請求項1乃至3のいずれかの項に記載の液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層が形成されている液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着シート。
【請求項5】
液晶パネルに貼着固定するための光学フィルムの一方の面に、請求項1乃至3のいずれかの項に記載の液晶パネルへの光学フィルム貼着固定用感圧性接着剤組成物による感圧性接着剤層が形成されている光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−196064(P2010−196064A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93560(P2010−93560)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【分割の表示】特願2000−368144(P2000−368144)の分割
【原出願日】平成12年12月4日(2000.12.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】