説明

液晶ポリエステル組成物、反射板及び発光装置

【課題】耐光性に優れ、強い光が長く照射されても、着色し難い液晶ポリエステル組成物を提供する。
【解決手段】液晶ポリエステルに、ベンゾオキサジノン化合物を配合して、液晶ポリエステル組成物とする。ベンゾオキサジノン化合物としては、下記式(I)で示される化合物が好ましく用いられる。


(Arは、芳香族炭化水素基を表す。nは、0又は1を表す。前記芳香族炭化水素基にある水素原子は、それぞれ独立に置換されていてもよい。)
液晶ポリエステル組成物中のベンゾオキサジノン化合物の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル組成物、これを用いてなる反射板、及びこの反射板を用いてなる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、溶融流動性に優れ、耐熱性や強度・剛性も高いことから、電気・電子部品をはじめ各種製品・部品の材料として検討されている。また、液晶ポリエステルを反射板等の耐光性を必要とする製品・部品の材料として用いる場合、液晶ポリエステルと紫外線吸収剤やラジカル補足剤等の光安定剤とを含む液晶ポリエステル組成物が、好ましい液晶ポリエステル材料として検討されている。例えば、特許文献1には、液晶ポリエステルとホスファイト系化合物とを含む液晶ポリエステル組成物が記載されており、さらにベンゾフェノン化合物等の紫外線吸収剤を含む液晶ポリエステル組成物も記載されている。また、特許文献2には、液晶ポリエステルと酸化鉄とを含む液晶ポリエステル組成物が記載されており、特許文献3には、液晶ポリエステルとシリカ・酸化セリウム複合酸化物とを含む液晶ポリエステル組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−182946号公報
【特許文献2】特開2005−179627号公報
【特許文献3】特開2005−232210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の液晶ポリエステル組成物は、耐光性が必ずしも十分でなく、強い光が長く照射されると、着色し易いという問題がある。そこで、本発明の目的は、耐光性に優れ、強い光が長く照射されても、着色し難い液晶ポリエステル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、液晶ポリエステルとベンゾオキサジノン化合物とを含む液晶ポリエステル組成物を提供する。また、本発明によれば、さらに白色顔料を含む前記液晶ポリエステル組成物を成形してなる反射板も提供され、この反射板と発光素子とを有する発光装置も提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、耐光性に優れ、強い光が長く照射されても、着色し難いので、これを用いることにより、耐光性に優れ、反射率が低下し難い反射板を得ることができ、この反射板を用いることにより、輝度の持続性に優れる発光装置を得ることができる。
【0007】
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0008】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0009】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0010】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0011】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
【0012】
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0013】
(4)−Ar4−Z−Ar5
【0014】
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0015】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、通常1〜10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、通常6〜20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基毎に、それぞれ独立に、通常2個以下であり、好ましくは1個以下である。
【0016】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は通常1〜10である。
【0017】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0018】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr2がジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0019】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0020】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、通常30モル%以上、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは40〜70モル%、さらに好ましくは45〜65モル%である。繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0021】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、通常0.9/1〜1/0.9、好ましくは0.95/1〜1/0.95、より好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0022】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0023】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが、溶融粘度が低くなり易いので、好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。
【0024】
液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0025】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、通常270℃以上、好ましくは270〜400℃、より好ましくは280〜380℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
【0026】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0027】
本発明の液晶ポリエステルは、前記のような液晶ポリエステルとベンゾオキサジノン化合物とを含むものである。このように、液晶ポリエステルに所定の化合物を配合することにより、耐光性に優れる液晶ポリエステル組成物を得ることができる。
【0028】
ベンゾオキサジノン化合物としては、下記式(I)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0029】
【化1】

(Arは、芳香族炭化水素基を表す。nは、0又は1を表す。前記芳香族炭化水素基にある水素原子は、それぞれ独立に置換されていてもよい。)
【0030】
Arで表される芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素から水素原子を2個除いてなる残基であり、芳香族炭化水素から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基であることが好ましい。
【0031】
芳香族炭化水素基の例としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−ビフェニリレン基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基及び2,2−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基が挙げられる。
【0032】
また、芳香族炭化水素基にある水素原子を置換してもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシル基及びアリールオキシル基が挙げられ、その置換数は通常2以下、好ましくは1以下である。
【0033】
ベンゾオキサジノン化合物としては、特表2005−507006号公報等に記載の公知の方法により製造したものを用いてもよいし、竹本油脂(株)の「CEi−P」やCYTEC社の「CYASORB UV−3638」等の市販品を用いてもよい。
【0034】
ベンゾオキサジノン化合物の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜4質量部である。ベンゾオキサジノン化合物の含有量があまり多いと、液晶ポリエステル組成物の強度・剛性が低下し易く、あまり少ないと、液晶ポリエステル組成物の耐光性が不十分になり易い。
【0035】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、耐光性に優れ、着色し難いことから、さらに顔料及び/又は染料を含み、所望の着色がされた液晶ポリエステル組成物として用いると、その所望の着色を維持し易いので、効果的である。
【0036】
顔料の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化チタン、酸化クロム、ニッケルチタンイエロー、ウルトラマリン、ミネラルファアストイエロー、ネーブルスイエロー、カドミウムイエロー、カドモボン、ヘンガラ、硫化水銀カドミウム等の無機顔料や、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキセジン系、キナクリドン系等の有機顔料が挙げられ、それらの2種以上を用いてもよい。
【0037】
染料の例としては、フタロシアニン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキセジン系、キナクリドン系、カップリングアゾ系、縮合ジゾ系、キレート型アゾ系等の有機染料が挙げられ、それらの2種以上を用いてもよい。
【0038】
液晶ポリエステル組成物を反射板の材料として用いる場合は、白色顔料を含むものが好ましく用いられる。白色顔料としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化チタン等の無機顔料が好ましく用いられ、それらの2種以上を用いてもよい。中でも酸化チタンが好ましい。
【0039】
白色顔料の粒径は、白色顔料が液晶ポリエステルに分散し易く、高い反射率を有する反射板が得られ易いことから、体積平均値で表して、好ましくは0.05〜2μm、より好ましくは0.1〜1μm、さらに好ましくは0.15〜0.5μm、特に好ましくは0.2〜0.4μmである。
【0040】
なお、ここでいう体積平均粒径は、白色顔料を走査形電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で撮影し、得られたSEM写真を画像解析装置(例えば(株)ニレコの「ルーゼックスIIIU」)で解析して、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)を求め、それらを体積基準で累積した分布曲線において、累積度が50%であるときの粒径である。
【0041】
白色顔料の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは20〜200質量部、より好ましくは25〜150質量部、さらに好ましくは40〜100質量部である。
【0042】
白色顔料の好ましい例である酸化チタンは、その結晶形が、ルチル型であってもよいし、アナターゼ型であってもよく、両者が混在していてもよいが、高い反射率を有し、耐候性にも優れる反射板が得られ易いことから、ルチル型の酸化チタンを含むものが好ましく、実質的にルチル型の酸化チタンのみからなるものがより好ましい。
【0043】
酸化チタンには、表面処理が施されていてもよい。例えば、無機金属酸化物を用いて表面処理を施すことにより、分散性や耐候性を向上させることができる。無機金属酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ)を用いることが好ましい。なお、耐熱性や強度の点からは、表面処理が施されていない酸化チタンを用いることが好ましい。
【0044】
酸化チタンの製造方法は、塩素法でもよいし、硫酸法でもよいが、ルチル型の酸化チタンを製造する場合は、塩素法が好ましい。塩素法により酸化チタンを製造する場合、まず、チタン源である鉱石(ルチル鉱やイルメナイト鉱から得られる合成ルチル鉱)と塩素とを1000℃付近で反応させて粗四塩化チタンを得、この粗四塩化チタンを精留で精製した後、酸素で酸化することが好ましい。
【0045】
液晶ポリエステル組成物は、充填材、ベンゾオキサジノン化合物、顔料及び染料以外の添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでもよい。
【0046】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。液晶ポリエステル組成物中の充填材の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。
【0047】
ベンゾオキサジノン化合物、顔料及び染料以外の添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、ベンゾオキサジノン化合物以外の光安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤が挙げられる。ベンゾオキサジノン化合物、顔料及び染料以外の添加剤の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜5質量部である。
【0048】
液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜20質量部である。
【0049】
液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル、ベンゾオキサジノン化合物及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0050】
こうして得られる本発明の液晶ポリエステル組成物を成形することにより、耐光性に優れる成形体を得ることができる。液晶ポリエステル組成物の成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0051】
特に、白色顔料を含む本発明の液晶ポリエステルを成形することにより、反射率が低下し難い反射板を得ることができる。この場合も、成形方法としては、射出成形法が好ましく、射出成形法によれば、薄肉部を有する反射板や、複雑な形状の反射板を容易に得ることができ、特に薄肉部の厚みが0.01mm〜3.0mm、好ましくは0.02〜2.0mm、より好ましくは0.05〜1.0mmである小型の反射板を得るには、射出成形法が適している。
【0052】
こうして得られる本発明の反射板は、波長460nmの光に対する拡散反射率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、ここでいう反射率とは、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められるものである。
【0053】
本発明の反射板は、電気、電子、自動車、機械等の分野で光反射、特に可視光反射のための反射部材として好適に用いられる。例えば、ハロゲンランプ、HID等の光源装置のランプリフレクターや、LEDや有機EL等の発光素子を用いた発光装置や表示装置の反射板として好適に用いられる。特に、LEDを用いた発光装置の反射板として好適に用いられる。
【実施例】
【0054】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター((株)島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0055】
〔液晶ポリエステルの製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.2gを入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で1時間還流させた。次いで、1−メチルイミダゾール0.9gを加えた後、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。
【0056】
〔光安定剤〕
光安定剤として、次のものを使用した。
光安定剤(1):CYTEC(株)の「CYASORB UV−3638」(ベンゾオキサジノン化合物)。
光安定剤(2):チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)の「TINUVIN 1577」(トリアジン化合物)。
光安定剤(3):チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)の「TINUVIN 622」(ヒンダードアミン化合物)。
光安定剤(4):アデカ(株)の「アデカスタブ LA−31」(トリアゾール化合物)。
【0057】
実施例1、2、比較例1〜4
〔液晶ポリエステル組成物の調製〕
液晶ポリエステル100質量部と、表1に示す種類及び量の光安定剤と、酸化チタン(石原産業(株)の「TIPAQUE CR−60」:塩素法で製造された酸化チタンのアルミナ表面処理品。体積平均粒径0.21μm)80質量部と、ガラス繊維(オーウェンスコーニング(株)の「CS03JAPX−1」)20質量部とを混合した後、二軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度330℃で造粒し、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。
【0058】
〔耐光性の評価〕
得られた液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)の「PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度340℃で、鏡面加工した金型内に射出し、64mm×64mm×1mmの反射板の試験片に成形した。この試験片に対し、キセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)の「SC−700WN」。光源:キセノンランプ7kW、インナーフィルター:石英、アウターフィルター:#275)を用いて、照射強度160W/m2、温度65℃及び相対湿度50%の条件で、UVカットガラス(ショット社。厚さ3mm)を介して、5時間、光照射した。光照射前後の試験片について、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に従って、自記分光光度計((株)日立製作所の「U−3500」)を用いて、波長460nmの光に対する拡散反射率の測定を行った。結果を表1に示す。なお、この拡散反射率は、硫酸バリウムの標準白色板の拡散反射率を100%としたときの相対値である。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルとベンゾオキサジノン化合物とを含む液晶ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記ベンゾオキサジノン化合物が、下記式(I)で表される化合物である請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
【化1】

(Arは、芳香族炭化水素基を表す。nは、0又は1を表す。前記芳香族炭化水素基にある水素原子は、それぞれ独立に置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記ベンゾオキサジノン化合物の含有量が、液晶ポリエステル100質量部に対して、0.05〜5質量部である請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
さらに白色顔料を含む請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記白色顔料が酸化チタンである請求項4に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記白色顔料の含有量が、液晶ポリエステル100質量部に対して、20〜200質量部である請求項4又は5に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項7】
請求項4〜7のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなる反射板。
【請求項8】
JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づく波長460nmの光に対する拡散反射率が、70%以上である請求項7に記載の反射板。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の反射板と発光素子とを有する発光装置。
【請求項10】
前記発光素子がLEDである請求項9に記載の発光装置。

【公開番号】特開2012−97140(P2012−97140A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243457(P2010−243457)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】