説明

液晶レンズ構造とその駆動方法

【課題】液晶レンズ構造とその駆動方法を提供する。
【解決手段】液晶レンズ構造は、上部基板と、下部基板と、液晶及び高分子複合フィルムと、液晶層と、を備えるように構成される。上部基板は、第1導電層と第1配向層を有する。下部基板は、第2導電層と第2配向層を有する。液晶及び高分子複合フィルムを第1配向層の片側に設置するとともに、第1レンズを形成する。液晶層を液晶及び高分子複合フィルムと第2配向層との間に設置するとともに、第2レンズを形成する。液晶及び高分子複合フィルムが内蔵されたことにより、低電圧で、広い焦点距離範囲を持つ液晶レンズを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶レンズ構造とその駆動方法に関し、特に液晶及び高分子複合フィルムが内蔵された液晶レンズ構造とその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、カメラ、カメラ付き携帯電話機や、立体映像処理用設備などの装置では、ズームレンズを用いることにより、画像のオートフォーカス、拡大または縮小が可能になり、結像させることができる。従来のズームレンズは、複数のレンズ群(lens group)を設ける必要があり、これらのレンズ群を光軸方向に沿って移動させ、相互の距離を変えることにより、結像距離に影響することなく、全体焦点距離を変化できる。しかしながら、この種のレンズはより長いレンズ群移動距離が必要であり、且つその距離が非線形関係となっているため、構造設計を複雑にし、精度の制御が難しい、製造コストが高くなり過ぎて軽減できないといった問題があった。一方、液体レンズ(liquid lens)または液晶レンズ(liquid crystal lens, LCレンズという)を使用し、レンズ群移動距離を改善することにより、カメラ装置のサイズを小型化するものもある。
【0003】
液体レンズの一般的な原理としては、調節可能な液体充填レンズと固体レンズを組み合わせ、液体充填レンズの形状(両凸レンズや凹凸レンズなど)を変化させるか、異なる屈折率の充填媒質に変化させることにより、レンズの焦点距離を調節してズーム機能を持たせる目的を達成する。また、液晶充填レンズのほかに、液晶屈折率も外部電場を印加するにつれて、電子制御方式で焦点距離を変化させることが可能な液晶レンズがあって、例えば、非特許文献1(Susumu Sato、「Liquid−Crystal Lens−Cells with Variable Focal Length」、Japan J.of Applied physics、1979年3月12日)に開示されたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2007/0139333号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Susumu Sato、「Liquid−Crystal Lens−Cells with Variable Focal Length」、Japan J.of Applied physics、1979年3月12日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、他の従来技術(米国特許出願公開第US2007/0139333号明細書、特許文献1)として、一種の光学素子(optical element)が開示されているように、第1基板と、第2基板と、液晶層とを備えるように構成され、該第1基板は第1電極を有し、一方、該第2基板の片側に設けられた第2電極は貫通穴を有し、該液晶層は、該第1基板と該第2基板との間に設けられ、また、該第1電極と該第2電極とは電源に電気的に接続される。そして、該液晶層に電圧を印加することによって、液晶分子の配向を変化させることができる。さらに、該第2基板上にはさらに誘電層と第3電極を追設し、この第3電極で、画像品質や焦点距離を調節することができるが、上述した従来技術では、以下のような問題があった。
【0007】
イ、 構造が複雑になり、その製造コストが高くなってしまう。
【0008】
ロ、 高駆動電圧で、駆動回路のコストが高くなり、且つ多くの駆動エネルギーが必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以上の従来技術の問題に鑑みなされたものであって、電極設計が複雑で、作動電圧が高い、体積厚さがより大きい、焦点距離範囲が調整できないといった課題を解決できる、一種の液晶レンズ構造とその駆動方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、上部基板と、下部基板と、液晶及び高分子複合フィルムと、液晶層とを備えた、一種の液晶レンズ構造を提供する。上部基板は、第1導電層と第1配向層を有し、第1導電層を上部基板の片側に設置し、且つ第1配向層を第1導電層の片側に設置する。下部基板は、第2導電層と第2配向層を有し、第2導電層を下部基板の片側に設置し、且つ第2配向層を第2導電層の片側に設置する。液晶及び高分子複合フィルムを第1配向層の片側に設置するとともに、第1レンズを形成する。液晶層を液晶及び高分子複合フィルムと第2配向層との間に設置するとともに、第2レンズを形成する。
【0011】
また、液晶及び高分子複合フィルムとしては、例えば、液晶と高分子単体からなってもよい、さらに、この液晶及び高分子複合フィルムは複屈折フィルムであってもよい。
【0012】
また、第1導電層には、貫通穴が形成され、この貫通穴の穴径が2mmであってもよい。これにより、液晶及び高分子複合フィルムの等価屈折率と比誘電率は、製造時の不均一な電場分布によって円対称性があるように分布される。この貫通穴の中央部では、比較的小さい比誘電率と比較的大きい等価屈折率を有するのに比べ、貫通穴の周縁部では、比較的大きい比誘電率と比較的小さい等価屈折率を有する。
【0013】
尚、液晶及び高分子複合フィルムは、比誘電率が均一に分布しているフィルムであってもよいし、比誘電率が不均一に分布しているフィルムであってもよい。
【0014】
また、第1レンズは、正レンズまたは負レンズのいずれであってもよい。
【0015】
また、こうした液晶レンズ構造は、小型プロジェクター、携帯電話機カメラシステムまたは電子制御フォーカス素子が必要な携帯式装置に用いることができる。
【0016】
また、この液晶レンズ構造の作動電圧範囲は、15Vrms〜35Vrmsであってもよい。
【0017】
さらに、本発明の目的に基づき、液晶レンズ構造を駆動するための一種の駆動方法を提供する。この駆動方法は、下記のステップを含んでいる。まず、第1駆動電圧を印加するステップと、この後、第1駆動電圧から第2駆動電圧に切り換えるステップと、を備えている。
【0018】
また、第1駆動電圧が15Vrmsであってもよいし、第2駆動電圧が35Vrmsであってもよいため、この場合、印加電圧を15Vrms(第1駆動電圧)から35Vrms(第2駆動電圧)に切り換えることができる。
【0019】
さらに、第1駆動電圧が35Vrmsであってもよいし、第2駆動電圧が15Vrmsであってもよい、この場合、印加電圧を35Vrms(第1駆動電圧)から15Vrms(第2駆動電圧)に切り換えることができる。
【0020】
また、こうした駆動方法では、第2駆動電圧から第3駆動電圧に切り換えるステップをさらに含んでいる。これにより、印加電圧を15Vrmsから55Vrmsに切り換えてから、55Vrmsから35Vrmsに切り換えるか、または印加電圧を35Vrmsから0Vrmsに切り換えてから、0Vrmsから15Vrmsに切り換えることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたとおり、本発明の液晶レンズ構造とその駆動方法は、以下のように1つまたは複数の長所を有する。
【0022】
イ、本発明の液晶レンズ構造とその駆動方法によれば、単一電圧で駆動することができるため、単純な構造で完成できる液晶レンズ構造を得ることができる。
【0023】
ロ、本発明の液晶レンズ構造とその駆動方法によれば、ガラスの代わりに液晶及び高分子複合フィルムを使用することによって、非液晶層の分圧を軽減したため、低作動電圧の効果を有する。
【0024】
ハ、本発明の液晶レンズ構造によれば、全体の構造が単純で、厚みも薄い。
【0025】
ニ、本発明の液晶レンズ構造とその駆動方法によれば、高分子複合フィルムを使用することによって、異なる初期焦点距離を作製し得るため、焦点距離範囲を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の液晶レンズ構造の実施例1を模式的に示す図である。
【図2】本発明の液晶レンズ構造の実施例2を模式的に示す図である。
【図3a】本発明の液晶及び高分子複合フィルムの実施例1を模式的に示す図である。
【図3b】本発明の液晶及び高分子複合フィルムの実施例2を模式的に示す図である。
【図3c】本発明の液晶及び高分子複合フィルムの実施例3を模式的に示す図である。
【図4a】本発明に電圧が印加されていない状態での液晶レンズ構造図である。
【図4b】本発明に電圧が印加された状態での液晶レンズ構造図である。
【図5a】本発明の液晶レンズ構造をカメラレンズモジュール(compact camera module)に適用した例を示す配置概略図である。
【図5b】本発明の液晶レンズ構造をカメラレンズモジュールに適用した場合の、対物面と印加電圧の関係を示す曲線図である。
【図6a】本発明の液晶レンズ構造を小型プロジェクターに適用した例を示す配置概略図である。
【図6b】本発明の液晶レンズ構造を小型プロジェクターに適用した場合の、結像面と印加電圧の関係を示す曲線図である。
【図7】本発明の駆動方法を示すフロー図である。
【図8】本発明の駆動方法の実施例1における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【図9】本発明の駆動方法の実施例2における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【図10】本発明の駆動方法の実施例3における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【図11】本発明の駆動方法の実施例4における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例1)
図1は、本発明の液晶レンズ構造の実施例1を模式的に示す図である。図1に示すように、液晶レンズ構造1は、上部基板11と、下部基板12と、液晶及び高分子複合フィルム13と、液晶層14と、を備えるように構成される。
【0028】
上部基板11は、第1導電層111と第1配向層112を有し、第1導電層111を上部基板11の片側に設置し、且つ第1配向層112を第1導電層111の片側に設置する。同じように、下部基板12は、第2導電層121と第2配向層122を有し、第2導電層121を下部基板12の片側に設置し、第2配向層122を第2導電層121の片側に設置する。尚、上部基板11と下部基板12とは、例えば、ガラス基板であってもよいので、上部基板11の第1導電層111と下部基板12の第2導電層121としては、ガラス基板上にめっきされたITO層を形成するものを使用してもよい。
【0029】
液晶及び高分子複合フィルム13は、液晶と高分子単体からなる複屈折フィルムである。この液晶及び高分子複合フィルム13を第1配向層112の片側に設置し、且つ液晶及び高分子複合フィルム13の等価屈折率と比誘電率は、円対称性があるように分布されている。これにより、液晶及び高分子複合フィルム13は、屈折率の分布により、初期焦点距離を有する第1レンズを形成することができる。換言すれば、屈折率の分布状態によって、第1レンズを正レンズまたは負レンズとして形成することができる。
【0030】
液晶層14は、例えば、液晶及び高分子複合フィルム13と第2配向層122との間に設置することができる。屈折率の分布状態によって、所定の焦点距離を有する第2レンズを形成することができる。これにより、液晶レンズ構造1の総焦点距離(total focal length)は、液晶及び高分子複合フィルム13の初期焦点距離に液晶層14の焦点距離を加えたものであることが分かる。
(実施例2)
図2は、本発明の液晶レンズ構造の実施例2を模式的に示す図である。本実施例2の構造は、実施例1とほぼ同じような構造であるが、相違点としては、第1導電層111には、貫通穴1111が形成されていることで、この貫通穴1111は、穴径2mmの円形穴状であることが好ましく、このようにすれば、電源を第1導電層111と第2導電層121とへ供給する場合、円対称性があるように電場分布させることができる。一例として、貫通穴1111の中央部の液晶及び高分子複合フィルム13は、比較的小さい比誘電率と比較的大きい等価屈折率を有するとともに、貫通穴1111の周縁部の液晶及び高分子複合フィルム13では、比較的大きい比誘電率と比較的小さい等価屈折率を有する。また、貫通穴1111の中央部の液晶及び高分子複合フィルム13は、比較的大きい比誘電率と比較的小さい等価屈折率を有するとともに、貫通穴1111の周縁部の液晶及び高分子複合フィルム13では、比較的小さい比誘電率と比較的大きい等価屈折率を有する。ここで、説明すべきこととしては、貫通穴1111の形状は円形であることが好ましいが、この限りでない。
【0031】
図3a、図3b及び図3cは、それぞれ本発明の液晶及び高分子複合フィルムの実施例1、実施例2及び実施例3を模式的に示す図である。図3b及び図3cに示すように、これらの実施例における液晶及び高分子複合フィルム13は、比誘電率が均一に分布されているフィルムであることが分かる。また、図3aに示すように、この実施例における液晶及び高分子複合フィルム13は、比誘電率が不均一に分布されているフィルムであることが分かる。
【0032】
特に、注意すべき点としては、第1導電層111の貫通穴1111は非均一に分布する電場の提供に用いるだけであるため、本発明を構成するための必要要素ではない。当該技術分野の技術者であれば、液晶及び高分子複合フィルム13の比誘電率分布(例えば、均一な分布や非均一な分布など)を変化させて、より好ましい焦点効果を奏する機能を有する液晶レンズ構造1を達成することができる。
【0033】
図4a及び図4bは、それぞれ本発明に電圧が印加されていない状態での液晶レンズ構造図及び電圧が印加された状態での液晶レンズ構造図である。これらの図に示すように、電源を液晶レンズ構造1に供給した場合、第1導電層111の円形貫通穴により、電場が円対称性があるように分布する。これにより、円対称性があるように分布した電場で、液晶層14の液晶分子の配向を変化させて、レンズ構造の全体の焦点距離を変えることができる。
【0034】
液晶レンズ構造1に電圧が印加されていない状態において、その焦点距離が8.82cmとし、一方、電圧が印加された後、電圧が35Vrmsになると、4.41cmの最短焦点距離が得られる。これにより、液晶層14の焦点距離の範囲を無限遠から8.82cmまでであることを逆推理することが可能である。
【0035】
図5a及び図5bは、それぞれ本発明の液晶レンズ構造をカメラレンズモジュール(compact camera module)に適用した例を示す配置概略図及び本発明の液晶レンズ構造をカメラレンズモジュールに適用した場合の、対物面と印加電圧の関係を示す図である。
【0036】
図5aに示すように、映像システム5は、液晶レンズ構造52と、レンズの組み合わせ53と、光センサー54と、を備えるように構成される。対象物体(Object)51は、液晶レンズ構造52で、1次結像を行った後、レンズの組み合わせ53で、2次結像を行い、この結像は、光センサー(image sensor)54上に焦点合わせ効果を奏する機能を有し、異なる対物距離(object distance)dに応じて液晶レンズ52の焦点距離を調節することによって同じような焦点距離効果を達成することが可能である。さらに、図5bから分かるように、従来技術と同じように最遠の対物焦点距離が3.5mであるが、最近の対物焦点距離が8.6cmである。このような結果が得られるのは、液晶及び高分子複合フィルム13を用いた液晶レンズ構造1の位相損失(Phase loss)が比較的小さいため、より短い焦点距離が得られる。この他、同じの対物距離の条件で、本発明に適用する作動電圧は、従来技術の液晶レンズ(例えば、Sato氏より提出された光学素子など)に比べ低いことが分かる。
【0037】
図6a及び図6bは、それぞれ本発明の液晶レンズ構造を小型プロジェクターに適用した例を示す配置概略図及び本発明の液晶レンズ構造を小型プロジェクターに適用した場合の、結像面と印加電圧の関係を示す図である。
【0038】
図6aに示すように、投影システム(projection system)6は、LED光源61と、リレーレンズ(relay lens)62と、前偏光板(pre−polarizer)63と、LCOS表示パネル64と、偏光ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter,PBS)65と、投影レンズ66と、液晶レンズ構造67と、を備えるように構成される。
【0039】
映像はLCOS表示パネル64から発出して、投影レンズ66と液晶レンズ構造67とを介して、スクリーン68に結像する。その像距離(image distance)dにおける液晶レンズの作動電圧に対する関係では、図6bに示すように、結像できる最短像距離としは、高分子複合フィルムを使用した液晶レンズの方がより短いことが分かる。また、小型プロジェクターの作動範囲が3.5m〜35cmであることを考えると、この場合、液晶及び高分子複合フィルムを使用したレンズの作動電圧が10Vrms以下であることが分かり、また、従来技術の液晶レンズ(例えば、Sato氏より提出された光学素子)の作動電圧50Vrmsに比べ、低いことが明らかにされた。
【0040】
以上、実施例としてカメラレンズモジュール及び小型プロジェクターについて説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。例えば、液晶レンズ構造を電子制御焦点距離素子が必要な携帯式装置に適用することも可能である。
【0041】
本発明の特長を明らかにするために、本発明とSato氏の発明との比較評価を行い、まとめた結果を下記の表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
以上に示したとおり、本発明は、液晶及び高分子複合フィルムを使用してバリア層を形成するという技術特長を生かしたため、Sato氏の発明に比べれば、初期焦点距離の調整が可能で、体積が小さく、作動電圧が低いといった顕著な効果がある。
【0044】
図7は、本発明の駆動方法を示すフロー図である。液晶レンズ構造を駆動するための駆動方法は、以下のステップを含んでいる。
【0045】
ステップS71、第1駆動電圧を印加する。
【0046】
ステップS72、第1駆動電圧から第2駆動電圧に切り換える。
【0047】
ステップS73、第2駆動電圧から第3駆動電圧に切り換える。
【0048】
ここで、説明しておくべきこととしては、液晶レンズ構造1の最適な作動範囲は15Vrms〜35Vrmsであるため、以下の実施例は、これらの2つの電圧について説明を行ったが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、例えば、電圧は二段式の切換え操作(即ち、15Vrmsと35Vrmsとの切換え)に限らず、連続制御といった異なる電圧を連続的に切り換える制御操作(例えば、15Vrmsと15.3Vrmsとの切換え、15.3Vrmsと15.5Vrmsとの切換えや15.7Vrmsと16Vrmsとの切換えなど)であってもよいことは容易に理解し得るものである。
【0049】
図8は、本発明の駆動方法の実施例1における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【0050】
まず、15Vrmsの駆動電圧を印加する。
【0051】
次に、15Vrmsから35Vrmsに切り換える。
【0052】
本実施例において、印加電圧を低い駆動電圧から高い駆動電圧に切り換えて、電圧上昇時間が468msであることが分かった。
【0053】
図9は、本発明の駆動方法の実施例2における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【0054】
まず、35Vrmsの駆動電圧を印加する。
【0055】
次に、35Vrmsから15Vrmsに切り換える。
【0056】
本実施例において、印加電圧を高い駆動電圧から低い駆動電圧に切り換えて、電圧下降時間は約1sであることが分かった。
【0057】
図10は、本発明の駆動方法の実施例3における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【0058】
まず、15Vrmsの駆動電圧を印加する。
【0059】
次に、15Vrmsから55Vrmsに切り換える。
【0060】
最後に、55Vrmsから35Vrmsに切り換える。
【0061】
本実施例において、電圧上昇する際には、電圧が55Vrmsで、時間が298msのパルス信号を印加し、液晶の回転を加速化させた。
【0062】
図11は、本発明の駆動方法の実施例4における印加電圧と透過率の関係を示す図である。
【0063】
まず、35Vrmsの駆動電圧を印加する。
【0064】
次に、35Vrmsから0Vrmsに切り換える。
【0065】
最後に、0Vrmsから15Vrmsに切り換える。
【0066】
本実施例において、電圧下降する際には、電圧が0Vrmsで、時間が737msのパルス信号を印加し、液晶の復元を助ける。このため、本発明は、第1駆動電圧から第2駆動電圧に切換え、第2駆動電圧から第3駆動電圧に切換えることにより、液晶レンズの反応時間を従来の1.47sから0.64sまでに短くすることができるとともに、液晶レンズの反応速度を大幅に上げることができた。
【0067】
本発明は、液晶及び高分子複合フィルム13を液晶レンズ構造1に内蔵することによって、低電圧で、広い焦点距離範囲を持つ液晶レンズを実現することができる。この液晶及び高分子複合フィルム13は、不均一な比誘電率分布を有する場合、液晶レンズの配向層自体として活用するだけでなく、所定の焦点距離も有している。また、液晶層14も、液晶及び高分子複合フィルム13も、本発明の液晶レンズの焦点距離に対する貢献の割合となり、さらに、液晶層14は、電子フォーカス機能を提供することができる。しかも、液晶及び高分子複合フィルム13は、一定の焦点距離を生成し、本発明の液晶レンズは、従来技術の液晶レンズに比べ、低電圧で操作できるし、単純な構造で構成できるし、全体の厚みも低減できるなどの長所を有するため、このようなレンズは、適用上の優位性を有している。
【符号の説明】
【0068】
1、52、67 液晶レンズ構造
11 上部基板
111 第1導電層
1111 貫通穴
112 第1配向層
12 下部基板
121 第2導電層
122 第2配向層
13 液晶及び高分子複合フィルム
14 液晶層
5 映像システム
51 対象物体
53 レンズの組み合わせ
54 光センサー
6 投影システム
61 LED光源
62 リレーレンズ
63 前偏光板
64 LCOS表示パネル
65 偏光ビームスプリッタ
66 投影レンズ
68 スクリーン
S71〜S73 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層と第1配向層を有する上部基板と、第2導電層と第2配向層を有する下部基板と、液晶及び高分子複合フィルムと、液晶層と、を備える液晶レンズ構造であって、
前記第1導電層を前記上部基板の片側に設置し、且つ前記第1配向層を前記第1導電層の片側に設置し、
前記第2導電層を前記下部基板の片側に設置し、且つ前記第2配向層が前記第2導電層の片側に設置し、
前記液晶及び高分子複合フィルムを前記第1配向層の片側に設置するとともに、第1レンズを形成し、
前記液晶層を前記液晶及び高分子複合フィルムと前記第2配向層との間に設置するとともに、第2レンズを形成することを特徴とする、液晶レンズ構造。
【請求項2】
前記液晶及び高分子複合フィルムは、液晶と高分子単体からなることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項3】
前記液晶及び高分子複合フィルムは、複屈折フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項4】
前記第1導電層には、貫通穴が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項5】
前記貫通穴の穴径が、2mmであることを特徴とする、請求項4に記載の液晶レンズ構造。
【請求項6】
前記液晶及び高分子複合フィルムの等価屈折率と比誘電率は、円対称性があるように分布されることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項7】
前記液晶及び高分子複合フィルムは、比誘電率が均一に分布されているフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項8】
前記液晶及び高分子複合フィルムは、比誘電率分布が不均一に分布されているフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項9】
前記第1レンズは、正レンズまたは負レンズであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項10】
前記液晶レンズ構造は、小型プロジェクター、携帯電話機カメラシステムまたは電子制御焦点距離素子が必要な携帯式装置に用いることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項11】
前記液晶レンズ構造の作動電圧範囲は、15Vrms〜35Vrmsであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶レンズ構造。
【請求項12】
第1駆動電圧を印加するステップと、
前記第1駆動電圧から第2駆動電圧に切り換えるステップと、
を含むことを特徴とする、前記請求項1に記載の液晶レンズ構造を駆動するための駆動方法。
【請求項13】
前記第1駆動電圧が15Vrmsであり、前記第2駆動電圧が35Vrmsであることを特徴とする、請求項12に記載の駆動方法。
【請求項14】
前記第1駆動電圧が35Vrmsであり、前記第2駆動電圧が15Vrmsであることを特徴とする、請求項12に記載の駆動方法。
【請求項15】
前記第1駆動電圧から前記第2駆動電圧に切り換えるステップに、前記第2駆動電圧から第3駆動電圧に切り換えるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の駆動方法。
【請求項16】
前記第1駆動電圧が15Vrmsであり、前記第2駆動電圧が55Vrmsであり、前記第3駆動電圧が35Vrmsであることを特徴とする、請求項15に記載の駆動方法。
【請求項17】
前記第1駆動電圧が35Vrmsであり、前記第2駆動電圧が0Vrmsであり、前記第3駆動電圧が15Vrmsであることを特徴とする、請求項15に記載の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−123360(P2012−123360A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107054(P2011−107054)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】