説明

液晶レンズ

【課題】液晶パネルの小型化を実現しながらも、十分な熱エネルギーが得られようにヒータの抵抗値を十分下げ、同時に、ヒータのパターン配線の自由度を増して位相変調電極群の有効円内を均一に加熱できるようにして、液晶層を所望の温度以上に維持し、低温下でも十分な速さで応答する液晶レンズを提供する。
【解決手段】フレキシブル回路基板に、液晶パネルに給電するための電極配線パターンを設けるとともに、位相変調電極群の円形外形よりも少なくとも大きな孔部と、孔部の外周に設けた液晶層を加熱するヒータと、ヒータに給電を行うヒータ配線パターンと、を設ける。そのフレキシブル回路基板を、孔部が液晶パネルの位相変調電極群の外周を囲うように透明基板の表面を覆って接合し、ヒータにより透明基板を介して液晶層を加熱できる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの小型化を実現しながらも、十分な熱エネルギーが得られようにヒータの抵抗値を十分下げ、同時に、ヒータのパターン配線の自由度を増して位相変調電極群の有効円内を均一に加熱できるようにして、液晶層を所望の温度以上に維持し、低温下でも十分な速さで応答する液晶レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラの焦点距離または焦点位置を変化させる合焦点機構として、2枚以上のレンズを組み合わせ、その位置関係を変化させることにより焦点を合わせる方式が広く用いられている。しかし、この方式では、レンズ駆動機構が必要であるため、機構が複雑になるという欠点や、レンズ駆動用モータに比較的多くの電力を要するという欠点がある。また、一般に耐衝撃性が低いという欠点もある。そこで、レンズ駆動機構が不要な合焦点機構として、液晶レンズの屈折率を変化させることにより焦点を合わせる方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ただ液晶レンズを用いた可変焦点システムを考える際、問題になってくるのは液晶の応答速度である。液晶レンズに充填するネマティック液晶は、低温下では粘度の上昇により応答速度が遅くなることが知られている。
【0004】
そこで、この液晶の応答速度を速くするために、ベンド配向と呼ばれる配向方法を用いたり(特許文献2参照)、液晶材料を高速応答性に優れる強誘電性液晶を用いたりする提案がされている。
【0005】
また、液晶レンズの液晶を加熱するヒータを、液晶レンズの液晶屈折率変化を行うための位相変調電極群の外側の領域に設ける方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3047082号公報(第3−5頁、第1−4図)
【特許文献2】特開2006−291243号公報(第6−13頁、第1−11図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高速応答が可能なベンド配向や強誘電性液晶は、どちらも液晶のON/OFF時の屈折率変化が小さいため、これらの手段を液晶レンズに使用した場合、可変焦点性能が著しく劣るという問題がある。
【0008】
また、液晶レンズの液晶を加熱するヒータを、液晶レンズの液晶屈折率変化を行うための位相変調電極群の外側の領域に設ける手法においては、限られた供給電圧の条件で、より短時間に、十分な熱エネルギーを得るためには、ヒータの電気抵抗値を十分下げる必要がある。
【0009】
このため、ヒータの材質はより抵抗値の低い金属膜をパターニングする事が望ましい。加えて抵抗値は導体の断面積に反比例するので、抵抗値を低くするためには、ヒータのパターンはより厚く・幅広くする事が望ましい。
【0010】
ところがこの様な形態とするためには、液晶レンズの位相変調電極群のパターニングとは別の工程で、ヒータの電極パターン用に、金属膜をより厚く・幅広くパターニングする必要があるため、これにより液晶レンズの製造工程を複雑化し、製造歩留まりを低下させ
てしまう。また、幅広のヒータを設けるという事は、液晶レンズの平面サイズを大きくする事につながる。
【0011】
更に、液晶レンズ内に位相変調電極群とヒータを同一平面内に混在させるためには、位相変調電極群へ給電するための電極配線パターンを避けて、ヒータとヒータに給電するためのヒータ配線パターンをレイアウトしなければならないた。そのため、このヒータは、円形外形である位相変調電極群を完全に取り囲む事ができず、可変焦点レンズとして作用する位相変調電極群の有効円内を均一に加熱することが難しい。
【0012】
そこで本発明は上記課題を解決し、液晶パネルの小型化を実現しながらも、十分な熱エネルギーが得られようにヒータの抵抗値を十分下げ、同時に、ヒータのパターン配線の自由度を増して位相変調電極群の有効円内を均一に加熱できるようにして、液晶層を所望の温度以上に維持し、低温下でも十分な速さで応答する液晶レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の液晶レンズは、基本的には次のような構成を採用する。
【0014】
本発明の液晶レンズは、外形が円形形状の位相変調電極群を有する第1の透明基板と、対向電極を有する第2の透明基板と、その二つの透明基板で狭持する液晶層と、第1または第2の透明基板表面に設けられ、位相変調電極群と対向電極に給電を行うための引き出し電極とを有し、可変焦点レンズとして機能する液晶パネルと、位相変調電極群と対向電極へ給電を行う電極配線パターンと、透明基板を介して液晶層を加熱するヒータと、そのヒータに給電を行うヒータ配線パターンとを有するフレキシブル回路基板とを備え、上記フレキシブル回路基板は、電極配線パターンが液晶パネルの引き出し電極に接続され、位相変調電極群の外形よりも少なくとも大きな内径の孔部を透して、位相変調電極群に対して入射光を導くように、透明基板の少なくとも一方の基板表面を覆って設けられるとともに、孔部の外周に設けたヒータにより液晶層を加熱することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の液晶レンズは、上述した孔部およびヒータの内径形状が、円形形状であり、位相変調電極群の外周とヒータの内周の間隔が、一定となるように配設されてなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の液晶レンズは、液晶パネルに設けられたアライメントマークと、フレキシブル回路基板に設けられたマーク孔とによって、液晶パネルとフレキシブル回路基板の位置あわせされて固定されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の液晶レンズは、フレキシブル回路基板には温度センサが配設されてなり、その温度センサの検出温度に応じて、ヒータを制御することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の液晶レンズは、温度センサの前記フレキシブル回路基板への実装面とは反対側の上面を、フレキシブル回路基板を固定配置した液晶パネルにおける第1または第2の透明基板の辺とは異なる辺の領域に位置する基板表面に固着したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フレキシブル回路基板に、液晶パネルに給電するための電極配線パターンを設けると共に、液晶レンズを加熱するヒータおよびヒータ配線パターンを設けることにより、両者を同じ製造プロセスで形成することができるので、何ら特別な加工工程や
部品を追加せずにヒータを形成することができる。
【0020】
また、ヒータを形成する導体は、一般的なフレキシブル回路基板で使用される導体であるので、その厚みは、液晶レンズの透明基板上に形成する場合よりも遥かに厚くする事が可能になる。従って、限られた供給電圧の条件で十分な熱エネルギーを得るために、ヒータの電気抵抗を下げたい場合、ヒータの厚みや幅を増す必要が生じても、柔軟に対応することができる。
【0021】
また、フレキシブル回路基板にヒータを設けることにより、液晶パネルの引き出し電極の配線パターンとの干渉や、ヒータの配線により液晶パネルが大型化するなどの問題に影響されることなく、自由にヒータのパターンを設定することができる。
【0022】
更に、フレキシブル回路基板上に形成したヒータが、液晶レンズの位相変調電極群の外周を完全に取り囲むように透明基板の表面を覆う事により、有効円内をより、均一に、効率よく加熱することができる。
【0023】
この事により、ヒータの抵抗値を下げながらも、小型化を実現でき、同時にヒータ配線の自由度を増して位相変調電極群の有効円内を均一加熱をできるようにして、液晶層を所望の温度以上に維持し、低温下でも十分な速さで応答する液晶レンズを提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図1から図6を参照して、本発明にかかる液晶レンズの好適な実施の形態を説明する。
【0025】
まず、本発明の液晶レンズの概略構成について説明をする。図1は本発明の液晶レンズの全体構成の一例を示す分解斜視図である。
【0026】
図1に示す様に、本発明の液晶レンズ1は、液晶パネル10とフレキシブル回路基板20を備えて構成される。この液晶パネル10には外形が円形形状の位相変調電極群101を備え、この位相変調電極群101と図示しない対向電極に給電を行って、両電極間に挟持される液晶に屈折率分布を持たせることで可変焦点レンズとして機能する。また、フレキシブル回路基板20は、液晶パネル10へ給電を行うための電極配線パターン21とともに、液晶パネル10を加熱するためのヒータ23を備え、液晶パネル10への給電と液晶パネル10の加熱を行うことができる様になっている。
【0027】
次に、図2および図3を用いて、図1に示した液晶パネル10の構成について、詳細に説明をする。図2は、本発明の液晶レンズにおける液晶パネルの構成例を示す断面図である。図3は、本発明の液晶レンズにおける液晶パネルの構成の一例を示す正面図である。
【0028】
図2に示すように、液晶パネル10は、例えば2枚の対向する透明基板11、12を有しており、透明基板11の、透明基板12との対向面には透明なパターン電極13が形成されていて、透明基板12の、透明基板11との対向面には透明な対向電極14が形成されている。そして、透明基板11と、透明基板12との間に例えばホモジニアス配向の液晶層15が封入して構成される。
【0029】
また、透明基板11は、対向する透明基板12に比べて平面形状を大きく設定し、少なくとも2辺に突出した面を有して、透明基板12と対向して貼り合わされる。図2に示す符号16は、第1の突出平面であり、符号17が第2の突出平面である。第1の突出平面16には、引き出し配線102が延長されている。
【0030】
図3における符号101は、外形が円形形状の位相変調電極群、符号102aは、位相変調電極群101に給電を行うための引き出し電極、符号102bは、対向する図には現れていない対向電極14(図2参照)に給電を行うための引き出し電極である。つまり、透明基板11上に形成されているパターン電極13は、位相変調電極群101と、引き出し電極102a、102bにより構成されている。なお、図3における符号106は、シール部材、符号107は、アライメントマークを示す。
【0031】
特に限定しないが、位相変調電極群101は、例えば円形状の中心部電極の回りに、変形の異なる複数の同心円の円周に沿って複数のC字状の輪帯電極が配置されたパターンで構成される。これら複数の輪帯電極の間は絶縁された空間となっており、各輪帯電極はそれぞれ独立に給電できるように、各々が引き出し電極102aに繋がっている。引き出し電極102aは、位相変調電極群101から引き出され、第1の突出平面16上に一列に配列される。
【0032】
また、第1の突出平面16には、パターン電極13に対向する図には現れていない対向電極14と接続された引き出し電極102bが設けられている。この引き出し電極102bにはコモン電圧が印加される。
【0033】
そして、この第1の突出平面16には、後に述べるフレキシブル回路基板が接続され、液晶パネル10の位相変調電極群101および対向電極14に給電が行われる。
【0034】
フレキシブル回路基板に接続された、複数の引き出し電極102aには種々の電圧が印加されるが、その印加電圧に応じて、位相変調電極群101の各輪帯電極のそれぞれの電圧値が異なる状態とすることができる。つまり、位相変調電極群101によって、液晶層15に電圧分布が生じる。この電圧分布を変化させることによって、液晶パネル10の屈折率の分布が変化し、液晶パネル10のレンズパワーを変えることができる。これにより、液晶パネル10を凸レンズの状態にしたり、平行ガラスの状態にしたり、凹レンズの状態にすることで、可変焦点のレンズとして機能させることができる。
【0035】
シール部材106は、外形が円形形状の位相変調電極群101の周縁部を封止し、また液晶パネル10における液晶層15(図2参照)の厚さは、シール部材106内に散布された図示しないスペーサ部材により一定に保たれている。
【0036】
アライメントマーク107は、透明基板11もしくは透明基板12に設けられた位置決め用のマークである。このアライメントマーク107の形状は、例えば図3に示すように、円形状のパターンを一定距離離して2カ所設ける。そしてこのマークの形成方法は、パターン電極13もしくは対向電極14のパターニング時に電極膜と同じ材質で同時にパターニングする。また、後工程で印刷等の手段により設けても構わない。
【0037】
本発明の液晶レンズでは特に限定しないが、一例として液晶パネル10の寸法を下記に示す。
透明基板11、12の一辺の長さは、数mmから十数mm程度、例えば6mmである。また、透明基板11、12の厚さは、数百μm程度、例えば300μmである。液晶層15の厚さは、数μmから数十μm程度、例えば25μmである。位相変調電極群101の直径は数mm程度、例えば2.5mmである。アライメントマーク107は、直径数百μm程度、例えば300μmである。
【0038】
次に、図4を用いて本発明のフレキシブル回路基板20について詳細に説明する。図4は本発明の液晶レンズにおけるフレキシブル回路基板の一例を示す正面図である。
【0039】
一般的に、フレキシブル回路基板20は、厚み30μmから150μmのフィルム状の絶縁体表面に、厚み10μmから50μm程度の導体箔を形成した構造となっており、柔軟性があり大きく変形させることが可能なプリント基板である。この絶縁体としてはポリイミド、導体として銅が用いられる。
【0040】
図4における符号21は、液晶パネル10(図3参照)に給電を行うための電極配線パターン、符号22は、液晶パネル10の位相変調電極群101に対応して設けられた孔部、符号23は、液晶パネル10を加熱するヒータ、符号24は、ヒータ23に給電を行うためのヒータ配線パターン、符号25は、液晶パネル10のアライメントマーク107に対応して設けられた位置決め用のマーク孔、符号26は、液晶パネル10の温度を検出する温度センサ、符号27は温度センサ26に給電するための温度センサ配線パターン、符号28は電極配線パターン21と孔部22の間に設けられたマド、をそれぞれ示している。
【0041】
電極配線パターン21は、液晶パネル10に給電を行うため、図3に示した引き出し電極102a、102bに対応して設けられた金属の配線パターンである。その本数、配線のピッチ、パターン幅は、液晶レンズ10の引き出し電極102a、102bに準ずる。
【0042】
孔部22は、液晶パネル10の位相変調電極群101の外形よりも少なくとも大きな孔を有している。この孔部22の形状は、特に限定しないが、例えば液晶パネル10の位相変調電極群101の円形外形より若干大きな円形の孔とするのが望ましい。
【0043】
ヒータ23は、図2に示した透明基板11または透明基板12を介して液晶層15を加熱するもので、電極配線パターン21と同じ工程・同じ材質で形成されるフレキシブル回路基板20上の金属の配線パターンである。つまり、フレキシブル回路基板20上にヒータ23を形成することで、液晶パネル10の製造工程にヒータを形成する工程を追加したり、ヒータ用に新たな部品を追加したりすることなく、極めて容易にヒータ23を形成することが可能となる。
【0044】
また、ヒータ23の形状は、特に限定しないが、例えば図4のように、孔部22と相似形で、孔部22を取り囲む幅一定の円形形状であり、かつヒータ23に給電するためのヒータ配線パターン24が、ヒータ23の左右両端から引き出される形態となっている。このとき、ヒータ23のパターン幅は、ヒータ配線パターン24のパターン幅よりも狭く設定する。ヒータを含んだ配線経路の中で、部分的にパターン幅が狭い箇所は、電流密度が上がってより発熱するので、ヒータ23のパターン幅を他よりも狭くすることにより、ヒータの円状部分だけを選択的により高く発熱させる事ができる。更にヒータ23の円状経路内のパターン幅を一定にすることで、ヒータ23の経路内は均一に発熱させることができる。
【0045】
また、ヒータ23をフレキシブル回路基板20上に形成するメリットとして、ヒータ23の導体厚を比較的容易に厚く設定できるという事が挙げられる。例えば、液晶パネル10の透明基板上に蒸着やメッキでヒータを形成する場合には、一般的に厚みは1μm以下であるのに対し、フレキシブル回路基板20上に形成する場合は、一般的なフレキシブル回路基板の導体厚を考えれば10μmから50μm程度にする事ができる。
【0046】
つまり、限られた供給電圧の条件で十分な熱エネルギーを得るために、ヒータの電気抵抗を下げたい場合、ヒータの厚みや幅を増す必要が生じても、柔軟に対応することができる。結果的に、ヒータの幅や厚みや引き回しを、柔軟に設定することができるようになり、より小型で、効率の良いヒータ23を実現することが可能になる。
【0047】
マーク孔25は、フレキシブル回路基板20と、液晶パネル10とを位置決めするための孔である。液晶パネル10に設けたアライメントマーク107に対応した位置に配置する。マーク孔25の大きさは、アライメントマーク107の直径より若干大きく設定することが肝要である。すなわち、フレキシブル回路基板20のマーク孔25と、液晶パネル10のアライメントマーク107を重ね合わせた時に、マーク孔25の開口にアライメントマーク107が同心円状に見えるように設定する。
【0048】
温度センサ26は、液晶パネル10の温度を検出するものであるが、ここではフレキシブル回路基板20側に実装する。これにより、液晶パネル10側に温度センサ26用の配線パターンを別途作成する必要がなくなり、その分、液晶パネル10を小型化できるだけでなく、液晶パネル10の引き出し電極のパターンレイアウトや形状を、より柔軟に考慮することができるようになる。また、例えば温度の検出回路に、温度センサ26以外のコンデンサや抵抗などの付帯部品が必要である場合も、同様にフレキシブル回路基板20上に実装することで、配線や実装位置を柔軟に対応することができる。
【0049】
マド28は、液晶パネル10とフレキシブル回路基板20とを接続する際に、フレキシブル回路基板20を曲げやすくするための抜き窓であるが、このマド28を設けなくても構わない。
【0050】
次に、図5及び図6を用いて、本発明の液晶レンズ1の構造を詳しく説明する。図5は、液晶パネル10と、フレキシブル回路基板20とを接続した状態の一例を示す正面図であり、図6は、液晶パネル10と、フレキシブル回路基板20とを接続した状態の一例を示す断面図である。
【0051】
液晶パネル10とフレキシブル回路基板20との接続は、まず、アライメントマーク107と、マーク孔25とを位置決めした状態で、透明基板12上にフレキシブル回路基板20を載置して固定する。フレキシブル回路基板20と液晶パネル10との固定方法は、例えば透明基板12の外周部とフレキシブル回路基板20の表面をUV接着にて固定する。
【0052】
次に、液晶パネル10の第1の突出平面16に露出している引き出し電極102a、102bと、フレキシブル回路基板20の電極配線パターン21とを、治具等で位置合わせした後に、電気的に接続する。ここでの接続方法は、例えば異方性導電シートを用いた熱圧着により行うことができる。これにより、フレキシブル回路基板20は、液晶パネル10の透明基板12上と、第1の突出平面16上と、二つの面に固定されることになる。この二つの面は図6に示すように、透明基板12の厚みと、液晶層15の厚みを加えた分の段差があるが、フレキシブル回路基板20は柔軟性があるので、図6のように段差部付近で折り曲げることにより、異なる高さに接続することが可能となる。
【0053】
ここで、液晶パネル10と、フレキシブル回路基板20とが、所定の位置に位置決め固定された状態では、フレキシブル回路基板20の孔部22が、位相変調電極群101を取り囲む様に重なって配置される。また、孔部22は、位相変調電極群101の外形より少なくとも大きく設定しているので、位相変調電極群101への光の通過を、透明基板12の上面に固定されたフレキシブル回路基板20が妨げることはない。
【0054】
また、この様にフレキシブル回路基板20を液晶パネル10に固定配置すれば、ヒータ23が、位相変調電極群101を取り囲む様に当接される。このときヒータ23の形状は、図5に示すように、ヒータ23の内周が、位相変調電極群101の外周と間隔が一定となるような円形形状となっており、ヒータ23の外周は、内周と幅一定となるような円形
形状となっている。この様にヒータ23を曲率が一定で、かつ幅も一定の円形にする事で、ヒータ内での発熱のムラを低く抑えることができる。また、ヒータ23と、位相変調電極群101との距離を一定となるように配設することで、ヒータ23で発生した熱は透明基板12を介して位相変調電極群101の円内へ効率良く伝わるので、結果として可変焦点レンズとして機能する位相変調電極群101上の液晶層15を、均一に加熱することができる様になる。
【0055】
温度センサ26は、液晶パネル10の第2の突出平面17上に、フレキシブル回路基板20への実装面とは反対側の上面を固着して載置される。この温度センサ26の固着の方法は特に限定しないが、例えば熱伝導性のよいシリコーン接着剤を用いて固着する。この様にして、温度センサ26は、ヒータ23で液晶パネル10を加熱した時の第2の突出平面17上の温度を検出することになる。また、ヒータ23によって加熱された液晶層15の温度をできるだけ正確に検出するためには、温度センサ26の位置は、できるだけ液晶層15との温度差の少ない位置、すなわち、第2の突出平面17上における位相変調電極群101にできるだけ近い位置に固着するのが望ましい。
【0056】
この様に温度センサ26を配置することで、温度センサ26で検出した液晶層15の温度に応じて、液晶層15の温度が所定の値となるようにヒータ23への電力供給が制御される。そして、低温の環境下でも、液晶層15を所定の温度に保持することが可能となり、低温下でも応答速度の変わらない液晶レンズを実現することが可能となる。
【0057】
なお、上記説明では、液晶パネル10の引き出し電極102a、102bを形成した領域(第1の突出平面16)と対向する辺(第2の突出平面17)に温度センサ26を載置する構成例を示したが、本発明の液晶レンズはこれに限定されるものではなく、第1の突出面16と隣り合う領域にこの温度センサ26を設けても構わない。
【0058】
以上説明した様に、本発明の液晶レンズ1は、フレキシブル回路基板20にヒータ23を設けることにより、液晶パネル10の引き出し電極102a、102bの配線パターンとの干渉や、ヒータの配線により液晶パネルが大型化する等の問題に影響されることなく、自由にヒータのパターンを設定することができる。また、限られた供給電圧の条件で十分な熱エネルギーを得るために、ヒータの電気抵抗を下げたい場合、ヒータの厚みや幅を増す必要が生じても、柔軟に対応することができる。結果的に、より小型で、効率の良いヒータを実現することが可能になる。
【0059】
また、液晶パネル10においても、ヒータや温度センサのパターンをレイアウトする必要が無くなり、より小型化したものにできるだけでなく、ヒータを形成する工程や、温度センサを実装する工程が必要ないので、製造工程がシンプルになり、歩留まりを向上させることにもつながる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかる液晶レンズは、可変焦点を有するレンズを用いた自動合焦点装置に有用であり、特にカメラ、デジタルカメラ、ムービーカメラ、カメラ付き携帯電話のカメラ部、車等に搭載されて後方確認用モニタなどに用いられるカメラ、内視鏡のカメラ部などのレンズユニットの構造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の液晶レンズの全体構成の一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の液晶レンズにおける液晶パネルの構成例を示す断面図である。
【図3】本発明の液晶レンズにおける液晶パネルの構成例を示す正面図である。
【図4】本発明の液晶レンズにおけるフレキシブル回路基板の一例を示す正面図である。
【図5】本発明の液晶レンズにおける液晶パネルとフレキシブル回路基板とを接続した状態の一例をしめす正面図である。
【図6】本発明の液晶レンズにおける液晶パネルとフレキシブル回路基板とを接続した状態の一例をしめす断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 液晶パネル
11、12 透明基板
13 パターン電極
14 対向電極
15 液晶層
16 第1の突出平面
17 第2の突出平面
20 フレキシブル回路基板
21 電極配線パターン
22 孔部
23 ヒータ
24 ヒータ配線パターン
25 マーク孔
26 温度センサ
27 温度センサ配線パターン
28 マド
101 位相変調電極群
102、102a、102b 引き出し電極
106 シール部材
107 アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が円形形状の位相変調電極群を有する第1の透明基板と、対向電極を有する第2の透明基板と、前記第1、第2の透明基板で狭持する液晶層と、前記第1または第2の透明基板表面に設けられ、前記位相変調電極群と前記対向電極に給電を行うための引き出し電極とを有し、可変焦点レンズとして機能する液晶パネルと、
前記位相変調電極群と前記対向電極へ給電を行う電極配線パターンと、前記透明基板を介して前記液晶層を加熱するヒータと、当該ヒータに給電を行うヒータ配線パターンと、を有するフレキシブル回路基板と、を備え、
前記フレキシブル回路基板は、前記電極配線パターンが前記液晶パネルの引き出し電極に接続され、前記位相変調電極群の外形よりも少なくとも大きな内径の孔部を透して、前記位相変調電極群に対して入射光を導くように、前記透明基板の少なくとも一方の基板表面を覆って設けられるとともに、前記孔部の外周に設けたヒータにより前記液晶層を加熱する
ことを特徴とする液晶レンズ。
【請求項2】
前記孔部およびヒータの内径形状は、円形形状であり、
位相変調電極群の外周とヒータの内周の間隔が、一定となるように配設されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ。
【請求項3】
前記液晶パネルに設けられたアライメントマークと、前記フレキシブル回路基板に設けられたマーク孔とによって、前記液晶パネルと前記フレキシブル回路基板が位置合わせされて固定されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶レンズ。
【請求項4】
前記フレキシブル回路基板には温度センサが配設されてなり、当該温度センサの検出温度に応じて、前記ヒータを制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶レンズ。
【請求項5】
前記温度センサの前記フレキシブル回路基板への実装面とは反対側の上面を、前記フレキシブル回路基板を固定配置した前記液晶パネルにおける、前記透明基板の辺とは異なる辺の領域に位置する基板表面に固着した
ことを特徴とする請求項4に記載の液晶レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−209614(P2008−209614A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45540(P2007−45540)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】