説明

液晶化合物

【課題】本発明は式Iの液晶化合物、その合成方法、その液晶媒体中での使用、式Iの化合物の少なくとも1種を含有する液晶媒体、およびこの媒体を含む電気光学ディスプレイに関する。


(式中、R11はアルキル基等、X11はF、OCF、OCHF等、L11はHまたはF、Y、WはO、CHを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともテトラピラン環を有する液晶化合物、液晶媒体中でのその使用、発明の化合物を含有する液晶媒体、その電気光学の目的のための使用、およびこの媒体を含むディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は、印加電圧によって物質の光学的性質を変化させることができるので、主に表示装置の中の誘電体として使用される。液晶に基づいた電気光学装置は、当業者に公知であり、種々の効果に基づくことができる。そのような装置の例として、動的散乱を有するセル、DAP(整列相の変形:deformation of aligned phases)セル、ゲスト/ホストセル、ねじれネマチック構造を有するTNセル、STN(スーパーツイストネマチック)セル、SBE(超複屈折効果:superbirefringence effect)セルおよびOMI(光学モード干渉:optical mode interference)セルが挙げられる。最も一般的な表示装置は、Schadt Helfrich効果に基づく、ツイストネマチック構造を有する。
【0003】
液晶材料としては、良好な化学的および熱的安定性を有すると共に、電場と電磁線放射に対しても優れた安定性を有することが必要である。また、液晶材料は、低粘度であり、セル中で使用されて、短アドレス時間、低しきい電圧および高いコントラストをもたらすものでなければならない。
【0004】
それらは、さらに通常の動作温度において(つまり、室温以上または室温以下のできるだけ広い範囲において)、適切な中間相、例えば前述のセル用のネマチック中間相またはコレステリック中間相を有していなければならない。液晶は通常、複数成分の混合物として使用されるので、成分が互いに容易に混和することが重要である。さらに導電率、誘電率異方性および光学異方性のような特性は、セルタイプ、用途分野に応じて、種々の要求を満足しなければならない。 例えば、ツイストネマチック型セルの材料は、正の誘電異方性および低い導電率を有しているべきである。
【0005】
例えば、個々のピクセルのスイッチングのために集積非線形素子を有するマトリックス型液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)については、大きな正の誘電異方性、比較的小さな複屈折率、広いネマチック相、非常に高い比抵抗、優れたUVおよび温度安定性、および低い蒸気圧を有する媒体が望まれる。
【0006】
このタイプのマトリックス型液晶ディスプレイは公知である。個々のピクセルのそれぞれのスイッチングに使用することができる非線形素子は、例えばアクティブ素子(つまりトランジスター)である。この用語「アクティブマトリックス」は、2つの区別されるタイプに分けられる。
【0007】
1. 基板としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体)あるいは他のダイオード。
【0008】
2. 基板としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT)。
【0009】
基板材料として単結晶シリコンを使用すると、色々な部品ディスプレイのモジュール組み立てでさえ、接続部での問題が生じるので、ディスプレイ・サイズが制限され
る。
【0010】
好適であってより有望なタイプ2の場合には、TN効果が電気光学効果として使用される。ここには、区別される2つの技術がある。即ち、例えばCdSeのように、化合物半導体を含むTFTと、多結晶かアモルファスシリコンに基づいたTFTである。後者の技術に関して、集中的な研究が世界的に行われている。
【0011】
TFTマトリックスは、ディスプレイの1つのガラス板の内面に形成され、もう一方のガラス板は、内面に透明な対向電極を有する。ピクセル電極のサイズと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。この技術は、フルカラー対応のディスプレイにも適用できる。そこでは、フィルタ素子がスイッチング可能なピクセルの各々に対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置される。
【0012】
TFTディスプレイは、通常、透過光に対してクロスした偏光板を備えたTNセルとして動作し、背面から照らされる。
【0013】
ここで用語MLCは、集積非線形素子を備えたどのようなマトリックスディスプレイも含む。即ち、アクティブマトリックスに加えて、バリスターやダイオード(MIM=metal−insulator−metal)のような受動素子を備えたディスプレイも含む。
【0014】
このタイプのMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えばポケット・テレビ)、またはコンピュータ用(ラップトップ)および自動車もしくは航空機内で使用される高度情報表示装置用途に適している。コントラストの角度依存性と応答時間の問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の不十分に高い比抵抗に起因する問題がある(TOGASHI, S.,
SEKIGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H.,
SHIMIZU, H., Proc. Eurodisplay
84, Sept. 1984: A 210-288 Matrix LCD
Controlled by Double Stage Diode Rings, p. 141 ff, Paris;および STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: Design of Thin Film
Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays, p.145 ff, Paris)。抵抗が低下するほど、MLCディスプレイのコントラストが劣化し、また、残像消去の問題も生じうる。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命の全体に渡って低下するので、許容される耐用年数を得るためには、高い(初期)抵抗を有することが非常に重要である。特に、低電圧用混合物の場合には、高い抵抗値を達成することは従来不可能であった。さらに、比抵抗の増大が、温度の上昇に伴い、および加熱および/またはUV照射後に可能な限り小さいことも重要である。さらに、従来技術の混合物の低温特性もまた特に不利である。低温であっても、結晶および/またはスメクチック相が生じないことが要求され、さらに、粘性の温度依存性もできるだけ低いことが要求される。さらに、高い値の電圧保持率(VHR)−それは、時間間隔に関するディスプレイ・ピクセルに印加された電圧の時間インターバルの間における低下の基準を表わす−が、MLCディスプレイの良好な画像品質に必要である。先行技術で公知のMLCディスプレイは今日の必要条件を満たさない。
【0015】
したがって、非常に高い比抵抗と同時に、広い動作温度範囲、低温でも短い応答時間および低いしきい電圧を有しているMLCディスプレイであって、これらの不都合を有していないか、有していたとしてもより少ない程度であるようなものが、引き続き要求されている。
【0016】
TN(Schadt−Helfrich)セルでは、セル中で次の利点を容易ならしめるような媒体が望まれる。
【0017】
−拡大されたネマチック相範囲(特に、低い温度までの)
−極度に低い温度でのスイッチ能力(アウトドア用途、自動車、航空電子工学)
−紫外線照射に対する増大された抵抗(より長い寿命)
−低しきい電圧Vthのための高いΔε。
【0018】
先行技術から入手可能な媒体では、これらの利点を、同時に他のパラメーターを保持しながら達成することはできない。
【0019】
スーパーツイスト型(STN)セルの場合には、より大きな時分割駆動および/または低いしきい電圧および/またはより広いネマチック相範囲(特に、低温において)を可能にする媒体が望まれる。この目的のために、利用可能なパラメーターの範囲(透明点、スメクチック−ネマチックの相転移または融点、粘度、誘電パラメーター、弾性パラメーター)を一層広げることが、至急望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、特に、前述の不都合を有していないか、有していたとしてもより少ない程度であるような媒体、特にMLC、IPS、TNまたはSTNディスプレイ用の媒体であって、好ましくは非常に高い誘電異方性および電圧保持率、同時にできるだけ広いネマチック相範囲を有するものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、本発明の液晶化合物により達成されることが見出された。
【0022】
本発明は、式Iの液晶化合物に関する。
【0023】
【化1】

【0024】
ここで、R11は、H、1〜15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基、または2〜15個の炭素原子を有するアルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、それぞれ無置換またはハロゲンでモノ置換またはポリ置換されており、但し、1または2以上のCH基は、O原子同士が直接結合しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、
【0025】
【化2】

【0026】
−O−、−CO−、−CO−O−または−O−CO−で置換されていても良く、
11は、F、Cl、CN、NCS、SF、1〜7個の炭素原子を有するフルオロアルキルもしくはフルオロアルコキシ、または2〜7個の炭素原子を有するフルオロアルケニルもしくはフルオロアルケニルオキシであり、
11は、HまたはFであり、
YがOを表し且つWがCHを表すか、または、YがCHを表し且つWがOを表すか、またはYおよびWが両方ともCHを表す。
【0027】
本発明はさらに、液晶媒体中での式Iの化合物の使用に関する。本発明はさらに、少なくとも2つの液晶化合物を有する液晶媒体に関し、その媒体が少なくとも1つの本発明の式Iの化合物を含有することを特徴とする。
【0028】
式Iの化合物は広範囲の応用を有している。置換基の選択により、液晶媒体が大部分が構成されるベース材料として働かせることができる。しかし、例えば、このタイプの誘電体の誘電および/または光学異方性に影響を与えるため、および/またはそのしきい電圧および/またはその粘度および/またはその透明点を最適化するために、他の化合物のクラスからの液晶ベース材料に式Iの化合物を添加することも可能である。
【0029】
純粋な状態では、式Iの化合物は無色であり、電気光学の使用のために好ましい温度範囲で液晶中間相を形成する。本発明の化合物は、高い誘電異方性の値と同時に比較的低い光学異方性の値および低温においてさえも良好な溶解性において際立っている。そのため、低い温度での貯蔵安定性が際立った改良されている。それらは化学的、熱的に安定であり、また光に対して安定である。
【0030】
本発明の式Iの好ましい化合物は、置換基L11がFを示すものである。
【0031】
発明の式Iの化合物は、さらにはR11が、7個までの炭素原子、即ち、1、2、3、4、5、6または7個(アルキル)、または2、3、4、5、6または7個(アルケニル)の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニルを表すものである。アルキルまたはアルケニル基は、無置換が特に好ましい。好ましいR11の例としては、とりわけメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、ビニル、1E−プロペニル、2−プロペニル、1E−ブテニル、3−ブテニル、1E−ペンテニル、3E−ペンテニル、1E−ヘキセニルおよび1E−ヘプテニルである。
【0032】
分岐した翼の基(wing group)R11を含有する式Iの化合物は、従来の液晶ベース材料中での良好な溶解性のためにしばしば重要であるが、それらが光学活性である場合には、特にキラルドーパントとして重要である。このタイプのスメクチック化合物は、強誘電材料の成分として適している。このタイプの分岐した基は、一般に、1以下の鎖分岐を含む。好ましい分岐基R11は、イソプロピル、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、イソブチル(=2−メチルプロピル)、2−メチルブチル、イソペンチル(=3−メチルブチル)、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、イソプロポキシ、2−メチルプロポキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルペンチルオキシ、3−メチルペンチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、1−メチルヘキシルオキシおよび1−メチルヘプチルオキシである。
【0033】
さらに、式Iの化合物において、X11が、F、Cl、−CN、OCFまたはOCHFを示すことが好ましい。X11は、特に好ましくはF、OCFまたはOCHFであり、特に、FまたはOCFである。
【0034】
本発明の式Iの化合物は、3つの同様に好ましいグループを構成し、それらは式IA、IBおよびICによって表わされる。
【0035】
【化3】

【0036】
式Iの化合物の好ましい実施形態、またはサブ式IA,IBおよびICの好ましい実施形態は、式I1〜I30の化合物から選ばれる。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
ここで、R11は式Iで上に定義されたものと同じ意味を有する。好ましくは7個までの炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル基を表し、特に、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、ビニール、1E−プロペニル、2−プロペニル、1E−ブテニル、3−ブテニル、1E−ペンテニル、3E−ペンテニル、1E−ヘキセニルおよび1E−ヘプテニルである。式I1〜I30の好ましい化合物のなかで、特に好ましいものは、式I1、I2、I4、I6、I7、I8、I10、I12、I14、I16、I18、I20、I22、I24、I26、I28およびI30であり、特に式I1、I2、I8、I12、I18、I22およびI28の化合物である。
【0042】
式Iの化合物は、それ自身文献に公知の方法で合成される(例えば一般的文献、Houben-Weyl,
Methoden der Organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry],
Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart等)。正確にはこのような合成に知られており適した条件が選ばれる。また、ここにはより詳しくは述べないが、それ自身公知の異なる方法によることもできる。
【0043】
本発明の化合物は、例えば次の合成スキームまたはそれに類似する方法により合成することができる。スキーム1の最終の反応ステップで、水素化の後に得られた式AIのテトラヒドロピランのシス/トランス異性体混合物の、トランス異性体への異性化もまた例として示した。
【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
もし、本発明の化合物の基または置換基が、または本発明の化合物そのものが、それらが例えば非対称中心を有することにより光学活性の基、置換基または化合物であるとき、これらもまた本発明に包含される。同じことが、他の理由のために立体異性体の形態であることができる本発明の式Iの化合物にも当てはまる。言うまでも無く、発明の式Iの化合物は、(立体)異性体的に純粋な形態、例えば純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在しても、または例えばラセミ体のように複数の異性体の混合物として存在してもよい。
【0048】
式Iの化合物が、シス/トランス異性体の形態でありうる場合、トランス異性体(または全トランス異性体)が一般に好ましい。それらは、当業者に慣用の方法による選択的合成により、または異性体の混合物から塩基または酸を用いた異性化により、または結晶化、蒸留またはクロマトグラフ等の従来の分離方法によって、得ることができる。
【0049】
本発明の液晶媒体は、式Iの化合物の少なくも1種を含有する。それは好ましくは式Iの化合物の複数(好ましくは2種、3種またはそれより多く)に基づき、これらの化合物の割合は、一般に、2〜95%、好ましくは5〜60%、特に好ましくは5〜40%の範囲である。
【0050】
本発明の液晶媒体は、発明の化合物の1または2以上に加えて、さらに構成成分として好ましくは2〜40、特に好ましくは4〜30の成分を含有する。特に、これらの媒体は、本発明の化合物の1または2種以上に加えて、7〜25の成分を含有する。これらのさらなる構成成分は、好ましくはネマチックまたはネマトゲニック(モノトロピックまたはアイソトロピック)材料、特に次のクラス、即ち、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルもしくはシクロヘキシルベンゾエート類、シクロヘキサンカルボン酸のフェニルもしくはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシル安息香酸のフェニルもしくはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシルシクロへキサンカルボン酸のフェニルもしくはシクロヘキシルエステル類、安息香酸の、シクロへキサンカルボン酸のもしくはシクロヘキシルシクロへキサンカルボン酸のシクロヘキシルフェニルエステル類、フェニルシクロへキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、フェニルシクロヘキシルシクロへキサン類、シクロヘキシルシクロへキサン類、シクロヘキシルシクロヘキシルシクロへキセン類、1,4−ビスシクロヘキシルベンゼン類、4,4’−ビスシクロヘキシルビフェニル類、フェニル−またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルもしくはシクロヘキシルピリジン類、フェニル−もしくはシクロヘキシルジオキサン類、フェニル−もしくはシクロヘキシル−1,3−ジチアン類、1,2−ジフェニルエタン類、1,2−ジシクロヘキシルエタン類、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン類、1−シクロヘキシル−2−(4−フェニルシクロヘキシル)エタン類、1−シクロヘキシル−2−ビフェニリルエタン類、1−フェニル−2−シクロヘキシルフェニルエタン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換された桂皮酸類から選ばれる。これらの中の、1,4−フェニレン基はフッ素化されていてもよい。
【0051】
発明による媒体のさらなる成分として適当な、最も重要な化合物は、式1、2、3、4および5によって特徴付けられる
R’−L−E−R” 1
R’−L−COO−E−R” 2
R’−L−OOC−E−R” 3
R’−L−CHCH−E−R” 4
R’−L−CFO−E−R” 5
式1、2、3、4および5において、LおよびEは、同一でも異なってもよく、互いに独立して、次の群からの2価の基を示す。−Phe−、−Cyc−、−Phe−Phe−、−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−Pyr−、−Dio−、−G−Phe−および−G−Cyc−およびそれらの鏡像体であり、ここで、Pheは無置換またはフッ素置換の1,4−フェニレンを示し、Cycはtrans−1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−シクロへキセニレンを示し、Pyrはピリミジン−2,5−ジイルまたはピリジン−2,5−ジイルを示し、Dioは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを示し、そしてGは2−(trans−1,4−シクロヘキシル)エチルを示す。
【0052】
LおよびEの1つは、好ましくは、Cyc、PheまたはPyrである。Eは好ましくはCyc、PheまたはPhe−Cycである。本発明の媒体は、好ましくは、式1、2、3、4および5で、LおよびEがCyc、PheおよびPyrからなる群より選ばれる化合物の1種または2種以上、同時に式1、2、3、4および5で、基LおよびEの一方がCyc、PheおよびPyrからなる群より選ばれ、もう一方の基が−Phe−Phe−、−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−G−Phe−および−G−Cyc−からなる群より選ばれる化合物の1種または2種以上を含有し、場合によっては式1、2、3、4および5で、LおよびEが−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−G−Phe−および−G−Cyc−からなる群より選ばれる化合物の1種または2種以上をさらに含有する。
【0053】
R’および/またはR”は、互いに独立に、それぞれ炭素数8までのアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルオキシもしくはアルカノイルオキシ、−F、−Cl、−CN、−NCS、−(O)CH3−(k+l)Cl{ここでiは0または1、kおよびlは1、2または3である。}を示す。
【0054】
式1、2、3、4および5の化合物のより下位の1つのサブグループにおいては、R’およびR”は互いに独立してそれぞれ、8までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、オキサアルキル、アルケニルオキシまたはアルカノイルオキシを示す。このより下位のサブグループは下でグループAと呼ばれ、サブ式1a、2a、3a、4aおよび5aで参照される。これらの化合物の多くの場合、R’およびR”は互いに異なっており、これらの基の1つは、通常アルキル、アルケニル、アルコキシまたはアルコキシアルキルである。
【0055】
式1、2、3、4および5の化合物の、もう1つのより下位のサブグループはグループBと呼ばれ、R”が−F、−Cl、−NCS、−(O)CH3−(k+l)Cl{ここでiは0または1、kおよびlは1、2または3である。}である。R”がこの意味を有する化合物は、サブ式1b、2b、3b、4bおよび5bで参照される。特に、サブ式1b、2b、3b、4bおよび5bにおいて、R”が、−F、−Cl、−NCS、−CF、−OCHF、または−OCFの意味を有する化合物が好ましい。
【0056】
サブ式1b、2b、3b、4bおよび5bの化合物において、R’は、サブ式1a〜5aの化合物について示した意味を有し、好ましくはアルキル、アルケニル、アルコキシまたはオキサアルキルである。
【0057】
式1、2、3、4および5の化合物の、さらに他のより下位のサブグループにおいて、R”は−CNを示す。このサブグループは、下でグループCと呼ばれ、このサブグループの化合物は、サブ式1c、2c、3c、4cおよび5cで対応して表記される。サブ式1c、2c、3c、4cおよび5cの化合物において、R’は、サブ式1a〜5aの化合物について示した意味を有し、好ましくはアルキル、アルコキシまたはアルケニルである。
【0058】
好ましいグループA、BおよびCの化合物に加えて、式1、2、3、4および5の化合物で提示された置換基の他の変形例を有するものもまた一般的である。これらの物質のすべては、文献記載、またはそれに類似の方法により得ることができる。
【0059】
本発明の式Iの化合物に加えて、発明の媒体は、好ましくはグループAおよび/またはBおよび/またはCから選ばれる1種または2種以上の化合物を含有する。これらのグループの化合物の本発明の媒体中での重量割合は、好ましくは、
グループA:0〜90%、好ましくは20〜90%、特に好ましくは30〜90%;
グループB:0〜80%、好ましくは10〜80%、特に好ましくは10〜65%;
グループC:0〜80%、好ましくは5〜80%、特に好ましくは5〜50%である。
【0060】
ここで、グループAおよび/またはBおよび/またはCの重量割合の合計は、本発明のそれぞれの媒体中で、好ましくは5〜90%、特に好ましくは10〜90%である。
【0061】
本発明の液晶混合物により、利用可能なパラメーター範囲を著しく広げることが可能である。
【0062】
透明点、熱およびUV安定性および誘電および光学異方性の達成可能な組合わせは、先行技術の従来材料よりはるかに優れている。
【0063】
高い透明点、低温でのネマチック相および高い正のΔεに対する要求は、従来は不十分な程度までしか達成できなかった。対応する透明点と匹敵する粘度を有する公知のメソゲン化合物およびそれを含有する液晶媒体は、より低いΔε、従って高いしきい電圧Vthを有する。他の液晶化合物またはそれを含有する液晶混合物で、同程度の高いΔεと低しきい電圧値を有するものはあるが、それらは著しく高い粘度および/または著しく低い透明点を有している。DE 195 25 314A1から知られた(ビスジオキサニル)フェニル誘導体と比べて、本発明の式Iの化合物は、特に、低温でさえも、ネマチック液晶媒体中でのより優れた溶解性の点で際立っている。
【0064】
本発明の液晶混合物は、−20℃、好ましくは−30℃まで、特に好ましくは−40℃までネマチック相を保持しながら、80℃を超える、好ましくは90℃を超える、特に好ましくは100℃を超える透明点を可能にして、同時に4以上、好ましくは6以上の誘電異方性Δε、および高い比抵抗を達成可能として、優れたSTNおよびMLCディスプレイを達成可能とする。特に、この混合物は、低電圧駆動によって特徴づけられる。TNしきい値は、一般に1.5V未満であり、好ましくは1.3V未満である。
【0065】
言うまでもなく、本発明の混合物成分の適切な選択により、他の有利な性質を保持しながら、より高いしきい電圧でより高い透明点(例えば110℃を超える)が達成されるか、またはより低いしきい電圧でより低い透明点が達成されることも可能である。粘度の上昇をわずかにとどめながら、より大きなΔεと従ってより低いしきい電圧の達成も同じように可能である。本発明のMLCディスプレイは、好ましくはグーチ・タリーの第1次透過極小で動作させることが好ましい(C.H. Gooch and H.A. Tarry, Electron. Lett. 10, 2-4, 1974; C.H. Gooch and H.A. Tarry, Appl.
Phys., Vol. 8,
1575-1584, 1975)。ここで、例えば特性曲線の急峻性およびコントラストの低視野角依存性のような特に好ましい電気光学特性(ドイツ特許3022818)に加えて、より小さな誘電異方性でも、第2次透過極小での類似のディスプレイと同じしきい電圧にするのに十分である。これにより、第1次透過極小で本発明の混合物を使用することにより、シアノ化合物を含む混合物の場合に比べて、極めて高い比抵抗値を達成することができる。個々の成分とその量の適切な選択を通して、当業者は簡単なルーチンの方法によりMLCのあらかじめ指定された層の厚さに必要な複屈折率を定めることができる。
【0066】
20℃における流動粘度ν20は、好ましくは60mm・s−1未満であり、特に好ましくは50mm・s−1未満である。ネマチック相範囲は、少なくとも90度あることが好ましく、さらに少なくとも100度あることが好ましい。この範囲は少なくとも−30℃から+80℃にわたることが好ましい。20℃における回転粘度γは、好ましくは200mPa・s未満であり、特に好ましくは180mPa・s未満であり、極めて好ましくは160mPa・s未満である。
【0067】
容量保持率(HR)の測定[S. Matsumoto et al., Liquid Crystals 5, 1320
(1989); K. Niwa et al., Proc. SID Conference, San Francisco, June 1984, p. 304
(1984); G. Weber et al., Liquid Crystals 5, 1381 (1989)]により、式Iの化合物を含有する本発明の混合物は、式:
【0068】
【化11】

【0069】
のシアノフェニルシクロヘキサン類や、式:
【0070】
【化12】

【0071】
のエステル化合物類を式Iの化合物の代わりに含有する混合物に比べて、高い温度でもHRの低下が著しく小さいことが示された。
【0072】
本発明の混合物のUV安定性は極めて優れている。即ち、それらはUV照射によってもHRの低下が著しく小さい。
【0073】
式Iの化合物およびグループA、BおよびCの化合物の最適の混合比は、所望の特性およびグループA、Bおよび/またはCの成分の選択およびその他の成分の選択に実質上依存する。前述の与えられた範囲内での適切な混合比は、場合ごとに容易に決めることができる。
【0074】
本発明に従って使用できる液晶混合物は、それ自体公知の方法で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分が、主要な組成を構成する成分中で、好ましくは加温されて溶解される。さらに、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール等の有機溶媒の液晶成分溶液を混合して、完全に混合した後、例えば蒸留によって溶媒を再度除去することも可能である。さらに、混合物を他の慣用の方法に従って、例えば、予備混合物(例えば類似体混合物)を使用して、またはいわゆるマルチボトルシステムを利用して、調製してもよい。
【0075】
本発明の媒体は、当業者に公知で文献記載の添加剤、例えば安定剤、キラルドーパント、二色性染料を通常の濃度でさらに含んでもよい。これらのさらなる構成成分は、混合物全体量に対して、0%〜15%の範囲、好ましくは0.1%〜10%の範囲、そして特に6%を超えない範囲で存在する。それぞれの化合物の濃度は、一般に、0.1〜3%の範囲である。他の混合物構成成分の濃度範囲を示すときには、これらの添加剤および類似構成成分の濃度は考慮に含まれない。
【0076】
本発明は、またこのタイプの液晶媒体を含む電気光学ディスプレイ(特に、外枠と共にセルを構成する2つの平行の外板、各ピクセルをスイッチングするための外板上の集積非線形素子、および正の誘電異方性および高比抵抗のネマチック液晶混合物を有するSTNまたはMLCディスプレイ)に関し、またこれらの媒体の電気光学目的への使用に関する。
【0077】
偏光板、電極基板および表面処理電極を伴う本発明のMLCディスプレイの構成は、このタイプのディスプレイの通常の設計に対応する。「通常の設計」という用語は、ここでは広い意味で用いられ、MLCディスプレイに関するすべての誘導・変形を含み、特にポリ−Si TFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子を含む。
【0078】
しかしながら、本発明のディスプレイと従来のツイストネマチックセルに基づくディスプレイとの大きな相違点は、液晶層の液晶パラメーターの選択にある。
【0079】
本発明に関して、用語「アルキル」は、明細書または特許請求の範囲で他の意味に定義されない限り、1〜15(即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15)の炭素原子を有する直鎖または分岐の脂肪族炭化水素を示す。このアルキルが飽和であるとき、「アルカニル」とも呼ばれる。アルキル基中のCH基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、−O−(「オキサアルキル」、「アルコキシ」)、−CH=CH−(「アルケニル」)、−C≡C−(「アルキニル」)、−CO−、−CO−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよい。アルキルは、好ましくは1、2、3、4、5、6または7の炭素原子を有する直鎖基であり、特にメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチルである。2〜5個の炭素原子を有する基が一般に好ましい。アルキル基はまたハロゲン、特にフッ素によりモノ−またはポリ置換されていてもよい。ここでは、CFおよびCHFが特に好ましい。
【0080】
アルコキシは、O−アルキル基を意味し、そこで酸素原子はアルコキシ基で置換される基または置換される環に直接結合しており、アルキルは上で定義したとおりであり、好ましくは非分岐のものである。好ましいアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシおよびオクトキシである。アルコキシは、特に好ましくは−OCH、−OC、−O−n−C、O−n−Cおよび−O−n−C11である。アルコキシル基は、さらにハロゲン、特にフッ素によってモノ−またはポリ置換されていてもよい。特に、好ましいフッ素置換アルコキシ基は、OCFおよびOCHFである。
【0081】
用語「アルケニル」は、明細書または特許請求の範囲で他の意味に定義されない限り、少なくとも1つのC=C二重結合を有する脂肪族炭化水素を示し、本発明に関して2〜15(即ち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15)の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルケニル基、特に直鎖基のものを包含する。用語「アルケニル」は、2またはそれより多くのC=C二重結合を有する基も包含する。特に好ましいアルケニル基は、C−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニル、C−C−4−アルケニル、C−C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特にC−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニルおよびC−C−4−アルケニルである。好ましいアルケニルとしては、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニル等を挙げることができる。5までの炭素原子を有する基が一般に好まれる。アルケニル基は、ハロゲン特にフッ素によりモノ−またはポリ置換されていてもよい。特に、好ましいフッ素化アルケニル基は、CH=CHF、CF=CHFおよびCF=CFである。
【0082】
「アルケニルオキシ」は、O−アルケニルを意味し、そこで酸素原子はアルケニルオキシ基で置換される基または置換される環に直接結合しており、アルケニルは上で定義したとおりであり、好ましくは非分岐のものである。アルケニルオキシ基は、さらにハロゲン、特にフッ素によってモノ−またはポリ置換されていてもよい。特に、好ましいフッ素置換アルケニルオキシ基は、OCH=CHF、OCF=CHFおよびOCF=CFである。
【0083】
本発明では、アルキル基中の1または2以上のCH基が、−O−で置き換えられてもよいので、用語「アルキル」は、「オキサアルキル」基をも含む。本発明に関して、用語「オキサアルキル」は、アルキルであって、少なくとも1つの非末端CH基が、O原子同士が直接結合しないようにして、−O−で置換されたアルキル基を示す。オキサアルキルは、好ましくは式C2a+1−O−(CHの直鎖基を含む。ここで、aおよびbは互いに独立してそれぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、但し、a+b≦14である。特に好ましくは、aは1〜6の整数であり、bは1または2である。
【0084】
アルキル基またはアルケニル基中の1または2以上のCH基が、−C≡C−で置き換えられた場合、アルキニル基またはアルケニニル基が存在する。1または2以上のCH基の−CO−(「カルボニル」)、−CO−O−(「アシルオキシ」)または−O−CO−(「オキシカルボニル」)に置き換えも可能である。対応する基は直鎖でも分岐でもよい。好ましくは直鎖であって2〜6個の炭素原子を有するものである。従って、それらは特に、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセトキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセトキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセトキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシルカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピルまたは4−(メトキシカルボニル)ブチルである。
【0085】
もし、アルキル基の中の1つのCH基が無置換または置換された−CH=CH−で置き換えられ、隣接する1つのCH基がCOまたは−CO−Oまたは−O−COで置き換えられた場合、これらは直鎖でも分岐でもよい。それは、好ましくは、直鎖であり4〜13個の炭素原子を有する。従って、それは特に、アクリロイルオキシメチル、2−アクリロイルオキシエチル、3−アクリロイルオキシプロピル、4−アクリロイルオキシブチル、5−アクリロイルオキシペンチル、6−アクリロイルオキシヘキシル、7−アクリロイルオキシヘプチル、8−アクリロイルオキシオクチル、9−アクリロイルオキシノニル、10−アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2−メタクリロイルオキシエチル、3−メタクリロイルオキシプロピル、4−メタクリロイルオキシブチル、5−メタクリロイルオキシペンチル、6−メタクリロイルオキシヘキシル、7−メタクリロイルオキシヘプチル、8−メタクリロイルオキシオクチルまたは9−メタクリロイルオキシノニルである。
【0086】
用語「フルオロアルキル」は、好ましくは、末端フッ素を有する直鎖アルキル基、即ち、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルを含む。しかしながら、フッ素のその他の置換位置を除外するものではない。フルオロアルキルは特に好ましくはCFを表す。用語「フルオロアルコキシ」は対応してO−フルオロアルキル基を示す。フルオロアルコキシは特に好ましくは、OCFおよびOCHFを表す。
【0087】
用語「フルオロアルケニル」は、好ましくは非分岐の、フッ素置換基を有するアルケニル基、例えば、CH=CHF、CF=CHFおよびCF=CFを表す。用語「フルオロアルケニルオキシ」は対応してO−フルオロアルケニル基を示す。
【0088】
用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を表し、「ハロゲン化された」基は、フッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素、特にフッ素でモノ−またはポリ置換されている基を意味する。
【0089】
Cは結晶相、Sはスメクチック相、SはスメクチックC相、SはスメクチックB相、SはスメクチックA相、Nはネマチック相およびIはアイソトロピック相を表す。
【0090】
10は、10%の透過(基板表面に垂直な視角)の電圧を表す。tonおよびtoffは、V10の2倍に対応する動作電圧におけるスイッチオン時間およびスイッチオフ時間を表す。Δnは光学異方性(Δn=n−n)、nまたはnは屈折率を表す。Δεは、誘電異方性(Δε=ε‖−ε⊥、ここでε‖は分子軸に平行な誘電率、ε⊥は垂直の誘電率を表す。)を表わす。電気光学のデータは、特に別に述べない限り20℃で、TNセルにおいて第1次透過極小で(すなわち、0.5μmのd・Δn値で)測定した。光学的データは、特に別に述べない限り20℃で測定した。γ1は20℃における回転粘度(mPa・s)を表す。
【0091】
物性値の実験的な決定のために、「“Licristal, Physical
Properties Of Liquid Crystals, Description of the measurement methods” ed. W.
Becker, Merck KGaA, Darmstadt, revised edition, 1998」に記載された手法を実施した。そこで、個々の化合物の特性は、一部は、それ自身の物性値が知られた所定のホスト混合物中で、所定量の化合物(通常5または10重量%)の測定の後に、外挿して決定した。
【0092】
本出願および以下に示す例において、液晶化合物の構造は頭文字で示されており、その化学式への変換は下記表AおよびBに従って行われる。基C2n+1およびC2m+1は全部が、n個またはm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖状アルキル基である。ここでnおよびmは整数であり、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および15である。表Bのコードは、それ自体で明らかである。表Aには、親構造にかかわる頭文字のみが示されている。それぞれの場合において、この親構造の頭文字の後に、ダッシュにより分離されて、置換基R、R、LおよびLのためのコードが続く。
【0093】
【表1】

【0094】
好適な混合物成分を、表Aおよび表Bに示す。
【0095】
表A
【0096】
【化13】

【0097】
【化14】

【0098】
【化15】

【0099】
表B:
【0100】
【化16】

【0101】
【化17】

【0102】
【化18】

【0103】
【化19】

【0104】
【化20】

【0105】
【化21】

【0106】
【化22】

【0107】
表C:
表Cは、例えば0.05〜10重量%の量で、本発明の混合物に一般に添加される使用可能なドーパントを示す。
【0108】
【化23】

【0109】
【化24】

【0110】
表D:
例えば0.01〜10重量%の量で、例えば本発明の混合物に添加することができる安定剤を下に示す。
【0111】
【化25】

【0112】
【化26】

【0113】
【化27】

【0114】
【化28】

【0115】
下記の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。上および下において、パーセンテージは重量パーセントである。温度はすべて摂氏で示される。m.p.は融点を表わし、cl.p.は透明点を表わす。さらにまた、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相、およびI=アイソトロピック相である。これらの記号間のデータは相転移温度である(℃)。Δnは光学異方性(589nm、20℃)、Δεは誘電異方性(1kHz、20℃)を表し、流動粘度ν20(mm/sec)は20℃で測定した。回転粘度γ(mPa・s)はそれぞれ20℃で測定した。
【0116】
常法による処理とは、必要により水を追加し、混合物をジクロロメタン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテルまたはトルエンで抽出し、相を分離し、有機相を乾燥し蒸発させ、そして生成物を減圧下で蒸留するかまたは結晶化するか、および/またはクロマトグラフィにかけるか、により精製することを意味する。次は、使用される略語である。
n−BuLi:ヘキサン中n−ブチルリチウム 1.6モル溶液
DMAP:4−(ジメチルアミノ)ピリジン
THF:テトラヒドロフラン
DCC:N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
LDA:リチウムジメチルアミド
Me:メチル
Et:エチル
iPr:2−プロピル
Ph:フェニル
Ac:アセチル
TsOH:トルエンスルホン酸
Pd/C:パラジウム・オン・カーボン
RT:室温
【0117】
例 1
【0118】
【化29】

【0119】
ステップ 1.1
【0120】
【化30】

【0121】
は、文献a)R.Baker,A.L.Boyes,C.J.Swain,J.Chem.Soc. Perkin Trans. 1, 1990, 1415−1421;文献b)H.Hagiwara,T.Okabe,H.Ono,V.P.Kamat,T.Hoshi,T.Suzuku,M.Ando,J.Chem.Soc. Perkin Trans. 1, 2002, 895−900に類似の方法で合成される。
【0122】
ステップ 1.2
【0123】
【化31】

【0124】
THF800mlの中に(ethylO)OPCH(COOethyl)を271mmol含む溶液に、0℃にて271mmolのNaHを少しずつ加えた。ガスの発生が完結したとき、271mmolを添加した。混合物を35℃18時間撹拌した。混合物に水による処理を行い粗生成物を減圧蒸留により精製した。無色のオイル。
【0125】
ステップ 1.3
【0126】
【化32】

【0127】
180mmolをTHF500mlに溶解し、3gの5%Pd/Cの存在下で、水素の取り込みが完了するまで、水素化した。混合物をろ過しエバポレートした。粗生成物をそれ以上精製せずに、後のステップで使用した。
【0128】
ステップ 1.4
【0129】
【化33】

【0130】
180mmolをTHF300mlに溶解し、THF300ml中の200mlのLiAlH懸濁液に、室温にて滴下した。この混合物を2時間沸騰させて加熱し、その後通常の処理を行った。生成物を、−20℃にて2回再結晶した。
【0131】
ステップ 1.5
【0132】
【化34】

【0133】
50mmol、3,4,5−トリフルオロベンズアルデヒド50mmol、トルエンスルホン酸5mmolおよびトルエン300mmolの混合物を水分離器で水の脱離が完了するまでリフラックスして加熱した。混合物に水による処理を行い、生成物をクロマトグラフィーにより精製し、続いてヘプタンから再結晶した。
【0134】
次の式の化合物は、(ADU−3−F;例1)と同様にして合成される。
【0135】
【化35】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
【表4】

【0139】
例 81
【0140】
【化36】

ステップ 81.1
【0141】
【化37】

【0142】
3−ブロモアクロレイン0.3molを、プロピレンプロパンジオール0.1molと、2gのp−トルエンスルホン酸を含むトルエン250ml中で、水分離器で3時間加熱した。冷却後に、0.1Nの50ml水酸化ナトリウム水溶液を加え、そして、p−トルエンスルホン酸の抽出後に、有機相を乾燥し、エバポレートし、トルエンでシリカゲルを通してろ過した。の収率:69%。
【0143】
ステップ 81.2
【0144】
【化38】

【0145】
ブロモビニルジオキサン69mmolを、ピペリジン72.5mmol、ナトリウムtert−ブトキシド103.5mmol、およびTHFの70ml中の[PdBr(P−t−ブチル)] 0.35mmolとともに、室温にて1時間撹拌した。その後、混合物を塩基性酸化アルミニウム10gと共に約5分間撹拌し、ろ過した。生成したエナミンKの残分(14.8g)をさらに直接処理した。エナミンは、既知の方法、J.D.Stambuliら、Angewandte
Chemie 114(2002)4940に類似の方法にて合成される。
【0146】
ステップ 81.3
【0147】
【化39】

【0148】
アセトニトリル16ml中のアクリル酸エチル77.5mmolを、窒素下の5℃でアセトニトリル50ml中のエナミン62mmolに加えた。混合物を5時間この温度で撹拌し、引き続いて沸騰するまで加熱した。反応液を36時間リフラックスした後、水24ml中の酢酸60mmolを、50℃にて加え、3hのこの温度で保持した。アルデヒドの収率:60%。反応は、G. Stork, J.
Am. Chem. Soc. 85 (1963) 207 のプロセスと類似の方法で行われた。
【0149】
ステップ 81.4
【0150】
【化40】

【0151】
アルデヒドエステル37mmolを、イソプロピルアルコール60ml中の水素化ホウ素ナトリウム19mmolと共に還流下で16時間加熱した。その後、混合物を、減圧下で実質的に乾固するまでエバポレートし、残分をメチルt−ブチルエーテルで溶解し、1NのHClで処理した。エバポレーション後、有機相としてδ−ヒドロキシエステル(10.3g)が得られた。それ以上の精製することなく、次の反応ステップで直接使用した。
【0152】
ステップ 81.5
【0153】
【化41】

【0154】
粗δ−ヒドロキシエステル10.3gをトルエン200mlに溶解し、p−トルエンスルホン酸500mgと共に、純トルエンを追加しながら還流器で蒸留し、純粋なトルエンの沸点に到達するまで続けた。その後、トルエンスルホン酸をナトリウム水溶液で抽出し、トルエン相を乾燥後にエバポレートした。残分をシリカゲルによってろ過した。収率: ラクトン48%。
【0155】
ステップ 81.6
【0156】
【化42】

【0157】
3.8gの3,4,5−トリフルオロブロモベンゼンのTHF20ml溶液を、THF5ml中のマグネシウムリボン18mmolに、沸点にて滴下した。マグネシウムが溶解したとき、ラクトン4.1gを、生成したGrignard溶液に加え、続いて混合物を1時間リフラックスした。飽和塩化アンモニウム溶液を使用した通常の処理の後、ラクトールをシリカゲルによってろ過した。収率:82%。
【0158】
ステップ 81.7
【0159】
【化43】

【0160】
ラクトール5.05gを、p−トルエンスルホン酸200mg存在下でプロピレンプロパンジオール2gと共に、水の分離が完了するまで、水分離器上で暖めた。トルエンスルフォン酸の抽出およびシリカゲルによる濾過により、オレフィンPを得た。収率:74%。
【0161】
ステップ 81.8
【0162】
【化44】

【0163】
オレフィン12mmolを、600mgの5%Pd/Cを含むヘプタン100ml中で、水素の取り込みが完了するまで、2Bar下室温にて水素化した。触媒をろ過した後、蒸発残留物(3.7g)をトルエンで溶解し、シリカゲルでろ過し、例81化合物のシス/トランス異性体混合物を得た。蒸発残留物を、異性化に直接に使用してもよい。例化合物のシス/トランス異性体混合物11mmolをN−メチルピロリドン15ml中のカリウムt−ブトキシドの2mmolと共に、0℃で4時間撹拌した。その後、反応液を100mlの氷水へ注ぎ、ヘプタンで抽出した。ヘプタン相の蒸発残留物をトルエンによりシリカゲルでろ過した。濾液の蒸発の後の残分を、ヘプタンから再結晶し、純粋なトランス異性体として例化合物81が得られた。収率: 69%。
【0164】
パラメータ: Δε:23.7; Δn:0.0550; γ1:164; cl.p.:17.9℃;
相範囲: C 87 I
:パラメータは、ホストZLI−4792 (Merck KGaA, Darmstadt)中、化合物10%溶液を用いて測定後、外挿によって決定した。
【0165】
次の式の化合物は、例81と同様にして合成される。
【0166】
【化45】

【0167】
【表5】

【0168】
【表6】

【0169】
【表7】

【0170】
例 161
【0171】
【化46】

ステップ 161.1
【0172】
【化47】

【0173】
THF800mlの中に(CFCHO)OPCHCH(OMe)を271mmol含む溶液に、0℃にて271mmolのNaHを少しずつ加えた。ガスの発生が完結したとき、271mmolを添加した。混合物を35℃18時間撹拌した。混合物に水による処理を行い、粗生成物(無色のオイル)を直接さらに使用に供した。収率: 78%。
【0174】
ステップ 161.2
【0175】
【化48】

【0176】
180mmolをTHF500mlに溶解し、3gの5%Pd/Cの存在下で、水素の取り込みが完了するまで、水素化した。混合物をろ過しロータリーエバポレータにてエバポレートした。粗生成物を500mlのトルエンと500mlのギ酸に溶解し、室温で18時間撹拌した。その後、通常の水による処理を行った。粗生成物を、減圧蒸留により精製した。無色のオイル。収率:67%。
【0177】
ステップ 161.3
【0178】
【化49】

【0179】
100mmol、アクリル酸メチル130mmol、ジエチルトリメチルシラン30mmolおよびアセトニトリル300mlの混合物を、沸点にて18時間加熱した。混合物をロータリーエバポレータでエバポレートし、次いで氷酢酸10mlおよび水20mlを混合し、混合物を還流下18時間加熱した。混合物に通常の水による処理を行い、粗生成物をクロマトグラフィーによって精製した。50mmolのNaBHを、0℃にて、そのアルデヒドのイソプロピルアルコール溶液に加え、混合物を室温18時間撹拌した。HClを使用して、通常のように、混合物を注意深く酸性化し、水による処理を行った。トルエン500ml中の粗アルコールの溶液に、p−トルエンスルホン酸5mmolを追加して、水分離器上で還流下、メタノールがもはや除去されないまで、加熱した。混合物を通常の水による処理を行い、クロマトグラフィーによって精製した。黄色がかった油。収率: 22%。
【0180】
ステップ 161.3
【0181】
【化50】

【0182】
ブチルリチウム(ヘキサン中15%)50mmolを、−50℃にて、ジエチルエーテル100ml中の3,4,5−トリフルオロブロモベンゼン50mmolの溶液に滴下した。その後、ジエチルエーテル30ml中の45mmol溶液を、この温度で滴下し、混合物をさらに30分間撹拌し、0℃までになった後、水による通常の処理を行った。粗生成物(51g)をCHCl200mlに溶解し、そしてトリエチルシラン150mmolを−75℃にて、加えた。温度が−70℃を超えないようにしながら、3フッ化ホウ素エーテラート150mmolを滴下した。その後、混合物を、−10℃にまで放置した後、飽和NaHCO溶液を使用して加水分解し、通常の処理を行った。生成物をクロマトグラフィーにかけ、そして再結晶した。収率:61%。
【0183】
次の式の化合物は、例161と同様にして合成される。
【0184】
【化51】

【0185】
【表8】

【0186】
【表9】

【0187】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの液晶化合物。
【化1】

(式中、
11は、H、1〜15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基、または2〜15個の炭素原子を有するアルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、それぞれ無置換またはハロゲンでモノ置換またはポリ置換されており、但し、1または2以上のCH基は、O原子同士が直接結合しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、
【化2】

−O−、−CO−、−CO−O−または−O−CO−で置換されていても良く、
11は、F、Cl、CN、NCS、SF、1〜7個の炭素原子を有するフルオロアルキルもしくはフルオロアルコキシ、または2〜7個の炭素原子を有するフルオロアルケニルもしくはフルオロアルケニルオキシであり、
11は、HまたはFであり、
YがOを表し且つWがCHを表すか、または、YがCHを表し且つWがOを表すか、またはYおよびWが両方ともCHを表す。)
【請求項2】
11がFを表すことを特徴とする請求項1記載の液晶化合物。
【請求項3】
11が、7個までの炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル基を表すことを特徴とする請求項1または2記載の液晶化合物。
【請求項4】
11が、F、Cl、SF、CN、OCFまたはOCHFを表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【請求項5】
YがOを表し、そしてWがCHを表すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【請求項6】
YがCHを表し、そしてWがOを表すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【請求項7】
YおよびWが両方ともCHを表すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【請求項8】
式I1〜I30の化合物からなる群より選ばれる請求項1記載の液晶化合物。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(式中、R11は請求項1で示された意味を有する。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の式Iの1または2種以上の化合物の液晶媒体の成分としての使用。
【請求項10】
少なくとも2種の液晶化合物を含有する液晶媒体において、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式Iの化合物を1または2種以上含有することを特徴とする液晶媒体。
【請求項11】
請求項10の液晶媒体の電気光学用途における使用。
【請求項12】
請求項10の液晶媒体を含む電気光学液晶ディスプレイ。

【公表番号】特表2007−506798(P2007−506798A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529902(P2006−529902)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005538
【国際公開番号】WO2004/106459
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】