液晶場をプローブとした電池活物質及び導電助剤と溶媒に関わる表面特性評価法およびそれに用いられる評価装置
【課題】本発明は、活物質の分散性を簡便に評価する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】活物質を液晶材料に分散混合し、活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製し、前記活物質−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填し、セルに対して、掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定することで、液晶場をプローブとして電池活物質及び導電助剤と溶媒に関わる表面特性を評価する。
【解決手段】活物質を液晶材料に分散混合し、活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製し、前記活物質−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填し、セルに対して、掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定することで、液晶場をプローブとして電池活物質及び導電助剤と溶媒に関わる表面特性を評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池活物質及び導電助剤と溶媒に関わる表面特性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池よりもエネルギー密度が高く、高電圧での動作が可能という特徴を有している。そのため、小型軽量化を図りやすい二次電池として携帯電話等の情報機器に使用されている。近年では、ハイブリッド自動車や電気自動車用等、大型の動力用としての需要も高まっている。電気自動車は大量のセルを搭載するため、コスト削減が必要であり、また性能面では、一つ一つのセルの出力密度は小さくて構わない半面、走行距離を延ばすために、さらにエネルギー密度を高めることが要求されている。
【0003】
低コスト性かつ優れた電池特性を目指して、これらの原材料の開発、改良が進められているが、中でも正極活物質開発においては、活物質をシート化する際のペーストの良否が重要である。ペーストの良否とは、経時変化に対する安定性の優劣を意味し、たとえば時間が経っても沈降性を増さないこと、粘度変化が大きくないこと等が良いペーストの条件として挙げられる。これらの性質は活物質の分散性に起因するものである。特に分散性が悪い場合には、ペースト中にダマ(活物質の凝集体)ができることがあり、結果として、電池容量の劣化につながる。
【0004】
製造工程においてペーストの分散安定性を管理するために、例えば、引用文献1(特開2006−134716号公報)では、E型粘度計を用いて剪断速度と剪断応力の関係から特定の方法で求めた凝集量を指標として管理する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−134716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来ペーストの良否を判断するには、大量の活物質を使用し、実際にペーストを作製する必要があり、手間と費用がかかっている。
【0007】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、電池活物質等の分散性に関連する表面特性を簡便に評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の事項に関する。
【0009】
1. 活物質または炭素導電助剤を液晶材料に分散混合し、活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程と、
前記活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填する工程と、
掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0010】
2. 前記掃引電圧成分Voが、電圧0V〜10Vの間で少なくとも1往復以上繰り返して掃引されることを特徴とする上記1記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0011】
3. 前記電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程において、前記セル内の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物の状態を少なくとも200倍以上の光学倍率で観察画像または映像を取得することを特徴とする上記1または2記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0012】
4. 前記観察画像または映像から、前記活物質または炭素導電助剤の粒子の分散距離を測定することを特徴とする上記3記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0013】
5. 前記掃引電圧成分Vo=0でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR1(m)、およびVo=10(V)でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR2(m)として、R2/R1を決定することを特徴とする上記3または4記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0014】
6. 前記の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程において、前記活物質または前記炭素導電助剤と共に、溶媒を前記液晶材料に分散混合することを特徴とする上記1〜5のいずれか1項に記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0015】
7. 所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルと、
前記2枚の対向する電極間に印加する電圧として、制御可能な掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記液晶セルに印加可能な信号発生手段と、
前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定可能なアドミッタンス測定手段と、
前記セル内部を少なくとも200倍の光学的拡大倍率で観察可能な顕微鏡と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電池活物質または炭素導電助剤を少量加えた液晶をセルに充填して、信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定することで、簡便に電池活物質及び導電助剤と溶媒に関わる表面特性を評価することができる。
【0017】
本発明によれば、微量の活物質を使用し、例えば表面の疎水性/親水性、非極性/極性の判別、ζ電位との相関性、溶媒の吸着性等の特性の1つ以上を簡便に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の評価で使用されるセルの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の評価に用いる測定装置の1例を示すブロック図である。
【図3】実験例1で測定したアドミッタンスの絶対値の電圧依存性を示す図である。
【図4】実験例1で測定した位相差の電圧依存性を示す図である。
【図5】実験例2で測定したアドミッタンスの絶対値の電圧依存性を示す図である。
【図6】実験例2で測定した位相差の電圧依存性を示す図である。
【図7】実験例3で測定したアドミッタンスの絶対値の電圧依存性を示す図である。
【図8】実験例3で測定した位相差の電圧依存性を示す図である。
【図9】実験例8〜10で測定した位相差と、参考例2で測定した各サンプルのゼータ電位との相関性を示すグラフである。
【図10】実験例8および実験例11でそれぞれ測定した位相差を比較する図である。
【図11】実験例8〜10で測定した位相差と参考例3で測定した沈降時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の電池活物質または炭素導電助剤の表面特性に関する評価方法は、前述のとおり、電池活物質または炭素導電助を液晶材料に分散混合し、電池活物質または炭素導電助−液晶混合物を調製する工程と、前記電池活物質または炭素導電助−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填する工程と、掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程と、を有する。
【0020】
本発明の評価方法を実施するために用いられる測定装置は、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルと、前記2枚の対向する電極間に印加する電圧として、制御可能な掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記セルに印加可能な信号発生手段と、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定可能なアドミッタンス測定手段とを有しており、さらに好ましくは、前記セル内部を200倍以上の光学拡大倍率で観察できる顕微鏡を有する。
【0021】
以下に、本発明の電池活物質または炭素導電助剤の表面特性に関する評価方法を、使用される測定装置と共に説明する。
【0022】
本発明で使用されるセルは、図1に模式的に示すような公知の液晶セル構造であって、2枚の対向する電極2を有し、その間に液晶層4(本発明においては、電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物)を挟持できる構造を有する。一般に、2枚の電極は、2枚の基板1の対向する内側表面に形成される。
【0023】
基板としては、従来液晶素子用の基板として用いられているものであれば特に限定されないが、ガラス基板であることが好ましい。電極層は、従来液晶素子用の電極として用いられているものであれば特に限定されず、例えばITO等を挙げることができる。電極面積としては1cm2以上が好ましい。
【0024】
セルは、液晶分子の配向を制御する手段として、必要により配向膜3を備える。配向膜/配向方法としては、従来液晶素子用の配向膜/配向方法として用いられているものから適宜選択することができる。水平配向膜としては例えば、ポリイミド膜、ナイロン膜、ポリビニルアルコール膜などが挙げられる。これらは一般にラビング処理して使用される。また、垂直配向膜としては、例えば、界面活性剤、シラン化合物など(による電極表面の処理)が挙げられ、具体的には、トリメチルセチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。配向方向としては、垂直配向が好ましい。
【0025】
セルの構造は、評価しようとする活物質の粒径に合わせて設定することが好ましい。セルギャップとしては、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一般的には50μm以下、さらには30μm以下が好ましい。
【0026】
測定サンプルである電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物は、電池活物質または炭素導電助剤を液晶材料に分散混合して調製される。電池活物質または炭素導電助剤を分散させる液晶材料は、評価しようとする電池活物質質または炭素導電助剤に合わせて設定され、室温で液晶層を示す液晶材料が好ましい。液晶材料は、単一化合物でも混合物でもよい。例えば、単一化合物の5CB(4−ペンチル−4’−シアノビフェニル)や、メルク社製のZLI−2293、ZLI−4792、MLC−6601、MLC−6608(いずれも商品名)などの液晶混合物が挙げられる。
【0027】
液晶材料100質量部に対して、電池活物質または炭素導電助剤を0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部の割合で配合し、マグネチックスターラー、超音波分散機等により分散する。調製された電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物は、吸引法、液晶滴下法等の通常の方法でセル内に充填することができる。
【0028】
また、電池活物質または炭素導電助剤に加えて、溶媒を液晶材料に分散混合して電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製することも好ましい。溶媒は、電池活物質をペースト化する際に使用される溶媒、または使用可能性の評価のために試験される溶媒である。従って、電池活物質または炭素導電助剤と溶媒とを組み合わせた状態で、表面状態を評価することになるため、実際のペーストに近い状態での表面状態を評価できると考えられる。
【0029】
このようにしてセルに充填された電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を評価するために、セルに信号電圧を印加し、その間、アドミッタンスを測定する。セルに印加する信号電圧は、所定の掃引速度Rsで線形に電圧が変化する掃引電圧成分Voに、アドミッタンス測定のためのプローブ信号として高周波交流成分が重畳された波形を有する。
【0030】
掃引電圧成分Voは、一定の掃引速度Rsで変化することが好ましく、特に絶対値が等しい+|Rs|と−|Rs|(|Rs|は絶対値を示す)により、最低電圧Vminと最高電圧Vmaxとの間を少なくとも1往復して掃引するように変化することが好ましい。
【0031】
Vminは、適宜設定することができるが、Vminを0Vに設定することで、通常は評価に必要なデータを取得できる。Vmaxは、一般に使用する液晶材料または電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物の観察している特性が飽和する値を考慮して適宜設定され、一般的な液晶セル構造を使用した場合には、例えば20V以下の範囲で、通常は評価に必要なデータを取得できる。
【0032】
Vmax=10Vとした場合の具体的な電圧の掃引は、例えば0V→10V→0Vの1サイクルを少なくとも1回行うことが好ましい。一般に、初期の0V→Vmaxの間では、その後のサイクルと異なる挙動を示す場合があるので、少なくとも初期の0V→Vmaxを除いて、少なくとも1サイクルの掃引を行うことが好ましい。さらには複数回の掃引を行うことも好ましい。
【0033】
この掃引電圧のサイクルの中で、正方向の掃引速度と負方向の掃引速度を同一とすることが好ましい。また、通常は、最高電圧Vmaxにおいて、直ちに掃引速度Rsを+|Rs|から−|Rs|に反転させ、また、最低電圧Vminにおいて(さらに測定を続ける場合には)直ちに掃引速度Rsを−|Rs|から+|Rs|に反転させること、すなわち、いわゆる三角波の交流信号とすることが好ましい。
【0034】
掃引速度の絶対値は、特に制限はないが、好ましくは10mV/s〜5V/sの範囲であり、典型的な範囲としては、10mV/s〜1V/sの範囲が挙げられる。
【0035】
掃引電圧成分Voに重畳される高周波交流成分は、アドミッタンス測定のためのプローブ信号である、そのため、高周波交流成分は、正弦波を使用することが好ましく、その周波数は、掃引電圧成分のサイクル周波数よりも十分に高い周波数を有する必要があり、好ましくは10倍以上、より好ましくは50倍以上の周波数を有する、周波数が低い範囲での測定は、掃引電圧との対応が不正確になる。具体的には、好ましくは10Hz〜10kHzである。
【0036】
また、高周波信号成分の振幅は、液晶分子の配向に影響を与えないように、小さな電圧振幅を採用することが好ましい。例えば1mV〜1Vであり、好ましくは0.5Vp−p(ピーク−ピーク電圧)以下である。
【0037】
さらに本発明の評価に用いる測定装置は、掃引電圧と電流の位相差を測定できることが好ましく、特に掃引電圧に対し、位相変化がもっとも鋭敏に現れるように、高周波成分の周波数fが調整可能であることが好ましい。
【0038】
以上の構成を有する装置を用いて、電池活物質または炭素導電助−液晶混合物を充填したセルを測定することにより、信号電圧の掃引電圧成分と、それに対応する複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差との関係を示すグラフを得ることができ、電池活物質または炭素導電助剤の表面特性を評価することができる。
【0039】
さらに以上の構成に加えて、本発明の評価に用いる測定装置は、液晶セル内部の電池活物質または炭素導電助剤を拡大観察できる顕微鏡を有していることが好ましい。観察画像・映像から測長が可能になる。顕微鏡としては、光学顕微鏡、デジタルマイクロスコープなどが挙げられる。さらに、液晶分子の配向の様子を観察できることが好ましい。即ち、顕微鏡は、少なくとも200倍以上の光学的拡大倍率を有することが好ましく、一般的には1500倍までの倍率があれば十分に使用可能である。また、測定装置は2枚の偏光板を有することが好ましく、これは顕微鏡の一部として備えられていても、別の要素として備えられていてもよい。偏光板の挿入箇所は、液晶配向の観察に用いられる従来公知の構成と同様である。
【0040】
本発明の1実施形態においては、上記の観察画像・映像の長さ測定機能を用いて、セル内の粒子凝集体の分散距離(粒子凝集体−粒子凝集体間距離)および粒子凝集体の直径の少なくとも1つを測定する。粒子凝集体の分散距離および粒子凝集体の直径について、異なる掃引電圧において測定される値を比較し、表面特性の評価に使用することができる。例えば、掃引電圧成分Vo=0でのセル内の観察画像・映像から求められる粒子凝集体の直径をR1(m)、およびVo=10(V)でのセル内の観察画像・映像から求められる粒子凝集体の直径をR2(m)から、R2/R1を決定することができる。
【0041】
図2に、本発明の評価に用いる測定装置の構成の1例をブロック図により示す。この例では、定電位保持装置13および電位掃引装置12により掃引電圧成分Voをつくり、交流発振器14により高周波交流成分をつくり、掃引電圧成分と高周波交流成分を合わせることで信号電圧を作り出してセル11に印加する。交流振幅測定装置15により交流電流の振幅および位相を測定し、信号電圧を比較して、アドミッタンス(アドミッタンスの絶対値および位相)を得ることができる。さらに、XYレコーダ16を備えることで、掃引電圧を横軸として、縦軸にアドミッタンスの絶対値または位相をプロットすることが可能である。
【0042】
また、この例では、顕微鏡17と偏光板18a、18b(これは顕微鏡17の一部として構成されてもよい)を有しており、セル内部の粒子の挙動および液晶分子の配向状態を観察することが可能である。例えば顕微鏡17から得られる観察映像中の距離を実測し、これを実際の距離に換算することで、粒子の粒径や分散距離を測定することが可能である。
【0043】
本発明により評価が可能な粒子としては、リチウムイオン2次電池等の正極に使用される活物質や、導電助剤が挙げられ、通常、粒径がセルギャップ以下、一般的には20μm以下のものが対象である。具体的なものとして、活物質としてはLiFePO4、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2やLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2などの多元系等が挙げられ、導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等が挙げられる。当然ながら、本発明により評価される活物質および導電助剤は、ここで挙げたものに限定されるものではなく、活物質または導電助剤として可能性のあるすべての材料が評価の対象であり、現在未知の電池活物質であっても、評価の対象となり得るものである。また、本発明の1形態において、電池活物質または導電助剤と共に液晶材料に分散される溶媒についても、ペースト溶媒(分散溶媒)として可能性のあるすべての溶媒が評価対象となる。
【実施例】
【0044】
次に、粒子を評価した実施例を示す。実験には、図2の構成に対応して次の装置を使用した。
【0045】
定電位保持装置は、株式会社東方技研製のポテンシオスタット・ガルバノスタット モデル2020(最大設定電圧±10V、電流レンジ±1μA〜±1A 7レンジ、最小電流±1nA以下)を使用した。
【0046】
交流発振器は、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製 1941/1945マルチファンクションシンセサイザ(振幅 0mVp−p〜20,000Vp−p、周波数 0.01μHz〜15MHz)を使用した。
【0047】
電位掃引装置は、北斗電工株式会社製 簡易関数発生器HB−111(設定電位範囲 −5.000V〜0〜+5.000V、掃引速度 0.1mV/s〜5kV/min)を使用した。
【0048】
交流振幅測定装置には、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製 シンクロトラック ロックイン・アンプ LI−575(感度レンジ 100nV〜500mV/F.S、周波数範囲 0.5Hz〜200kHz、入力電圧範囲 0.3V〜30Vp−p)を使用した。
【0049】
XYレコーダは、グラフィック株式会社製 X−Yレコーダ WX1200−UM−101(ペン振れ幅 0.5〜5000mV/cm、最大ペン速度 800mm/s)を使用した。
【0050】
光学顕微鏡は、株式会社ハイロックス製デジタルハイスコープKH−2400を使用した。
【0051】
(実験例1)
ITO電極および垂直配向膜を備えた2枚のガラス基板を、セルギャップが10μmとなるように向かい合わせてセルを作製した。0.2mgの活物質LiFePO4(PT−30, 宝泉株式会社製)を、20mgの液晶材料ZLI−2293(メルク)に、超音波洗浄機により混合分散し、先に作製したセルに充填した。200mV/sの掃引速度で、Vp−p=0.5V、1kHzの交流信号を印加して0V〜10Vのセル電極間電圧掃引を行った。得られたアドミッタンス電位依存性を図3に示す。
【0052】
また、アドミッタンス電位依存性と同時に、位相差の電位依存性を測定した。結果を図4に示す。
【0053】
(実験例2)
活物質をLiCoO2(2mg)に変えた以外は実験例1と同様に行い、アドミッタンス電位依存性を測定した。結果を図5に示す。
【0054】
また、アドミッタンス電位依存性と同時に、位相差の電位依存性を測定した。結果を図6に示す。
【0055】
(実験例3)
活物質をLiMn2O4(0.2mg)に変えた以外は実験例1と同様に行い、アドミッタンス電位依存性を測定した。結果を図7に示す。
【0056】
また、アドミッタンス電位依存性と同時に、位相差の電位依存性を測定した。結果を図8に示す。
【0057】
各実施例で測定したグラフから、掃引電圧=10Vにおけるアドミッタンスの値を表1にまとめて示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(実験例4)
液晶場を5CBに変えた以外は実験例1と同様に行い、Vo=10(V)におけるアドミッタンスと位相差を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
(実験例5)
液晶場を5CBに変え、活物質をLiCoO2に変えた以外は実験例1と同様に行い、Vo=10(V)におけるアドミッタンスと位相差を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
(実験例6)
液晶場を5CBに変え、活物質をLiMn2O4に変えた以外は実験例1と同様に行い、Vo=10におけるアドミッタンスと位相差を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
(実験例7)
実験例1〜6の測定時に、セルの顕微鏡観察を行い、掃引電圧成分Vo=0での観察画像から求められる粒子凝集体の直径をR1(m)、Vo=10(V)での観察画像から求められる粒子凝集体の直径をR2(m)として、R2/R1を決定した。得られたR2/R1の値を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
(実験例8)
液晶場に加える活物質と有機溶媒をそれぞれLiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)0.4mg、NMP2.5mgとした以外は実験例1と同様に行いVo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図9、図10に示す。
【0066】
(実験例9)
液晶場に加える活物質と有機溶媒をそれぞれLiCoO2(0.4mg)、NMP2.5mgとした以外は実験例1と同様に行いVo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図9に示す。
【0067】
(実験例10)
液晶場に加える活物質と有機溶媒をそれぞれLiMn2O4(0.8mg)、NMP3mgとした以外は実験例1と同様に行いVo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図9に示す。
【0068】
(実験例11)
液晶場に加える有機溶媒をプロピレンカーボネート(PC)2.7mgとした以外は実験例8と同様に行い、Vo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図10に示す。
【0069】
(参考例1)
実施例に用いた活物質を用いてペースト作製し、シート化状態を確認した。
【0070】
ペーストは、活物質80mgに12%のポリフッ化ビニリデン/N−メチルピロリドン溶液33〜35mgとアセチレンブラック2mgを加え、めのう乳鉢にてめのう乳棒で5分間混練して作製した。得られたペーストをシート化し、表面をルーペで観察した。
【0071】
活物質にLiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)を用いた場合、粒子がめのう乳棒に付着しながらペースト化した。得られたペーストをシート化した時、表面にざらつきは見られなかった。
【0072】
活物質にLiMn2O4、LiCoO2を用いた場合、いずれも粒子がめのう乳鉢に広がった。混練開始から2分を超えたところでめのう乳鉢に広がる粒子が乳棒に付着しはじめ、ペースト化した。得られたペーストはシート化しにくく、表面はざらついていた。
【0073】
(参考例2)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中における活物質LiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)、LiCoO2、LiMn2O4のζ電位を測定した。測定結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
(参考例3)
実験例に用いた活物質を、有機溶媒を添加した液晶場に分散し沈降時間を測定した。
【0076】
サンプルチューブにNMP(3mg)、活物質LiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)、LiCoO2、LiMn2O4(0.4〜0.8mg)、液晶場ZLI−2293(40mg)を量り採り、ヤマト科学株式会社製の超音波洗浄器(42kHz, 125W)に5分間かけ活物質を分散させた。分散した活物質が沈降するまでの時間を測定した。測定結果を表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
実験例8〜10で測定した位相差と参考例3で測定した沈降時間の関係を図11に示す。
【0079】
実施例1〜3からVo=10Vにおけるアドミッタンスが大きく位相差の最も低かったLiFePO4は、参考例1のペースト評価において、シート表面がざらつかない活物質となっており、アドミッタンスや位相差の測定から活物質の評価が可能であることがわかる。
【0080】
実施例8〜10と参考例2、3から液晶場に活物質とNMPを添加した場合、位相差とζ電位、位相差と活物質の沈降時間には相関関係があることがわかる。従って位相差の測定からNMP中でのζ電位の評価が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、電池活物質または導電助剤等の分散性に関連する表面特性を簡便に評価する方法として有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 電極
3 配向膜
4 液晶層
5 スペーサー
11 液晶セル
12 電位掃引装置
13 定電位保持装置
14 交流発振器
15 交流振幅測定装置
16 XYレコーダ
17 顕微鏡
18a、18b 偏光板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池活物質及び導電助剤と溶媒に関わる表面特性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池よりもエネルギー密度が高く、高電圧での動作が可能という特徴を有している。そのため、小型軽量化を図りやすい二次電池として携帯電話等の情報機器に使用されている。近年では、ハイブリッド自動車や電気自動車用等、大型の動力用としての需要も高まっている。電気自動車は大量のセルを搭載するため、コスト削減が必要であり、また性能面では、一つ一つのセルの出力密度は小さくて構わない半面、走行距離を延ばすために、さらにエネルギー密度を高めることが要求されている。
【0003】
低コスト性かつ優れた電池特性を目指して、これらの原材料の開発、改良が進められているが、中でも正極活物質開発においては、活物質をシート化する際のペーストの良否が重要である。ペーストの良否とは、経時変化に対する安定性の優劣を意味し、たとえば時間が経っても沈降性を増さないこと、粘度変化が大きくないこと等が良いペーストの条件として挙げられる。これらの性質は活物質の分散性に起因するものである。特に分散性が悪い場合には、ペースト中にダマ(活物質の凝集体)ができることがあり、結果として、電池容量の劣化につながる。
【0004】
製造工程においてペーストの分散安定性を管理するために、例えば、引用文献1(特開2006−134716号公報)では、E型粘度計を用いて剪断速度と剪断応力の関係から特定の方法で求めた凝集量を指標として管理する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−134716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来ペーストの良否を判断するには、大量の活物質を使用し、実際にペーストを作製する必要があり、手間と費用がかかっている。
【0007】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、電池活物質等の分散性に関連する表面特性を簡便に評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の事項に関する。
【0009】
1. 活物質または炭素導電助剤を液晶材料に分散混合し、活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程と、
前記活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填する工程と、
掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0010】
2. 前記掃引電圧成分Voが、電圧0V〜10Vの間で少なくとも1往復以上繰り返して掃引されることを特徴とする上記1記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0011】
3. 前記電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程において、前記セル内の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物の状態を少なくとも200倍以上の光学倍率で観察画像または映像を取得することを特徴とする上記1または2記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0012】
4. 前記観察画像または映像から、前記活物質または炭素導電助剤の粒子の分散距離を測定することを特徴とする上記3記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0013】
5. 前記掃引電圧成分Vo=0でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR1(m)、およびVo=10(V)でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR2(m)として、R2/R1を決定することを特徴とする上記3または4記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0014】
6. 前記の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程において、前記活物質または前記炭素導電助剤と共に、溶媒を前記液晶材料に分散混合することを特徴とする上記1〜5のいずれか1項に記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【0015】
7. 所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルと、
前記2枚の対向する電極間に印加する電圧として、制御可能な掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記液晶セルに印加可能な信号発生手段と、
前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定可能なアドミッタンス測定手段と、
前記セル内部を少なくとも200倍の光学的拡大倍率で観察可能な顕微鏡と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電池活物質または炭素導電助剤を少量加えた液晶をセルに充填して、信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定することで、簡便に電池活物質及び導電助剤と溶媒に関わる表面特性を評価することができる。
【0017】
本発明によれば、微量の活物質を使用し、例えば表面の疎水性/親水性、非極性/極性の判別、ζ電位との相関性、溶媒の吸着性等の特性の1つ以上を簡便に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の評価で使用されるセルの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の評価に用いる測定装置の1例を示すブロック図である。
【図3】実験例1で測定したアドミッタンスの絶対値の電圧依存性を示す図である。
【図4】実験例1で測定した位相差の電圧依存性を示す図である。
【図5】実験例2で測定したアドミッタンスの絶対値の電圧依存性を示す図である。
【図6】実験例2で測定した位相差の電圧依存性を示す図である。
【図7】実験例3で測定したアドミッタンスの絶対値の電圧依存性を示す図である。
【図8】実験例3で測定した位相差の電圧依存性を示す図である。
【図9】実験例8〜10で測定した位相差と、参考例2で測定した各サンプルのゼータ電位との相関性を示すグラフである。
【図10】実験例8および実験例11でそれぞれ測定した位相差を比較する図である。
【図11】実験例8〜10で測定した位相差と参考例3で測定した沈降時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の電池活物質または炭素導電助剤の表面特性に関する評価方法は、前述のとおり、電池活物質または炭素導電助を液晶材料に分散混合し、電池活物質または炭素導電助−液晶混合物を調製する工程と、前記電池活物質または炭素導電助−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填する工程と、掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程と、を有する。
【0020】
本発明の評価方法を実施するために用いられる測定装置は、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルと、前記2枚の対向する電極間に印加する電圧として、制御可能な掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記セルに印加可能な信号発生手段と、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定可能なアドミッタンス測定手段とを有しており、さらに好ましくは、前記セル内部を200倍以上の光学拡大倍率で観察できる顕微鏡を有する。
【0021】
以下に、本発明の電池活物質または炭素導電助剤の表面特性に関する評価方法を、使用される測定装置と共に説明する。
【0022】
本発明で使用されるセルは、図1に模式的に示すような公知の液晶セル構造であって、2枚の対向する電極2を有し、その間に液晶層4(本発明においては、電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物)を挟持できる構造を有する。一般に、2枚の電極は、2枚の基板1の対向する内側表面に形成される。
【0023】
基板としては、従来液晶素子用の基板として用いられているものであれば特に限定されないが、ガラス基板であることが好ましい。電極層は、従来液晶素子用の電極として用いられているものであれば特に限定されず、例えばITO等を挙げることができる。電極面積としては1cm2以上が好ましい。
【0024】
セルは、液晶分子の配向を制御する手段として、必要により配向膜3を備える。配向膜/配向方法としては、従来液晶素子用の配向膜/配向方法として用いられているものから適宜選択することができる。水平配向膜としては例えば、ポリイミド膜、ナイロン膜、ポリビニルアルコール膜などが挙げられる。これらは一般にラビング処理して使用される。また、垂直配向膜としては、例えば、界面活性剤、シラン化合物など(による電極表面の処理)が挙げられ、具体的には、トリメチルセチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。配向方向としては、垂直配向が好ましい。
【0025】
セルの構造は、評価しようとする活物質の粒径に合わせて設定することが好ましい。セルギャップとしては、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一般的には50μm以下、さらには30μm以下が好ましい。
【0026】
測定サンプルである電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物は、電池活物質または炭素導電助剤を液晶材料に分散混合して調製される。電池活物質または炭素導電助剤を分散させる液晶材料は、評価しようとする電池活物質質または炭素導電助剤に合わせて設定され、室温で液晶層を示す液晶材料が好ましい。液晶材料は、単一化合物でも混合物でもよい。例えば、単一化合物の5CB(4−ペンチル−4’−シアノビフェニル)や、メルク社製のZLI−2293、ZLI−4792、MLC−6601、MLC−6608(いずれも商品名)などの液晶混合物が挙げられる。
【0027】
液晶材料100質量部に対して、電池活物質または炭素導電助剤を0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部の割合で配合し、マグネチックスターラー、超音波分散機等により分散する。調製された電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物は、吸引法、液晶滴下法等の通常の方法でセル内に充填することができる。
【0028】
また、電池活物質または炭素導電助剤に加えて、溶媒を液晶材料に分散混合して電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製することも好ましい。溶媒は、電池活物質をペースト化する際に使用される溶媒、または使用可能性の評価のために試験される溶媒である。従って、電池活物質または炭素導電助剤と溶媒とを組み合わせた状態で、表面状態を評価することになるため、実際のペーストに近い状態での表面状態を評価できると考えられる。
【0029】
このようにしてセルに充填された電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を評価するために、セルに信号電圧を印加し、その間、アドミッタンスを測定する。セルに印加する信号電圧は、所定の掃引速度Rsで線形に電圧が変化する掃引電圧成分Voに、アドミッタンス測定のためのプローブ信号として高周波交流成分が重畳された波形を有する。
【0030】
掃引電圧成分Voは、一定の掃引速度Rsで変化することが好ましく、特に絶対値が等しい+|Rs|と−|Rs|(|Rs|は絶対値を示す)により、最低電圧Vminと最高電圧Vmaxとの間を少なくとも1往復して掃引するように変化することが好ましい。
【0031】
Vminは、適宜設定することができるが、Vminを0Vに設定することで、通常は評価に必要なデータを取得できる。Vmaxは、一般に使用する液晶材料または電池活物質または炭素導電助剤−液晶混合物の観察している特性が飽和する値を考慮して適宜設定され、一般的な液晶セル構造を使用した場合には、例えば20V以下の範囲で、通常は評価に必要なデータを取得できる。
【0032】
Vmax=10Vとした場合の具体的な電圧の掃引は、例えば0V→10V→0Vの1サイクルを少なくとも1回行うことが好ましい。一般に、初期の0V→Vmaxの間では、その後のサイクルと異なる挙動を示す場合があるので、少なくとも初期の0V→Vmaxを除いて、少なくとも1サイクルの掃引を行うことが好ましい。さらには複数回の掃引を行うことも好ましい。
【0033】
この掃引電圧のサイクルの中で、正方向の掃引速度と負方向の掃引速度を同一とすることが好ましい。また、通常は、最高電圧Vmaxにおいて、直ちに掃引速度Rsを+|Rs|から−|Rs|に反転させ、また、最低電圧Vminにおいて(さらに測定を続ける場合には)直ちに掃引速度Rsを−|Rs|から+|Rs|に反転させること、すなわち、いわゆる三角波の交流信号とすることが好ましい。
【0034】
掃引速度の絶対値は、特に制限はないが、好ましくは10mV/s〜5V/sの範囲であり、典型的な範囲としては、10mV/s〜1V/sの範囲が挙げられる。
【0035】
掃引電圧成分Voに重畳される高周波交流成分は、アドミッタンス測定のためのプローブ信号である、そのため、高周波交流成分は、正弦波を使用することが好ましく、その周波数は、掃引電圧成分のサイクル周波数よりも十分に高い周波数を有する必要があり、好ましくは10倍以上、より好ましくは50倍以上の周波数を有する、周波数が低い範囲での測定は、掃引電圧との対応が不正確になる。具体的には、好ましくは10Hz〜10kHzである。
【0036】
また、高周波信号成分の振幅は、液晶分子の配向に影響を与えないように、小さな電圧振幅を採用することが好ましい。例えば1mV〜1Vであり、好ましくは0.5Vp−p(ピーク−ピーク電圧)以下である。
【0037】
さらに本発明の評価に用いる測定装置は、掃引電圧と電流の位相差を測定できることが好ましく、特に掃引電圧に対し、位相変化がもっとも鋭敏に現れるように、高周波成分の周波数fが調整可能であることが好ましい。
【0038】
以上の構成を有する装置を用いて、電池活物質または炭素導電助−液晶混合物を充填したセルを測定することにより、信号電圧の掃引電圧成分と、それに対応する複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差との関係を示すグラフを得ることができ、電池活物質または炭素導電助剤の表面特性を評価することができる。
【0039】
さらに以上の構成に加えて、本発明の評価に用いる測定装置は、液晶セル内部の電池活物質または炭素導電助剤を拡大観察できる顕微鏡を有していることが好ましい。観察画像・映像から測長が可能になる。顕微鏡としては、光学顕微鏡、デジタルマイクロスコープなどが挙げられる。さらに、液晶分子の配向の様子を観察できることが好ましい。即ち、顕微鏡は、少なくとも200倍以上の光学的拡大倍率を有することが好ましく、一般的には1500倍までの倍率があれば十分に使用可能である。また、測定装置は2枚の偏光板を有することが好ましく、これは顕微鏡の一部として備えられていても、別の要素として備えられていてもよい。偏光板の挿入箇所は、液晶配向の観察に用いられる従来公知の構成と同様である。
【0040】
本発明の1実施形態においては、上記の観察画像・映像の長さ測定機能を用いて、セル内の粒子凝集体の分散距離(粒子凝集体−粒子凝集体間距離)および粒子凝集体の直径の少なくとも1つを測定する。粒子凝集体の分散距離および粒子凝集体の直径について、異なる掃引電圧において測定される値を比較し、表面特性の評価に使用することができる。例えば、掃引電圧成分Vo=0でのセル内の観察画像・映像から求められる粒子凝集体の直径をR1(m)、およびVo=10(V)でのセル内の観察画像・映像から求められる粒子凝集体の直径をR2(m)から、R2/R1を決定することができる。
【0041】
図2に、本発明の評価に用いる測定装置の構成の1例をブロック図により示す。この例では、定電位保持装置13および電位掃引装置12により掃引電圧成分Voをつくり、交流発振器14により高周波交流成分をつくり、掃引電圧成分と高周波交流成分を合わせることで信号電圧を作り出してセル11に印加する。交流振幅測定装置15により交流電流の振幅および位相を測定し、信号電圧を比較して、アドミッタンス(アドミッタンスの絶対値および位相)を得ることができる。さらに、XYレコーダ16を備えることで、掃引電圧を横軸として、縦軸にアドミッタンスの絶対値または位相をプロットすることが可能である。
【0042】
また、この例では、顕微鏡17と偏光板18a、18b(これは顕微鏡17の一部として構成されてもよい)を有しており、セル内部の粒子の挙動および液晶分子の配向状態を観察することが可能である。例えば顕微鏡17から得られる観察映像中の距離を実測し、これを実際の距離に換算することで、粒子の粒径や分散距離を測定することが可能である。
【0043】
本発明により評価が可能な粒子としては、リチウムイオン2次電池等の正極に使用される活物質や、導電助剤が挙げられ、通常、粒径がセルギャップ以下、一般的には20μm以下のものが対象である。具体的なものとして、活物質としてはLiFePO4、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2やLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2などの多元系等が挙げられ、導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等が挙げられる。当然ながら、本発明により評価される活物質および導電助剤は、ここで挙げたものに限定されるものではなく、活物質または導電助剤として可能性のあるすべての材料が評価の対象であり、現在未知の電池活物質であっても、評価の対象となり得るものである。また、本発明の1形態において、電池活物質または導電助剤と共に液晶材料に分散される溶媒についても、ペースト溶媒(分散溶媒)として可能性のあるすべての溶媒が評価対象となる。
【実施例】
【0044】
次に、粒子を評価した実施例を示す。実験には、図2の構成に対応して次の装置を使用した。
【0045】
定電位保持装置は、株式会社東方技研製のポテンシオスタット・ガルバノスタット モデル2020(最大設定電圧±10V、電流レンジ±1μA〜±1A 7レンジ、最小電流±1nA以下)を使用した。
【0046】
交流発振器は、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製 1941/1945マルチファンクションシンセサイザ(振幅 0mVp−p〜20,000Vp−p、周波数 0.01μHz〜15MHz)を使用した。
【0047】
電位掃引装置は、北斗電工株式会社製 簡易関数発生器HB−111(設定電位範囲 −5.000V〜0〜+5.000V、掃引速度 0.1mV/s〜5kV/min)を使用した。
【0048】
交流振幅測定装置には、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製 シンクロトラック ロックイン・アンプ LI−575(感度レンジ 100nV〜500mV/F.S、周波数範囲 0.5Hz〜200kHz、入力電圧範囲 0.3V〜30Vp−p)を使用した。
【0049】
XYレコーダは、グラフィック株式会社製 X−Yレコーダ WX1200−UM−101(ペン振れ幅 0.5〜5000mV/cm、最大ペン速度 800mm/s)を使用した。
【0050】
光学顕微鏡は、株式会社ハイロックス製デジタルハイスコープKH−2400を使用した。
【0051】
(実験例1)
ITO電極および垂直配向膜を備えた2枚のガラス基板を、セルギャップが10μmとなるように向かい合わせてセルを作製した。0.2mgの活物質LiFePO4(PT−30, 宝泉株式会社製)を、20mgの液晶材料ZLI−2293(メルク)に、超音波洗浄機により混合分散し、先に作製したセルに充填した。200mV/sの掃引速度で、Vp−p=0.5V、1kHzの交流信号を印加して0V〜10Vのセル電極間電圧掃引を行った。得られたアドミッタンス電位依存性を図3に示す。
【0052】
また、アドミッタンス電位依存性と同時に、位相差の電位依存性を測定した。結果を図4に示す。
【0053】
(実験例2)
活物質をLiCoO2(2mg)に変えた以外は実験例1と同様に行い、アドミッタンス電位依存性を測定した。結果を図5に示す。
【0054】
また、アドミッタンス電位依存性と同時に、位相差の電位依存性を測定した。結果を図6に示す。
【0055】
(実験例3)
活物質をLiMn2O4(0.2mg)に変えた以外は実験例1と同様に行い、アドミッタンス電位依存性を測定した。結果を図7に示す。
【0056】
また、アドミッタンス電位依存性と同時に、位相差の電位依存性を測定した。結果を図8に示す。
【0057】
各実施例で測定したグラフから、掃引電圧=10Vにおけるアドミッタンスの値を表1にまとめて示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(実験例4)
液晶場を5CBに変えた以外は実験例1と同様に行い、Vo=10(V)におけるアドミッタンスと位相差を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
(実験例5)
液晶場を5CBに変え、活物質をLiCoO2に変えた以外は実験例1と同様に行い、Vo=10(V)におけるアドミッタンスと位相差を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
(実験例6)
液晶場を5CBに変え、活物質をLiMn2O4に変えた以外は実験例1と同様に行い、Vo=10におけるアドミッタンスと位相差を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
(実験例7)
実験例1〜6の測定時に、セルの顕微鏡観察を行い、掃引電圧成分Vo=0での観察画像から求められる粒子凝集体の直径をR1(m)、Vo=10(V)での観察画像から求められる粒子凝集体の直径をR2(m)として、R2/R1を決定した。得られたR2/R1の値を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
(実験例8)
液晶場に加える活物質と有機溶媒をそれぞれLiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)0.4mg、NMP2.5mgとした以外は実験例1と同様に行いVo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図9、図10に示す。
【0066】
(実験例9)
液晶場に加える活物質と有機溶媒をそれぞれLiCoO2(0.4mg)、NMP2.5mgとした以外は実験例1と同様に行いVo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図9に示す。
【0067】
(実験例10)
液晶場に加える活物質と有機溶媒をそれぞれLiMn2O4(0.8mg)、NMP3mgとした以外は実験例1と同様に行いVo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図9に示す。
【0068】
(実験例11)
液晶場に加える有機溶媒をプロピレンカーボネート(PC)2.7mgとした以外は実験例8と同様に行い、Vo=10Vにおける位相差を測定した。測定結果を図10に示す。
【0069】
(参考例1)
実施例に用いた活物質を用いてペースト作製し、シート化状態を確認した。
【0070】
ペーストは、活物質80mgに12%のポリフッ化ビニリデン/N−メチルピロリドン溶液33〜35mgとアセチレンブラック2mgを加え、めのう乳鉢にてめのう乳棒で5分間混練して作製した。得られたペーストをシート化し、表面をルーペで観察した。
【0071】
活物質にLiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)を用いた場合、粒子がめのう乳棒に付着しながらペースト化した。得られたペーストをシート化した時、表面にざらつきは見られなかった。
【0072】
活物質にLiMn2O4、LiCoO2を用いた場合、いずれも粒子がめのう乳鉢に広がった。混練開始から2分を超えたところでめのう乳鉢に広がる粒子が乳棒に付着しはじめ、ペースト化した。得られたペーストはシート化しにくく、表面はざらついていた。
【0073】
(参考例2)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中における活物質LiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)、LiCoO2、LiMn2O4のζ電位を測定した。測定結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
(参考例3)
実験例に用いた活物質を、有機溶媒を添加した液晶場に分散し沈降時間を測定した。
【0076】
サンプルチューブにNMP(3mg)、活物質LiFePO4(PT−30,宝泉株式会社製)、LiCoO2、LiMn2O4(0.4〜0.8mg)、液晶場ZLI−2293(40mg)を量り採り、ヤマト科学株式会社製の超音波洗浄器(42kHz, 125W)に5分間かけ活物質を分散させた。分散した活物質が沈降するまでの時間を測定した。測定結果を表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
実験例8〜10で測定した位相差と参考例3で測定した沈降時間の関係を図11に示す。
【0079】
実施例1〜3からVo=10Vにおけるアドミッタンスが大きく位相差の最も低かったLiFePO4は、参考例1のペースト評価において、シート表面がざらつかない活物質となっており、アドミッタンスや位相差の測定から活物質の評価が可能であることがわかる。
【0080】
実施例8〜10と参考例2、3から液晶場に活物質とNMPを添加した場合、位相差とζ電位、位相差と活物質の沈降時間には相関関係があることがわかる。従って位相差の測定からNMP中でのζ電位の評価が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、電池活物質または導電助剤等の分散性に関連する表面特性を簡便に評価する方法として有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 電極
3 配向膜
4 液晶層
5 スペーサー
11 液晶セル
12 電位掃引装置
13 定電位保持装置
14 交流発振器
15 交流振幅測定装置
16 XYレコーダ
17 顕微鏡
18a、18b 偏光板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質または炭素導電助剤を液晶材料に分散混合し、活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程と、
前記活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填する工程と、
掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項2】
前記掃引電圧成分Voが、電圧0V〜10Vの間で少なくとも1往復以上繰り返して掃引されることを特徴とする請求項1記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項3】
前記電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程において、前記セル内の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物の状態を少なくとも200倍以上の光学倍率で観察画像または映像を取得することを特徴とする請求項1または2記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項4】
前記観察画像または映像から、前記活物質または炭素導電助剤の粒子の分散距離を測定することを特徴とする請求項3記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項5】
前記掃引電圧成分Vo=0でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR1(m)、およびVo=10(V)でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR2(m)として、R2/R1を決定することを特徴とする請求項3または4記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項6】
前記の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程において、前記活物質または前記炭素導電助剤と共に、溶媒を前記液晶材料に分散混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項7】
所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルと、
前記2枚の対向する電極間に印加する電圧として、制御可能な掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記液晶セルに印加可能な信号発生手段と、
前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定可能なアドミッタンス測定手段と、
前記セル内部を少なくとも200倍の光学的拡大倍率で観察可能な顕微鏡と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価装置。
【請求項1】
活物質または炭素導電助剤を液晶材料に分散混合し、活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程と、
前記活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を、所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルに充填する工程と、
掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記2枚の対向する電極間に印加し、前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項2】
前記掃引電圧成分Voが、電圧0V〜10Vの間で少なくとも1往復以上繰り返して掃引されることを特徴とする請求項1記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項3】
前記電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定する工程において、前記セル内の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物の状態を少なくとも200倍以上の光学倍率で観察画像または映像を取得することを特徴とする請求項1または2記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項4】
前記観察画像または映像から、前記活物質または炭素導電助剤の粒子の分散距離を測定することを特徴とする請求項3記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項5】
前記掃引電圧成分Vo=0でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR1(m)、およびVo=10(V)でのセル内の観察画像・映像から求められる活物質または炭素導電助剤の粒径をR2(m)として、R2/R1を決定することを特徴とする請求項3または4記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項6】
前記の活物質または炭素導電助剤−液晶混合物を調製する工程において、前記活物質または前記炭素導電助剤と共に、溶媒を前記液晶材料に分散混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価法。
【請求項7】
所定の間隔を隔てて対向する2枚の電極を有するセルと、
前記2枚の対向する電極間に印加する電圧として、制御可能な掃引速度R(V/s)で変化する掃引電圧成分Voと、前記掃引電圧成分に重畳され、周波数fおよびピーク−ピーク振幅Vp−pを有する交流成分が合成された信号電圧を、前記液晶セルに印加可能な信号発生手段と、
前記信号電圧の掃引電圧成分に対応する電流または複素アドミッタンスと、電流と電圧の位相差を測定可能なアドミッタンス測定手段と、
前記セル内部を少なくとも200倍の光学的拡大倍率で観察可能な顕微鏡と、
を有することを特徴とする液晶場をプローブとした電池活物質または導電助剤の表面特性評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−64641(P2011−64641A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217539(P2009−217539)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
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