説明

液晶組成物及び液晶素子

【課題】表示コントラストが高い液晶素子、及びかかる液晶素子の作製に有用な新規な液晶組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物、及び少なくとも1種の二色性色素を含有する液晶組成物、ならびに該液晶組成物からなる液晶層を有する液晶素子である。下記式(I)中、L1、L2、L3及びL4は各々独立に、単結合又は所定の二価基であり;環A1と環A2は各々独立に、置換もしくは無置換シクロへキシレンを表し;R1及びR2は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の置換もしくは無置換アルキル基を表し;Y1は炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、又はシクロへキシル基を含む所定の基を表し;環A1と環A2とを連結する連結鎖−L3−Y1−L4−は、6原子以上の原子団であり;n及びmは各々独立に1〜3の整数を表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物及び該液晶組成物を含有する液晶層を有する液晶素子に関し、特にゲストホスト(「GH」という場合がある)方式の液晶素子に好適に利用できる液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル情報の普及に伴い、デジタル情報を表示するためのディスプレイ(以下、電子ペーパーと呼ぶ)の重要性が増している。電子ペーパーに要求される性能としては、高い視認性と低消費電力が挙げられる。高い視認性とは、紙に近い白地を意味しており、そのためには、紙と同様の散乱白地に基づく表示方式が適している。低消費電力に関しては、反射型表示方式が、自発光型表示方式よりも低消費電力である。これまで、電子ペーパーとして、多くの方式が提案されている。例えば、反射型液晶表示方式、電気泳動表示方式、磁気泳動表示方式、二色球回転方式、エレクトロクロミック表示方式、ロイコサーマル表示方式などである。いずれの方式についても、高い視認性という観点からは、満足できるレベルにはなく、その改善が求められていた。
【0003】
液晶素子(液晶表示素子)については、すでに多くの方式が提案されており、中でもゲストホスト方式の液晶素子は、明るい表示が可能であって、反射型に適した液晶素子として期待されている。ゲストホスト方式は、ホストであるネマチック液晶中にゲストとして二色性色素を溶解させた液晶組成物を用いる表示方式である。二色性色素は、1軸の光吸収軸を有し、光吸収軸方向に振動する光のみを吸収することから、電場による液晶の動きに合わせて、二色性色素の配向を変化させ、光吸収軸の向きを制御することにより、セルの吸光状態を変化させることができる。
【0004】
ゲストホスト方式液晶素子の表示コントラストは、液晶層を構成する液晶組成物中の二色性色素のオーダーパラメーター(S値とも呼ぶ)もしくはホスト液晶、又はセル構造によって左右されることが知られている。一般に、ネマチック液晶と二色性色素を組み合わせた液晶組成物は、配向処理した基板間に存在した場合には、ネマチック液晶が一軸配向状態をとるため片側の直線偏光しか吸収できず、半分の光が透過するため、表示コントラスト比が上がらない。また、配向処理をしていない基板間に、ネマチック液晶と二色性色素を組み合わせた液晶組成物を注入した場合にも、マルチドメイン状態をとるため、片側の直線偏光しか吸収できず、半分の光が透過するため、表示コントラスト比が上がらない。そのため、全方位の光を吸収させる方式として、カイラル剤との組み合わせによるカイラルネマチック相を利用した相転移型ゲストホスト方式が提案された(非特許文献1参照)。この方式では、偏光板を使用しない明るい表示が可能となる(特許文献1参照)。
【非特許文献1】D.L.White;G.N.Taylor;J.Appl.Phys.,Vol.45,4718(1974)
【特許文献1】特開2006−83338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表示コントラストが高い液晶素子、特に相転移型ゲストホスト方式の液晶素子、並びに、かかる液晶素子の作製に有用な新規な液晶組成物及び化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物、及び少なくとも1種の二色性色素を含有する液晶組成物:
【化1】

一般式(I)において、
1、L2、L3及びL4は各々独立に、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3−、−NR3−CO−、−O−CO−NR3−、−NR3−CO−O−又は−NR3−CO−NR3−を表す(R3は水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基)を表わし;
環A1と環A2は各々独立に、置換もしくは無置換シクロへキシレンを表し、該シクロへキシレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
1及びR2は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の置換もしくは無置換アルキル基を表し、アルキル基を構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
1は炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、又は下記一般式(II)で表される基を表し、該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
【0007】
【化2】

(一般式(II)において、
5及びL6は各々独立に、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3−、−NR3−CO−、−O−CO−NR3−、−NR3−CO−O−又は−NR3−CO−NR3−を表す(R3は水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基)を表わし;
環A3は置換もしくは無置換シクロへキシレンを表し、該シクロへキシレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
2及びY3は各々独立に炭素数1〜10の置換もしくは無置換アルキレンを表し、該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。);
環A1と環A2とを連結する−L3−Y1−L4−は、6原子以上の原子団であり;
n及びmは各々独立に1〜3の整数を表わす。
【0008】
[2] 前記一般式(I)において、n及びmの双方が2であることを特徴とする[1]の液晶組成物。
[3] 少なくとも1種のカイラル剤をさらに含有することを特徴とする[1]又は[2]の液晶組成物。
[4] 少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に液晶層を有し、該液晶層が、[1]〜[3]のいずれかの液晶組成物を含有する液晶素子。
[5] 少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に高分子媒体層を有し、該高分子媒体層が、高分子と該高分子中に分散された[1]〜[3]のいずれかの液晶組成物とを含む液晶素子。
[6] 少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に液晶層を有し、該液晶層が、[1]〜[3]のいずれかの液晶組成物を含むマイクロカプセルを含有する液晶素子。
【0009】
[7] 下記一般式(III)で表される化合物:
【化3】

一般式(III)において、
1a、L2a、L3a及びL4aは各々独立に、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3a−、−NR3a−CO−、−O−CO−NR3a−、−NR3a−CO−O−又は−NR3a−CO−NR3a−(R3aは水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基)を表わし;
1a及びR2aは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の置換もしくは無置換アルキル基を表し、アルキル基を構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
1aは炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基を表し、該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
ビシクロへキシレンを連結する−L3a−Y1a−L4a−は、6原子以上の原子団である。
【0010】
[8] 前記一般式(III)中、L1a、L2a、L3a及びL4aがそれぞれ、単結合、酸素、−CH2O−、−O−CO−、又は−CO−O−を表わし;
1aが炭素数5〜10の直鎖状の無置換アルキレン基、又は炭素数5〜10の無置換のアルキレン鎖の−CH2−CH2−の一部又は全部が、以下に示す構造のいずれかに対掌中心を有することなく置き換わった基を表わすことを特徴とする[7]の化合物:
【化4】


【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表示コントラストが高い液晶素子、特に相転移型ゲストホスト方式の液晶素子を提供することができる。また、本発明によれば、かかる液晶素子の作製に有用な新規な液晶組成物及び化合物を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明は、シクロへキシレン基が原子数6以上の原子団を介して連結された構造を有する化合物の少なくとも1種と、二色性色素の少なくとも1種とを含有する液晶組成物に関する。
本発明の液晶組成物は、ホスト液晶の全部もしくは一部として、又はホスト液晶の助剤として、所定の構造の棒状脂肪族化合物を含有しているので、屈折率異方性Δnを小さくでき、且つ該液晶組成物中の二色性色素のオーダーパラメータ(S値)を向上させることができる。その結果、本発明の液晶組成物を利用したGHモード、特に相転移型GHモードの液晶素子は、高い表示コントラストを実現できる。
【0013】
以下、本発明に用いられる種々の材料について説明する。
[一般式(I)で表される化合物]
本発明の液晶組成物は、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含有する。本発明の液晶組成物において、該化合物は、ホスト液晶の一部もしくは全部として含有されていてもよいし、又はホスト液晶の助剤として含有されていてもよい。下記一般式(I)で表される化合物は、分子長軸方向の分極率が小さく、且つ高アスペクト比の分子構造を有するので、かかる化合物を含有する液晶組成物の屈折率異方性Δnは小さくなり、且つ二色性色素のS値を大きくすることができる。
【0014】
【化5】

【0015】
一般式(I)において、L1、L2、L3及びL4は各々独立に、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3−、−NR3−CO−、−O−CO−NR3−、−NR3−CO−O−又は−NR3−CO−NR3−を表す(R3は水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基を表わす。
環A1と環A2は各々独立に、置換もしくは無置換シクロへキシレンを表し、該シクロへキシレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。
環A1と環A2は、少なくとも6原子以上の連結鎖で連結されているものとする。即ち、式中の−L3−Y1−L4−は、原子数6以上の原子団からなる。
n及びmは各々独立に、1〜3のいずれかの整数を表わす。
1及びR2は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の置換もしくは無置換アルキル基を表し、アルキル基を構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。
【0016】
1は炭素数1〜20(好ましくは炭素数3〜12、より好ましくは炭素数5〜10)の置換もしくは無置換アルキレン基、又は一般式(II)で表される構造を表し、該アルキレン基を構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。
【0017】
【化6】

【0018】
一般式(II)において、
5及びL6は各々独立に前述のL1と同様の連結基を表し、即ち、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3−、−NR3−CO−、−O−CO−NR3−、−NR3−CO−O−又は−NR3−CO−NR3−を表す(R3は水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基を表わす。
環A3は前述の環A1と同様の構造を表し、即ち、置換もしくは無置換シクロへキシレンを表し、該シクロへキシレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。
2及びY3は各々独立に炭素数1〜10の置換もしくは無置換アルキレンを表し、該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。
【0019】
上記一般式(I)において、環A1及びA2は無置換シクロへキシレンであるのが好ましく、1,4−トランス構造である無置換シクロへキシレンであることがより好ましい。
【0020】
上記一般式(I)において、n及びmがそれぞれ表す整数のうち、n+m=4であることが好ましく、さらに好ましくはn及びmの双方が2である。
【0021】
上記一般式(I)及び一般式(II)において、L1、L2、L3及びL4が表す連結鎖として、好ましくは単結合、酸素、−CH2O−、−O−CO−、−CO−O−である。
【0022】
上記一般式(II)において、環A3は無置換シクロへキシレンであるのが好ましく、1,4−トランス構造の無置換シクロへキシレンであることがより好ましい。
【0023】
上記一般式(I)及び(II)におけるY1、Y2及びY3がそれぞれ表わすアルキレン基は、分岐構造を含んでいてもよい。また、置換基を有していてもよい。該置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素、塩素、及び臭素原子等)等が含まれる。
1、Y2及びY3はそれぞれ、炭素数が5〜10の直鎖状の無置換アルキレン基、又は炭素数が5〜10の無置換のアルキレン鎖の−CH2−CH2−の一部又は全部が、以下に示す構造のいずれかに置き換わった基であるのが好ましい。
【0024】
【化7】

【0025】
さらに、炭素数が5〜10の無置換のアルキレン鎖中に、下記構造を含んだ基であるのが好ましい。
【0026】
【化8】

【0027】
前記一般式(I)中、環A1と環A2とを連結する連結鎖−L3−Y1−L4−は、6原子以上の原子団である。−L3−Y1−L4−は、6以上の原子が直鎖状に結合した原子団(但し、各原子は置換可能な場合は置換されていてもよい)からなる基であるのが好ましく、原子数6〜16の直鎖状に結合した原子団からなる基であるのがより好ましく、原子数9〜13の直鎖状に結合した原子団からなる基であるのがより好ましい。
【0028】
上記一般式(I)において、R1及びR2はそれぞれ、置換もしくは無置換の炭素数1〜10(好ましくは炭素数3〜6)のアルキル基であることが好ましい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素、塩素、及び臭素原子等)等が含まれる。中でも、炭素数が1〜10の無置換アルキル基であるのが好ましく、炭素数3〜6の無置換アルキル基であるのがより好ましい。
【0029】
前記一般式(I)で表わされる化合物の例には、下記一般式(III)で表わされる化合物が含まれる。
【0030】
【化9】

【0031】
前記一般式(III)中、R1a、L1a、L3a、L4a、L2a及びR2aはそれぞれ、前記一般式(I)中の、R1、L1、L3、L4、L2及びR2のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
1a及びR2aはそれぞれ、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましく、炭素数3〜6の無置換アルキル基であるのが好ましい。
1a、L2a、L3a及びL4aはそれぞれ、単結合、酸素、−CH2O−、−O−CO−、又は−CO−O−であるのが好ましい。
【0032】
前記式(III)中、Y1aは炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。Y1aは、炭素数が5〜10の直鎖状の無置換アルキレン基であるか、又は炭素数が5〜10の無置換のアルキレン鎖の−CH2−CH2−の一部又は全部が、以下に示す構造のいずれかに対掌中心を有することなく置き換わった基であるのが好ましい。
【0033】
【化10】

【0034】
さらに、炭素数が5〜10の無置換のアルキレン鎖中に、下記構造を対掌中心を有することなく含んだ基であるのが好ましい。
【0035】
【化11】

【0036】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。下記化合物に関しては、指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。
【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
【化15】

【0041】
前記一般式(I)で表される化合物は、既知の方法を参照して合成することができる。
【0042】
前記一般式(I)で表される化合物は、液晶を発現する化合物としてホスト液晶の一部又は全部として用いることができる。また、前記一般式(I)で表される化合物は非液晶性助剤として添加されていてもよい。
【0043】
本発明の液晶組成物中には、前記一般式(I)で表される化合物を一種のみ含有させてもよいし、複数種を含有させてもよい。前記液晶組成物中における、前記一般式(I)で表される化合物の含有量については特に制限されず、該化合物の組成物中における役割、機能等によって、その好ましい範囲も異なる。例えば、ホスト液晶の一部、またはホスト液晶の助剤等として用いる場合は、ホスト液晶の質量に対して1〜20質量%であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。
但し、前記範囲に限定されるものではなく、調製したホスト液晶の屈折率異方性Δn、色素溶解度、色素のオーダーパラメータを測定することで、所望の表示コントラストに必要なホスト液晶の組成を決定するのが好ましい。
【0044】
[二色性色素]
本発明の液晶組成物において、二色性色素は、ホスト液晶中に溶解し、光を吸収する機能を有する化合物である。二色性色素は、二色比(R)及びオーダーパラメーター(S)が大きく、ホスト液晶に対して良好な相溶性を示すことが好ましい。二色性色素としては、吸収極大ならびに吸収帯に関しては、いかなるものであってもよいが、イエロー域(Y)、マゼンタ域(M)、あるいはシアン域(C)に吸収極大を有する場合が好ましい。また、本発明の液晶素子に用いられる二色性色素は、単独で使用してもよいが、複数を混合したものであってもよい。複数の色素を混合する場合には、Y、M、Cに吸収極大を有する二色性色素の混合物を用いるのが好ましい。公知の二色性色素としては、例えば A.V.Ivashchenko著、Diachronic Dyes for Liquid Crystal Display、CRC社、1994年に記載のものが挙げられる。イエロー色素、マゼンタ色素ならびにシアン色素を混合することによるフルカラー化表示を行う方法については、「カラーケミストリー」(時田澄男著、丸善、1982年)に詳しい。ここでいう、イエロー域とは、430〜490nmの範囲、マゼンタ域とは、500〜580nmの範囲、シアン域とは600〜700nmの範囲である。
【0045】
前記二色性色素の発色団はいかなるものであってもよいが、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素、フェノキサジン色素などが挙げられる。好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素、フェノキサジン色素であり、特に好ましくはアントラキノン色素、フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)である。
【0046】
アゾ色素はモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいかなるものであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。
アゾ色素に含まれる環構造としては芳香族基(ベンゼン環、ナフタレン環など)のほかにも複素環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)であってもよい。
【0047】
アントラキノン色素の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0048】
フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。
【0049】
以下に、本発明に使用可能な二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
【化19】

【0054】
以下に、本発明に使用可能なアゾ系二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0055】
【化20】

【0056】
以下に本発明に使用可能なジオキサジン系二色性色素ならびにメロシアニン系二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0057】
【化21】

【0058】
本発明の液晶組成物及び液晶素子において、ホスト液晶及び二色性色素の含有量については制限はないが、二色性色素の含有量(混合物の場合には、二色性色素の全含有量)は、ホスト液晶の含有量(式(I)で表される化合物がホスト液晶である場合は、該化合物の含有量)に対して0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜6質量%であることが特に好ましい。また、液晶セルの吸収スペクトルを測定することで、所望の光学濃度に必要な色素濃度を決定することが望ましい。
【0059】
[他の成分]
本発明の液晶組成物は、前記一般式(I)で表される化合物及び二色性色素以外に、他の成分を含有していてもよい。
(ホスト液晶)
本発明の液晶組成物は、液晶を含有しているのが好ましい。該液晶は、及び液晶素子に使用可能なホスト液晶とは、電界の作用により、その配向状態を変化させ、ゲストとして溶解されている二色性色素の配向状態を制御する機能を有する液晶、即ち、ゲスト液晶として機能する液晶であるのが好ましい。前記一般式(I)で表される化合物が単独でゲスト液晶として機能し得る場合は、別途液晶を添加する必要はない。
【0060】
前記ホスト液晶は、ネマチック相を示す液晶であるのが好ましい。ホスト液晶は、前記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種類と公知の液晶化合物との混合物であるのが好ましい。ホスト液晶の屈折率異方性(Δn)の絶対値は0.25以下のものが好ましい。より好ましくは、|Δn|<0.15であり、さらに好ましくは、|Δn|<0.10であり、よりさらに好ましくは、|Δn|<0.05である。
【0061】
液晶化合物の具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁及び第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができる。TFT駆動に適したフッ素置換されたホスト液晶を使用することもできる。例えば、Merck社の液晶(ZLI−4692、2806、MLC−6267、6284、6287、6288、6406、6422、6423、6425、6435、6437、7700、7800、9000、9100、9200、9300、10000など)、チッソ社の液晶(LIXON5036xx、5037xx、5039xx、5040xx、5041xxなど)が挙げられる。
本発明に用いるホスト液晶は、誘電率異方性が正であっても負であってもよい。
【0062】
(カイラル剤)
また、本発明の液晶組成物には、カイラル剤を添加してもよい。カイラル剤を添加することにより、相転移型ゲストホスト方式の液晶素子の材料としてより適する。カイラル剤とは、光学活性物質であって、前記ホスト液晶材料に添加することで、該液晶組成物がカイラルネマチック相を示すようになるもののことをいう。例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤が挙げられる。
【0063】
本発明の液晶組成物において、ホスト液晶及びカイラル剤の含有量については制限はないが、本発明の液晶素子として用いる液晶セルのセルギャップをd、液晶のヘリカルピッチをPとしたときに、0.1≦d/P≦20となるように含有されることが好ましく、より好ましくは、0.25≦d/P≦5であり、さらに好ましくは、0.4≦d/P≦2であり、よりさらに好ましくは、0.5≦d/P≦1.5である。
なおヘリカルピッチとは、液晶分子のらせん構造が360°旋回する距離として定義される。
【0064】
(その他の添加物剤)
本発明の液晶組成物には、ホスト液晶の物性を所望の範囲に変化させることを目的として(例えば、液晶相の温度範囲を所望の範囲にすることを目的として)、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有させてもよい。
【0065】
本発明の液晶組成物の調製方法については特に制限されず、通常用いられる手段で各成分を混合することで調製できる。前記二色性色素は、ホスト液晶中に溶解しいているのが好ましい。ホスト液晶への前記二色性色素の溶解は、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用することができる。
【0066】
[液晶素子]
本発明の液晶素子は、本発明の液晶組成物を含有する液晶層を備えた液晶素子である。本発明の液晶素子は、例えば、一対の電極基板(少なくとも一方は透明電極基板であるのが好ましい)間と、一対の電極基板に挟持される本発明の液晶組成物を含有する液晶層とから構成することができる。前記基板としては、通常ガラスあるいはプラスチック基板が用いられ、プラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。基板については、例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第218〜231頁に詳しい。その基板上には、電極層が形成され、好ましくは透明電極である。その電極層としては、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズなどが用いられる。透明電極については、例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第232〜239頁に記載のものが用いられる。
【0067】
本発明の液晶素子は液晶を配向させる目的で、液晶と基板の接する表面に配向処理を施した層を形成することが好ましい。該配向処理としては、例えば、4級アンモニウム塩を塗布し配向させる方法、ポリイミドを塗布しラビング処理により配向する方法、SiOxを斜め方向から蒸着して配向する方法、さらには、光異性化を利用した光照射による配向方法などが挙げられる。配向膜については、例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第240〜256頁に記載のものが用いられる。
【0068】
本発明の液晶素子は基板同士をスペーサーなどを介して、1〜50μmの間隔を設け、その空間に本発明の液晶組成物を注入して作製することができる。スペーサーについては、例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第257〜262頁に記載のものが用いられる。本発明の液晶組成物は、基板上に塗布あるいは印刷することにより基板間の空間に配置することができる。
【0069】
本発明の液晶素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。駆動方式については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第387〜460頁に詳細が記載され、本発明の液晶素子の駆動方法として利用できる。
【0070】
本発明の液晶素子を用いた液晶ディスプレイは、いかなる方式であってもよい。例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第309頁に記載のゲストホスト方式に記載されている(1)ホモジニアス配向、(2)ホメオトロピック配向、White−Taylor型(相転移)として(3)フォーカルコニック配向及び(4)ホメオトロピック配向、(5)Super Twisted Nematic(STN)との組合せ、(6)強誘電性液晶(FLC)との組合せ、また、内田龍男監修、反射型カラーLCD総合技術、シーエムシー社、1999年、第2−1章(GHモード反射型カラーLCD)、第15〜16頁に記載されている、(1)Heilmeier型GHモード、(2)1/4波長板型GHモード、(3)2層型GHモード、(4)相転移型GHモード、(5)高分子分散液晶(PDLC)型GHモードなどが挙げられる。
【0071】
さらに、本発明の液晶素子は特開平10−67990号、同10−239702号、同10−133223号、同10−339881号、同11−52411号、同11−64880号、特開2000−221538号などに記載されている積層型GHモードに用いることができる。また、本発明の液晶素子は、特開平11−24090号などに記載されているマイクロカプセルを利用したGHモードに用いることができる。即ち、本発明の液晶素子の一実施形態は、少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に液晶層を有し、該液晶層が本発明の液晶組成物を含むマイクロカプセルを含有する、マイクロカプセルを利用したGHモードの液晶素子である。さらに、本発明の液晶素子は、特開平5−61025号、同5−265053号、同6−3691号、同6−23061号、同5−203940号、同6−242423号、同6−289376号、同8−278490号、同9−813174号に記載されている高分子分散液晶型GHモードに用いることができる。即ち、本発明の液晶素子の一態様は、少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に高分子媒体層を有し、該高分子媒体層が、高分子と、該高分子中に分散された本発明の液晶組成物とを含む、高分子分散液晶型GHモード液晶素子である。
【0072】
さらに、本発明の液晶素子は、特開平6−235931号、同6−235940号、同6−265859号、同7−56174号、同9−146124号、同9−197388号、同10−20346号、同10−31207号、同10−31216号、同10−31231号、同10−31232号、同10−31233号、同10−31234号、同10−82986号、同10−90674号、同10−111513号、同10−111523号、同10−123509号、同10−123510号、同10−206851号、同10−253993号、同10−268300号、同11−149252号、特開2000−2874などに記載されている反射型液晶ディスプレイに用いることができる。
【0073】
本発明の液晶素子は、複数の二色性色素を含有する液晶組成物を利用したものであってもよい。また、液晶組成物の色についても、いかなるものであってもよい。例えば、複数の二色性色素を混合して用いる等、黒色の液晶組成物を調製した場合には、電圧の印加によって白黒表示用の液晶素子としての利用が挙げられる。また、レッド、グリーン及びブルーに各々着色された液晶組成物を調製し、3種類の組成物を基板上に並置配置することにより、カラー表示用の液晶素子を作製することもできる。また、本発明の液晶素子は、積層構造を有していてもよい。例えば、イエロー、マゼンタ及びシアンに着色した液晶組成物の各々からなる層を3層積層させる構成;及びイエロー、マゼンタ及びシアンに着色した液晶組成物と、補色の関係にあるブルー、グリーン及びレッドに着色した液晶組成物の各々からなる層を並置配置させた層とを2層積層させる構成;及び黒に着色した液晶組成物の層と、レッド、ブルー及びグリーンの液晶組成物の各々からなる層を並置配置させた層とを、2層積層させる構成;などが挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0075】
[式(I)の化合物の合成例1]
上記例示化合物(1)を、下記スキームに従って合成した。
【0076】
【化22】

【0077】
化合物(1−A)を塩化チオニル中で加熱還流し、未反応の塩化チオニルを留去して化合物(1−B)を得た。次に、1,5−ペンタンジオール(1等量)とピリジン(4等量)のテトラヒドロフラン溶液に、化合物(1−B)(2等量)のテトラヒドロフラン溶液を加え、室温で攪拌することで、例示化合物(1)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3): δ0.80−1.8(m,58H)、δ1.9−2.05(m,4H)、δ2.1−2.25(m,2H)、δ4.05−4.15(t,4H)。
相転移点: mp=104℃。
【0078】
例示化合物(2)も上記の方法と同様にして、但し、1,5−ペンタンジオールを1,9−ノナンジオールに代えることによって、合成した。
1H NMR(400MHz、CDCl3): δ0.80−1.8(m,58H)、δ1.9−2.05(m,4H)、δ2.05−2.3(m,2H)、δ4.0−4.15(t,4H)。
相転移点:mp=108℃。
【0079】
例示化合物(4)も上記の方法と同様にして、但し、1,5−ペンタンジオールを3−メチルー1,5−ペンタンジオールに代えることによって、合成した。
1H NMR(400MHz、CDCl3): δ0.80−1.8(m,58H)、δ1.9−2.05(m,4H)、δ2.05−2.3(m,2H)、δ4.0−4.15(t,4H)。
相転移点: mp=95℃。
【0080】
例示化合物(7)も上記の方法と同様にして、但し、1,5−ペンタンジオールをジエチレングリコールに代えることによって、合成した。
1H NMR(400MHz、CDCl3): δ0.80−1.8(m,58H)、δ1.9−2.05(m,4H)、δ2.05−2.3(m,2H)、δ4.0−4.15(t,4H)。
相転移点: mp=85℃。
【0081】
[式(I)の化合物の合成例2]
上記例示化合物(11)を、下記スキームに従って合成した。
【0082】
【化23】

【0083】
1,8−オクタンジオール(2等量)とピリジン(2等量)のテトラヒドロフラン溶液に、前記化合物(1−B)(1等量)のテトラヒドロフラン溶液を加え、室温で攪拌することで、化合物(11−A)を得た(収率91%)。次に、化合物(11−B)を塩化チオニル中で加熱還流し、未反応の塩化チオニルを留去して化合物(11−C)を得た。そして、化合物(11−A)(1等量)とピリジン(2等量)のテトラヒドロフラン溶液に、化合物(11−C)(1等量)のテトラヒドロフラン溶液を加え、室温で攪拌することで、例示化合物(11)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3): δ0.80−1.85(m,H)、δ1.9−2.05(m,4H)、δ2.15−2.3(m,2H)、δ4.05
(t,4H)。
相転移点: mp=53℃。
【0084】
[実施例2:液晶組成物の調製例]
<二色性色素の合成>
二色性色素(1−1)及び(1−7)は、特開2003−192664号公報に記載の方法に従い合成した。
【0085】
<ホスト液晶(HLC−1)の調製(比較例)>
商品名MLC−6609(E.Merck社製)90mg、及び下記の棒状化合物(H−1)10mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで冷却させ、1晩放置した。
【0086】
【化24】

【0087】
<ホスト液晶(HLC−2)の調製>
商品名MLC−6609(E.Merck社製)95mg、及び例示化合物(1)5mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0088】
<ホスト液晶(HLC−3)の調製>
商品名MLC−6609(E.Merck社製)90mg、及び例示化合物(2)10mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0089】
<ホスト液晶(HLC−4)の調製>
商品名MLC−6609(E.Merck社製)90mg、及び例示化合物(11)10mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0090】
<ホスト液晶(HLC−5)の調製(比較例)>
商品名ZLI−2806(E.Merck社製)85mg、下記の低Δn化合物(H−2)15mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0091】
【化25】

【0092】
<ホスト液晶(HLC−6)の調製>
商品名ZLI−2806(E.Merck社製)85mg、低Δn化合物(H−2)10mg、例示化合物(4)5mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0093】
<ホスト液晶の評価>
ホスト液晶(HLC−1、HLC−2、HLC−3、HLC−4、HLC−5、HLC−6、MLC−6609)を、くさび型液晶セル(KCRK−07、商品名、EHC. CO.,LTD.製)に室温で注入し、30℃における550nmのΔnを求めた。結果を表1、表2に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
表1に示した結果から明らかなように本発明の例示化合物を含有するホスト液晶(HLC−2、HLC−3、HLC−4)の複屈折異方性Δnは、本発明の例示化合物を含有しないホスト液晶(MLC−6609)より低く、本発明の例示化合物の添加によりホスト液晶の複屈折率異方性Δnが増加しないことがわかった。
【0097】
また、表2に示した結果から明らかなように本発明の例示化合物を含有するホスト液晶物、(HLC−6)の複屈折異方性Δnは、本発明の例示化合物を含有しないホスト液晶物(HLC−5)と比較して同等以下であり、本発明の例示化合物の添加によりホスト液晶の複屈折率異方性Δnが増加しないことがわかった。
【0098】
<液晶組成物(LCM−1)の調製(比較例)>
二色性色素(1−1)2.5mg、及び、上記で調製したホスト液晶(HLC−1)100mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0099】
<液晶組成物(LCM−7)の調製(比較例)>
前述の<液晶組成物(LCM−1)の調製>において、ホスト液晶(HLC−1)をMLC−6609(E.Merck社製)に変更した以外は、同じ方法で調製した。
【0100】
<液晶組成物(LCM−2)の調製>
前述の<液晶組成物(LCM−1)の調製>において、ホスト液晶(HLC−1)をホスト液晶(HLC−2)に変更した以外は、同じ方法で調製した。
【0101】
<液晶組成物(LCM−3)の調製>
前述の<液晶組成物(LCM−1)の調製>において、ホスト液晶(HLC−1)をホスト液晶(HLC−3)に変更した以外は、同じ方法で調製した。
【0102】
<液晶組成物(LCM−4)の調製>
前述の<液晶組成物(LCM−1)の調製>において、ホスト液晶(HLC−1)をホスト液晶(HLC−4)に変更した以外は、同じ方法で調製した。
【0103】
<液晶組成物(LCM−5)の調製(比較例)>
二色性色素(1−8)2.5mg、及び、上記で調製したホスト液晶(HLC−5)100mgを混合し、該混合物を150℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0104】
<液晶組成物(LCM−6)の調製>
前述の<液晶組成物(LCM−5)の調製>において、ホスト液晶(HLC−5)をホスト液晶(HLC−6)に変更した以外は、同じ方法で調製した。
【0105】
<オーダーパラメーターの評価>
上記で得られた液晶組成物の各々を、市販の液晶セル(KSRP−25、商品名、EHC. CO.,LTD.製)に注入し、液晶素子をそれぞれ作製した。
作製した液晶素子に、ラビング方向と平行な偏光及び垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖及びA⊥)を(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計(UV2400PC)にて測定した。極大吸収波長におけるA‖及びA⊥から、オーダーパラメーター(S)を下式1に従い求めた。結果を表3及び表4に示す。
式1
S = ( A‖−A⊥)/( A‖+2・A⊥)
【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
表3に示した結果から明らかなように本発明の例示化合物を含有する液晶組成物、(LCM−2、LCM−3、LCM−4)は、本発明の例示化合物を含有しない液晶組成物(LCM−1、LCM−7)と比較して、高いオーダーパラメーターを与えることが理解できる。
また、MLC−6609にビシクロへキシル基を一つのみ有する化合物(H−1)を含有させると、オーダーパラメーターはかえって低下することが分かった。
【0109】
また、表4に示した結果から明らかなように本発明の例示化合物を含有する液晶組成物、(LCM−6)は、本発明の例示化合物を含有しない液晶組成物(LCM−5)と比較して、高いオーダーパラメーターを与えることがわかった。
【0110】
<液晶組成物(CLCM−5)の調製(比較例)>
二色性色素として二色性色素(1−8)の5mg、ホスト液晶(HLC−5)100mg、及び、カイラル剤としてR−1011(E.Merck社製)0.37mgを混合し、該混合物を130℃のホットプレート上で1時間加熱して、液晶組成物を調製した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置した。
【0111】
<液晶組成物(CLCM−6)の調製>
前述の<液晶組成物(CLCM−5)の調製>において、ホスト液晶(HLC−5)をホスト液晶(HLC−6)に変更した以外は、同じ方法で調製した。
【0112】
[実施例4:液晶素子の作製例]
上記で得られた液晶組成物の各々(LCM−1、LCM−2、LCM−3、LCM−4、LCM−7、CLCM−5、CLCM−6)を、ニッポ電機製の液晶セルに注入し、液晶素子を作製した。用いた液晶セル用の基板は、ITO透明電極層が形成されたガラス基板(厚み1.1mm)であり、セルギャップ15μmで、エポキシ樹脂シール付きであり、一対の基板の対向面には、日産化学製ポリイミド配向膜SE−5300(垂直配向)が形成されたものである。
【0113】
<透過率の評価>
作製した液晶素子(LCM−1、LCM−2、LCM−3、LCM−4、LCM−7)の画像表示面側において、透明表示の透過率を、分光光度測定器(島津製作所社製、UV−2400PC)を用いて測定した。結果を表5に示す。
【0114】
【表5】

【0115】
<コントラスト比の評価>
作製した液晶素子(CLCM−5、CLCM−6)の画像表示面側において、コントラスト比(透明表示の透過率/色表示の透過率)を、分光光度測定器(島津製作所社製、UV−2400PC)を用いて測定した。なお、色表示側は、100Hz、20Vの電圧を印加した。結果を表6に示す。
【0116】
【表6】

【0117】
表5に示した結果より、例示化合物(1又は2又は11)、二色性色素を含む液晶組成物(LCM−2、LCM−3、LCM−4)を用いて作製された本発明の液晶素子は、本発明の例示化合物を含有しない液晶組成物(LCM−1、LCM−7)を用いて作製された液晶素子と比較して、透明表示時の透過率が増加することがわかった。
【0118】
表6に示した結果より、例示化合物(4)、二色性色素、液晶、及び、カイラル剤を含む液晶組成物(CLCM−6)を用いて作製された本発明の液晶素子は、例示化合物(4)を含有しない液晶組成物(CLCM−5)を用いて作製された液晶素子と比較して、透明表示時の透過率が増加し、その結果として素子の表示コントラストが大きくなることがわかった。
【0119】
以上の結果から、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、液晶中の二色性色素のS値を向上することが確認された。さらに、該液晶組成物を用いて作製した液晶素子は、一般式(I)で表される化合物を含有しない液晶組成物を用いて作製した液晶素子と比較して、電圧無印加時における透過率が大きくなり、表示コントラストが大きくなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の液晶組成物は、液晶素子の作製に広く用いることができ、特にゲストホスト方式液晶表示素子の作製に用いるのが好ましい。本発明の液晶組成物を用いて作製されたゲストホスト方式液晶表示素子は、高い表示コントラスト比を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物、及び少なくとも1種の二色性色素を含有する液晶組成物:
【化1】

一般式(I)において、
1、L2、L3及びL4は各々独立に、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3−、−NR3−CO−、−O−CO−NR3−、−NR3−CO−O−又は−NR3−CO−NR3−を表す(R3は水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基)を表わし;
環A1と環A2は各々独立に、置換もしくは無置換シクロへキシレンを表し、該シクロへキシレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
1及びR2は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の置換もしくは無置換アルキル基を表し、アルキル基を構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
1は炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、又は下記一般式(II)で表される基を表し、該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
【化2】

(一般式(II)において、
5及びL6は各々独立に、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3−、−NR3−CO−、−O−CO−NR3−、−NR3−CO−O−又は−NR3−CO−NR3−を表す(R3は水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基)を表わし;
環A3は置換もしくは無置換シクロへキシレンを表し、該シクロへキシレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
2及びY3は各々独立に炭素数1〜10の置換もしくは無置換アルキレンを表し、該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい。);
環A1と環A2とを連結する−L3−Y1−L4−は、6原子以上の原子団であり;
n及びmは各々独立に1〜3の整数を表わす。
【請求項2】
前記一般式(I)において、n及びmの双方が2であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のカイラル剤をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に液晶層を有し、該液晶層が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶素子。
【請求項5】
少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に高分子媒体層を有し、該高分子媒体層が、高分子と該高分子中に分散された請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物とを含む液晶素子。
【請求項6】
少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に液晶層を有し、該液晶層が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物を含むマイクロカプセルを含有する液晶素子。
【請求項7】
下記一般式(III)で表される化合物:
【化3】

一般式(III)において、
1a、L2a、L3a及びL4aは各々独立に、単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR3a−、−NR3a−CO−、−O−CO−NR3a−、−NR3a−CO−O−又は−NR3a−CO−NR3a−(R3aは水素原子又は炭素原子数3以下のアルキル基)を表わし;
1a及びR2aは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の置換もしくは無置換アルキル基を表し、アルキル基を構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
1aは炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基を表し、該アルキレンを構成するCH2基のうち1つもしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよく;
ビシクロへキシレンを連結する−L3a−Y1a−L4a−は、6原子以上の原子団である。
【請求項8】
前記一般式(III)中、L1a、L2a、L3a及びL4aがそれぞれ、単結合、酸素、−CH2O−、−O−CO−、又は−CO−O−を表わし;
1aが炭素数5〜10の直鎖状の無置換アルキレン基、又は炭素数5〜10の無置換のアルキレン鎖の−CH2−CH2−の一部又は全部が、以下に示す構造のいずれかに対掌中心を有することなく置き換わった基を表わすことを特徴とする請求項7に記載の化合物:
【化4】






【公開番号】特開2008−239702(P2008−239702A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79508(P2007−79508)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】