説明

液晶組成物

【課題】光学異方性(Δn)が低く、しかも広い液晶温度範囲を有する液晶組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される含フッ素化合物(A)及び下記一般式(II)で表されるビシクロヘキシル化合物(B)を含有してなる液晶組成物。


(一般式(I)中、R1はアルキル基又はアルケニル基等を表し、環A1及びA2は1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレン等を表し、Z1は単結合、−COO−、−OCO−、−CF2O−又は−OCF2−等を表し、Bは単結合又はアルキレン基を表し、Qはフッ素原子により置換された炭素原子数1〜8個の飽和又は不飽和アルキル基を表し、nは1〜3の数である。一般式(II)中、R2は炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基を表し、R3は炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基を表し、mは1〜3の数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の含フッ素化合物及び特定のビシクロヘキシル化合物を含有してなる液晶組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物の特性である光学(屈折率)異方性(Δn)(以下、単に「Δn」ということがある)や誘電率異方性(Δε)(以下、単に「Δε」ということがある)を利用した液晶表示素子は、これまで多数作られており、時計を始め、電卓、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、携帯電話、プリンター、コンピューター、テレビ等に広く利用され、需要も年々高くなってきている。液晶化合物には固体相と液体相との中間に位置する固有の液晶相があり、その相形態はネマチック相、スメクチック相及びコレステリック相に大別されるが、これらのうち表示素子用にはネマチック相が現在最も広く利用されている。また、液晶表示素子に応用されている方式のうち、表示方式としては、これまでに多数のものが提案され、動的散乱型(DS型)、ゲスト・ホスト型(GH型)、ねじれネマチック型(TN型)、超ねじれネマチック型(STN型)、薄膜トランジスター型(TFT型)及び強誘電性液晶(FLC)等が知られており、駆動方式としては、スタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式及び2周波駆動方式等が知られている。
【0003】
液晶ディスプレイは、ノートパソコン、携帯電話、PDAといった携帯性の高い製品への応用が期待されているが、これら用途においては低消費電力化が求められる。低消費電力化の一つの手段として、低電圧駆動のICを導入する方法が挙げられる。一般に、誘電率異方性(Δε)が正の液晶組成物を用いる電界効果型液晶表示装置のしきい値電圧は、液晶組成物のΔεの平方根に反比例することが知られており、そのため、大きな正のΔεを有する液晶材料が必要になる。
【0004】
本出願人は、Δεの大きな液晶材料を見出すべく検討し、特定の構造を有するパーフルオロアリルオキシ化合物を特許文献1において報告済みである。
【0005】
一方、消費電力を下げるもう一つの手段として、バックライトを必要としない反射型ディスプレイがあり、小型ゲーム機、PDA等に応用されている。該反射型ディスプレイに使用される反射型TNモードでは、液晶材料のΔnとセル厚(d)との積で表されるリターデーション値(Δn・d)を最適化するため、Δnの小さい液晶材料が必要であるが、特許文献1に提案された化合物を用いると、充分に低いΔnを有する液晶組成物を調製することは困難な場合があった。
【0006】
また、特許文献2には、4−アルコキシメチルビシクロヘキシル化合物及びこれを含有した液晶組成物が提案されているが、特定の含フッ素化合物と組み合わせて使用することに関しては全く記載されていない。
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/058676号パンフレット
【特許文献2】特開昭58−167535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、光学異方性(Δn)が低く、しかも広い液晶温度範囲を有する液晶組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の含フッ素化合物及び4−アルコキシアルキルビシクロヘキシル化合物を組み合わせて得られる液晶組成物が、上記の目的を達成し得るものであることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(I)で表される含フッ素化合物(A)及び下記一般式(II)で表されるビシクロヘキシル化合物(B)を含有してなることを特徴とする液晶組成物、並びに該液晶組成物を用いた電気光学表示素子から構成された液晶表示装置を提供するものである。
【0011】
【化1】

(上記式中、R1はR0、R0O、R0OCO又はR0COOを表し、R0はアルキル基を表す。該アルキル基は不飽和結合を有していても良く、該アルキル基中の−CH2−は、−O−、−CO−又は−COO−で置換されていても良く、また、一部あるいは全部の水素原子がハロゲン原子及び/又はシアノ基によって置換されていても良い。
環A1及びA2は、各々独立に、1,4−フェニレン〔−CH=は−N=で置換されていても良い。〕、1,4−シクロへキシレン〔−CH2−は−O−若しくは−S−で置換されていても良い。〕、2,6−ナフチレン又は2,6−デカヒドロナフチレンを表し、また、これらの環の一部あるいは全部の水素原子は、ハロゲン原子及び/又はシアノ基によって置換されていても良い。
1は、単結合、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−(CH24−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH23O−、−O(CH23−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−C≡C−、−CF2O−又は−OCF2−を表す。
Bは単結合又はアルキレン基を表し、該アルキレン基中の一部の水素原子は、ハロゲン原子及び/又はシアノ基によって置換されていても良い。
Qは、フッ素原子により置換された炭素原子数1〜8個の飽和又は不飽和アルキル基を表す。
nは1〜3の数であり、nが2又は3の時は、n個の環A1及びn個のZ1それぞれは異なっていても良い。)
【0012】
【化2】

(上記式中、R2は炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基を表し、R3は炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基を表し、mは1〜3の数である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶組成物は、低いΔn及び広い液晶温度範囲を有するものであり、反射型ディスプレイ等の用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の液晶組成物について詳細に説明する。
【0015】
本発明の液晶組成物に用いる含フッ素化合物(A)を表す上記一般式(I)において、R1はR0、R0O、R0OCO又はR0COOであり、R0で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロメチル、パーフルオロビニル、パーフルオロアリル、イソプロピル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、2−ブチルメチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、1−メチルペンチル等が挙げられる。
【0016】
以下に、上記一般式(I)における基−(A1−Z1n−A2−のより具体的な構造を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
−CY−CY−
−CY−PH−
−PH−PH−
−CY−PH2F−
−CY−PH3F−
−CY−PH2,6-diF−
−CY−PH2,3-diF−
−CY−CY−CY−
−CY−CY−PH−
−CY−PH−PH−
−PH−PH−PH−
−CY−CY−PH3F-
−CY−CY−PH3,5-diF−
−CY−CY−PH2,3-diF−
−CY−PH3F−PH−
−CY−PH3,5-di-F−PH−
−CY−PH2,3-diF−PH−
−CY−PH−PH−CY−
−PH−CH2CH2−CY−CY−
−CY−PH−CH2CH2−PH−
−CY−CY−CH2CH2−PH−
−CY−CH2CH2−CY−
−PH−CH2CH2−CY−
−PH−C≡C−PH−
−CY−PH−C≡C−PH−
−PH−COO−PH−
−CY−COO−PH−
−CY−CY−COO−PH−
−PH−COO−PH−PH−
−Prm−PH−
−Dio−PH−
−PH−Prm−
−PH−Dio−
−PH−Pyr−
−PH−CF2O−PH−
−PH−CH2O−PH−
−PH−CH=CHCH2O−PH−
−PH−(CH2)3O−PH−
−CY−COO−Nap−
−CY−COO−DHN−
【0017】
ただし、上記式中の略号はそれぞれ下記の環構造を表す。
【0018】
【化3】

【0019】
上記一般式(I)において、Bは単結合又はアルキレン基を表し、該アルキレン基としては、メチレン、エチレン、モノフルオロメチレン、ジフルオロメチレン、1,2−ジフルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、2,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)中、Qで表されるフッ素原子により置換された炭素原子数1〜8個の飽和又は不飽和アルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,2,2−トリフルオロエチル、1,2,2−トリフルオロビニル、パーフルオロアリル等の基が挙げられる。
上記含フッ素化合物(A)として、上記一般式(I)における−O−Qが下記部分構造式(III)で表される構造である、即ちQがパーフルオロアリルである含フッ素化合物を使用すると、ネマチック液晶相範囲が広く、低粘度の液晶組成物が得られるため好ましい。
【0021】
【化4】

【0022】
本発明の液晶組成物に用いる上記一般式(I)で表される含フッ素化合物(A)の例としては、下記化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。尚、下記化合物において、R1は上記一般式(I)における場合と同様である。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
【化16】

【0035】
【化17】

【0036】
【化18】

【0037】
【化19】

【0038】
【化20】

【0039】
【化21】

【0040】
【化22】

【0041】
本発明の液晶組成物は、これらの含フッ素化合物の中でも、R1が非置換のアルキル基又はアルケニル基であるもの;環A1及びA2が、各々独立に、未置換の又はフッ素原子によって置換されている1,4−フェニレン又は1,4−シクロヘキシレンであるもの(1,4−シクロヘキシレンである場合は、特に未置換のもの);Z1が単結合、−COO−、−OCO−、−CF2O−又は−OCF2−であるものを含有することが好ましい。
【0042】
本発明の液晶組成物に用いるビシクロヘキシル化合物(B)を表す上記一般式(II)において、R2で表される炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等の基が挙げられ、R3で表される炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の基が挙げられる。
【0043】
上記一般式(II)で表されるビシクロヘキシル化合物(B)としては、下記に例示した如き化合物が挙げられる。
【0044】
【化23】

【0045】
本発明の液晶組成物は、これらのビシクロヘキシル化合物の中でも、4−アルコキシメチルビシクロヘキシル化合物(上記一般式(II)におけるmが1であるもの)を含有することが好ましい。
【0046】
本発明の液晶組成物は、上記一般式(I)で表される含フッ素化合物(A)及び上記一般式(II)で表されるビシクロヘキシル化合物(B)を含有してなることを特徴とするものであって、それぞれの使用量については特に制限されるものではなく、目的とする特性が得られるように適宜な量を選択すればよいが、上記含フッ素化合物(A)は50〜99質量%、特に70〜97質量%の範囲から選択し、上記ビシクロヘキシル化合物(B)は1〜50質量%、特に3〜30質量%の範囲から選択すると、とりわけ、広い液晶温度範囲、低Δn及び低粘度を有する液晶組成物となるため好ましい。
【0047】
本発明の液晶組成物には、従来既知の液晶化合物、液晶類似化合物、後述のカイラル剤等を配合することができる。上記含フッ素化合物(A)及び上記ビシクロヘキシル化合物(B)以外のこれらの成分の含有量は、本発明の液晶組成物において0〜45質量%であることが好ましい。
上記の従来既知の液晶化合物及び液晶類似化合物としては、例えば、下記一般式(IV)で表される化合物〔ただし、前記一般式(I)で表される含フッ素化合物及び前記一般式(II)で表されるビシクロヘキシル化合物を除く〕が挙げられる。
【0048】
【化24】

(式中、Rは、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルカノイルオキシ基若しくはアルコキシカルボニル基を示し、これらはハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、Y2は、シアノ基若しくはハロゲン原子、又はRで表される基と同様の基を示し、Y1、Y3及びY4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を示し、Z2及びZ3は、各々独立に、直接結合手、−CO−O−、−O−CO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−CH=CHCH2O−、−CF2O−、−OCF2−又は−C≡C−を示し、pは0、1又は2を示し、環A3、A4及びA5は、各々独立に、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ピリミジン環又はジオキサン環を示す。)
【0049】
上記一般式(IV)で表される化合物の例としては、下記〔化25−1〕及び〔化25−2〕に示す各化合物が挙げられる。尚、下記の各化合物におけるR、Y1、Y2、Y3及びY4は、上記一般式(IV)におけるものと同じ意味である。
【0050】
【化25−1】

【0051】
【化25−2】

【0052】
また、本発明の液晶組成物には、公知のカイラル剤を併用することができる。該カイラル剤としては、例えば下記一般式(V)又は(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【化26】

(式中、R4及びR5は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表し、これらはエーテル基によって中断されていても良く、ハロゲン原子及び/又はシアノ基により置換されていても良く、あるいは不飽和結合を有していても良い。A6、A7及びA8は、それぞれ独立して、1,4−フェニレン、trans−1,4−シクロヘキセン、又は2−若しくは3−フルオロ−1,4−フェニレン若しくは1,4−シクロヘキセニレンを表し、これらはハロゲン原子及び/又はシアノ基により置換されていても良い。Z4及びZ5は、それぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−(CH24−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH23O−、−O(CH23−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−CFHCFH−又は単結合を表し、qは0、1又は2を表す。ただし、少なくとも1個以上の不整炭素原子を有する。)
【0054】
【化27】

(式中、R6は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、又は置換基を有することのできるアリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニルオキシ基若しくはアリールオキシカルボニル基等を表し、これらの基において、水素原子はハロゲン原子に置き換えられていても良く、エチレン基はエテニレン基又はエチニレン基により置き換えられていても良い。R7は、アルキル基又はアルケニル基を表す。B1は、唯一つの二重結合を他の環とは共有することなく有する縮合環を表し、該縮合環はアルキル基及び/又はアルコキシ基で置換されていても良い。)
【0055】
カイラル剤の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0056】
【化28】

【0057】
また、例えば、特開昭63−175095号公報、特開平1−242542号公報、特開平1−258635号公報、特開平6−200251号公報、特開2002−308833号公報等に提案されているカイラル剤も使用できる。
【0058】
これらのカイラル剤は、単独で使用することもできるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。その場合には、らせんのねじれ方向が異なるものの組み合わせでも、ねじれ方向が同じものの組み合わせでも良い。また、例えば、特開平7−258641号公報に提案されているように、コレステリック相の旋回能の温度依存性を正とするものと、コレステリック相の旋回能の温度依存性を負とするものとを組みあわせることもできる。
使用するカイラル剤の種類及び濃度を変えることにより、液晶組成物のピッチを0.2μ〜300μmの範囲となるように調整することができる。
【0059】
また、本発明の液晶組成物には、光や熱に対して長期に渡る優れた安定性を付与する目的で、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系、オキザニリド系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤;フェノール系、リン系、硫黄系等の酸化防止剤等を添加することもできる。
【0060】
また、本発明の液晶組成物には、帯電防止効果を得るため、界面活性剤等の化合物を添加することもできる。該化合物としては、例えば、特開昭59−4676号公報、特開平4−36384号公報、特開平4−180993号公報、特開平11−212070号公報、特開平8−337779号公報、特開平9−67577号公報、特開2003−342580号公報等に提案された化合物等が挙げられる。
【0061】
本発明の液晶組成物は、従来の液晶組成物と同様にして、液晶セルに封入されて、種々の液晶素子を構成することができる。該液晶素子は、電気光学表示素子として用いることができ、電気光学表示素子には、例えば、動的散乱型(DS)、ゲスト・ホスト型(GH)、ねじれネマチック型(TN)、超ねじれネマチック型(STN)、薄膜トランジスター型(TFT)、薄膜ダイオード型(TFD)、強誘電液晶型(FLC)、反強誘電液晶型(AFLC)、高分子分散液晶型(PD)、垂直配向(VA)、インプレーンスイッチング(IPS)、コレステリックネマチック相転移型等の種々の表示モードを適用することができ、また、スタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式、2周波駆動方式等の種々の駆動方式を適用することができる。
【0062】
本発明の液晶組成物は、その特性から、アクティブマトリックス駆動方式のねじれネマチック型(TN)、インプレーンスイッチング(IPS)等の電気光学表示素子に好適に使用できる。
【0063】
本発明の液晶組成物を用いてなる電気光学表示素子は、従来の電気光学表示素子と同様にして、時計、電卓をはじめ、測定器、自動車用計器、複写機、カメラ、OA機器、携帯用パソコン、携帯電話等の用途に使用する液晶表示装置に用いることができるが、特にその特性からカラー携帯電話用途の液晶表示装置に好適に使用される。また、本発明の液晶組成物を用いてなる電気光学表示素子は、反射型ディスプレイである液晶表示装置に好適に使用することができる。
また、上記液晶素子は、電気光学表示素子以外の用途、例えば、調光窓、光シャッタ、偏光交換素子等にも用いることができる
【実施例】
【0064】
以下、実施例等をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって制限を受けるものではない。
【0065】
尚、以下の実施例等においては、下記の略語を使用する。
CY:1,4−シクロヘキシレン
PH:1,4−フェニレン
PHnF:n位置換−フルオロ−1,4−フェニレン(ただし、n未記載の場合4位を表す。)
Cn:炭素原子数n個の直鎖アルキル
【0066】
〔実施例1〕
下記に示した配合によって液晶組成物を調製した。
【0067】
(配合) 質量部
C3-CY-PH-OCF2CF=CF2 9.5
C4-CY-PH-OCF2CF=CF2 4.5
C3-CY-PH3F-OCF2CF=CF2 13.5
C5-CY-PH3F-OCF2CF=CF2
C2-CY-CY-PH3F-OCF2CF=CF2 12
C3-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 15
C4-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
C5-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 16
C3-CY-PH-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 5.5
C5-CY-CY-CH2OCH3 10
【0068】
〔比較例1〕
下記に示した配合によって液晶組成物を調製した。
【0069】
(配合) 質量部
C3-CY-PH-OCF2CF=CF2 10
C4-CY-PH-OCF2CF=CF2
C3-CY-PH3F-OCF2CF=CF2 15
C5-CY-PH3F-OCF2CF=CF2
C2-CY-CY-PH3F-OCF2CF=CF2 13
C3-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 17
C4-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
C5-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 18
C3-CY-PH-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
【0070】
〔実施例2〕
下記に示した配合によって液晶組成物を調製した。
【0071】
(配合) 質量部
C3-CY-PH-OCF2CF=CF2 27
C3-CY-PH3F-OCF2CF=CF2
C3-CY-CY-PH3F-OCF2CF=CF2 12
C3-CY-PH3F-COO-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 10
C3-CY-PH3,5-diF-COO-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
C3-PH-PH3,5-diF-CF2O-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
CH2=CH-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 15
C5-CY-CY-CH2OCH3 10
【0072】
〔比較例2〕
下記に示した配合によって液晶組成物を調製した。
【0073】
(配合) 質量部
C3-CY-PH-OCF2CF=CF2 30
C3-CY-PH3F-OCF2CF=CF2
C3-CY-CY-PH3F-OCF2CF=CF2 24
C3-CY-PH3F-COO-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 11
C3-CY-PH3,5-diF-COO-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
C3-PH-PH3,5-diF-CF2O-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
CH2=CH-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 17
【0074】
実施例1及び2、比較例1及び2の液晶組成物の特性値(NI点、η、Δn及び低温保存性)を測定した。それらの結果を下記の〔表1〕に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、前記一般式(I)で表される含フッ素化合物を含有する液晶組成物に対して、前記一般式(II)で表されるビシクロヘキシル化合物を添加することによって、NI点を変えることなく、低Δnで、しかも、広い液晶温度範囲において保存安定性に優れ且つ低粘度である液晶組成物が得られる。
【0077】
以下に本発明の液晶組成物の配合例を示す。
【0078】
〔配合例1〕
(配合) 質量部
C7-CY-PH-F 5
CH2=CH-CY-CY-PH-OC1 6
C3-CY-PH-PH-C2 3
C2-CY-CY-PH3,4-diF 3
C3-CY-CY-PH3,4-diF 3
C3-CY-PH-PH3,4-diF 13
C3-CY-CY-PH3,4,5-triF 5
C3-CY-CY-PHOCF3 13
C3-CY-CY-PH3F-OCF2CF=CF2 18
C3-CY-PH-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 14
C3-CY-PH-OCF2CF=CF2
C3-CY-CY-CH2OC1 10
【0079】
〔配合例2〕
(配合) 質量部
C7-CY-PH-F 3
CH2=CH-CY-CY-C5 5
C3-CY-PH-OCF2CF=CF2
C3-CY-CY-PH-OCF3
C3-CY-CY-PHOCF2H 11
C3-CY-CY-PH3,4-diF 5
C3-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2H 12
C5-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2 15
C3-CY-CY-CH2CH2-PH3,4-diF 8
C3-CY-PH-PH3,4-diF 6
C3-CY-PH-PH3,5-diF-OCF2CF=CF2
C3-CY-PH-PH3,5-diF-OCF2H 7
C5-CY-CY-CH2OC1 8
【0080】
〔配合例3〕
(配合) 質量部
C3-CY-PH-OC2 6
C3-CY-CY-CH2OC1 12
CH2=CH-CY-CY-C5 18
C2-CY-CY-PH3,5-diF-OCF2H 10
C2-CY-CY-PH-OCF3
CH2=CH-CY-CY-PH3,4-diF 3
C2-CY-PH3F-PH3,4,5-triF 6
C3-CY-PH3F-PH3,5-diF-OCF2H 12
C3-CY-PH3F-PH3,5-diF-OCF3 14
C2-CY-CY-COO-PH3,4-diF 4
C3-CY-PH3F-COO-PH-OCF3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される含フッ素化合物(A)及び下記一般式(II)で表されるビシクロヘキシル化合物(B)を含有してなることを特徴とする液晶組成物。
【化1】

(上記式中、R1はR0、R0O、R0OCO又はR0COOを表し、R0はアルキル基を表す。該アルキル基は不飽和結合を有していても良く、該アルキル基中の−CH2−は、−O−、−CO−又は−COO−で置換されていても良く、また、一部あるいは全部の水素原子がハロゲン原子及び/又はシアノ基によって置換されていても良い。
環A1及びA2は、各々独立に、1,4−フェニレン〔−CH=は−N=で置換されていても良い。〕、1,4−シクロへキシレン〔−CH2−は−O−若しくは−S−で置換されていても良い。〕、2,6−ナフチレン又は2,6−デカヒドロナフチレンを表し、また、これらの環の一部あるいは全部の水素原子は、ハロゲン原子及び/又はシアノ基によって置換されていても良い。
1は、単結合、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−(CH24−、−CH2O−、−OCH2−、−(CH23O−、−O(CH23−、−CH=CHCH2O−、−OCH2CH=CH−、−C≡C−、−CF2O−又は−OCF2−を表す。
Bは単結合又はアルキレン基を表し、該アルキレン基中の一部の水素原子は、ハロゲン原子及び/又はシアノ基によって置換されていても良い。
Qは、フッ素原子により置換された炭素原子数1〜8個の飽和又は不飽和アルキル基を表す。
nは1〜3の数であり、nが2又は3の時は、n個の環A1及びn個のZ1それぞれは異なっていても良い。)
【化2】

(上記式中、R2は炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基を表し、R3は炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基を表し、mは1〜3の数である。)
【請求項2】
上記含フッ素化合物(A)として、上記一般式(I)における−O−Qが下記部分構造式(III)で表される含フッ素化合物を、少なくとも一種含有してなることを特徴とする請求項1記載の液晶組成物。
【化3】

【請求項3】
上記含フッ素化合物(A)として、上記一般式(I)における環A1及びA2が、各々独立して、フッ素原子によって置換されていても良い1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンである含フッ素化合物を、少なくとも一種含有してなることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶組成物。
【請求項4】
上記含フッ素化合物(A)として、上記一般式(I)におけるZ1が、単結合、−COO−、−OCO−、−CF2O−又は−OCF2−である含フッ素化合物を、少なくとも一種含有してなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液晶組成物。
【請求項5】
上記ビシクロヘキシル化合物(B)として、上記一般式(II)におけるmが1であるビシクロヘキシル化合物を、少なくとも一種含有してなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液晶組成物。
【請求項6】
上記含フッ素化合物(A)50〜99質量%及び上記ビシクロヘキシル化合物(B)1〜50質量%を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液晶組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の液晶組成物から構成された電気光学表示素子を用いた液晶表示装置。

【公開番号】特開2007−146023(P2007−146023A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343352(P2005−343352)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】