説明

液晶表示パネルの低温特性評価方法および低温特性評価用装置

【課題】液晶表示パネルの低温環境下における画像表示の特性を定量的に評価することで、その後の液晶表示パネルの駆動条件の調整等や設計変更および改良等に役立てることができる液晶表示パネルの低温特性評価方法を提供すること。
【解決手段】アクティブマトリクス方式で駆動される液晶表示パネルの低温特性評価方法であって、液晶表示パネルを低温環境下で保持しつつ、スイッチング素子のオン時間を変化させるべく液晶表示パネルの1画面の繰り返し走査の周波数であるフレーム周波数を変化させながら液晶表示パネルに評価用の画像を表示させて、その評価用の画像に輝度が不均一なムラが視認されるフレーム周波数を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルの特性評価方法および特性評価用装置に関し、更に詳しくは、−10℃などの低温環境下での画像表示における液晶表示パネルの低温特性評価方法および低温特性評価用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの家電製品の表示部として、薄膜トランジスタ(TFT)を備えたアクティブマトリクス方式の液晶表示パネルが広く用いられている。この液晶表示パネルは、TFTアレイ基板とカラーフィルタ(CF)基板とからなる一対の基板が所定の間隔を置いて平行に対向配置され、両基板間に液晶が充填された構成をなしている。
【0003】
TFTアレイ基板には、複数本の走査電極線と、複数本の画像信号電極線と、これら電極線によって格子状に区画された各領域に配置された画素電極が形成され、CF基板にはほぼ全面に共通電極が形成されており、各画素電極と共通電極に印加する電圧を変化させることで、画素毎の液晶を駆動させて画像表示ができるようになっている。
【0004】
具体的には、1本の走査電極線を選択して走査信号電圧を印加し、選択された走査電極線に接続された全てのTFTをオン状態にして、このときにタイミングを合わせて、全ての画像信号電極線にそれぞれの画素の駆動状態に合わせた画像信号電圧を印加することで、各TFTに接続された全ての画素電極に画像信号電圧が充電されて液晶が駆動される。そして、走査電極線を上から順次選択して走査することで、すべての画素が駆動されて1フレーム分の画像、つまり1画面が表示される。これを所定のフレーム周波数(1画面の繰り返し走査の周波数)で繰り返すことで動画が表示されるようになっている。
【0005】
フレーム周波数としては、通常、60Hzが広く用いられているが、動きの速い動画像であっても1/60秒の間は画像が止まったホールド型の表示となるため、輪郭が不鮮明な画像になるいわゆる動画ぼけになってしまう。そこで、1つのフレームで画像を表示した後に全面ブラック(黒)の画像を挿入し、ホールド時間を短くして擬似的にインパルス型の表示にすることによりくっきりと動画を表示する技術が開発されている。この場合、フレーム周波数は2倍の120Hzとなる。また、液晶表示パネルの画像表示におけるコントラスト等の画質を向上させるためフレーム周波数を120Hzとする場合がある。
【0006】
このような液晶表示パネルは常温だけでなく、冬期間に屋外で使用されることがあり、このような低温環境下で液晶表示パネルに画像を表示させると、図5に示されるような液晶表示パネル30の全面または一部に輝度が不均一なムラ(以下、低温ムラという)31が視認されることがある。
【0007】
このような低温ムラが発生する原因は、スイッチング素子としてのTFTの低温時での応答速度の低下による画素電極への印加電圧の充電不足、つまりTFTのオン時間が充分でないことによって液晶が充分に駆動されていないのが主な原因であると考えられている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−29720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来、低温環境下での液晶表示パネルの駆動能力についての評価方法がなく、液晶表示パネルを設計・開発していく上で、低温ムラに対して液晶表示パネルを定量的に評価する方法の確立が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、液晶表示パネルの低温環境下における画像表示の特性を定量的に評価することで、その後の液晶表示パネルの駆動条件の調整等や設計変更および改良等に役立てることができる液晶表示パネルの低温特性評価方法および低温特性評価用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明は、複数本の走査電極線と同じく複数本の画像信号電極線とが交差するように形成され、隣り合う前記走査電極線と隣り合う前記画像信号電極線とで囲まれた領域には画素電極が形成され、前記走査電極線と前記画像信号電極線の交差部近傍には前記走査電極線に印加される走査信号電圧によりオン・オフされて前記画素電極への前記画像信号電極線を介しての画像信号電圧の印加をスイッチングするスイッチング素子が形成され、前記画素電極に液晶を介して共通電極が形成されてアクティブマトリクス方式で駆動される液晶表示パネルの低温特性評価方法であって、前記液晶表示パネルを低温環境下で保持し、前記スイッチング素子のオン時間を変化させるべく前記液晶表示パネルの1画面の繰り返し走査の周波数であるフレーム周波数を変化させながら該液晶表示パネルに評価用の画像を表示させて、該評価用の画像に輝度が不均一なムラが視認されるフレーム周波数を検出することを要旨とするものである。
【0012】
また、上記課題を解決するため本発明は、複数本の走査電極線と同じく複数本の画像信号電極線とが交差するように形成され、隣り合う前記走査電極線と隣り合う前記画像信号電極線とで囲まれた領域には画素電極が形成され、前記走査電極線と前記画像信号電極線の交差部近傍には前記走査電極線に印加される走査信号電圧によりオン・オフされて前記画素電極への前記画像信号電極線を介しての画像信号電圧の印加をスイッチングするスイッチング素子が形成され、前記画素電極に液晶を介して共通電極が形成されてアクティブマトリクス方式で駆動される液晶表示パネルの低温特性評価用装置であって、前記液晶表示パネルを低温環境下で保持する恒温槽と、前記スイッチング素子のオン時間を変化させるべく前記液晶表示パネルの1画面の繰り返し走査の周波数であるフレーム周波数を変化させるフレーム周波数変化手段とを備え、前記恒温槽内で前記液晶表示パネルを低温環境下に保持し、前記フレーム周波数変化手段によって前記フレーム周波数を変化させながら前記液晶表示パネルに評価用の画像を表示させて、該評価用の画像に輝度が不均一なムラが視認されるフレーム周波数を検出可能にしたことを要旨とするものである。
【0013】
このような構成を有する液晶表示パネルの特性評価方法および特性評価用装置によれば、新規に設計・開発した液晶表示パネルの試作品を、例えば−10℃などの低温環境下で保持し、スイッチング素子のオン時間を変化させるべく液晶表示パネルの1画面の繰り返し走査の周波数であるフレーム周波数を60Hz、70Hz、80Hz、90Hzへと順次変化させることで、低温ムラが視認されるフレーム周波数の下限値を検出することができる。
【0014】
この場合、例えば90Hzで低温ムラが視認されたとき、この液晶表示パネルは、90Hz以下のフレーム周波数領域で使用することが可能であることが確認される。したがって、この液晶表示パネルをフレーム周波数60Hzで使用する場合は、低温ムラに対するマージンが大きいわけであるから、この液晶表示パネルの駆動条件の調整等や設計変更等により液晶表示パネルの製造コストを低減することを図ることができる。
【0015】
この場合、評価用の画像の輝度の階調レベルが、液晶表示パネルの画像表示における最も明るい階調レベルと最も暗い階調レベルの中間である構成にすれば、低温環境下における液晶表示パネルの画像のムラが視認され易いので、フレーム周波数を変化させた際の低温ムラの視認性が良く簡便に評価を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0016】
上記構成を有する本発明によれば、液晶表示パネルの低温環境下における画像表示に輝度が不均一なムラが視認されないフレーム周波数が検出されるので、この検出結果に基づいて、その液晶表示パネルの駆動可能なフレーム周波数領域が確認され、その後の液晶表示パネルの駆動条件の調整等や設計変更等に役立てることができ、その結果、低温環境下で低温ムラが視認されてしまう液晶表示パネルの市場への流出を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る液晶表示パネルの低温特性評価方法および低温特性評価用装置の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は低温特性評価用装置の概略構成を示した図である。
【0018】
図示されるように、液晶表示パネルの低温特性評価用装置1は、液晶表示パネル30を低温環境下に保持する恒温槽2と、種々なるフレーム周波数で液晶表示パネル30に評価用の画像30aを表示させるための各種電気回路を備えている。
【0019】
恒温槽2は、外層2a、内層2bの2重構造を有しており、冷却器3で冷却された気体を送風機4で送り出して、恒温槽2内部の気体を所定の温度にまで下げることができるようになっている。恒温槽2内部には温度センサー5が設けられており、内部の気体の温度を検出することができる。この温度センサー5が検出した信号に応じて、恒温槽2内部が設定された温度で一定になるように温度制御部6が冷却器3と送風機4を制御するようになっている。
【0020】
恒温槽2内部に収容された液晶表示パネル30には、この液晶表示パネル30に駆動信号を供給する走査電極線駆動回路13と画像信号電極線駆動回路14が接続されている。走査電極線駆動回路13と画像信号駆動回路14は、表示制御回路12に接続されており、表示制御回路12は走査電極線駆動回路13と画像信号電極線駆動回路14を制御して、これら走査電極線駆動回路13と画像信号電極線駆動回路14から所定の駆動信号を液晶表示パネル30に出力させて、液晶表示パネル30に評価用画像30aを表示させる。
【0021】
表示制御回路12には、発振回路11が接続されており、所定周波数の基準クロック信号CLKが入力されている。表示制御回路12は、発振回路11から入力された基準クロック信号CLKの周波数に対応する駆動信号を走査電極線駆動回路13と画像信号電極線駆動回路14から液晶表示パネル30に出力させる。また、表示制御回路12は、液晶表示パネル30の駆動に必要な各種の直流電源を走査電極線駆動回路13と画像信号電極駆動回路14に供給している。
【0022】
発振回路11には、発振周波数設定回路10が接続されており、発振回路11から出力される基準クロック信号CLKを種々なる周波数に変化させることが可能になっている。この場合、発振回路11は、例えば複数のマルチ発信器からなるものが用いられており、発振周波数設定回路10からの出力信号に応じて基準クロックCLKの周波数を種々変化させることができ、それに伴い、この周波数が変化する基準クロック信号CLKに対応して走査電極線駆動回路13および画像信号電極線駆動回路14から液晶表示パネル30に出力される駆動信号の周波数を種々変化させることが可能になっている。
【0023】
このようなフレーム周波数変化手段により液晶表示パネル30を駆動するフレーム周波数(1画面の繰り返し走査の周波数)を例えば、60Hz〜120Hzの間で無段階に連続して変化させることや、60Hz、70Hz、80Hz・・・と段階的に変化させることができるようになっている。
【0024】
また、図1に示されるように、恒温槽2内の液晶表示パネル30の背面側には、バックライトユニット20が配設されている。このバックライトユニット20は、複数本の蛍光ランプ21を備え、これら蛍光ランプ21から発せられる光の特性を調整して液晶表示パネル30の背面側に照射するもので、照射された光は、液晶表示パネル30を透過することにより、液晶表示パネル30の前面側に評価用画像30aが可視状態に表示されるようになっている。各蛍光ランプ21は、例えば点灯電圧800Vrms〜1500Vrmsで点灯周波数30kHz〜60kHzを発生させる図示しないランプ点灯回路によって点灯されるようになっている。
【0025】
図2は、本発明が適用されるアクティブマトリクス方式の液晶表示パネル30が備えるTFTアレイ基板40の概略構成を拡大して示した平面図、図3は図2のA−A線における液晶表示パネル30の断面図である。
【0026】
図示されるように、TFTアレイ基板40には複数の画素電極41がマトリクス状に形成されている。各画素電極41の周囲には、走査電極線であるゲート電極線42と画像信号電極線であるソース電極線43とが相互に直交するように形成されている。これらゲート電極線42とソース電極線43はアルミニウム等からなる金属線である。ゲート電極線42とソース電極線43とは、その交差部において、ソース電極線43が上側、ゲート電極線42が下側となるように交差しており、交差部においてゲート電極線42とソース電極線43は、窒素酸化膜等からなるゲート絶縁膜46を介して電気的に絶縁されている。
【0027】
また、ゲート電極線42とソース電極線43と交差部には、ゲート電極線42の一部であるゲート電極42aに接続されたスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)44が形成されている。
【0028】
TFT44が形成されている領域のゲート絶縁膜46の上側には、アモルファスシリコン等からなる半導体膜45が、ゲート電極42aに重畳するように形成されている。また、その半導体膜45の上側には、ソース電極線43の一部であるソース電極43aとドレイン電極43bが形成されている。この場合、ソース電極43aとドレイン電極43bは、ゲート電極42a上の半導体膜45の両側に相互に離隔して形成されている。そして、ドレイン電極43bが画素電極41のコンタクトホール部41aを介して画素電極41に接続されている。
【0029】
TFT44は、ゲート電極線42のゲート電極42aより供給される走査信号電圧Vgによってオン・オフされる。また、ソース電極線43のソース電極43aより供給される画像信号電圧Vsは、ドレイン電極43bとコンタクトホール部41aを介して画素電極41に供給される。
【0030】
このようなTFT44は、ゲート絶縁膜46の上側に形成された層間絶縁膜47に覆われている。この層間絶縁膜47は感光性樹脂からなり、この層間絶縁膜47の上に画素電極41が形成されている。画素電極41は例えばITO(indium-tin oxide:インジウム酸化スズ)等の透明導電膜により形成されている。この画素電極41の上側には図示しない配向膜が形成され、液晶60がこの配向膜により所定の方向に配向規制される。
【0031】
また、このようなTFTアレイ基板40には、ソース電極線43から供給されてTFT44を介して画素電極41に充填された画像信号電圧Vsの保持時間を確保すべく、保持容量電極線48が画素電極41に対してゲート絶縁膜46および層間絶縁膜47を介して重ね合うように配置されている。この場合、保持容量電極線48は、ゲート電極線42と平行になるように画素電極41の略中央位置に設けられている。
【0032】
また、このようなTFTアレイ基板40に対向配置されるCF基板50は、図3に示されるように、上述したゲート電極線42とソース電極線43が形成された領域を遮光するように格子形状のブラックマトリクス(BM)52が形成されており、隣り合うBM52で囲まれた領域には、赤、青、緑等の着色層53が形成されている。また、着色層53の下側には各画素電極41に共通の共通電極51が形成されている。この共通電極51も、ITO等の透明導電膜により形成されている。また、共通電極51の下側には図示しない配向膜が形成され、液晶60がこの配向膜により所定の方向に配向規制される。
【0033】
このような構成の液晶表示パネル30は、恒温槽2内においてバックライトユニット20によって背面側から光が照射され、上述した走査電極線駆動回路13から出力されてゲート電極線42に印加される走査信号電圧Vgと、画像信号電極線駆動回路14から出力されてソース電極線43に印加される画像信号電圧Vsによって線順次走査方式で画像表示が行われる。
【0034】
図4(a)〜(d)は、各フレーム周波数(60Hz、70Hz、80Hz、90Hz)において、TFTアレイ基板40に形成されたゲート電極線42に印加される走査信号電圧Vgおよびソース電極線43に印加される画像信号電圧Vs、そして、CF基板50に形成された共通電極51に印加されるコモン電圧Vcomの時間変化を示した図である。
【0035】
この場合、走査電極線駆動回路13が1本のゲート電極線42を選択して走査信号電圧Vgを印加し、選択されたゲート電極線42に接続された全てのTFT44をオン状態にする。このときにタイミングを合わせて、画像信号電極線駆動回路14が全てのソース電極線43にそれぞれの画素の駆動状態に合わせた画像信号電圧Vsを印加することで、各TFT44に接続された全ての画素電極41に画像信号電圧Vsが充電される。
【0036】
このとき、共通電極51に印加されているコモン電圧Vcomと画像信号電圧Vsとの電位差が液晶60を駆動する液晶駆動電圧VLCとなり、この液晶駆動電圧VLCによって液晶60が駆動される。そして、走査電極線駆動回路13が各ゲート電極線42を上から順次選択して走査することで、すべての画素が駆動されて1フレーム分の画像、つまり1画面が表示される。これを所定のフレーム周波数(1画面の繰り返し走査の周波数)で繰り返すことで動画が表示されるようになっている。
【0037】
図4(a)に示されるように、フレーム周波数が60Hzである場合、一周期(1フレーム期間)は、約16ms(1/60s)になる。例えばゲート電極線42の数を480本とすると、1本の走査時間、つまり書き込み時間Taは、約33μsになる。この書き込み時間33μs内にTFT44をオンして、画素電極41に画像信号電圧Vsを印加して充電させて液晶駆動電圧VLSで液晶60を駆動する。そして、次のゲート電極線42に走査が移動する時にTFT44をオフし、図示されるような保持時間Thの間、液晶60を駆動している液晶駆動電圧VLSを液晶60と保持容量電極線48による保持容量で保持する。
【0038】
通常、このような液晶表示パネル30では、液晶60を交流駆動することが必須となっていることから、液晶60を駆動する液晶駆動電圧VLSの極性を交互に反転することが行われている。例えば、図示されるようにコモン電圧Vcomを一定にし、1フレーム毎に画像信号電圧Vsの極性をコモン電圧Vcomに対して反転するフレーム反転駆動によって液晶60が交流駆動されている。
【0039】
この場合、画像信号電圧Vsは、図1に示されるように液晶表示パネル30に評価用画像30aを表示させる所定の階調レベルに設定されている。具体的には、液晶表示パネル30の各画素に表示される最も明るい階調レベル(白表示)と最も暗い階調レベル(黒表示)の間の中間のレベルの階調レベル(グレー表示)になるように画像信号電圧Vsが表示制御回路12によって設定されている。
【0040】
評価用画像30aをこのような中間の階調レベルとすることで、ムラが視認され易くなり、後述する液晶表示パネル30を駆動するフレーム周波数を変化させた際の低温ムラの視認性が良く簡便に評価を行うことが可能である。
【0041】
次に、上述した低温特性評価用装置1を用いた液晶表示パネル30の低温評価方法について説明する。
【0042】
予め内部が−10℃の雰囲気で一定になるように設定された恒温槽2内に液晶表示パネル30を収容して、例えば30分間、液晶表示パネル30を放置する。このときバックライト20は点灯状態にしておく。その後、各電気回路を動作させて、液晶表示パネル30を駆動して、評価用画像30aを表示させる。
【0043】
先ず、図4(a)に示されるようにフレーム周波数60Hz(1フレーム期間(1/60s))で液晶表示パネル30を駆動し評価用画像30aを表示させる。図示されるように、このとき1フレーム期間は1/60sである。そして、この状態で表示された評価用画像30aに低温ムラ(全面または一部に輝度が不均一なムラ)が発生していないか確認する。
【0044】
次に、発振周波数設定回路10および発振回路11によって基準クロック信号CLKの周波数を変化させて、図4(b)に示されるように、フレーム周波数70Hz(1フレーム期間(1/70s))で、液晶表示パネル30を駆動して評価用画像30aを表示させる。図示されるように、このとき1フレーム期間は1/70sである。そして、この状態で表示された評価用画像30aに低温ムラが発生していないか確認する。
【0045】
次に、更に基準クロック信号CLKの周波数を更に変化させて、図4(c)に示されるように、フレーム周波数80Hz(1フレーム期間(1/80s))で、液晶表示パネル30を駆動して評価用画像30aを表示させる。図示されるように、このとき1フレーム期間は1/80sである。そして、この状態で表示された評価用画像30aに低温ムラが発生していないか確認する。
【0046】
次に、更に基準クロック信号CLKの周波数を更に変化させて、図4(d)に示されるように、フレーム周波数90Hz(1フレーム期間(1/90s))で、液晶表示パネル30を駆動して評価用画像30aを表示させる。図示されるように、このとき1フレーム期間は1/90sである。そして、この状態で表示された評価用画像30aに低温ムラが発生していないか確認する。
【0047】
このようにフレーム周波数が60Hz、70Hz、80Hz、90Hzと増加するのに伴って、図示されるように書き込み時間Ta、つまりスイッチング素子であるTFT44のオン時間が短くなっていく。
【0048】
図5に示されるような液晶表示パネル30に低温ムラ31が発生する原因は、スイッチング素子としてのTFT44の低温時での応答速度の低下による画素電極41への画像信号電圧Vsの充電不足、つまりTFT44のオン時間(書き込み時間Ta)が充分でないことによって液晶60が充分に駆動されていないのが主な原因であることから、TFT44のオン時間を短くするべくフレーム周波数を増加させることで、低温ムラが発生するフレーム周波数を検出することができる。
【0049】
例えば、上述した実施の形態において、フレーム周波数が60Hz、70Hz、80Hzでは、液晶表示パネル30に表示された評価用画像30aに低温ムラが視認されないが、フレーム周波数を90Hzにしたときに低温ムラが発生したと仮定すると、この液晶表示パネル30の−10℃という低温環境下におけるフレーム周波数の上限は90Hzであることが確認される。つまり、この液晶表示パネル30は、90Hz以下のフレーム周波数領域で使用することが可能であることが確認される。
【0050】
これにより、例えば、液晶表示パネル30がフレーム周波数を60Hzとして設計・開発されたものであれば、フレーム周波数を低温ムラが発生しない80Hzで使用することができる。また、フレーム周波数が90Hzまでは低温ムラが視認されないこの液晶表示パネル30をフレーム周波数60Hzで使用する場合は、TFT44のオン時間にマージンがあることから、TFT44の応答特性をデチューンさせるべく安価な材料を用いて製作して材料費を削減する設計変更を実施することができる。
【0051】
このように液晶表示パネルの低温環境下における画像表示に輝度が不均一なムラが視認されないフレーム周波数が検出されるので、この検出結果に基づいて、その液晶表示パネルの低温環境下で駆動可能なフレーム周波数領域が確認され、その後の液晶表示パネルの駆動条件の調整等や設計変更等に役立てることができ、その結果、低温環境下で低温ムラが視認されてしまう液晶表示パネルの市場への流出を防止することができる。
【0052】
以上、本発明に係る液晶表示パネルの低温特性評価方法および低温特性評価用装置の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、液晶表示パネルのフレーム周波数を60Hz〜90Hzにまで変化させる構成について説明したが、低温ムラが視認されなければ、低温ムラが視認されるまで120Hz、240Hzとフレーム周波数を増加させても良い。また、これとは逆に低温ムラが視認されるフレーム周波数から、低温ムラ視認されなくなるまでフレーム周波数を減少させる構成でも良く、低温ムラが発生しないフレーム周波数領域を確認することができる。また、恒温槽内の雰囲気の温度を−10℃に設定した構成について説明したが、−35℃等の更に厳しい条件の低温環境下で液晶表示パネルを保持して低温特性評価を行う構成でも良く、上述した実施の形態には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示パネルの低温評価用装置の概略構成を示した図である。
【図2】本発明によって評価される液晶表示パネルが備えるTFTアレイ基板の1画素を拡大して示した図である。
【図3】図2のA−A線における液晶表示パネルの断面を示した図である。
【図4】液晶表示パネルに形成されたゲート電極線、ソース電極線、共通電極に印加される各電圧の変化を時間軸に沿って示した図である。
【図5】液晶表示パネルに低温ムラが視認された状態を示した図である。
【符号の説明】
【0055】
1 液晶表示パネルの低温特性評価用装置
2 恒温槽
3 冷却器
4 送風機
5 温度センサー
6 温度制御部
10 発振周波数設定回路
11 発振回路
12 表示制御回路
13 走査電極線駆動回路
14 画像信号電極線駆動回路
20 バックライトユニット
30 液晶表示パネル
30a 評価用画像
40 TFTアレイ基板
41 画素電極
42 ゲート電極線
43 ソース電極線
44 TFT
48 保持容量電極線
50 CF基板
51 共通電極
52 ブラックマトリックス
53 着色層
60 液晶
CLK 基準クロック信号
Vg 走査信号電圧
Vs 画像信号電圧
Vcom コモン電圧
VLC 液晶駆動電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の走査電極線と同じく複数本の画像信号電極線とが交差するように形成され、隣り合う前記走査電極線と隣り合う前記画像信号電極線とで囲まれた領域には画素電極が形成され、前記走査電極線と前記画像信号電極線の交差部近傍には前記走査電極線に印加される走査信号電圧によりオン・オフされて前記画素電極への前記画像信号電極線を介しての画像信号電圧の印加をスイッチングするスイッチング素子が形成され、前記画素電極に液晶を介して共通電極が形成されてアクティブマトリクス方式で駆動される液晶表示パネルの低温特性評価方法であって、前記液晶表示パネルを低温環境下で保持し、前記スイッチング素子のオン時間を変化させるべく前記液晶表示パネルの1画面の繰り返し走査の周波数であるフレーム周波数を変化させながら該液晶表示パネルに評価用の画像を表示させて、該評価用の画像に輝度が不均一なムラが視認されるフレーム周波数を検出することを特徴とする液晶表示パネルの低温特性評価方法。
【請求項2】
前記評価用の画像の輝度の階調レベルが、前記液晶表示パネルの画像表示における最も明るい階調レベルと最も暗い階調レベルの中間であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネルの低温特性評価方法。
【請求項3】
複数本の走査電極線と同じく複数本の画像信号電極線とが交差するように形成され、隣り合う前記走査電極線と隣り合う前記画像信号電極線とで囲まれた領域には画素電極が形成され、前記走査電極線と前記画像信号電極線の交差部近傍には前記走査電極線に印加される走査信号電圧によりオン・オフされて前記画素電極への前記画像信号電極線を介しての画像信号電圧の印加をスイッチングするスイッチング素子が形成され、前記画素電極に液晶を介して共通電極が形成されてアクティブマトリクス方式で駆動される液晶表示パネルの低温特性評価用装置であって、前記液晶表示パネルを低温環境下で保持する恒温槽と、前記スイッチング素子のオン時間を変化させるべく前記液晶表示パネルの1画面の繰り返し走査の周波数であるフレーム周波数を変化させるフレーム周波数変化手段とを備え、前記恒温槽内で前記液晶表示パネルを低温環境下に保持し、前記フレーム周波数変化手段によって前記フレーム周波数を変化させながら前記液晶表示パネルに評価用の画像を表示させて、該評価用の画像に輝度が不均一なムラが視認されるフレーム周波数を検出可能にしたことを特徴とする液晶表示パネルの低温特性評価用装置。
【請求項4】
前記評価用の画像の輝度の階調レベルが、前記液晶表示パネルの画像表示における最も明るい階調レベルと最も暗い階調レベルの中間であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示パネルの低温特性評価用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−78746(P2010−78746A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245186(P2008−245186)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】