説明

液晶表示モジュール

【課題】光線の利用効率を格段に高め、輝度の向上を飛躍的に促進する液晶表示モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、この液晶表示素子の裏面側に重設される光学シートと、この光学シートの裏面側に重設される面光源のバックライトとを備える方形の液晶表示モジュールであって、上記光学シートが光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有し、短辺方向を基準として、上記バックライト表面から出射される光線の偏光方向の角度をγ、裏面側偏光板の透過軸方向の角度をδとすると、上記基材フィルムの結晶軸方向の角度が、下記数式(I)及び数式(II)で計算される数値εを中心とした±50%範囲内(0.5ε以上1.5ε以下)であることを特徴とする。
(I)γ≦δの場合 ε=γ+(δ−γ)/2
(II)γ≧δの場合 ε=δ+(γ−δ)/2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線の利用効率を格段に高め、輝度の向上を促進する液晶表示モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示モジュール(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。近年、液晶表示モジュールに要求される特性は、用途により様々であるが、明るい(高輝度化)、見やすい(広視野角化)、省エネルギー化、薄型軽量化等が挙げられ、特に高輝度化についての要求が高い。
【0003】
従来の一般的な液晶表示モジュールは、図9に示すように、液晶表示素子51、各種光学シート52及びバックライト53が表面側から裏面側にこの順に重畳された構造を有している。液晶表示素子51は、一対の偏光板54,55間に液晶セル56が挟持された構造を有し、TN、IPS等の様々な表示モードが提案されている。バックライト53は、液晶表示素子51を裏面側から照らして発光させるものであり、エッジライト型、直下型など形態が普及している。各種光学シート52は、液晶表示素子51及びバックライト53間に重畳されており、バックライト53の表面から出射された光線を効率良くかつ均一に液晶表示素子51全面に入射させるべく、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有する光拡散シート、プリズムシート等を備えている。
【0004】
液晶表示素子51に備えられる偏光板54,55は、一般的に光の一方向成分を吸収することで残りの偏光成分を透過するという吸収2色性を示すものが用いられている。このタイプの偏光板54,55は、偏光を得るために原理的に50%の光が吸収されるため、液晶表示モジュールの光の利用効率を低下する大きな理由の一つとなっている。
【0005】
かかる偏光板54,55による光の利用効率を低下を改善すべく、液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板55の裏面側に反射偏光板(偏光分離器)を重畳する技術や、裏面側偏光板55の代わりに反射偏光板を用いる技術が開発されている(例えば、特開2005−106959号公報、特表平9−506985号公報等参照)。この反射偏光板は、裏面側偏光板55の透過軸成分についてはそのまま透過させ、それ以外の偏光成分を下方側へ戻すことで、光線を再利用するものである。
【特許文献1】特開2005−106959号公報
【特許文献2】特表平9−506985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の反射偏光板を用いた液晶表示モジュールでも、実際にはリサイクルされた光の熱吸収、反射などのロスにより光線の利用効率が75%程度しか実現できていない。
【0007】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、光線の利用効率を格段に高め、輝度の向上を飛躍的に促進する液晶表示モジュールの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、液晶表示モジュールの各構成要素の偏光特性を鋭意検討した結果、バックライトから出射する光線の強度に偏光があり、その偏光方向が裏面側偏光板の透過軸と一致していないことによって光線の利用効率の低下を招来していることを見出した。
【0009】
その結果、上記課題を解決するためになされた発明は、
一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、
この液晶表示素子の裏面側に重設される光学シートと、
この光学シートの裏面側に重設される面光源のバックライトと
を備える方形の液晶表示モジュールであって、
上記光学シートが、光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有しており、
短辺方向を基準として、上記バックライト表面から出射される光線の偏光方向の角度をγ、裏面側偏光板の透過軸方向の角度をδとすると、上記基材フィルムの結晶軸方向の角度が、下記数式(I)及び数式(II)で計算される数値εを中心とした±50%範囲内、換言すると0.5ε以上1.5ε以下であることを特徴とする。
(I)γ≦δの場合 ε=γ+(δ−γ)/2
(II)γ≧δの場合 ε=δ+(γ−δ)/2
【0010】
当該液晶表示モジュールは、光学シートが光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有し、この基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度を上記数式(I)及び数式(II)で計算される数値εを中心とした±50%範囲内とすることで、バックライトの表面から出射する光線の偏光成分を偏光板や反射偏光板の透過軸方向へ変換することができ(以下、当該機能を「裏面側偏光板の透過軸方向への偏光機能」と略す)、従来ではリサイクルとして反射されていた光の成分を効率よく透過させて光線の利用効率を向上することができる。そのため、当該液晶表示モジュールは、ランプから発せられる光線の利用効率を格段に高め、今日社会的に要請されている高輝度化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【0011】
上記基材フィルムの結晶軸方向としては進相軸方向が好ましい。このように進相軸方向を基準として上述の短辺方向に対する角度を決定した方が、遅相軸方向を基準とするよりも若干光線の利用効率を向上させることができる。
【0012】
上記基材フィルムのリタデーション値としては140nm以上390nm以下が好ましい。このように基材フィルムのリタデーション値を140nm以上390nm以下に制御することで、上述の裏面側偏光板の透過軸方向への偏光機能を奏するよう光学シートの位相差が最適化され、光線の利用効率を格段に向上することができる。また、基材フィルムのリタデーション値の上記数値範囲は光学シートの位相差の最適化のためのリタデーション値としては比較的小さい方であることから、基材フィルムの製造容易性も良好である。
【0013】
上記基材フィルムを構成するマトリックス樹脂としてはポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが好ましい。このポリエチレンテレフタレートは、リタデーション値が比較的高い性質を有しており、リタデーション値を上述のように最適化するのが容易かつ確実である。またポリカーボネートは、リタデーション値の制御が容易である。
【0014】
上記光学シートが、基材フィルムの一方の面に積層される光学層を有するとよい。光拡散層、プリズム層等の光学層を有し、何らかの光学的機能を有する光学シートは通常液晶表示素子及びバックライト間に備えられていることから、当該手段のように一般的に備えられる光学シートの基材フィルムに上述の裏面側偏光板の透過軸方向への偏光機能が付与され、新たな光学シートを追加することなく、光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化を促進することができる。
【0015】
上記光学層としては、(a)複数の光拡散剤とそのバインダーとを有するもの(光拡散シートの光拡散層)や、(b)屈折性を有する微小な凹凸形状を有するもの(プリズムシートのプリズム部層等)とすることができる。かかる光拡散シートやプリズムシートなどは通常液晶表示モジュールに使用されているため、光学シートの装備枚数の増大を招来することなく、上述の裏面側偏光板の透過軸方向への偏光機能が付与され、光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化を促進することができる。
【0016】
上記光学シートが、基材フィルムの他方の面に積層され、バインダー中にビーズが分散するスティッキング防止層を有するとよい。このように光学シートにおける光学層と反対側の面にスティッキング防止層を備えることで、当該光学シートと裏面側に配設される導光板、プリズムシート等とのスティッキングが防止される。
【0017】
当該液晶表示モジュールは、エッジライト型バックライトを用いる場合に好適である。かかるエッジライト型バックライトはライトと平行方向と垂直方向とで偏光が比較的大きくなる特性を有しているため、光学シートの基材フィルムに上述の裏面側偏光板の透過軸方向への偏光機能を付与することで、光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化を促進することができる。
【0018】
当該液晶表示モジュールにおいて、上記液晶表示素子とバックライトとの間に他の光学シートを備える場合、この他の光学シートの基材フィルムとしては低リタデーションフィルムを使用するとよい。液晶表示モジュールには一般的に光拡散シート、プリズムシート等の複数枚の光学シートが装備される。このように複数枚の光学シートを備える場合、特定の一の光学シートの基材フィルムのみに上述の裏面側偏光板の透過軸方向への偏光機能を付与し、他の光学シートは透過光線の偏光方向を変換しないようにすることで、裏面側偏光板の透過軸方向への偏光の最適化及び制御性を促進することができる。
【0019】
ここで、「光学シート」とは、上記基材フィルムのみからなる場合も含む概念である。「光線の偏光方向」とは、光線の偏光成分の最大平面方向を意味する。「短辺方向を基準とした各方向の角度」とは、各方向の平面内角度であり、短辺方向を0°として右回りを+、左回りを−とした角度を意味する。「裏面側」とは、当該液晶表示モジュールの表示の観察側と反対側を意味する。「リタデーション値Re」とは、Re=(ny−nx)dで計算される値である。「低リタデーションフィルム」とは、リタデーション値の絶対値が60nm以下のフィルムである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の液晶表示モジュールに備える光学シートは、バックライト表面から出射する光線の偏光成分を偏光板の透過軸方向へ積極的に変換する機能を有している。従って、当該光学シートを備える本発明の液晶表示モジュールは、ランプから発せられる光線の利用効率を格段に高め、今日社会的に要請されている高輝度化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る液晶表示モジュールを示す模式的断面図、図2は図1の液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板の透過軸方向と基材フィルムの結晶軸方向とバックライトの偏光方向との関係を説明する模式的斜視図、図3は導光板等の出射光線の偏光異方性測定方法を説明する模式的斜視図、図4は導光板等の出射光線の偏光異方性測定結果を示すグラフ、図5は導光板等の出射光線の偏光特性測定結果を示すグラフ、図6(a)及び(b)は角度ψと平均透過光強度Iとの関係のシミュレーション結果及び実測値を示すグラフ、図7はリタデーション値と平均透過光強度Iとの関係のシミュレーション結果を示すグラフ、図8(a)及び(b)は図1の液晶表示モジュールに備える光学シートとは異なる形態の光学シート(マイクロレンズシート)を示す模式的平面図及び模式的断面図である。
【0022】
図1の液晶表示モジュールは、液晶表示素子1、光学シート2及びバックライト3を備えている。かかる液晶表示素子1、光学シート2及びバックライト3(出光面)は、略同一かつ方形の平面形状を有し、表面側から裏面側にこの順に重畳されている。
【0023】
液晶表示素子1は、略平行にかつ所定間隔を開けて配設される表面側偏光板4及び裏面側偏光板5と、その間に挟持される液晶セル6とを有している。偏光板4,5は、特に限定されるものではなく、一般的にはヨウ素系偏光子、染料系偏光子、ポリエン系偏光子等の偏光子及びその両側に配置される二枚の透明保護膜から構成される。表面側偏光板4と裏面側偏光板5とは、互いの透過軸方向が直交するよう配設されている。
【0024】
液晶セル6は、透過する光量を制御する機能を有するものであり、公知の種々のものが採用される。液晶セル6は、一般的には基板、カラーフィルタ、対向電極、液晶層、画素電極、基板等からなる積層構造体である。この画素電極には、ITO等の透明導電膜が用いられている。液晶セル6の表示モードとしては、現在提案されている例えばTN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)等を用いることができる。
【0025】
バックライト3は、エッジライト型(サイドライト型ともいう)の面光源装置であり、液晶表示素子1を裏面側から照らして発光させるものである。バックライト3は、具体的には、一端面(光入射面)側が厚くかつその対向端面側が薄い略楔形の断面形状を有する方形板状の導光板7、この導光板7の光入射面に沿って配設される線状のランプ8、導光板7の裏面側に配設される反射シート(図示していない)、ランプ8の側方(導光板7の光入射面側を除く)を囲繞するように配置されるリフレクタ(図示していない)、導光板7の光入射面の対向端面に被着された光反射膜、これらの構成要素を収納する上方開口ケーシング等を備えており、ランプ8から発せられた光線を導光板7表面全面から出光するよう構成されている。また、出光光線を法線方向側へ立ち上げるべく、導光板7として裏面に三角柱状のプリズム部が多条(ストライプ状)かつランプ8と垂直に形成されたプリズム導光板を用い、裏面側に三角柱状のプリズム部が多条かつランプ8と平行に形成された逆プリズムシートを導光板7の表面側に重畳した構成のバックライト3も提案されている。
【0026】
光学シート2は、透過光線を拡散させる光拡散機能(詳細には、拡散させつつ法線方向側へ集光させる方向性拡散機能)を有する光拡散シートである。光学シート2は、具体的には基材フィルム9と、この基材フィルム9の表面に積層される光学層(光拡散層)10と、基材フィルム9の裏面に積層されるスティッキング防止層11とを備えている。
【0027】
基材フィルム9は、方形に形成された樹脂製のフィルムである。当該基材フィルム9の形成材料としては、透明、特に無色透明の合成樹脂が用いられている。この合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等が挙げられる。中でも、透明性、強度が高く、後述するようにリタデーション値の制御が容易なポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが好ましく、撓み性能が改善されたポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0028】
当該基材フィルム9の厚み(平均厚み)は、特には限定されないが、好ましくは10μm以上250μm以下、特に好ましくは20μm以上188μm以下とされている。当該基材フィルム9の厚みが上記範囲未満であると、光拡散層等を形成するためのポリマー組成物を塗工した際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、当該基材フィルム9の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示モジュールの輝度が低下してしまうことがあり、またバックライト3の厚みが大きくなって液晶表示モジュールの薄型化の要求に反することにもなる。
【0029】
当該基材フィルム9は、光学的異方性を有しており、具体的には平面方向で屈折率が異なる複屈折性を有している。この複屈折性により当該基材フィルム9は、透過光線の偏光成分を意図する方向に変換することができる。
【0030】
当該基材フィルム9は、最適化された結晶軸方向及びリタデーション値を有している。当該基材フィルム9の結晶軸方向の角度α及びリタデーション値に関し、以下に実測及びシミュレーションにより説明する。
【0031】
[導光板等から出射する光線の偏光強度異方性の確認]
図3に示すようにエッジライト型バックライトの構成が、
A:プリズム導光板単体の場合、及び
B:プリズム導光板及び逆プリズムシートが重畳される場合
において、ランプ方向と垂直方向の視野角輝度測定を行った。その際、測定器の偏光フィルターの角度を調節し、
(1)ランプと垂直成分の偏光成分(測定器偏光板フィルター透過軸垂直)
(2)ランプと平行成分の偏光成分(測定器偏光板フィルター透過軸平行)
を測定した。その結果を図4に示す。
【0032】
図4に示すように、Aのプリズム導光板単体の場合、出光量多い60°〜75°付近で偏光異方性が高く、ランプの垂直方向に偏光成分が多いという出光特性を有している。また、Bのプリズム導光板/逆プリズムシートの場合、正面方向0°付近で偏光異方性が高く、ランプの垂直方向に偏光成分が多いという出光特性を有している。
【0033】
[導光板等から出射する光線の偏光特性の確認]
図3に示す導光板/逆プリズムシートの構成のバックライトから出射する光線の偏光特性を確認し、ノーマル導光板のみのバックライトと対比する。ランプの方向と垂直方向を0°とし、これらのバックライト上に偏光板を積層し、この偏光板の透過軸を0°の位置から10°づつ回転させ、正面輝度データを測定した。ノーマル導光板のみのバックライトも同様に測定した。その結果を図5に示す。
【0034】
図5に示すように、ノーマル導光板のみの構成と比較して、プリズム導光板/逆プリズムシートの構成では、ランプに対して垂直成分と平行成分で偏光成分に大きな偏りが確認されている。具体的には、プリズム導光板/逆プリズムシートの構成のバックライトにおいて、偏光成分の偏りはランプに垂直方向成分が平行方向成分と比較して約20%大きくなっている。
【0035】
[結晶軸角度及び位相差の最適化シミュレーション]
上述の測定結果を元に、導光板等から出射した光線の偏光特性を偏光板の透過軸へ効率よく変換させるための当該基材フィルム9の結晶軸角度α及び位相差の最適値を求める計算を行う。
【0036】
図2に示すように当該液晶表示モジュールにおいて、短辺方向を基準として、バックライト3表面から出射される光線の偏光方向mの角度をγ、裏面側偏光板5の透過軸方向nの角度をδとすると、バックライト3の出射光線の偏光方向mを裏面側偏光板5の透過軸方向nへ変換させるのに最適な基材フィルム9の結晶軸方向(x、y)の角度εは、下記数式(I)及び数式(II)で計算される。
(I)γ≦δの場合 ε=γ+(δ−γ)/2
(II)γ≧δの場合 ε=δ+(γ−δ)/2
【0037】
また、当該基材フィルム9の両面側に偏光子P及び検光子Qを配設し、偏光子Pを通過した直線偏光(振幅=1、透過光強度=1)が当該基材フィルム9を透過し、検光子Qを通過する場合、
当該基材フィルム9表面の結晶軸の進相軸方向及び遅相軸方向をx方向及びy方向、基材フィルム9の厚さをd、x方向及びy方向の屈折率をnx及びny(nx≠ny)、結晶軸方向と偏光子Pの透過軸方向との角度をψ、偏光子Pの透過軸方向と検光子Qの透過軸方向との角度をβとすると、検光子Qを通過した光の変位は下記数式(1)で表され、透過光強度は下記数式(2)で表され、RGB3波長の平均透過光強度Iが下記数式(3)で表される。
【数1】

【0038】
[最適な結晶軸角度α]
上述の測定結果から、一般的には、エッジライト型バックライト表面から出射される光線の偏光方向mはランプ8方向と垂直方向であり、液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板5の透過軸方向nはランプ8方向と垂直方向に対して±π/4である。そのため、上記数式(1)(2)及び(3)において、β=π/4、Re=λ/2とし、ψと平均透過光強度Iとの関係を計算した。その結果を図6(a)に示す。
【0039】
図6(a)及び後述する「短辺方向に対する結晶軸方向の角度αと正面輝度との関係」の実験結果から判断すると、バックライト3の偏光方向mの角度γが0°、裏面側偏光板5の透過軸方向nの角度δが±π/4の場合、基材フィルム9の結晶軸方向(x、y)の短辺方向に対する角度αの絶対値としては、π/16以上3π/16以下が好ましく、3π/32以上5π/32以下が特に好ましく、π/8が最も好ましい。なお、結晶軸方向の角度αの特定を上述のように絶対値としたのは、一般的な偏光板の透過軸方向はランプ方向と垂直方向に対して±π/4の場合があることからである。
【0040】
以上の結果から、液晶表示モジュールにおいて、偏光方向mの角度γ及び透過軸方向nの角度δを限定しない場合、基材フィルム9の結晶軸方向(x、y)の角度αとしては、上記数式(I)及び数式(II)で計算される数値εを中心とした±50%範囲内(0.5ε以上1.5ε以下)が好ましく、±25%範囲内(0.75ε以上1.25ε以下)が特に好ましい。このように基材フィルム9の結晶軸方向(x、y)の角度αを上記範囲とすることで、バックライト3表面から出射する光線の偏光成分を裏面側偏光板5や反射偏光板の透過軸方向へ変換することができる。
【0041】
なお、リタデーション値が320の基材フィルム9を用い、この基材フィルム9を導光板/逆プリズムシートの構成のバックライト上に積層して結晶軸を回転させ、正面輝度を測定した。その結果の結晶軸角度と正面輝度との関係を図6(b)に示す。図6(b)に示す結晶軸角度と正面輝度との関係は図6(a)の角度ψ及び平均透過光強度Iの関係と整合性があり、上記結晶軸角度シミュレーションが適正であることが解る。
【0042】
[最適なリタデーション値]
上述の測定結果及びシミュレーション結果に基づき、最適なβ=π/4、ψ=−(β/2)の角度に配置した場合における平均透過光強度Iとリタデーション値との関係を計算した。その結果を図7に示す。
【0043】
図7から判断すると、当該基材フィルム9において、平均透過光強度Iが0.75以上となるリタデーション値が好ましく、平均透過光強度Iが0.9以上となるリタデーション値がより好ましく、平均透過光強度Iが0.95以上となるリタデーション値が特に好ましい。
【0044】
当該基材フィルム9における具体的なリタデーション値としては、図7及び後述する「リタデーション値と正面輝度との関係」の実験結果から判断すると、平均透過光強度Iが0.75以上となる140nm以上390nm以下が好ましく、平均透過光強度Iが0.9以上となる190nm以上330nm以下が特に好ましく、平均透過光強度Iが0.95以上となる240nm以上280nm以下がさらに特に好ましい。かかる範囲のリタデーション値とすることで、導光板等から出射する光線の偏光成分を偏光板等の透過軸方向へ効果的に変換でき、かつ当該基材フィルム9の製造容易性も良好である。なお、リタデーション値が680nm以上1040nm以下、1350nm以上1610nm以下等の場合でも、平均透過光強度Iが0.75以上となり、裏面側偏光板5の透過軸方向への偏光機能によって光線の利用効率を向上させることができる。
【0045】
上記結晶軸方向としては進相軸方向が好ましい。上述の基材フィルムの結晶軸方向x,yの短辺方向に対する角度αを進相軸方向を基準に決定した方が、遅相軸方向を基準とするよりも若干光線の利用効率を向上し、バックライトの輝度を向上することができる。このことは、後述する「進相軸方向及び遅相軸方向と正面輝度との関係」の実験結果で実証されている。
【0046】
当該基材フィルム9の製造方法としては、結晶軸角度α及びリタデーション値を上記数値範囲に制御できれば特に限定されるものではない。例えば、結晶軸角度αは、ポリエチレンテレフタレート等の一軸延伸加工における延伸力、温度等の調節や、二軸延伸フィルムの打ち抜き加工における抜き位置及び抜き角度の調節により、本発明の範囲に制御可能である。また、リタデーション値は、延伸加工の際の延伸力、温度、フィルム厚さ等で制御可能である。
【0047】
当該基材フィルム9は、導光板(又は導光板表面に積層された逆プリズムシート)から出射する光線の偏光成分を偏光板や反射偏光板の透過軸方向へ変換することができ、従来ではリサイクルとして反射されていた光の成分を効率よく透過させて光線の利用効率を向上することができる。
【0048】
光学層10は、基材フィルム9表面に略均一に配設される複数の光拡散剤12と、その複数の光拡散剤12のバインダー13とを備えている。かかる複数の光拡散剤12は、バインダー13で被覆されている。このように光学層10中に含有する複数の光拡散剤12によって光学層10を裏側から表側に透過する光線を均一に拡散させることができる。また、複数の光拡散剤12によって光学層10の表面に微細な凹凸が略均一に形成されている。このように光学シート2表面に形成される微細な凹凸のレンズ的屈折作用により、光線をより良く拡散させることができる。なお、光学層10の平均厚みは、特には限定されないが、例えば1μm以上30μm以下程度とされている。
【0049】
光拡散剤12は、光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、例えばシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。有機フィラーの材料としては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0050】
光拡散剤12の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、紡錘形状、針状、棒状、立方状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光拡散性に優れる球状のビーズが好ましい。
【0051】
光拡散剤12の平均粒子径の下限としては、1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましい。一方、光拡散剤12の平均粒子径の上限としては、50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。光拡散剤12の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散剤12によって形成される光学層10表面の凹凸が小さくなり、光拡散シートとして必要な光拡散性を満たさないおそれがある。逆に、光拡散剤12の平均粒子径が上記範囲を越えると、光学シート2の厚さが増大し、かつ、均一な拡散が困難になる。
【0052】
光拡散剤12の配合量(バインダー13の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては10部、特に20部、さらに50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、光拡散剤12の配合量が上記範囲未満であると、光拡散性が不十分となってしまい、一方、光拡散剤12の配合量が上記範囲を越えると光拡散剤12を固定する効果が低下することからである。なお、プリズムシートの表面側に配設される所謂上用光拡散シートの場合、高い光拡散性を必要とされないため、光拡散剤12の配合量としては10部以上40部以下、特に10部以上30部以下が好ましい。
【0053】
バインダー13は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。このバインダー13により基材フィルム9表面に光拡散剤12が略等密度に配置固定される。なお、バインダー13を形成するためのポリマー組成物は、基材ポリマーの他に例えば微小無機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0054】
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光学層10を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダー13に用いられる基材ポリマー自体は、光線の透過性を高める観点から透明が好ましく、無色透明が特に好ましい。
【0055】
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0056】
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0057】
また上記ポリオールは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上記(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合することで製造することもできる。
【0058】
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0059】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0060】
かかる水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0061】
当該ポリマー組成物の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、上記ポリエステルポリオール、及び、上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー13は耐候性が高く、光学層10の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0062】
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0063】
バインダー13を形成するポリマー組成物中に微小無機充填剤を含有するとよい。このようにバインダー13中に微小無機充填剤を含有することで、光学層10ひいては光学シート2の耐熱性が向上する。微小無機充填剤を構成する無機物としては、特に限定されるものではなく、無機酸化物が好ましい。無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。無機酸化物を構成する金属元素としては、例えば元素周期律表第2族〜第6族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表第3族〜第5族から選ばれる元素がさらに好ましい。特に、Si、Al、Ti及びZrから選択される元素が好ましく、金属元素がSiであるコロイダルシリカが、耐熱性向上効果及び均一分散性の面で微小無機充填剤として最も好ましい。また微小無機充填剤の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0064】
微小無機充填剤の平均粒子径の下限としては、5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。一方、微小無機充填剤の平均粒子径の上限としては50nmが好ましく、25nmが特に好ましい。これは、微小無機充填剤の平均粒子径が上記範囲未満では、微小無機充填剤の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなるためであり、逆に、平均粒子径が上記範囲を超えると、短波長の影響で白濁し、光学シート2の透明性を完全に維持することができなくなることからである。
【0065】
微小無機充填剤の基材ポリマー100部に対する配合量(無機物成分のみの配合量)の下限としては固形分換算で5部が好ましく、50部が特に好ましい。一方、微小無機充填剤の上記配合量の上限としては500部が好ましく、200部がより好ましく、100部が特に好ましい。これは、微小無機充填剤の配合量が上記範囲未満であると、光学シート2の耐熱性を十分に発現することができなくなってしまうおそれがあり、逆に、配合量が上記範囲を越えると、ポリマー組成物中への配合が困難になり、光学層10の光線透過率が低下するおそれがあることからである。
【0066】
上記微小無機充填剤としては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定微小無機充填剤を用いることで、バインダー13中での分散性やバインダー13との親和性の向上が図られる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
【0067】
上記有機ポリマーを構成する具体的な樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル−ポリエステル系樹脂等の(メタ)アクリル単位を含む有機ポリマーを必須成分とするものが被膜形成能を有し好適である。他方、上記ポリマー組成物の基材ポリマーと相溶性を有する樹脂が好ましく、従ってポリマー組成物に含まれる基材ポリマーと同じ組成であるものが最も好ましい。
【0068】
なお、微小無機充填剤は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、微小無機充填剤のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
【0069】
上記有機ポリマーにはアルコキシ基を含有するものを用いるとよく、その含有量としては有機ポリマーを固定した微小無機充填剤1g当たり0.01mmol以上50mmol以下が好ましい。かかるアルコキシ基により、バインダー13を構成するマトリックス樹脂との親和性や、バインダー13中での分散性を向上させることができる。
【0070】
上記アルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。このRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。微小無機充填剤を構成する金属と同一の金属アルコキシ基を用いるのが好ましく、微小無機充填剤がコロイダルシリカである場合には、シリコンを金属とするアルコキシ基を用いるのが好ましい。
【0071】
有機ポリマーを固定した微小無機充填剤中の有機ポリマーの含有率については、特に制限されるものではないが、微小無機充填剤を基準にして0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0072】
微小無機充填剤に固定する上記有機ポリマーとして水酸基を有するものを用い、バインダー13を構成するポリマー組成物中に水酸基と反応するような官能基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種のものを含有するとよい。これにより、微小無機充填剤とバインダー13のマトリックス樹脂とが架橋構造で結合され、保存安定性、耐汚染性、可撓性、耐候性、保存安定性等が良好になり、さらに得られる被膜が光沢を有するものとなる。
【0073】
上記基材ポリマーとしてはシクロアルキル基を有するポリオールが好ましい。このように、バインダー13を構成する基材ポリマーとしてのポリオール中にシクロアルキル基を導入することで、バインダー13の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での当該光学シート2の耐撓み性、寸法安定性等が改善される。また、光学層10の耐候性、硬度、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、表面に有機ポリマーが固定された微小無機充填剤との親和性及び微小無機充填剤の均一分散性がさらに良好になる。
【0074】
上記シクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
【0075】
上記シクロアルキル基を有するポリオールは、シクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体を共重合することで得られる。このシクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。この重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
また、ポリマー組成物中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにポリマー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、より一層強固な架橋構造となり、光学層10の被膜物性がさらに向上する。このイソシアネートとしては上記多官能イソシアネート化合物と同様の物質が用いられる。中でも、被膜の黄変色を防止する脂肪族系イソシアネートが好ましい。
【0077】
特に、基材ポリマーとしてポリオールを用いる場合、ポリマー組成物中に配合する硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、イソフロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートのいずれか1種もしくは2種以上混合して用いるとよい。これらの硬化剤を用いると、ポリマー組成物の硬化反応速度が大きくなるため、帯電防止剤として微小無機充填剤の分散安定性に寄与するカチオン系のものを使用しても、カチオン系帯電防止剤による硬化反応速度の低下を十分補うことができる。また、かかるポリマー組成物の硬化反応速度の向上はバインダー中への微小無機充填剤の均一分散性に寄与する。その結果、当該光学シート2は熱、紫外線等による撓みや黄変を格段に抑制することができる。
【0078】
さらに、ポリマー組成物中に帯電防止剤を混練するとよい。このように帯電防止剤が混練されたポリマー組成物からバインダー13を形成することで、当該光学シート2に帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、プリズムシート等との重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。また帯電防止剤を表面にコーティングすると表面のベタツキや汚濁が生じてしまうが、このようにポリマー組成物中に混練することでかかる弊害は低減される。かかる帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、帯電防止効果が比較的大きいカチオン系帯電防止剤が好ましく、少量の添加で帯電防止効果が奏される。
【0079】
スティッキング防止層11は、基材フィルム9の裏面に散点的に配設される複数のビーズ14と、この複数のビーズ14のバインダー15とを備えている。このバインダー15も、上記光学層10のバインダー13と同様のポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。また、ビーズ14の材料としては光学層10の光拡散剤12と同様のものが用いられる。なお、このスティッキング防止層11の厚み(ビーズ14が存在しない部分でのバインダー15部分の厚み)は特には限定されないが、例えば1μm以上10μm以下程度とされている。
【0080】
このビーズ14の配合量は比較的少量とされ、ビーズ14は互いに離間してバインダー15中に分散している。また、ビーズ14部分で当該光学シート2の下面に凸部が形成されている。そのため、光学シート2を導光板等に積層すると、突出したビーズ14部分が導光板等の表面に当接し、光学シート2の裏面全面が導光板等と当接することがない。これにより、光学シート2と導光板等とのスティッキングが防止され、液晶表示モジュールの画面の輝度ムラが抑えられる。
【0081】
次に、当該光学シート2の製造方法を説明する。当該光学シート2の製造方法は、(a)バインダー13を構成するポリマー組成物に光拡散剤12を混合することで光学層用組成物を製造する工程と、(b)光学層用組成物を基材フィルム9の表面に積層し、硬化させることで光学層10を形成する工程と、(c)バインダー15を構成するポリマー組成物にビーズ14を混合することでスティッキング防止層用組成物を製造する工程と、(d)スティッキング防止層用組成物を基材フィルム9の裏面に積層し、硬化させることでスティッキング防止層11を積層する工程とを有する。上記光学層用組成物及びスティッキング防止層用組成物を基材フィルム9に積層する手段としては、特に限定されるものではなく、例えばバーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷等を用いたコーティング等が採用される。
【0082】
当該光学シート2は、光学層10中に含有する光拡散剤12の界面での反射や屈折及び光学層10表面に形成される微細凹凸での屈折により、高い光拡散機能(方向性拡散機能)を有している。また、当該光学シート2は、基材フィルム9によってバックライト3から出射する光線の偏光成分を裏面側偏光板5の透過軸方向へ積極的に変換することができる。そのため、当該液晶表示モジュールは、ランプ8から発せられる光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化ひいては省スペース化を促進することができる。
【0083】
当該液晶表示モジュールにおいて、液晶表示素子1とバックライト3との間に光学シート2に加えて光拡散シート、プリズムシート等の他の光学シートを備えることができる。この他の光学シートの基材フィルムとしては、低リタデーションフィルムを使用するとよい。このように他の光学シートの基材フィルムとして低リタデーションフィルムを用い、他の光学シートが透過光線の偏光方向を変換しないようにすることで、上述のような光学シート2による裏面側偏光板5の透過軸方向への偏光機能を阻害してしまうことを防止することができる。
【0084】
当該液晶表示モジュールは、光学シート2に変えて図8の光学シート20を備えることができる。この光学シート20は、高い集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有する所謂マイクロレンズシートである。光学シート20は、基材フィルム9と、この基材フィルム9の表面に積層される光学層21とを備えている。この光学シート20の基材フィルム9は、上記光学シート2の基材フィルム9と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0085】
光学層21は、基材フィルム9表面に積層されるシート状部22と、このシート状部22の表面に形成されるマイクロレンズアレイ23とを備えている。なお、光学層21は、シート状部22が存在せず、マイクロレンズアレイ23のみから構成することも可能である。つまり、基材フィルム9の表面に直接マイクロレンズアレイ23を形成することも可能である。
【0086】
光学層21は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。光学層21に用いられる合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル、活性エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。中でも、マイクロレンズアレイ23の成形性に優れる紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂や、透明性及び強度に優れるポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。なお、光学層21には、上記の合成樹脂の他、例えばフィラー、可塑剤、安定化剤、劣化防止剤、分散剤等が配合されてもよい。
【0087】
マイクロレンズアレイ23は、多数のマイクロレンズ24から構成されている。マイクロレンズ24は、半球状(半球に近似した形状を含む)とされ、基材フィルム9の表面側に突設されている。なお、マイクロレンズ24は、上記半球状凸レンズに限定されず、半球状凹レンズのマイクロレンズも可能である。この半球状凹レンズのマイクロレンズも、上記マイクロレンズ24と同様に優れた光学的機能を有する。
【0088】
マイクロレンズ24は、基材フィルム9の表面に比較的密にかつ幾何学的に配設されている。具体的にはマイクロレンズ24は、基材フィルム9の表面において正三角形格子パターンで配設されている。従って、マイクロレンズ24のピッチ(P)及びレンズ間距離(S)は全て一定である。この配設パターンは、マイクロレンズ24を最も密に配設することができる。なお、マイクロレンズ24の配設パターンとしては、稠密充填可能な上記正三角形格子パターンに限定されず、例えば正方形格子パターンやランダムパターンも可能である。このランダムパターンによれば、当該光学シート20を他の光学部材と重ね合わせた際にモアレの発生が低減される。
【0089】
マイクロレンズ24の直径(D)の下限としては、10μm、特に100μm、さらに特に200μmが好ましい。一方、マイクロレンズ24の直径(D)の上限としては、1000μm、特に700μmが好ましい。マイクロレンズ24の直径(D)が10μmより小さいと、回析の影響が大きくなり、光学的性能の低下や色分解が起こり易く、品質の低下を招来する。一方、マイクロレンズ24の直径(D)が1000μmを超えると、厚さの増大や輝度ムラが生じやすく、品質の低下を招来する。また、マイクロレンズ24の直径(D)を100μm以上とすることで、単位面積当たりのマイクロレンズ24が少なくなる結果、マイクロレンズシートである当該光学シート20の大面積化が容易になり、製造時の技術的かつコスト的な負担が軽減される。
【0090】
マイクロレンズ24の表面粗さ(Ra)の下限としては、0.01μmが好ましく、0.03μmが特に好ましい。一方、マイクロレンズ24の表面粗さ(Ra)の上限としては、0.1μmが好ましく、0.07μmが特に好ましい。このようにマイクロレンズ24の表面粗さ(Ra)を上記下限以上とすることで、当該光学シート20のマイクロレンズアレイ23の成形性が比較的容易になり、製造面での技術的及びコスト的負担が軽減される。一方、マイクロレンズ24の表面粗さ(Ra)を上記上限未満とすることで、マイクロレンズ24表面での光の散乱が低減される結果、マイクロレンズ24による集光機能や法線方向側への屈折機能が高められ、かかる良好な光学的機能に起因して正面方向の高輝度化が図られる。
【0091】
マイクロレンズ24の高さ(H)の曲率半径(R)に対する高さ比(H/R)の下限としては、5/8が好ましく、3/4が特に好ましい。一方、この高さ比(H/R)の上限としては1が好ましい。このようにマイクロレンズ24の高さ比(H/R)を上記範囲とすることで、マイクロレンズ24におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該光学シート20の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0092】
マイクロレンズ24のレンズ間距離(S;P−D)の直径(D)に対する間隔比(S/D)の上限としては1/2が好ましく、1/5が特に好ましい。このようにマイクロレンズ24のレンズ間距離(S)を上記上限以下とすることで、光学的機能に寄与しない平坦部が低減され、当該光学シート20の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0093】
マイクロレンズ24の充填率の下限としては、40%が好ましく、60%が特に好ましい。このようにマイクロレンズ24の充填率を上記下限以上とすることで、当該光学シート20表面におけるマイクロレンズ24の占有面積を高め、当該光学シート20の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0094】
なお、上述した高さ比(H/R)、間隔比(S/D)及び充填率の数値範囲は、モンテカルロ法を用いたノンシーケンシャル光線追跡による輝度解析シミュレーションに基づいて導かれたものである。
【0095】
光学層21を構成する素材の屈折率の下限としては1.3が好ましく、1.45が特に好ましい。一方、この素材の屈折率の上限としては1.8が好ましく、1.6が特に好ましい。この範囲の中でも、光学層21を構成する素材の屈折率としては1.5が最も好ましい。このように光学層21を構成する素材の屈折率を上記範囲とすることで、マイクロレンズ24におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該光学シート20の集光等の光学的機能がさらに高められる。
【0096】
当該光学シート20の製造方法としては、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。当該光学シート20の製造方法としては、具体的には、
(a)マイクロレンズアレイ23表面の反転形状を有するシート型に合成樹脂及び基材フィルム9をこの順に積層し、シート型を剥がすこと当該光学シート20を形成する方法、
(b)シート化された樹脂を再加熱して基材フィルム9と共にマイクロレンズアレイ23表面の反転形状を有する金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(c)マイクロレンズアレイ23表面の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂及び基材フィルム9を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法、
(d)基材フィルム9に紫外線硬化型樹脂を塗布し、上記と同様の反転形状を有するシート型、金型又はロール型に押さえ付けて未硬化の紫外線硬化型樹脂に形状を転写し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(e)上記と同様の反転形状を有する金型又はロール型に未硬化の紫外線硬化性樹脂を充填塗布し、基材フィルム9で押さえ付けて均し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(f)未硬化(液状)の紫外線硬化型樹脂等を微細なノズルから基材フィルム9上にマイクロレンズ24を形成するよう射出又は吐出し、硬化させる方法、
(g)紫外線硬化型樹脂の代わりに電子線硬化型樹脂を使用する方法
などがある。
【0097】
なお、上記マイクロレンズアレイ23の反転形状を有する型(モールド)の製造方法としては、例えば基材上にフォトレジスト材料により斑点状の立体パターンを形成し、この立体パターンを加熱流動化により曲面化することでマイクロレンズアレイ模型を作製し、このマイクロレンズアレイ模型の表面に電鋳法により金属層を積層し、この金属層を剥離することで製造することができる。また、上記マイクロレンズアレイ模型の作製方法としては、上記(f)に記載の方法を採用することも可能である。
【0098】
上記製造方法によれば、任意形状のマイクロレンズアレイ23が容易かつ確実に形成される。従って、マイクロレンズアレイ23を構成するマイクロレンズ24の直径(D)、高さ比(H/R)、間隔比(S/D)、充填率等が容易かつ確実に調整され、その結果当該光学シート20の光学的機能が容易かつ確実に制御される。
【0099】
当該光学シート20は、マイクロレンズアレイ23によって高い集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有し、かつ、その光学的機能を容易かつ確実に制御することができる。また当該光学シート20は、当該基材フィルム9によりバックライト3から出射する光線の偏光成分を裏面側偏光板5の透過軸方向へ積極的に変換することができる。そのため、当該光学シート20を備える液晶表示モジュールも、上記光学シート2を備える液晶表示モジュールと同様に、光線の利用効率を格段に高め、今日社会的に要請されている高輝度化及び省エネルギー化ひいては省スペース化を促進することができる。なお、当該光学シート20を備える液晶表示モジュールに、光拡散シート等の他の光学シートを備える場合、かかる他の光学シートの基材フィルムには低リタデーションフィルムを用いるとよい。
【0100】
なお、上記「マイクロレンズ」とは、界面が部分球面状の微小レンズを意味し、例えば半球状凸レンズ、半球状凹レンズ等が該当する。「直径(D)」とは、マイクロレンズの基底又は開口の直径を意味する。「高さ(H)」とは、マイクロレンズが凸レンズの場合にはマイクロレンズの基底面から最頂部までの垂直距離、マイクロレンズが凹レンズの場合にはマイクロレンズの開口面から最底部までの垂直距離を意味する。「レンズ間距離」とは、隣り合う一対のマイクロレンズ間の最短距離を意味する。「充填率」とは、表面投影形状における単位面積当たりのマイクロレンズの面積比を意味する。「正三角形格子パターン」とは、表面を同一形状の正三角形に区分し、その正三角形の各頂点にマイクロレンズを配設するパターンを意味する。
【0101】
なお、本発明の液晶表示モジュールは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、バックライトは上記エッジライト型バックライトに限定されず、その他の直下型バックライト等も採用することができる。
【0102】
上述の裏面側偏光板の透過軸方向への偏光機能を有する光学シートの光学層としては、図1の光拡散層や図8のマイクロレンズアレイに限定されず、例えばストライプ状に配設される複数の三角柱状プリズム部、シリンドリカルレンズ部等の屈折性を有する微小な凹凸形状から構成することができる。つまり、例えばプリズムシート、レンズシート等の基材フィルムとして当該基材フィルム9を使用し、かかるプリズムシート等によって透過光線の偏光機能を奏することも可能である。また、当該液晶表示モジュールに備える光学シートは、紫外線吸収剤層、トップコート層等の他の層が積層されてもよい。
【0103】
上記マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズは、長軸を法線方向に向けた楕円面の部分的形状に形成するとよい。このように長軸を法線方向に向けた楕円面の部分的形状を有するマイクロレンズによれば、球面収差ひいては光線のロスが低減され、透過光線に対する正面側への集光機能、拡散機能、法線方向側への変角機能等の光学的機能が高められる。この楕円面の長軸半径(R)の短軸半径(R)に対する扁平比(R/R)としては、マイクロレンズの球面収差を効果的に低減する趣旨から、1.05以上1.7以下が好ましい。
【0104】
上記マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズは、長軸が所定の平面方向と略平行に位置する楕円面の部分的形状に形成してもよい。このように長軸が所定の平面方向と略平行に位置する楕円面の部分的形状を有するマイクロレンズによれば、光学的機能に異方性を有し、具体的にはマイクロレンズの長軸と平行方向の光学的機能より長軸と垂直方向の光学的機能が大きくなる。
【0105】
上記紫外線吸収剤に関しては、上述の光学層10のバインダー13に含有する手段に替え又は当該手段と共に、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を積層することも可能であり、スティッキング防止層11のバインダー15又は基材フィルム9中に紫外線吸収剤を含有することも可能である。これらの手段によっても、同様にバックライトのランプから発せられる紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止することができる。
【0106】
上記帯電防止剤に関しては、上述の光学層10のバインダー13に含有する手段に替え又は当該手段と共に、帯電防止剤を含有する帯電防止層を積層することも可能であり、スティッキング防止層11のバインダー15又は基材フィルム9中に帯電防止剤を含有する手段も可能である。これらの手段によっても、同様に当該光学シートに帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、プリズムシート等との重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0108】
〈短辺方向に対する結晶軸方向の角度αと正面輝度との関係〉
ポリエチレンテレフタレートを二軸延伸した原反から位置を変えて抜き取り、結晶軸方向が短辺方向に対して種々の角度を有する方形の基材フィルムを作成し、これに同様の光拡散層を積層することで光拡散シートを作成した。
【0109】
液晶セルの裏面側偏光板の透過軸方向がランプ方向に対して45°の液晶モジュールにこれらの光拡散シートを組み込んだ際の正面輝度を測定した。基材フィルムの結晶軸角度αと正面輝度との関係を下記表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
表1に示すように、基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度αがπ/16以上3π/16以下の場合、高い正面輝度が発現され、さらに角度αによる正面輝度のバラツキが低減されている。また、当該結晶軸方向の角度αが3π/32以上5π/32以下の場合、良好な正面輝度に加え、正面輝度のバラツキが約3%以内に抑制されている。特に、結晶軸方向の角度αがπ/8の場合、最も高い正面輝度が発現されている。なお、当該結晶軸方向の角度αが負の値の場合も、液晶セルの裏面側偏光板の透過軸方向がランプ方向に対して−45°の液晶モジュールに対して上記と同様の正面輝度が発現される。従って、上述のように本発明で特定する基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度αの範囲の妥当性が実証されている。
【0112】
〈リタデーション値と正面輝度との関係〉
ポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートを一軸延伸することで種々のリタデーション値を有する基材フィルムを作成し、これらの基材フィルムを液晶モジュールにβ=π/4、ψ=−(β/2)の角度に配置し、正面輝度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
表2に示すように、実測した基材フィルムのリタデーション値と輝度との関係は、図7に示すシミュレーション結果と整合性を有している。輝度の高い部分が裏面側偏光板の透過率が高く、位相差基材フィルムにより裏面側偏光板の透過軸方向成分に偏光変換されている。具体的には、基材フィルムのリタデーション値が140nm以上390nm以下、680nm以上1040nm以下、及び1350nm以上1610nm以下の場合、高い正面輝度が発現され、輝度バラツキが約50%以下に制御されている。特に、基材フィルムのリタデーション値が140nm以上390nm以下の場合、基材フィルムの良好な製造容易性を有し、リタデーション値の面内バラツキが約30%に低減され、ひいては輝度のバラツキを抑制することができる。また、基材フィルムのリタデーション値が190nm以上330nm以下の場合、より高輝度が実現され、輝度バラツキが約10%以下に制御されている。さらに、基材フィルムのリタデーション値が240nm以上280nm以下の場合、ピーク輝度に対して正面輝度の低下率を約3%以内に抑制することができる。従って、上述のように本発明で特定する基材フィルムのリタデーション値の範囲の妥当性が証明されている。
【0115】
〈進相軸方向及び遅相軸方向と正面輝度との関係〉
所定のリタデーション値を有する基材フィルムに光拡散層を積層することで光拡散シートを作成し、この光拡散シートを液晶モジュールにβ=π/4、ψ=−(β/2)の角度に配置し、この角度基準として遅相軸方向及び進相軸方向を採用した場合の正面輝度を測定した。その結果を下記表3に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
表3に示すように、上述の短辺方向に対する基材フィルムの結晶軸方向の角度αを進相軸方向を基準に決定した方が、遅相軸方向を基準とするよりも若干光線の利用効率を向上し、液晶表示モジュールの輝度を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上のように、本発明の液晶表示モジュールは、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして有用であり、特に比較的大きな画面の情報用表示デバイスに用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示モジュールを示す模式的断面図
【図2】図1の液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板の透過軸方向と基材フィルムの結晶軸方向とバックライトの偏光方向との関係を説明する模式的斜視図
【図3】導光板等の出射光線の偏光異方性測定方法を説明する模式的斜視図
【図4】導光板等の出射光線の偏光異方性測定結果を示すグラフ
【図5】導光板等の出射光線の偏光特性測定結果を示すグラフ
【図6】角度ψと平均透過光強度Iとの関係のシミュレーション結果(a)及び実測値(b)を示すグラフ
【図7】リタデーション値と平均透過光強度Iとの関係のシミュレーション結果を示すグラフ
【図8】図1の液晶表示モジュールに備える光学シートとは異なる形態の光学シートを示す模式的平面図(a)及び模式的断面図(b)
【図9】一般的な液晶表示モジュールを示す模式的断面図
【符号の説明】
【0120】
1 液晶表示素子
2 光学シート
3 バックライト
4 表面側偏光板
5 裏面側偏光板
6 液晶セル
7 導光板
8 ランプ
9 基材フィルム
10 光学層
11 スティッキング防止層
12 光拡散剤
13 バインダー
14 ビーズ
15 バインダー
20 光学シート
21 光学層
22 シート状部
23 マイクロレンズアレイ
24 マイクロレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、
この液晶表示素子の裏面側に重設される光学シートと、
この光学シートの裏面側に重設される面光源のバックライトと
を備える方形の液晶表示モジュールであって、
上記光学シートが、光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有しており、
短辺方向を基準として、上記バックライト表面から出射される光線の偏光方向の角度をγ、裏面側偏光板の透過軸方向の角度をδとすると、上記基材フィルムの結晶軸方向の角度が、下記数式(I)及び数式(II)で計算される数値εを中心とした±50%範囲内であることを特徴とする液晶表示モジュール。
(I)γ≦δの場合 ε=γ+(δ−γ)/2
(II)γ≧δの場合 ε=δ+(γ−δ)/2
【請求項2】
上記基材フィルムの結晶軸方向が進相軸方向である請求項1に記載の液晶表示モジュール。
【請求項3】
上記基材フィルムのリタデーション値が140nm以上390nm以下である請求項1又は請求項2に記載の液晶表示モジュール。
【請求項4】
上記基材フィルムを構成するマトリックス樹脂としてポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが用いられている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液晶表示モジュール。
【請求項5】
上記光学シートが、基材フィルムの一方の面に積層される光学層を有している請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。
【請求項6】
上記光学層が、複数の光拡散剤と、そのバインダーとを有する請求項5に記載の液晶表示モジュール。
【請求項7】
上記光学層が、屈折性を有する微小な凹凸形状を有している請求項5に記載の液晶表示モジュール。
【請求項8】
上記光学シートが、基材フィルムの他方の面に積層され、バインダー中にビーズが分散するスティッキング防止層を有している請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。
【請求項9】
上記バックライトとして、エッジライト型バックライトが用いられている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。
【請求項10】
上記液晶表示素子とバックライトとの間に他の光学シートを備えており、
この他の光学シートの基材フィルムとして低リタデーションフィルムが使用されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−286447(P2007−286447A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115057(P2006−115057)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】