説明

液晶表示素子、液晶表示装置

【課題】配線の交差部分における点灯状態を視認しにくくする。
【解決手段】液晶表示素子は、第1基板、第2基板、液晶層、第1配向膜、第2配向膜、吸収軸を略直交配置された第1偏光板及び第2偏光板、第1基板に設けられた第1電極及び第1配線部、第2基板に設けられた第2電極及び第2配線部を備え、第1配線部と第2配線部とが部分的に重なって交差部が画定される。この交差部は、相互に略直交する1組の第1外縁部及び1組の第2外縁部を有する。第1外縁部と第2外縁部の各々は、第1偏光板及び第2偏光板の各吸収軸とのなす角度を略45°に設定され、第1配向膜及び前記第2配向膜の各々の配向処理の方向に対して、第1外縁部が略直交し、第2外縁部が略平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置における表示品質の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭63−92927号公報(特許文献1)には、液晶表示装置の裏面に遮光用の印刷を施し、同時に字形パターンを白ぬけ形成しその部分を平行配向処理により常時表示する部分を有する透過型ネガ液晶表示装置において、セグメント配線の一部を平行配向処理領域中でコモン配線と交差させたことを特徴とする液晶表示装置が開示されている。この従来例の液晶表示装置によれば、液晶表示装置の周波数特性に影響を及ぼすコモン配線を太くできることにより配線抵抗を下げることができ、かつ交差部分での点灯が目に感知されないため、周波数特性が良く高品位な液晶表示装置が実現される。
【0003】
ところで、上述した従来技術は特定の構造の液晶表示装置を前提としたものであり、種々の液晶表示装置への適用という観点からは汎用性に欠けると考えられる。例えば、設計上の制約等により、セグメント配線とコモン配線とが交差する部分を平行配向処理領域ではない領域に配置する必要が生じた場合には、上述した従来技術では配線の交差部分における点灯状態が視認されにくくすることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−92927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、配線の交差部分における点灯状態を視認しにくくすることが可能な液晶表示装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の液晶表示装置は、(a)対向配置された第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板と前記第2基板の各々に設けられそれぞれ一軸配向処理された第1配向膜及び第2配向膜と、(c)前記第1基板と前記第2基板を挟んで対向配置され、互いの吸収軸を略直交配置された第1偏光板及び第2偏光板と、(d)前記第1基板と前記第2基板の相互間に配置された液晶層と、(e)前記第1基板に設けられ、相互に接続された第1電極及び第1配線部と、(f)前記第2基板に設けられ、相互に接続された第2電極及び第2配線部を含み、(g)前記第1配線部と前記第2配線部とが部分的に重なって交差部が画定され、(h)前記交差部は、相互に略直交する第1外縁部及び第2外縁部を有し、(i)前記第1外縁部及び前記第2外縁部の各々は、前記第1偏光板及び前記第2偏光板の各々の吸収軸とのなす角度を略45°に設定され、(j)前記第1配向膜及び前記第2配向膜の各々の配向処理の方向に対して、前記第1外縁部が略直交し、前記第2外縁部が略平行であることを特徴とする液晶表示素子である。
【0007】
上記構成によれば、配線の交差部分における全体的な透過光量(巨視的にみた透過光量)をより低下させることが可能となるので、配線の交差部分における点灯状態を視認しにくくすることができる。従って、配線の交差部分を液晶表示装置の表示部内に配置した場合にも表示品質を低下させずに済むという利点が得られる。
【0008】
上記の液晶表示素子は、液晶層が垂直配向に制御されていることも好ましい。
【0009】
上記の液晶表示素子においては、前記第1外縁部よりも前記第2外縁部が相対的に長く、前記交差部が平面視において長方形状であることも好ましい。例えば、第1外縁部の長さを100μm以下(さらに好ましくは50μm以下)とし、前記第2外縁部の長さを100μm以上とすることは好ましい条件の1つである。
【0010】
これにより、交差部内に発生する暗部の面積が交差部全体の面積に占める割合を高めて交差部全体の透過光量をより低減し、配線の交差部分における点灯状態をさらに視認しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示すII-II線に対応する断面構造を示した部分断面図である。
【図3】表示部に配置される交差部の構造を示す平面図である。
【図4】表示部に配置される交差部の構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。図1に示す本実施形態の液晶表示装置1は、表示部(表示領域)2と、この表示部2の外縁に環状(額縁状)に設けられた非表示部(非表示領域)3と、表示部2へ駆動装置(図2参照)から駆動信号を供給するための複数の接続端子を有する端子部4を備えている。本実施形態においては、表示部2として図示のようにセグメント型の表示部(液晶表示素子)を考える。この液晶表示装置1は、例えば車載用の情報表示部として用いられる。
【0014】
図2は、図1に示すII-II線に対応する断面構造を示した部分断面図である。図2に示すように、本実施形態の液晶表示装置1は、対向配置された第1基板11および第2基板15と、両基板の間に配置された液晶層14と、を基本構成として備える。なお、液晶層14の周囲を封止するシール材等の部材については図示および説明を省略する。
【0015】
第1基板11は、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。第2基板15は、第1基板11と同様に、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。図示のように、第1基板11と第2基板15とは、第1電極12と第2電極16とが対向するようにして、所定の間隙(例えば3μm程度)を設けて貼り合わされている。
【0016】
第1電極12は、第1基板11の一面側に設けられており、駆動装置5と接続されている。第2電極16は、第2基板15の一面側に設けられており、駆動装置5と接続されている。第1電極12および第2電極16は、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明な導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。これらの第1電極12と第2電極16の重なる領域において、上記した図1に示したセグメント表示部(例えば「TEMP」、「AUTO」等)が形成される。なお、図2では図示しないが、第1基板11上には、第1電極12と接続され、第1電極12に電圧を与えるための第1配線部が設けられている。同様に、第2基板15上には、第2電極16と接続され、第2電極16に電圧を与えるための第2配線部が設けられている。これらの第1配線部、第2配線部は、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明な導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。
【0017】
配向膜13は、第1基板11の一面側に、第1電極12を覆うようにして設けられている。同様に、配向膜17は、第2基板15の一面側に、第2電極16を覆うようにして設けられている。これらの配向膜13、17は、液晶層14の配向状態を規制するものである。本実施形態では、配向膜13、17として垂直配向膜を用いる。配向膜13と配向膜17とは、それぞれに対する配向処理の方向がアンチパラレル配向となるように一軸配向処理され配置されている。配向膜13、17は、例えば液晶層14に対して約89.5°のプレチルト角を付与し得るものが用いられる。配向処理としては、例えば公知のラビング処理、光配向処理を用いることができる。
【0018】
液晶層14は、第1基板11の第1電極12と第2基板15の第2電極16との間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負の液晶材料を用いて液晶層14が構成される。液晶材料の屈折率異方性Δnは、例えば0.1054である。液晶層14に図示された太線は、液晶層14に電圧が印加されていない初期状態における液晶分子の配向方位を模式的に示したものである。本実施形態の液晶層14は、電圧無印加時における液晶分子の配向方位が第1基板11および第2基板15の各基板面に対して略垂直となる垂直配向モードに設定されている。
【0019】
第1偏光板21は、第1基板11の外側に配置されている。同様に、第2偏光板22は、第2基板15の外側に配置されている。第1偏光板21、第2偏光板22の各々の吸収軸は、例えば第1偏光板21が45°、第2偏光板22が135°の角度に配置される。なお、各偏光板と各基板との間には適宜、Cプレート等の光学補償板が配置されてもよい。例えば本実施形態では、第2基板15と第2偏光板22の間に光学補償板23が配置されている。
【0020】
次に、第1配線部と第2配線部とが重なって構成される交差部について詳細に説明する。このような交差部は複数存在し、その多くは上記した非表示部3(図1参照)に配置されるが、レイアウトの都合上、表示部2(図1参照)に配置する場合がある。以下では、この表示部2に配置される交差部の構造について詳述する。
【0021】
図3および図4は、表示部2に配置される交差部の構造を示す平面図である。第1配線部33は、上記したように第1基板11上に設けられている。図中では第1配線部33の一部が示されている。第2配線部34は、上記したように第2基板15上に設けられている。図中では第2配線部34の一部が示されている。これらの第1配線部33と第2配線部34とが上下方向に重なって確定される領域が交差部35である。本実施形態では、図示のようにこの交差部35は、図中で上下方向に伸びた長方形状である。この交差部35は、図中で左右方向に伸びる一組の第1外縁部33a、33bと、図中で上下方向に伸びる1組の第2外縁部34a、34bを有する。各第1外縁部33a、33bは第1配線部33の外縁部の一部であり、各第2外縁部34a、34bは第2配線部34の外縁部の一部である。各第1外縁部33a、33bの延在方向と各第2外縁部34a、34bの延在方向とは相互に略直交している。
【0022】
また、図3には各配向膜13、17へ施された配向処理の方向23、24と、第1偏光板21および第2偏光板22の各吸収軸の方向31、32が示されている。配向膜13に施された配向処理の方向23は、図中において上から下へ向かう方向、別言すれば3時方向を基準として270°回転した方向である。配向膜17に施された配向処理の方向24は図中において下から上へ向かう方向、別言すれば3時方向を基準として90°回転した方向である。これらの配向処理の方向23、24は、上記した各第1外縁部33a、33bの延在方向と略直交し、各第2外縁部34a、34の延在方向とは略平行となるように設定されている。また、第1偏光板21の吸収軸の方向31と第2偏光板22の吸収軸の方向32とは相互に略直交しており、かつ各配向処理の方向23、24とは略45°の角度をなすように設定されている。また、各吸収軸の方向31、32は、各第1外縁部33a、33b、各第2外縁部34a、34bとの間でもそれぞれ略45°の角度をなすように設定されている。
【0023】
図3において交差部35に黒または白抜きの太い矢印で示したのは、電圧印加時の液晶層14の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向(ダイレクタ)を模式的に表したものである。交差部35の中央付近のダイレクタは、各配向処理の方向23、24に応じて図中に白抜き矢印で示すように上方向となる。このようなダイレクタ変形が生じることにより、交差部35の中央付近では光透過率が高くなる。また、交差部35の左右の各第2外縁部34a、34b近傍においては、第1配線部33と第2配線部34との間で斜め電界が生じることにより、ダイレクタは、交差部35の中央付近のダイレクタとは略90°異なる方向となる。このようなダイレクタ変形が生じることにより、交差部35の各第2外縁部34a、34b近傍においても光透過率が高くなる。そして、交差部35の各第2外縁部34a、34bと中央付近との中間においては、液晶層14の液晶分子の連続体としての性質から、ダイレクタは、図示のように斜め方向となる(黒の矢印で示す)。これらのダイレクタは、各吸収軸の方向31、32のいずれかと略平行かそれに近い方向となる。それにより、図4に示すように交差部35内には各第2外縁部34a、34bと略平行な方向に延在し、相対的に光透過率が低い領域である暗部36が発生する。
【0024】
また、交差部35の上側の第1外縁部33a近傍においては、第1配線部33と第2配線部34との間で斜め電界が生じるが、ダイレクタは、交差部35の中央付近のダイレクタとほぼ同じ方向となる。これに対して、交差部35の下側の第1外縁部33b近傍においては、第1配線部33と第2配線部34との間で斜め電界が生じることにより、ダイレクタは、交差部35の中央付近のダイレクタとほぼ逆方向となる。このとき、第1外縁部33b近傍では、ダイレクタの反転により、部分的に液晶分子が初期配向から変化せずに略垂直方向となる領域が発生する。それにより、図4に示すように交差部35内に暗部37が発生する。
【0025】
このように、交差部35内に暗部36、37を発生させることにより、交差部35内において光透過率の高い領域(点灯領域)が相対的に少なくなるので、交差部35を表示部2内に配置した場合であっても視認されにくくなる。これらの暗部36、37を発生させるのに、プレチルト角は89.5°以上90°未満、液晶層14の層厚(セル厚)は3μm〜15μm程度が好適な条件である。また、第1外縁部33a、33bの幅Wは100μm以下が好ましく、さらに50μm以下が好ましく、第2外縁部34a、34bの幅Lは100μm以上が好ましい。また、図3、図4に示したように、W<Lの関係を保って交差部35を構成する、すなわち第1外縁部よりも第2外縁部を長くすることが好ましい。これは、Wを小さくしても概ね50μmまでは各暗部36の発生位置が第2外縁部34a、34bから内側へ5μm程度の位置で変わらないため、WをLより小さくするほど、交差部35の全体面積に占める暗部36の面積が相対的に大きくなるからである。なお、Wをさらに小さくすると最終的には、図4に示した2つの暗部36が1つにまとまる。
【0026】
以上のような本実施形態によれば、配線の交差部分における全体的な透過光量(巨視的にみた透過光量)をより低下させることが可能となるので、配線の交差部分における点灯状態を視認しにくくすることができる。従って、配線の交差部分を液晶表示装置の表示部内に配置した場合にも表示品質を低下させずに済むという利点が得られる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば上記した実施形態では垂直配向モードの液晶層を備えた液晶表示装置に本発明を適用した場合について例示していたが、他の配向モードの液晶層を備えた液晶表示装置にも同様にして本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1:液晶表示装置
2:表示部
3:非表示部
4:端子部
11:第1基板
12:第1電極
13、17:配向膜
14:液晶層
15:第2基板
16:第2電極
21:第1偏光板
22:第2偏光板
23、24:配向処理の方向
31、32:吸収軸の方向
33:第1配線部
33a、33b:第1外縁部
34:第2配線部
34a、34b:第2外縁部
35:交差部
36、37:暗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の各々に設けられそれぞれ一軸配向処理された第1配向膜及び第2配向膜と、
前記第1基板と前記第2基板を挟んで対向配置され、互いの吸収軸を略直交配置された第1偏光板及び第2偏光板と、
前記第1基板と前記第2基板の相互間に配置された液晶層と、
前記第1基板に設けられ、相互に接続された第1電極及び第1配線部と、
前記第2基板に設けられ、相互に接続された第2電極及び第2配線部、
を含み、
前記第1配線部と前記第2配線部とが部分的に重なって交差部が画定され、
前記交差部は、相互に略直交する1組の第1外縁部及び1組の第2外縁部を有し、
前記第1外縁部及び前記第2外縁部の各々は、前記第1偏光板及び前記第2偏光板の各々の吸収軸とのなす角度を略45°に設定され、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜の各々の配向処理の方向に対して、前記第1外縁部が略直交し、前記第2外縁部が略平行である、
液晶表示素子。
【請求項2】
前記液晶層が垂直配向に制御された、請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記第1外縁部よりも前記第2外縁部が相対的に長く、前記交差部が平面視において長方形状である、請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記第1外縁部の長さを100μm以下とし、前記第2外縁部の長さを100μm以上とした、請求項1〜3の何れか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に接続され、所定の駆動信号を与える駆動手段と、
を備え、
前記交差部に点灯を生じる信号を入力したときに、前記交差部に前記第2外縁部と略平行に延在する相対的に透過率の低い暗部を発生させることにより当該交差部全体の透過光量を低減させた、
液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−194329(P2012−194329A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57734(P2011−57734)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】