説明

液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法及び駆動方法

【課題】 表示品質の高い液晶表示素子を提供する。
【解決手段】 液晶表示素子は、第1の電極と、40°以上65°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第1の配向膜とを備えた第1の基板と、前記第1の基板と平行に対向配置され、第2の電極と、1°以上15°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第2の配向膜とを備えた第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、カイラル剤を含み、ツイスト配向する液晶層とを有し、前記液晶層が前記カイラル剤を含まなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向を第1旋回方向とするとき、前記カイラル剤は前記液晶層の液晶分子に、前記第1旋回方向とは反対の第2旋回方向への旋回性を与え、前記液晶層には、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することで、前記液晶層の厚さ方向の電界を生じさせることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カイラル剤とネマチック液晶の捩れ方向との関係により、液晶層を挟持する一対の透明電極基板に施された配向処理の方向の組み合わせで規制される液晶分子の旋回方向(第1旋回方向)とは逆方向(第2旋回方向)に液晶分子を捩れ配向させる(スプレイツイスト配向)液晶表示素子の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ネマチック液晶を第2旋回方向へ捩れ配向させる方法として、まず、第1旋回方向と逆の旋回性を有するカイラル剤をネマチック液晶中に少量添加することが提案されている。
【0004】
また、ネマチック液晶を第2旋回方向へ捩れ配向させる他の方法として、通常90°に設定される基板の配向方向の交差角度を調整することが提案されている。この際の調整は、第1旋回方向の旋回角に対応する両基板の交差角度が91°〜100°になるように行われ、これにより各液晶分子を第1旋回方向へ捩れ配向するよりも、第2旋回方向へ捩れ配向する場合のほうがエネルギー的に安定な配向状態となり、所望の捩れ配向を得ることができる。
【0005】
また、ネマチック液晶を第2旋回方向へ捩れ配向させるとともに、液晶分子のプレティルト角度が互いに異なるように両基板の表面処理を施すことが提案されている。一方基板には所定のプレティルト角度を有するように表面処理を施し、他方の基板には、上記所定のプレティルト角度よりも大きいか又は小さいプレティルト角度を有するように表面処理を施すことにより、液晶分子の配向の不備によるディスクリネーションの発生を防ぐことができ、それによって表示品位のより高い液晶表示装置を得ることができる。なお、プレティルト角度とは、両透明基板間に電圧を印加する前の状態において、両透明基板の対向面における各液晶分子のその対向面に対する傾きを示す角度である。
【0006】
特許文献1記載の液晶表示素子においては、液晶分子が第1旋回方向に捩れる配向状態が不安定である。高電圧の印加によって、第1旋回方向に捩れる配向状態を得ることは可能であるが、時間の経過とともに、液晶分子は第2旋回方向に捩れる配向状態に転移する。
【0007】
液晶分子を、第2旋回方向に旋回させるカイラル剤を添加しながらも、第1旋回方向に配向させることで、液晶層内の歪を増大させ、駆動電圧の大幅な低減を可能にした液晶表示素子の発明が公知である(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2に記載の液晶素子においても、第2旋回方向に捩れる液晶分子の配向状態が安定的であり、第2旋回方向に捩れる配向状態から、第1旋回方向に捩れる配向状態に転移させる電圧の印加を停止して数秒後には、もとの配向状態(第2旋回方向に捩れる配向状態)に再転移する。第2旋回方向に捩れる配向状態で液晶素子を駆動する場合には、高い駆動電圧が必要となる。
【0009】
特許文献1及び2に記載されているようなリバースツイステッドネマチック(reverse twisted nematic;RTN)型液晶表示素子においては、一般的に、液晶分子が第1旋回方向に捩れる配向状態(リバースツイスト配向状態)と第2旋回方向に捩れる配向状態(スプレイツイスト配向状態)とで外観上の表示状態(光透過率)に大きな違いがなく、双安定性を与えても高いコントラスト比が得られにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許2510150号公報
【特許文献2】特開2007−293278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、表示品質の高い液晶表示素子を提供することである。
【0012】
また、表示品質の高い液晶表示素子の製造方法を提供することである。
【0013】
更に、消費電力の低減が可能な液晶表示素子の駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点によれば、液晶表示素子は、第1の電極と、40°以上65°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第1の配向膜とを備えた第1の基板と、前記第1の基板と平行に対向配置され、第2の電極と、1°以上15°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第2の配向膜とを備えた第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、カイラル剤を含み、ツイスト配向する液晶層とを有し、前記液晶層が前記カイラル剤を含まなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向を第1旋回方向とするとき、前記カイラル剤は前記液晶層の液晶分子に、前記第1旋回方向とは反対の第2旋回方向への旋回性を与え、前記液晶層には、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することで、前記液晶層の厚さ方向の電界を生じさせることが可能である。
【0015】
また、本発明の他の観点によれば、第1の電極と、40°以上65°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第1の配向膜とを備えた第1の基板と、前記第1の基板と平行に対向配置され、第2の電極と、1°以上15°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第2の配向膜とを備えた第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、カイラル剤を含み、ツイスト配向する液晶層とを有し、前記液晶層が前記カイラル剤を含まなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向を第1旋回方向とするとき、前記カイラル剤は前記液晶層の液晶分子に、前記第1旋回方向とは反対の第2旋回方向への旋回性を与え、前記液晶層には、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することで、前記液晶層の厚さ方向の電界を生じさせることが可能である液晶表示素子の製造方法は、前記第1の配向膜は、180℃で焼成した後に、押し込み量0.4mm〜0.6mmでラビングすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の観点によれば、第1の電極と、40°以上65°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第1の配向膜とを備えた第1の基板と、前記第1の基板と平行に対向配置され、第2の電極と、1°以上15°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第2の配向膜とを備えた第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、カイラル剤を含み、ツイスト配向する液晶層とを有し、前記液晶層が前記カイラル剤を含まなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向を第1旋回方向とするとき、前記カイラル剤は前記液晶層の液晶分子に、前記第1旋回方向とは反対の第2旋回方向への旋回性を与え、前記液晶層には、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することで、前記液晶層の厚さ方向の電界を生じさせることが可能である液晶表示素子の駆動方法は、第1の色表示から第2の色表示への切り替えを、メモリ性を線順次駆動で行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表示品質の高い液晶表示素子を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、表示品質の高い液晶表示素子の製造方法を提供することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、消費電力の低減が可能な液晶表示素子の駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例による液晶表示素子100の一画素内の概略的な断面図である。
【図2】実施例による液晶層3内の液晶分子の配向状態を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図3】実施例による液晶表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】液晶表示素子のセル作製条件の表示状態の目視観察結果を示す表である。
【図5】セル作製条件No.1〜3により作成された実施例による液晶表示素子の電圧−光透過率特性を示すグラフである。
【図6】セル作製条件No.3による液晶表示素子について、カイラル剤の添加量を変化させて、黒い表示状態の保持時間を目視観察した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一組の配向膜の配向処理方向とプレティルト角の組み合わせで定まる液晶分子の捩れ方向(第1旋回方向)と、光学活性物質(カイラル剤)によって誘起される液晶分子の捩れ方向(第2旋回方向)とが逆方向となるように作製された液晶層を有し、たとえば液晶層に物理的作用を与えることにより、液晶分子が各方向へ捩れる状態(第1旋回方向につきリバースツイスト(ユニフォームツイスト)配向状態、第2旋回方向につきスプレイツイスト配向状態)が可換的に実現可能な液晶表示素子を、リバースツイステッドネマチック(RTN)型液晶表示素子と呼ぶ。第1旋回方向は、液晶層に光学活性物質(カイラル剤)を添加しなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向である。
【0022】
図1は、実施例による液晶表示素子100の一画素内の概略的な断面図である。実施例による液晶表示素子100は、相互に平行に対向配置された上側基板1、下側基板2、及び両基板1、2間に挟持されたツイストネマチック液晶層3を含んで構成される。
【0023】
上側基板1は、上側透明基板12、上側透明基板12上に形成された透明電極13、及び透明電極13上に形成された上側配向膜14を含む。下側基板2は、下側透明基板22、下側透明基板22上に形成された透明電極23、透明電極23上に形成された下側配向膜24を含む。
【0024】
上側、下側透明基板12、22は、たとえばガラスで形成される。透明電極13、23は、たとえばITO等の透明導電材料で形成される。
【0025】
液晶層3は、上側基板1の上側配向膜14と、下側基板2の下側配向膜24との間に配置される。
【0026】
上側及び下側配向膜14、24には、ラビングにより配向処理が施されている。上側配向膜14と下側配向膜24の配向処理方向は、上側及び下側基板1、2の視認方向から見たとき、相互に直交している。
【0027】
液晶層15を形成する液晶材料にはカイラル剤が添加されている。カイラル剤の影響力のもとで生じる液晶分子の配向状態は、上側基板1の法線方向から見て、上側基板1から下側基板2に向かう方向に沿って、左捩れ方向に捩れるスプレイツイスト配向となる。
【0028】
図2(A)は、スプレイツイスト配向状態での液晶層3内の液晶分子3aの配向状態を示す概略的な平面図である。上側基板1の視認方向から見た状態を示す。
【0029】
図2(B)は、実施例による液晶層3内の液晶分子3aがスプレイツイスト配向状態である場合に液晶層3を正面(図2(A)のA1方向)から見たときの概略的な断面図である。
【0030】
図2(C)は、実施例による液晶層3内の液晶分子3aがスプレイツイスト配向状態である場合に液晶層3を横(図2(A)のA2方向)から見たときの概略的な断面図である。
【0031】
図2(D)は、ユニフォームツイスト(リバースツイスト)配向状態での液晶層3内の液晶分子3aの配向状態を示す概略的な平面図である。上側基板1の視認方向から見た状態を示す。
【0032】
図2(E)は、実施例による液晶層3内の液晶分子3aがユニフォームツイスト(リバースツイスト)配向状態である場合に液晶層3を正面(図2(D)のA1方向)から見たときの概略的な断面図である。
【0033】
図2(F)は、実施例による液晶層3内の液晶分子3aがユニフォームツイスト(リバースツイスト)配向状態である場合に液晶層3を横(図2(D)のA2方向)から見たときの概略的な断面図である。
【0034】
液晶セル完成状態での液晶分子3aの捩れ方向は、図2(A)〜(C)に示すような、カイラル剤による捩れ方向と同方向の左捩れRD1になるスプレイツイスト配向状態であった。
【0035】
スプレイツイスト配向状態とは、図2(A)〜(C)に示すように、液晶層3を挟む両配向膜14、24との界面におけるプレティルト角の方向が等しく、両界面のプレティルト角が等しい場合、液晶層中間付近の領域では液晶分子3aの極角が0になるように変化し、液晶分子の配向方向が液晶層3を横(図中A2の方向)から見たときに、図2(C)に示すように、扇形に分布するスプレイ配向と、上下基板の間で液晶分子が水平方向に90度捩れるツイスト配向が組み合わさった配向である。
【0036】
リバースツイスト(ユニフォームツイスト)配向状態は、図2(D)〜(F)に示すように、図2(A)〜(C)に示すスプレイツイスト配向状態とは反対方向RD2に捩れている配向状態である。
【0037】
上側配向膜14のラビング方向を第1の方向OD1、下側配向膜24のラビング方向を第2の方向OD2とすると、第2の方向OD2は上側基板1の視認方向から見て、第1の方向OD1を基準に、左回り方向に90°をなす方向である。上側及び下側基板1、2の配向処理方向とプレティルト角の組み合わせで規定される液晶層3の液晶分子の配向状態は、図2(D)に示すように、上側基板1の法線方向から見て、右方向(第2旋回方向)RD2に90度ねじれるユニフォームツイスト(リバースツイスト)配向となる。
【0038】
図1に戻り、駆動電源20が、上下透明電極13、23に電気的に接続されている。駆動電源20によって、電極13及び23に電圧を印加することが可能である。たとえば両電極13、23間に、閾値電圧以上の交流電圧を印加することで、液晶分子の配向状態を、スプレイツイスト配向からユニフォームツイスト(リバースツイスト)配向に転移させることができる。
【0039】
上側基板1、下側基板2それぞれの液晶層3と反対側の面には、上側偏光板11、下側偏光板21が配置される。両偏光板11、21は、クロスニコルに、かつ、光透過軸が、上側及び下側基板1、2のラビング方向と平行になるように配置される。実施例による液晶表示素子100は、ノーマリホワイトタイプの液晶表示素子である。
【0040】
図3は、実施例による液晶表示素子100の製造方法を示すフローチャートである。本願発明者らは、まず本図に示すフローチャートに沿って図1に示す実施例による液晶表示素子100を複数の条件で作製し、良好な表示を実現する配向膜の焼成条件及びラビング処理における押し込み量について考察した。以下、図1及び図3を参照して、実施例による液晶表示素子100の製造方法を説明する。
【0041】
透明電極13、たとえばITO(indium tin oxide)電極13が形成された透明基板12を準備するとともに、透明電極23、たとえばITO(indium tin oxide)電極23が形成された透明基板22を準備する(ステップS101)。ここでは平行平板タイプの電極をもつテストセルを用い、2枚の透明基板12、22を洗浄、乾燥した(ステップS102)。
【0042】
透明基板12、22上に、ITO電極13、23を覆うように配向膜材料を塗布する(ステップS103)。配向膜材料の塗布は、スピンコートを用いて行った。フレキソ印刷やインクジェット印刷を用いて行ってもよい。
【0043】
一対の透明基板12、22の一方の基板12に対しては、通常は垂直配向膜の形成に使用されるポリイミド配向膜材料の側鎖密度を低くし、配向膜(超高プレティルト側の配向膜)14の材料として用いた。他方の基板22に対しては、通常はスーパーツイステッドネマチック(super twisted nematic;STN)用の配向膜として用いられる比較的高いプレティルト角を示すポリイミド膜を配向膜(高プレティルト側の配向膜)24の材料として用いた。配向膜材料は、配向膜14、24の厚さが500〜800Åとなるように塗布した。配向膜材料を塗布した透明基板12、22の仮焼成(ステップS104)、及び本焼成(ステップS105)を実施する。本焼成は180℃と220℃の2条件で行った。こうしてITO電極13、23を覆う配向膜14、24が形成された(ステップS103〜S105)。
【0044】
次に、配向膜14及び24のそれぞれに対してラビング処理(配向処理)を行う(ステップS106)。ラビング処理は、たとえば布を巻いた円筒状のロールを高速に回転させ配向膜上を擦る工程であり、これにより基板に接する液晶分子を一方向に並べる(配向する)ことができる。ラビング処理は、押し込み量を0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mmと条件を変えて行った。またラビング処理は、液晶表示素子100のツイスト角が90°となるように実施した。
【0045】
次に、液晶セルの厚さ(基板間距離)を一定に保つため、一方の透明基板面上にギャップコントロール材をたとえば乾式散布法にて散布する(ステップS107)。ギャップコントロール材には粒径4μmのプラスチックボールを使用した。
【0046】
他方の透明基板面上にはシール材を印刷し、メインシールパターンを形成する(ステップS108)。たとえば粒径4μmのグラスファイバーを含んだ熱硬化性のシール材を、スクリーン印刷法で印刷する。ディスペンサを用いて、シール材を塗布することもできる。また、熱硬化性ではなく、光硬化性のシール材や、光・熱併用硬化型のシール材を使ってもよい。
【0047】
透明基板12、22を重ね合わせる(ステップS109)。2枚の透明基板を所定の位置で重ね合わせてセル化し、プレスした状態で熱処理を施しシール材を硬化させる。たとえばホットプレス法を用い、シール材の熱硬化を行う。こうして空セルが作製される。
【0048】
たとえば真空注入法で空セルにネマチック液晶を注入する(ステップS110)。液晶中にはカイラル剤を添加した。カイラル剤には(株)メルク製のCB15を使用した。カイラル剤の添加量は、カイラルピッチp、液晶層の厚さ(セル厚)dとしたとき、d/pが0.4となるように調整した。また、後述するように目視観察結果の良好であった液晶セル作成条件については、カイラル剤の添加量をd/p=0.04〜1.0まで条件を振って実験を行った。
【0049】
次に、液晶注入口を、たとえば紫外線(UV)硬化タイプのエンドシール材で封止し(ステップS111)、液晶分子の配向を整えるため、液晶の相転移温度以上にセルを加熱する(ステップS112)。その後、スクライバ装置で透明基板につけた傷に沿ってブレイキングし、個別のセルに小割する。小割されたセルに対し、面取り(ステップS113)と洗浄(ステップS114)を実施する。
【0050】
最後に、2枚の透明基板12、22の液晶層3と反対側の面に、偏光板11、21を貼付する(ステップS115)。2枚の偏光板11、21はクロスニコルに、かつ透過軸の方向とラビング方向とが平行となるように配置した。2枚の偏光板11、21は透過軸の方向とラビング方向とが直交するように配置することもできる。両透明基板12、22のITO電極13、23間には駆動電源20を接続した。
【0051】
図4は、図3に示す製造方法で作製した液晶表示素子のセル作製条件(配向膜形成時の焼成温度、及びラビング処理時の押し込み量の組み合わせ)の代表例(No.1〜No.8)及び表示状態の目視観察結果を示す表である。なお、本発明者らは本図に示す以外のセル作製条件においても液晶表示素子を作成したが、いずれも結果として黒表示を得ることはできなかった。
【0052】
液晶表示素子が完成した状態では、第2旋回方向に捩れる配向状態(スプレイツイスト配向状態)であり、この時には、クロスニコル配置のツイストネマチック(TN)−LCDとなるため、No.1〜No.8のいずれのセル作製条件において作製した液晶表示素子も明るい白表示が得られている。この液晶表示素子に飽和電圧以上の電圧を印加する(図1の電極13、23間に、閾値電圧以上の交流電圧を印加する)ことで、液晶分子の配向状態はスプレイツイスト配向からリバースツイスト配向に転移する。
【0053】
表のNo.1の条件(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度180℃、ラビング処理時の押し込み量0.8mm、高プレティルト側の配向膜24の焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.8mm)で作製した液晶表示素子では、リバースツイスト配向に転移した後のOFF状態で、薄い黒表示が5分程度残ったのを観察した。
【0054】
表のNo.2の条件(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度180℃、ラビング処理時の押し込み量0.6mm、高プレティルト側の配向膜24の焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.8mm)で作製した液晶表示素子、No.3の条件(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度180℃、ラビング処理時の押し込み量0.4mm、高プレティルト側はNo.2と同一)で作製した液晶表示素子、No.7の条件(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度180℃、ラビング処理時の押し込み量0.4mm、高プレティルト側の配向膜24の焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.4mm)で作製した液晶表示素子は、リバースツイスト配向に転移した後は、電圧を全く加えていない(OFF状態)にも関わらず、その透過状態が比較的暗い黒表示を示した。すなわち、超高プレティルト側の配向膜14の焼成条件を180度として、ラビング処理における押し込み量を0.4mm又は0.6mmとした場合に、作製された液晶表示素子の透過状態が比較的暗い黒表示を示した。
【0055】
なお、高プレティルト側の配向膜24のラビング処理時の押し込み量を0.8mmとしたNo.3の液晶表示素子と、高プレティルト側の配向膜24のラビング処理時の押し込み量を0.4mmとしたNo.7の液晶表示素子とで、観察結果(目視観察状態及び黒表示が保持される時間(これらの条件では15分))に変化が無いことから、高プレティルト側の配向膜24の作製条件には、それほど依存性が無いものと考えられる。
【0056】
また、超高プレティルト側の配向膜14のラビング処理時の押し込み量を0.6mmとしたNo.2の液晶表示素子では、黒表示が保持される時間は5分であったことから、超高プレティルト側の配向膜14のラビング処理時の押し込み量が増えると、黒表示が保持される時間が減少するものと考えられる。
【0057】
上記比較的暗い黒表示を得られた条件No.2での超高プレティルト側の配向膜14のプレティルト角を分光エリプソ法で測定してみたところ、45度程度のプレティルト角を示していることがわかった。また、No.3及びNo.7での超高プレティルト側の配向膜14のプレティルト角を分光エリプソ法で測定してみたところ、61度程度のプレティルト角を示していることがわかった。
【0058】
表のNo.4〜6の条件(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.2mm、0.0mm、0.2mm、高プレティルト側の配向膜24は、全て焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.4mm)で作製した液晶表示素子及びNo.8の条件(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.4mm、高プレティルト側はNo.4〜6と同一)で作製した液晶表示素子では、リバースツイスト配向に転移した後のOFF状態で、上記条件No.2、No.3及びNo.7のような比較的暗い黒表示には至らず水色の表示を5分保持するにとどまった。
【0059】
上記水色の表示を示す条件No.4〜6及びNo.8での超高プレティルト側の配向膜14のプレティルト角を分光エリプソ法で測定してみたところ、35度程度のプレティルト角を示していることがわかった。
【0060】
以上のことから、リバースツイスト配向に転移した後のOFF状態で、比較的暗い黒表示を示す液晶表示素子を得るためには、超高プレティルト側の配向膜14のプレティルト角が概ね40度以上65度以下の範囲であることが必要であると考えられる。なお、高プレティルト側の配向膜24のプレティルト角を測定したところ、8〜12度程度のプレティルト角を示していることがわかった。したがって、高プレティルト側の配向膜24のプレティルト角は、20度以下であることが必要であり、1〜15度であることが好ましく、10度前後であることがさらに好ましいと考えられる。
【0061】
図5は、図4に示す表の条件No.1〜3(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度180℃、ラビング処理時の押し込み量は、それぞれ0.4mm、0.6mm、0.8mm、高プレティルト側の配向膜24は、全て焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.8mmで共通)により作成された実施例による液晶表示素子の電圧−光透過率特性を示すグラフである。各グラフの横軸は、印加電圧を単位「V」で示し、縦軸は光透過率を単位「%」で示す。実線で示す曲線はリバースツイスト配向状態における電圧−光透過率特性を表し、破線で示す曲線はスプレイツイスト配向状態におけるそれを表す。図示するのは、それぞれの配向状態において、上側、下側電極13、23間に電圧を印加し、縦電界を生じさせた場合の電気光学特性である。なお、測定には(株)大塚電子製の液晶素子電気光学特性測定装置であるLCD5200を使用した。
【0062】
超高プレティルト側の配向膜14のラビング処理時の押し込み量が0.8mmである図4に示す表の条件No.1による液晶表示素子では、スプレイツイスト配向(立ち上がり)時に比較的高い閾値を示し、リバースツイスト配向(立ち下り)時には、閾値が低くなるものの、OFF電圧(0V)では20%程度の透過率を示すことがわかる。この結果は、従来技術によるRTN型液晶表示素子に多く見られる結果と同様である。
【0063】
超高プレティルト側の配向膜14のラビング処理時の押し込み量が0.6mmである図4に示す表の条件No.2、0.4mmである図4に示す表の条件No.3による液晶表示素子では、スプレイツイスト配向(立ち上がり)時には、No.1の条件による液晶表示素子(従来のRTN型液晶表示素子と同様の特性)と同じ特性を示す。しかし、リバースツイスト配向(立ち下り)時には、OFF電圧(0V)で非常に低い透過率を示すことがわかる。具体的には、押し込み量が0.6mmである図4に示す表の条件No.2による液晶表示素子では、OFF電圧(0V)での透過率は、1.2%、ON透過率は20%で、コントラスト比は17であった。押し込み量が0.4mmである図4に示す表の条件No.3による液晶表示素子では、OFF電圧(0V)での透過率は、2.4%、ON透過率は17.8%で、コントラスト比は7.4であった。この結果から、表示性能としては押し込み量が0.6mmである図4に示す表の条件No.2による液晶表示素子がより優れていることがわかる。
【0064】
このように、図4に示す表の条件No.2及びNo.3による液晶表示素子では、電圧無印加時の両配向状態の光透過率が大きく異なっており、高コントラスト比の表示が可能であることがわかる。実施例による液晶表示素子は、コントラスト比が高く、かつ、白表示状態と黒表示状態とがともに安定的である高品質の表示を簡便に実現できる液晶表示素子である。黒表示が暗く、はっきりとした表示を行いやすい。
【0065】
なお、図4に示す表の条件No.7による液晶表示素子については、電圧−光透過率特性の測定を行っていないが、上述したように、高プレティルト側の配向膜24の作製条件には、それほど依存性が無いものと考えられることから、条件No.7による液晶表示素子についても条件No.2及びNo.3による液晶表示素子と同様の電圧−光透過率特性を示すものと推測される。
【0066】
図4に示す表の条件No.2及びNo.3による液晶表示素子が、OFF状態で比較的暗い黒表示を示す(OFF電圧での透過率が非常に低い)特性を有する原因の詳細は不明であるが、RTN型液晶表示素子には、立ち下がり時(リバースツイスト配列状態)の閾値が立ち上がり時(スプレイツイスト配列状態)の閾値より低くなる性質があり、特殊な条件により閾値が0Vより低くなったためにこのような表示が実現されたものと推測される。
【0067】
また、一般にリバースツイスト配列状態においては、基板の配向処理で与えられるプレティルト角と、カイラル剤によって付与される捩れ力とにより、液晶層内部に大きな歪みが生じ、この歪みによって電圧無印加時においても、液晶層の厚さ方向の中央付近の液晶分子は基板平面に対して傾いた状態になると考えられている。20°以上という高いプレティルト角を有するRTN型液晶表示素子においては、液晶層の厚さ方向の中央付近の液晶分子の傾き角が非常に大きく、基板に対してほぼ垂直に立ち上がると推察される。このため、電圧無印加時にも比較的暗い黒表示が得られると考えられる。なお、一般にリバースツイスト配列状態においては、基板との界面におけるプレティルト角よりもバルクでの傾斜角が高くなる。これは連続体理論に基づいた液晶分子配向シミュレーションによって
も確認されている。
【0068】
図5のスプレイツイスト配向(立ち上がり)時の特性に着目すると、超高プレティルト側の配向膜14のラビング処理時の押し込み量が少なくなるにつれ、閾値が低くなっていることが分かる。
【0069】
スプレイツイスト配向では、両界面のプレティルト角が等しい場合、液晶層の中央付近の液晶分子の傾き角は基板平面と平行になる。これに対して本実施例では、配向膜14と液晶層3の界面と配向膜24と液晶層3の界面とで異なるプレティルト角を付与しているので、両界面で与えるプレティルト角の差が大きくなるにつれて液晶層3の中央付近の液晶分子の傾き角が大きくなり、閾値が低くなる傾向を示すと考えられる。
【0070】
図5に示す液晶表示素子の高プレティルト側の配向膜24の配向処理条件はいずれも共通であることから、超高プレティルト側の配向膜14のラビング処理時の押し込み量が少なくなるにつれ超高プレティルト側の配向膜14と液晶層3との界面におけるプレティルト角は高くなり、その結果として閾値が低くなっているものと見積もられる。
【0071】
また、図4に示す表から明らかなように、黒い表示状態の保持時間の面でも、超高プレティルト側の配向膜14のラビング処理時の押し込み量が0.6mmでは5分程度であったものが、押し込み量が0.4mmの場合は、15分程度と長くなっている。このことから、超高プレティルト側の配向膜14と液晶層3との界面におけるプレティルト角が高いほうが保持時間の面で有利であることが分かる。
【0072】
図6は、図4の表に示した目視観察結果が良好であったセル作製条件No.3(超高プレティルト側の配向膜14の焼成温度180℃、ラビング処理時の押し込み量0.4mm、高プレティルト側の配向膜24の焼成温度220℃、ラビング処理時の押し込み量0.8mm)による液晶表示素子について、カイラル剤の添加量を変化させて、黒い表示状態の保持時間を目視観察した結果を示す表である。カイラルピッチp、液晶層の厚さ(セル厚)dとしたときに、d/pが0.040〜1.000となるように、カイラル剤の添加量を変化させた。
【0073】
d/pが0.125〜0.5の範囲では、液晶表示素子が完成した時点では、スプレイツイスト配向状態となり、飽和電圧以上の電圧を印加するとリバースツイスト配向での比較的暗い黒表示が観察された。
【0074】
d/pが0.125未満である場合は、液晶表示素子が完成した時点で既にリバースツイスト配向での比較的暗い黒表示の状態となっており、スプレイツイスト配向状態に遷移することができなかった。
【0075】
また、d/pが0.125以上であっても、0.125〜0.154の範囲では、液晶表示素子が完成した時点で既にリバースツイスト配向での比較的暗い黒表示の状態となっているものも混在していた。したがって、0.125〜0.154の範囲が双安定表示をする上での下限であると考えられる。
【0076】
一方、d/pが0.5より大きい時には、別のツイスト状態(おそらくは、270度ツイスト)になっており、リバースツイスト配向状態に遷移することができなかった。
【0077】
また、リバースツイスト配向状態の保持時間には、ばらつきがあるものの、d/pが小さいほど長い傾向が見られた。したがって、双安定表示をする範囲(図6の表ではd/pが0.154より上で0.5以下)でできるだけ小さなd/pが好ましいと考えられる。よって、図6の表より、d/pが0.167〜0.182程度が最も良好であると考えられ、この場合、約20分間リバースツイスト配向状態を保持する。なお、d/pを0.2から0.5と変えていくにつれ、保持時間は15分から5分へと徐々に短くなっていることから、d/pを変えることにより、ある程度保持時間を制御できることが分かる。
【0078】
本実施例による液晶表示素子をディスプレイに応用する場合、メモリ性を利用した駆動が可能である。例えば、ドットマトリックス表示を想定した場合、ラインごとに表示の書き換えを行っていけばよく、白表示したい画素には電圧を印加せず、黒表示したい画素には飽和電圧以上の電圧を印加すればよい。
【0079】
駆動については種々の方法が考えられるが、一例として、XY電極マトリクス表示の場合、X電極のある1本のライン(例えば、X1ライン)には閾値電圧程度の矩形波(例えば、1.5V程度で150Hz)を印加し、それと直交するY電極(Y1〜Yn)には、X電極に印加する矩形波と同期したもしくは半周期ずれた閾値電圧程度の矩形波(例えば、1.5V程度で150Hz)を印加する。X1ラインに印加した波形と同期した波形をYラインに印加した画素では、実効的には電圧がかかっていない状態になるため表示は変化しない。X1ラインに印加した波形と半周期ずれた波形をYラインに印加した画素では、実効的には3V程度の電圧がかかる状態になるため、飽和電圧以上の電圧によりスプレイツイスト配向状態からリバースツイスト配向状態に遷移し、白表示が黒表示に変化する。選択されていないX1ライン以外のライン状の画素には閾値電圧程度の矩形波(例えば、1.5V程度で150Hz)が印加されるが、配向状態を変化させるほどの電圧ではないため配向状態は変化しない。X1ラインで行った駆動を順次別のラインに行っていくことでマトリクス表示が可能である。
【0080】
上述したような駆動方法により書き換えられた表示は、5〜20分程度電圧を加えることなく保持することが可能である。この表示を書き換える場合には、保持時間分(5〜20分程度)待つか、もしくは液晶の相転移温度以上の熱を液晶表示素子に加えることにより全ての画素をスプレイツイスト配向状態にリセットすることができる。その後、また順次書き換えることが可能となる。
【0081】
さらに、積極的にリバースツイスト配向状態からスプレイツイスト配向状態に戻したい場合は、横電界がかかる電極を形成すると効果的である。例えば、上基板側と下基板側で平面的に位置がずれたライン状の電極を配置した場合、電極間に電圧を印加することにより液晶層に斜め電界を加えることができる。このような簡単な電極配置によっても、傾斜をつけて(もしくは階段状に)電圧をたち下げることによりスプレイツイスト配向からリバースツイスト配向に遷移でき、急峻に(パルス状に)電圧をたち下げることによりリバースツイスト配向からスプレイツイスト配向に積極的に戻せることを、本発明者らは実験により確認した。
【0082】
なお、上述の横電界がかかる電極を有する液晶表示素子の構成及び製造方法の他の例として、本願と同一発明者による特願2010−071497の明細書段落[0055]〜[0088]の記載を参照する。また、その駆動方法については、同出願の明細書段落[0089]〜[0105]の記載を参照する。
【0083】
以上、本発明の実施例によれば、コントラストの高い白表示状態、黒表示状態の双安定表示を簡便に実現できる。同時に、一般的なTN−LCD同様、比較的優れた視覚特性を有する。また、視角補償を行なう場合は、一般的なTN−LCD同様、安価な光学補償フィルムを活用できる。
【0084】
また、本発明の実施例によれば、表示を書き換える時以外は電力を必要としないので、超低消費電力駆動が可能となる。特に、反射型ディスプレイに適用した場合、超低消費電力駆動のメリットが大きいと考えられる。また、保持時間が短い場合は定期的な電圧印加が必要になるが、従来は随時必要だったのに対して、本実施例では数分(5〜20分)に1回の電圧印加ですむため、飛躍的に消費電力を低下させることができる。
【0085】
また、メモリ性を利用した駆動方法(線順次書き換え法等)の適用が可能になるので、高価なTFT等を用いることなく、単純マトリクス表示により大容量のドットマトリクス表示が可能になる。
【0086】
なお、上述の実施例による製造工程は、基本的には一般的なTN−LCDの製造工程と同様である。異なるのは、配向膜材料が上基板と下基板とで異なるものを使用していること、ラビング条件(押し込み量の制御)、配向膜の焼成条件を上基板と下基板とで異ならせる(ただし、設定温度条件は一般的なTN−LCDの製造工程で用いられる範囲内)等である。したがって、製造工程におけるコストアップの要因は少なく、一般的なTN−LCDと同様に、安価に製造することが可能である。
【0087】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
たとえば、実施例においては、偏光板をクロスニコルに配置しノーマリホワイト表示の液晶表示素子としたが、偏光板を平行ニコルに配置しノーマリブラック表示の液晶表示素
子としてもよい。ただノーマリホワイトとした方が高コントラスト比での表示を実現しやすいであろう。ノーマリホワイト表示の場合、良好な黒表示を得るためには、上側及び下側偏光板11、21の透過軸方向のなす角度は、90°付近であることが望ましい。
【0089】
なお、実施例においては上側及び下側偏光板11、21として光透過率が比較的低いタイプを使用したため、たとえば図5に示すように白表示(スプレイツイスト配列状態)の光透過率が20%〜25%程度となっているが、光透過率が比較的高いタイプを使用すると、白表示の光透過率をたとえば30%〜35%程度とすることが可能であろう。
【0090】
また、実施例においてはツイスト角を90°としたが、その他の角度とすることもできる。その場合、白表示での明るさを明るくするために、液晶層内のリターデーション値を調整する必要があろう。
【0091】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0092】
液晶表示素子全般、たとえば単純マトリクス駆動を行う液晶表示素子全般に利用することができる。また、低消費電力、広い視角特性、低価格等が求められる液晶表示素子に利用可能である。
【0093】
メモリ性を有する点からは、たとえば省電力で頻繁な書き換えを必要としない情報機器(パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)の表示面等、反射型、透過型、投射型のディスプレイに好ましく適用可能である。また、磁気記録ないし電気記録されたカードの情報表示面、児童用玩具、電子ペーパー等に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 上側基板
2 下側基板
3 液晶層
11 上側偏光板
12 上側透明基板
13 上側ITO電極
14 上側配向膜
21 下側偏光板
22 下側透明基板
23 下側ITO電極
24 下側配向膜
20 駆動電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、40°以上65°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第1の配向膜とを備えた第1の基板と、
前記第1の基板と平行に対向配置され、第2の電極と、1°以上15°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第2の配向膜とを備えた第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、カイラル剤を含み、ツイスト配向する液晶層と
を有し、
前記液晶層が前記カイラル剤を含まなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向を第1旋回方向とするとき、前記カイラル剤は前記液晶層の液晶分子に、前記第1旋回方向とは反対の第2旋回方向への旋回性を与え、
前記液晶層には、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することで、前記液晶層の厚さ方向の電界を生じさせることが可能である液晶表示素子。
【請求項2】
前記液晶層への前記カイラル剤の添加量は、カイラルピッチをp、前記液晶層の厚さをdとするとき、d/pが0.125以上0.5以下となるように調整されている請求項1記載の液晶表示素子。
【請求項3】
第1の電極と、40°以上65°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第1の配向膜とを備えた第1の基板と、前記第1の基板と平行に対向配置され、第2の電極と、1°以上15°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第2の配向膜とを備えた第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、カイラル剤を含み、ツイスト配向する液晶層とを有し、前記液晶層が前記カイラル剤を含まなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向を第1旋回方向とするとき、前記カイラル剤は前記液晶層の液晶分子に、前記第1旋回方向とは反対の第2旋回方向への旋回性を与え、前記液晶層には、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することで、前記液晶層の厚さ方向の電界を生じさせることが可能である液晶表示素子の製造方法であって、
前記第1の配向膜は、180℃で焼成した後に、押し込み量0.4mm〜0.6mmでラビングすることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記液晶層を、前記カイラル剤のカイラルピッチをp、前記液晶層の厚さをdとするとき、d/pが0.125以上0.5以下となるように前記カイラル剤を添加して形成する請求項3に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
第1の電極と、40°以上65°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第1の配向膜とを備えた第1の基板と、前記第1の基板と平行に対向配置され、第2の電極と、1°以上15°以下のプレティルト角が発現するように配向処理された第2の配向膜とを備えた第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、カイラル剤を含み、ツイスト配向する液晶層とを有し、前記液晶層が前記カイラル剤を含まなかった場合に、液晶分子が捩れる旋回方向を第1旋回方向とするとき、前記カイラル剤は前記液晶層の液晶分子に、前記第1旋回方向とは反対の第2旋回方向への旋回性を与え、前記液晶層には、前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することで、前記液晶層の厚さ方向の電界を生じさせることが可能である液晶表示素子の駆動方法であって、
第1の色表示から第2の色表示への切り替えを、メモリ性を線順次駆動で行う液晶表示素子の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−257664(P2011−257664A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133596(P2010−133596)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】