説明

液晶表示素子

【課題】各画素毎に、液晶分子のチルト方向が異なる2つの領域が定常的に所定の面積比で形成されるようにし、安定した広い視野角を得る。
【解決手段】複数の画素電極3及びTFTを設けた第1基板1に、各画素電極3に夫々対応し、画素電極3の縁部の間に、画素電極3の一方の側と反対側とで逆向きの横電界e1,e2が生じる横電界生成電極12を設け、対向電極16を設けた第2基板2に、各画素30に夫々対応し、画素30を一方の側の第1領域31と反対側の第2領域32に区分するべく画素30の全長に延伸して直線状に形成し、画素電極3と対向電極16間に印加する電界強度を第1領域31と第2領域32の境界部で低下させる電界減衰手段19を設け、各画素30毎に書込み電界E1,E2の向きを、第1領域31で画素電極3から対向電極16に向かって一方の側に傾いた方向に歪ませ、第2領域32で画素電極3から対向電極16に向かって反対側に傾いた方向に歪ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広い視野角をもった液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子として、液晶層を介して対向配置された第1基板と第2基板のうち、前記第1基板に、複数の画素電極及び、前記各画素電極にそれぞれ対応させて配置され、走査線からの所定電位のゲート信号の供給によりオンし、信号線から供給されたデータ信号を対応する前記画素電極に印加する複数の薄膜トランジスタが設けられ、前記第2基板に、前記各画素電極と対向する対向電極が設けられ、前記各画素電極と前記対向電極とが対向する領域からなる複数の画素毎に、前記画素電極と前記対向電極との間への電圧の印加により前記液晶層の液晶分子の配向状態を変化させて表示するアクティブマトリックス液晶表示素子がある。
【0003】
前記アクティブマトリックス液晶表示素子としては、前記液晶層の液晶分子を、前記第1基板と前記第2基板との間において略90°のツイスト角でツイスト配向させたTN型のものが広く利用されている。
【0004】
ところで、液晶表示素子は、表示の視野角を広くすることが望まれており、そのために従来は、前記第1と第2の何れか一方の基板に、前記各画素電極と前記対向電極とが互いに対向する領域からなる複数の画素にそれぞれ対応させて、例えば断面形状が三角形状の凸部を設け、前記凸部を覆って配向膜を形成することにより、各画素毎に、液晶分子が配向膜のラビング方向に向かってプレチルトした第1の領域と、液晶分子が前記配向膜のラビング方向とは逆向きにプレチルトした第2の領域とを形成し、これらの2つの領域それぞれの視野角特性が相乗した広い視野角を得るようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−333612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の液晶表示素子は、画素毎に、液晶分子のチルト方向が異なる2つの領域が定常的に所定の面積比で形成されるとは限らず、そのために、安定した広い視野角を得ることができない。
【0007】
この発明は、各画素毎に、画素電極と対向電極との間への電界の印加による液晶分子のチルト方向が異なる2つの領域が定常的に所定の面積比で形成されるようにし、安定した広い視野角を得ることができる液晶表示素子を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
液晶層を介して対向配置された第1基板と第2基板のうち、前記第1基板に、複数の画素電極及び、前記各画素電極にそれぞれ対応させて配置され、走査線からの所定電位のゲート信号の供給によりオンし、信号線から供給されたデータ信号を対応する前記画素電極に印加する複数の薄膜トランジスタが設けられ、前記第2基板に、前記各画素電極と対向する対向電極が設けられ、前記各画素電極と前記対向電極とが対向する領域からなる複数の画素毎に、前記画素電極と前記対向電極との間への電圧の印加により前記液晶層の液晶分子の配向状態を変化させて表示する液晶表示素子であって、
前記第1基板に、前記各画素電極にそれぞれ対応させて、前記画素電極の少なくとも一方の側とその反対側の2つの縁部の外側に前記画素電極と絶縁して設けられ、前記データ信号を印加された前記画素電極の縁部との間に、前記一方の側と前記反対側とで互いに逆向きの横電界を生じさせる横電界生成電極と、
前記第2基板に、前記各画素にそれぞれ対応させて、前記画素を前記画素電極の前記一方の側の第1領域と前記反対側の第2領域とに区分するように、前記画素の所定方向の全長に延伸させて直線状に形成され、前記画素電極と前記対向電極との間に印加された電界の強度を、前記第1領域と前記第2領域との境界部において低下させる電界減衰手段とを備え、
前記各画素毎に、前記画素電極と前記対向電極との間に印加された電界の向きを、前記横電界と前記電界減衰手段による電界強度の低下とにより、前記直線状の境界部を境にして、前記第1領域において前記画素電極から前記対向電極に向かって前記一方の側に傾いた方向に歪ませ、前記第2領域において前記画素電極から前記対向電極に向かって前記反対側に傾いた方向に歪ませるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の液晶表示素子において、前記横電界生成電極は、前記対向電極への印加信号と同電位の電圧を印加され、前記画素電極の縁部との間に前記横電界を生じさせることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2に記載の液晶表示素子において、前記横電界生成電極は、前記各画素電極との間に絶縁膜を介在させて設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の液晶表示素子において、前記横電界生成電極は、前記第1基板に、前記絶縁膜を介して前記各画素電極の縁部とそれぞれ対向させて設けられ、前記画素電極の縁部との間に補償容量を形成する容量電極と一体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記請求項1から4の何れかに記載の液晶表示素子において、前記画素電極は、略矩形形状に形成されており、前記横電界生成電極は、前記画素電極の少なくとも2つの長辺に沿わせて配置され、前記電界減衰手段は、前記画素電極の前記長辺方向と平行な直線状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の液晶表示素子において、前記横電界生成電極は、前記画素電極の前記薄膜トランジスタの接続部を除く全周縁に沿わせて配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記請求項1から6の何れかに記載の液晶表示素子において、前記電界減衰手段は、前記画素を二等分する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の液晶表示素子。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記請求項1から7の何れかに記載の液晶表示素子において、前記電界減衰手段は、前記対向電極の上に形成された誘電体膜からなっていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、前記請求項1から7の何れかに記載の液晶表示素子において、前記電界減衰手段は、前記対向電極に設けられたスリットからなっていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記請求項2から9の何れかに記載の液晶表示素子において、前記第1基板に前記各画素電極を覆って第1配向膜が設けられ、前記第2基板に前記対向電極及び前記電界減衰手段を覆って第2配向膜が設けられており、前記第1配向膜と前記第2配向膜はそれぞれ、前記電界減衰手段の延伸方向に対して交差する方向にラビングされていることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、前記請求項10に記載の液晶表示素子において、前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して一方の方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記一方の方向とは反対方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされており、前記液晶層は、正の誘電異方性を有する液晶からなり、その液晶分子が、前記第1基板と前記第2基板との間において略90°のツイスト角でツイスト配向していることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、前記請求項11に記載の液晶表示素子において、前記画素電極は、画面の左右方向の電極幅よりも前記画面の上下向の電極幅が大きい縦長の矩形形状に形成され、前記電界減衰手段は、前記画素電極の長辺方向と平行な直線状に形成されており、前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て右回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て左回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされていることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、前記請求項11に記載の液晶表示素子において、前記画素電極は、画面の上下方向の電極幅よりも前記画面の左右方向の電極幅が大きい横長の矩形形状に形成され、前記電界減衰手段は、前記画素電極の長辺方向と平行な直線状に形成されており、前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て右回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て左回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされていることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、前記請求項12または13に記載の液晶表示素子において、前記第1基板の外面に、第1偏光板が、その吸収軸を前記第1配向膜のラビング方向と平行または直交する方向に向けて配置され、前記第2基板の外面に、第2偏光板が、その吸収軸を前記第1配向膜の吸収軸と直交させて配置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項15に記載の発明は、前記請求項10に記載の液晶表示素子において、前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して一方の方向に略90°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記一方の方向とは反対方向に略90°の角度で交差する方向にラビングされており、前記液晶層は、正の誘電異方性を有する液晶からなり、その液晶分子が、分子長軸を前記第1配向膜及び前記第2配向膜のラビング方向に揃えてホモジニアス配向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明の液晶表示素子によれば、各画素毎に、画素電極と対向電極との間への電界の印加による液晶分子のチルト方向が異なる2つの領域が定常的に所定の面積比で形成されるようにし、安定した広い視野角を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1実施例の液晶表示素子の第1基板の一部分のオーバーコート絶縁膜及び配向膜を省略した平面図。
【図2】図1のII−II矢視線に沿う前記液晶表示素子の拡大断面図。
【図3】図1のIII−III矢視線に沿う前記液晶表示素子の拡大断面図。
【図4】第1実施例の液晶表示素子における液晶分子の初期配向及び第1及び第2偏光板の吸収軸の向きを示す平面図。
【図5】第1実施例の液晶表示素子における無電界時の液晶分子の配向状態を模式的に示す断面図。
【図6】第1実施例の液晶表示素子における電界印加時の液晶分子の配向状態を模式的に示す断面図。
【図7】第1実施例の液晶表示素子における1つの画素の液晶分子のノーマルチルト領域とリバースチルト領域を示す平面図。
【図8】第1実施例の液晶表示素子における画面の上下方向及び左右方向の視角−輝度特性図。
【図9】比較例の液晶表示素子の第1基板の一部分のオーバーコート絶縁膜及び配向膜を省略した平面図。
【図10】比較例の液晶表示素子における画面の上下方向及び左右方向の視角−輝度特性図。
【図11】第1実施例の液晶表示素子における電界減衰手段の変形例を示す断面図。
【図12】第1実施例の液晶表示素子における電界減衰手段の他の変形例を示す断面図。
【図13】第1実施例の液晶表示素子における電界減衰手段の他の変形例を示す断面図。
【図14】この発明の第2実施例の液晶表示素子における無電界時の液晶分子の配向状態を模式的に示す断面図。
【図15】第2実施例の液晶表示素子における電界印加時の液晶分子の配向状態を模式的に示す断面図。
【図16】この発明の第3実施例の液晶表示素子の第1基板の一部分の平面図。
【図17】第3実施例の液晶表示素子における1つの画素の液晶分子のノーマルチルト領域とリバースチルト領域を示す平面図。
【図18】この発明の第4実施例の液晶表示素子の第1基板の一部分のオーバーコート絶縁膜及び配向膜を省略した平面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1実施例]
この発明の液晶表示素子は、薄膜トランジスタ(以下、TFTと記す)をアクティブ素子としたアクティブマトリックス液晶表示素子であり、図1〜図3のように、
液晶層23を介して対向配置された透明な第1基板1と第2基板2のうち、前記第1基板1に、行方向(画面の左右方向)及び列方向(画面の上下方向)に配列された透明な複数の画素電極3及び、前記各画素電極3にそれぞれ対応させて配置され、走査線10からの所定電位のゲート信号の供給によりオンし、信号線11から供給されたデータ信号を対応する前記画素電極3に印加する複数のTFT4が設けられ、前記第2基板2に、前記各画素電極3と対向する透明な対向電極16が設けられている。
【0026】
この液晶表示素子は、前記各画素電極3と前記対向電極16とが対向する領域からなる複数の画素30毎に、前記画素電極3と前記対向電極16との間への電圧の印加により前記液晶層23の液晶分子24の配向状態を変化させて画像を表示する。
【0027】
この実施例において、前記第1基板1は、表示の観察方向(図2及び図3において上方向)とは反対側の基板(以下、後基板という)、前記第2基板2は、表示面側の基板(以下、前基板という)であり、前記各画素電極3と各TFT4と走査線10及び信号線11は、前記後基板1の前記前基板2と対向する面(以下、後基板1の内面という)に設けられ、前記対向電極16は、前記前基板2の前記後基板1と対向する面(以下、前基板2の内面という)に設けられている。
【0028】
前記TFT4は、前記後基板1上に形成されたゲート電極5と、前記ゲート電極5を覆って前記画素電極3の配列領域全体にわたって形成された透明なゲート絶縁膜6と、前記ゲート絶縁膜6の上に前記ゲート電極5と対向させて形成されたi型半導体膜7と、前記i型半導体膜7の一側部と他側部の上に図示しないn型半導体膜を介して形成されたドレイン電極8及びソース電極9とからなっている。
【0029】
また、前記後基板1上には、各行の複数のTFT4にそれぞれゲート信号を供給する複数の走査線10が、行方向に配列した複数の画素電極3からなる各画素電極行の一側にそれぞれ沿わせて設けられ、各行の複数のTFT4のゲート電極5に接続されている。
【0030】
さらに、前記ゲート絶縁膜6の上には、各列の複数のTFT4にそれぞれデータ信号を供給する複数の信号線11が、列方向に配列した複数の画素電極3からなる各画素電極列の一側にそれぞれ沿わせて設けられ、各列の複数のTFT4のドレイン電極8に接続されている。
【0031】
なお、前記各走査線10は、前記TFT4のゲート電極5と同じ金属膜により前記ゲート電極5と一体に形成されており、前記各信号線11は、前記TFT4のドレイン電極8及びソース電極9と同じ金属膜により前記ドレイン電極8と一体に形成されている。
【0032】
そして、前記各画素電極3は、前記ゲート絶縁膜6の上に、ITO膜等の透明導電膜により、画面の左右方向の電極幅よりも、前記画面の上下方向の電極幅が大きい縦長の矩形形状に形成されており、これらの画素電極3の長辺方向の一端部にそれぞれ、その画素電極3に対応するTFT4のソース電極9が接続されている。
【0033】
また、前記後基板1の内面には、前記複数のTFT4及び複数の信号線11を覆ってオーバーコート絶縁膜14が設けられ、さらに前記各画素電極3の配列領域の全体に、前記複数の画素電極3を覆って第1配向膜15が設けられている。
【0034】
一方、前記前基板2の内面には、前記各画素電極3と前記対向電極16とが互いに対向する領域からなる複数の画素30にそれぞれ対応させて形成された赤、緑、青の3色のカラーフィルタ17R,17G,17Bと、前記各画素30の間の領域、つまり隣り合うカラーフィルタ17R,17G,17Bの間の領域に、前記カラーフィルタ17R,17G,17Bの厚さと同程度に厚さに形成された黒色の樹脂膜からなる遮光膜(ブラックマスク)18とが設けられており、前記対向電極16は、前記カラーフィルタ17R,17G,17B及び遮光膜18の上に、ITO膜等の透明導電膜により、前記各画素電極3の配列領域全体に対向する一枚膜状に形成され、さらに、前記対向電極16を覆って第2配向膜22が設けられている。
【0035】
そして、前記後基板1と前基板2は、その間に予め定めた間隙を設けて対向配置され、前記各画素電極3の配列領域に対応する画面エリアを囲む枠状のシール材(図示せず)を介して接合されており、この後基板1と前基板2との間の間隙の前記シール材で囲まれた領域に前記液晶層23が設けられている。
【0036】
さらに、前記後基板1の内面には、前記各画素電極3にそれぞれ対応させて、前記画素電極3の少なくとも互いに逆向きの2つの縁部の外側に前記画素電極3と絶縁して配置され、前記TFT4を介して前記データ信号を印加された前記画素電極3の縁部との間に、前記一方の側と前記反対側とで互いに逆向きの横電界e1,e2(図6参照)を生じさせる横電界生成電極12が設けられている。
【0037】
また、前記前基板2の内面には、前記各画素30にそれぞれ対応させて、前記画素30を、前記画素電極3の前記2つの縁部のうちの一方の縁部側の第1領域31と、他方の縁部側の第2領域32とに区分するように、前記画素30の全長に延伸させて直線状に形成され、前記画素電極3と前記対向電極16との間に印加された書込み電界の強度を、前記第1領域31と前記第2領域32との境界部において低下させる電界減衰手段19が設けられている。
【0038】
前記横電界生成電極12は、前記各画素電極3よりも前記後基板1側に、前記各画素電極3との間に前記TFT4のゲート絶縁膜6を介在させて設けられている。この実施例において、前記横電界生成電極12は、前記後基板1上に、前記ゲート絶縁膜を介して前記各画素電極3の縁部とそれぞれ対向させて設けられ、前記画素電極3の縁部との間に、前記画素電極3の電位を保持する補償容量を形成する容量電極13と一体に形成されている。なお、図1では、前記横電界生成電極12及び容量電極13に対応する部分に平行斜線を施している。
【0039】
すなわち、前記横電界生成電極12と前記容量電極13は、前記画素電極3側の縁部が前記ゲート絶縁膜6を介して前記画素電極3の縁部と対向し、前記画素電極3側とは反対側の縁部が前記画素電極3の外方に張り出す形状に形成された金属膜からなっている。
【0040】
なお、前記TFT4のゲート電極5及び前記走査線10と前記横電界生成電極12及び容量電極13は、同じ金属膜(例えば、表面が酸化処理されたアルミニウム系合金膜)により形成されている。
【0041】
また、前記横電界生成電極12及び容量電極13は、縦長矩形形状に形成された前記画素電極3の少なくとも2つの長辺に沿わせて配置されている。この実施例において、前記横電界生成電極12及び容量電極13は、前記画素電極3のTFT4の接続部を除く全周縁に沿わせて配置されており、前記画素電極3の略全周の縁部にわたって前記補償容量を形成している。
【0042】
さらに、前記横電界生成電極12及び容量電極13を形成する前記金属膜の各辺部はそれぞれ4〜6μmの幅に形成されており、これらの辺部の幅方向の中央よりも反対側の2〜3μmの幅の部分が、前記画素電極3の周囲に張り出す横電界生成電極12とされ、前記幅方向の中央よりも前記画素電極3側の2〜3μmの幅の部分が、前記ゲート絶縁膜6を介して前記画素電極3の周縁部に対向する容量電極13とされている。
【0043】
そして、前記各画素電極3にそれぞれ対応する前記各横電界生成電極12及び容量電極13は、各行毎に、互いに連続させて形成されており、さらに、各行の一端または両端において、図示しない共通接続配線に接続されている。
【0044】
なお、前記後基板1には、例えば前記列方向(画面の上下方向)の一端側に、前記前基板2の外方に張出すドライバ搭載部(図示せず)が形成されており、このドライバ搭載部に、LSIからなる図示しないドライバ素子が搭載されている。
【0045】
そして、前記各走査線10は、前記画面エリアの外側を迂回させて前記ドライバ素子の複数のゲート信号出力端子にそれぞれ接続され、前記各信号線11は、前記ドライバ素子の複数のデータ信号出力端子にそれぞれ接続されており、前記対向電極16は、前記枠状のシール材による基板接合部に設けられたクロス接続部を介して前記ドライバ素子のコモン信号出力端子に接続されている。
【0046】
また、前記各行の横電界生成電極12は、前記共通接続配線を介して、前記ドライバ素子のコモン信号出力端子に接続されている。すなわち、前記各行の横電界生成電極12及び容量電極13にはそれぞれ、前記対向電極16に印加されるコモン信号と同電位の電圧が印加される。
【0047】
一方、前記電界減衰手段19は、前記縦長矩形形状の画素電極3の長辺方向と平行な直線状に形成されており、図7のように、前記画素30を左右に二等分する位置、つまり前記画素30を略同じ面積の第1領域31と第2領域32とに区分する位置に、前記各画素30の全長に延伸させて配置されている。
【0048】
この実施例において、前記電界減衰手段19は、前記対向電極16の上に、前記画素電極3の長辺方向と平行な直線状に形成された誘電体膜20からなっている。この誘電体膜20は、1〜2μmの膜厚及び10〜15μmの幅の帯状膜であり、その中央部の膜面が略平坦面に形成され、両側部の膜面がそれぞれ膜上面から両側面にかけて円弧状の曲面に形成された断面形状を有している。
【0049】
この誘電体膜20は、前記対向電極16の上に光硬化性樹脂を膜厚に塗布し、その塗布膜を露光及び現像処理によって帯形状にパターニングした後に、加熱処理により、前記樹脂膜の上面と両側面との間の角部を曲面化する方法で形成することができる。
【0050】
また、前記第1配向膜15と第2配向膜22はそれぞれ、液晶分子24を、前記後基板1及び前基板2の基板面に対して0〜1°程度の極く小さいプレチルト角で配向させる水平配向性をもったポリイミド膜等からなっており、前記前基板2の内面の第2配向膜22は、前記対向電極16及び前記誘電体膜20を覆って設けられている。
【0051】
そして、前記後基板1の内面の前記第1配向膜15と、前記前基板2の内面の前記第2配向膜22はそれぞれ、前記誘電体膜20の延伸方向に対して交差する方向にラビングされている。
【0052】
この実施例の液晶表示素子は、TN(ツィステッドネマティック)型液晶表示素子であり、前記第1配向膜15は、前記電界減衰手段19として設けられた前記誘電体膜20の延伸方向に対して一方の方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜22は、前記誘電体膜20の延伸方向に対して前記一方の方向とは反対方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされている。
【0053】
一方、前記後基板1と前基板2との間の間隙に封入された液晶層23は、正の誘電異方性を有するネマティック液晶からなっており、その液晶分子24は、前記各基板1,2それぞれの近傍において、前記第1配向膜15及び第2配向膜22のラビング方向15r,22rに分子長軸を向け、且つ前記ラビング方向15r,22rの上流側(ラビングの開始端側)から下流側(ラビングの終了端側)に向かって前記配向膜15,22の膜面から離れる方向に0〜1°程度の角度でプレチルトした状態で、前記後基板1と前基板2との間において略90°のツイスト角でツイスト配向している。
【0054】
この実施例では、図1及び図4のように、前記第1配向膜15を、前記誘電体膜20の延伸方向に対して前記前基板2側から見て右回り方向に略45°の角度で交差する方向15rにラビングし、前記第2配向膜22を、前記誘電体膜20の延伸方向に対して前記前基板2側から見て左回り方向に略45°の角度で交差する方向22rにラビングし、前記液晶分子24を、図1及び図4に破線矢印Tで示したツイスト方向、つまり後基板1側から前基板2側に向かって前記前基板2側から見て右回り方向に、略90°のツイスト角でツイスト配向させている。
【0055】
なお、前記誘電体膜20の延伸方向に対する前記第1配向膜15及び第2配向膜22のラビング方向15r,22rの角度はそれぞれ45°±5°の範囲、前記液晶分子24のツイスト角は90°±10°の範囲が好ましい。
【0056】
また、この液晶表示素子は、前記後基板1の外面(前基板2と対向する面とは反対面)と、前記前基板2の外面(後基板1と対向する面とは反対面)とにそれぞれ配置された第1偏光板25と第2偏光板26を備えており、これらの偏光板25,26は、前記各画素電極3と対向電極16との間に電界を印加しない無電界時の表示が最も明るい明表示であるノーマリーホワイトモードの液晶表示素子を構成するように配置されている。
【0057】
すなわち、図4のように、前記後基板1の外面の第1偏光板25は、その吸収軸25aを前記第1配向膜15のラビング方向15rと平行または直交する方向(図4では直交する方向)に向けて配置され、前記前基板2の外面の第2偏光板26は、その吸収軸26aを前記第1偏光板25の吸収軸25aと直交させて配置されている。
【0058】
この液晶表示素子は、前記後基板1に、前記各画素電極3にそれぞれ対応させて、データ信号を印加された画素電極3の縁部との間に、前記画素電極3の一方の側とその反対側とで互いに逆向きの横電界を生じさせる横電界生成電極12を設け、前記前基板2に、前記各画素にそれぞれ対応させて、前記画素30を前記画素電極3の一方の側の第1領域31とその反対側の第2領域32とに区分するように、前記画素の所定方向の全長に延伸させて直線状に形成され、前記画素電極3と前記対向電極16との間に印加された書込み電界の強度を、前記第1領域31と前記第2領域32との境界部において低下させる誘電体膜20を設けているため、各画素30毎に、前記書込み電界の向きが、前記誘電体膜20に対応する直線状の境界を境にして、前記画素30の一方の縁部側の第1領域31において前記画素電極3から対向電極16に向かって前記一方の側に傾いた方向に歪み、前記画素30の他方の縁部側の第2領域32において前記画素電極3から対向電極16に向かって前記反対側に傾いた方向に歪む。
【0059】
そのため、この液晶表示素子によれば、前記各画素30毎に、前記画素電極3と対向電極16との間への書込み電界の印加による液晶分子24のチルト方向が異なる2つの領域31,32が定常的に所定の面積比で形成されるようにし、安定した広い視野角を得ることができる、
すなわち、前記液晶表示素子は、前記各走査線10に順次所定電位のゲート信号を供給して各行毎の複数のTFT4を行毎に順次オンさせ、前記各信号線11から供給されたデータ信号を前記TFT4を介して前記画素電極3に印加することにより駆動される。
【0060】
一方、前記電界歪み形成手段は、前記各画素電極3にそれぞれ対応させて、前記画素電極3の少なくとも一方の側とその反対側の2つの縁部(上記実施例では、TFT4の接続部を除く全周縁)の外側に前記画素電極3と絶縁して配置された横電界生成電極12と、前記対向電極16の上に、前記各画素30にそれぞれ対応させて、前記画素30を前記画素電極3の前記一方の縁部側の領域と前記反対側の縁部側の領域との2つの領域に区分するように前記画素30の全長にわたって直線状に形成された誘電体膜20とからなっている。そして、前記横電界生成電極12には、前記対向電極16に印加されるコモン信号と同電位の電圧が印加される。
【0061】
そのため、前記各画素30の画素電極3と対向電極16との間に電界を印加しない無電界時は、前記横電界生成電極12と前記画素電極3との間に横向きの電界が生じることは無く、従って、前記無電界時は、図5のように、前記各画素30の全域において、液晶分子24が前記後基板1及び前基板2に対して0〜1°の角度でプレチルトした初期のツイスト配向状態に配向する。
【0062】
なお、この実施例の液晶表示素子は、前記第1偏光板25と第2偏光板26を、それぞれの吸収軸25a,26aを直交させて配置したノーマリーホワイトモードのものであるため、前記各画素30の無電界時の表示は、最も明るい明表示である。
【0063】
一方、前記画素電極3に前記TFT4を介して前記データ信号が印加され、前記画素電極3と対向電極16との間に前記データ信号の階調値に対応した強さの書込み電界が印加されると、図6のように、前記対向電極16に印加されるコモン信号と同電位の電圧を印加された前記横電界生成電極12と前記画素電極3の縁部との間に、前記画素電極3の縁部からその外側に向かう横向きの電界、つまり前記画素電極3の一方の側とその反対側とで互いに逆向きの横電界e1,e2が生じ、前記書込み電界の向きが、前記横電界e1,e2に誘引されて、前記画素電極3の一方の縁部側とその反対の縁部側とで互いに逆方向に傾くように歪む。
【0064】
なお、この実施例では、前記横電界生成電極12が前記画素電極3のTFT接続部を除く全周縁に沿わせて配置されているため、前記画素電極3の略全周に横電界が生じるが、前記画素電極3は縦長矩形状に形成されており、前記書込み電界は、前記画素電極3の2つの短辺の縁部に生じる横電界(図示せず)よりも、前記画素電極3の2つの長辺の縁部に生じる横電界e1,e2の影響を強く受け、前記画素電極3の2つの長辺の一方の縁部側とその反対の縁部側とで互いに逆方向に傾くように歪む。
【0065】
また、前記画素電極3と対向電極16との間に印加される書込み電界は、前記データ信号の階調値に対応した強さの電界であるが、前記対向電極16の上に、前記画素30を前記画素電極3の一方の縁部側の第1領域31と、他方の縁部側の第2領域32とに区分するように前記画素30の全長にわたって直線状に形成された誘電体膜20が設けられているため、前記書込み電界のうち、前記誘電体膜20に対応する部分の電界の強さが、前記誘電体膜20での電圧降下により他の部分の電界の強さよりも低下する。
【0066】
従って、前記画素電極3と対向電極16との間に印加された書込み電界の向きが、前記誘電体膜20に対応する部分において、前記画素電極3の前記誘電体膜20の幅方向の中央部に対応する部分から前記誘電体膜20の両側に向かって斜め方向に歪む。
【0067】
そのため、前記画素電極3と対向電極16との間に印加された書込み電界は、前記横電界e1,e2による歪みと、前記誘電体膜20に対応する部分の歪みとにより、前記誘電体膜20に対応する部分を境にして、前記第1領域31と第2領域32とで互いに逆方向に歪む。
【0068】
すなわち、前記画素30の一方の側(図6において左側)の第1領域31では、前記画素電極3と対向電極16との間に印加された書込み電界E1が、前記画素電極3から対向電極16に向かって前記一方の側(左側)に傾いた方向に歪み、前記画素30の前記一方の側とは反対側(図6において右側)の第2領域32では、前記画素電極3と対向電極16との間に印加された書込み電界E2が、前記画素電極3から対向電極16に向かって前記反対側(右側)に傾いた方向に歪む。図6において、破線E1aは、前記第1領域31に上記のような歪みを生じて印加された書込み電界E1の等電位線、破線E2aは、前記第2領域32に上記のような歪みを生じて印加された書込み電界E2の等電位線である。
【0069】
そのため、前記液晶分子24は、図6のように、前記第1領域31において、後基板1及び前基板2に対するチルト角が、前記第1領域31に印加された書込み電界E1の歪み方向(図6において右方向)の分子端側に向かって大きくなる方向、つまり、図6において、後基板1に対して右上がり方向、前基板2に対して左下がり方向にチルトし、前記第2領域32において、後基板1及び前基板2に対するチルト角が、前記第2領域32に印加された書込み電界E2の歪み方向(図6において左方向)の分子端側に向かって大きくなる方向、つまり、図6において、後基板1に対して左上がり方向、前基板2に対して右下がり方向にチルトする。
【0070】
前記第1領域31における液晶分子24のチルト方向は、図5の初期配向状態におけるプレチルトの傾きと同じ向きで基板1,2面に対するチルト角が大きくなった方向であり、前記第2領域32における液晶分子24のチルト方向は、図5の初期配向状態におけるプレチルトの傾きと逆向きで基板1,2面に対するチルト角が大きくなった方向である。以下、前記第1領域31における書込み電界印加時の液晶分子24のチルトをノーマルチルト、前記第2領域32における書込み電界印加時の液晶分子24のチルトをリバースチルトという。
【0071】
このように、前記液晶表示素子は、各画素30毎に、液晶分子24が、書込み電界の印加により、前記画素30の所定の方向の全長にわたる直線状の境界部を境にして、前記画素30の一方の側の第1領域31においてノーマルチルトし、前記画素30の前記一方の側とは反対側の第2領域32においてリバースチルトする。
【0072】
そのため、前記液晶表示素子によれば、図7のように、各画素30毎に、書込み電界の印加により液晶分子24がノーマルチルトする第1領域(以下,ノーマルチルト領域という)31と、液晶分子24がリバースチルトする第2領域(以下、リバースチルト領域という)32とを定常的に所定の面積比で形成されるようにし、前記ノーマルチルト領域31の視野角特性と前記リバースチルト領域32の視野角特性とが相乗した、安定した広い視野角を得ることができる。
【0073】
また、前記液晶表示素子は、前記書込み電界の強度を、前記第1領域31と第2領域32との境界部において低下させる電界減衰手段19として設けられた前記誘電体膜20を、前記画素30を二等分する位置に配置しているため、前記ノーマルチルト領域31と、液晶分子24がリバースチルトする第2領域(以下、バースチルト領域という)の面積比は略1:1であり、従って、前記ノーマルチルト領域31の視野角特性と前記リバースチルト領域32の視野角特性とが略均等なバランスで相乗した視野角特性を得ることができる。
【0074】
図8(a)は、前記液晶表示素子の画面の上下方向の視角−輝度特性図、図8(a)は、前記液晶表示素子の画面の左右方向の視角−輝度特性図であり、L,L,L16,L24,L32,L40,L48,L56,L,L63は、0(最も暗い階調値)〜63(最も明るい階調値)の64階調のうちの0,8,16,24,32,40,48,56,63の各階調値の書込み電界を印加したときの視角−輝度特性である。
【0075】
一方、図9に示した比較例の液晶表示素子は、前記電界減衰手段19(上記実施例では誘電体膜20)を備えず、また、前記第1配向膜15と第2配向膜22のラビング方向15r,22rをそれぞれ、上記実施例のラビング方向に対して前基板2側から見て右回り方向に90°ずらしたものであり、他の構成は上記実施例の液晶表示素子と同じである。
【0076】
図10(a)は、前記比較例の液晶表示素子の画面の上下方向の視角−輝度特性図、図10(a)は、前記比較例の液晶表示素子の画面の左右方向の視角−輝度特性図であり、L,L,L16,L24,L32,L40,L48,L56,L,L63は、0〜63の64階調のうちの0,8,16,24,32,40,48,56,63の各階調値の書込み電界を印加したときの視角−輝度特性である。
【0077】
前記比較例の液晶表示素子は、画面の上下方向の視角−輝度特性が、図10(a)のような、階調値が低くなるのに伴って輝度のピークが画面の上方向にシフトした上下非対称な特性であり、また、上下方向の視角が約−20°〜約30°の範囲を越えると階調潰れや階調反転を生じるため、画面の上下方向の視野角が狭い。
【0078】
上記実施例の液晶表示素子は、画面の上下方向の視角−輝度特性が、図8(a)のような、0°(画面の法線方向)の視角付近を中心として略上下対称な特性であり、また、上下方向の視角が約−40°〜約40°の範囲において、階調潰れや階調反転の無い良好な表示が得られるため、前記比較例の液晶表示素子に比べて、画面の上下方向の視野角が広い。
【0079】
さらに、前記比較例の液晶表示素子は、画面の左右方向の視角−輝度特性が、図10(b)のような左右非対称な特性であるが、上記実施例の液晶表示素子は、画面の左右方向の視角−輝度特性が図8(b)のような略左右対称な特性であり、前記比較例の液晶表示素子に比べて、画面の左右方向の視野角特性も良好である。
【0080】
なお、上記実施例では、前記誘電体膜20を、上面と両側面との間の角部を曲面にした断面形状に形成しているが、この誘電体膜20は、図11に示した変形例のように、上面と両側面との間の角部をそのまま残した断面形状に形成してもよい。
【0081】
さらに、前記誘電体膜20は、図12に示した他の変形例のように、半楕円状または半円状の断面形状に形成しても、図13に示した他の変形例のように、幅方向の中心部に頂部をもった二等辺三角形状の断面形状に形成してもよい。
【0082】
[第2実施例]
図14及び図15に示した第2実施例の液晶表示素子は、前記書込み電界の強度を、前記第1領域31と前記第2領域32との境界部において低下させる電界減衰手段19を、前記対向電極16にスリット21を設けることにより形成したものであり、前記スリット21は、各画素30を前記第1領域31と第2領域32とに二等分するように前記画素30の全長にわたって直線状に形成されている。なお、この第2実施例の液晶表示素子の他の構成は、上記第1実施例と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0083】
この第2実施例の液晶表示素子においても、図15のように、画素電極3と対向電極16との間に印加された書込み電界E1,E2の向きが、前記対向電極16に設けられたスリット21に対応する直線状の境界部を境にして、前記画素30の第1領域31において前記画素電極3から前記対向電極16に向かって前記一方の側に傾いた方向に歪み、第2領域32において前記画素電極3から前記対向電極16に向かって前記反対側に傾いた方向に歪む。
【0084】
そのため、前記第1領域31の液晶分子24を、図14の初期配向状態におけるプレチルトの傾きと逆向きで基板1,2面に対するチルト角が大きくなった方向にチルト(ノーマルチルト)させ、前記第2領域32の液晶分子24を、図14の初期配向状態におけるプレチルトの傾きと逆向きで基板1,2面に対するチルト角が大きくなった方向にチルト(リバースチルト)させることができ、従って、上記第1の実施例と同様に、液晶分子24のチルト方向が異なる2つの領域31,32が定常的に所定の面積比で形成されるようにし、安定した広い視野角を得ることができる。
【0085】
[第3実施例]
図16及び図17に示した第3実施例の液晶表示素子は、各画素電極3を、画面の上下方向の電極幅よりも前記画面の左右方向の電極幅が大きい横長の矩形形状に形成したものであり、前記横電界生成電極12は、容量電極13と一体に形成され、前記画素電極3の少なくとも2つの長辺に沿わせて配置されている。なお、この実施例では、前記横電界生成電極12及び容量電極13を、前記画素電極3のTFT4の接続部を除く全周縁に沿わせて配置している。
【0086】
そして、前記前基板2の内面の電界減衰手段19(第1実施例における誘電体膜20でも、第2実施例における対向電極16に設けられたスリット21でもよい)は、前記画素電極3の長辺方向と平行な直線状に形成されており、前記各画素30の全長にわたって、前記画素30を上下に二等分する位置、つまり前記画素30を、図17のように略同じ面積の第1領域31と第2領域32とに区分する位置に、前記各画素30の全長に延伸させて配置されている。
【0087】
また、前記後基板1の内面の第1配向膜15は、前記電界減衰手段19の延伸方向に対して前記前基板2側から見て右回り方向に略45°(好ましくは45°±5°)の角度で交差する方向15rにラビングされ、前記前基板2の内面の第2配向膜22(図2及び図3参照)は、前記電界減衰手段19の延伸方向に対して前記前基板2側から見て左回り方向に略45°(好ましくは45°±5°)の角度で交差する方向22rにラビングされており、前記液晶層23の液晶分子24は、図16に破線矢印Tで示したツイスト方向、つまり後基板1側から前基板2側に向かって前記前基板2側から見て右回り方向に、略90°(好ましくは90°±10°)のツイスト角でツイスト配向している。なお、この第3実施例の液晶表示素子の他の構成は、上記第1実施例と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0088】
この第3実施例の液晶表示素子においても、各画素30毎に、前記画素電極3と前記対向電極16との間に印加された書込み電界の向きを、前記横電界生成電極12と前記電界減衰手段19とからなる電界歪み形成手段により、前記画素30の前記電界減衰手段19に対応する直線状の境界部を境にして、前記画素の一方の側(図17において上側)の第1領域31において前記画素電極3から前記対向電極16に向かって前記一方の側に傾いた方向に歪ませ、前記画素30の前記一方の側とは反対側(図17において下側)の第2領域32において前記画素電極3から前記対向電極16に向かって前記反対側に傾いた方向に歪ませることができる。
【0089】
そのため、前記各画素30毎に、前記画素電極3と対向電極16との間への書込み電界の印加による液晶分子24のチルト方向が異なる2つの領域31,32が定常的に所定の面積比で形成されるようにし、安定した広い視野角を得ることができる。
【0090】
なお、この第3実施例の液晶表示素子は、前記画素電極3が横長矩形状に形成され、前記横電界生成電極12が前記画素電極3の少なくとも2つの長辺に沿わせて配置される共に、電界減衰手段19が前記画素電極3の長辺方向と平行な直線状に形成され、さらに、前記第1配向膜15と第2配向膜22とが上記の方向、つまり前記第1実施例におけるラビング方向に対して90°ずれた方向にラビングされているため、画面の上下方向の視角−輝度特性が図8(b)のような特性であり、画面の左右方向の視角−輝度特性が図8(a)のような特性である。
【0091】
[第4実施例]
図18に示した第4実施例の液晶表示素子は、非ツイストのホモジニアス配向型液晶表示素子であり、前記第1配向膜15と第2配向膜22のラビング方向15r,22r及び液晶分子24の初期配向状態と、前記第1偏光板25と第2偏光板26の吸収軸25a,26aの向き以外は、前記第1実施例または第2実施例の液晶表示素子と同じ構成となっている。なお、この第4実施例において、電界減衰手段19は、前記第1実施例における誘電体膜20でも、前記第2実施例における対向電極16に設けられたスリット21でもよい。
【0092】
この第4実施例の液晶表示素子において、前記後基板1の内面の第1配向膜15は、前記電界減衰手段19の延伸方向に対して一方の方向に略90°(好ましくは90°±10°))の角度で交差する方向15rにラビングされ、前記前基板2の内面の第2配向膜22は、前記電界減衰手段19の延伸方向に対して前記一方の方向とは反対方向に略90°(好ましくは90°±10°)の角度で交差する方向22rにラビングされている。
【0093】
また、前記液晶層23は、正の誘電異方性を有するネマティック液晶からなっており、その液晶分子24は、分子長軸を前記第1配向膜15及び前記第2配向膜22のラビング方向15r,22rに揃えてホモジニアス配向している。
【0094】
この第4実施例の液晶表示素子においても、各画素30毎に、前記画素電極3と前記対向電極16との間に印加された書込み電界の向きを、前記横電界生成電極12と前記電界減衰手段19とからなる電界歪み形成手段により、前記画素30の前記電界減衰手段19に対応する直線状の境界部を境にして、前記画素の一方の側の第1領域において前記画素電極3から前記対向電極16に向かって前記一方の側に傾いた方向に歪ませ、前記画素30の前記一方の側とは反対側の第2領域において前記画素電極3から前記対向電極16に向かって前記反対側に傾いた方向に歪ませることができる。
【0095】
そのため、前記各画素30毎に、前記画素電極3と対向電極16との間への書込み電界の印加による液晶分子24のチルト方向が異なる2つの領域31,32が定常的に所定の面積比で形成されるようにし、安定した広い視野角を得ることができる。
【0096】
[他の実施例]
なお、上記第1〜第4実施例の液晶表示素子では、前記電界減衰手段19を、前記画素30を二等分する位置に配置しているが、この電界減衰手段19を前記二等分する位置から何れか一方の方向にずらして配置し、前記第1領域31と第2領域32の面積を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…第1基板(後基板)、2…第2基板(前基板)、3…画素電極、4…TFT、10…走査線、11…信号線、12…横電界生成電極、13…容量電極、16…第1配向膜、15r…ラビング方向、16…対向電極、17R,17G,17B…カラーフィルタ、18…遮光膜、19…電界減衰手段、20…誘電体膜、21…スリット、22…第2配向膜、22r…ラビング方向、23…液晶層、24…液晶分子、25,26…偏光板、25a,26a…吸収軸、30…画素、31…第1領域、32…第2領域、E1,E2…書込み電界、e1,e2…横電界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を介して対向配置された第1基板と第2基板のうち、前記第1基板に、複数の画素電極及び、前記各画素電極にそれぞれ対応させて配置され、走査線からの所定電位のゲート信号の供給によりオンし、信号線から供給されたデータ信号を対応する前記画素電極に印加する複数の薄膜トランジスタが設けられ、前記第2基板に、前記各画素電極と対向する対向電極が設けられ、前記各画素電極と前記対向電極とが対向する領域からなる複数の画素毎に、前記画素電極と前記対向電極との間への電圧の印加により前記液晶層の液晶分子の配向状態を変化させて表示する液晶表示素子であって、
前記第1基板に、前記各画素電極にそれぞれ対応させて、前記画素電極の少なくとも一方の側とその反対側の2つの縁部の外側に前記画素電極と絶縁して設けられ、前記データ信号を印加された前記画素電極の縁部との間に、前記一方の側と前記反対側とで互いに逆向きの横電界を生じさせる横電界生成電極と、
前記第2基板に、前記各画素にそれぞれ対応させて、前記画素を前記画素電極の前記一方の側の第1領域と前記反対側の第2領域とに区分するように前記画素の全長にわたって直線状に形成され、前記画素電極と前記対向電極との間に印加された電界の強度を、前記第1領域と前記第2領域との境界部において低下させる電界減衰手段とを備え、
前記各画素毎に、前記画素電極と前記対向電極との間に印加された電界の向きを、前記横電界と前記電界減衰手段による電界強度の低下とにより、前記直線状の境界部を境にして、前記第1領域において前記画素電極から前記対向電極に向かって前記一方の側に傾いた方向に歪ませ、前記第2領域において前記画素電極から前記対向電極に向かって前記反対側に傾いた方向に歪ませるようにしたことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記横電界生成電極は、前記対向電極への印加信号と同電位の電圧を印加され、前記画素電極の縁部との間に前記横電界を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記横電界生成電極は、前記各画素電極との間に絶縁膜を介在させて設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記横電界生成電極は、前記第1基板に、前記絶縁膜を介して前記各画素電極の縁部とそれぞれ対向させて設けられ、前記画素電極の縁部との間に補償容量を形成する容量電極と一体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記画素電極は、略矩形形状に形成されており、前記横電界生成電極は、前記画素電極の少なくとも2つの長辺に沿わせて配置され、前記電界減衰手段は、前記画素電極の前記長辺方向と平行な直線状に形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記横電界生成電極は、前記画素電極の前記薄膜トランジスタの接続部を除く全周縁に沿わせて配置されていることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記電界減衰手段は、前記画素を二等分する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の液晶表示素子。
【請求項8】
前記電界減衰手段は、前記対向電極の上に形成された誘電体膜からなっていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の液晶表示素子。
【請求項9】
前記電界減衰手段は、前記対向電極に設けられたスリットからなっていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の液晶表示素子。
【請求項10】
前記第1基板に前記各画素電極を覆って第1配向膜が設けられ、前記第2基板に前記対向電極及び前記電界減衰手段を覆って第2配向膜が設けられており、前記第1配向膜と前記第2配向膜はそれぞれ、前記電界減衰手段の延伸方向に対して交差する方向にラビングされていることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の液晶表示素子。
【請求項11】
前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して一方の方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記一方の方向とは反対方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされており、前記液晶層は、正の誘電異方性を有する液晶からなり、その液晶分子が、前記第1基板と前記第2基板との間において略90°のツイスト角でツイスト配向していることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示素子。
【請求項12】
前記画素電極は、画面の左右方向の電極幅よりも前記画面の上下方向の電極幅が大きい縦長の矩形形状に形成され、前記電界減衰手段は、前記画素電極の長辺方向と平行な直線状に形成されており、前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て右回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て左回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされていることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示素子。
【請求項13】
前記画素電極は、画面の上下方向の電極幅よりも前記画面の左右方向の電極幅が大きい横長の矩形形状に形成され、前記電界減衰手段は、前記画素電極の長辺方向と平行な直線状に形成されており、前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て右回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記第2基板側から見て左回り方向に略45°の角度で交差する方向にラビングされていることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示素子。
【請求項14】
前記第1基板の外面に、第1偏光板が、その吸収軸を前記第1配向膜のラビング方向と平行または直交する方向に向けて配置され、前記第2基板の外面に、第2偏光板が、その吸収軸を前記第1配向膜の吸収軸と直交させて配置されていることを特徴とする請求項12または13に記載の液晶表示素子。
【請求項15】
前記第1配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して一方の方向に略90°の角度で交差する方向にラビングされ、前記第2配向膜は、前記電界減衰手段の延伸方向に対して前記一方の方向とは反対方向に略90°の角度で交差する方向にラビングされており、前記液晶層は、正の誘電異方性を有する液晶からなり、その液晶分子が、分子長軸を前記第1配向膜及び前記第2配向膜のラビング方向に揃えてホモジニアス配向していることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−33821(P2011−33821A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179828(P2009−179828)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】