説明

液晶表示装置の作製方法

【課題】ブルー相を発現する液晶組成物を有する液晶表示装置において、高い信頼性を付与する。
【解決手段】ネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及びネマティック液晶とは吸収する光の波長のピーク波長が異なる光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を用い、液晶組成物に光重合開始剤の吸収する光を照射して重合させて、ブルー相を発現する液晶組成物を有する液晶表示装置の作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液晶素子、液晶表示装置、及びそれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶は多様なデバイスに応用されており、特に薄型、軽量の特徴を持つ液晶表示装置(液晶ディスプレイ)は幅広い分野のディスプレイにおいて用いられている。
【0003】
より大型、高精細な表示画面を可能とするため、液晶の応答速度の高速化が求められており、開発が進められている。
【0004】
高速応答可能な液晶の表示モードとしてブルー相を発現する液晶を用いる表示モードがあげられる。ブルー相を発現する液晶を使用するモードは、高速応答が図れるうえ、配向膜が不要であり、かつ広視野角化が可能なので、実用化に向けてより研究が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005−090520号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブルー相を発現する液晶組成物を有する液晶表示装置において、高い信頼性を付与することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ブルー相を発現する液晶組成物を有する液晶表示装置の作製方法において、ネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及びネマティック液晶とは吸収する光の波長のピークが異なる光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を用い、液晶組成物に光を照射して重合させる。照射する光の波長域は光重合開始剤の吸収する光の波長のピークを含む。
【0008】
液晶組成物を重合させて高分子化することによって、液晶組成物が安定化し、ブルー相の発現する温度範囲を拡大することができる。なお、光照射によって液晶組成物を高分子化することを高分子安定化処理という。
【0009】
高分子安定化処理における光照射の際、液晶組成物中のネマティック液晶が光を吸収してしまうと液晶組成物の重合が抑制される恐れがある。従って、高分子安定化処理に用いる光の波長は光重合開始剤が吸収し、かつネマティック液晶が吸収しない波長が好ましい。
【0010】
ネマティック液晶及び光重合開始剤において、それぞれの吸収する光の波長のピークを異ならせ、光重合開始剤の吸収する光の波長のピークを含む光を照射することによって、液晶組成物の高分子安定化処理を行う。上記方法で液晶表示装置を作製することによって、液晶表示装置の電圧保持特性を向上させることができる。光照射によるネマティック液晶の劣化が抑制でき、かつ光重合開始剤は光照射により活性化し重合を十分に進めることが可能となるからである。従って、信頼性の高い液晶表示装置を作製することができる。
【0011】
ブルー相は捩れ力の強い液晶組成物で発現し二重ねじれ構造を有する。該液晶組成物は、条件により、コレステリック相、コレステリックブルー相、等方相等を示す。
【0012】
ブルー相であるコレステリックブルー相は、低温側からブルー相I、ブルー相II、ブルー相IIIと3種類の構造を示す。ブルー相であるコレステリックブルー相は光学的に等方性であるが、ブルー相Iは体心立方、ブルー相IIは単純立方の対称性を有する。ブルー相I及びブルー相IIは、紫外〜可視光領域にブラッグ回折を示す。
【0013】
カイラル剤は、液晶組成物の捩れを誘起し、液晶組成物を螺旋構造に配向させブルー相を発現させるために用いる。カイラル剤は、不斉中心を有する化合物であり、液晶組成物に対する相溶性が良く、かつ捩れ力の強い化合物を用いる。また、カイラル剤は光学活性体であり、光学純度が高いほど好ましく99%以上が最も好ましい。
【0014】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を挟持する第1の基板及び第2の基板と、第1の基板と液晶組成物との間に設けられた第1の電極層及び第2の電極層とを形成し、液晶組成物に光重合開始剤の吸収する光を照射し重合させ、ネマティック液晶の吸収する光の波長のピークと、光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとが異なる液晶表示装置の作製方法である。
【0015】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を挟持する第1の基板及び第2の基板と、第1の基板と液晶組成物との間に設けられた第1の電極層及び第2の電極層とを形成し、液晶組成物に光重合開始剤の吸収する光を照射し重合させ、ネマティック液晶は複数の化合物を有し、複数の化合物それぞれの吸収する光の波長のピークと、光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとが異なる液晶表示装置の作製方法である。
【0016】
上記構成において、液晶組成物に照射する光の波長域はネマティック液晶(ネマティック液晶に含まれる複数の化合物)の吸収する光の波長のピークと異なることが好ましい。
【0017】
また、上記構成において、ネマティック液晶(ネマティック液晶に含まれる複数の化合物)の吸収する光の波長のピークと、光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとは20nm以上(より好ましくは40nm以上)異なることが好ましい。
【0018】
また、上記構成において、液晶組成物に照射する光として、波長325nm以上450nm以下(より好ましくは365nm以上405nm以下)の光を用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一形態は、ブルー相を発現する液晶組成物を有する液晶表示装置の電圧保持特性を向上させ、高い信頼性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】液晶表示装置の作製方法を説明する概念図。
【図2】液晶表示装置の一形態を説明する図。
【図3】液晶表示装置の電極構成の一形態を説明する図。
【図4】液晶表示モジュールを説明する図。
【図5】電子機器を説明する図。
【図6】液晶1乃至7、及び光重合開始剤の規格化吸光度、光の放射照度を説明する図。
【図7】液晶素子1及び液晶素子2の電圧保持率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態及び実施例について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下の説明に限定されず、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
なお、第1、第2、又は第3として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の一に係る液晶表示装置について、図1(A)(B)を用いて説明する。図1(A)(B)は液晶表示装置の作製方法を示す断面図である。
【0024】
図1(A)の液晶表示装置は、第1の基板200とネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及びネマティック液晶とは吸収する光の波長のピークが異なる光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物218との間に画素電極層230と、共通電極層232が隣接して設けられている。液晶組成物218はまだ全域において重合性モノマーの光照射処理前の低重合領域である。
【0025】
ネマティック液晶は複数の化合物を含んでもよく、その場合含まれる化合物それぞれの吸収する光の波長のピークが、光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとは異なる化合物、光重合開始剤を用いる。
【0026】
また、ネマティック液晶(ネマティック液晶に含まれる複数の化合物)の吸収する光の波長のピークと、光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとは20nm以上(より好ましくは40nm以上)異なることが好ましい。
【0027】
ネマティック液晶としては、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、フェニルシクロヘキシル系化合物、ビフェニルシクロヘキシル系化合物、フェニルビシクロヘキシル系化合物、安息香酸フェニル系化合物、シクロヘキシル安息香酸フェニル系化合物、フェニル安息香酸フェニル系化合物、ビシクロヘキシルカルボン酸フェニル系化合物、アゾメチン系化合物、アゾ系化合物、アゾオキシ系化合物、スチルベン系化合物、ビシクロヘキシル系化合物、フェニルピリミジン系化合物、ビフェニルピリミジン系化合物、ピリミジン系化合物、およびビフェニルエチン系化合物等が挙げられる。
【0028】
重合性モノマーとしては、光により重合が進行する光重合性(光硬化性)モノマー、又は熱及び光により重合が進行する重合性モノマーなどを用いることができる。
【0029】
重合性モノマーは、アクリレート、メタクリレートなどの単官能モノマーでもよく、ジアクリレート、トリアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレートなどの多官能モノマーでもよく、これらを混合させたものでもよい。また、液晶性のものでも非液晶性のものでもよく、両者を混合させてもよい。光重合性モノマーとして、代表的には紫外線重合性モノマーを用いることができる。
【0030】
光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生させるラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0031】
液晶組成物218を形成する方法として、ディスペンス法(滴下法)や、第1の基板200と第2の基板201とを貼り合わせてから毛細管現象等を用いて液晶組成物218を注入する注入法を用いることができる。
【0032】
次に、液晶組成物218に高分子安定化処理として光重合開始剤が吸収する光204を照射し、重合性モノマーを重合させ、液晶組成物208を形成する(図1(B)参照)。高分子安定化処理を行うことで、液晶表示装置において、ブルー相の発現する温度範囲を広くすることができる。
【0033】
また、高分子安定化処理を十分に行うことによって、ブルー相を発現する液晶組成物を有する液晶表示装置の耐衝撃性も向上する。
【0034】
液晶組成物218に照射する光204の波長域はネマティック液晶(ネマティック液晶に含まれる複数の化合物)の吸収する光の波長のピークと異なることが好ましい。
【0035】
液晶組成物218に照射する光204として、波長325nm以上450nm以下(より好ましくは365nm以上405nm以下)の光を用いることができる。
【0036】
高分子安定化処理における光照射の際、液晶組成物218中のネマティック液晶(ネマティック液晶に含まれる複数の化合物)が光204を吸収してしまうと液晶組成物218の重合が抑制される恐れがある。従って、高分子安定化処理に用いる光204の波長は光重合開始剤が吸収し、かつネマティック液晶(ネマティック液晶に含まれる複数の化合物)が吸収しない波長が好ましい。
【0037】
ネマティック液晶及び光重合開始剤において、それぞれの吸収する光の波長のピークを異ならせ、光重合開始剤の吸収する光を照射することによって、液晶組成物の高分子安定化処理を行い液晶表示装置を作製することによって、液晶表示装置の電圧保持特性を向上させることができる。また、応答速度の高速化も可能となる。光照射によるネマティック液晶の劣化が抑制でき、かつ光重合開始剤は光照射により活性化し重合を十分に進めることが可能となるからである。従って、信頼性の高い液晶表示装置を作製することができる。
【0038】
高分子安定化処理は、等方相を示す液晶組成物に行ってもよいし、温度制御してブルー相を発現した液晶組成物に行ってもよい。なお、昇温時にブルー相から等方相に相転移する温度又は降温時に等方相からブルー相に相転移する温度をブルー相と等方相間の相転移温度という。高分子安定化処理の一例としては、光重合性モノマーを添加した液晶組成物を等方相まで加熱した後、徐々に降温させてブルー相にまで相転移させ、ブルー相が発現する温度を保持した状態で光を照射して行うことができる。
【0039】
図1の構成であると、基板に概略平行(すなわち水平な方向)な電界を生じさせて、基板と平行な面内で液晶分子を動かして、階調を制御する方式を用いることができる。画素電極層230と共通電極層232との間に電界を形成することで、液晶を制御する。液晶には水平方向の電界が形成されるため、その電界を用いて液晶分子を制御できる。ブルー相を発現する液晶組成物は、高速応答が可能であるため、液晶素子及び液晶表示装置の高性能化が可能になる。
【0040】
例えば、高速応答が可能であるため、バックライト装置にRGBの発光ダイオード(LED)等を配置し、時分割によりカラー表示する継時加法混色法(フィールドシーケンシャル法)や、時分割により左目用の映像と右目用の映像を交互に見るシャッター眼鏡方式による3次元表示方式に好適に採用できる。
【0041】
また、ブルー相は光学的に等方であるため視野角依存性がなく、配向膜を形成しなくともよいため、表示画像の質の向上及びコスト削減が可能である。
【0042】
液晶組成物208を介して隣接する画素電極層230と、共通電極層232との距離は、画素電極層230及び共通電極層232にそれぞれ所定の電圧を印加した時、画素電極層230及び共通電極層232間に介在する液晶組成物208の液晶が応答する距離とする。該距離に応じて印加する電圧を適宜制御する。
【0043】
液晶組成物208の厚さ(膜厚)の最大値は1μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0044】
また、図1(A)(B)では図示しないが、偏光板、位相差板、反射防止膜などの光学フィルムなどは適宜設ける。例えば、偏光板及び位相差板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライトなどを用いることができる。
【0045】
本明細書では、半導体素子(例えばトランジスタ)、又は画素電極層が形成されている基板を素子基板(第1の基板)といい、該素子基板と液晶組成物を介して対向する基板を対向基板(第2の基板)という。
【0046】
本発明の一に係る液晶表示装置として、光源の光を透過することによって表示を行う透過型の液晶表示装置、入射する光を反射することによって表示を行う反射型の液晶表示装置、又は透過型と反射型を両方有する半透過型の液晶表示装置を提供することができる。
【0047】
透過型の液晶表示装置の場合、光が透過する画素領域に存在する画素電極層、共通電極層、第1の基板、第2の基板、その他の絶縁膜、導電膜などは可視光の波長領域の光に対して透光性が好ましいが、開口パターンを有する場合は形状によっては金属膜などの非透光性材料を用いてもよい。
【0048】
一方反射型の液晶表示装置の場合、液晶組成物に対して視認側と反対側には液晶組成物を透過した光を反射する反射性の部材(反射性を有する膜や基板など)を設ければよい。よって、視認側より反射性の部材までに設けられた、光が透過する基板、絶縁膜、導電膜は可視光の波長領域の光に対して透光性とする。なお、本明細書で透光性とは少なくとも可視光の波長領域の光を透過する性質をいう。
【0049】
画素電極層230、共通電極層232は、インジウム錫酸化物、酸化インジウムに酸化亜鉛を混合した導電材料、酸化インジウムに酸化シリコン(SiO)を混合した導電材料、有機インジウム、有機スズ、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、グラフェン、又はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0050】
第1の基板200、第2の基板201にはバリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、プラスチック基板などを用いることができる。なお、反射型の液晶表示装置の場合、視認側と反対側の基板にはアルミニウム基板やステンレス基板などの金属基板を用いてもよい。
【0051】
以上のように、ブルー相を発現する液晶表示装置の電圧保持特性を向上させ、高い信頼性を付与することができる。
【0052】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0053】
(実施の形態2)
本発明の一に係る液晶表示装置として、パッシブマトリクス型の液晶表示装置、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を提供することができる。本実施の形態は、本発明の一に係るアクティブマトリクス型の液晶表示装置の例を、図2及び図3を用いて説明する。
【0054】
図2(A)は液晶表示装置の平面図であり1画素分の画素を示している。図2(B)は図2(A)の線X1−X2における断面図である。
【0055】
図2(A)において、複数のソース配線層(配線層405aを含む)が互いに平行(図中上下方向に延伸)かつ互いに離間した状態で配置されている。複数のゲート配線層(ゲート電極層401を含む)は、ソース配線層に略直交する方向(図中左右方向)に延伸し、かつ互いに離間するように配置されている。共通配線層408は、複数のゲート配線層それぞれに隣接する位置に配置されており、ゲート配線層に概略平行な方向、つまり、ソース配線層に概略直交する方向(図中左右方向)に延伸している。ソース配線層と、共通配線層408及びゲート配線層とによって、略長方形の空間が囲まれているが、この空間に液晶表示装置の画素電極層及び共通電極層が配置されている。画素を駆動するトランジスタ420は、図中左上の角に配置されている。画素電極層及びトランジスタは、マトリクス状に複数配置されている。
【0056】
図2の液晶表示装置において、トランジスタ420に電気的に接続する第1の電極層447が画素電極層として機能し、共通配線層408と電気的に接続する第2の電極層446が共通電極層として機能する。なお、第1の電極層と共通配線層によって容量が形成されている。共通電極層はフローティング状態(電気的に孤立した状態)として動作させることも可能だが、固定電位、好ましくはデータとして送られる画像信号の中間電位近傍でフリッカーの生じないレベルに設定してもよい。
【0057】
基板に概略平行(すなわち水平な方向)な電界を生じさせて、基板と平行な面内で液晶分子を動かして、階調を制御する方式を用いることができる。このような方式として、図2及び図3に示すようなIPSモードで用いる電極構成が適用できる。
【0058】
IPSモードなどに示される横電界モードは、液晶組成物の下方に開口パターンを有する第1の電極層(例えば各画素別に電圧が制御される画素電極層)及び第2の電極層(例えば全画素に共通の電圧が供給される共通電極層)を配置する。よって第1の基板441上には、一方が画素電極層であり、他方が共通電極層である第1の電極層447及び第2の電極層446が形成され、少なくとも第1の電極層及び第2の電極層の一方が絶縁膜上に形成されている。第1の電極層447及び第2の電極層446は、平板形状でなく、様々な開口パターンを有し、屈曲部や枝分かれした櫛歯状を含む。第1の電極層447及び第2の電極層446はその電極間に電界を発生させるため、同形状で完全に重なる配置は避ける。
【0059】
また、第1の電極層447及び第2の電極層446としてFFSモードで用いる電極構成を適用してもよい。FFSモードに示される横電界モードは、液晶組成物の下方に開口パターンを有する第1の電極層(例えば各画素別に電圧が制御される画素電極層)及びさらにその開口パターンの下方に平板状の第2の電極層(例えば全画素に共通の電圧が供給される共通電極層)を配置する。この場合、第1の基板441上には、一方が画素電極層であり、他方が共通電極層である第1の電極層及び第2の電極層が形成され、画素電極層と共通電極層とは絶縁膜(又は層間絶縁層)を介して積層するように配置される。画素電極層及び共通電極層のいずれか一方は、絶縁膜(又は層間絶縁層)の下方に形成され、かつ平板状であり、他方は絶縁膜(又は層間絶縁層)の上方に形成され、かつ様々な開口パターンを有し、屈曲部や枝分かれした櫛歯状を含む形状とする。第1の電極層447及び第2の電極層446はその電極間に電界を発生させるため、同形状で完全に重なる配置は避ける。
【0060】
本実施の形態では、液晶組成物444はネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及びネマティック液晶とは吸収する光の波長のピークが異なる光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を用い、高分子安定化処理によって、ブルー相を発現している状態(ブルー相を呈す状態、又はブルー相を示す状態ともいう)で液晶表示装置に設けられる。また、液晶組成物444には、有機樹脂が含まれる。
【0061】
ネマティック液晶及び光重合開始剤において、それぞれの吸収する光の波長のピークを異ならせ、光重合開始剤の吸収する光を照射することによって、液晶組成物の高分子安定化処理を行い、液晶表示装置を作製する。該作製方法によって、液晶表示装置の電圧保持特性を向上させることができる。また、応答速度の高速化も可能となる。光照射によるネマティック液晶の劣化が抑制でき、かつ光重合開始剤は光照射により活性化し重合を十分に進めることが可能となるからである。従って、信頼性の高い液晶表示装置を作製することができる。
【0062】
画素電極層である第1の電極層447と共通電極層である第2の電極層446との間に電界を形成することで、液晶組成物444の液晶を制御する。液晶には水平方向の電界が形成されるため、その電界を用いて液晶分子を制御できる。ブルー相を呈するように配向している液晶分子を、基板と平行な方向で制御できるため、視野角が広くなる。
【0063】
第1の電極層447及び第2の電極層446の他の例を図3に示す。図3(A)乃至(D)の上面図に示すように、第1の電極層447a乃至447d及び第2の電極層446a乃至446dが互い違いとなるように形成されており、図3(A)では第1の電極層447a及び第2の電極層446aはうねりを有する波状形状であり、図3(B)では第1の電極層447b及び第2の電極層446bは同心円状の開口部を有する形状であり、図3(C)では第1の電極層447c及び第2の電極層446cは櫛歯状であり一部重なっている形状であり、図3(D)では第1の電極層447d及び第2の電極層446dは櫛歯状であり電極同士がかみ合うような形状である。なお、図3(A)乃至(C)のように、第1の電極層447a、447b、447c、と第2の電極層446a、446b、446cとが重なる場合は、第1の電極層447と第2の電極層446との間には絶縁膜を形成し、異なる膜上に第1の電極層447と第2の電極層446とをそれぞれ形成する。
【0064】
なお、第1の電極層447、第2の電極層446は、開口パターンを有する形状であるために、図2(B)の断面図においては分断された複数の電極層として示されている。これは本明細書の他の図面においても同様である。
【0065】
トランジスタ420は逆スタガ型の薄膜トランジスタであり、絶縁表面を有する基板である第1の基板441上に形成され、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402、半導体層403、ソース電極層又はドレイン電極層として機能する配線層405a、405bを含む。
【0066】
本明細書に開示する液晶表示装置に適用できるトランジスタの構造は特に限定されず、例えばトップゲート構造、又はボトムゲート構造のスタガ型及びプレーナ型などを用いることができる。また、トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、2つ形成されるダブルゲート構造もしくは3つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。また、チャネル形成領域の上下にゲート絶縁層を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型でもよい。
【0067】
トランジスタ420を覆い、半導体層403に接する絶縁膜407、さらに絶縁膜409が設けられ、絶縁膜409上に層間膜413が積層されている。
【0068】
層間膜413の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等を用いることができる。
【0069】
第1の基板441と対向基板である第2の基板442とを、液晶組成物444を挟持させてシール材で固着する。液晶組成物444を形成する方法として、ディスペンス法(滴下法)や、第1の基板441と第2の基板442とを貼り合わせてから毛細管現象等を用いて液晶を注入する注入法を用いることができる。
【0070】
シール材としては、代表的には可視光硬化性、紫外線硬化性又は熱硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。代表的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂などを用いることができる。また、光(代表的には紫外線)重合開始剤、熱硬化剤、フィラー、カップリング剤を含んでもよい。
【0071】
シール材に紫外線などの光硬化樹脂を用い、滴下法で液晶組成物を形成する場合など、高分子安定化処理の光照射工程によってシール材の硬化も行ってもよい。
【0072】
本実施の形態では、第1の基板441の外側(液晶組成物444と反対側)に偏光板443aを、第2の基板442の外側(液晶組成物444と反対側)に偏光板443bを設ける。また、偏光板の他、位相差板、反射防止膜などの光学フィルムなどを設けてもよい。例えば、偏光板及び位相差板による円偏光を用いてもよい。以上の工程で、液晶表示装置を完成させることができる。
【0073】
また、大型の基板を用いて複数の液晶表示装置を作製する場合(所謂多面取り)、その分断工程は、高分子安定化処理の前か、偏光板を設ける前に行うことができる。分断工程による液晶組成物への影響(分断工程時にかかる力などによる配向乱れなど)を考慮すると、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせた後、高分子安定化処理の前が好ましい。
【0074】
図示しないが、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いればよい。光源は素子基板である第1の基板441側から、視認側である第2の基板442へと透過するように照射される。
【0075】
第1の電極層447、及び第2の電極層446は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0076】
また、第1の電極層447、及び第2の電極層446はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0077】
また、第1の電極層447、及び第2の電極層446として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。
【0078】
導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体又はその誘導体などがあげられる。
【0079】
下地膜となる絶縁膜を第1の基板441とゲート電極層401の間に設けてもよい。下地膜は、第1の基板441からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による単層、又は積層構造により形成することができる。ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401に遮光性を有する導電膜を用いると、バックライトからの光(第1の基板441から入射する光)が、半導体層403へ入射することを防止することができる。
【0080】
例えば、ゲート電極層401の2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、又は銅層上にモリブデン層を積層した2層構造、又は銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタル層を積層した2層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層又は窒化タングステン層と、アルミニウムとシリコンの合金層又はアルミニウムとチタンの合金層と、窒化チタン層又はチタン層とを積層した積層構造とすることが好ましい。
【0081】
ゲート絶縁層402は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化シリコン膜等を用いて形成することができる。又は、ゲート絶縁層402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネートなどのhigh−k材料を用いてもよい。これらのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる
【0082】
また、ゲート絶縁層402として、有機シランガスを用いたCVD法により酸化シリコン層を形成することも可能である。有機シランガスとしては、テトラエトキシシラン(TEOS:化学式Si(OC)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)等のシリコン含有化合物を用いることができる。なお、ゲート絶縁層402は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0083】
半導体層403に用いる材料は特に限定されず、トランジスタ420に要求される特性に応じて適宜設定すればよい。半導体層403に用いることのできる材料の例を説明する。
【0084】
半導体層403を形成する材料としては、シランやゲルマンに代表される半導体材料ガスを用いた化学気相成長法や、スパッタリング法等の物理気相成長法で作製される非晶質(アモルファスともいう。)半導体、該非晶質半導体を光エネルギーや熱エネルギーを利用して結晶化させた多結晶半導体、或いは微結晶半導体などを用いることができる。半導体層はスパッタリング法、LPCVD法、又はプラズマCVD法等により成膜することができる。
【0085】
アモルファス半導体としては、代表的には水素化アモルファスシリコン、結晶性半導体としては代表的にはポリシリコンなどがあげられる。ポリシリコン(多結晶シリコン)には、800℃以上のプロセス温度を経て形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂高温ポリシリコンや、600℃以下のプロセス温度で形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂低温ポリシリコン、また結晶化を促進する元素などを用いて、非晶質シリコンを結晶化させたポリシリコンなどを含んでいる。もちろん、前述したように、微結晶半導体又は半導体層の一部に結晶相を含む半導体を用いることもできる。
【0086】
また、酸化物半導体を用いてもよく、酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を有することが好ましい。
【0087】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0088】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0089】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0090】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0091】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:2(=1/2:1/6:1/3)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0092】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0093】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)+(b−B)+(c−C)≦rを満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0094】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0095】
例えば、結晶性酸化物半導体層として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体層を用いることができる。
【0096】
表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体層は、単結晶ではなく、非晶質でもない状態であり、c軸配向を有した結晶を含む酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor; CAAC−OSとも呼ぶ)層である。
【0097】
CAAC−OSとは、c軸配向し、かつab面、表面または界面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(あるいは表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体である。CAAC−OS膜(層)とは、c軸に対しては結晶化した薄膜であり、ab面に対しては必ずしも配列していない。
【0098】
広義に、CAAC−OSとは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む。
【0099】
CAAC−OS膜は単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OS膜は結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0100】
CAAC−OSを構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OS膜を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OSが形成される基板面やCAAC−OSの表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC−OS膜を構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0101】
半導体層、配線層の作製工程において、薄膜を所望の形状に加工するためにエッチング工程を用いる。エッチング工程は、ドライエッチングやウエットエッチングを用いることができる。
【0102】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0103】
ソース電極層又はドレイン電極層として機能する配線層405a、405bの材料としては、Al、Cr、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、熱処理を行う場合には、この熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。例えば、Al単体では耐熱性が劣り、また腐蝕しやすい等の問題点があるので耐熱性導電性材料と組み合わせて形成する。Alと組み合わせる耐熱性導電性材料としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜、又は上述した元素を成分とする窒化物で形成する。
【0104】
ゲート絶縁層402、半導体層403、ソース電極層又はドレイン電極層として機能する配線層405a、405bを大気に触れさせることなく連続的に形成してもよい。大気に触れさせることなく連続成膜することで、大気成分や大気中に浮遊する汚染不純物元素に汚染されることなく各積層界面を形成することができるので、トランジスタ特性のばらつきを低減することができる。
【0105】
なお、半導体層403は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する半導体層である。
【0106】
トランジスタ420を覆う絶縁膜407、絶縁膜409は、乾式法や湿式法で形成される無機絶縁膜、有機絶縁膜を用いることができる。例えば、CVD法やスパッタリング法などを用いて得られる窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜などを用いることができる。また、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンケイ酸ガラス)、BPSG(ボロンリンケイ酸ガラス)等を用いることができる。また、絶縁膜407として酸化ガリウム膜を用いてもよい。
【0107】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いてもよい。また、有機基はフルオロ基を有していてもよい。シロキサン系樹脂は塗布法により成膜し、焼成することによって絶縁膜407として用いることができる。
【0108】
なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜407、絶縁膜409を形成してもよい。例えば、無機絶縁膜上に有機樹脂膜を積層する構造としてもよい。
【0109】
また、多階調マスクにより形成した複数(代表的には二種類)の厚さの領域を有するレジストマスクを用いると、フォトリソグラフィ工程の数を減らすことができるため、工程簡略化、低コスト化が図れる。
【0110】
以上のように、ブルー相を発現する液晶表示装置の電圧保持特性を向上させ、高い信頼性を付与することができる。
【0111】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0112】
(実施の形態3)
トランジスタを作製し、該トランジスタを画素部、さらには駆動回路に用いて表示機能を有する液晶表示装置を作製することができる。また、トランジスタを用いて駆動回路の一部又は全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0113】
液晶表示装置は表示素子として液晶素子(液晶表示素子ともいう)を含む。
【0114】
また、液晶表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。さらに、該液晶表示装置を作製する過程における、表示素子が完成する前の一形態に相当する素子基板に関し、該素子基板は、電流を表示素子に供給するための手段を複数の各画素に備える。素子基板は、具体的には、表示素子の画素電極のみが形成された状態であってもよいし、画素電極となる導電膜を成膜した後であって、エッチングして画素電極を形成する前の状態であってもよいし、あらゆる形態があてはまる。
【0115】
なお、本明細書中における液晶表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は表示素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て液晶表示装置に含むものとする。
【0116】
液晶表示装置の一形態に相当する液晶表示パネルの外観及び断面について、図4を用いて説明する。図4(A1)(A2)は、第1の基板4001上に形成されたトランジスタ4010、4011、及び液晶素子4013を、第2の基板4006との間にシール材4005によって封止した、パネルの上面図であり、図4(B)は、図4(A1)(A2)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0117】
第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、液晶組成物4008と共に封止されている。
【0118】
また、図4(A1)は第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。なお、図4(A2)は信号線駆動回路の一部を第1の基板4001上に設けられたトランジスタで形成する例であり、第1の基板4001上に信号線駆動回路4003bが形成され、かつ別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003aが実装されている。
【0119】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB方法などを用いることができる。図4(A1)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図4(A2)は、TAB方法により信号線駆動回路4003aを実装する例である。
【0120】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図4(B)では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。トランジスタ4010、4011上には絶縁層4020、層間膜4021が設けられている。
【0121】
トランジスタ4010、4011は、実施の形態2に示すトランジスタを適用することができる。
【0122】
また、層間膜4021、又は絶縁層4020上において、駆動回路用のトランジスタ4011の半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に導電層を設けてもよい。導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、或いは導電層はフローティング状態であってもよい。
【0123】
また、層間膜4021上に画素電極層4030及び共通電極層4031が形成され、画素電極層4030はトランジスタ4010と電気的に接続されている。液晶素子4013は、画素電極層4030、共通電極層4031及び液晶組成物4008を含む。なお、第1の基板4001、第2の基板4006の外側にはそれぞれ偏光板4032a、4032bが設けられている。
【0124】
本実施の形態では、液晶組成物4008はネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及びネマティック液晶とは吸収する光の波長のピークが異なる光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を用い、高分子安定化処理によって、ブルー相を発現している状態(ブルー相を呈す状態、又はブルー相を示す状態ともいう)で液晶表示装置に設けられる。また、液晶組成物4008には、有機樹脂が含まれる。
【0125】
ネマティック液晶及び光重合開始剤において、それぞれの吸収する光の波長のピークを異ならせ、光重合開始剤の吸収する光を照射することによって、液晶組成物の高分子安定化処理を行い、液晶表示装置を作製する。該作製方法によって、液晶表示装置の電圧保持特性を向上させることができる。また、応答速度の高速化が可能となる。光照射によるネマティック液晶の劣化が抑制でき、かつ光重合開始剤は光照射により活性化し重合を十分に進めることが可能となるからである。従って、信頼性の高い液晶表示装置を作製することができる。
【0126】
また、画素電極層4030及び共通電極層4031には、実施の形態1又は実施の形態2で示したような画素電極層及び共通電極層の構成を適用することができる。画素電極層4030及び共通電極層4031は開口パターンを有する形状である。
【0127】
画素電極層4030と共通電極層4031との間に電界を形成することで、液晶組成物4008の液晶を制御する。液晶には水平方向の電界が形成されるため、その電界を用いて液晶分子を制御できる。ブルー相を呈するように配向している液晶分子を、基板と平行な方向で制御できるため、視野角が広くなる。
【0128】
なお、第1の基板4001、第2の基板4006としては、透光性を有するガラス、プラスチックなどを用いることができる。プラスチックとしては、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルム又はアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシート、又はFRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板を用いることもできる。
【0129】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶組成物4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。液晶組成物4008を用いる液晶表示装置において液晶組成物の厚さであるセルギャップは1μm以上20μm以下とすることが好ましい。なお、本明細書においてセルギャップの厚さとは、液晶組成物の厚さ(膜厚)の最大値とする。
【0130】
なお図4は透過型液晶表示装置の例であるが、本発明は半透過型液晶表示装置でも、反射型液晶表示装置でも適用できる。
【0131】
また、図4の液晶表示装置では、基板の外側(視認側)に偏光板を設ける例を示すが、偏光板は基板の内側に設けてもよい。偏光板の材料や作製工程条件によって適宜設定すればよい。また、ブラックマトリクスとして機能する遮光層を設けてもよい。
【0132】
層間膜4021の一部としてカラーフィルタ層や遮光層を形成してもよい。図4においては、トランジスタ4010、4011上方を覆うように遮光層4034が第2の基板4006側に設けられている例である。遮光層4034を設けることにより、さらにコントラスト向上やトランジスタの安定化の効果を高めることができる。
【0133】
トランジスタの保護膜として機能する絶縁層4020で覆う構成としてもよいが、特に限定されない。
【0134】
なお、保護膜は、大気中の有機物や金属物、水蒸気などの汚染不純物の侵入を防ぐためのものであり、緻密な膜が好ましい。保護膜は、スパッタリング法を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜の単層、又は積層で形成すればよい。
【0135】
また、平坦化絶縁膜として透光性の絶縁層をさらに形成する場合、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンケイ酸ガラス)、BPSG(ボロンリンケイ酸ガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0136】
積層する絶縁層の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート、ディップ法、スプレー塗布法、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等を用いることができる。
【0137】
画素電極層4030及び共通電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0138】
また、画素電極層4030及び共通電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0139】
また、画素電極層4030及び共通電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。
【0140】
また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004又は画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0141】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、ゲート線又はソース線に対して、駆動回路保護用の保護回路を同一基板上に設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0142】
図4では、接続端子電極4015が、画素電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0143】
接続端子電極4015は、FPC4018が有する端子と、異方性導電膜4019を介して電気的に接続されている。
【0144】
また図4においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0145】
以上のように、ブルー相を発現する液晶表示装置の電圧保持特性を向上させ、高い信頼性を付与することができる。
【0146】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0147】
(実施の形態4)
本明細書に開示する液晶表示装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0148】
図5(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態1乃至3のいずれかで示した液晶表示装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0149】
図5(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。実施の形態1乃至3のいずれかで示した液晶表示装置を表示部3023に適用することにより、信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0150】
図5(C)は、電子書籍であり、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0151】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図5(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図5(C)では表示部2707)に異なる画像を表示することができる。実施の形態1乃至3のいずれかで示した液晶表示装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。表示部2705として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想されるため、太陽電池を設け、太陽電池による発電、及びバッテリーでの充電を行えるようにしてもよい。なおバッテリーとしては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0152】
また、図5(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0153】
また、電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0154】
図5(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態1乃至3のいずれかで示した液晶表示装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0155】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図5(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0156】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図5(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0157】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0158】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0159】
図5(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態1乃至3のいずれかで示した液晶表示装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0160】
図5(F)は、テレビジョン装置であり、筐体9601や表示部9603などによって構成されている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1乃至3のいずれかで示した液晶表示装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置とすることができる。
【0161】
テレビジョン装置の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0162】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0163】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0164】
本実施例では、本発明の一形態の液晶表示装置に用いることのできる液晶素子を作製し、特性の評価を行った。
【0165】
液晶素子に用いた液晶組成物の構成を表1に示す。
【0166】
【表1】

【0167】
液晶1として4−n−ペンチル安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:PEP−5FCNF)、液晶2として4−シアノ−4”−ペンチル−p−テルフェニル(略称:5CT)(株式会社LCC製)、液晶3として4−(4−n−プロポキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O3FCNF)、液晶4として4−(4−n−ペントキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O5FCNF)、液晶5として4−(4−n−オクトキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O8FCNF)、液晶6として4−(trans−4−n−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:CPEP−5FCNF)、液晶7として4−n−プロピル安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:PEP−3FCNF)を用いた。
【0168】
なお、本実施例で用いたPEP−5FCNF(略称)、5CT(略称)、PP−O3FCNF(略称)、PP−O5FCNF(略称)、PP−O8FCNF(略称)、CPEP−5FCNF(略称)、及びPEP−3FCNF(略称)の構造式を下記に示す。
【0169】
【化1】

【0170】
カイラル剤としてR−DOL−Pn(略称)、重合性モノマーとして、1,4−ビス−[4−(4−アクリロイロキシ−n−へキシル−1−オキシ)ベンゾイロキシ]−2−メチルベンゼン(略称:RM257−O6)(シントンケミカルズ株式会社製)、及びメタクリル酸ドデシル((DMeAc)(略称)(東京化成工業株式会社製))、並びに光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(略称:DMPAP)(東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0171】
なお、本実施例で用いた、R−DOL−Pn(略称)、RM257−O6(略称)、DMeAc(略称)、DMPAP(略称)の構造式を下記に示す。
【0172】
【化2】

【0173】
液晶1乃至7(PEP−5FCNF(略称)、5CT(略称)、PP−O3FCNF(略称)、PP−O5FCNF(略称)、PP−O8FCNF(略称)、CPEP−5FCNF(略称)、及びPEP−3FCNF(略称))、及び光重合開始剤(DMPAP(略称))の吸収波長の測定を行った。測定は、液晶1乃至7をそれぞれジクロロメタン溶液に溶解させて試料を作製し、紫外可視分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて行った。液晶1乃至7、及び光重合開始剤の吸収スペクトルを図6に示す。
【0174】
なお、図6において、液晶1(PEP−5FCNF(略称))は細い実線、液晶2(5CT(略称))は三角形のドット、液晶3(PP−O3FCNF(略称))は菱形のドット、液晶4(PP−O5FCNF(略称))は細い点線、液晶5(PP−O8FCNF(略称))は太い点線、液晶6(CPEP−5FCNF(略称))は四角形のドット、液晶7(PEP−3FCNF(略称))はバツ印のドット、光重合開始剤(DMPAP(略称))は太い実線のそれぞれの吸収スペクトルである。
【0175】
図6に示すように、各液晶の吸収ピーク波長は、液晶1(PEP−5FCNF(略称))は253nm、液晶2(5CT(略称))は302nm、液晶3(PP−O3FCNF(略称))は307nm、液晶4(PP−O5FCNF(略称))は307nm、液晶5(PP−O8FCNF(略称))は307nm、液晶6(CPEP−5FCNF(略称))は255nm、液晶7(PEP−3FCNF(略称))は253nm、光重合開始剤(DMPAP(略称))は340nmであった。
【0176】
本実施例では、表1に示す液晶組成物を用いて液晶素子1及び液晶素子2を作製した。作製方法を以下に示す。液晶素子1と液晶素子2とでは、高分子安定化処理に用いる光の波長が異なる。
【0177】
液晶素子1及び液晶素子2は、画素電極層及び共通電極層が図3(D)のように櫛歯状に形成されたガラス基板と、対向基板となるガラス基板とを間に空隙(4μm)を有してシール材によって貼り合わせた後、注入法によって等方相の状態で攪拌した液晶組成物を基板間に注入して作製した。
【0178】
画素電極層及び共通電極層は酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用いてスパッタリング法にて形成した。なお、その膜厚は110nmとし、画素電極層と共通電極層の各幅、及び画素電極層と共通電極層との間隔は2μmとした。また、シール材は紫外線及び熱硬化型シール材を用い、硬化処理として、90秒間の紫外線(放射照度100mW/cm)照射処理を行い、その後120℃で1時間加熱処理を行った。
【0179】
液晶素子1及び液晶素子2において、ブルー相が発現する最高温度より3℃高い温度(最高温度+3℃)からブルー相が発現する最低温度の範囲内の任意の温度において恒温とし、光(キセノンランプ光源、朝日分光株式会社製、MAX302)を、20分間照射することによって高分子安定化処理を行った。なお、高分子安定化処理によって、液晶素子1及び液晶素子2の液晶組成物中に含まれる重合性モノマーが重合し、液晶素子1及び液晶素子2は、有機樹脂を含む液晶組成物を有する液晶素子となる。
【0180】
高分子安定化処理に用いた光は、液晶素子1は光源から放射された光を350nmのバンドパスフィルタ(朝日分光株式会社製)に通した光を用い、液晶素子2は光源から放射された光を380nmのバンドパスフィルタ(朝日分光株式会社製)に通した光をそれぞれ用いた。図6に、高分子安定化処理において、液晶素子1で用いた光(光源(350nmBPF)、太い一点鎖線で示す)、液晶素子2で用いた光(光源(380nmBPF)、太い二点鎖線で示す)の放射照度のスペクトルを示す。
【0181】
液晶素子1及び液晶素子2の電圧保持率を、6254型液晶物性評価システム(株式会社東陽テクニカ製)を用いて測定した。25℃の液晶素子1及び液晶素子2において、30Vを60μsec印加し液晶素子1及び液晶素子2に電荷を充電した後、16.6msec保持後の電圧を測定し、それぞれの電圧保持率を求めた。液晶素子1及び液晶素子2の電圧保持率を図7に示す。
【0182】
図7で示すように、350nmのバンドパスフィルタに通した光を用いた液晶素子1は12%程度と低い電圧保持率であったのに対し、380nmのバンドパスフィルタに通した光を用いた液晶素子2は60%以上、約70%の高い電圧保持率が得られた。
【0183】
図6に示すように、液晶素子2で用いた380nmのバンドパスフィルタに通した光(光源(380nmBPF))の放射スペクトルは、液晶組成物に含まれる液晶1乃至7の吸収スペクトルと重なっておらず、高分子安定化処理の光照射時に液晶1乃至7の光の吸収が生じなかったため、液晶組成物の重合が進み、十分に高分子安定化が達成できたことがわかる。
【0184】
一方、液晶素子1で用いた350nmのバンドパスフィルタに通した光(光源(350nmBPF))の放射スペクトルは液晶組成物に含まれる液晶2乃至5の吸収スペクトルと一部重なっており、高分子安定化処理の光照射時に液晶2乃至5で光の吸収が生じたため、液晶組成物の重合が十分に進まず、高分子安定化が不十分であった恐れがある。
【0185】
以上の結果から、高分子安定化処理に用いる光の波長は光重合開始剤が吸収し、かつ液晶が吸収しない波長が好ましいことが確認できた。
【0186】
従って、ネマティック液晶及び光重合開始剤において、それぞれの吸収する光の波長のピークを異ならせ、光重合開始剤の吸収する光を照射することによって、液晶組成物の高分子安定化処理を行うことによって、液晶表示素子の電圧保持特性を向上させることができる。従って、信頼性の高い液晶表示装置を作製することができる。
【実施例2】
【0187】
実施例1で使用した、PEP−5FCNF(略称)、PP−O3FCNF(略称)、PP−O5FCNF(略称)、PP−O8FCNF(略称)、CPEP−5FCNF(略称)、PEP−3FCNF(略称)、及びR−DOL−Pn(略称)の合成方法を以下に記載する。
【0188】
(4−n−ペンチル安息香酸−4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:PEP−5FCNF)の合成方法)
PEP−5FCNF(略称)の合成スキームを下記(M−1)に示す。
【0189】
【化3】

【0190】
10g(52mmol)の4−n−ペンチル安息香酸と、8.1g(52mmol)の2、6−ジフルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリルと、0.95g(7.8mmol)の4−(N,N−ジメチル)アミノピリジン(DMAP)と、52mLのジクロロメタンを200mLのナスフラスコに加え、攪拌した。この混合物に11g(57mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、大気下、室温で終夜攪拌した。所定時間経過後、得られた混合物へ水を加えてから、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過により濾別し、濾液を濃縮して固体を得た。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製し、無色の油状物を得た。この油状物を高速液体カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製したところ、白色固体を14g、収率84%で得た。
【0191】
得られた14gの白色固体をトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力3.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色固体を140℃で加熱して行った。昇華精製後、白色固体を収量11g、回収率79%で得た。核磁気共鳴測定(NMR)によって、この白色固体が目的物である4−n−ペンチル安息香酸−4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:PEP−5FCNF)であることを確認した。
【0192】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。H NMR(CDCl、300MHz):δ(ppm)=0.90(t、J=6.6Hz、3H)、1.27−1.36(m、4H)、1.61−1.71(m、2H)、2.71(t、J=7.2Hz、2H)、7.05(dd、J=3.0Hz、J=10.8Hz、2H)、7.34(d、J=8.1Hz、2H)、8.06(d、J=6.3Hz、2H)。
【0193】
(4−(4−n−プロポキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O3FCNF)の合成方法)
PP−O3FCNFの合成スキームを下記(A−1)に示す。
【0194】
【化4】

【0195】
3.0g(14mmol)の4−n−プロポキシフェニルボロン酸と、3.1g(14mmol)の4−ブロモ−2,6−ジフルオロベンゾニトリルと、0.22g(0.70mmol)のトリス(2−メチルフェニル)ホスフィンと、30mg(0.10mmol)の酢酸パラジウム(II)と、4.0g(29mmol)の炭酸カリウムを500mL三つ口フラスコに加えた。この混合物へ54mLのトルエンと、18mLのエタノールと、14mLの純水を加え、得られた混合物を減圧下で撹拌することで脱気した。脱気後、系内を窒素気流下としてから、混合物を90℃で3時間還流した。
【0196】
還流後、得られた混合物の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過し、濾液を濃縮して淡黄色の固体を得た。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=2:1)により精製したところ、白色固体を2.8g得た。この固体を高速液体カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製したところ、白色粉末を2.5g、収率64%で得た。
【0197】
得られた白色粉末2.5gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力5.5Pa、アルゴン流量15mL/minの条件で、白色粉末を100℃で加熱して行った。昇華精製後、白色粉末を1.9g、回収率76%で得た。
【0198】
核磁気共鳴測定(NMR)によって、この化合物が、4−(4−n−プロポキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O3FCNF)であることを確認した。得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
【0199】
H NMR(CDCl,300MHz):δ=1.06(t、J=15.0Hz、3H)、1.85(m、J=3.6Hz、2H)、3.98(t、J=13.2Hz、2H)、7.00(d、J=2.4Hz、2H)、7.23(t、J=17.4Hz、2H)、7.50(d、J=2.4Hz、2H)。
【0200】
(4−(4−n−ペントキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O5FCNF)の合成方法)
PP−O5FCNFの合成スキームを下記(B−1)に示す。
【0201】
【化5】

【0202】
3.0g(14mmol)の4−n−ペントキシフェニルボロン酸と、3.1g(14mmol)の4−ブロモ−2,6−ジフルオロベンゾニトリルと、0.22g(0.70mmol)のトリス(2−メチルフェニル)ホスフィンと、30mg(0.10mmol)の酢酸パラジウム(II)と、4.0g(29mmol)の炭酸カリウムを500mL三つ口フラスコに入れた。この混合物へ54mLのトルエンと、18mLのエタノールと、14mLの純水を加え、減圧しながら攪拌することにより脱気した。脱気後、この混合物を90℃で3時間還流した。
【0203】
還流後、得られた混合物の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過し、得られた濾液を濃縮して透明の油状物を得た。油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=5:1)により精製したところ、淡黄色の液体を5.0g得た。
【0204】
得られた液体を高速液体カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製したところ、白色粉末を3.9g得た。
【0205】
得られた白色粉末3.9gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力2.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色粉末を95℃で加熱することにより行った。昇華精製後、白色粉末を2.0g、収率46%で得た。
【0206】
核磁気共鳴測定(NMR)によって、この化合物が、4−(4−n−ペントキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O5FCNF)であることを確認した。
【0207】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。H NMR(CDCl,300MHz):δ=0.89(t、J=14.1Hz、3H)、1.28−1.49(m、4H)、1.77(m、J=27.6Hz、2H)、3.96(t、J=13.2Hz、2H)、6.94(d、J=2.1Hz、2H)、7.18(t、J=18.0Hz、2H)、7.45(d、J=2.6Hz、2H)。
【0208】
(4−(4−n−オクトキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O8FCNF)の合成方法)
PP−O8FCNFの合成スキームを下記(C−1)に示す。
【0209】
【化6】

【0210】
3.0g(14mmol)の(4−n−オクトキシフェニル)ボロン酸と、3.1g(14mmol)の4−ブロモ−2,6−ジフルオロベンゾニトリルと、0.22g(0.70mmol)のトリス(2−メチルフェニル)ホスフィンと、30mg(0.10mmol)の酢酸パラジウム(II)と、4.0g(29mmol)の炭酸カリウムを500mLの三つ口フラスコに加えた。この混合物へ54mLのトルエンと、18mLのエタノールと、14mLの純水を加え、減圧下で攪拌することで脱気した。脱気後、この混合物を90℃で3時間還流した。
【0211】
還流後混合物の水層をトルエンで抽出し、得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過し、濾液を濃縮して淡赤色の固体を得た。得られた個体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:1)により精製したところ、白色固体を3.5g得た。得られた白色固体を高速液体カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製したところ、白色粉末を2.8g得た。
【0212】
得られた白色粉末2.8gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力5.5Pa、アルゴン流量15mL/minの条件で、白色粉末を110℃で加熱することで行った。昇華精製後、白色粉末を2.2g、収率64%で得た。
【0213】
核磁気共鳴測定(NMR)によって、この化合物が、4−(4−n−オクトキシフェニル)−2,6−ジフルオロベンゾニトリル(略称:PP−O8FCNF)であることを確認した。
【0214】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。H NMR(CDCl,300MHz):δ=0.89(t、J=13.5Hz、3H)、1.30−1.34(m、8H)、1.43−1.53(m、2H)、1.81(m、J=27.9Hz、2H)、4.01(t、J=12.6Hz、2H)、7.00(d、J=2.4Hz、2H)、7.23(t、J=18.0Hz、2H)、7.50(d、J=2.3Hz、2H)。
【0215】
(4−(trans−4−n−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:CPEP−5FCNF)の合成方法)
CPEP−5FCNFの合成スキームを下記(F−1)に示す。
【0216】
【化7】

【0217】
1.9g(6.9mmol)の4−(trans−4−n−ペンチルシクロへキシル)安息香酸と、1.1g(7.1mmol)の2,6−ジフルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリルと、0.13g(1.1mmol)の4−(N,N−ジメチル)アミノピリジン(DMAP)と、7.0mLのジクロロメタンを50mLのナスフラスコに加え、攪拌した。この混合物に1.5g(7.8mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、大気下、室温で28時間攪拌した。所定時間経過後、得られた混合物に水を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過により濾別し、濾液を濃縮して固体を得た。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製した。得られたフラクションを濃縮し、固体を得た。この固体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(展開溶媒;クロロホルム)により精製した。
【0218】
得られたフラクションを濃縮することにより、目的物である白色固体を収量2.0g、収率69%で得た。得られた白色固体2.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力2.7Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色固体を155℃で加熱して行った。昇華精製後、白色固体を1.8g、回収率90%で得た。
【0219】
核磁気共鳴測定(NMR)によって、この化合物が目的物である4−(trans−4−n−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:CPEP−5FCNF)であることを確認した。
【0220】
得られた物質(CPEP−5FCNF)のH NMRデータを以下に示す。H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=0.90(t,3H)、1.02−1.13(m,2H)、1.20−1.35(m,9H)、1.43−1.54(m,2H)、1.89−1.93(m,4H)、2.54−2.62(m,1H)、7.05(d,2H)、7.37(d,2H)、8.06(d,2H)。
【0221】
(4−n−プロピル安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(PEP−3FCNF)の合成方法)
PEP−3FCNFの合成スキームを下記(G−1)に示す。
【0222】
【化8】

【0223】
1.6g(10mmol)の4−n−プロピル安息香酸と、1.6g(10mmol)の2、6−ジフルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリルと、0.19g(1.5mmol)の4−(N,N−ジメチル)アミノピリジン(DMAP)と、10mLのジクロロメタンを50mLのナスフラスコに加え、攪拌した。この混合物に2.1g(11mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、この混合物を大気下、室温で15時間攪拌した。所定時間経過後、得られた混合物へ水を加え、この混合物の水層をジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過し、濾液を濃縮して白色固体を得た。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製した。得られたフラクションを濃縮して白色固体を得た。この固体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(展開溶媒;クロロホルム)により精製した。得られたフラクションを濃縮して、目的物である白色固体を2.4g、収率79%で得た。
【0224】
得られた白色固体2.4gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力2.1Pa、アルゴン流量10mL/minの条件で、白色固体を130℃で加熱して行った。昇華精製後、白色固体を収量1.3g、回収率42%で得た。
【0225】
核磁気共鳴測定(NMR)によって、この化合物が目的物である4−n−プロピル安息香酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(略称:PEP−3FCNF)であることを確認した。
【0226】
得られた物質(PEP−3FCNF)のH NMRデータを以下に示す。H NMR(CDCl、300MHz):δ(ppm)=0.97(t、3H)、1.63−1.76(m、2H)、2.70(t、2H)、7.05(d、2H)、7.34(d、2H)、8.06(d、2H)。
【0227】
((R)(R)−4,5−ビス[ヒドロキシ(ジフェナントリル)メチル]−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(略称:R−DOL−Pn)の合成方法)
【0228】
R−DOL−Pn(略称)の合成スキームを下記(L−1)に示す。
【0229】
【化9】

【0230】
2.3g(95mmol)のマグネシウムを200mLの三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に50mLの脱水テトラヒドロフランと、0.5mLのジブロモエタンを加え攪拌した。この混合物に25g(97mmol)の9−ブロモフェナントレンを50mLの脱水テトラヒドロフランに溶かした溶液を、滴下漏斗より還流を維持しながらゆっくりと加えた。滴下後、この混合物を窒素気流下、80℃で2時間還流した。所定時間経過後、この混合物を室温に戻した。この混合物に、3.6mL(20mmol)の(R)(R)−2,3−O−イソプロピリデン−L−酒石酸ジメチルを10mLの脱水テトラヒドロフランに溶かした溶液を、滴下漏斗より還流を維持しながらゆっくりと加えた。滴下後、この混合物を窒素気流下、80℃で1時間還流した。所定時間経過後、この混合物にメタノール、水、希塩酸を順に加え、得られた混合物の水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過により濾別し、濾液を濃縮して黄色油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製した。得られたフラクションを濃縮し、黄色油状物を得た。この油状物を高速液体クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製し黄色固体を得た。この固体をトルエンで再結晶することにより、目的物の白色固体を収量10g、収率58%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を挟持する第1の基板及び第2の基板と、
前記第1の基板と液晶組成物との間に設けられた第1の電極層及び第2の電極層とを形成し、
前記液晶組成物に前記光重合開始剤の吸収する光を照射し重合させ、
前記ネマティック液晶の吸収する光の波長のピークと、前記光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとが異なることを特徴とする液晶表示装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記液晶組成物に照射する光の波長域は前記ネマティック液晶の吸収する光の波長のピークと異なることを特徴とする液晶表示装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記ネマティック液晶の吸収する光の波長のピークと、前記光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとは40nm以上異なることを特徴とする液晶表示装置の作製方法。
【請求項4】
ネマティック液晶、カイラル剤、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含み、ブルー相を発現する液晶組成物を挟持する第1の基板及び第2の基板と、
前記第1の基板と液晶組成物との間に設けられた第1の電極層及び第2の電極層とを形成し、
前記液晶組成物に前記光重合開始剤の吸収する光を照射し重合させ、
前記ネマティック液晶は複数の化合物を有し、
前記複数の化合物それぞれの吸収する光の波長のピークと、前記光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとが異なることを特徴とする液晶表示装置の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、前記液晶組成物に照射する光の波長域は前記複数の化合物それぞれの吸収する光の波長のピークと異なることを特徴とする液晶表示装置の作製方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、前記複数の化合物それぞれの吸収する光の波長のピークと、前記光重合開始剤の吸収する光の波長のピークとは40nm以上異なることを特徴とする液晶表示装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記液晶組成物に照射する光の波長は365nm以上405nm以下とすることを特徴とする液晶表示装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41272(P2013−41272A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157114(P2012−157114)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】