説明

液晶表示装置の製造方法

【課題】液晶滴下管56の先端56aから表示エリア12に滴下又は塗布する液晶LCの量を常時所定量とすることにより、品質が極めて安定した高精細画像表示対応の液晶表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】先端56aから所定量の液晶玉LC1を表示エリア12の第1の箇所12aに移した後、先端56aを離間し、検出手段CAで先端56aの液晶残留LC2を検出した場合は、この液晶残留LC2を表示エリア12の異なる第2の箇所12bにに移してこれを拭い、再び先端56aを離間し、液晶残留の有無を再度検査し、この手順を、液晶残留が検出されなくなるまで繰り返し、滴下前の液晶玉LC1の量を所定量に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型の画素電極を有する液晶表示装置を製造する、液晶表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は一般的な反射型の液晶表示装置の一例を示す拡大断面図、図9は図8に示す液晶表示装置の分解斜視図、図10は液晶表示装置の製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【0003】
図8、図9に示すように、液晶表示装置2は、画素電極基板4と、透明電極基板6とを、その間に形成された隙間8に液晶LCを封止して形成されている。上記画素電極基板4は、例えばシリコン基板等の半導体基板を切り出したものであり、その表面には、例えばアルミニウム合金よりなる反射型の画素電極10が縦横にマトリクス状に多数配置されており、この画素電極10の下部には、この画素電極10を駆動するための例えばC−MOS型のスイッチング素子や保持容量等よりなる図示しない駆動回路が設けられている。
【0004】
上記画素電極10がマトリクス状に多数配列されている箇所が表示エリア12となっている。また上記表示エリア12には、ここに設けた画素電極10の上面全体を覆うように、液晶LCを配向させるための例えばポリイミド膜や酸化シリコン膜よりなる第1の配向膜16が形成されている。
【0005】
また上記透明電極基板6は、例えば透明なガラス基板よりなり、その対向面側には例えばITO(インジウムースズ酸化物)よりなる透明電極18が全面に共通に形成されている。そして、この透明電極18の表面には、液晶LCを配向させるための例えばポリイミド膜や酸化シリコン膜よりなる第2の配向膜20が形成されている。
【0006】
この透明電極基板6の反対側面には、反射防止膜22が形成されており、この反射防止膜22側の面より光が入射される。そして、上記画素電極基板4と透明電極基板6とは、上記画素電極10と透明電極18とを対向させ、表示エリア12の周囲に接着剤とスペーサとを含むシール接着剤24を枠状に形成して、これを介在させて固着されており、上記隙間8内に液晶LCを封入している。
【0007】
このような液晶表示装置2において、透明電極基板6の透明電極18と各反射型の画素電極10との間に映像信号が印加され、液晶LCが駆動される。ここに透明電極基板6側から光が入射して、液晶LCによって映像信号に応じた変調を受ける。この変調の度合いは各画素電極10でコントロールされて、コントラストを有する画像となって画素電極10の表面で反射され、再度、透明電極基板6側へ出射する。
【0008】
上記したような液晶表示装置2は、その生産性向上、歩留まり向上、製造コスト低減のために、個々に作るのではなく、図10に示すように、一度に多数の装置を一括して製造することが行われている。
【0009】
すなわち、例えば円板状の大口径のシリコン基板よりなる画素電極基板母材26上に、前述したような表示エリア12及びこれを枠状に囲むシール接着剤24を複数個所定の間隔ずつ隔てて形成し、これと対向する面側に円板状の大口径の例えばガラス基板よりなる透明電極基板母材28に接合して固着する。
【0010】
この場合、画素電極基板母材26側にはすでに第1の配向膜16が形成されており、また、透明電極基板母材28側には、透明電極18、第2の配向膜20及び反射防止膜22が形成されているのは勿論である。この場合、上記透明電極基板母材28としては、円板形状のものに限らず、四角形状のものも用いられる。そして、両基板母材26、28を接合及び固着して母材接合体30を形成し、この母材接合体30を個々の素子単体に分断して切り出すようになっている。このようにそれぞれ切り出された単体が図8に示す液晶表示装置2となる。
【0011】
このような液晶表示装置を作成する場合、表示エリア12を枠状に囲むシール接着剤24の枠内(隙間8)に液晶LCを定量的に供給することは非常に重要な事項である。そして、液晶LCの供給手法として一般的には、液晶LCを微量滴下することができるディスペンサを用いて液晶LCを一定量ずつ滴下することが行われている。
この手法を液晶滴下工法(ODF:One Drop Fill)と称する。
この場合、滴下する液晶LCを除電することにより、滴下する液晶量を一定とすることができるから、これによって表示する画像の再現性を向上させて、画像品質を高めるようにしている。
【0012】
さて、従来の液晶表示装置の製造方法としては、生産性向上、歩留まり向上、製造コスト低減のために、大型基板上に複数の液晶表示素子を配列し、対向電極と一括して貼り合わせた後、個々の液晶表示素子に分断する多面取りが採用されている。
【0013】
即ち、図10に示すように、円板状のシリコン基板よりなる画素電極基板母材26上に、表示エリア12及びこれを枠状に囲むシール接着剤24を複数個所定の間隔、隔てて形成し、各枠内に所定量の液晶LCを滴下した後、真空中にて対向する円板状の大口径の例えばガラス基板と貼り合わせる。
【0014】
こうした構成の液晶表示装置を製造する場合、表示エリア12を枠状に囲むシール接着剤24の枠内に液晶LCを定量的に供給することは非常に重要である。そこで、液晶を滴下する針状の液晶滴下管の外周面に液晶付着防止膜(いずれも図示せず)をコーティングし、液晶滴下管の外周への液晶の付着を防止、液晶滴下量のばらつきを抑えた液晶滴下装置がある(特許文献1)。
【0015】
また、液晶吐出量の高精度制御のために、ノズル先端付近に付着した液晶を吹き飛ばすエアーノズルや、飛ばされた液晶を回収する吸入口を設けた液晶滴下装置がある(特許文献2)。
【0016】
さらに、液晶吐出ノズルの表面に凝結した液晶を検出するセンサを備え、凝結した液晶が検出された場合に、液晶を滴下する場所ではないところにダミー滴下して凝結液晶を除去し、不良発生を防止する液晶滴下装置がある(特許文献3)。
【0017】
【特許文献1】特開2007−4002号公報
【特許文献2】特開2005−165365号公報
【特許文献3】特開2005−148754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上記した液晶滴下装置に、表示エリア12に用いる液晶LCの量をばらつきなく等量にするために、液晶滴下量のばらつきを抑えた液晶滴下装置を用いることの開示はあるが、抑圧の対象となるばらつきは大きいものであるから、比較的に小さいばらつきに対しては有効に抑圧できない。この結果、これにより製造した液晶表示装置は、装置毎に液晶量が微小のばらつきを生すせるから、この結果、同一の映像信号を供給しても、表示される画像の諧調に僅かなばらつきが生じてしまう欠点があった。
【0019】
こうした液晶表示装置毎の液晶量の小さなばらつきは、高精細でない映像を表示する装置では実用上問題とならないが、映像コンテンツの高精細化が大きく進展している状況下、これに対応した液晶表示装置は更なる高解像度と高輝度化とを兼ね備えたことが要求されているために、上記の液晶量の製品毎のばらつきが、高解像度化、高輝度化の良否に直結する。
【0020】
このように、液晶表示装置の表示性能を大きく左右するのが液晶量の管理である。液晶量が最適量であれば規定する高解像度と高輝度化とを得ることができる。ところが、液晶量が最適量(等量)となるように厳密管理して液晶表示装置を製造しないと、これを用いた製品は、同一の製品であるのに解像度と輝度にばらつきが生じてしまい、安定した品質で製品を提供できないという問題があった。
【0021】
本発明は、このような問題に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものであり、液晶滴下装置を構成する液晶滴下管から滴下又は塗布する液晶量を常時等量とするよう管理することができるから、これによって製造した各液晶表示装置における液晶量はばらつかかないので、品質がきわめて安定し、高精細画像表示が可能な液晶表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで本発明は、上記した課題を解決するために、下記する(1)〜(3)の構成を有する液晶表示装置の製造方法を提供する。
(1)図1、図2、図8に示すように、複数の画素電極10をマトリクス状に配列してなる表示エリア12の周囲をシール接着剤24により囲む画素電極基板或いは画素電極基板母材26(4)の前記表示エリア12に対して、液晶滴下装置46を用いて液晶LCを所定量滴下することにより液晶表示装置2を製造する液晶表示装置の製造方法であって、
前記液晶滴下装置46は、
前記画素電極基板或いは画素電極基板母材26(4)を載置する載置台(搬送機構)34と、
前記液晶を滴下する液晶滴下管56の先端56aから前記液晶LCを滴下する滴下ヘッド54と、
前記液晶滴下管56の先端56aにおける前記液晶LCの滴下前後の状態(図7(A)に示す滴下前の液晶玉LC1、同(B)に示す滴下後の液晶残りLC2,3)を検出する検出手段)CAとを備えており、
前記液晶滴下管56の先端56aに所定量の液晶玉LC1を生成する第1ステップ(図1(A))と、
次に、前記先端56aを前記表示エリア12に近接して、前記先端56aにある前記液晶玉LC1を前記表示エリア12の第1の箇所12aへ移す第2ステップ(図1(B))と、
次に、前記先端56aを前記表示エリア12の前記第1の箇所12aから離間し、前記検出手段CAにて、前記先端56aに残留した液晶残留LC2を検出する第3ステップ(図1(C))と、
次に、前記先端56aに残留した前記液晶残留LC2を検出した場合は、再び、前記先端56aを前記表示エリア12に近接して、前記第2ステップにて前記液晶玉LC1を移した前記表示エリア12の前記第1の箇所12aとは異なる第2の箇所12bに、前記液晶残留LC2を移して当該液晶残留LC2を拭う第4ステップ(図1(D))と、
次に、再び、前記先端56aを前記表示エリア12の前記第2の箇所12bから離間し、前記検出手段CAにて前記先端56aに残留する液晶残留LC3を検出する第5ステップ(図1(E))と、
前記第5ステップ後、前記先端56aに残留した前記液晶残留LC3を検出した場合には、前記第5ステップにて当該液晶残留が検出されなくなるまで、前記第4ステップ、前記第5ステップを繰り返すことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(2) 前記第1ステップの直前に位置するステップとして、前記液晶滴下管56の前記先端56aから液晶玉LC1を数適滴下して、前記先端56aに固着した液晶残留を取り除くステップを有することを特徴とする上記(1)に記載の液晶表示装置の製造方法。
(3) 前記検出手段CAは、撮像カメラ或いは光センサを含んで構成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の液晶表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
上記した本発明によれば、液晶滴下装置を構成する液晶滴下管から液晶表示装置の表示エリアに滴下する液晶量を常時等量とするよう管理することができるから、これによって製造した各液晶表示装置における液晶量はばらつかず均質になるので、品質がきわめて安定した高精細画像表示可能な液晶表示装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明に係る液晶表示装置の製造方法を、図1〜図7を用いて説明する。
図1は本発明に係る液晶表示装置の製造方法を説明するための図、図2は液晶表示装置の製造システムを説明するための図、図3は液晶滴下装置を説明するための図、図4は滴下ヘッドを示す拡大図、図5は液晶を突出させたときの液晶滴下管の状態を示す図、図6はクラスタ型の製造システムを示す概略平面図、図7は液晶滴下管先端における液晶滴下前後の状態を説明するための図である。
【0025】
まず、図2に示すように、液晶表示装置の製造システム32は、各製造工程に対応した複数、図示例では6つのブロックにより構成されており、各ブロックを製造工程に従って図の左側から右側に向かって順番に配列したインライン型に構成されている。液晶表示装置は、各ブロックに備えられた搬送機構34により各ブロックを移動しながら製造される。最初と最後のブロックを除いて各ブロックは、区画壁36により例えば気密に区画されており、各ブロック間は、気密に開閉可能になされた開閉弁、例えばゲートバルブ38により連通、及び遮断が自在になされている。
【0026】
まず、第1ブロックは、基板供給ステージであり、ここに基板が供給される。
第2ブロックにはシール接着塗布装置40が設けられる。この塗布装置40は、搬送機構34と、塗布ヘッド42と塗布制御部44とを有している。
第3ブロックには、本発明に関係する、液晶滴下装置46が設けられる。
液晶滴下装置46は、図3及び図4に示すように、載置台を兼ねる搬送機構34と、液晶LCを滴下するための液晶滴下ユニット48と、所定の光を照射するための光照射手段50とにより主に構成されている。
【0027】
上記液晶滴下ユニット48は、液晶LCの流量を制御しつつ必要に応じて供給する滴下制御部52と、この滴下制御部52から供給管53を介して供給される液晶LCを受ける滴下ヘッド54を有しており、この滴下ヘッド54の先端(下部)には針状、或いはニードル状の細い液晶滴下管56が下方に向けて延びている。
この液晶滴下管56は、例えばステンレス等の金属材料またはフッ素樹脂系材料等よりなる管本体57と、この管本体57の外周面の全体に均一にコーティングされている液晶付着防止膜58とよりなる。
【0028】
この液晶付着防止膜58は、光を受けることによって液晶LCの付着防止作用を呈するようになっている。この液晶付着防止膜58としては、例えば酸化チタン膜やフッ素樹脂膜を用いることができる。また上記管本体57の内径は、例えば0.15〜0.5mm程度に設定されている。
【0029】
また上記光照射手段50は、照射光発生源60と、発生された照射光を導く光ファイバ62と、この光ファイバ62に連結された照射ヘッド64とよりなり、上記液晶滴下管56に被覆した液晶付着防止膜58に所定の光を照射し得るようになっている。この照射光L1としては、紫外線や赤外線が用いられ、例えば液晶付着防止膜58が酸化チタンの場合には紫外線が有効であり、フッ素樹脂膜の場合には赤外線が有効である。
【0030】
CAは、液晶滴下管56の下端先端56aに付着する液晶LCの滴下状態を撮像するカメラである。カメラCAは、液晶滴下管56の先端56aに付着する液晶LCがないことを撮像画像を通して監視するために、その画像を撮影するのものである。
【0031】
更に、上記滴下ヘッド54及び搬送機構34を囲んで、接地された遮蔽シールド66が設けられており、遮蔽シールド66内を外部に対して電気的に遮蔽して帯電を防止するようになっている。
【0032】
また、ここで載置台を兼ねる搬送機構34は、XYステージ機能を有しており、基板をこの上に載置した状態で平面内の任意の位置に相対的に移動できるようになっている。尚、滴下ヘッド54側をX、Y方向へ移動できるようにしてもよい。
【0033】
図2に戻って、次に第4ブロックは、プレスステージであり、このプレスステージには、搬送機構34と、ガラス基板(透明電極基板)等を保持するチャッキングステージ68とを有している。また、このステージ内は、圧力制御弁70と真空ポンプ72とで必要に応じて所定の真空圧に維持できるようになっている。
【0034】
次に、第5ブロックは紫外線照射ステージであり、ここでは搬送機構34と紫外線照射手段74とを有している。尚、このステージは併せてオーブン機能も有しており、基板を加熱し得るようになっている。
【0035】
次に、第6ブロックは基板取出しステージであり、貼り合わせが完了した液晶表示装置が、搬送機構34によりここに搬送されてくることになる。
【0036】
次に、上記処理システムを用いて、液晶表示装置を製造する工程について、具体的に説明する。
【0037】
まず、第1ブロックの搬送機構34に画素電極基板母材26をセットする。また第4ブロックには透明電極基板母材28をセットしておく。この画素電極基板母材26は、予め画素電極10(表示エリア12)とその下部にCMOSスイッチング回路のプロセスが施されている。この表示エリア12は母材28の表面に複数個形成されている。また透明電極基板28は、ガラス基板の貼り合せ面に透明電極である例えばITO膜(インジウムと鉛の酸化膜)が予め成膜してある。
【0038】
そして、画素電極基板母材26及び透明電極基板母材28は、それぞれ酸化シリコン膜の配向膜16、20がそれぞれコーティングしてある。尚、これらに代えて一つの表示エリア12からなる画素電極基板4及び透明電極基板6を用いてもよい。また、配向膜は、酸化シリコン膜以外にポリイミド膜やダイヤモンド状カーボン膜でもかまわない。そして、上記第1ブロックの搬送機構34により画素電極基板母材26を第2ブロックの搬送機構34上にセットする。ここでは、画素電極10からなる表示エリア12の外周に沿って、シール接着剤24を塗布ヘッド42で塗布する。
【0039】
次に、シール接着剤24の塗布が終わった画素電極基板母材26を搬送機構34で第3ブロックの搬送機構34上に移送する。ここでは、前工程で表示エリア12に沿って塗布されたシール接着剤24の内部(表示エリア上)に滴下ヘッド54により液晶LCを定量だけ滴下する。
【0040】
この第3ブロックの搬送機構34は、XYステージ機能を有する載置台となっており、この載置台34上にセットされた画素電極基板母材26に対して滴下ヘッド54は載置台34をX・Y方向へさせることにより、各表示エリア12の位置に相対的に移動する。
【0041】
滴下ヘッド54の液晶滴下管56から液晶LCが出始める前に、滴下ヘッド54から下方に延びるその液晶滴下管56に光照射手段50により光を照射する。例えば液晶滴下管56の液晶付着防止膜58として、酸化チタンがコーティングしてある場合は、ここにUV光を照射する。これにより、液晶滴下管56の先端56aから液晶LCが湧出してきても液晶滴下管56の側面には液晶LCが付着せず、液晶滴下管56の先端のみに液晶LCが液滴として留まり、画素電極基板母材26上に滴下または、塗布した場合に、所望とする正確な液晶量の滴下が可能となる。
【0042】
また液晶付着防止膜58としてフッ素樹脂がコーティングしてある場合には、ここに赤外光を照射する。これにより上記の場合と同様、液晶滴下管56の先端56aから液晶LCが湧出してきても液晶滴下管56の側面には液晶LCが付着せず、液晶滴下管56の先端56aのみに液晶LCが液滴として留まり、画素電極基板母材26上に滴下または、塗布した場合に、所望とする正確な液晶量の滴下が可能となる。
【0043】
これらを更に、図示すると、図5(A)は液晶LCを湧出させたときの液晶滴下管56の先端56aの状態を示し、液晶LCを滴下又は塗布した後の状態を図5(B)に示す。つまり、液晶LCを滴下または塗布した後には液晶滴下管56の側面には液晶LCは付着していない。
【0044】
上述のように液晶付着防止膜58に所定の光(紫外線、赤外線を含む)を照射すると、液晶LCの付着防止効果が生ずるのは、以下の理由による。すなわち、紫外線や赤外線の照射により、液晶付着防止膜58のぬれ性状態がコントロールされ、液晶LCをはじくように作用する。特に、酸化チタンは光触媒作用があり、親水性または親油性が改善されて非常に液晶LCをはじき易くなる。またフッ素樹脂としては、例えばテフロン(登録商標)樹脂を使用でき、このテフロン(登録商標)樹脂は、ぬれ性の改善の他に、特に、液晶材料への汚染を防止することもできる。
【0045】
また上述のような高精度な滴下量制御を必要とする理由を説明する。例えば、画像の表示エリア12が対角0.7インチサイズの液晶表示装置の場合、液晶LCが挟持されるセルギャップを約3.5μm(ミクロン)とした場合、表示エリア12外の体積も含めて最適となる液晶LCの体積は、約0.6μl(マイクロリットル)となる。さらに、この液晶表示装置のセルギャップ均一性を画像表示において所望する品質に保つには、上記約0.6μlの2%乃至3%の精度で液晶LCを定量して滴下しなければならない。従って、液晶LCを定量滴下する際に、滴下ヘッド54の液晶滴下管56に付着する液晶LCが存在すると上記の滴下量の精度に影響を及ぼすことになってしまう。
【0046】
実際に、酸化チタンやフッ素樹脂よりなる液晶付着防止膜58のコーティングを施さず、しかも光照射も行わない場合は、液晶LCの滴下量のばらつきが、0.02乃至0.03μlであったが、本発明による液晶付着防止膜58のコーティング及び光照射を行うと、この液晶LCの滴下量のばらつきが0.01乃至0.02μlまで改善することができた(約3%以内)。
【0047】
次に、このようにして、液晶LCが滴下された画素電極基板母材26を第4ブロックの真空プレス部内のプレスステージ(搬送機構34)に移設する。さらに、真空プレス部内のプレスステージに対向するチャッキングステージ68に透明電極基板母材28を透明電極側が画素電極基板母材26側に向くようにセットする。
【0048】
真空プレス部は、真空排気が可能となっており、両基板母材のセットを行い、真空チャンバを閉じた後、排気する。このときの排気到達圧力は、1×10−2Torr(1Torr=133Pa)より高真空が望ましい。
【0049】
上記の真空度に到達した後、両基板の各母材26,28を重ね合わせ、画素電極基板母材26に塗布したシール接着剤24が透明電極基板母材28に接触していることを確認し、真空チャンバ内に空気、窒素ガス等を大気圧になるまで導入する。これにより、重ね合わせた両基板母材26,28には大気圧が掛かり、各表示装置ごとに滴下した液晶LCは、表示エリア12内の空間に満たされ、かつ必要な体積を滴下してあるので、シール接着剤24内に混入してあるスペーサーボールにより、セルギャップが規制され、ギャップ均一性の良好な液晶表示装置の集合体としての貼り合せ基板、すなわち母材結合体30ができる。
【0050】
次に、この貼り合せ基板(母材結合体30)を第5ブロックのUVキュア部に移送し、表示エリア12をマスクしてシール接着剤24の部分すべてにUV照射手段74によりUV光を照射する。この時、100−200mW/cmの光量 で20−30秒程度照射するのが望ましい。またこの後、基板全体を加熱するのがよい。UVキュア終了後、貼り合せ基板(母材結合体30)は、第6ブロックに移送され、その後、オーブンにて熱キュアが行われる。これにより、基板の貼り合せは完了する。
【0051】
上記の例としては、シール接着剤24のキュアは、UV光と熱を併用して行ったが、それぞれ単一のキュアであってもかまわない。この後、貼り合せ基板(母材結合体30)を個々の素子に分断し、配線を行って反射型の液晶表示装置2が完成する。
【0052】
上記の製造方法で作製された反射型の液晶表示装置2は、セルギャップの均一性が良好で、画像として評価した場合、駆動時の明暗ムラがほとんど無く、リアプロジェクションディスプレイに搭載した場合は、色ムラ等の画像不良のない良好な映像を表示できた。また、製造工程内では、セルギャップ不均一として排除される不良が低減できるので、製造歩留りを向上させることができる。
【0053】
尚、図2に示す場合には、各ブロックを直線状に配列した製造システム32を例にとって説明したが、これに限定されず、図6に示すように、基板搬送用のロボットアーム80を中心として、その周囲に第1〜第6の各ブロックをクラスタ型に配置するようにしてもよい。ここで第1ブロックには母材カセットを用意し、第6ブロックには貼り合わせ基板回収セットを用意する。また、別途、透明電極基板であるガラス基板を収容するガラス基板カセット82も用意する。これにより、各ブロック間は、上記ロボットアーム80を用いて基板等が搬送されることになる。
【0054】
ところで、液晶LCの滴下前後の、液晶滴下管56の先端56aは、図7に示すように、滴下前(図7(A))、滴下後(図7(B))のいずれの状態においても、液晶LCが存在することとなる。即ち、滴下前は、液晶玉LC1が液晶滴下管56の先端56aに存在しており、この先端56aを画素電極基板母材26に近づけて、この液晶玉LC1を接触させて、液晶玉LC1を画素電極基板母材26表面に移している。
【0055】
しかし、液晶玉LC1を画素電極基板母材26表面に移した後でも、液晶滴下管56の先端56aには、図7(B)に示すように、液晶残留LC2が生じていることが確認された。
【0056】
そこで、再度、画素電極基板母材26の液晶LCがまだ無い部分(又は本来液晶滴下が行われない部分)に液晶滴下管56を近づけて、この液晶残留LC2を画素電極基板母材26に再度接触を行って、液晶残留LC2を基板26側に殆ど移すことができた。
【0057】
ここで、本発明の液晶表示装置の製造方法は、上記した図7に示したように、液晶滴下が行われた後に、液晶滴下管56の先端56aに残留した液晶残留LC2を基板26側に移すことにより、この液晶残留LC2を効果的にほぼ拭い去ることを目的として行われる。
【0058】
このために、液晶滴下管56の先端56aに付着する液晶LCの滴下状態を撮像するカメラCAは、下記する図1、図7にそれぞれ示すように、液晶滴下管56の先端56aに留まる液晶LCの液滴状態、即ち、滴下前の液滴状態(図7(A))、滴下後の液滴状態(図7(B))を撮像する。詳しくは、滴下前状態(図1(A))、第1回滴下状態(図1(B))、第1回滴下後状態(図1(C))、第2回滴下状態(図1(D))、第2回滴下後状態(図1(E))を順次撮像する。第2回滴下後状態以降、必要に応じて、第3回の滴下が行われる場合には、第3回滴下状態、第3回滴下後状態を順次撮像する。
以下、図1(A)〜(E)で示す状態を、順次説明する。
【0059】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、図1(A)〜(E)に示すように、滴下前、滴下、滴下後、二度滴下、二度滴下後の各手順を備えている。
【0060】
詳しくは、次の(1)〜(5)の順序で、液晶滴下管56の先端56aにある液晶LCを画素電極基板母材26側に全て移すことができる。
【0061】
(1)上記した表示エリア12の周囲をシール接着剤24により囲む画素電極基板母材26に対して液晶LCを所定量滴下するために、液晶滴下装置46を構成する液晶滴下管56の先端56aに、所定量の液晶玉LC1を湧出する(図1(A))。
【0062】
(2)次に、液晶滴下管56の先端56aにある液晶玉LC1を画素電極基板母材26上に接触し、この液晶玉LC1を表示エリア12の箇所12aに付着する(図1(B))。
【0063】
(3)次に、液晶玉LC1を付着した表示エリア12の箇所12aから液晶滴下管56の先端56aを離間し、液晶滴下管56の先端56aに残留している液晶残留LC2をカメラCA又は光センサにて観察、検出する(図1(C))。
【0064】
(4)この後、液晶滴下管56の先端56aに液晶残留LC2が確認された場合、液晶滴下管56の先端56aにある液晶玉LC2を画素電極基板母材26上に接触し、液晶残留LC2を、液晶玉LC1を付着した表示エリア12の箇所12aとは異なる箇所12bにに付着する(図1(D))。
【0065】
(5)次に、液晶玉LC2を付着した表示エリア12の異なる箇所12bから液晶滴下管56の先端56aを離間し、液晶滴下管56の先端56aの状態を、カメラCA又はセンサにて再度観察、検出する(図1(E))。
【0066】
この結果、液晶残留LC2を再び検出した場合には、前記(5)にて当該残渣が検出されなくなるまで、前記(4)、(5)を順次繰り返す。これによって、前記(1)において、液晶滴下管56の先端56aに湧出する液晶玉LC1を常時所定量に維持することが出来る。
【0067】
また、前記(1)に位置するステップとして、液晶滴下管56の先端56aから液晶液滴LCを数適滴下して液晶滴下管56の先端56aに固着した液晶液滴を予め取り除くステップを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る液晶表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図2】液晶表示装置の製造システムを説明するための図である。
【図3】液晶滴下装置を説明するための図である。
【図4】滴下ヘッドを示す拡大図である。
【図5】液晶を突出させたときの液晶滴下管の状態を示す図である。
【図6】クラスタ型の製造システムを示す概略平面図である。
【図7】液晶滴下管先端における液晶滴下前後の状態を説明するための図である。
【図8】一般的な反射型の液晶表示装置の一例を示す拡大断面図である。
【図9】図8に示す液晶表示装置の分解斜視図である。
【図10】液晶表示装置の製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
2…液晶表示装置
4…画素電極基板
6…透明電極基板
10…画素電極
12…表示エリア
12a…第1の箇所
12b…第2の箇所
24…シール接着剤
26…画素電極基板母材
28…透明電極基板母材
30…母材結合体
32…製造システム
34…搬送機構(載置台)
46…液晶滴下装置
48…液晶滴下ユニット
50…光照射手段
52…滴下制御部
54…滴下ヘッド
56…液晶滴下管
56a…液晶滴下管先端
57…管本体
58…液晶付着防止膜
60…照射光発生源
62…光ファイバ
64…照射ヘッド
CA…カメラ、光センサ(検出手段)
LC…液晶
LC1…液晶玉
LC2,LC3…液晶残留

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極をマトリクス状に配列してなる表示エリアの周囲をシール接着剤により囲む画素電極基板或いは画素電極基板母材の前記表示エリアに対して、液晶滴下装置を用いて液晶を所定量滴下することにより液晶表示装置を製造する液晶表示装置の製造方法であって、
前記液晶滴下装置は、
前記画素電極基板或いは画素電極基板母材を載置する載置台と、
前記液晶を滴下する液晶滴下管の先端から前記液晶を滴下する滴下ヘッドと、
前記液晶滴下管の先端における前記液晶の滴下前後の状態を検出する検出手段とを備えており、
前記液晶滴下管の先端に所定量の液晶玉を生成する第1ステップと、
次に、前記先端を前記表示エリアに近接して、前記先端にある前記液晶玉を前記表示エリアの第1の箇所へ移す第2ステップと、
次に、前記先端を前記表示エリアの前記第1の箇所から離間し、前記検出手段にて、前記先端に残留した液晶残留を検出する第3ステップと、
次に、前記先端に残留した前記液晶残留を検出した場合は、再び、前記先端を前記表示エリアに近接して、前記第2ステップにて前記液晶玉を移した前記表示エリアの前記第1の箇所とは異なる第2の箇所に、前記液晶残留を移して当該液晶残留を拭う第4ステップと、
次に、再び、前記先端を前記表示エリアの前記第2の箇所から離間し、前記検出手段にて前記先端に残留する液晶残留を検出する第5ステップと、
前記第5ステップ後、前記先端に残留した前記液晶残留を検出した場合には、前記第5ステップにて当該液晶残留が検出されなくなるまで、前記第4ステップ、前記第5ステップを繰り返すことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1ステップの直前に位置するステップとして、前記液晶滴下管の前記先端から液晶玉を数適滴下して、前記先端に固着した液晶残留を取り除くステップを有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記検出手段は、撮像カメラ或いは光センサを含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−75210(P2009−75210A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242231(P2007−242231)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】